(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】放射性同位体の製造装置及び放射性同位体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G21G 1/02 20060101AFI20240125BHJP
G21K 5/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G21G1/02
G21K5/08 A
(21)【出願番号】P 2020183272
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 淳次朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 高揚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大器
(72)【発明者】
【氏名】八谷 尚子
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-140136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0075180(US,A1)
【文献】国際公開第2020/025120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 1/00
G21G 4/08
G21K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉内に移動させる放射性同位体の製造装置であって、
前記RI原料を含有する少なくとも1つのRI原料集合体と、
前記RI原料集合体を前記原子炉に接続された管の内部を移動させ、かつ、前記RI原料集合体に対して離間可能な搬送機構と、を含み
、
複数の前記RI原料集合体が前記管の内部で直列に配置され、隣接する前記RI原料集合体に対して移動自在であり、
前記RI原料集合体の前記管の進行方向の端部に配置された磁石を有し、
前記磁石は、隣接する他の前記RI原料集合体に配置された磁石と反発する向きで配置される放射性同位体の製造装置。
【請求項2】
前記搬送機構は、前記RI原料集合体を前記原子炉に向けて押し込む押し棒を含む請求項1に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項3】
前記RI原料集合体と前記押し棒の間に配置された弾性部材をさらに備える請求項2に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項4】
前記押し棒の前記RI原料集合体側とは反対側の端部に配置され、前記管の端部に装着され、前記押し棒を前記管の内部に閉じ込める封止栓を有する請求項2または請求項3に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記RI原料集合体を空気の力で搬送し、前記原子炉に接続された管の内部を移動させる空気搬送装置を含む請求項1に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項6】
前記管の内部に配置されたRI原料集合体を吸引し、前記管から取り出す回収装置を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項7】
前記磁石は、前記RI原料集合体よりも外形が大きい請求項
1から請求項6のいずれか一項に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項8】
前記
磁石は、前記管よりも柔らかい材質である請求項
1から請求項7のいずれか一項に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項9】
複数の前記RI原料集合体は、管の内部で転動する球体である請求項
1から請求項7のいずれか一項に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項10】
前記RI原料集合体は、前記管に対してRI原料が露出している請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項11】
放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉内に移動させる放射性同位体の製造方法であって、
前記RI原料を含有する
複数のRI原料集合体を、前記RI原料集合体に対して離間可能な搬送機構を用いて、前記RI原料集合体を前記原子炉に接続された管の内部を移動させ、前記原子炉に設けられた計装管に挿入することで、前記RI原料に中性子束を照射させて放射性同位体を製造し、
前記搬送
機構を、前記放射性同位体に変換されたRI原料集合体から離間させ、前記放射性同位体を前記計装管から回収し、
複数の前記RI原料集合体は、前記管の内部で直列に配置され、隣接する前記RI原料集合体に対して移動自在であり、
前記RI原料集合体の前記管の進行方向の端部に配置された磁石を有し、
前記磁石は、隣接する他の前記RI原料集合体に配置された磁石と反発する向きで配置される放射性同位体の製造方法。
【請求項12】
前記RI原料集合体を前記計装管に挿入する前に、前記計装管の内部に付着する異物を除去する請求項
11に記載の放射性同位体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性同位体の製造装置及び放射性同位体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用や工業用などの用途に、放射性同位体を用いることが知られている。特許文献1には、原料を原子炉の計装管に挿入して、原料に中性子を照射させることで、放射性同位体を製造する旨が記載されている。特許文献1では、原料が収納された保持構体を送り出しシステムの管から計装管に移動させることで、放射性同位体を製造する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、計装管は、長く形成されていたり、湾曲して形成されていたりするため、原料が収納された保持構体を計装管に適切に挿入して放射性同位体を製造するには、改善の余地がある。例えば特許文献1では、保持構体の構造について詳細構成が開示されておらず、保持構体を計装管に適切に挿入できないおそれもある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、放射性同位体の原料を計装管に適切に挿入可能な放射性同位体の製造装置及び放射性同位体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る放射性同位体の製造装置は、放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉内に移動させる放射性同位体の製造装置であって、前記RI原料を含有する少なくとも1つのRI原料集合体と、前記RI原料集合体を前記原子炉に接続された管の内部を移動させ、かつ、前記RI原料集合体に対して離間可能な搬送機構と、を含む。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る放射性同位体の製造装置は、放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉内に移動させる放射性同位体の製造装置であって、前記RI原料を含有する少なくとも1つのRI原料集合体と、前記RI原料集合体に連結し、前記RI原料集合体を前記原子炉に接続された管の内部を移動させる搬送機構と、を含み、前記RI原料集合体は、前記管に対してRI原料が露出している。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る放射性同位体の製造方法は、放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉内に移動させる放射性同位体の製造装置であって、前記RI原料を含有する少なくとも1つのRI原料集合体を、前記RI原料集合体に対して離間可能な搬送機構を用いて、前記RI原料集合体を前記原子炉に接続された管の内部を移動させ、前記原子炉に設けられた計装管に挿入することで、前記RI原料に中性子束を照射させて放射性同位体を製造し、前記搬送装置を、前記放射性同位体に変換されたRI原料集合体から離間させ、前記放射性同位体を前記計装管から回収する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、放射性同位体の原料を計装管に適切に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る原子炉容器の模式的な一部断面図である。
【
図2】
図2は、計装管を説明する概略側面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る放射性同位体製造装置の模式図である。
【
図4】
図4は、放射性同位体製造装置を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態に係る放射性同位体製造装置の模式図である。
【
図6】
図6は、放射性同位体製造装置を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、RI原料集合体の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すRI原料集合体を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、RI原料集合体の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、RI原料集合体の一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係るカプセルの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0012】
(原子炉容器)
図1は、本実施形態に係る原子炉容器の模式的な一部断面図である。本実施形態に係る原子炉容器101は、原子力発電プラントの加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる。ただし、原子炉容器101は、加圧水型原子炉に用いられることに限られず、例えば沸騰水型原子炉に用いられてもよい。
図1に示すように、原子炉容器101は、原子炉容器本体101aの内部に、燃料集合体120を含む炉内構造物を有している。
【0013】
図2は、計装管を説明する概略側面図である。また、原子炉容器本体101aは、複数の計装管147Aが接続されている。計装管147Aは、原子炉容器本体101aの下部の複数個所に配置される。計装管147Aは、計装管台146と、炉内計装案内管147と、コンジットチューブ148と、シンブルチューブ151と、を含む。計装管台146は、下部鏡101eを貫通する。計装管台146は、炉内側の上端部に炉内計装案内管147が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ148が連結されている。炉内計装案内管147は、計装管台146に接続され、炉心内部の燃料集合体120が配置される領域まで伸びている。コンジットチューブ148は、原子炉容器本体101aの外側に配置され、計装管台146とシールテーブル156とに接続される。シンブルチューブ151は、コンジットチューブ148、計装管台146及び炉内計装案内管147に挿入される管である。シンブルチューブ151は、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が挿入されるが挿通される。シンブルチューブ151は、コンジットチューブ148、計装管台146及び炉内計装案内管147に挿入されることで燃料集合体120が配置される領域まで挿入可能となっている。
【0014】
計装管147Aは、中性子束検出器が挿入される。計装管147Aは、炉心129まで延在することで、挿入された中性子束検出器が、中性子束に晒されて中性子束を検出する。
【0015】
図2に示すように、コンジットチューブ148は、原子炉容器101の外部まで延出される。原子炉格納容器100は、原子炉容器101の下方に配管室155が形成されている。複数のコンジットチューブ148は、下部鏡101eにある計装管台146から原子炉容器101の外部に引き出され、配管室155を湾曲して上方に引き回された後、端部が別室のシールテーブル156に固定されている。シンブルチューブ151は、この固定されたコンジットチューブ148の端部から挿通される。そして、このシンブルチューブ151に中性子束検出器が挿入される。
【0016】
シールテーブル156は、板状に形成され、コンジットチューブ148の端部が下から上に貫通された状態で固定されている。複数のコンジットチューブ148は、シールテーブル156の上面から林立されている。
【0017】
このように、計装管147Aは、コンジットチューブ148がシンブルチューブ151を挿入する構成であるが、それに限られず、中性子束検出器や後述のRI原料集合体12が挿入される任意の形状の管、また、内部空間が細長い通路となる中空部材であってよい。
【0018】
(放射性同位体製造装置)
図3は、本実施形態に係る放射性同位体製造装置の模式図である。本実施形態に係る放射性同位体製造装置10は、RI原料集合体12と、ワイヤ14と、駆動機構16と、を含む。RI原料集合体12は、RI(Radioisotope)原料の集合体である。本実施形態のRI原料集合体12は、RI原料を焼結した円柱構造物である。RI原料集合体12は、RI原料を所定の形状に維持する構造物であればよく、RI原料をバインダ等で固化してもよい。本実施形態のRI原料集合体12は、RI原料が露出した構造物、つまり周囲を他の部材で覆われていない構造物である。RI原料集合体12は、挿入される管となる計装管147Aよりも径が小さい構造物である。
【0019】
(RI原料)
RI原料は、放射性同位体の原料である。RI原料は、計装管147Aの原子炉容器101内に位置する箇所内で、中性子束に暴露されることで、放射性同位体に変換される。RI原料Mは、粉末が焼き固められたブロック状となっているが、それに限られない。RI原料は、例えば、モリブデン‐98、クロム‐50、銅‐63、ジスプロシウム‐164、エルビウム‐168、ホルミウム‐165、ヨウ素-130、イリジウム-191、鉄‐58、ルテチウム‐176、パラジウム‐102、リン‐31、カリウム‐41、レニウム‐185、サマリウム‐152、セレン‐74、ナトリウム‐23、ストロンチウム‐88、イッテルビウム‐168、イッテルビウム‐176、イットリウム‐89、のうち少なくとも1つであってよい。そして、それらのRI原料に中性子束が照射されることで、放射性同位体として、それぞれ、モリブデン‐99、クロム‐51、銅‐64、ジスプロシウム‐165、エルビウム‐169、ホルミウム‐166、ヨウ素-131、イリジウム-192、鉄‐59、ルテチウム‐177、パラジウム‐103、リン‐32、カリウム‐42、レニウム‐186、サマリウム‐153、セレン‐75、ナトリウム‐24、ストロンチウム‐89、イッテルビウム‐169、イッテルビウム‐177、イットリウム‐90、が製造される。
【0020】
ワイヤ14は、計装管147Aに挿入される。ワイヤ14は、挿入される管の内部で、RI原料集合体12を移動させることが可能な剛性を備え、かつ、管に沿って変形する可撓性を備える。ワイヤ14は、一端がRI原料集合体12に固定され、他方が駆動装置16に巻き取られている。
【0021】
駆動機構16は、ワイヤ14の引き出し量を制御する。駆動機構16は、ワイヤ14を引き出して、RI原料集合体12を管の先端側に移動させ、ワイヤ14を巻き取ることで
RI原料集合体12を管の基端側に移動させる。
【0022】
(放射性同位体の製造方法)
次に、放射性同位体製造装置でRI原料集合体を放射化し、放射性同位体を製造する方法を説明する。
図4は、放射性同位体製造装置を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図である。本実施形態の放射性同位体製造装置10は、シールテーブル156の上面から突出した計装管147Aの端部の開口から、計装管147A内に、ワイヤ14が接続されたRI原料集合体12を挿入する。具体的には、シンブルチューブ151に、RI原料集合体12を挿入する。
【0023】
本実施形態では、駆動装置16で、ワイヤ14を引き出し、ワイヤ14をシンブルチューブ151内に送り出すことで、
図4に示すように、ワイヤ14に連結されているRI原料集合体12を、原子炉容器101内の所定の位置まで移動させる。RI原料集合体12には、中性子束が照射されて、放射性同位体が製造される。放射性同位体が製造されたら、駆動装置16を用いて、ワイヤ14を巻き取り、放射性同位体に変換されたRI原料集合体12を計装管147Aから引き出して、回収する。これにより、管路から放射性同位体が取り出される。なお、RI原料集合体12を計装管147Aに挿入している際には、計装管147A内を二酸化炭素雰囲気とすることが好ましい。
【0024】
(効果)
本実施形態に係る放射性同位体製造装置10は、RI原料集合体12を計装管147Aに移動させ、原子炉容器101内で中性子束を照射することで、放射性同位体を製造することができる。また、放射性同位体製造装置10は、RI原料集合体12を、RI原料が露出した構造体とすることで、中性子線を遮蔽する材料が少ない状態で計装管147AにRI原料を配置することができる。これにより、より好適に放射性同位体を製造することができる。本実施形態のように1つのRI原料集合体12とすることで、連結部が少ない状態とすることができ、搬送時に装置が損傷する恐れを低減できる。
【0025】
ここで、放射性同位体製造装置10は、RI原料を計装管147Aに挿入する前に、使用するシンブルチューブ151、計装管147Aの内部を清掃することが好ましい。これにより、RI原料集合体12に異物が付着することを抑制できる。
【0026】
また、放射性同位体製造装置10は、本実施形態のように、RI原料集合体の焼結体とすることが好ましいが、RI原料の焼結体等の表面に被膜を形成してもよい。つまり、RI原料を保持する筐体ではなく、RI原料の固形の表面に被膜を形成した場合も同様の効果を得ることができる。本実施形態では、RI原料の表面に被膜を形成する構造もRI原料に沿った形状であるのため、露出しているものと言える。なお、被膜は、0.5mmの厚み以下とする。
【0027】
(他の実施形態)
図5は、他の実施形態に係る放射性同位体製造装置の模式図である。
図6は、放射性同位体製造装置を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図である。
図5に示す放射性同位体製造装置200は、複数のRI原料集合体202と、弾性部材204と、押し棒206と、封止栓208と、回収装置210と、を含む。
【0028】
複数のRI原料集合体202は、計装管147Aに直列で挿入される。RI原料集合体202は、RI原料集合体12と大きさ、形状は異なるが材料構成等は同様である。
【0029】
RI原料集合体202の外径は、挿入されるシンブルチューブ151の内径よりも小さく形成されており、例えば4mm以上5mm以下程度となっている。また、RI原料集合体202のX方向に沿った長さは、例えば50mm以上60mm以下程度となっている。X方向は、RI原料集合体202の軸方向である。なお、RI原料集合体202の外径や長さは、以上の数値範囲に限られず、RI原料集合体202が計装管147Aに適切に挿入可能となるように、計装管147Aのレイアウトに応じて任意に設定されてよい。
【0030】
弾性部材204は、ばね部220と接触面222、224とを、含む。弾性部材204は、RI原料集合体202と、押し棒206との間に配置される。弾性部材204は、ばね部220の一方の端部に接触面222が配置され、他方の端部に接触面224が配置される。接触面222、224は、挿入される管の径より小さい、円形の板である。接触面222は、搬送方向下流側の端部のRI原料集合体202と対面する。接触面224は、押し棒206の先端と対面する。弾性部材204は、ばね部220が押し棒206で押され、圧縮されることで、RI原料集合体202を計装管147A側に押す。
【0031】
押し棒(搬送機構)206は、棒部232と、接触面234、236とを含む。押し棒206は、弾性部材204のRI原料集合体202とは反対側に配置される。棒部232は、コンジットチューブ148に沿って変形可能であり、かつ、弾性部材204、RI原料集合体202を、炉内計装案内管147側に移動させる力を作用可能な剛性を備える構造物である。棒部232は、一方の端部に接触面234が配置され、他方の端部に接触面236が配置される。接触面234、236は、挿入される管の径より小さい、円形の板である。接触面234は、弾性部材204の接触面224と対面する。接触面236は、封止栓208と対面する。
【0032】
封止栓208は、シールユニット156に配置され、放射性同位体製造装置200が挿入される計装管147Aとつながる管を塞ぐ。封止栓208は、管に対して着脱可能である。
【0033】
回収装置210は、計装管147AにあるRI原料集合体202を回収する。回収装置210は、回収駆動源242と、配管244と、ノズル246と、を備える。回収駆動源242は、RI原料集合体202を回収する動力を発生させる。本実施形態の回収駆動源242は、RI原料集合体202を吸着する吸引力と、配管244、ノズル246を移動させる駆動力を発生させる。配管244は、ノズル246と、回収駆動源242とを接続する。配管244は、計装管147Aを移動可能な剛性と可撓性を備える。ノズル246は、吸引口であり、RI原料集合体202を吸引する。
【0034】
(放射性同位体の製造方法)
次に、放射性同位体製造装置200でRI原料集合体を放射化し、放射性同位体を製造する方法を説明する。本実施形態の放射性同位体製造装置200は、シールテーブル156の上面から突出した計装管147Aの端部の開口から、計装管147A内に、複数のRI原料集合体202を挿入する。これにより、計装管147Aの内部には、複数のRI原料集合体202が直列で配置された状態となる。次に、計装管147A内に、弾性部材204を挿入し、さらに、押し棒206を挿入する。これにより、計装管147Aには、複数のRI原料集合体202、弾性部材204、押し棒206が、直列に配置された状態となる。押し棒206で、複数のRI原料集合体202、弾性部材204を押すことで、複数のRI原料集合体202を中性子線が照射される位置、つまり、原子炉容器101内の所定の位置まで移動させる。放射性同位体製造装置200は、押し棒206の全域を計装管147A内に挿入した後、封止栓208で管を塞ぐ。これにより、押し棒206の基端を封止栓208で抑えることができ、複数のRI原料集合体202を所定の位置に維持することができる。封止栓208で管を塞ぐことで、RI原料集合体202が配置される領域から管を伝わって各種物質が漏洩することを抑制できる。
【0035】
放射性同位体製造装置200は、封止栓208で押し棒206を所定位置に指示した状態を維持することで、RI原料集合体202に中性子束が照射されて、放射性同位体が製造される。放射性同位体製造装置200は、放射性同位体が製造されたら、封止栓208を取り外し、押し棒206を計装管147Aから取り除き、弾性部材204を取り除く。次に、放射性同位体製造装置200は、回収装置210を計装管147Aに挿入し、回収装置210で、放射性同位体が製造されたRI原料集合体202を回収する。回収装置210による回収方法は限定されないが、本実施形態の回収装置210は、基端側にあるRI原料集合体202を吸着して回収する方法、計装管147A内のRI原料集合体202をノズル246で吸引し、配管244内を移動させて回収する方法を用いることができる。
【0036】
(効果)
放射性同位体製造装置200は、搬送する機構に連結していないRI原料集合体202を押し棒206、弾性部材204で移動させることで、RI原料集合体202に対して所定位置で中性子線を照射することができる。また、RI原料集合体202同士を連結しない構造とすることで、連結構造の損傷の発生を抑制することができる。また、RI原料集合体202に対して、搬送機構も着脱自在とすることで、装置構成を簡単にすることができる。
【0037】
また、本実施形態のように、押し棒206を用いて、封止栓208で封止することで、RI原料集合体202の位置を所定位置に支持しつつ、計装管147Aを封止した状態とすることができる。なお、本実施形態では、封止栓208を用いたが、シールユニットで押し棒206を支持しつつ、シールすることで、RI原料集合体202を所定位置に支持してもよい。
【0038】
また、放射性同位体製造装置200は、押し棒を用いた搬送機構としたが、本発明はこれに限定されない。放射性同位体製造装置200は、押し棒に変えて、空気搬送で、RI原料集合体202を計装管147Aに送る構造としてもよい。搬送機構は、計装管147AにRI原料集合体202を移動させ、かつ、RI原料集合体202に対して着脱可能であればよい。搬送機構は、RI原料集合体202を計装管147Aから回収する機構を備えていない。つまり、搬送機構は、RI原料集合体202をシールテーブル156から燃料集合体120と対面する位置に移動させるが、計装管147Aに配置されたRI原料集合体202をシールテーブル156から外側に取り出す機構を備えていない。また、回収装置として吸引による方法にて説明したが、炉内案内計装管の先端側のRI原料集合体202にワイヤ状部材を取り付けておき、それを引っ張ることで回収することとしてもよい。さらに、本実施形態のコンジットチューブ148は、シールユニット側で、鉛直方向上側を向いた配置としたが、鉛直方向下側に向いた構造としてもよい。そうすることでRI原料集合体202をその自重で計装管147A外への回収をすることができる。
【0039】
図7は、RI原料集合体の一例を示す模式図である。
図8は、
図7に示すRI原料集合体を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図である。
図7に示す原料ユニット302は、RI原料集合体312と、スペーサ314、316と、を含む。RI原料集合体312は、円柱形状であり、円柱の軸方向が、管(コンジットチューブ148、炉内計装案内管147)の延びる方向と一致する向きで配置される。RI原料集合体312は、移動方向の一方の端部にRI原料集合体312よりも外径の大きいスペーサ314が配置され、他方に同様のスペーサ316が配置される。スペーサ314,316の素材は、計装管の摩耗を抑制するために、計装管よりも柔らかい材質であることが望ましい。
【0040】
図8に示す放射性同位体製造装置200Aは、RI原料を含むRI原料集合体を原料ユニットとする以外は、
図6に示す放射性同位体製造装置200と同様の構成である。放射性同位体製造装置200Aは、複数の原料ユニット302が管の内部で直列に配置される。放射性同位体製造装置200Aは、RI原料集合体312よりも外径の大きいスペーサ314,316が計装管に接しながら進行方向に挿入される。このため、RI原料集合体312の損傷を抑制することができる。
【0041】
また、スペーサ314、316は、磁石であってもよい。この場合、磁石であるスペーサ314、316はRI原料集合体312の端面に固定され、RI原料集合体312と接する面が同じ極となる。つまり、
図7において、スペーサ314の露出している側の面314aと、スペーサ316の露出している側の面316aとが、同じ極、例えばN極でとなり、スペーサ314のRI原料集合体312と接する面314bと、スペーサ316のRI原料集合体312と接する面316bとが同じ極、例えばS極でとなる。なお、スペーサ314、316自体が磁石でなくてもよく、スペーサ314、316の各面に磁石を埋め込んだりすることにより、磁性を持たせてもよい。スペーサ314、316を磁石とすることで、進行方向における前後の面をいずれも同じ極とした磁石を配置した原料ユニット302を直列に並べることで、それぞれの原料ユニット302を磁石314、316の反発力で非接触に維持しつつ、管内を移動させることができる。これにより、原料ユニット302同士が接触して、原料ユニット302が損傷することを抑制できる。また、RI原料集合体302の間に隙間を設けることができる。
【0042】
図9は、RI原料集合体の一例を示す模式図である。
図9に示す放射性同位体製造装置200Bは、RI原料を含むRI原料集合体の形状以外は、
図6に示す放射性同位体製造装置200と同様の構成である。放射性同位体製造装置200Bは、複数のRI原料集合体352を原子炉容器内に搬送する。複数のRI原料集合体352は、球体形状である。なお、RI原料集合体352は、形状が異なるのみで、基本的にRI原料集合体202と同様の構成である。
【0043】
図9に示す放射性同位体製造装置200Bは、RI原料集合体352を球体とすることで、管路内を搬送しやすくできる。また、角部のない球体とすることで、RI原料集合体352同士が接触した場合でも、RI原料が損傷することを抑制できる。
【0044】
図10は、RI原料集合体の一例を示す模式図である。
図11は、本実施形態に係るカプセルの模式的な断面図である。ここで、上記実施形態では、いずれもRI原料集合体をRI原料が露出した構造としたが、これに限定されない。放射性同位体製造装置は、RI原料集合体を着脱可能な機構で、原子炉容器内に移動させる構造の場合、RI原料集合体の構造をRI原料が筐体に収容した構造としてもよい。
【0045】
図10に示すように、カプセルユニット410は、複数のカプセル412を備える。カプセル412は、
図11に示すように、RI原料Mが収納されるケース部420と、ケース部420の端部に取り付けられる接触部422と、有する。カプセルユニット410は、1つのカプセル412の接触部422が、他のカプセル412の接触部422と接触する。
【0046】
図10に示すように、ケース部420は、RI原料Mが収納される収納空間が内部に形成される中空の部材である。ケース部420は、筒部と蓋部とを有する。筒部は、筒状、ここでは円筒状の部材である。筒部の内周面に囲われる空間が、RI原料Mの収納空間となる。蓋部は、筒部の軸方向における一方の端部と他方の端部とに設けられる部材である。蓋部は、筒部の端部に形成される開口を覆うことで、収納空間を閉塞する。蓋部は、本実施形態では円板状の部材であるが、形状はそれに限られず任意であってよい。蓋部は、例えば、表面が筒部の端部に接触した状態で溶接されることで、筒部に対して固定される。この場合例えば、ケース部420の収納空間にRI原料Mを収納した後で、蓋部が筒部に固定されて、収納空間が閉塞される。
【0047】
ケース部420の外径は、カプセル12が挿入されるシンブルチューブ151の内径よりも小さく形成されており、例えば4mm以上5mm以下程度となっている。また、ケース部420のX方向に沿った長さは、例えば50mm以上60mm以下程度となっている。X方向は、ケース部420の軸方向である。なお、ケース部420の外径や長さは、以上の数値範囲に限られず、カプセル412がシンブルチューブ151に適切に挿入可能となるように、計装管147Aのレイアウトに応じて任意に設定されてよい。
【0048】
ケース部420は、例えば、アルミニウム、ケイ素、ステンレス鋼などある程度の強度を有する材料で製造されることが好ましいが、それに限られず、任意の材料で製造されてよい。
【0049】
接触部422は、ケース部420のX方向における端部に取り付けられる部材である。接触部422は、ケース部420に対して固定されている。接触部422は、ケース部420のX方向における一方側の端部と他方側の端部とのそれぞれに取り付けられる。接触部422は、ケース部20に接触する表面から、ケース部420から離れる方向に向かうに従って、外径が小さくなっている。また、接触部422は、先端に向かうに従って外径の減少率が大きくなっている。言い換えれば、接触部422は、X方向において表面と反対側の表面が、放射方向外側に凸となる曲面形状となっており、より具体的には、半球面形状となっている。このように、接触部422は、エッジを有さない曲面形状となっている。ケース部420と接触部422とを別部材として説明したが、一つの部材で形成してもよい。
【0050】
図10及び
図11に示すように、RI原料Mをケース部420に収納することで、露出している場合よりも遮蔽物が増加するが、上記形態の移動機構を用いること、また、カプセル同士を連結しない構造とすることで、連結構造の損傷の発生を抑制することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
10、200 放射性同位体製造装置
12、202、312 RI原料集合体
14 ワイヤ
16 駆動機構
101 原子炉容器
147A 計装管
204 弾性部材
206 押し棒(搬送機構)
208 封止栓
210 回収装置