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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】充電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20240125BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 10/637 20140101ALI20240125BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240125BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240125BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240125BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20240125BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240125BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/04 C
H02J7/00 P
H01M10/48 301
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/637
H01M10/615
H01M10/625
B60L53/14
B60L58/27
B60L58/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020193121
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081897
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】松田 和久
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-044813(JP,A)
【文献】特開2015-168345(JP,A)
【文献】特開2000-023307(JP,A)
【文献】特開2018-007428(JP,A)
【文献】特開2012-191784(JP,A)
【文献】特開2005-341633(JP,A)
【文献】特開2002-125326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H01M10/42-10/48
H01M10/60-10/667
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60R16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された二次電池に対する、車両の外部の電源による充電を制御する充電制御装置であって、
前記充電制御装置の制御部は、
前記二次電池に対する充電を開始する充電開始予定時刻を取得する時刻取得ステップと、
前記充電開始予定時刻における前記二次電池の推定温度を取得する推定温度取得ステップと、
前記推定温度が、前記二次電池に対する充電電流が制限される温度である場合に、前記二次電池の放電または充放電を実行して前記二次電池を昇温させた後に充電を行う昇温充電に要する予測時間を取得する昇温充電時間取得ステップと、
前記推定温度が、前記二次電池に対する充電電流が制限される温度である場合に、制限された充電電流による前記二次電池の充電である制限充電に要する予測時間を取得する制限充電時間取得ステップと、
充電完了予定時刻までの時間が、前記昇温充電に要する予測時間となった際に、前記二次電池の放電または充放電を実行して前記二次電池を昇温させた後、前記二次電池に対する充電を実行する昇温充電制御ステップと、
を実行するように構成され、
前記昇温充電に要する予測時間が、前記制限充電に要する予測時間よりも短い場合に、前記昇温充電制御ステップを実行することを特徴とする、充電制御装置。
【請求項2】
車両に搭載された二次電池に対する、車両の外部の電源による充電を制御する充電制御装置であって、
前記充電制御装置の制御部は、
前記二次電池に対する充電を開始する充電開始予定時刻を取得する時刻取得ステップと、
前記充電開始予定時刻における前記二次電池の推定温度を取得する推定温度取得ステップと、
前記推定温度が、前記二次電池に対する充電電流が制限される温度である場合に、前記二次電池の放電または充放電を実行して前記二次電池を昇温させた後に充電を行う昇温充電に要する予測時間を取得する昇温充電時間取得ステップと、
充電完了予定時刻までの時間が、前記昇温充電に要する予測時間となった際に、前記二次電池の放電または充放電を実行して前記二次電池を昇温させた後、前記二次電池に対する充電を実行する昇温充電制御ステップと、
を実行するように構成され、
前記昇温充電制御ステップにおいて、
前記二次電池の充電量が、放電のみで前記昇温充電を実行可能な充電量である場合には、放電のみによって前記二次電池を昇温させ
前記二次電池の充電量が、放電のみで前記昇温充電を実行可能な充電量でない場合には、充放電によって前記二次電池を昇温させることを特徴とする、充電制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記昇温充電制御ステップにおいて、温度センサによって検出される前記二次電池の温度に基づいて、昇温のための放電または充放電を制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された二次電池の充電を制御する充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)等の車両駆動用電源として広く用いられている。SOC(State Of Charge)が高い状態で二次電池を放置すると、二次電池の劣化が進行する。特許文献1には、タイマー充電モードで二次電池の外部充電を実行する際に、高SOC状態での放置時間短縮という観点から、極力遅い時間帯に外部充電を完了させることが望ましいとの記載がある。また、特許文献2には、高SOC状態で放置した際の二次電池の劣化の程度が温度に応じて異なることから、二次電池の温度に応じてタイマー充電の時刻スケジュールを決定する旨の記載がある。なお、タイマー充電とは、時刻に従って二次電池に対する充電を進行させることを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-107934号公報
【文献】特開2018-102084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低温状態の二次電池に対して大きな電流で充電が行われると、二次電池の性能劣化が生じる場合がある。例えば、二次電池がリチウムイオン電池である場合には、低温状態の二次電池に対する充電電流を大きくすると、負極へのリチウムの析出による劣化等が生じる可能性がある。一方で、低温状態の二次電池に対する充電電流を小さくすると、充電電流が大きい場合に比べて、充電に要する時間が長引いてしまう。その結果、充電完了予定時刻に充電が完了しない不具合、および、高SOC状態で放置されることによる劣化の進行等が生じやすくなる。
【0005】
本開示の典型的な目的は、車両に搭載された二次電池に対して、劣化の進行を抑制しつつ適切にタイマー充電を実行することが可能な充電制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を実現するべく、ここに開示される一態様の充電制御装置は、車両に搭載された二次電池に対する、車両の外部の電源による充電を制御する充電制御装置であって、上記充電制御装置の制御部は、上記二次電池に対する充電を開始する充電開始予定時刻を取得する時刻取得ステップと、上記充電開始予定時刻における上記二次電池の推定温度を取得する推定温度取得ステップと、上記推定温度が、上記二次電池に対する充電電流が制限される温度である場合に、上記二次電池の放電または充放電を実行して上記二次電池を昇温させた後に充電を行う昇温充電に要する予測時間を取得する昇温充電時間取得ステップと、充電完了予定時刻までの時間が、上記昇温充電に要する予測時間となった際に、上記二次電池の放電または充放電を実行して上記二次電池を昇温させた後、上記二次電池に対する充電を実行する昇温充電制御ステップと、を実行する。
【0007】
本開示に係る充電制御装置によると、充電開始予定時刻における二次電池の推定温度が、充電電流が制限される温度である場合には、充電または充放電によって二次電池を昇温させた後に充電を行う昇温充電が、適切なタイミングで実行される。従って、二次電池が低温状態のまま充電を行う場合とは異なり、充電電流を大きくしても二次電池の劣化が進行し難い。また、充電または充放電によって二次電池が昇温されるので、二次電池を昇温させるための構成(例えばヒータ等)を設ける必要もない。よって、二次電池の温度が低い場合でも、劣化の進行を抑制しつつ適切にタイマー充電が実行される。
【0008】
ここに開示される充電制御装置の効果的な一態様では、推定温度が、二次電池に対する充電電流が制限される温度である場合に、制御部は、制限された充電電流による二次電池の充電である制限充電に要する予測時間を取得する制限充電時間取得ステップをさらに実行する。制御部は、昇温充電に要する予測時間が、制限充電に要する予測時間よりも短い場合に、昇温充電制御ステップを実行する。この場合、制限充電および昇温充電のうち、充電に要する予測時間が短い充電方法によって、二次電池の充電が実行される。従って、充電時間が長引くことによる二次電池の劣化が、より適切に抑制される。
【0009】
ここに開示される充電制御装置の効果的な一態様では、制御部は、昇温充電制御ステップにおいて、二次電池の充電量が放電のみで昇温充電を実行可能な充電量である場合には、放電のみによって前記二次電池を昇温させる。前述したように、低温状態の二次電池に対する充電電流を大きくすると、二次電池の性能劣化が生じる場合があるので、二次電池を昇温させるための充放電においても、充電電流を小さく設定せざるを得ない。これに対し、放電のみで昇温充電を実行可能である場合には、大きな電流を放電させることで、短時間で二次電池を昇温させることができる。従って、放電のみで昇温充電を実行可能な場合に、放電のみによって二次電池を昇温させることで、充電時間が長引くことによる二次電池の劣化がより適切に抑制される。
【0010】
ここに開示される充電制御装置の効果的な一態様では、制御部は、昇温充電制御ステップにおいて、温度センサによって検出される二次電池の温度に基づいて、昇温のための放電または充放電を制御する。この場合、検出された実際の二次電池の温度に基づいて、充電電流の大きさ等が制御されるので、劣化がより適切に抑制された状態で二次電池が昇温される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】充電制御装置1の概略構成図である。
図2】充電制御装置1が実行する充電制御処理のフローチャートである。
図3】通常充電、制限充電、および昇温充電の各々に要した充電時間を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、各図における寸法関係は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0013】
本明細書において、「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス一般を指す用語であって、一次電池および二次電池を含む概念である。「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池(すなわち化学電池)の他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(すなわち物理電池)を包含する。以下、二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の充電制御装置を例示して、本開示に係る充電制御装置について詳細に説明する。ただし、本開示に係る充電制御装置を、以下の実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。例えば、リチウムイオン二次電池以外の二次電池(例えば、ニッケル水素電池等)の充放電を制御する充電制御装置に、本開示で例示した技術の少なくとも一部を適用することも可能である。
【0014】
図1を参照して、充電制御装置1を備えた車両の構成の一例について概略的に説明する。前述したように、本実施形態の充電制御装置1が充放電を制御する二次電池2は、リチウムイオン二次電池である。充電制御装置1は、CPU11および記憶装置12を備える。CPU11は、二次電池2の充放電制御等の各種制御を司る。記憶装置12には、閾値等の各種情報、およびプログラム等が記憶されている。充電制御装置1には、各種デバイス(例えば、車両に搭載される電子制御システム(ECU)等)を使用できる。充電制御装置1は、二次電池2に対するタイマー充電を実行することができる。タイマー充電とは、時刻に従って二次電池に対する充電を進行させることを示す。本実施形態では、充電を完了される予定の時刻(充電完了予定時刻)等が予め設定されて、記憶装置12に記憶されている。CPU11は、設定された時刻と現在時刻に応じてタイマー充電を制御する。充電制御装置1は、駆動装置3、充電器4、電圧計5、電流計6、および温度センサ7に接続されている。
【0015】
駆動装置3は、車両が走行するための駆動力を発生させる。詳細には、本実施形態の駆動装置3は、入力装置(例えば、発電機)と、出力装置(例えば、出力先の外部装置)とを備える。入力装置は、車両の制動時に発生する運動エネルギーを電力に変換して、二次電池2に充電電力を供給する。また、出力装置は、二次電池2から供給される放電電力によって、車両を駆動する。
【0016】
充電器4は、受電部9によって受電された電力の電圧を、二次電池2の電圧レベルに変換し、二次電池2へ出力する。充電器4は、例えば、整流器およびインバータ等を備える。受電部9は、外部電源(図示せず)から供給される電力を受ける電力インターフェースである。
【0017】
電圧計5は、二次電池2に並列に接続されており、二次電池2の正負極間の電圧を測定する。電流計6は、二次電池2に直接に接続されており、二次電池2に流れた電流を測定する。温度センサ7は、二次電池2の近傍に設けられており、二次電池2の温度を検出する。
【0018】
図2を参照して、本実施形態の充電制御装置1が実行する充電制御処理について説明する。充電制御装置1のCPU11は、記憶装置12に記憶されたプログラムに従って、図2に例示する充電制御処理を実行する。
【0019】
前述したように、低温状態の二次電池2に対して大きな電流で充電が行われると、リチウムの析出等に起因する二次電池2の性能劣化が生じる場合がある。また、小さい電流で二次電池2に対する充電が行われる場合にも、充電時間が過度に長引くと、高SOC状態で放置されることによる二次電池2の劣化が生じる場合がある。本実施形態の充電制御処理では、充電開始時における二次電池2の状態に応じて、二次電池2に対する適切な充電方法が選択される。
【0020】
本実施形態の充電制御処理で用いられるタイマー充電の方法には、通常充電、制限充電、および昇温充電がある。通常充電は、充電時の二次電池2の温度が、充電電流の大きさを制限する必要が無い温度(本実施形態では、充電電流の大きさを制限する閾値よりも高い温度)である場合に実行される充電方法である。通常充電中の充電電流は、制限充電中の充電電流よりも大きい。制限充電は、充電時の二次電池2の温度が、充電電流の大きさを制限する必要がある温度(本実施形態では、充電電流の大きさを制限する閾値以下の温度)である場合に実行される充電方法である。制限充電中の充電電流は、通常充電中の充電電流よりも小さい。昇温充電は、二次電池2の放電または充放電を行って二次電池2を昇温させた後に、二次電池2に対する充電を実行する充電方法である。昇温充電によると、制限充電による充電電流よりも大きな電流で充電を行うことができる。以下、処理の詳細について説明する。
【0021】
まず、CPU11は、昇温(時短)モードが設定されているか否かを判断する(S1)。本実施形態では、ユーザは、二次電池2の状態に応じて昇温充電を実行する昇温(時短)モードと、二次電池2の状態に関わらず昇温充電を実行しない(つまり、通常充電または制限充電によって充電を行う)昇温非実行モードのいずれかを、予め設定することができる。昇温(時短)モードが設定されていなければ(S1:NO)、処理はそのままS19へ移行し、通常充電または制限充電によるタイマー充電が実行される(S19,S20)。
【0022】
昇温(時短)モードが設定されている場合には(S1:YES)、CPU11は、その時点で温度センサ7によって検出された二次電池2の温度を取得する(S2)。次いで、CPU11は、通常充電によって二次電池2のタイマー充電を実行すると仮定した場合の充電開始予定時刻を取得する(S3)。充電開始予定時刻は、例えば、予め設定されている充電完了予定時刻、通常充電中における充電電流の値、および、充電が行われる前の二次電池2のSOC等に基づいて算出されてもよい。二次電池2のSOCは、電圧計5によって測定された二次電池2の電圧に基づいて、公知の方法で算出されてもよい。
【0023】
次いで、CPU11は、S3で取得された充電開始予定時刻における二次電池2の電池温度を推定する(S4)。二次電池2の電池温度の推定方法は、適宜選択できる。例えば、CPU11は、時刻tで取得された二次電池2の温度(Tb_t)、充電開始予定時刻における推定環境温度(α)、および、時刻tから充電開始予定時刻までの時間(tw)を、以下の(式1)に当てはめることで、充電開始予定時刻における二次電池2の電池温度(Tb_es(tn+1))を推定することができる。なお、Dは規定の定数である。この方法は、特開2018-7428号公報等に開示されている。
(式1)・・・Tb_es(tn+1)=(Tb_t-α)e-D/tw+α
【0024】
次いで、S4で推定された充電開始予定時刻の電池温度が、電流制限される温度(本実施形態では、閾値以下の温度)であるか否かが判断される(S5)。電流制限される温度でなければ(S5:NO)。通常充電が実行されても二次電池2は劣化し難いので、処理はそのままS19へ移行し、通常充電によるタイマー充電が実行される(S19,S20)。
【0025】
充電開始予定時刻の電池温度が、電流制限される温度であれば(S5:YES)、制限充電に要する予測時間Aが演算される(S7)。制限充電に要する予測時間Aは、例えば、制限充電中における充電電流の値、および、充電が行われる前の二次電池2のSOC等に基づいて算出されてもよい。
【0026】
次いで、CPU11は、昇温充電を行う場合の昇温量および昇温時間を演算する(S8)。S8で算出される昇温量は、昇温充電において、二次電池2に対する充電電流の供給を開始させるまでの間に二次電池2を昇温させることが必要な温度を示す。
【0027】
S8における昇温量および昇温時間の演算方法は、適宜選択できる。一例として、本実施形態では、昇温充電に要する予測時間が最も短くなる場合の昇温量が演算される。詳細には、本実施形態のS8では、CPU11は、下記の(数1)を用いて、放電による単位時間当たりの二次電池2の昇温量を算出し、昇温後の二次電池2の温度を算出する。次いで、CPU11は、昇温後の二次電池2の温度に基づいて、昇温後の二次電池2の抵抗を取得し、取得した抵抗と(数1)を用いて、単位時間当たりの二次電池2の昇温量および昇温後の温度を再度算出する。算出される二次電池2の温度が目標温度に到達するまで、以上の処理が繰り返される。その結果、昇温量および昇温時間の累積値が、充電電流の供給を開始させるまでの昇温量および昇温時間となる。なお、(数1)に代入される抵抗の初期値は、充電開始予定時刻における二次電池2の推定温度に基づいて設定される。二次電池2の抵抗値は、例えば、二次電池2の温度と抵抗が関連付けられたマップが参照されることで取得されてもよい。また、昇温量および昇温時間を算出する際の単位時間を短くする程、推定制度は向上する。
【数1】
【0028】
また、CPU11は、二次電池2の容量に基づいて、二次電池2の温度を放電のみによって目標温度に昇温できるか否かを判断する(S10)。放電のみでは目標温度に昇温できず、充放電が必要である場合には(S10:NO)、CPU11は、充電による昇温量よび昇温時間も考慮したうえで、二次電池2の昇温量および昇温時間を演算する(S11)。
【0029】
次いで、CPU11は、S8~S11で算出された結果に基づいて、昇温充電に要する予測時間Bを算出する(S12)。本実施形態では、CPU11は、二次電池2の温度を目標温度に到達させた際に放電によって消費されていると予測される容量を算出し、消費される容量を考慮したうえで、二次電池2に対する充電量を算出する。CPU11は、目標温度に昇温させた二次電池2に対して供給することが可能な充電電流と、(数1)とを用いて、充電中における単位時間当たりの二次電池2の昇温量を算出する。CPU11は、二次電池2の温度、抵抗、および充電電流を経時変化させながら、必要な充電量が充電されるまでの充電時間を算出することで、昇温充電に要する予測時間Bを算出する。なお、本実施形態では、CPU11は、二次電池2の目標温度を複数設定し、各々の目標温度についてS8~S12の演算を行うことで、最も短くなると予想される昇温時間および予測時間Bを算出する。
【0030】
ただし、昇温充電に要する予測時間Bの算出方法を変更することも可能である。例えば、温度、抵抗、通電時間、および電流を変更しつつ、二次電池2と同種の電池に対する昇温充電が複数回実行されることで、各々の昇温充電に実際に要した時間が事前に計測されていてもよい。計測された充電時間と、充電時の各種条件との関係に基づいて、充電時の各種条件から予測時間Bを取得するためのアルゴリズム(例えばテーブル等)が作成されていてもよい。CPU11は、各種条件をアルゴリズムに当てはめることで、予測時間Bを取得してもよい。
【0031】
次いで、CPU11は、制限充電に要する予測時間Aが、昇温充電に要する予測時間Bよりも長いか否かを判断する(S14)。制限充電に要する予測時間Aが、昇温充電に要する予測時間B以下である場合には(S14:NO)、二次電池2を昇温させずに制限充電を行った方が、二次電池2の劣化は進行し難い。従って、処理はS19,S20へ移行し、制限充電によるタイマー充電が実行される。
【0032】
制限充電に要する予測時間Aが、昇温充電に要する予測時間Bよりも長い場合には(S14:YES)、昇温充電が実行される(S15~S17,S20)。詳細には、CPU11は、充電完了予定時刻までの時間が、S8~S12で算出された予測時間Bとなる時間を、昇温開始時間として設定する(S15)。
【0033】
次いで、CPU11は、昇温開始時間まで待機した後(S16)、二次電池2の放電または充放電を実行することで、二次電池2を昇温させる(S17)。なお、S17の処理では、二次電池2の充電量が、放電のみで二次電池2の温度を目標温度に昇温させることが可能な充電量(つまり、放電のみで昇温充電を実行可能な充電量)である場合には、放電のみによって(つまり、充電を伴わずに)二次電池2が昇温される。その結果、昇温のために充電を伴う場合に比べて、昇温充電に要する時間が短くなる。また、S17の処理では、温度センサ7によって実際に検出される二次電池2の温度に基づいて、昇温のための放電または充放電が制御される。従って、過度な昇温や、昇温の不足等が生じにくいので、より適切に昇温充電が実行される。その後、二次電池2の実際の温度に応じた充電電流で、二次電池2に対する充電が実行される(S20)。
【0034】
図3を参照して、昇温充電による効果を示すための比較試験の結果について説明する。今回の試験では、二次電池2の温度以外の条件(SOC等)を同一とし、充電開始時の温度のみを変更したうえで、通常充電、制限充電、または昇温充電を二次電池2に対して実行し、各々の充電に要した充電時間を計測した。詳細には、25℃の二次電池2に対しては、充電電流を制限する必要が無いので、通常充電を実行した。その結果、充電時間は1.00時間であった。また、0℃、-10℃、-25℃の二次電池2に対しては、制限充電および昇温充電の両方を実行した。その結果、図3に示すように、二次電池2の温度に関わらず、昇温充電の充電時間は、制限充電の充電時間よりも短くなった。以上の結果より、昇温充電を行うことで、制限充電を行う場合に比べて充電時間が短縮され、二次電池2の劣化の進行が抑制され得ることが分かる。また、二次電池2の温度が低い程、昇温充電によって充電時間が短縮される程度が大きくなることが分かる。
【0035】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 充電制御装置
2 二次電池
5 電圧計
7 温度センサ

図1
図2
図3