(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】鉄筋籠用の主筋移動防止具、これを備える鉄筋籠
(51)【国際特許分類】
E02D 5/30 20060101AFI20240125BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
E02D5/30 Z
E04C5/18
(21)【出願番号】P 2021062573
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】300086274
【氏名又は名称】林 義信
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】230108279
【氏名又は名称】井上 裕史
(72)【発明者】
【氏名】林 義信
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-174000(JP,A)
【文献】特開平09-067900(JP,A)
【文献】特開2003-239458(JP,A)
【文献】特開昭63-047469(JP,A)
【文献】特開2013-227835(JP,A)
【文献】特開平08-144430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/30
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも主筋部材、補強枠、および前記主筋部材に対して前記補強枠を固定する固定具で構成された鉄筋籠の前記主筋部材に取り付けられ、
前記補強枠に対して前記主筋部材が移動したときに、前記固定具に当接する固定具当接部を有している
主筋移動防止具。
【請求項2】
前記主筋部材が挿通される主筋部材挿通孔を有しており、
前記主筋部材挿通孔に前記主筋部材が挿通された状態で、外部からの圧力によって変形することにより、前記主筋部材に対して取り付けられる
請求項
1に記載の主筋移動防止具。
【請求項3】
前記主筋部材を挟持する少なくとも一対の挟持片を備えており、
一対の前記挟持片で前記主筋部材を挟む込むことによって前記主筋部材に対して取り付けられる
請求項
1に記載の主筋移動防止具。
【請求項4】
前記主筋部材が挿通される主筋部材挿通孔と、側周面から前記主筋部材挿通孔に至る側面孔を有しており、
前記側面孔に入れられた押し部材の先端で前記主筋部材挿通孔に挿通させた前記主筋部材の側周面を押圧することによって前記主筋部材に対して取り付けられる
請求項
1に記載の主筋移動防止具。
【請求項5】
前記主筋部材と接する面に、前記主筋部材の表面における凹凸と一部当接する凸凹を有している
請求項
1に記載の主筋移動防止具。
【請求項6】
表面に凹凸が形成された前記主筋部材が螺入される、前記凹凸に噛み合う雌ネジ孔を有している
請求項
1、2、および4のいずれか1項に記載の主筋移動防止具。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の主筋移動防止具を備える鉄筋籠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主筋部材と補強枠とを無溶接で固定する固定具を用いて構成された、例えばコンクリート杭に用いられる鉄筋籠を重ねていったとき、補強枠に対して主筋部材が自重によって移動して(ずれて)しまうのを防止する主筋移動防止具、および、当該主筋移動防止具を備える鉄筋籠に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋籠は、輪状に形成される補強枠に対して直交する方向(縦方向)に複数本の主筋部材を輪状に配設し、然る後、補強枠と各主筋部材とを互いに固定することによって形成されるが、当該固定を実現させる固定具については従前より様々なものが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、略U字形状の掛止部を有する交差接合金具本体と、取付け座金と、ナットとで構成された交差接合金具が開示されている。この交差接合金具によれば、主筋部材と補強枠との固定を無溶接で実現することができるので、現場で鉄筋籠を組んでいく際の作業効率を飛躍的に高めることができていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る無溶接の固定具を用いた鉄筋籠にも解決すべき問題があった。すなわち、当該鉄筋籠を複数縦方向に重ねる場合、
図17に示すように、下側の鉄筋籠に載置した受金具Aの上に上側の鉄筋籠における最上段の補強枠Bを載せるようになっていた(図中Cは、交差接合金具本体を示している。)。そのため、受金具Aに載置された最上段の補強枠Bには、下側の鉄筋籠や、当該補強枠Bを含む鉄筋籠における主筋部材や他の補強枠の重量等がかかることになる。
【0006】
このように重ねた状態でコンクリートを打設することになるが、受金具の上に上側の鉄筋籠を載せてからコンクリートを打設するまでの間に、場合によっては、上述した重量によって最上段の補強枠Bを固定する固定具が変形したり、当該固定具が保持できないことが原因となって、上側の鉄筋籠の最上段の補強枠に対して同じ鉄筋籠の主筋部材が下方に移動して(ずれて)しまうという問題があった。なお、受金具A自体は、鉄筋籠の立て込み作業後に取り外すようになっている。
【0007】
なお、最上段の補強枠Bに対して主筋部材Dが下方に移動するのに伴い、
図18に示すように、交差接合金具本体CのU字状部分も不所望に曲がった状態で下方に移動する。この問題に対しては、固定具の強度を高める方法もあるが、その場合、固定具が大型化してしまい、別の問題が生じることになる。
【0008】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、鉄筋籠を複数縦方向に重ねた場合であっても、自重により上側の鉄筋籠の(最上段に限らない)補強枠に対して同じ鉄筋籠の主筋部材が下方に移動して(ずれて)しまうのを防止する主筋移動防止具、および、当該主筋移動防止具を備える鉄筋籠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一の局面に従うと、
少なくとも主筋部材、補強枠、および前記主筋部材に対して前記補強枠を固定する固定具で構成された鉄筋籠の前記主筋部材に取り付けられ、
前記補強枠に対して前記主筋部材が移動したときに、前記固定具に当接する固定具当接部を有している
主筋移動防止具が提供される。
【0012】
好適には、
前記主筋移動防止具は、
前記主筋部材が挿通される主筋部材挿通孔を有しており、
前記主筋部材挿通孔に前記主筋部材が挿通された状態で、外部からの圧力によって変形することにより、前記主筋部材に対して取り付けられる。
【0013】
好適には、
前記主筋移動防止具は、
前記主筋部材を挟持する少なくとも一対の挟持片を備えており、
一対の前記挟持片で前記主筋部材を挟む込むことによって前記主筋部材に対して取り付けられる。
【0014】
好適には、
前記主筋部材が挿通される主筋部材挿通孔と、側周面から前記主筋部材挿通孔に至る側面孔を有しており、
前記側面孔に入れられた押し部材の先端で前記主筋部材挿通孔に挿通させた前記主筋部材の側周面を押圧することによって前記主筋部材に対して取り付けられる。
【0015】
好適には、
前記主筋移動防止具は、
前記主筋部材と接する面に、前記主筋部材の表面における凹凸と一部当接する凸凹を有している。
【0016】
好適には、
前記主筋移動防止具は、
表面に凹凸が形成された前記主筋部材が螺入される、前記凹凸に噛み合う雌ネジ孔を有している。
【0017】
この発明の他の局面に従うと、
上述した主筋移動防止具を備える鉄筋籠が提供される。
【発明の効果】
【0018】
この発明の一の局面によれば、少なくとも主筋部材、補強枠、および主筋部材に対して補強枠を固定する固定具で構成された鉄筋籠において、その主筋部材に主筋移動防止具を取り付ける。この主筋移動防止具は、補強枠に対して主筋部材が移動したときに当該固定具に当接する固定具当接部を有している。これにより、主筋移動防止具によれば、補強枠に対して主筋部材が移動した(ずれた)とき、主筋部材に取り付けられた主筋移動防止具が固定具に当接して、上側の鉄筋籠の重量は固定具全体で支えることになり、それ以上主筋部材が移動するのを止めることができる。また、万一、重量に耐えきれずに固定具の一部が撓んだとしても、当該固定具が補強枠に当接することにより、主筋移動防止具が固定具を介して補強枠に当接支持されるので、主筋部材が必要以上に移動して(ずれて)しまうのを防止することができる。
【0019】
また、発明の別の局面によれば、少なくとも主筋部材、補強枠、および主筋部材に対して補強枠を固定する固定具で構成された鉄筋籠において、その主筋部材に主筋移動防止具を取り付ける。この主筋移動防止具は、補強枠に対して主筋部材が移動したときに当該補強枠に当接する補強枠当接部を有している。これにより、主筋移動防止具によれば、補強枠に対して主筋部材が移動した(ずれた)とき、主筋部材に取り付けられた主筋移動防止具が補強枠に当接して当該移動を止めることができるので、主筋部材が必要以上に移動して(ずれて)しまうのを防止することができる。
【0020】
この発明のさらに別の局面によれば、少なくとも主筋部材、補強枠、および主筋部材に対して補強枠を固定する固定具で構成された鉄筋籠において、その主筋部材に主筋移動防止具を取り付ける。この主筋移動防止具は、補強枠に対して主筋部材が移動したときに当該補強枠との間に設けられた中間支持部材を介して補強枠に当接する中間支持部材当接部を有している。これにより、主筋移動防止具によれば、補強枠に対して主筋部材が移動した(ずれた)とき、主筋部材に取り付けられた主筋移動防止具が中間支持部材を介して補強枠に当接して当該移動を止めることができるので、主筋部材が必要以上に移動して(ずれて)しまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】固定具150を省略した鉄筋籠100の全体を示す図である。
【
図2】補強枠120に固定具150を取り付けた状態を描いた、
図1におけるA-A線断面図である。
【
図5】本発明が適用された主筋移動防止具160の一例を示す斜視図である。
【
図6】本発明が適用された主筋移動防止具160の別の例を示す斜視図である。
【
図7】主筋部材110および補強枠120に対して固定具150および主筋移動防止具160を取り付けた状態を示す底面図である。
【
図8】主筋部材110および補強枠120に対して固定具150および主筋移動防止具160を取り付けた状態を示す正面図である。
【
図9】主筋部材110および補強枠120に対して固定具150および変形例1に係る主筋移動防止具160を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図10】変形例1に係る主筋移動防止具160を構成する第1挟持片170および第2挟持片172を示す斜視図である。
【
図11】変形例2に係る主筋移動防止具160を主筋部材110に取り付けた状態の例を示す断面図である。
【
図12】変形例2に係る主筋移動防止具160が使用される主筋部材110の例を示す正面図である。
【
図13】変形例2に係る主筋移動防止具160を主筋部材110に取り付けた状態の例を示す断面図である。
【
図14】変形例2における別の例に係る主筋移動防止具160を主筋部材110に取り付けた状態の例を示す断面図である。
【
図15】主筋部材110および補強枠120に対して固定具150および変形例3に係る主筋移動防止具160を取り付けた状態を示す背面図である。
【
図16】主筋部材110および補強枠120に対して固定具150および変形例4に係る主筋移動防止具160を取り付けた状態を示す背面図である。
【
図17】従来技術について説明するための正面図である。
【
図18】従来技術について説明するための右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<鉄筋籠100の構成>
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る固定具150を用いて組み立てられる鉄筋籠100の全体構成について簡単に説明する。
【0023】
鉄筋籠100は、高層建築物や橋梁を支えるコンクリート杭のせん断補強用に用いられる構造体である。地面に穿設した穴に設置された型枠内に鉄筋籠100を建て込み、さらにコンクリートを打つことによってコンクリート杭が完成する。一般的に鉄筋籠100は、大略、主筋部材110と、補強枠120と、フープ筋140と、補強枠120に対して主筋部材110を固定する固定具150と、主筋移動防止具160で構成されている。
【0024】
主筋部材110は、コンクリート杭に加えられる引張力を主に負担する鉄筋である。本実施の形態では、丸形状の断面を有する長尺の鉄筋が主筋部材110として使用されている(もちろん、主筋部材110の形状はこれに限定されるものではない。)。それぞれの主筋部材110は、互いの長手方向が略平行で、かつ、当該長手方向に直交する断面において、ある点Cを中心とした仮想円VC1上にそれぞれ配置されている(
図2を参照)。
【0025】
これにより、多数の主筋部材110で略円柱状の構造体が構成されている。なお、多数の主筋部材110で構成される構造体の形状は略円柱状に限定されるものではなく、略角柱状やその他の柱状であってもよい。
【0026】
補強枠120は、多数の主筋部材110で構成された略円柱状の構造体の外側周を囲む帯状の部材であり、所定の曲率で曲げられることによって略円状に形成されている。補強枠120は、例えば、フラットバーで形成されている。主筋部材110の配置と同様に、補強枠120の外観形状は略円状に限定されるものではなく、主筋部材110の配置に合わせて略角状やその他の形状であってもよく、「環状」であればよい。つまり、本明細書において「環状」とは、略円形状だけに限らず、略角形状等も含む概念である。なお、補強枠120の数は、使用される主筋部材110の長さに応じて決定される(
図1の例では3つの補強枠120が使用されている。)。また、鉄筋籠100の強度の関係から、互いに隣接する補強枠120同士の間隔は3m以内であることが好ましい。
【0027】
フープ筋140(
図1を参照)は、多数の主筋部材110で構成された略円柱状の構造体の側周を囲む丸棒状の部材であり、補強枠120と同様に、所定の曲率で曲げられることによって略円状に形成されている。また、主筋部材110の配置と同様に、フープ筋140の外観形状は略円状に限定されるものではなく、主筋部材110の配置に合わせて略角状やその他の形状であってもよく、「環状」であればよい。なお、互いに隣接するフープ筋140同士の間隔は、補強枠120同士の間隔に比べて短く、例えば、100~300mm程度である。
【0028】
固定具150は、補強枠120に対して主筋部材110を固定するための部材であり、
図3および
図4に示すように、大略、交差クランプ152と、支持板154と、一対のナット156とで構成されている。
【0029】
交差クランプ152は、両端に雄ネジが形成された1本の棒状部材をU字状に曲げて構成されたUボルトを、略コ字状に折り曲げることによって形成されている。このように略コ字状に折り曲げることにより、交差クランプ152には、U字部(アーチ部)157、一対の腕部158、および、一対のネジ部159が構成されている。
【0030】
支持板154は、交差クランプ152における一対のネジ部159の間に架設される矩形状の板材であり、これら一対のネジ部159が挿設される一対のネジ孔155が形成されている(
図4を参照)。
【0031】
本実施形態に係る主筋移動防止具160は、
図5に示すように、略円筒状の部材であり、主筋部材110が挿通される主筋部材挿通孔162が形成されている。
【0032】
この主筋移動防止具160は、主筋部材挿通孔162に主筋部材110が挿通された状態で、外部からの圧力(例えば、万力等で挟み潰す)によって変形することにより、挿通された主筋部材110に取り付けられるようになっている。なお、主筋移動防止具160の材質としては、例えば、可鍛鋳鉄や機械構造用炭素鋼鋼管、あるいは、一般的な鋳鉄や炭素鋼を挙げることができる。
【0033】
なお、
図5に示す主筋移動防止具160に変えて、外部からの圧力でより変形させ易いように、
図6に示すように、切れ目(スリット)164を設けてもよい。この切れ目164は、図示するように、図中上端から下端にかけて主筋移動防止具160の側面上下全体にかけて設けてもよいし、一部分であってもよい。
【0034】
また、主筋移動防止具160の外部からの圧力による変形のさせ方については、主筋移動防止具160の円周全体に圧力をかけて変形させてもよいし、主筋移動防止具160における側周面上の一点と、当該一点との間で主筋移動防止具160の断面中心を挟む反対側の他点との間で主筋移動防止具160を挟むようにして圧力をかけて変形させてもよい。
【0035】
なお、主筋部材挿通孔162の内面に、主筋部材110の凹凸に一部が嵌合するような凸凹を設けておくことによって、主筋移動防止具160と主筋部材110との取付強度を強くすることができる。また、主筋移動防止具160を外部からの圧力により変形させるときに、主筋移動防止具160の一部に圧力をかけて変形させることにより、主筋部材挿通孔162の内面に凸凹を設ける方法でもよい。
【0036】
<鉄筋籠100の組立方法>
次に、本実施形態に係る鉄筋籠100の組立方法について説明する。工事現場において、輪状に形成した補強枠120をそれぞれ地面から略垂直に立てておき、これらの内側に必要な本数の主筋部材110を略水平方向に配置して各主筋部材110と補強枠120とを固定具150を用いて交差接合する。
【0037】
図7および
図8に示すように、主筋部材110には、予め、必要な数の主筋移動防止具160を所定の位置(固定具150と干渉しない位置)に取り付けておく。あるいは、予め主筋部材110を主筋移動防止具160の主筋部材挿通孔162に通しておくだけにしておき、固定具150を用いて各主筋部材110と補強枠120とを固定した後、所定の位置において主筋移動防止具160を主筋部材110に対して固定してもよい。
【0038】
<主筋移動防止具160の特徴>
本実施形態に係る主筋移動防止具160によれば、鉄筋籠100を複数縦方向に重ねたときにおいて、万一、自重により上側の鉄筋籠100の最上段の補強枠120(もちろん、最上段に限られず、他の補強枠120であってもよい。)に対して同じ鉄筋籠100の主筋部材110が下方に移動して(ずれて)しまったとしても、主筋部材110に取り付けられた主筋移動防止具160が固定具150(本実施例の場合、固定具150の交差クランプ152)に当接して上側の鉄筋籠100の重量は固定具150全体で支えることになり、それ以上主筋部材110が移動するのを止めることができる。また、万一、重量に耐えきれずに固定具150の一部(本実施例の場合、固定具150の交差クランプ152)が撓んだとしても、当該固定具150の一部(本実施例の場合、固定具150の交差クランプ152)が補強枠120に当接することにより、主筋移動防止具160が固定具150(本実施例の場合、固定具150の交差クランプ152)を介して補強枠120に当接支持されるので、主筋部材110が必要以上に移動して(ずれて)しまうのを防止することができる。なお、固定具150に当接する部分を主筋移動防止具160の固定具当接部166という(
図8を参照)。また、主筋移動防止具160における固定具当接部166は、固定具150における交差クランプ152以外の部分に当接するようになっていてもよい。
【0039】
<変形例1>
上述した実施形態では、主筋部材挿通孔162を有しており、当該主筋部材挿通孔162に主筋部材110が挿通された状態で、外部からの圧力によって変形することにより、主筋部材110に対して取り付けられる主筋移動防止具160について説明したが、
図9に示すように、主筋部材110を挟持する少なくとも一対の挟持片170,172を備えており、一対の挟持片170,172で主筋部材110を挟む込むことによって当該主筋部材110に対して取り付けられる主筋移動防止具160としてもよい。
【0040】
この変形例1に係る主筋移動防止具160は、
図10に示すように、第1挟持片170と、第2挟持片172とで構成されている。各挟持片170,172には、それぞれヒンジ部174と、挟持凹所部176と、留め部178とで一体的に形成されている。ヒンジ部174は、ピン180(
図9を参照)を挿通するピン孔182が形成されており、両挟持片170,172のヒンジ部174を組み合わせてそれぞれのピン孔182にピン180を挿通することで、当該ピン180を中心として、両挟持片170,172が開閉自在に組み合わされる。また、各挟持片170,172における留め部178には、図示しないネジが挿通固定されるネジ孔186が形成されている。
【0041】
この変形例1に係る主筋移動防止具160は、主筋部材110における所定の位置において、ネジ(図示せず)を外して開閉自在になった各挟持片170,172におけるそれぞれの挟持凹所部176で主筋部材110を挟み、然る後、留め部178のネジ孔186にネジ(図示せず)を挿通固定することにより、主筋部材110に固定するようになっている。なお、変形例1に係る主筋移動防止具160の材質としても、上述の通り、例えば、可鍛鋳鉄や機械構造用炭素鋼鋼管、あるいは、一般的な鋳鉄や炭素鋼を挙げることができる。
【0042】
<変形例2>
上述した実施形態では、主筋部材挿通孔162を有しており、当該主筋部材挿通孔162に主筋部材110が挿通された状態で、外部からの圧力によって変形することにより、主筋部材110に対して取り付けられる主筋移動防止具160について説明したが、
図11に示すように、主筋移動防止具160に、当該主筋移動防止具160の側周面から主筋部材挿通孔162の表面に至る側面孔194を設けておき、この側面孔194に押し部材196を入れていき、当該押し部材196の先端で主筋部材挿通孔162に挿通させた主筋部材110の側周面を押圧させることにより、主筋部材110に対して主筋移動防止具160を取り付けるようにしてもよい。側面孔194および押し部材196はネジ式のものが好適であるが、単純な棒材をハンマー等で挿通させる方法など適宜の方法を用いることができる。なお、
図11には、表面に凹凸が形成された主筋部材110を描いているが、凹凸の無い主筋部材110を用いてもよい。
【0043】
<変形例3>
また、主筋部材110の種類によっては、
図12に示すように、正面に連続的あるいは断続的に雄ネジ状の凹凸112が形成されているものがある。このような主筋部材110には、
図13に示すように、表面に凹凸112が形成された主筋部材110が螺入される、凹凸112に噛み合う雌ネジ孔190を有している主筋移動防止具160を用いることができる。
【0044】
主筋部材110の表面の凹凸112と、主筋移動防止具160の雌ネジ孔190とがうまく噛み合わない場合は、凹凸112と雌ネジ孔190との間に高強度微粒子セメントで構成された無機グラウト材192を介在させることにより、雌ネジ孔190に主筋部材110をしっかりと螺入させることができる。
【0045】
主筋部材110には、予め、必要な数の主筋移動防止具160を所定の位置(固定具150と干渉しない位置)に螺着しておく。なお、変形例2に係る主筋移動防止具160の材質としても、上述の通り、例えば、可鍛鋳鉄や機械構造用炭素鋼鋼管、あるいは、一般的な鋳鉄や炭素鋼を挙げることができる。
【0046】
さらに言えば、上述した変形例2とこの変形例3の技術的思想を組み合わせて、
図14に示すように、主筋移動防止具160に、当該主筋移動防止具160の側周面から雌ネジ孔190の表面に至る側面孔194を設けておき、この側面孔194に押し部材196を入れていき、当該押し部材196の先端で主筋移動防止具160に螺入させた主筋部材110の側周面を押圧することにより、主筋部材110に対してより強固に主筋移動防止具160を取り付けてもよい。側面孔194および押し部材196はネジ式のものが好適であるが、単純な棒材をハンマー等で挿通させる方法など適宜の方法を用いることができる。
【0047】
<変形例4>
さらに、ここまで説明してきた主筋移動防止具160では、鉄筋籠100の主筋部材110が下方に移動して(ずれて)しまったときに、主筋部材110に取り付けられた主筋移動防止具160が固定具150に当接して当該移動を止めるようになっていたが、これに変えて、例えば、
図15に示すように、補強枠120に直接的に当接する補強枠当接部200を主筋移動防止具160に設けてもよい。
【0048】
この変形例3に係る主筋移動防止具160によれば、鉄筋籠100を複数縦方向に重ねたときにおいて、万一、自重により上側の鉄筋籠100の(例えば)最上段の補強枠120に対して同じ鉄筋籠100の主筋部材110が下方に移動して(ずれて)しまったとしても、主筋部材110に取り付けられた主筋移動防止具160における補強枠当接部200が補強枠120に直接的に当接して当該移動を止めることができるので、主筋部材110が必要以上に移動して(ずれて)しまうのを防止することができる。もちろん、この変形例3に対して、上述した変形例1や変形例2を適用してもよい。
【0049】
<変形例5>
また、例えば、
図16に示すように、補強枠120に対して主筋部材110が移動したときに当該補強枠120との間に設けられた中間支持部材210を介して補強枠120に当接する中間支持部材当接部202を主筋移動防止具160に設けてもよい。
【0050】
この変形例4に係る主筋移動防止具160によれば、鉄筋籠100を複数縦方向に重ねたときにおいて、万一、自重により上側の鉄筋籠100の(例えば)最上段の補強枠120に対して同じ鉄筋籠100の主筋部材110が下方に移動して(ずれて)しまったとしても、主筋部材110に取り付けられた主筋移動防止具160が中間支持部材210を介して補強枠120に当接して当該移動を止めることができるので、主筋部材110が必要以上に移動して(ずれて)しまうのを防止することができる。もちろん、この変形例4に対しても、上述した変形例1や変形例2を適用してもよい。
【0051】
<変形例6>
なお、ここまでの説明では、多数の主筋部材110で構成された略円柱状の構造体の外側周を囲むように補強枠120を配置していたが、これに変えて、多数の主筋部材110で構成された略円柱状の構造体の内側周に補強枠120を配置してもよいし、外側周および内側周の両方に補強枠120を配置してもよい。内側周に配置した補強枠120に固定具150、主筋移動防止具160、あるいは中間支持部材210が当該補強枠120に当接することについてはここまでに説明した内容と同様である。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
100…鉄筋籠、110…主筋部材、112…(主筋部材110の表面の)凹凸、120…補強枠、140…フープ筋、150…固定具、152…交差クランプ、154…支持板、155…(支持板154の)ネジ孔、156…ナット、157…(交差クランプ152の)U字部、158…(交差クランプ152の)腕部、159…(交差クランプ152の)ネジ部
160…主筋移動防止具、162…主筋部材挿通孔、164…切れ目、166…固定具当接部
170,172…挟持片、174…ヒンジ部、176…挟持凹所部、178…留め部、180…ピン、182…ピン孔、186…ネジ孔
190…雌ネジ孔、192…無機グラウト材、194…側面孔、196…押し部材
200…補強枠当接部、202…中間支持部材当接部
210…中間支持部材