(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 25/04 20060101AFI20240125BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240125BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240125BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240125BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L67/00
C08L33/04
C08L23/00
C08K5/01
(21)【出願番号】P 2020563184
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019049983
(87)【国際公開番号】W WO2020137843
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2018242239
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 修治
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宝晃
(72)【発明者】
【氏名】塚田 雅史
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-095847(JP,A)
【文献】特開2008-239883(JP,A)
【文献】特開2012-144694(JP,A)
【文献】特開2007-023185(JP,A)
【文献】特開平04-023847(JP,A)
【文献】特開2015-004049(JP,A)
【文献】特開2021-195529(JP,A)
【文献】特開2008-045120(JP,A)
【文献】特開2002-348428(JP,A)
【文献】特開2010-053315(JP,A)
【文献】特開2007-191688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂とを含有する樹脂組成物であって、(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部以上2質量部以下の(C)アクリル系樹脂
と、0.1質量部以上1.5質量部以下の(D)ポリオレフィン系ワックスと、を含有
し、
前記(C)アクリル系樹脂が、重量平均分子量Mwが5万以上40万以下であって、かつ炭素数が1以上20以下のアルキル基を有するアクリル系単量体と、前記アクリル系単量体と共重合可能なα-オレフィン、ビニル芳香族、不飽和ニトリル、不飽和カルボン酸又はそのエステル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートから選択される単量体とから構成される共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)ポリエステル系樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂の合計100質量部において、(A)スチレン系樹脂が55質量部以上90質量部以下、(B)ポリエステル系樹脂が10質量部以上45質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出製造過程においてダイスにメヤニが付着しない樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂はその特性を生かしパーソナルコンピュータ、プリンター、複写機等のOA機器、TV、オーディオ等の家電製品等を初めとする多岐の分野に使用されている。
【0003】
一方、ポリエステル系樹脂は機械的特性などに優れることから、フィルム、シート、食器、包装容器など各種産業用途に広く使用されている。
【0004】
近年、地球温暖化の問題から二酸化炭素の低減が求められており、見かけ上二酸化炭素を排出しない「カーボンニュートラル」なポリエステル系樹脂のひとつとしてポリ乳酸が注目されている。しかしながら、ポリ乳酸は耐久消費財としての実用性に劣るため、スチレン系樹脂などとのポリマーアロイが近年検討されている。
【0005】
スチレン系樹脂とポリ乳酸とのポリマーアロイは通常押出成形にて製造されるが、その際、押出機のダイス出口部分に樹脂分解物や未分散添加剤等を原因とするメヤニが発生する。発生したメヤニは、ストランドに同伴されペレタイズ後のペレットに付着した状態で存在するが、これはペレットそのものの外観不良になるだけでなく、射出成形等の成形加工をした後に成形体表面に着色点として残り、外観不良になるため、問題である。
【0006】
一方、メヤニを抑制する方法として、ポリフェニレンエーテルを含有するスチレン系樹脂組成物に対して高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸アルカリ金属塩を添加する方法が例示されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂を含有するスチレン系樹脂組成物におけるメヤニ抑制効果が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、押出製造過程においてダイスにメヤニが付着しない樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した問題を解決すべく、鋭意研究した結果、スチレン系樹脂とポリエステル系樹脂とを含む樹脂組成物に、特定のアクリル系樹脂を配合することにより、メヤニの発生を抑制できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂とを含有する樹脂組成物であって、(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部以上2質量部以下の(C)アクリル系樹脂と、0.1質量部以上1.5質量部以下の(D)ポリオレフィン系ワックスと、を含有し、
前記(C)アクリル系樹脂が、重量平均分子量Mwが5万以上40万以下であって、かつ炭素数が1以上20以下のアルキル基を有するアクリル系単量体と、前記アクリル系単量体と共重合可能なα-オレフィン、ビニル芳香族、不飽和ニトリル、不飽和カルボン酸又はそのエステル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートから選択される単量体とから構成される共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
2.前記(B)ポリエステル系樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする上記1に記載の樹脂組成物。
3.前記(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂の合計100質量部において、(A)スチレン系樹脂が55質量部以上90質量部以下、(B)ポリエステル系樹脂が10質量部以上45質量部以下であることを特徴とする上記1または2に記載の樹脂組成物。
4.上記1~3のいずれかに記載の樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、押出製造過程において成形外観不良をもたらすメヤニがダイスに付着しないものである。したがって本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形体においては、外観に優れ、OA機器、家電製品、食器、包装容器等の用途で有効に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
【0013】
先ず、(A)スチレン系樹脂について説明する。本発明において使用する(A)スチレン系樹脂とは、芳香族ビニル化合物系単量体を重合して得られるものである。芳香族ビニル化合物系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等の公知のものが使用できるが、好ましくはスチレンである。これらの単量体を単独で用いてもよいし、併用しても構わない。また、これらの単量体と共重合可能なアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルや無水マレイン酸等の単量体も、(A)スチレン系樹脂の性能を損なわない程度であれば添加して重合したものであっても差し支えない。
【0014】
また(A)スチレン系樹脂は必要に応じて共役ジエン系ゴム状重合体を加えてゴム変性を行ってもよい。ゴム変性に用いる共役ジエン系ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダムまたはブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン-イソプレンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴムなどが挙げられるが、特にポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体が好ましい。また、これらは一部水素添加されていても差し支えない。
【0015】
このような(A)スチレン系樹脂としては例えば、ポリスチレン(GPPS)、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、MS樹脂(メチルメタクリレート-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレン-スチレン共重合体)等が挙げられる。この中では、HIPSが、樹脂組成物の耐衝撃性を高くすることができるため、特に好ましい。
【0016】
HIPSのマトリックス部分の分子量については特に制限はないが、還元粘度(ηsp/C)で0.5以上1.0以下が好ましい。0.5以上であることにより樹脂の溶融ストランドが断線しにくく安定製造に有利なため好ましい。また1.0以下であることにより溶融した樹脂の流動性が確保出来、好ましい。
【0017】
HIPS中のゴム状重合体の含有量については特に制限はないが、3質量%以上10質量%以下が好ましい。ゴム状重合体の含有量がこの範囲にあることで成形体の耐衝撃性と剛性のバランスが良いため好ましい。
【0018】
次に(B)ポリエステル系樹脂について説明する。本発明で使用する(B)ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸とポリアルコールとを重合することで得られるエステル結合を有する重合体の総称である。
【0019】
(B)ポリエステル系樹脂は、例えば、ジカルボン酸とジオールとから重合により得ることが出来、このようなポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレート並びにポリヘキサメチレンナフタレート等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
上記ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。また、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。これらのカルボン酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
【0021】
また、上記ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。
【0022】
一方、(B)ポリエステル系樹脂は単一の化合物でカルボン酸とアルコールの両方を有する単量体の重合によっても得ることが出来、このようなポリエステル系樹脂としては、ポリ乳酸が挙げられる。
【0023】
上記に挙げた(B)ポリエステル系樹脂のうち、カーボンニュートラルの観点から好ましいのはポリ乳酸である。
【0024】
ポリ乳酸としては、ポリ(L-乳酸)が用いられる。二酸化炭素排出量削減という観点から、植物由来原料が好ましい。
【0025】
ポリ(L-乳酸)の場合、単量体成分として含まれるD-乳酸成分の比率によってその結晶化速度が異なる。本発明の樹脂組成物の耐熱性および成形性を考慮すると、L-乳酸のみで構成されるポリ(L-乳酸)が好ましく、D-乳酸成分が含まれる場合には、その比率が5.0モル%以下であることが好ましい。特に好ましくは1.5モル%以下である。
【0026】
ポリ乳酸の分子量は、重量平均分子量(Mw)が5万以上40万以下であることが好ましく、特に好ましくは10万以上30万以下の範囲である。
【0027】
(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂の比率は特に限定されるものではないが、(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂の合計を100質量部とした時に、(A)スチレン系樹脂が55質量部以上90質量部以下であり、(B)ポリエステル系樹脂が10質量部以上45質量部以下であることが好ましい。(B)ポリエステル系樹脂の比率がこの範囲にあることで環境負荷低減効果と、価格競争力を両立できるため好ましい。
【0028】
次に、(C)アクリル系樹脂について説明する。本発明において(C)アクリル系樹脂とは、アクリル系単量体などの重合により得られる重合体のことを指す。(C)アクリル系樹脂は、(B)ポリエステル系樹脂との相溶性に優れ、かつ樹脂組成物とダイス出口部等との摩擦を低減させるため、(B)ポリエステル系樹脂を含有する樹脂組成物が(C)アクリル系樹脂を含むことにより、メヤニ防止効果を得ることができる。
【0029】
(C)アクリル系樹脂の含有量は、メヤニ抑制効果の観点から、(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂の合計100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下である。(C)アクリル系樹脂の含有量が2質量部を超える場合、押出製造時にストランド表面にアクリル系樹脂がブリードアウトし、ダイス出口部に転写付着したアクリル系樹脂自体がメヤニ源となるため、不適である。
【0030】
(C)アクリル系樹脂を構成するアクリル系単量体の種類は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、クロロエチルアクリレート等のアクリレート単量体や、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタアクリレート、2-エチルヘキシルメタアクリレート、ベンジルメタアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、フェニルメタアクリレート、クロロエチルメタアクリレート等のメタクリレート単量体の単独重合体、あるいはこれらの単量体二種以上を共重合させた共重合体等を用いることができる。
【0031】
(C)アクリル系樹脂はこれらのアクリル系単量体の他に本発明の効果を損なわない限りこれらと共重合可能なビニル単量体を添加して重合したものでも良く、例えば、α-オレフィン、ビニル芳香族類、不飽和ニトリル類、不飽和カルボン酸またはこれらのエステル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多価不飽和化合物等の単量体を添加して重合したものでもよい。
【0032】
(C)アクリル系樹脂は高分子量体であることが好ましい。具体的にはGPCで測定した際のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが5万以上40万以下であることが好ましい。より好ましくは10万以上30万以下である。
【0033】
(C)アクリル系樹脂はメヤニ低減効果の観点から滑剤としての性能がより高いものほど好ましい。すなわちダイス出口部等との摩擦をより低減できる化学構造を有するアクリル系単量体と、それらと共重合可能な単量体とから構成される共重合体であることが好ましい。
【0034】
摩擦低減できる化学構造を有するアクリル系単量体はより具体的には炭素数が1以上20以下のアルキル基を有する単量体であって、アルキルメタクリレートまたはアルキルアクリレートが好ましく、このようなものとしては例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらの中から少なくとも一種以上を用いることが好ましい。
【0035】
このような条件を満たす(C)アクリル系樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製「メタブレン(登録商標)L-1000」、「メタブレン(登録商標)P-700」が挙げられる。
【0036】
次に、(D)ポリオレフィン系ワックスについて説明する。本発明の樹脂組成物には、(C)アクリル系樹脂のメヤニ発生抑制効果をさらに増強する目的で、(D)ポリオレフィン系ワックスを含有させてもよい。本発明に使用できるポリオレフィン系ワックスとしては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。
【0037】
(D)ポリオレフィン系ワックスの含有量は、(A)スチレン系樹脂と(B)ポリエステル系樹脂の合計100質量部に対して、0.1質量部以上1.5質量部以下であることが好ましい。この範囲であれば(C)アクリル系樹脂との併用によるメヤニ抑制の増強効果を充分に発揮し、かつ加工時のガス発生量を抑えることができる。
【0038】
本発明の目的を損なわない範囲で他の添加剤、例えば可塑剤、展着剤、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、安定剤、帯電防止剤、着色剤、染顔料、充填剤、着色防止剤、補強剤、相溶化剤、結晶化促進剤、難燃剤、難燃助剤、等を添加することができる。
【0039】
特に補強剤としてのMBS、結晶化促進剤としてのタルク、展着剤としての流動パラフィンを好適に添加することが出来る。MBSはメチルメタクリレートとブタジエン、及びスチレンの共重合体であって、(B)ポリエステル系樹脂、(A)スチレン系樹脂、(C)アクリル系樹脂のいずれともなじみが良く、本発明の樹脂組成物の耐衝撃性を効率良く補強することが出来るため好ましい。タルクは本発明での(B)ポリエステル系樹脂の結晶化を促進することが出来、樹脂組成物の機械強度を向上することが出来るため好ましい。流動パラフィンは石油の潤滑油留分に含まれる芳香族炭化水素や硫黄化合物等の不純物を無水硫酸や発煙硫酸で取り除き精製された飽和炭化水素であって、本発明の樹脂組成物を混合する際に、比重が異なる樹脂間での分級を抑制することが出来るため、押出製造の際の樹脂組成物の品質バラツキを抑制でき、好ましい。
【0040】
上記の添加剤の添加方法は、特に限定されず、公知の方法で添加すれば良い。例えば、(A)スチレン系樹脂または(B)ポリエステル系樹脂の製造時の原料の仕込工程、重合工程、仕上工程で添加する方法や、押出機や成形機を用いて樹脂組成物を混合する工程で添加する方法を適用することができる。
【0041】
次に本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の混合技術を適用することが出来る。例えば、ミキサー型混合機、V型ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置を用いて、各種原料を予め混合しておき、その混合物を溶融混練することによって、均一な樹脂組成物を製造することが出来る。溶融混練装置も、特に限定されないが、例えばバンバリー型ミキサー、ニーダー、ロール、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等が挙げられる。更に、押出機等の溶融混練装置の途中から他の添加剤を別途添加する方法もある。
【0042】
本発明の樹脂組成物から成形体を得る成形法には特に制限は無く、カレンダ成形、中空成形、押出発泡成形、異形押出成形、ラミネート成形、インフレーション成形、Tダイフィルム成形、シート成形、真空成形、圧空成形などの押出成形法や、射出成形、RIM成形、射出発泡成形などの射出成形法といった公知の成形法を好適に用いることが出来るが、好ましくは射出成形またはシート成形である。
【実施例】
【0043】
以下に本発明を実施例及び比較例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
〔材料〕
(A)スチレン系樹脂
ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン樹脂(ゴム状重合体がポリブタジエンゴム、マトリックス部分の還元粘度0.70dl/g、ゴム状重合体含有量9.2質量%)
(B)ポリエステル系樹脂
ポリ乳酸:浙江海正生物材料社(Zhejiang Hisun Biomaterials Co.,Ltd)製「REVODE190」(D-乳酸成分の比率0.5モル%、重量平均分子量(Mw)20万)
PET:イーストマン社製「PET-G GN001」
(C)アクリル系樹脂
三菱ケミカル株式会社製「メタブレン L-1000」(重量平均分子量(Mw)25万)
三菱ケミカル株式会社製「メタブレン P-700」(重量平均分子量(Mw)45万)
(D)ポリオレフィン系ワックス
イノスペック社(Innospec Inc.)製「viscowax115」
(E)ステアリン酸亜鉛
日油株式会社製「ジンクステアレートGP」
【0045】
〔還元粘度の測定方法〕
(A)スチレン系樹脂1gにメチルエチルケトン17.5mlとアセトン17.5mlの混合溶媒を加え、温度25℃で2時間振とう溶解した後、遠心分離で不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、250mlのメタノールを加えて樹脂分を析出させ、不溶分を濾過乾燥した。同操作で得られた樹脂分をトルエンに溶解してポリマー濃度0.4%(質量/体積)の試料溶液を作製した。この試料溶液、及び純トルエンを温度30℃の恒温でウベローデ型粘度計により溶液流下秒数を測定して、下式にて算出した。
ηsp/C=(t1/t0-1)/C
t0:純トルエン流下秒数
t1:試料溶液流下秒数
C:ポリマー濃度
【0046】
〔ゴム状重合体の含有量の測定方法〕
スチレン系樹脂をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/氷酢酸溶液を加え暗所に約30分放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出した。
【0047】
〔評価方法〕
樹脂組成物を二軸押出機にて50kg押出した後、ダイス出口部の目視観察により判定した。下の判定基準のうちA、Bを合格とし、Cを不合格とした。
A:メヤニが全く観察されなかった。
B:微量のメヤニが観察された。
C:明らかに問題となる量のメヤニが観察された。
【0048】
(実施例1~11、比較例1~4)
上記〔材料〕に挙げた(A)スチレン系樹脂、(B)ポリエステル系樹脂、(C)アクリル系樹脂、(D)ポリオレフィン系ワックス、及び(E)ステアリン酸亜鉛を、表1、表2に示す配合量(質量部)で、ヘンシェルミキサー(三井三池化工社製「FM20B」)にて予備混合し、二軸押出機(東芝機械社製「TEM26SS」)に供給してストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。上記工程において、前記した評価方法でメヤニの発生状況を観察した。結果を表1、表2に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
表1の実施例より、本発明の樹脂組成物は、製造時にメヤニの発生が抑制されていることが分かる。一方、表2の比較例より、本発明の規定を満足しない樹脂組成物は、メヤニの発生量が多いことが分かる。