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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】クリップ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20240125BHJP
   A61B 17/128 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61B17/122
A61B17/128
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021165768
(22)【出願日】2021-10-07
(65)【公開番号】P2022066159
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/092,981
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 勝
(72)【発明者】
【氏名】植草 良嗣
(72)【発明者】
【氏名】常藤 達礼
(72)【発明者】
【氏名】安齋 慎矢
(72)【発明者】
【氏名】新藤 尚吾
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-121485(JP,A)
【文献】特開2005-058626(JP,A)
【文献】特開2007-097664(JP,A)
【文献】特開2015-008858(JP,A)
【文献】特開2010-213990(JP,A)
【文献】国際公開第2020/189666(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/099698(WO,A1)
【文献】特開2017-192513(JP,A)
【文献】特開2018-061672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0143767(US,A1)
【文献】特表2021-502861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/122
A61B 17/128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を把持するクリップ装置であって、
先端に第一爪を有する第一アームと、先端に第二爪を有する第二アームと、を有するクリップと、
前記クリップを操作可能なワイヤと、
前記ワイヤが挿通し、内視鏡のチャンネルに挿通可能なシースと、
前記チャンネルの外に配される時に、前記組織に押し付けられることによって、前記チャンネルに沿った直線状態から、湾曲した湾曲状態に遷移する湾曲部と、
を備え、
前記第一アームと前記第二アームとは、互いに向かって近付く内側に移動することで閉じた閉状態と、互いに遠ざかる外側に移動することで開いた開状態と、になる往復方向に移動可能に構成されており、
前記クリップが前記開状態と前記閉状態とを遷移する際、前記第一アームと前記第二アームは第一平面に沿って移動し、
前記第一アームは、前記第一アームから前記第一平面に交差する方向に向かって延びる第一突起を有し、
前記湾曲部は、前記第一突起より端側に配され、前記第一アームに対して前記第一突起が延びる方向に凸となるよう湾曲可能に構成され、前記第一突起の延びる方向および前記第一アームの長手方向の両方向に直交しかつ前記第一突起の一部を通る回転軸を中心として、前記第一アームに対して前記第一突起が延びる方向に回転するよう構成される、
クリップ装置。
【請求項2】
前記第一突起は、前記第一平面に直交する方向において、前記第一アームから延びる、
請求項1に記載のクリップ装置。
【請求項3】
前記湾曲部は、前記内視鏡の前記チャンネルの外に配される時に第1角度で湾曲し、前記内視鏡の前記チャンネルの内に配置される時に前記第1角度よりも小さい第2角度で湾曲する、
請求項1に記載のクリップ装置。
【請求項4】
前記シースは前記湾曲部を有する、
請求項1に記載のクリップ装置。
【請求項5】
前記クリップは前記湾曲部を有する、
請求項1に記載のクリップ装置。
【請求項6】
前記第一突起の基端と前記第一爪の基端とが連結し、
前記第一突起の延びる方向と前記第一爪の延びる方向が異なる、
請求項1に記載のクリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2020年10月16日に出願された米国仮出願第63/092,981号の利益を主張し、その全文が参照により本明細書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、外科的処置において患者の組織を把持するクリップであって、内視鏡などの手術器具とともに使用できるクリップに関する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明では、特定の構造および/または方法について言及する。しかしながら、以下の説明は、これらの構造および/または方法が先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造および/または方法が本発明に対する先行技術として適していないことを実証する権利を明示的に留保する。
【0004】
内視鏡用クリップ、すなわちエンドクリップは、内視鏡とともに使用され、人体内において組織を把持できる。エンドクリップは、組織の出血の防止、穿孔の閉鎖、および他の外科的処置などの治療処置での使用が見出されている。形状および/またはサイズが異なる多くのエンドクリップがあり、使い捨ておよび再装填可能なシステムを使用して取り扱うことができ、身体へのクリップの配置を容易にするために開閉するものと開閉しないものとがある。
【0005】
例えば、特許文献1は、クリップのアームプレートの内面に突起を有する内視鏡用クリップを開示している。突起は互いに向き合うように内側に向けられており、クリップが閉じているときにクリップのアーム間に組織を保持しやすくするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015―008858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、外科的処置において患者の組織を把持でき、内視鏡などの手術器具とともに使用できるクリップに対する継続した更なるニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の利点は、クリップがアンカーを備え、アンカーを有さないクリップよりも患者の組織に接触してより容易に組織に付着できることである。本開示のクリップは、例えばクリップが組織に対して垂直よりも小さい角度で組織に接近したときに、組織の把持をより容易にすることができる。
【0009】
これらおよびその他の利点は、少なくとも部分的には以下のクリップによってもたらされる。クリップは、組織を把持するクリップであって、先端に第一爪を有する第一アームと、先端に第二爪を有する第二アームと、を備え、前記第一アームと前記第二アームとは、互いに向かって前記クリップを閉じる方向に移動可能に構成されている。いくつかの実施形態においては、第一爪と第二爪とは互いに向かい合っている。他の実施形態においては、第一アームと第二アームは、互いに近付けたり遠ざけたりするクリップを開閉する往復方向に移動可能である。他の実施形態において、第一アームと第二アームとが互いに向かってクリップを閉じる方向に移動可能に構成されており、アームが一度閉じると、クリップは開かないようにロックできる。
【0010】
有利なことに、クリップは、第一アームに設けられた第一アンカーのように一以上のアンカーを備える。クリップは、オプションとして、第二アームに設けられた第二アンカーを備えてもよい。第一アンカーは、第一アームと第二アームとが互いに向かって移動してクリップを閉じる方向以外の方向において、第一アームから突出している。クリップが第二アンカーを備える場合、第二アンカーは、第一アームと第二アームとが互いに向かって移動してクリップを閉じる方向以外の方向において、第二アームから突出している。いくつかの実施形態において、クリップは、第一アンカーおよび第二アンカーを備える。
【0011】
本開示の実施形態は、以下の特徴のうち一つ以上の特徴を個別または組み合わせて有する。例えば、本開示のクリップは、シースに接続可能な押さえ管とともに構成できる。クリップは、直接または連結部を経由してワイヤに接続できる。いくつかの実施形態において、押さえ管にクリップが引き込まれたとき、第一アンカーと第二アンカーを保護するカバーと組み合わせてもよい。他の実施形態において、第一アンカーと第二アンカーは、アームに設けられたスリットを通じて突出できる。他の実施形態において、第一アンカーと第二アンカーは、第一アームと第二アームにより定義される平面と直交する方向において突出できる。他の実施形態において、第一アームと第二アームにより定義される平面に向かって回転可能である。他の実施形態において、第一アームと第二アームのそれぞれは湾曲可能である。
【0012】
本発明の追加の利点は、以下の詳細な説明から当技術分野の当業者に容易に明らかになり、本発明の好ましい実施形態のみが、本発明を実施するために検討される最良の様式の例示として単に示され、説明される。認識されるように、本発明は他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本発明から逸脱することなく、様々な明らかな点で修正することができる。したがって、図面および説明は、本質的に例示的なものと見なされるべきであり、限定的なものとして見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】第一アームの外周面および第二アームの外周面から突出するアンカーのクリップを概略的に示す図である。この例ではアンカーは、クリップを開閉する第一アームと第二アームの往復方向から分岐する方向において、それぞれのアームから突出している。
図1B】第一アームの外周面および第二アームの外周面から突出するアンカーのクリップを概略的に示す図である。この例ではアンカーは、クリップを開閉する第一アームと第二アームの往復方向から分岐する方向において、それぞれのアームから突出している。
図1C】第一アームの外周面および第二アームの外周面から突出するアンカーのクリップを概略的に示す図である。この例ではアンカーは、クリップを開閉する第一アームと第二アームの往復方向から分岐する方向において、それぞれのアームから突出している。
図1D】第一アームの外周面および第二アームの外周面から突出するアンカーのクリップを概略的に示す図である。この例ではアンカーは、クリップを開閉する第一アームと第二アームの往復方向から分岐する方向において、それぞれのアームから突出している。
図2A】本開示の態様に係るクリップデバイスの構成要素に接続されたカバーによって保護可能なアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。
図2B】本開示の態様に係るクリップデバイスの構成要素に接続されたカバーによって保護可能なアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。
図2C】本開示の態様に係るクリップデバイスの構成要素に接続されたカバーによって保護可能なアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。
図2D】本開示の態様に係るクリップデバイスの構成要素に接続されたカバーによって保護可能なアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。
図2E】本開示の態様に係るクリップデバイスの構成要素に接続されたカバーによって保護可能なアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。
図3A】本開示の態様に係るクリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する軟性のアンカーを示す図である。
図3B】本開示の態様に係るクリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する軟性のアンカーを示す図である。
図3C図3Bに示すクリップのアームの拡大図である。
図4A】本開示の態様に係るクリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する軟性のアンカーを概略的に示す図である。
図4B】本開示の態様に係るクリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する軟性のアンカーを概略的に示す図である。
図4C図4Aに示すクリップのアームの拡大図である。
図4D】本開示の態様に係るクリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する他の軟性のアンカーを概略的に示す図である。
図4E】本開示の態様に係るクリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する他の軟性のアンカーを概略的に示す図である。
図4F】本開示の態様に係るクリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する他の軟性のアンカーを概略的に示す図である。
図4G】本開示の態様に係るクリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する他の軟性のアンカーを概略的に示す図である。
図4H】本開示の態様に係るクリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する他の軟性のアンカーを概略的に示す図である。
図5A】第一アームと第二アームとが閉じる方向から分岐する方向において第一アームおよび第二アームから突出するアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。この例において、閉状態におけるアンカーの両端により定義される幅Wは、押さえ管の幅よりも小さく、内視鏡のチャンネルのような処置具のチャンネルの幅よりも小さい。
図5B】第一アームと第二アームとが閉じる方向から分岐する方向において第一アームおよび第二アームから突出するアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。この例において、閉状態におけるアンカーの両端により定義される幅Wは、押さえ管の幅よりも小さく、内視鏡のチャンネルのような処置具のチャンネルの幅よりも小さい。
図6A】アームにより形成される平面と直交する方向において突出するアンカーと、クリップが押さえ管に引き込まれるときにアンカーが十分に入ることができる開口を有する押さえ管と、を備えるクリップを概略的に示す図である。
図6B】アームにより形成される平面と直交する方向において突出するアンカーと、クリップが押さえ管に引き込まれるときにアンカーが十分に入ることができる開口を有する押さえ管と、を備えるクリップを概略的に示す図である。
図7A】本開示の態様に係る生体吸性を備える一以上のアンカーを備え、患者の生体組織を把持するクリップを概略的に示す図である。
図7B】本開示の態様に係る生体吸性を備える一以上のアンカーを備え、患者の生体組織を把持するクリップを概略的に示す図である。
図7C】本開示の態様に係る生体吸性を備える一以上のアンカーを備え、患者の生体組織を把持するクリップを概略的に示す図である。
図8】本開示の態様に係る一つのアンカーを備え、患者の生体組織を把持するクリップを概略的に示す図である。
図9A】本開示の態様に係るアームごとに複数のアンカーを有し、および/または、複数のアンカーが互いに異なる方向に突出するクリップを概略的に示す図である。
図9B】本開示の態様に係るアームごとに複数のアンカーを有し、および/または、複数のアンカーが互いに異なる方向に突出するクリップを概略的に示す図である。
図9C】本開示の態様に係るアームごとに複数のアンカーを有し、および/または、複数のアンカーが互いに異なる方向に突出するクリップを概略的に示す図である。
図10】本開示の態様に係るクリップであって、二つのアンカーを有し、患者の生体組織を把持するクリップを概略的に示す図である。
図11A】本開示の態様に係るクリップが押さえ管に引き込まれたときにアームにより定義される平面に対して回転するように構成されたアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。
図11B】本開示の態様に係るクリップが押さえ管に引き込まれたときにアームにより定義される平面に対して回転するように構成されたアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。
図11C】本開示の態様に係るクリップが押さえ管に引き込まれたときにアームにより定義される平面に対して回転するように構成されたアンカーを備えるクリップを概略的に示す図である。
図12A】本開示の態様に係るクリップであって、それぞれのアームに設けられたアンカーの位置を特定するマーカーを有するアームを備えるクリップを概略的に示す図である。
図12B】本開示の態様に係るクリップであって、それぞれのアームに設けられたアンカーの位置を特定するマーカーを有するアームを備えるクリップを概略的に示す図である。
図13A】本開示の態様に係るクリップであって、クリップの使用時において容易にアンカーを観察できるように、隙間を有する爪、または、アンカーの幅よりも幅が大きい又は小さい爪を備えるクリップを概略的に示す図である。
図13B】本開示の態様に係るクリップであって、クリップの使用時において容易にアンカーを観察できるように、隙間を有する爪、または、アンカーの幅よりも幅が大きい又は小さい爪を備えるクリップを概略的に示す図である。
図14A】第一アームの長手方向に対して垂直な方向においてアームから突出するアンカーを備えたクリップアームの概略的な側面図である。この例において、アンカーは、フック状の形状をしており、クリップを組織に垂直に配置できる。
図14B】第一アームの長手方向に対して垂直な方向においてアームから突出するアンカーを備えたクリップアームの概略的な側面図である。この例において、アンカーは、フック状の形状をしており、クリップを組織に垂直に配置できる。
図15A】本開示の態様に係るクリップであって、クリップが患者の組織に付着した後、クリップは手術器具から切り離されるように構成され、クリップのアームにおいて湾曲部を有するクリップの概略的な側面図である。
図15B】本開示の態様に係るクリップであって、クリップが患者の組織に付着した後、クリップは手術器具から切り離されるように構成され、クリップのアームにおいて湾曲部を有するクリップの概略的な側面図である。
図16】本開示の態様に係るアームに湾曲部を有するクリップの概略的な側面図である。(C)は(A)に示すアームクリップの拡大図である。
図17A】本開示の態様に係るクリップであって、アームに設けられた湾曲部とノッチを備えたクリップの概略的な側面図である。
図18】本開示の態様に係るジョイントを介して連結された2つの関節部を有するアームを備えたクリップの概略的な側面図である。
図19】本開示の態様に係るアームを湾曲状態にロックできるジョイントを介して連結された2つの関節部を有するアームを備えたクリップを概略的に示す図である。(C)は(B)に示すクリップのアームの拡大図である。
図20】ジョイントを介して連結された2つの関節部を有するアームを備えたクリップの他の実施形態の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照する。ここで、同じ符号の指定を有する要素は、全体を通して同様の要素を表す。すべての図面を通して、それぞれの構成要素の寸法は、明確にするために適切に調整されている。場合によっては、見やすくするために図において名前付き機能の一部のみに符号が付けられている。
【0015】
本開示のクリップは、組織の出血の防止、穿孔および止血の閉鎖、内傷の縫合収縮、病変およびトラクション(粘膜隆起)のマーキング、および他の外科的処置のような患者の治療処置に有用なクリップデバイスを対象とする。本明細書で使用される「患者」という用語は、あらゆる生物を含み、「被験者」という用語を含む。患者は人間でもあってもよく動物でもあってもよい。
【0016】
一般的に患者の組織を把持するクリップは、クリップ操作ツールを用いて駆動される。そのようなツールは、通常、可撓性チューブに収容された操作ワイヤによってクリップを駆動する。操作ワイヤは、ツールのハンドルを操作することによって、可撓性チューブ内で長手方向に進退できる。本明細書における「先端(遠位)」という用語は、操作ハンドルから離れる方向であり、一方、「基端(近位)」という用語は、操作ハンドルに向かう方向である。クリップ操作ツールは、米国特許第8480685号明細書および米国特許第9949740号明細書に開示されており、その全文が参照により本明細書に援用される。
【0017】
本開示に係るクリップの様々な態様を、図1および図20を参照して説明する。
【0018】
図1Aから図1Dに示すように、患者の生体組織を把持するクリップ10は、先端に第一爪12aを有する第一アーム12と、先端に第二爪13aを有する第二アーム13と、を備える。さらに図示されるように、第一爪12aと第二爪13aとは互いに向かい合っており、第一アーム12と第二アーム13は互いに近付けたり遠ざけたりするクリップを開閉する往復方向(R)に移動するように構成される。アームが閉じたとき、第一爪と第二爪とは同一平面もしくは略同一平面にあり、互いに接触する。
【0019】
本開示のクリップは、有利なことに、第一アームおよび/または第二アームから突出する一以上のアンカー(突起)を有する。本明細書におけるアンカーは、最小限の力で接触することで患者の組織に付着できる構造を含み、例えば、突起、フック、とげ(barb)、スパイクなどを含むことができる。一以上のアンカーは、第一アームと第二アームとが互いに向かって移動してクリップを閉じる方向以外の方向において、それぞれのアームから突出している。例えば、アンカーは、爪から分岐する方向や、第一アームと第二アームにより定義される平面に対して直交する方向(アームに対して垂直な方向)や第一アームと第二アームとが互いに向かって移動してクリップを閉じる方向以外の方向において突出していてもよい。
【0020】
図1Aから図1Dにさらに示すように、第一アーム12は、第一アーム12の外周面において第一爪12aから分岐する方向に突出する第一アンカー(第一突起)14aを有する。第二アーム13は、第二アーム13の外周面において第二爪13aから分岐する方向に突出する第二アンカー(第二突起)14bを有する。クリップ10は、可撓性チューブ18に接続可能なパイプ(以降、「押さえ管」ともいう)16の中から展開可能である。術中において、図1Cおよび図1Dに示すように組織を受け入れる構成である開状態に付勢されたアーム12,13は、操作ワイヤ(不図示)によって駆動されることで閉じられる。操作ワイヤは、クリップに結合され、パイプ内でクリップを基端側および先端側にスライド移動できる。操作ワイヤは、クリップ操作ツール(不図示)の操作ハンドルを操作することにより可撓性チューブの中を進退できる。クリップを基端側および先端側にスライド移動させると、アームおよび爪を互いに近付けたり遠ざけたりすることにより、クリップは開閉する。いくつかの実施形態においては、一度クリップが押さえ管の中に引き込まれると、クリップは開かないようにロックできる。
【0021】
図1Cから図1Dに示すように、本開示のクリップの効果は、例えば接線アプローチのようにクリップのアプローチが組織に対して垂直でないときであっても、組織に付着できることである。ここで、図1Cは、垂直アプローチを示しており、図1Dは、接線アプローチを示している。垂直でないアプローチにおいて、第二アーム13の第二アンカー14bは欠陥Dの近くの組織Tを捕まえることができる。アンカーが組織を捕まえた後にクリップを閉じるとき、爪およびアームは組織を持ち上げることができ、アームの爪は組織をより簡単に把持できる。さらに、アンカーが組織を捕まえた後、組織に付着したアンカーとともにアームの爪で組織をさらに把持するように、クリップは回転できる。有利なことに、本開示のクリップにおけるアームが外周面に設けられた一以上のアンカーは、組織への接線アプローチ(図1D)において、クリップのアームの先端が滑ることを防止できる。
【0022】
具体的には、図1Dに示すように、術者は、第二アーム13を接線アプローチの方向(図中にAで示す矢印の方向)において組織Tに押し付けることにより、第二アンカー14bで粘膜を引っかけて寄せることで、粘膜を第二アーム13内に入れ込むことができる。術者は、さらに第二アーム13を押し付けることにより、クリップ10を第二アンカー14を中心に回転させてクリップを組織Tに対して正対させることができる。なお、上記の効果を好適に発揮するため、接線アプローチにおいて、第一アンカー14aと第二アンカー14bの少なくとも一方が組織Tに対して垂直に接触することが望ましい。
【0023】
図2Aから図6Bは、本開示のクリップの別の態様を示しており、クリップツールや内視鏡との接触を軽減する別の方法を示している。例えば図2Aから図2Eは、クリップのアンカーを保護するカバーを示している。図2Aおよび図2Bにおいて、カバー21は押さえ管16に取り付けられており、押さえ管16から先端側に延びている。クリップ10は、押さえ管16に引き込まれることにより閉じられる(図2B)。クリップが押さえ管の中に引き込まれたとき、カバーはアームの外周面に設けられた一以上のアンカーを保護するために先端側に十分に延びることができる。図2Bに示すように、クリップ10が押さえ管16の中に引き込まれたとき、カバー21はアンカー14a,14bを保護するために先端側に十分に延びる。
【0024】
図2Cから図2Eは、クリップのアンカーを保護できるカバーの異なる取り付け位置を示している。例えば、図2Cはシース18に取り付けられたカバー21を示している。図2Dから図2Eは、連結部29またはワイヤ27にカバー21を取り付ける方法を示している。図2Dは、開状態であってアンカーが露出したクリップを示している。図2Eは、閉状態であってアンカーがカバー21によって保護されたクリップを示している。クリップが押さえ管の中に引き込まれたとき、カバーは、取り付けられる場所に関わらず、アンカーを保護するために先端側に十分に延びる。カバー21は、プラスチックまたはその他の弾性材料または金属でできており、接着剤または溶接で取り付けることができる。
【0025】
図3Aから図3C図4Aから図4Cは、クリップが開いた後にクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する軟性のアンカーを示している。図3Aに示すように、クリップが閉じた状態において、第一アンカー34aと第二アンカー34bは、クリップ30の第一アーム32と第二アーム33の内周面によって保護される。第一アンカー34aと第二アンカー34bは、柔軟部材31aと柔軟部材31bそれぞれによってクリップ30に接続されている。図3B図3Cに示すようにクリップ30が開状態であるとき、第一アンカー34aはクリップ30の第一アーム32に設けられたスリット35と通じて突出する。クリップ30が開状態であるとき、便宜のため図示を省略するが、第二アンカー34bもクリップ30の第二アーム33に設けられたスリットを通じて突出する。このように、押さえ管からクリップを展開するなどクリップを展開する前において、アンカーを保護できる。
【0026】
別の実施形態において、図4Aから図4Hは、クリップを開いた後においてクリップのアームに設けられたスリットを通じて突出する柔軟なアンカーを示している。具体的には、クリップ30が閉状態に向かって移動するとき、第一アンカー44aと第二アンカー44bは、第一アーム42と第二アーム43それぞれに向かって引き込まれる(図4B図4C)。図4Aに示すようにクリップ40が開状態であるとき、第一アンカー44aは、柔軟部材41aによってクリップ40の第一アーム42に設けられたスリット45を通じて突出する。クリップ40が開状態であるとき、便宜のため図示を省略するが、第二アンカー44bもクリップ40の第二アーム43に設けられたスリットを通じて突出する。このように、クリップが押さえ管16に引き込まれるとき、アンカーはクリップのアームに近付けることができる。
【0027】
図4Dから図4Hにおいてさらに示すように、内視鏡のようなツールに挿入されたとき(図4Eおよび図4F)、クリップと柔軟部材は閉状態となり得る。クリップのアームおよび柔軟部材は開状態に付勢されているため、ツールのチャンネルから抜け出す操作によりクリップのアームおよび柔軟部材は開く(図4Dおよび図4G)。術中において、ワイヤ(不図示)の基端に接続された操作ハンドル(不図示)は、ワイヤ47を操作して、クリップを閉じるために押さえ管16の中にクリップ40を引き込む。特定のクリップデバイスは、押さえ管をシース18に対して着脱可能な連結部49を含むことができる(図4H)。そのようなクリップデバイスは、クリップの先端をワイヤに対して係合・非係合する連結部を含む。さらに、連結部は、係合・非係合する要素部材を内部に含んでいてもよい(図4H)。
【0028】
別の実施形態において、図5Aおよび図5Bは、患者の生体組織を把持するクリップ50であり、先端に第一爪12aを有する第一アーム12と、先端に第二爪13aを有する第二アーム13と、を備える。さらに図示されるように、第一爪12aと第二爪13aとは互いに向かい合っており、第一アーム12と第二アーム13はクリップを開閉するように互いに近付けたり遠ざけたりする往復方向(R)に移動するように構成される。さらに図に示されるように、第一アーム12は第一爪12aから分岐する方向に突出する第一アンカー14aを有し、第二アーム13は第二爪13aから分岐する方向に突出する第二アンカー14bを有する。クリップ50は、押さえ管16の中から開状態に向かって展開可能である(図5A)。閉状態(図5B)におけるアンカーの間の距離として定義される幅Wは、押さえ管16の幅よりも小さく、内視鏡のチャンネルのような処置具のチャンネルの幅よりも小さいため、アームから突出するアンカー14a,14bは、チャンネルに接触しないか、最小限でしか接触しない。
【0029】
他の実施形態において、図6Aおよび図6Bは、先端に第一爪12aを有する第一アーム12と、先端に第二爪13aを有する第二アーム13と、を備えるクリップを示している。さらに図示するように、第一爪12aと第二爪13aとは互いに向かい合っており、第一アーム12と第二アーム13とは互いに向かって移動してクリップを閉じる方向に移動するように構成される。本実施形態において、第一爪12aと第二爪13aとは、アームを閉じたときに接触する。さらに図示されるように、クリップは、第一アーム12に設けられた第一アンカー64aと、第二アーム13に設けられた第二アンカー64bと、を有する。両アンカーは、第一アーム12と第二アームと13とが形成する平面と直交する方向に突出している。押さえ管66は開口を有しており、例えば、クリップが押さえ管に引き込まれるときにアンカーが押さえ管に入ることができるほどに十分大きい直径Dを有する。図6Bは、クリップが押さえ管に引き込まれてクリップが閉状態となったときにおける、押さえ管66の中のアンカー64を示している。
【0030】
アーム、爪およびアンカーは、適切な形態であってもよく、例えばワイヤの形態(図1Aから図1Dに示される実施形態)でもよく、リボンの形態(図6Aから図6Bに示される実施形態)でもよく、例えばアームと爪がリボンの形態でありアンカーがワイヤの形態であるように、組み合わせの形態であってもよい。
【0031】
図7から図8は、クリップのアームに設けられるアンカーの別の態様を示している。特に図7Aから図7Cは、患者の生体組織Tを把持するクリップを示しており、先端に第一爪12aを有する第一アーム12と、先端に第二爪13aを有する第二アーム13と、を備える。第一爪12aと第二爪13aとは、互いに向かい合っている。さらに示すように、第一アーム12は、第一アーム12の外周面において第一爪12aから分岐する方向に突出する第一アンカー74aを有する。第二アーム13は、第二アーム13の外周面において第二爪13aから分岐する方向に突出する第二アンカー74bを有する。この例において、第一アンカー74aおよび第二アンカー74bは、生体吸性材料で形成されている。このように、アンカーが組織Tに付着した後、それらは最終的に組織に溶解し、クリップから取り除くことができる(図7C)。このような生体吸性材料からなるアンカーは、生体吸着性接剤などの接着剤によってクリップアームに取り付けておくことができる。
【0032】
図8から図11は、第一アームと第二アームにより定義される平面に直交する方向に突出するアンカーを示している。特に図8図10は、患者の生体組織Tを把持するクリップを示しており、先端に第一爪12aを有する第一アーム12と、先端に第二爪13aを有する第二アーム13と、を備える。第一爪12aと第二爪13aとは互いに向かい合っており、第一アーム12と第二アーム13とは互いに向かって移動してクリップを閉じる方向に移動するように構成される。図8(A)に示すように、第二アーム13は、第一アームと第二アームにより定義される平面Pと直交する方向において第二アーム13から突出する第一アンカー84aを有する。図に示されるように、アームは、XY座標を備える平面を形成して、アンカーはZ軸方向に突出する。図10(A)において、第一アーム12は、第一アーム12と第二アーム13により定義される平面に直交する方向に突出する第一アンカー104aを有する。第二アーム13は、第一アームと第二アームにより定義される平面に直交する方向に突出する第二アンカー104bを有する。第一アンカー104aと第二アンカー104bとは、アームにより定義される平面から反対方向に突出する。第一アームと第二アームにより定義される平面に直交する方向に少なくとも一つのアンカーが突出する構成は、アームが互いに近付いたときに組織を持ち上げ(図8(C)における81、図10(C)における101)、直交するアンカーにより組織を有利に捕えることができ(図8(B)、図10(B))、アームによる組織の把持が容易となる。
【0033】
図10(B)に示すように、組織T側に突起がないアームの爪は、組織Tに直接接触する。図10(C)に示すように、アームが互いに近付いたときに組織は持ち上げられ、最終的に組織Tは二つの爪により把持される。
【0034】
図9Aから図9Cは、アームごとに複数のアンカーを有し、および/または、複数のアンカーが互いに異なる方向に突出するクリップを示している。特に図9Aは、二つのアンカーを有する第一アーム12を示している。第一アンカー94aは、第一アームと第二アームとにより定義される平面と直交する方向において第一アーム12から突出する。第二アンカー94cは、第一アームと第二アームとにより定義される平面と直交する方向であって第一アンカー94aと反対の方向において第一アーム12から突出する。第二アーム13も二つのアンカーを有する。第三アンカー94bは、第一アームと第二アームとにより定義される平面と直交する方向において第二アーム13から突出する。第四アンカー94dは、第一アームと第二アームとにより定義される平面と直交する方向であって第三アンカー94bと反対の方向において第二アーム13から突出する。図9Bは、二つのアンカー(第一アンカー94a、第三アンカー94b)を有する第一アーム12と、第四アンカー94dを有する第二アーム13と、を示している。図9Cは、それぞれが一つのアンカー(第一アンカー94a、第四アンカー94d)を有するアームを示しており、アンカーは第一アームと第二アームとにより定義される平面に対して異なる方向において突出する。
【0035】
図11A図11Bおよび図11Cは、クリップが押さえ管に引き込まれたときにアームにより定義される平面に対して回転するように構成されたアンカーを示している。例えば図11Aおよび図11Bを参照すると、第一アンカー114aと第二アンカー114bは、クリップが押さえ管116に引き込まれて押さえ管の端がアンカーに接触したときにアンカーがアームにより定義される平面に対して回転可能な構造、例えばピン(111a,111b)により、第一アーム12と第二アーム13それぞれに取り付けられている。
【0036】
術者は、第一アンカー114aと第二アンカー114bで粘膜を引っかける。術者は、図11Bに示すように第一アーム12と第二アーム13とを押さえ管116に引き込むことで、押さえ管116と接触した第一アンカー114aと第二アンカー114bは第一アーム12と第二アーム13により定義される平面に向かって回転する(図11Bに示す119)。その結果、第一アンカー114aと第二アンカー114bに引っかけられた粘膜は、第一爪12aと第二爪13aまで挙上される。術者は、第一アンカー114aと第二アンカー114bに引っかけた粘膜を第一爪12aと第二爪13aに持ち替える作業を容易に行える。
【0037】
図11Cは、アームが押さえ管から突没したときに、クリップのアームにより定義される平面に対してアンカーを回転させるように構成されたアンカー構造を示している。図示するように、アンカー114は、アーム13と一体に形成されており、開状態となるように付勢されている。ただし、アンカー114は、押さえ管116に引き込まれると閉状態となる。この構造により、クリップが押さえ管116に引き込まれたときにアームにより定義される平面に向かって回転可能なアンカーを構成するためのピンが不要となる。その代わりに、アンカーは、開状態となるように付勢されたバネを有し、押さえ管から先端側に引き出すと押さえ管から飛び出す。
【0038】
図12から図13は、クリップの使用時において容易に特定可能なアンカーを備えるクリップを示している。例えば、図12Aおよび図12Bは、それぞれのアームに設けられた第一アンカー124aまたは第二アンカー124bの位置を特定するマーカー121を有する第一アーム12と第二アーム13を示している。このように、アンカーが組織Tに巻き込まれたときのようにアンカーが使用者に見えない場合であっても、使用者は第一アームと第二アームのそれぞれに設けられたマーカー(121a,121b)によりアンカーの位置を特定できる。クリップのアームに設けられたマーカー121は、蛍光マーカー、色、記号、でこぼこ等のアームに生成されたテクスチャ、またはアンカーの位置にあるアームの同等物によって形成されていてもよい。
【0039】
図13Aおよび図13Bは、クリップの使用時において容易にアンカーを観察できるように、隙間を有する爪、または、アンカーの幅よりも幅が大きい又は小さい爪を備えるクリップを示している。例えば、図13Aおよび図13Bは、第一アームおよび第ニアーム(12,13)が第一爪および第ニ爪(12a,13a)を有するクリップ10を示しており、第一アンカーおよび第ニアンカーは、使用時にアンカーを観察しやすくするために、爪の幅(134a,134b)よりも小さい幅、または爪の幅(134c,134d)よりも大きい幅を有している。図13Aは、第一アンカー134aを容易に観察できる隙間を有する第一爪132aと、第二アンカー134bを容易に観察できる隙間を有する第二爪133aとを示している。
【0040】
図14から図20は、本開示に係るクリップアームを概略的に示しており、クリップが組織に接線方向にあるときに、組織に垂直方向の力を有利なことに加えることができ、複数のクリップを互いに近接して配置できるように湾曲することができる。例えば、図14Aおよび図14Bは、クリップ10の側面図であり、第一アームの長手方向に対して垂直な方向において第一アーム12から突出するアンカー144を備えた第一アーム12を示している。この例において、アンカー144は、フック状の形状をしており、クリップの第一アームと第二アームにより定義される平面と直交する方向に突出しており、クリップを組織Tに垂直に配置できる。アンカー144が組織Tに付着した後、クリップは回転し(図14Bに示す141)、組織に垂直方向Vの力がかかる。本開示に記載されているようなクリップ上のアンカーの別の利点は、クリップを粘膜にしっかりと押し付けることができるため、より多くの組織を爪の間に挿入し、より多くの組織をクリップでつかむことができることである。
【0041】
具体的には、術者は、アンカー144の先端に設けられた鋭利部144aを粘膜に引っかけて、シース18の長手方向においてシース18を組織Tに向かって押し付ける。その結果、鋭利部144aを引っかけた部分を中心に回転し(図14Bに示す141)、シース18が撓む。これにより、アンカー144を組織Tに対して押し付ける力がさらに発生する。従来のクリップはシース18の長手方向にのみ押付け可能であるが、本実施形態のクリップ10は、シース18の長手方向に対して垂直方向Vにも押付け可能である。
【0042】
特定の実施形態において、本開示のクリップは、手術器具から切り離して、患者の組織をクリップで留めることができる。クリップを互いに隣接して配置しやすくするために、クリップアームは湾曲するように構成されている。図15Aおよび図15Bの側面図に示すように、クリップが患者(150a)の組織に付着した後、クリップは手術器具から切り離されるように構成できる。しかしながら、二つ目のクリップ(150b)の配置は、クリップの基端と、押さえ管などのクリップの基端に取り付けられた部材のために少し制限される。この例においては、クリップ150cは、第一アンカー154を有する第一アーム152と、第二アーム(不図示)と、押さえ管156と、を備える。図示するように、クリップ150cは、クリップに沿った湾曲部または湾曲部材151を有する。このように、湾曲可能なアームとアンカーとを備えるクリップは、患者の組織に付着したときに互いに隣接して簡単に配置できる。
【0043】
図16から図20は、湾曲可能なクリップアームの様々な構造的特徴を概略的に示している。例えば、図16(A)および図16(C)は、弾性部材161を有する第一アーム162を備えるクリップ160を示している。クリップ160の第二アームも、同様に弾性部材を有するが、図16の側面図において図示されていない。クリップアームは、曲がった状態になるように付勢されており、クリップが押さえ管166に負荷をかけられたときに、クリップアームは直線状態Lとなる。一方、クリップアーム162は、押さえ管166から展開されたとき、無負荷状態Uと図示されているように湾曲する。弾性部材の代替として、またはそれに加えて、クリップアームは、アームを湾曲状態に付勢する一以上のバネを有してもよい。そのようなクリップが内視鏡165のチャンネルに配置されたとき、アームは直線状態となっている。一方、クリップがチャンネルから展開されたとき、アームは湾曲する(図16(B))。図17Aにおいて、クリップアーム172は、アームが湾曲したときに応力を緩和可能なノッチ171を備える。
【0044】
代表的な開示であるクリップのアームを湾曲可能に構成するために使用できる他の構造が、図18から図20に示されている。図18(A)および図18(B)において、クリップアーム182は、ジョイント181を介して連結された2つの関節部(先端関節部182a,基端関節部182b)を備える。図19(A)から図19(C)は、湾曲可能なクリップのアームをロックする構成を示している。図19(A)は、ジョイント191に接続された2つの関節部(先端関節部192a,基端関節部192b)を備えるクリップアーム192を示している。基端関節部192bは、アームが湾曲位置に移動するときに溝191bに沿って移動するピン191aを有する。ピンが溝191bに設けられた突起191cを通過することで、アームが湾曲状態にロックされる。図19(B)から図19(C)は、ジョイント191を介して連結された2つの関節部(内側関節部195a,外側関節部195b)を備えるクリップアーム195を示しており、アームの内側関節部195aは凹部197aを有し、外側関節部195bは凸部197bを有する。アーム195の外側関節部195bがアームが湾曲状態となる位置に回転したとき、アーム195の断面図(図19(C))に示すように、凹部197aは凸部197bと係合する。
【0045】
図20(A)から図20(D)は、バネを有する関節式のクリップアームを示している。図20(A)において、アーム202は、バネ201により接続された2つの関節部(先端関節部202a,基端関節部202b)を備える。クリップアームは、湾曲状態となるように付勢されており、クリップが押さえ管206に負荷をかけられたときに、クリップアームは直線状態Lとなる。一方、クリップアーム202は、押さえ管166から展開されたとき、図20(B)に無負荷状態Uと図示されているように湾曲する。そのようなクリップが内視鏡205のチャンネルに配置されたとき、アームは直線状態となっている。一方、クリップがチャンネルから展開されたとき、アームは湾曲する(図20(C)および図20(D))。
【0046】
他の例では、クリップアームは、ニッケルチタンのような形状記憶合金で形成することができ、応力状態または温度に基づいて、まっすぐまたは曲がった構成に遷移する。
【0047】
請求された発明が、特定の実施形態を参照して詳細に説明されているが、当業者が、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、請求された発明に様々な変更および修正を加えることができることは明らかである。したがって、例えば、当業者は、日常的な実験を使用することで、本明細書に記載の特定の物質および手順と同等のものを認識または確認できる。そのような同等物は、本発明の範囲内であると見なされ、以下の特許請求の範囲によってカバーされる。
【符号の説明】
【0048】
10,30,40,50,160 クリップ
12,32,42 第一アーム
12a,132a 第一爪
13,33,43 第二アーム
13a,133a 第二爪
14a,34a,44a,64a,74a,104a,114a,124a,134a,134c 第一アンカー(第一突起)
14b,34b,44b,64b,74b,104b,114b,124b,134b,134d 第二アンカー(第二突起)
84a 第一アンカー(第一突起)
94a 第一アンカー(第一突起)
94b 第三アンカー(第三突起)
94c 第二アンカー(第二突起)
94d 第四アンカー(第四突起)
144 アンカー
16,66,116,156,166,206 パイプ,押さえ管
18 可撓性チューブ(シース)
18 シース
21 カバー
27,47 ワイヤ
29,49 連結部
35,45 スリット
111a,111b ピン
121,121a,121b マーカー
151 湾曲部,湾曲部材
152,162 第一アーム
154 第一アンカー
161 弾性部材
162,172,182,192,195,202 クリップアーム(アーム)
171 ノッチ
181 ジョイント
182a,192a,195a,202a 先端関節部
182b,192b,195b,202b 基端関節部
191 ジョイント
191a ピン
191b 溝
191c 突起
197a 凹部
197b 凸部
201 バネ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17A
図18
図19
図20