(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】スプリンクラヘッド
(51)【国際特許分類】
A62C 37/12 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A62C37/12
(21)【出願番号】P 2020192215
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】米山 顕司
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-027929(JP,A)
【文献】特開2007-252745(JP,A)
【文献】実開平05-091714(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱板を有するスプリンクラヘッドであって、
前記感熱板は、外力を受けて
打痕を残すため、又は、外力を受けて前記感熱板を変形させるために下方に突出した突起(ただし、熱気流を送るための偏向穴に形成された突起は除く。)を備えていることを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項2】
感熱板を有するスプリンクラヘッドであって、
前記感熱板は、
外力を受けるために下方に突出した突起と、該突起が外力を受けた際に前記感熱板の変形の起点となる溝部
とを備えていることを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項3】
前記突起は前記感熱板の一部を変形させて形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプリンクラヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプリンクラヘッドに関し、特に火災の熱を受ける感熱板を有するスプリンクラヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラヘッドは、建築物の室内の天井等に、天井面から突出して設けられるため、物が衝突等して外力を受けることが考えられる。
そのため、例えば特許文献1に開示のスプリンクラヘッドのように、バランサーとスライダーの間に複数のボールを介在させることで、感熱板やフレームへの外力を複数のボールに逃がすことで、外力(打撃)によりヘッドが作動するのを防ぐようにしている。
【0003】
このような工夫がされたスプリンクラヘッドは、外力を受けても漏水等の不具合を防ぐことができるが、その外力の大きさによっては、内部部品が変形等して、作動不良となる恐れがある。このため、スプリンクラヘッドに物をぶつけた時には、スプリンクラヘッドを交換するように取扱説明書等に記載されている。
【0004】
物がぶつかることで、感熱板等が変形すれば、スプリンクラヘッドが外力を受けたことが視認でき、交換作業を行うことができる。しかし、例えば、真下から突き上げるように外力が加えられた場合には、感熱板が変形せず、一見しただけでは物がぶつかったか判断できない場合がある。この場合、前述のとおり漏水も発生しないため、スプリンクラヘッドが外力による衝撃を受けたことに気づかれず、作動不良な状態であるにも関わらず交換されない場合が考えられる。
【0005】
そこで、特許文献2には、スプリンクラヘッドの感熱部が外力を受けたことを明示するため、衝撃を受けたときに変色する衝撃シートを感熱部に貼付することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平7-16531号公報
【文献】特開平10-272206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の提案は衝撃シートという別部品を設けるため、製造の手間やコストが増大するという問題がある。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、大きなコスト増とならず、外力による衝撃を受けたことを確実に視認ができるスプリンクラヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るスプリンクラヘッドは、感熱板を有するものであって、前記感熱板は、外力を受けるために下方に突出した突起を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記突起は前記感熱板の一部を変形させて形成されたものであることを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記感熱板は、前記突起が外力を受けた際に前記感熱板の変形の起点となる溝部を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスプリンクラヘッドは、感熱板に外力を受けるために下方に突出した突起を備えていることにより、前記突起に外力を受けると当該突起および/または感熱板が変形して、外力を受けたことが視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るスプリンクラヘッドの側面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係るスプリンクラヘッドの底面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係るスプリンクラヘッドの作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態に係るスプリンクラヘッド1は、
図1に示すように、本体部3と、本体部3に取り付けられたフレーム5と、フレーム5の下端に設けられた感熱板7と、感熱板7等を固定するためのブッシュ9を備えている。
なお、本明細書で方向を示す上下は、スプリンクラヘッド1を天井面等に設置した状態を基準にした方向である。
【0015】
フレーム5の内部には、バランサー、スライダー、複数のボール、皿バネ、ディスクといった一般的なスプリンクラヘッドが有する構成部品を備えているが、本発明の特徴は感熱板7にあるので、これらの各部品の説明は割愛して感熱板7の構成について説明する。
【0016】
感熱板7はスプリンクラヘッド1の下端部に設けられ、火災による熱気流を受けることで昇温して半田に熱を伝達する機能を有している。
感熱板7は通常、金属板をプレス成形することによって形成されている。
【0017】
本実施の形態の感熱板7は、略円形の円形板部7aと、円形板部7aにおける外周部の周方向90度間隔の4カ所から上方に延出する柱状部7bとを備えている。そして、円形板部7aにおける各柱状部7bの下端近傍に下方に突出する突起11が合計4個設けられている。
本実施の形態の突起11は円錐形状をしており、感熱板7のプレス成形時に成形されたものである。
突起11の数は4個に限られず、1個~3個、あるいは5個以上であってもよい。ただ、突起11を設ける趣旨は、感熱板7に真下から外力が作用したときに、外力が感熱板7全体に作用するのではなく、片当たり状態となって感熱板7を変形させるためであるため、突起11の数や配置はかかる趣旨を逸脱しない範囲で設定する必要がある。
なお、本実施の形態では突起11の形状を円錐状としているが、形状はこれに限らず、半球状であったり、峰状であったりしてもよい。
【0018】
突起11は、外力を受けるためのものであり、本実施の形態のブッシュ9のように感熱板7よりも下方に突出している部品がある場合には、このような部品よりも下方に突出させる必要がある。
後述するように、突起11の機能は、スプリンクラヘッド1に外力が作用した履歴を目視で確認できるようにすることであり、そのような機能としては突起11自体に履歴として打痕が残るか、あるいは突起11に作用した外力により感熱板に履歴としてその変形が残ることが必要である。このためには、突起11にはある程度の高さが必要であり、突起11の突出高さ(上記部品がある場合には部品からの突出高さ、該部品がない場合には感熱板7の平坦部からの突出高さ)は1mm以上が好ましい。
【0019】
また、本実施の形態の感熱板7は、円形板部7aにおける突起11の内側に上方に凹むように形成された溝部13を備えている。溝部13は、突起11に外力が作用した際に変形の起点となるものである。
本実施の形態の溝部13は、
図1に示すようにV字状に凹むもので、また
図2に示すように、感熱板7の下面に矩形状に延びるように形成されている。溝部13は突起11と同様に感熱板7を変形させて形成したものであり、感熱板7のプレス成形時に形成することができる。
なお、溝部13の凹みの形状や、溝の延出方向の形状(本例では矩形状)はこれに限定されるものではない。
【0020】
上記のように構成された本実施の形態のスプリンクラヘッド1に外力による衝撃力が加わったときの作用について説明する。
例えば、
図3に示すように、外力が作用していない
図3(a)の状態に対して、外力が真下から上方に向けて作用したとしても、その外力はまず突起11に作用するため外力が片当たり状態となり、感熱板7を変形させる力となる。その結果、
図3(b)に示すように、突起11の近傍の柱状部7bがへしゃげるように変形し、円形板部7aの一部が上方に歪んだ状態になる。特に、本実施の形態では溝部13が設けられているので、溝部13が変形の起点となって、具体的には溝が開くように変形するため、柱状部7bの変形が起こりやすくなっている。
なお、
図3(b)では、感熱板7の左側に外力が作用した場合について示しているが、下方から平らな物が感熱板7の全面に真っすぐぶつかった場合でも、物は各突起11に当たるため、各突起に外力が作用して各溝13が開くようにして感熱板7が変形する。
また、突起11の形状や外力の強さ等によっては、突起11自体が変形することもある。
【0021】
仮に、突起11が無い場合には、スプリンクラヘッド1の真下からの外力はブッシュ9や感熱板7の広い範囲に均一に作用し、感熱板7の変形には至らない場合がある。この場合、前述したように、外力を受けているにも関わらず、そのことが見過ごされる可能性がある。
これに対して、本実施の形態では上述のように感熱板7の変形が誘発され、外力が作用したことが感熱板7の変形によって視認できる。
【0022】
なお、上記の実施の形態では、感熱板7の変形の起点となり、変形を誘発させる溝部13を設けた例を示したが、本発明において溝部13は必須ではない。溝部13が無い場合であっても、突起11を設けることで、外力が作用すれば変形しやすい形状の柱上部7bに変形が生ずる。
【0023】
また、上記の実施の形態の突起11は、感熱板7をプレス成形により形成したものであったが、本発明の突起11はこのような態様のものに限定されず、感熱板7に別途取り付けたものであってもよい。
もっとも、感熱板7は通常プレス成形によって製造されるので、突起11が感熱板7を変形させて形成されたものであれば、プレス成形の際に同時に形成することができ、部材や工程を増やすことがなく製造コストを低減できるので好ましい。
【符号の説明】
【0024】
1 スプリンクラヘッド
3 本体部
5 フレーム
7 感熱板
7a 円形板部
7b 柱状部
9 ブッシュ
11 突起
13 溝部