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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】床材支持具およびそれを用いた浮床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
E04F15/00 101T
E04F15/00 601B
E04F15/00 601C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021120414
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2022027548
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2020130870
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021041613
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社トムスの代表取締役の北崎勤は、令和2年6月3日に、株式会社トムスの従業員田口義仁に、北崎勤が発明した「床材支持具およびそれを用いた浮床構造」に係る商品について、株式会社土新建材の本社ビル2階の事務所にて、メールにより、株式会社石本建築事務所に提案させた。また、令和2年7月28日に、同商品について、株式会社土新建材の本社ビル2階の事務所にて、東洋工芸株式会社に対して、商品の内容を説明した。また、令和2年12月23日に、株式会社大恭の事務所にて、株式会社大恭の専務取締役の嶋本英介、名古屋モザイク工業株式会社大阪支店の前田拓哉に対して、同商品(主として、床材支持具の水平片部に勾配が形成されている点)の概要について説明した。
(73)【特許権者】
【識別番号】301057956
【氏名又は名称】株式会社トムス
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(72)【発明者】
【氏名】北崎 勤
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0218618(US,A1)
【文献】特開平11-280237(JP,A)
【文献】特開2006-207145(JP,A)
【文献】特開平11-124939(JP,A)
【文献】特開2012-067476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00
E04F 15/02
E04F 15/18
E04B 1/00
E04B 1/38
E04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設けられたコンクリートスラブの上側に複数本の根太を、間隔を隔てて略平行に配設し、複数本の前記根太の上面に平面視方形または矩形状の複数枚の床材を互いに間隔を隔てて配置した浮床構造の前記床材を位置決めして、前記根太と前記床材を接続するように支持する床材支持具であって、
前記床材支持具は、
前記根太の幅方向に沿って延びる長手方向を有し、その一方主面が前記根太の上面側と対向して配置され、その他方主面が前記床材の下面側と対向して配置される水平片部、
前記水平片部の長手方向の一端部または中間部から垂直に立設され、前記根太の上面に隣接して配置される2枚の床材の間において上方に向けて延び設けられ、前記2枚の床材の間に排水部となる隙間を形成することが可能な垂直片部、
前記水平片部の他方主面に形成され、前記水平片部の他方主面と前記床材の下面を接着可能とする接着剤層、
前記垂直片部の高さ方向に貫通され、且つ、前記垂直片部の上面から前記水平片部の下面に向けて貫通され、その内周面にネジ面を有する貫通孔、および
前記貫通孔の前記ネジ面に螺合され、前記床材と前記根太を取り外し自在に連結する連結手段を含み、
前記床材支持具の前記水平片部は、その長手方向の一端側から他端側にかけて勾配が形成されることを特徴とする、床材支持具。
【請求項2】
前記床材支持具は、前記根太の上面において、前記根太の幅方向に間隔を隔てて平行に配置された2つの床材間で、且つ、前記根太の長手方向に延び設けられる隙間に間隔を隔てて少なくとも2ケ所に取付けられ、前記水平片部が前記床材の下面と当接され、且つ、前記垂直片部が前記床材の側面と当接されるように配置される、請求項1に記載の床材支持具。
【請求項3】
前記床材支持具の前記水平片部は、その上面に複数の凹凸部で形成され、前記床材の下面に食い込む食い込み部をさらに含み、前記接着剤層は前記食い込み部の上面に形成される、請求項1または請求項2に記載の床材支持具。
【請求項4】
前記床材支持具の前記水平片部の下面と前記根太の上面の間には、緩衝部材が配設される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の床材支持具。
【請求項5】
前記緩衝部材は、前記水平片部の前記貫通孔およびその周辺部を囲繞する部位と対向する部分に切欠部を有する、請求項4に記載の床材支持具。
【請求項6】
屋外に設けられたコンクリートスラブの上側に間隔を隔てて略平行に配設される複数本の根太、
前記複数本の根太の上面に互いに間隔を隔てて配設される複数枚の床材、および
前記複数枚の床材を前記複数本の根太の上面で位置決めして、前記複数本の根太と前記複数枚の床材を接続する床材支持具を含み、
前記床材支持具は、
前記根太の幅方向に沿って延びる長手方向を有し、その一方主面が前記根太の上面側と対向して配置され、その他方主面が前記床材の下面側と対向して配置される水平片部、
前記水平片部の他方主面に形成され、前記水平片部の他方主面と前記床材の下面を接着可能とする接着剤層、
前記水平片部の長手方向の一端部または中間部から垂直に立設され、前記根太の上面に隣接して配置される2枚の床材の間において上方に向けて延び設けられ、前記2枚の床材の間に排水部となる隙間を形成することが可能な垂直片部、
前記垂直片部の高さ方向に貫通され、且つ、前記垂直片部の上面から前記水平片部の下面に向けて貫通され、その内周面にネジ面を有する貫通孔、および
前記貫通孔の前記ネジ面に螺合され、前記床材と前記根太を取り外し自在に連結する連結手段を含
前記床材支持具の前記水平片部は、その長手方向の一端側から他端側にかけて勾配が形成されていることを特徴とする、浮床構造。
【請求項7】
前記床材支持具は、前記根太の上面において、前記根太の幅方向に間隔を隔てて平行に配置された2つの床材間で、且つ、前記根太の長手方向に延び設けられる隙間に間隔を隔てて少なくとも2ケ所に取付けられ、前記水平片部が前記床材の下面と当接され、且つ、前記垂直片部が前記床材の側面と当接されるように配置され、前記水平片部の他方主面に形成された接着剤層が前記床材の下面に接着されるように取付けられる、請求項6に記載の浮床構造。
【請求項8】
前記屋外に設けられたコンクリートスラブの上面に立設され、前記複数本の根太を前記コンクリートスラブの上面から高さ方向に間隔を隔てて支持する支持手段をさらに含む、請求項6または請求項7に記載の浮床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材支持具およびそれを用いた浮床構造に関し、特にたとえば、タイル、天然石等の石材、コンクリートパネルおよびアクリル等の合成樹脂パネル等の床材に用いられて好適な床材支持具およびそれを用いた浮床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景となる従来技術の一例には、たとえば建築物の屋上のスラブ面に配置した床束等の支持脚部材の上に根太を設置し、根太に対して直交する方向に複数の床材を、それぞれ間隔を隔てて配列したものが、一般的に知られている。床材の重量が比較的大きい場合には、複数の床材は、根太の上に単に載置されて配置されるが、床材の重量が比較的軽量の場合には、複数の床材は、根太材の上にたとえば接着剤で固着されて配置されるものが知られている。
一方で、近年の建築物の高層化が進む中で、所謂、ビル風が発生し、このビル風は建築物に悪影響をもたらすものとなっている。それに加えて、近年では、建築地球温暖化等の影響による異常気象がもたらすスーパー台風などにより、このビル風の建築物への影響が計り知れないものとなっている。建築物に上記した浮床を施工した場合、ビル風や台風の暴風により、「風による吹き上げ」が発生し、浮床の床材が飛散して建築物から落下する虞が高まっている。すなわち、建築物屋上からの落下物が重大な社会問題となる事が予想される。
この場合、1枚1枚の床材の重量を大きくして「風による吹き上げ」に対しての強度を高め、床材の飛散を防止することが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5143947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1枚1枚の床材の重量を大きくすると、屋上のスラブ面全体に掛かる重量負荷が大きくなるため、建築物の梁や柱等躯体自体の強度を高めるために、建築コストが高く付く。
他方で、従来の浮床において、各床材が根太の上に接着剤で強固に固着されている場合、老朽化した浮床の床材を改装するときには、古い床材を撤去した後、新しい床材を敷設する必要があるが、床材が根太に強固に固着されているから例えば部分的に床材が破損したとき等、当該は破損部分だけを取り替えて改装することが困難となり、場合によっては古い床材全体を廃棄して床材全体を改装しなければならず、廃棄された床材は産業廃棄物となって環境に多大な負荷を与えるという問題があった。
近年、建築廃材をなるべく少なくすることが環境保全、省資源の点から一段と重要になってきている。
すなわち、各床材が根太の上に接着剤で強固に固着されている場合、床材を部分的に取り替えることが困難であり、且つ、環境に対する負荷も軽減することが困難であった。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる目的は、床材との接続強度を強固にして、風で床材全体が捲れ上がる床材の吹き上がり現象を防止し、且つ、床材を取り替えることができ、環境保全、省資源の観点から環境負荷を軽減することもできる、床材支持具およびそれを用いた浮床構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、屋外に設けられたコンクリートスラブの上側に複数本の根太を、間隔を隔てて略平行に配設し、複数本の根太の上面に平面視方形または矩形状の複数枚の床材を互いに間隔を隔てて配置した浮床構造の床材を位置決めして、根太と床材を接続するように支持する床材支持具であって、床材支持具は、根太の幅方向に沿って延びる長手方向を有し、その一方主面が根太の上面側と対向して配置され、その他方主面が床材の下面側と対向して配置される水平片部と、水平片部の長手方向の一端部または中間部から垂直に立設され、根太の上面に隣接して配置される2枚の床材の間において上方に向けて延び設けられ、2枚の床材の間に排水部となる隙間を形成することが可能な垂直片部と、水平片部の他方主面に形成され、水平片部の他方主面と床材の下面を接着可能とする接着剤層と、垂直片部の高さ方向に貫通され、且つ、垂直片部の上面から水平片部の下面に向けて貫通され、その内周面にネジ面を有する貫通孔と、貫通孔のネジ面に螺合され、床材と根太を取り外し自在に連結する連結手段とを含み、床材支持具の水平片部は、その長手方向の一端側から他端側にかけて勾配が形成されることを特徴とする、床材支持具である。
請求項2に係る本発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であって、床材支持具は、根太の上面において、根太の幅方向に間隔を隔てて平行に配置された2つの床材間で、且つ、根太の長手方向に延び設けられる隙間に間隔を隔てて少なくとも2ケ所に取付けられ、水平片部が床材の下面と当接され、且つ、垂直片部が床材の側面と当接されるように配置される、床材支持具である。
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2に係る発明に従属する発明であって、床材支持具の水平片部は、その上面に複数の凹凸部で形成され、床材の下面に食い込む食い込み部をさらに含み、接着剤層は食い込み部の上面に形成される、床材支持具である。
請求項4に係る本発明は、請求項1~請求項3のいずれか1項に係る発明に従属する発明であって、床材支持具の水平片部の下面と根太の上面の間には、緩衝部材が配設される、床材支持具である。
請求項5に係る本発明は、請求項4に係る発明に従属する発明であって、緩衝部材は、水平片部の貫通孔およびその周辺部を囲繞する部位と対向する部分に切欠部を有する、床材支持具である。
請求項6に係る本発明は、屋外に設けられたコンクリートスラブの上側に間隔を隔てて略平行に配設される複数本の根太と、複数本の根太の上面に互いに間隔を隔てて配設される複数枚の床材と、複数枚の床材を複数本の根太の上面で位置決めして、複数本の根太と複数枚の床材を接続する床材支持具とを含み、床材支持具は、根太の幅方向に沿って延びる長手方向を有し、その一方主面が根太の上面側と対向して配置され、その他方主面が床材の下面側と対向して配置される水平片部と、水平片部の他方主面に形成され、水平片部の他方主面と床材の下面を接着可能とする接着剤層と、水平片部の長手方向の一端部または中間部から垂直に立設され、根太の上面に隣接して配置される2枚の床材の間において上方に向けて延び設けられ、2枚の床材の間に排水部となる隙間を形成することが可能な垂直片部と、垂直片部の高さ方向に貫通され、且つ、垂直片部の上面から水平片部の下面に向けて貫通され、その内周面にネジ面を有する貫通孔と、貫通孔のネジ面に螺合され、床材と根太を取り外し自在に連結する連結手段とを含
前記床材支持具の前記水平片部は、その長手方向の一端側から他端側にかけて勾配が形成されていることを特徴とする、浮床構造である。
請求項に係る本発明は、請求項6に係る発明に従属する発明であって、床材支持具は、根太の上面において、根太の幅方向に間隔を隔てて平行に配置された2つの床材間で、且つ、根太の長手方向に延び設けられる隙間に間隔を隔てて少なくとも2ケ所に取付けられ、水平片部が床材の下面と当接され、且つ、垂直片部が床材の側面と当接されるように配置され、水平片部の他方主面に形成された接着剤層が床材の下面に接着されるように取付けられる、浮床構造である。
請求項に係る本発明は、請求項6または請求項7に係る発明に従属する発明であって、屋外に設けられたコンクリートスラブの上面に立設され、複数本の根太をコンクリートスラブの上面から高さ方向に間隔を隔てて支持する支持手段をさらに含む、浮床構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、床材との接続強度を強固にして、風で床材全体が捲れ上がる床材の吹き上がり現象を防止し、且つ、所望する任意の床材を適宜取り替えることができ、環境保全、省資源の観点から環境負荷も軽減することができる、床材支持具およびそれを用いた浮床構造が得られる。
【0008】
本発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る浮床構造の一実施例を示す平面図である。
図2図1の線A-Aにおける拡大端面図である。
図3図1の線B-Bにおける拡大端面図である。
図4図1に示す実施例に用いられる床材支持具の一例を示す図であって、図4(A)はその平面図であり、図4(B)は図4(A)の正面図である。
図5図1に示す浮床構造の要部斜視図である。
図6図5に示す床材支持具、緩衝材およびドリルねじ(連結手段)の取付け状態の一例を示す要部斜視図である。
図7】本発明に係る浮床構造の他の実施例を示す要部側面図解図である。
図8】本発明に係る浮床構造のさらに他の実施例を示す要部側面図解図である。
図9】本発明に係る浮床構造のさらに他の実施例を示す要部側面図解図である。
図10】本発明に係る床材支持具の他の例を示す図であって、図10(A)はその平面図であり、図10(B)は図10(A)の正面図である。
図11図10に示す床材支持具10Aと一対で用いられる床材支持具の一例を示す図であって、図11(A)はその平面図であり、図11(B)は図11(A)の正面図である。
図12】本発明に係る浮床構造の他の実施例を示す図であって、特に、図12(A)は、図10および図11に示す床材支持具を用いた浮床構造の実施例を示す平面図であり、図12(B)は図12(A)の正面図である。
図13図12に示す要部拡大図であって、図13(A)は図12(A)の要部拡大平面図であり、図13(B)は図12(B)の要部拡大正面図である。
図14図12(A)の線C-Cにおける要部拡大端面図であって、特に、図12および図13に示す浮床構造の作用・効果の一例を示す要部拡大端面図である。
図15図12(A)の線D-Dにおける要部拡大端面図である。
図16図16(A)は、図12(A)の線E-Eにおける要部拡大端面図であって、図12(A)で見て、その縦方向(上下方向)の床材間に配設されるスペーサ部材およびその取付け構造の一例を示す要部拡大端面図である。また、図16(B)は、図16(A)に示すスペーサ部材およびその取付け構造の他の例を示す要部拡大端面図である。
図17】本発明に係る床材支持具の別の例を示す図であって、図17(A)はその平面図であり、図17(B)は図17(A)の正面図である。
図18】本発明に係る床材支持具のさらに別の例を示す図であって、図18(A)はその平面図であり、図18(B)は図18(A)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る一実施例を示す平面図であり、図2は、図1の線A-Aにおける拡大端面図解図であり、図3は、図1の線B-Bにおける拡大端面図解図である。また、図4は、図1に示す実施例に用いられる床材支持具を示す図であって、図4(A)は、その平面図であり、図4(B)は図4(A)の正面図である。
本実施例に係る浮床構造100は、屋外に設けられたコンクリートスラブ50の上側に間隔を隔てて略平行に配設される複数本の根太30を含む。複数本の根太30の上面には、互いに間隔を隔てて、各根太30に対して、平面視略直交する方向に複数枚の床材32が配設される。この場合、根太30の長手方向に対して、床材32の幅方向または長手方向が平面で見て直交する方向となるように、根太30の上面に床材32が配置される。複数枚の床材32は、それぞれ、複数の床材支持具10によって、各根太30の上面で所定の位置に位置決めされ、さらに、各根太30と床材32とが接続されている。この浮床構造100では、たとえば図1および図2に示すように、床材支持具10によって、各根太30の上面において、間隔を隔てて平面視平行に対向する床材32の2辺間には、根太30の長手方向に沿って細長い隙間34(G)が配設されるものとなっている。
なお、床材32としては、特に、たとえばタイルバネル、大理石,御影石等の天然石などからなる石材パネル、コンクリートパネル、アクリル樹脂等の合成樹脂パネルなどが用いられ得る。
【0011】
そこで、この床材支持具10について、特に、たとえば図4を参照しながら、以下、詳細に説明する。
床材支持具10は、図4(A),(B)に示すように、アルミ等の金属材料で形成され、水平片部12および垂直片部14で全体形状がたとえば断面視L字状に形成されている。水平片部12は、図1に示すように、根太30の幅方向に沿って延びる長手方向を有し、図4(A),(B)に示すように、長さL1、幅L2、厚さ(高さ)h1を有する。この水平片部12は、図2に示すように、その一方主面(下面)が根太30の上面側と対向して配置され、その他方主面(上面)が床材32の下面側と対向して配置されている。
【0012】
また、この水平片部12は、図4(A),(B)に示すように、その他方主面(上面)に多数の凹凸部で形成された食い込み部12aを備えている。食い込み部12aは、図2に示すように、根太30と床材32とを後述する連結部材18で接続した場合、床材32の荷重で床材32の下面に食い込むものとなっている。
【0013】
そして、垂直片部14は、水平片部12の長手方向の一端部から垂直に立設されている。この垂直片部14は、図1および図2に示すように、根太30の上面に隣接して配置される2枚の床材32の間において上方に向けて延び設けられ、この2枚の床材32の間に排水部34となる隙間Gを形成することが可能となっている。この場合、垂直片部14は、図1に示すように、根太30の長手方向に延び設けられ、図4(A),(B)に示すように、長さL2、幅W、高さ(厚さ)Hを有する。なお、垂直片部14の高さ(厚さ)Hは、図4の(B)に示すように、水平片部12の厚さ(高さ)h1と、当該垂直片部14の内側面14aの厚さ(高さ)h2と、を加えたものである。
【0014】
さらに、床材支持具10には、図4(A),(B)に示すように、垂直片部14の長手方向の中間部、好ましくは垂直片部14の長手方向の中央部に貫通孔16を有する。この貫通孔16は、垂直片部14の高さ方向(H)に貫通している。また、貫通孔16の内周面には、雌ネジ面16aが形成されている。
さらに、床材支持具10は、図2に示すように、貫通孔16のネジ面(雌ネジ面)16aに螺合され、床材32と根太30を取り外し自在に連結する連結手段18を具備している。連結手段18は、図2および図6に示すように、貫通孔16のネジ面16aに螺合されるネジ面(雄ネジ面)18aを有するものであり、連結手段18としては、引抜保持力が高く、長期間の使用でも緩みにくい、たとえばドリルネジが用いられて好適である。
【0015】
また、床材支持具10には、図2および図5に示すように、水平片部12の一方主面(下面)に、緩衝部材としての第1の緩衝部材22が配設されている。この第1の緩衝部材22は、たとえばPP(ポリプロピレン)、イソブチエン・イソプレンゴム(IIR)[所謂、ブチルゴム]等の合成樹脂材料で形成され、防音効果を奏するものとなっている。
この場合、第1の緩衝部材22は、特に、図5に示すように、切欠部22aを有している。この切欠部22aは、垂直片部14の貫通孔16および当該貫通孔16の周辺部を囲繞する部位と対向する水平片部12に具備されている。また、第1の緩衝部材22は、水平片部12の下面に、たとえば接着剤を塗布すること、および両面テープを貼着すること等によって、つまり、図6に示すように、接着剤層24によって、床材支持具10の水平片部12の下面に接着される。
【0016】
この切欠部22aは、ドリルネジ等の連結手段18で根太30と床材32とを連結する際、たとえばドリルネジの切削による第1の緩衝部材22および根太30の切り屑(切粉)を逃がす役目を有するものとなっている。切欠部22aが設けられていない場合、緩衝部材22および根太30の切り屑により、当該第1の緩衝部材22にねじ込まれたドリルネジの周辺が膨出するなどの現象が見られるが、根太30と床材32とがしっかりと連結(締結)されていれば、この切欠部22aは、別段、具備されなくてもよい。
【0017】
この床材支持具10では、当該床材支持具10で根太30と床材32とを接続する場合、水平片部12の他方主面(上面)に接着剤層20が形成され、当該水平片部12の他方主面(上面)と床材32の下面とが接着可能となっている。この場合、水平片部12の食い込み部12aの上面に、たとえば接着剤を塗布することで接着剤層20が形成され、当該接着剤層20によって床材支持具10の水平片部12の他方主面(上面)が床材32の下面に接着される。
【0018】
本実施例に係る浮床構造100では、上記した床材支持具10によって、複数本の根太30の上面に複数枚の床材32が所定の位置に位置決めされ、各根太30と各床材32とが強固に接続される。
本実施例に係る浮床構造100では、図1に示すように、各根太30の上面において、当該根太30の幅方向に間隔を隔てて平行に配置された2つの床材32,32の2辺間で、且つ、各根太30の長手方向に延び設けられる隙間34(G)に間隔を隔てて複数の床材支持具10が取付けられる。この実施例では、図1に示すように、1つの床材32がたとえば4つの床材支持具10により支持されている。この場合、1つの床材32の四隅付近にそれぞれ1つの床材支持具10が配設され、この4つの床材支持具10により、1つの床材32が2つの根太30間に架設されている。
当該床材支持具10は、その水平片部12の他方主面(上面)が各床材32の下面に当接され、且つ、その垂直片部14の側面が各床材32の側面にするように配置される。この場合、床材支持具10は、図2および図6に示すように、当該床材支持具10の垂直片部14の内側面14aに床材32の側面が緊密に当接され、水平片部12の上面の食い込み部12aが床材32の下面に緊密に当接される。そして、床材支持具10の水平片部12の他方主面(上面)に形成された接着剤層20が当該床材32の側面に接着されるように取付けられる。
【0019】
また、本実施例に係る浮床構造100では、図1および図3に示すように、根太30の上面において、当該根太30の幅方向に間隔を隔てて平行に配置された2つの床材32間の長手方向の中間部、好ましくは中央部に、緩衝部材としての第2の緩衝部材26が配設されている。この第2の緩衝部材26は、第1の緩衝部材22よりも、たとえば長手方向の長さが長く形成され、その幅方向の長さは第1の緩衝部材22の幅方向の長さと略同じに形成されている。
この第2の緩衝部材26は、図1および図2に示すように、隣接する2つの床材32の間の下面に跨るように取付けられている。この場合、第2の緩衝部材26の下面に、たとえば接着剤を塗布することで接着剤層28が形成され、当該接着剤層28によって根太30の上面に接着されることによって取付けられている。この第2緩衝部材26は、第1の緩衝部材22と同様に防音効果を奏するものとなっているが、それ以外にも、隣接する2枚の床材32の撓みを吸収する機能も有するものとなっている。
なお、この第2の緩衝部材26は、他の根太36の長手方向に間隔を隔てて、当該根太36と床材32との間にも適宜複数個配設されている。
【0020】
さらに、本実施例に係る浮床構造100では、たとえば図7図8および図9に示すように、それぞれ、支持手段40、支持手段42、支持手段44およびそれらの組み合わせによって、コンクリートスラブの上面から高さ方向に所定の間隔を隔てて、当該浮床構造100を支持することが可能となっている。これらの支持手段40、支持手段42、支持手段44は、適宜な固定手段(図示せず)により、たとえば屋外に設けられたコンクリートスラブの上面に立設される。
【0021】
なお、上述の実施例では、床材支持具10がたとえばアルミ等の金属材料で形成されたが、それに限定されるものではなく、床材32の材料によって、適宜変更である。例えば、床材32がタイルパネル、コンクリートパネル、石材パネルの場合、当該床材支持具10はアルミ等の金属材料が好ましいが、床材32がアクリル樹脂等の合成樹脂パネルの場合、当該床材支持具10は合成樹脂材料のものが好ましい。
また、上述の実施例では、図1に示すように、床材支持具10が根太30の幅方向に間隔を隔てて平行に配置された2つの床材32,32の2辺間で、且つ、各根太30の長手方向に延び設けられる隙間34(G)に間隔を隔てて、たとえば2ケ所に取付けられ、すなわち、この実施例では、1枚の床材32について、床材32の略四隅付近に合計4つの床材支持具10が配設されたが、当該床材支持具10の設置数は、それに限定されることはなく、当該隙間Gの長手方向に間隔を隔てて、たとえば3ケ所に配設されてもよく、当該床材支持具10は、少なくとも2ケ所に配設されていればよい。
【0022】
上記した本実施例に係る床材支持具10が用いられた浮床構造100によれば、特に、図2に示すように、当該床材支持具10の垂直片部14の内側面14aを床材32の側面に緊密に当接されることによって、当該垂直片部14の内側面14aが各床材32の位置決めの当たり面となって、当該床材32を正確に各根太30の上面に位置決めすることができる。また、この床材支持具10で位置決めされた複数の床材32の間には、図4に示す当該床材支持具10の垂直片部14の幅方向の長さWにより、図1および図2に示すように、各床材32の間に設けられた隙間Gによって、雨水等の排水機能を有する排水部34が配設されるものとなっている。
【0023】
さらに、この浮床構造100では、連結手段18によって根太30と床材32とが取外し自在に連結されるので、容易に床材32を取外すことができる。そのため、浮床構造100の任意の床材32が劣化、破損等で不具合を生じても、適宜、当該劣化、破損した床材32を取り替えることが可能となっている。
一方、従来技術において、各床材が根太の上に接着剤で強固に固着されている場合、老朽化した浮床の床材を改装するときには、古い床材を撤去した後、新しい床材を敷設する必要があるが、床材が根太に強固に固着されているから例えば部分的に床材が破損したとき等、当該は破損部分だけを取り替えて改装することが困難となり、場合によっては古い床材全体を廃棄して床材全体を改装しなければならず、廃棄された床材は産業廃棄物となって環境に多大な負荷を与えるという問題があった。
それに対して、この浮床構造100では、上記したように、床材32を簡単に取り替えることができるため、産業廃棄物となる各種床材の量を低減することが可能となっている
。したがって、近年、建築廃材をなるべく少なくすることが環境保全、省資源の点から一段と重要になってきている社会の要望に応えることができるものとなっている。
【0024】
また、本実施例に係る浮床構造100によれば、当該床材支持具10が用いられることで、連結手段18および接着剤層20の相乗効果によって、根太30と床材32とを強固に接続することができるので、特許文献1等に示す従来技術のように、1枚1枚の床材32の重量を大きくする必要がない。そのため、屋上のスラブ面全体に掛かる重量負荷が大きくなることも防止することができ、延いては、建築物の梁や柱等躯体自体の強度を高めることがなく、建築コストが高く付くこともない。
【0025】
すなわち、本実施例に係る床材支持具10が用いられた浮床構造100によれば、床材32との接続強度を強固にして、風で床材全体が捲れ上がる床材32の吹き上がり現象を防止し、且つ、床材32を簡便に取り替えることができ、環境保全、省資源の観点から環境負荷を軽減することもできる、床材支持具10およびそれを用いた浮床構造100を提供することができる。
【0026】
図10は、本発明に係る床材支持具の他の例を示す図であって、図10(A)はその平面図であり、図10(B)は図10(A)の正面図である。
図10に示す床材支持具10Aは、図4に示す床材支持具10と比べて、特に、水平片部12の構造が相違する。すなわち、図4に示す床材支持具10では、当該水平片部12の上面に多数の凹凸部で形成された食い込み部12aが具備されるものであったのに対して、図10(A),図10(B)に示す床材支持具10Aでは、当該水平片部12の上面に複数の断面八の字状の溝で形成された凹部62a~62eと、複数の断面逆八の字状の凸部64a~64fとが具備されている。また、水平片部12は、図10(B)に示すように、水平片部12の距離(水平距離)をaとし、水平片部12の先端側(長さ方向の一端側)の高さ(厚み)をbとし、水平片部12の根元側(長さ方向の他端側)の高さ(厚み)をcとし、水平片部12の高低差(垂直距離)を(b-c)としたとき、当該水平片部12の上面に(b-c)/aの勾配が形成されている。
【0027】
この場合、複数の水平片部12の凸部64a~64fの内、当該水平片部12の根元側の凸部64a,当該水平片部12の長さ方向の中間部の凸部64c,凸部64eおよび水平片部12の先端側の凸部64fの上面は、(b-c)/aの勾配面上に位置するものである。また、当該水平片部12の長さ方向の中間部の凸部64bおよび凸部64dは、(b-c)/aの勾配面より僅かに下の低いところに位置するものである。
なお、図10(A),図10(B)に示す床材支持具10Aでは、例えば、当該床材支持具10Aの長さL1=47mm、幅L2=50mm、垂直片部14の高さ(厚さ)H=8.5mm、厚さ(高さ)h1=5.5mm、垂直片部14の内側面14aの厚さ(高さ)h2=3mm、水平片部12の距離(水平距離)a=41.8mm、水平片部12の先端側(長さ方向の一端側)の高さ(厚み)b=5.29mm、水平片部12の根元側(長さ方向の他端側)の高さ(厚み)c=5.5mmに形成されている。この場合、勾配(b-c)/a=1/200に形成されている。
上記したこの床材支持具10Aは、図11を参照して以下に説明する床材支持具10Bと一対で用いられるものである。
【0028】
図11は、図10に示す床材支持具10Aと一対で用いられる床材支持具の一例を示す図であって、図11(A)はその平面図であり、図11(B)は図11(A)の正面図である。図11に示す床材支持具10Bは、図10に示す床材支持具10Aと比べて、特に、水平片部12の距離(水平距離)をaとし、水平片部12の根元側(長さ方向の他端側)の高さ(厚み)をbとし、水平片部12の先端側(長さ方向の一端側)の高さ(厚み)をcとし、水平片部12の高低差(垂直距離)を(b-c)としたとき、当該水平片部1
2の上面に(b-c)/aの勾配が形成されている。
【0029】
この場合、複数の水平片部12の凸部64a~64fの内、当該水平片部12の根元側の凸部64a,当該水平片部12の長さ方向の中間部の凸部64c,凸部64eおよび水平片部12の先端側の凸部64fの上面は、(b-c)/aの勾配面上に位置するものである。また、当該水平片部12の長さ方向の中間部の凸部64bおよび凸部64dは、(b-c)/aの勾配面より僅かに下の低いところに位置するものである。
なお、図11(A),図11(B)に示す床材支持具10Aでは、例えば、当該床材支持具10Aの長さL1=47mm、幅L2=50mm、垂直片部14の高さ(厚さ)H=6.5mm、厚さ(高さ)h1=2.5mm、垂直片部14の内側面14aの厚さ(高さ)h2=4mm、水平片部12の距離(水平距離)a=41.8mm、水平片部12の先端側(長さ方向の一端側)の高さ(厚み)b=2.5mm、水平片部12の根元側(長さ方向の他端側)の高さ(厚み)c=2.71mmに形成されている。この場合、勾配(b-c)/a=1/200に形成されている。
【0030】
図12は、本発明に係る浮床構造の他の実施例を示す図であって、特に、図12(A)は、図10および図11に示す床材支持具を用いた浮床構造の実施例を示す平面図であり、図12(B)は図12(A)の正面図である。図13は、図12に示す要部拡大図であって、図13(A)は図12(A)の要部拡大平面図であり、図13(B)は図12(B)の要部拡大正面図である。
本実施例に係る浮床構造110では、図1図3に示す浮床構造100と比べて、特に、図12図14に示すように、図4に示す床材支持具10に替えて図10図11に示す床材支持具10A,10Bによって、複数本の根太30の上面に複数枚の床材32が所定の位置に位置決めされ、各根太30と各床材32とが強固に接続される。
図12図15に示す浮床構造110の例では、一対の床材支持具10A,10Bの水平片部12の上面に(b-c)/aの勾配を有しているため、当該床材支持具10A,10Bで支持される各床材32は、図13(B)に示すように、各床材32の上面にも(b-c)/aの勾配が形成されるものとなっている。
【0031】
そのため、本実施例に係る浮床構造110では、図13(A),図13(B)および図14に示すように、各根太30の上面に隣接して配置される2枚の床材32は、排水部34(隙間G)を間に挟んで、たとえば「ハ」の字状または逆「ハ」の字状に傾斜するように配列され得るものとなっている。すなわち、2枚の床材32の上面は、特に、図13(B)で見たときの例えば中央に位置する排水部34(隙間G)の左方および右方に向かって、(b-c)/aの勾配で斜め下方に傾斜する「ハ」の字状の態様に配列されている。
また、図13(B)で見たときの例えば右側に位置する排水部34(隙間G)の左方および右方に向かって、2枚の床材32の上面は、(b-c)/aの勾配で斜め上方に傾斜する逆「ハ」の字状の態様に配列されている。
【0032】
したがって、本実施例に係る浮床構造110では、根太32の上面に床材支持具10A,10Bで支持・固定された床材32の上面に(b-c)/aの勾配が形成されているため、雨水等の水は、特に、図14に示すように、各床材32の勾配面に沿って排水部34(隙間G)に向かって流れ込んで下方に排水される。そのため、当該浮床構造110では、床材32の上面に水溜まりが発生するのを防止することができる。
この水溜まり現象は、たとえば「おや水(俗称)」と呼ばれるものであって、従来の浮床構造では、上記した排水構造が設けられていないため、その床材上面の中央部、または、床材上面の任意の箇所に当該おや水が発生していた。そのため、従来の浮床構造では、その床材上面に人が通るときには、水溜まりに足をとられて転倒したり、靴等の履物の中に水が入って靴下が濡れてしまったりする不具合が生じるものであった。また、水溜まりの水により床材上面が疑似的に鏡面となり、たとえば女性のスカートを介して下着が水面
に映し出されたりするなどの苦情も出ている。こういった場合、特に、商業施設などに設けられる浮床構造には特に不向きなものであった。さらに、床材の上面を車椅子で通るときには、水で車椅子の車輪のタイヤが濡れるので、車椅子を操作する手が水で濡れてしまい車椅子の操作に支障をきたす恐れがあった。
それに対して、図12図14等に示す浮床構造110では、根太30の例えば幅方向に隙間34(G)を介して隣り合う床材32には、特に、たとえば図14に示す排水構造を具備しているので「おや水」の発生を防止することができ、上記した従来の浮床構造の各種の不具合、クレームおよび問題点を解消することができるものとなっている。しかも、この浮床構造110では、上記した排水構造を有すると共に、且つ、当該浮床構造の床材上面全体で見ると、+-0(プラスマイナスゼロ)のレベルをとることができるため、車椅子での走行にも支障がなく、所謂、バリアフリー化にも適応するものとなっている。
【0033】
また、この浮床構造110では、図4(A),図4(B)に示す床材支持具10と比べて、当該垂直片部14の長手方向に間隔を隔てて例えば2つの貫通孔16が配設されている。2つの貫通孔16は、それぞれ、その内周面にネジ面(雌ネジ面)16aが形成されている(図10および図11を参照。)。1対の床材支持具10A,10Bは、それぞれ、2つの貫通孔16のネジ面(雌ネジ面)16aに螺合され、2つのドリルネジ等の連結手段18によって根太30と床材32とが取外し自在に連結される。そのため、浮床構造100の任意の床材32が劣化、破損等で不具合を生じても、適宜、当該劣化、破損した床材32を簡便に取り替えることが可能となっている。
【0034】
この浮床構造110では、床材支持具10A,10Bが、それぞれ、ネジ面(雌ネジ面)16aが設けられた2つの貫通孔16を有しているため、当該床材32を再利用して支持具10A,10Bにより根太30に取付けるときに貫通孔16がずれていても、2つの貫通孔16の内の一方の貫通孔16を捨て孔にしてもう一方の貫通孔16を利用することができる。
また、この浮床構造110では、1つの連結手段18によって根太30と床材32とを連結する図1図3に示す浮床構造100と比べて、床材支持具10A,10Bが、それぞれ、2つの連結手段18を具備しているため、より一層、強固に根太30と床材32とを接続することができる。この場合、2つの連結手段18により根太30と床材32との接続強度が高くなるため、当該浮床構造110では、風で床材全体が捲れ上がる床材32の吹き上がり現象をより一層強固に防止することができる。
さらに、この浮床構造110では、2つの連結手段18を具備しているため、経年劣化等により連結手段18(ドリルネジ等)の内の1つが例えば緩んで浮き上がりが発生した場合でも、もう1つの連結手段18により補強され得るものとなっている。
【0035】
図15は、図12(A)の線D-Dにおける要部拡大端面図である。
図1図3に示す浮床構造100と同様に、第2の緩衝部材26が適宜複数個配設されている。すなわち、本実施例に係る浮床構造110では、図12および図15に示すように、根太30の上面において、当該根太30の幅方向に間隔を隔てて平行に配置された2つの床材32間の長手方向の中間部、好ましくは中央部に、緩衝部材としての第2の緩衝部材26が配設されている。この第2の緩衝部材26は、第1の緩衝部材22よりも、たとえば長手方向の長さが長く形成され、その幅方向の長さは第1の緩衝部材22の幅方向の長さと略同じに形成されている。
この第2の緩衝部材26は、図1および図2に示すように、隣接する2つの床材32の間の下面に跨るように取付けられている。この場合、第2の緩衝部材26の下面に、たとえば接着剤を塗布することで接着剤層28が形成され、当該接着剤層28によって根太30の上面に接着されることによって取付けられている。この第2緩衝部材26は、第1の緩衝部材22と同様に防音効果を奏するものとなっているが、それ以外にも、隣接する2枚の床材32の撓みを吸収する機能も有するものとなっている。
また、この第2の緩衝部材26は、他の根太36の長手方向に間隔を隔てて、当該根太36と床材32との間にも適宜複数個配設されている。
【0036】
図16は、図16(A)は、図12(A)の線E-Eにおける要部拡大端面図であって、図12(A)で見て、その縦方向(上下方向)の床材間に配設されるスペーサ部材およびその取付け構造の一例を示す要部拡大端面図である。また、図16(B)は、図16(A)に示すスペーサ部材およびその取付け構造の他の例を示す要部拡大端面図である。
本実施例に係る浮床構造110では、たとえば図12(A)で見て、根太30の長手方向に間隔を隔てて平行に配置された2つの床材32間の隙間G´の長手方向の中間部、好ましくは隙間G´の長手方向の中央部に、緩衝部材としての機能を併せ持つたとえば1つのスペーサ70が配設されている。このスペーサ70は、図16(A)に示すように、たとえば断面I字状に形成される。スペーサ70は、たとえばゴム等の弾性材および弾性を有する合成樹脂などで形成されている。このスペーサ70は、当該隙間G´の長手方向に間隔を隔てて複数配設されていてもよい。
なお、このスペーサ70は、図16(A)に示す断面I字状のもの以外にも、図16(B)に示すように、たとえば逆T字状に形成されていてもよい。
【0037】
図17は、本発明に係る床材支持具の別の例を示す図であって、図17(A)はその平面図であり、図17(B)は図17(A)の正面図である。
図17(A),図17(B)に示す床材支持具80Aは、図10図11に示す床材支持具10A,10Bと比べて、特に、垂直片部14の形成位置と水平片部12に形成される勾配の態様が相違するものとなっている。すなわち、この床材支持具80Aでは、垂直片部14が床材支持具80Aの長手方向の中央部に配設されている。また、床材支持具80Aの長手方向に見て垂直片部14の両側に、(b-c)/aの勾配が形成されている。この場合、垂直片部14から床材支持具80Aの長手方向の一端側(一方の先端側)および他端側(他方の先端側)にかけて、それぞれ、(b-c)/aの勾配で斜め上方に傾斜する態様に形成され、当該床材支持具80Aの正面視で見て、逆「ハ」の字状の態様に形成されている。
上記したこの床材支持具80Aは、図18(A),図18(B)を参照して以下に説明する床材支持具80Bと一対で用いられるものである。
【0038】
図18は、本発明に係る床材支持具のさらに別の例を示す図であって、図18(A)はその平面図であり、図18(B)は図18(A)の正面図である。
図18(A),図18(B)に示す床材支持具80Bは、図17(A),図17(B)に示す床材支持具80Aと比べて、特に、水平片部12に形成される勾配の態様が相違するものとなっている。すなわち、この床材支持具80Bでは、当該床材支持具80Bの長手方向に見て垂直片部14の両側に、(c-b)/aの勾配が形成されている。この場合、垂直片部14から床材支持具80Bの長手方向の一端側(一方の先端側)および他端側(他方の先端側)に向かって、それぞれ、(c-b)/aの勾配で斜め下方に傾斜する態様に形成され、当該床材支持具80Bの正面視で見て、「ハ」の字状の態様に形成されている。
なお、図17(A),図17(B)および図18(A),図18(B)に示す一対の床材支持具80A,床材支持具80Bは、それぞれ、勾配を有するものであるが、例えば勾配を有することなく、水平に形成されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 床材支持具
10A,10B 他の床材支持具
12 水平片部
12a 食込み部
14 垂直片部
14a 垂直片部の内側面
16 貫通孔
16a ネジ面(雌ネジ面)
18 連結手段
18a 他のネジ面(雄ネジ面)
20 接着剤層
22 第1の緩衝部材
22a 切欠部
24 他の接着剤層
26 第2の緩衝部材
28 さらに他の接着剤層
30 根太
32 床材
34 排水部
36 他の根太
40 支持手段
42 他の支持手段
44 さらに他の支持手段
50 コンクリートスラブ
62a,62b,62c,62d,62e 凹部
64a,64b,64c,64d,64e 凸部
70,72 スペーサ
80A,80B 別の床材支持具
100 浮床構造
110 他の浮床構造
G,G´ 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18