(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】下部端栓および燃料棒
(51)【国際特許分類】
G21C 3/10 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G21C3/10 100
(21)【出願番号】P 2020203981
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 望
(72)【発明者】
【氏名】中里 道
(72)【発明者】
【氏名】家山 晃一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 洋
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 寛和
(72)【発明者】
【氏名】猪又 慎二郎
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-055793(JP,A)
【文献】特開2001-183483(JP,A)
【文献】特開2006-184174(JP,A)
【文献】米国特許第04781884(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/00-3/64,
15/00-15/28,
21/00-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された下部炉心支持板と上部炉心支持板との間に配置され、前記下部炉心支持板の上面に下端が直接置かれ、上端と前記上部炉心支持板との間に間隔が形成される個々の燃料棒
における前記下端に固定され
る下部端栓であって、
円柱形状の平坦な底面から側面に通じ
て形成された切欠を有し、前記底面が前記下部炉心支持板の前記上面に当接した状態で前記切欠が前記貫通孔に対して上下方向に連通する、下部端栓。
【請求項2】
前記
切欠は、周方向に複数配置されている、請求項
1に記載の下部端栓。
【請求項3】
前記
切欠は、周方向の4個所に形成さ
れ、前記底面は、底面視で十字形状に形成されている、請求項
1に記載の下部端栓。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の下部端栓が下端に固定され、貫通孔が形成された下部炉心支持板の上面に直接置かれて支持される、燃料棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、下部端栓および燃料棒に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、炉心を構成する燃料集合体として、複数の燃料棒が、上部ノズルと下部ノズルとの間に配置され、グリッドにより保持されている構成が示されている。上部ノズルおよび下部ノズルは、燃料集合体の両端部に配置され、冷却材を流すように構成されている。下部ノズルは、原子炉容器内に設けられた下部炉心支持板の上に位置決めして置かれる。上部ノズルは、原子炉容器内に設けられた上部炉心支持板の下に位置決めされると共に上部炉心板に当接する押さえばねを有して燃料集合体を下部炉心板に押さえつけるように構成されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、燃料集合体として、複数の燃料棒が、上下間に亘って複数箇所に配置されたスペーサグリッドによって互いに間隔をあけて正方格子状配列の束として支持されると共に、上部タイプレートおよび下部タイプレートによって上下両端が支持され、角筒状のチャンネルボックス内に収容されて構成が示されている。そして、燃料棒は、下端に設けられた下部端栓が、下部タイプレートの挿入孔に挿入される。下部タイプレートは、挿入孔の周辺に形成されている冷却材流路孔に栓状部材が一体に設けられている。栓状部材は、冷却材流路孔内に位置する断面スポーク状の仕切部材と、冷却材流路孔の入口あるいは出口から間隔を開けて外部に位置して冷却材流路孔の直径以上の外径を有する頭部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-123274号公報
【文献】特開2001-133574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、炉心を小型化することが望まれ、この際に燃料棒への冷却材の流路を確保することが必要となる。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、冷却材の流路を確保することのできる下部端栓および燃料棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る下部端栓は、燃料棒の下端に固定され、底面から側面に通じる連通部が形成されている。
【0008】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る燃料棒は、上記の下部端栓が下端に固定され、貫通孔が形成された下部炉心支持板の上面に直接置かれて支持される。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、冷却材の流路を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る原子炉の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る炉内の模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る炉心の一部拡大断面模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る炉心の一部拡大断面模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る炉心の断面模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る炉心における制御部材の一部裁断模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る炉心の拡大模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る炉心における燃料棒の拡大底面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る炉心における燃料棒の拡大底面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る炉心における燃料棒の拡大底面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る炉心の他の例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
【0013】
実施形態の原子炉1は、原子炉容器2と、炉心支持構造物3と、制御部材駆動機構4と、蒸気発生器5と、一次冷却材ポンプ6と、を含み構成されている。
【0014】
原子炉容器2は、炉心支持構造物3と、制御部材駆動機構4と、蒸気発生器5と、一次冷却材ポンプ6と、を全て内包するものである。原子炉容器2は、圧力容器であり、上方が開口した容器本体2Aと、容器本体2Aの上部の開口を塞ぐ容器蓋2Bと、により構成されている。容器蓋2Bは、容器本体2Aに対して着脱可能に設けられている。容器本体2Aは、下方が閉塞された円筒形状に形成されている。この原子炉容器2は、内部に一次冷却材が満たされる。一次冷却材は、例えば、軽水からなる。
【0015】
炉心支持構造物3は、炉心7を支持するため、炉心槽3Aと、上部炉心支持板3Bと、下部炉心支持板3Cと、を有する。炉心槽3Aは、上下方向に延びる円筒形状に形成されている。上部炉心支持板3Bは、炉心槽3Aの下部に設けられ、炉心7が構成される上方に配置されている。下部炉心支持板3Cは、炉心槽3Aの下端に設けられ、炉心7が構成される下方に配置されている。なお、上部炉心支持板3Bに替えて上部炉心板としてもよい。また、下部炉心支持板3Cに替えて下部炉心板としてもよい。この炉心支持構造物3は、原子炉容器2の中心に配置されている。
【0016】
制御部材駆動機構4は、後述する制御部材10を炉心7に対して挿入したり抜き出したりするものである。本実施形態の制御部材10は、炉心7の複数位置に上から挿入される。このため制御部材駆動機構4は、各制御部材10に対応し、炉心7の上方であって原子炉容器2の内部における最上部に至り配置されている。なお、制御部材駆動機構4は、炉心7への挿入方向に制御部材10を付勢する付勢装置が設けられており、クラッチ機構などにより制御部材10との駆動が絶たれた場合に自動的に炉心7に挿入される。このため、例えば、炉心7の炉心温度が設定する温度以上となった緊急時に、自動的に制御部材10が炉心7に挿入されて炉心7の燃料棒8の反応度を下げることができる。
【0017】
蒸気発生器5は、原子炉容器2の内部に配置され、炉心槽3Aの周りを囲むように、例えば、伝熱管がヘリカル型に構成されている。蒸気発生器5は、伝熱管の内部に、原子炉容器2の外部から二次冷却材が供給される。蒸気発生器5は、一次冷却材と熱交換して二次冷却水を蒸発させて蒸気を発生させる。二次冷却材は、例えば、純水からなる。図には明示しないが、この蒸気発生器5は、管台を介して原子炉容器2の外部に通じている。管台は、蒸気発生器5で発生した蒸気を原子炉容器2の外部に送るものと、原子炉容器2の外部から蒸気発生器5に二次冷却材を供給するものと、がある。原子炉容器2の外部に蒸気を送る管台は、蒸気タービンに連結されている。蒸気タービンは、蒸気発生器5で発生した蒸気により駆動し、発電機で発電を行う。また、蒸気タービンは、復水器を有し、駆動に供した二次冷却水を冷却して凝縮させ、低圧の飽和液に戻す。この復水器は、蒸気発生器5に二次冷却材を供給する管台に連結されている。
【0018】
一次冷却材ポンプ6は、炉心槽3Aから蒸気発生器5へ一次冷却材を導く。一次冷却材ポンプ6は、
図1に示すように、一次冷却材を、炉心槽3Aの上方において炉心槽3Aの内部から外部に送り、炉心槽3Aの外部において下方に送り、炉心槽3Aを下部炉心支持板3Cおよび上部炉心支持板3Bを経て下方から上方に通過するように循環させる。一次冷却材は、炉心槽3Aを下方から上方に通過する過程で加熱され、炉心槽3Aの外部において蒸気発生器5の二次冷却材と熱交換をし、再び炉心槽3Aを下方から上方に通過する。炉心槽3Aは、上方において一次冷却材を外部に送るため、貫通孔3Aaが形成されている(
図2参照)。
【0019】
図2は、実施形態に係る炉内を示す模式図である。
図3は、実施形態に係る炉心の一部拡大断面模式図である。
図4は、実施形態に係る炉心の一部拡大断面模式図である。
図5は、実施形態に係る炉心の断面模式図である。
図6は、実施形態に係る炉心における制御部材の一部裁断模式図である。
【0020】
上述した原子炉1に適用される炉心7は、
図2に示すように、燃料棒8と、グリッド9と、制御部材10と、制御部材案内管11と、中性子反射体12と、を含む。
【0021】
燃料棒8は、詳細を後述するが、上下方向に延びる棒状に構成されている。燃料棒8は、
図2に示すように、炉心槽3Aの内部において、上部炉心支持板3Bと、下部炉心支持板3Cとの間で上下方向に延びる形態で複数設けられて炉心7を構成する。また、燃料棒8は、
図3に示すように、個々が独立しており、上から視た平面視において、三角格子状に配置されている。三角格子状は、平面視で60度の格子であり、燃料棒8は、当該三角格子状の交点に位置する。燃料棒8は、炉心槽3Aの内部に設けられて炉心7を構成する全てが個々に独立して三角格子状に配置されている。なお、実施形態の燃料棒8は、炉心槽3Aの内部に設けられて炉心7を構成する全てが個々に独立して三角格子状に配置されているが、炉心槽3Aの内部に設けられて炉心7を構成する全てが個々に独立して格子状に配置されていることを排除しない。
【0022】
グリッド9は、
図2に示すように、上下方向の複数個所(実施形態では上下方向の2個所)に設けられている。グリッド9は、
図4に示すように、個々の燃料棒8を上から挿入可能なセル9Aを有している。セル9Aは、挿入された各燃料棒8の間に隙間9Aaを設け、当該隙間9Aaに炉心槽3Aを下方から上方に通過する一次冷却材が通過できるようにする。グリッド9は、セル9Aに燃料棒8を保持する構成は有しておらず、セル9Aに燃料棒8を自由な形態で挿入するのみである。セル9Aは、上から視た平面視において、6角形状に形成されており、当該6角形状のセル9Aが複数隣接して組み合わされることで、グリッド9全体がハニカム構造に構成されている。従って、グリッド9は、三角格子状に配置された個々の燃料棒8の間に隙間9Aaを設けることができる。
【0023】
制御部材10は、炉心槽3Aの内部において、燃料棒8に沿って上下方向に挿入または引き抜き可能に設けられている。制御部材10は、燃料棒8に沿って挿入された形態で、燃料棒8の長さに合わせて上部炉心支持板3Bと下部炉心支持板3Cとの間に配置される。
図2から
図5に示すように、炉心7において制御部材10を配置する個所には、燃料棒8は配置されない。制御部材10は、上述した制御部材駆動機構4によって、炉心7に対して挿入したり抜き出したりされる。制御部材10は、中性子吸収体により形成されている。中性子吸収体は、例えば、ボロンカーバイト(炭化ホウ素:B
4C)を用いることができる。中性子吸収体からなる制御部材10は、挿入により燃料棒8に対して接近し、引き抜きにより燃料棒8に対して離隔することで炉心7を構成する燃料棒8の反応度を制御でき、炉心7の炉心温度を制御できる。
【0024】
制御部材10は、
図3および
図5に示すように、燃料棒8の三角格子状に沿う板体10Aとして形成されている。制御部材10は、挿入方向から視た平面視で、板体10Aを組み合わせた三等方配置板形状に形成されている。即ち、制御部材10は、平面視で120°間隔で3つの板体10Aが組み合わせされた三等方配置板形状に形成され、各板体10Aが燃料棒8の三角格子状に沿って配置される。三等方配置板形状に形成された制御部材10は、所定の燃料棒8の間に配置される。制御部材10は、燃料棒8で構成される炉心7において、
図5に示すように複数が等間隔で均等に配置されることで、各燃料棒8の反応度を一定に制御できる。なお、図には明示しないが、例えば、燃料棒8が格子状に配置される場合、制御部材10は、燃料棒8の格子状に沿う板体10Aとして形成され、挿入方向から視た平面視で、当該板体10Aを組み合わせた十字形状に形成される。また、制御部材10は、三等方配置板形状や十字形状に限らず、板体10Aの構成のみで一文字状に形成されて燃料棒8に沿って上下方向に挿入または引き抜き可能に設けられていてもよい。
【0025】
制御部材10は、
図3および
図6に示すように、板体10Aが制御材10Aaと、制御材10Aaを被覆する被覆材10Abとを有する。制御材10Aaは、中性子吸収体により形成されている。制御材10Aaは、矩形状のブロックとして複数に分割して形成され、各ブロックが格子10Acにより板体10Aの形状をなすように並べて配置されている、制御材10Aaを複数のブロックで構成することで、製造を容易にできる。被覆材10Abは、格子10Acと共に各制御材10Aaを纏めて被覆している。即ち、被覆材10Abは、板体10A(制御部材10)の外郭をなす。被覆材10Abは、例えば、純鉄やステンレス鋼からなる。
【0026】
制御部材案内管11は、制御部材10の炉心7への挿入や抜き出しの移動を案内する。制御部材案内管11は、
図2および
図3に示すように、制御部材10の平面視の形状の外形に合わせて筒状に形成されている。制御部材案内管11は、上部炉心支持板3Bと下部炉心支持板3Cとの間に亘って配置される。制御部材案内管11は、
図4に示すように、グリッド9と溶接などで接合されている。この制御部材案内管11は、可燃性毒物である例えば、酸化エルビウム(Er
2O
3)、酸化ガドリニウム(Gd
2O
3)、炭化ホウ素(B
4C)が添加されている。
【0027】
中性子反射体12は、炉心7の外周に配置されて各燃料棒8の周りを囲むように筒状に設けられている。中性子反射体12は、反射材12Aと、補強材12Bと、を含む。反射材12Aは、中性子反射体12の筒状の内側に配置された内筒として構成されている。反射材12Aは、ベリリウム(Be)を含んだ化合物である酸化ベリリウム(BeO)や、アルミニウムを含んだ化合物である酸化アルミニウム(Al2O3)や、マグネシウム(Mg)を含んだ化合物である酸化マグネシウム(MgO)を含む。補強材12Bは、反射材12Aの外周に設けられて、中性子反射体12の筒状の外側に配置された外筒として構成されている。なお、中性子反射体12は、反射材12Aのみの構成であってもよい。
【0028】
図7は、実施形態に係る炉心の拡大模式図である。
図8は、実施形態に係る炉心における燃料棒の拡大底面図である。
図9は、実施形態に係る炉心における燃料棒の拡大底面図である。
図10は、実施形態に係る炉心における燃料棒の拡大底面図である。
【0029】
図7から
図10を参照して燃料棒8の詳細について説明する。
【0030】
燃料棒8は、上述したように、上下方向に延びる棒状に構成されている。燃料棒8は、
図7に示すように、核燃料8Aと、筒部材8Bと、上部端栓8Cと、下部端栓8Dと、弾性部材8Eと、を有する。
【0031】
核燃料8Aは、核燃料物質であるウランを含む。核燃料8Aは、円柱形状をなすペレットをなし、1本の燃料棒8において複数設けられている。
【0032】
筒部材8Bは、複数のペレットをなす核燃料8Aを上下方向に沿って複数収納するように筒形状に形成されている。
【0033】
上部端栓8Cは、略円柱形状に形成され筒部材8Bの上端に固定されて、筒部材8Bの筒形状の上端の開口を閉塞する。従って、上部端栓8Cは、燃料棒8の上端を構成する。
【0034】
下部端栓8Dは、略円柱形状に形成され筒部材8Bの下端に固定されて、筒部材8Bの筒形状の下端の開口を閉塞する。従って、下部端栓8Dは、燃料棒8の下端を構成する。
【0035】
弾性部材8Eは、筒部材8Bの内部において、最上位置の核燃料8Aと上部端栓8Cとの間に設けられ、核燃料8Aを筒部材8Bの下端側である下部端栓8Dに向けて弾性力により付勢する。従って、筒部材8Bの内部に収納された複数の核燃料8Aは、弾性部材8Eによって下部端栓8Dに向けて押し付けられ上下方向への移動を規制されて支持される。
【0036】
この燃料棒8は、炉心槽3Aの下端に下部炉心支持板3Cが取り付けられ、炉心槽3Aの内部にグリッド9、制御部材案内管11および中性子反射体12が配置された状態で、グリッド9のセル9Aに上方から挿入される。燃料棒8は、下端を構成する下部端栓8Dが下部炉心支持板3Cの上面3Cbの平坦部に直接置かれる形態で支持される。下部炉心支持板3Cには、上下方向に貫通する貫通孔3Caが形成されているが、燃料棒8は、貫通孔3Caを通過することなく、下部炉心支持板3Cの上面3Cbの平坦部に直接置かれる。燃料棒8は、少なくとも下部端栓8Dの外径が貫通孔3Caの内径よりも大きく形成されていることで貫通孔3Caを通過しない。または、燃料棒8は、グリッド9のセル9Aに挿入されて水平方向に移動が抑制されることで貫通孔3Caの位置を避けて貫通孔3Caを通過しない。燃料棒8の上方には上部炉心支持板3Bを配置する。上部炉心支持板3Bには、上下方向に貫通する貫通孔3Baが形成されているが、燃料棒8は、貫通孔3Baを通過することなく、上部炉心支持板3Bと下部炉心支持板3Cとの間に配置される。燃料棒8は、その上端を構成する上部端栓8Cと上部炉心支持板3Bとの間に間隔が形成される。燃料棒8は、少なくとも上部端栓8Cの外径が貫通孔3Baの内径よりも大きく形成されていることで貫通孔3Baを通過しない。または、燃料棒8は、グリッド9のセル9Aに挿入されて水平方向に移動が抑制されることで貫通孔3Baの位置を避けて貫通孔3Baを通過しない。上部炉心支持板3Bの貫通孔3Baおよび下部炉心支持板3Cの貫通孔3Caは、
図7に矢印で示すように、燃料棒8を配置した炉心7の内部に一次冷却材を通過させる。このようにして炉心7が構成される。また、
図2に示すように制御部材駆動機構4が設置される。制御部材駆動機構4は、支持部材20により炉心槽3Aの上方位置にて支持される。
【0037】
ここで、燃料棒8の下端を構成する下部端栓8Dは、円柱形状に形成されていることから、底面8Daが平坦であり、側面8Dbが環状に形成されている。
図7から
図10に示すように、連通部としての切欠8Dcが形成されている。切欠8Dcは、下部端栓8Dの底面8Daから側面8Dbに通じて形成されている。切欠8Dcは、筒部材8Bの内部には通じない。切欠8Dcは、下部端栓8Dの底面8Daから側面8Dbに向かって外側に広がるようにテーパ状に形成されている。切欠8Dcは、燃料棒8が下部炉心支持板3Cの上に直接置かれる構成において、下部端栓8Dの底面8Daから側面8Dbを下部炉心支持板3Cの貫通孔3Caに通じさせる。従って、
図7に矢印で示すように、一次冷却材は、下部炉心支持板3Cの下側から貫通孔3Caを介して下部炉心支持板3Cを通過し、かつ切欠8Dcを介して隣接する燃料棒8の隙間9Aaに導かれる。そして、燃料棒8の隙間9Aaに導かれた一次冷却材は、上部炉心支持板3Bの貫通孔3Baを介して上部炉心支持板3Bを通過し炉心7の上方に送られる。
【0038】
実施形態において、切欠8Dcは、下部端栓8Dの周方向の複数個所に配置されている。
図7および
図8に示す下部端栓8Dの切欠8Dcは、下部端栓8Dの周方向の4個所に形成され、下部端栓8Dの底面8Daの平坦部が底面視で十字形状に形成されている。従って、
図7および
図8に示す下部端栓8Dは、下部炉心支持板3Cの貫通孔3Caが平面視で格子状に配置され、かつ燃料棒8を平面視で格子状に配置した場合に、底面8Daが下部炉心支持板3Cの上面3Cbの平坦部に当接して置かれ、切欠8Dcが4個所の貫通孔3Caに対して上下方向に連通するように構成できる。また、
図9に示す下部端栓8Dの切欠8Dcは、下部端栓8Dの周方向の2個所に形成され、下部端栓8Dの底面8Daの平坦部が底面視で一文字形状に形成されている。従って、
図9に示す下部端栓8Dは、下部炉心支持板3Cの貫通孔3Caが平面視で格子状に配置され、かつ燃料棒8を平面視で格子状に配置した場合に、底面8Daが下部炉心支持板3Cの上面3Cbの平坦部に当接して置かれ、切欠8Dcが4個所の貫通孔3Caに対して上下方向に連通するように構成できる。また、
図10に示す下部端栓8Dの切欠8Dcは、下部端栓8Dの周方向の3個所に形成され、下部端栓8Dの底面8Daの平坦部が底面視で三等方配置板形状に形成されている。従って、
図10に示す下部端栓8Dは、下部炉心支持板3Cの貫通孔3Caが平面視で三角格子状に配置し、かつ燃料棒8を平面視で三角格子状に配置した場合に、底面8Daが下部炉心支持板3Cの上面3Cbの平坦部に当接して置かれ、切欠8Dcが3個所の貫通孔3Caに対して上下方向に連通するように構成できる。なお、連通部として、上記切欠8Dcの他、図には明示しないが、下部端栓8Dの底面8Daから側面8Dbに通じて形成される貫通孔であってもよい。
【0039】
図11は、実施形態に係る炉心の他の例の断面模式図である。
【0040】
図5に示す炉心7は、制御部材10が平面視で三等方配置板形状に形成されているが、
図11示す炉心7は、制御部材10’が平面視で円形状に形成されている。制御部材10’は、上下方向に延びる円柱形状に形成され、図には明示しないが、円柱形状に分割された制御材が被覆材で纏めて被覆されている。制御部材10’は、所定の燃料棒8の間に配置される。制御部材10’は、燃料棒8で構成される炉心7において、
図11に示すように複数が等間隔で均等に配置されることで、各燃料棒8の反応度を一定に制御できる。また、制御部材10’は、図には明示しないが、上下方向に延びる円筒形状の制御部材案内管に挿入または抜き出しできるように構成されている。この制御部材案内管は、平面視で三角格子状や格子状に配置された燃料棒8を配置しない部分に設けられてグリッド9に溶接などで接合される。なお、
図11に示す制御部材10’は、1本の燃料棒8よりも太い構成としているが、1本の燃料棒8と同等の太さとしてよい。
【0041】
上述したように、実施形態の炉心構造は、炉心7の全ての燃料棒8が独立して三角格子状に配置されている。
【0042】
従って、実施形態の炉心構造によれば、燃料棒8を三角格子状の配置としたことにより、燃料集合体を用いた場合と比較して燃料棒8が稠密に構成される。このため、燃料集合体を用いた炉心と比較して、円柱炉心と炉心槽3Aの余分な隙間を減らし、燃料装荷量を増加でき、かつ炉心からの中性子の漏えい量を低減できる。この結果、実施形態の炉心構造によれば、核燃料の充填率を向上させ、燃料装荷量の最大化を図ることができ、ひいては炉心7の小型化および炉心7の長寿命化を図ることができる。
【0043】
ここで、燃料棒8を稠密に配置することで、炉心小型化と炉心長寿命化を図ることができるが、燃料棒8を近づけ過ぎるとボイド反応度(void reactivity)が正になるため、ボイド反応度を負にできる距離で燃料棒8を配置する。ボイド反応度は、炉心の内部において、一次冷却材の沸騰その他の原因によるボイド(気泡)の発生あるいはボイド量の変化を通じて生じる反応度をいう。
【0044】
また、実施形態の炉心構造では、所定の燃料棒8の間に配置された制御部材案内管11と、制御部材案内管11に挿入される制御部材10と、を備え、制御部材10は、燃料棒8の三角格子状の配置に沿う板体10Aとして形成され、制御部材案内管11は、板体10Aとした制御部材10を挿入可能に燃料棒8の三角格子状の配置に沿って設けられている。
【0045】
従って、実施形態の炉心構造によれば、制御部材10および制御部材案内管11を三角格子状配置の燃料棒8と共存性を図ることができる。具体的には、三角格子状配置の燃料棒8に対して燃料棒8の排除領域の最小化を図り、燃料装荷量の増加に寄与できる。この結果、実施形態の炉心構造によれば、燃料棒8の三角格子状配置との親和性を向上でき、燃料構造強度の増加を図れる。例えば、
図11に示すように円柱形状の制御部材10’は、三角格子状配置の燃料棒8に対して燃料棒8の排除領域の最小化が図れず、燃料棒8の三角格子状配置との親和性が低い。また、制御部材10を板体10Aとして形成することで、制御部材10の表面積を大きく確保でき、中性子吸収能力が高くなり制御部材10の価値が高まる。例えば、表面積を大きく確保する構成として、
図11に示すように円柱形状の制御部材10’が考えられるが、自己遮へい効果により円柱形状の内部は中性子の吸収が効き難くなる。これに対し、板体10Aとした制御部材10であれば、表面から内部への厚さを薄くしつつ、表面積を大きくでき中性子吸収能力を確保できる。この結果、実施形態の炉心構造によれば、炉停止能力を確保し、制御部材10の数を増加させず制御部材駆動機構4の数を低減できる構造成立性を両立できる。実施形態の炉心構造において、炉停止能力は、低温零出力時において全制御部材10の挿入により所定の未臨界度を達成する。炉停止能力を確保するには、制御部材10の数を増加させる必要があり、炉心7の大型化に繋がるが、実施形態の炉心構造によれば、炉停止能力を確保し、制御部材10の数を増加させず制御部材駆動機構4の数を低減でき、炉心7の小型化に寄与できる。
【0046】
また、実施形態の炉心構造では、制御部材10は、挿入方向から視て板体10Aを組み合わせた三等方配置板形状に形成されている。
【0047】
実施形態の炉心構造によれば、三等方配置板形状の制御部材10により燃料棒8の三角格子状配置との親和性をより向上でき、燃料構造強度の増加をより図れる。
【0048】
また、実施形態の炉心構造では、制御部材10は、複数に分割された制御材10Aaと、各制御材10Aaを纏めて被覆する被覆材10Abと、を有する。
【0049】
実施形態の炉心構造によれば、制御材10Aaを被覆材10Abにより覆うことで制御材10Aaへの中性子の照射による制御部材10の寸法の変化を抑えることや、制御材10Aaから発生するガスの漏えいを抑えることができる。
【0050】
また、実施形態の炉心構造では、制御部材案内管11は、可燃性毒物が添加されている。
【0051】
実施形態の炉心構造によれば、核燃料の燃焼の初期は反応度が余剰にあり、可燃性毒物で中性子を吸収するため、運転初期の余剰反応度を低減できる。一般的に運転初期の余剰反応度を低減するため、制御部材10を増加させるが、実施形態の炉心構造によれば、必要とする制御部材10の数を低減できる。また、可燃性毒物は、中性子吸収後は中性子を吸収しない核種に変換するため、運転初期後は反応度の低下を生じない。
【0052】
また、実施形態の炉心構造では、炉心7の外周に配置されて各燃料棒8の周りを囲む中性子反射体12を備え、中性子反射体12は、酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか1つを含む反射体12Aからなる。
【0053】
ベリリウムやアルミニウムやマグネシウムは、ステンレス鋼と比較して中性子吸収断面積が小さく、また、中性子吸収断面積に対する中性子散乱断面積が大きいため、中性子反射能力が高い。更に、この結果、実施形態の炉心構造によれば、中性子反射体12の厚さをステンレス鋼よりも薄く形成できる。また、ベリリウムは、中性子反射機能の他に、中性子反応によって1つの中性子を消費して2つの中性子を放出し、2つのアルファ粒子に分裂する。このベリリウムの中性子反応は、消費する中性子よりも多くの中性子を放出して系内の中性子を増加させる。この結果、実施形態の炉心構造によれば、中性子反射効率が高く、臨界量に満たない核分裂性物質を臨界状態にしたり、臨界量での核分裂反応を増加させるため、核的特性(臨界性)が改善され、炉心長寿命化を図れる。
【0054】
また、実施形態の炉心構造では、中性子反射体12は、反射体12Aの外周にステンレス鋼の補強材12Bをさらに含む。
【0055】
反射体12Aのみの中性子反射体12の場合、構造強度や遮蔽性能が不足し、強度や遮へい特性が低下する傾向にある。このため、実施形態の炉心構造によれば、ステンレス鋼の補強材12Bで補強および遮へいをすることで、反射体12Aによる不足を補うことができる。
【0056】
また、実施形態の炉心構造では、各燃料棒8が挿通されるセル9Aを有するグリッド9を備え、グリッド9は、セル9Aが6角形状に形成されたハニカム構造に構成されている。
【0057】
セル9Aに各燃料棒8が挿通されることで、複数の燃料棒8をそれぞれ独立して三角格子状に配置できる。セル9Aは、挿通により各燃料棒8を固定せず、かつ個々に支持しない。また、セル9Aは、各燃料棒8の間に一次冷却材が通過する隙間9Aaを設ける。一般に、燃料棒8を支持する場合、グリッド9に燃料棒8を支える弾性部材を設けるが、これでは弾性部材を設ける分、燃料棒8の稠密化を図ることが難しい。従って、実施形態の炉心構造によれば、セル9Aに燃料棒8を挿通するのみで、特別に支持する構成を持たない構成として、三角格子状の配置と共に稠密構造を実現している。また、実施形態の炉心構造によれば、セル9Aに燃料棒8を挿通するのみで、特別に支持する構成を持たない構成として、稠密構造を実現しつつ、各燃料棒8の間に一次冷却材が通過する隙間9Aaを生じさせることができる。
【0058】
また、実施形態の炉心構造は、複数の燃料棒8が上部炉心支持板3Bと下部炉心支持板3Cとの間に配置され、下端が下部炉心支持板3Cの上に直接置かれて支持されている。
【0059】
燃料集合体を用いる炉心構造では、燃料集合体の上端に上部ノズルが配置され下端に下部ノズルが配置され、さらに、燃料集合体を上部炉心支持板と下部炉心支持板との間に支持するバネ機構などの部品が設けられている。これに対し、実施形態の炉心構造は、燃料棒8を上部炉心支持板3Bと下部炉心支持板3Cとの間に配置し、燃料棒8の下端を下部炉心支持板3Cの上に直接置いて支持している。この結果、実施形態の炉心構造によれば、上部ノズルおよび下部ノズルやバネ機構などの部品を用いないことで、炉心7の高さを低減し小型化を図ることができる。
【0060】
実施形態の下部端栓8Dは、燃料棒8の下端に固定され、底面8Daから側面8Dbに通じる連通部(切欠8Dc)が形成されている。
【0061】
実施形態において、燃料棒8は、貫通孔3Caが形成された下部炉心支持板3Cの上面3Cbに直接置かれて支持される。この構造に対し、燃料棒8の下部端栓8Dは、切欠8Dcにより、底面8Daから側面8Dbを下部炉心支持板3Cの貫通孔3Caに通じさせる。このため、一次冷却材は、下部炉心支持板3Cの下側から貫通孔3Caを介して下部炉心支持板3Cを通過し、かつ切欠8Dcを介して隣接する燃料棒8の周囲に送られる。この結果、実施形態の下部端栓8Dによれば、燃料棒8の下端において底面8Daから側面8Dbに一次冷却材を通過させることができ、燃料棒8への一次冷却材の流路を確保することができる。
【0062】
また、実施形態の下部端栓8Dでは、連通部(切欠8Dc)は、底面8Daから側面8Dbに向かって外側に広がって形成されている。
【0063】
実施形態の下部端栓8Dによれば、一次冷却材を燃料棒8の周囲に沿って導くことができる。
【0064】
また、実施形態の下部端栓8Dでは、連通部(切欠8Dc)は、周方向に複数配置されている。
【0065】
実施形態の下部端栓8Dによれば、一次冷却材を複数個所で燃料棒8の周囲に送ることができる。
【0066】
また、実施形態の下部端栓8Dでは、底面8Daが平坦に形成されている。
【0067】
実施形態の下部端栓8Dによれば、燃料棒8を安定して載置することができる。
【0068】
また、実施形態の下部端栓8Dでは、切欠8Dcは、周方向の4個所に形成され、底面8Daが底面視で十字形状に形成されている。
【0069】
実施形態の下部端栓8Dによれば、一次冷却材を複数個所で燃料棒8の周囲に送ることができ、かつ燃料棒8を安定して載置することができる。
【0070】
また、実施形態の燃料棒8は、上述した下部端栓8Dが下端に固定され、貫通孔3Caが形成された下部炉心支持板3Cの上面3Cbに直接置かれて支持される。
【0071】
実施形態の燃料棒8によれば、燃料集合体を用いた場合比較して上部ノズルおよび下部ノズルやバネ機構などの部品を用いないことで、炉心7の高さを低減し小型化を図ることができる。
【0072】
また、実施形態の原子炉1は、原子炉容器2と、上述した炉心構造を有して原子炉容器2の内部に配置された炉心7と、原子炉容器2の内部に配置され原子炉容器2の外部から二次冷却材が供給される一方で二次冷却材の蒸気が原子炉容器2の外部に排出される蒸気発生器5と、原子炉容器2の内部に配置され二次冷却材と熱交換する一次冷却材を炉心7と蒸気発生器5とに循環させる一次冷却材ポンプ6と、原子炉容器2の内部に配置され炉心7に制御部材10を抜き差しする制御部材駆動機構4と、を備える。
【0073】
実施形態の原子炉1によれば、炉心7の小型化を図り、かつ小型の炉心7を備えつつ、蒸気発生器5、一次冷却材ポンプ6、制御部材駆動機構4と、原子炉容器2の内部に配置した一体型に構成できる。
【符号の説明】
【0074】
1 原子炉
2 原子炉容器
2A 容器本体
2B 容器蓋
3 炉心支持構造物
3A 炉心槽
3Aa 貫通孔
3B 上部炉心支持板
3Ba 貫通孔
3C 下部炉心支持板
3Ca 貫通孔
3Cb 上面
4 制御部材駆動機構
5 蒸気発生器
6 一次冷却材ポンプ
7 炉心
8 燃料棒
8A 核燃料
8B 筒部材
8C 上部端栓
8D 下部端栓
8Da 底面
8Db 側面
8Dc 切欠(連通部)
8E 弾性部材
9 グリッド
9A セル
9Aa 隙間
10 制御部材
10A 板体
10Aa 制御材
10Ab 被覆材
10Ac 格子
11 制御部材案内管
12 中性子反射体
12A 反射材
12B 補強材
20 支持部材