(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ゴミ回収艇
(51)【国際特許分類】
B63B 35/32 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B63B35/32 C
(21)【出願番号】P 2021180000
(22)【出願日】2021-11-04
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】石田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】塚田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】尾上 純弥
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111196338(CN,A)
【文献】中国実用新案第212332911(CN,U)
【文献】中国実用新案第212582631(CN,U)
【文献】実開昭52-099293(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/32
E02B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
ゴミの取入れ口を含み、少なくとも一部が水中に位置する回収位置と、前記回収位置よりも上方に位置する引き上げ位置とに移動可能に前記船体に保持される回収ボックスと、
前記回収ボックスに取り付けられ、浮力によって前記回収ボックスを前記回収位置から前記引き上げ位置に上昇させる浮力体と、
を備え、
前記浮力体は、前記回収ボックスの底面に取り付けられている、
ゴミ回収艇。
【請求項2】
前記回収ボックスを前記回収位置において前記船体に固定する第1固定状態と、前記回収ボックスを開放する開放状態とに切り替え可能なストッパをさらに備える、
請求項1に記載のゴミ回収艇。
【請求項3】
前記ストッパが前記開放状態にされることで、前記浮力体は、浮力によって前記回収ボックスを前記回収位置から前記引き上げ位置に上昇させる、
請求項2に記載のゴミ回収艇。
【請求項4】
前記ストッパは、前記回収ボックスを前記引き上げ位置において前記船体に固定する第2固定状態にさらに切り替え可能である、
請求項2に記載のゴミ回収艇。
【請求項5】
前記取入れ口は、前記回収ボックスの前面に設けられる、
請求項1に記載のゴミ回収艇。
【請求項6】
前記船体は、前方に向けて開口したボックス格納部を含み、
前記回収ボックスは、前記ボックス格納部に配置される、
請求項
5に記載のゴミ回収艇。
【請求項7】
前記回収ボックスの後面は、メッシュ状である、
請求項
5に記載のゴミ回収艇。
【請求項8】
前記船体は、前記回収ボックスの後方に配置された貫通孔を含む、
請求項
7に記載のゴミ回収艇。
【請求項9】
前記船体は、
第1舟艇と、
前記第1舟艇から、前記船体の左右方向に離れて配置された第2舟艇と、
前記第1舟艇と前記第2舟艇とを連結する連結部と、
を含み、
前記回収ボックスは、前記第1舟艇と前記第2舟艇との間に配置される、
請求項1に記載のゴミ回収艇。
【請求項10】
前記引き上げ位置は、前記回収ボックスの底面が水面よりも上方となる位置である、
請求項1に記載のゴミ回収艇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミ回収艇に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(いわゆるSDGs: Sustainable Development Goals)に向けた海洋の環境保護の観点から、水上に浮遊するゴミやマイクロプラスティックを回収・削減し、海の豊かさを守る活動が進められている。例えば、従来、海上に浮遊するゴミを海水とともに流入させて回収する海上ゴミ回収装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、水中に浮遊しているゴミを回収するためのゴミ回収艇が利用されている。ゴミ回収艇は、回収ボックスとクレーンとを備えている。ゴミ回収艇は、回収ボックスを水中に沈めた状態で移動させることで、ゴミを回収ボックス内に取り込む。そして、クレーンによって、回収ボックスを吊り上げることで、回収ボックス内からゴミを回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなゴミ回収艇は、クレーン及びその動力源を搭載するために大型の船になる。そのため、港、あるいは水路などの狭い場所では、用いることができない。また、小型の船では、積載容量が制限されることから、クレーン及びその動力源を搭載することは困難である。そのため、作業者が手作業で回収ボックスを引き上げる必要があり、作業者の負担が大きい。本発明の目的は、ゴミ回収艇を小型化すると共に、作業者の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るゴミ回収艇は、船体と、回収ボックスと、浮力体とを備える。回収ボックスは、ゴミの取入れ口を含む。回収ボックスは、回収位置と引き上げ位置とに移動可能に、船体に保持される。回収ボックスは、回収位置で、少なくとも一部が水中に位置する。引き上げ位置は、回収位置よりも上方に位置する。浮力体は、回収ボックスに取り付けられる。浮力体は、浮力によって回収ボックスを回収位置から引き上げ位置に上昇させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、浮力体の浮力によって、回収ボックスが回収位置から引き上げ位置に移動する。そのため、クレーン及びその動力源を船体に搭載する必要がなく、船体の小型化が可能である。また、浮力体の浮力によって、回収ボックスが移動するため、作業者の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るゴミ回収艇を示す斜視図である。
【
図5A】ボックス格納部内の回収ボックスを示す正面図である。
【
図5B】ボックス格納部内の回収ボックスを示す正面図である。
【
図6】ボックス格納部内の回収ボックスを示す正面図である。
【
図8】他の実施形態に係るゴミ回収艇の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態にかかるゴミ回収艇について説明する。
図1は、実施形態に係るゴミ回収艇1を示す斜視図である。
図2は、ゴミ回収艇1の上面図である。
図3は、
図2におけるIII-III断面図である。
図1から
図3に示すように、ゴミ回収艇1は、船体2と、回収ボックス3,4とを備える。
【0010】
図2に示すように、船体2には、船舶推進器5が取り付けられている。船舶推進器5は、例えば船外機である。ただし、船舶推進器5は、ジェット推進機などの他の推進器であってもよい。船舶推進器5は、船体2を移動させる推進力を発生させる。
【0011】
船体2は、第1舟艇6と、第2舟艇7と、連結部8とを含む。第1舟艇6と第2舟艇7とは、それぞれ船体2の前後方向に延びた形状を有する。第1舟艇6と第2舟艇7とは、左右方向に互いに離れて配置されている。連結部8は、船体2の左右方向に延びており、第1舟艇6と第2舟艇7とを連結する。
【0012】
船体2は、ボックス格納部11を含む。ボックス格納部11は、第1舟艇6と第2舟艇7との間に配置される。ボックス格納部11は、前方に向けて開口している。ボックス格納部11は、上方に向けて開口している。ボックス格納部11は、第1舟艇6の第1内側面12と、第2舟艇7の第2内側面13との間に位置する。ボックス格納部11の下方には、底板14が配置されている。
【0013】
図3に示すように、船体2は、貫通孔15を含む。貫通孔15は、ボックス格納部11の後方に配置されている。貫通孔15は、ボックス格納部11から船体2の後方へ延びている。ゴミ回収艇1が前進することで、水が、第1舟艇6と第2舟艇7との間を通って、ボックス格納部11へ入る。水は、ボックス格納部11から、貫通孔15を通って、船体2の後方へ流れる。
【0014】
船体2は、操縦席16と作業スペース17とを含む。作業スペース17は、ボックス格納部11に隣接して配置される。作業スペース17は、作業者が、回収ボックス3,4からゴミを引き上げる作業を行うための場所である。例えば、操縦席16は、第1舟艇6に設けられる。作業スペース17は、第2舟艇7に設けられる。
【0015】
回収ボックス3,4は、ボックス格納部11に配置される。本実施形態では、ゴミ回収艇1は、複数の回収ボックス3,4を備えている。
図4は、回収ボックス3,4の斜視図である。複数の回収ボックス3,4は、第1回収ボックス3と第2回収ボックス4とを含む。第1回収ボックス3と第2回収ボックス4とは、互いに別体である。
【0016】
第1回収ボックス3は、ゴミの取入れ口21を含む。取入れ口21は、第1回収ボックス3の前面に設けられている。第1回収ボックス3の後面22と両側面23,24と底面25とには、それぞれメッシュが設けられている。第1回収ボックス3の上面26は開口している。
【0017】
なお、第1回収ボックス3の側面23,24の少なくとも一方が開口していてもよい。第1回収ボックス3の上面26に、メッシュが設けられてもよい。第2回収ボックス4は、第1回収ボックス3と同様の構造を有している。第2回収ボックス4は、第1回収ボックス3の後方に配置されている。
【0018】
第1回収ボックス3には、第1浮力体31が取り付けられている。第1浮力体31は、第1回収ボックス3の底面25に取り付けられている。第1浮力体31は、例えばウレタンなどの発泡樹脂製である。或いは、第1浮力体31は、空気が封入されたものであってもよい。第1浮力体31は、浮力によって第1回収ボックス3を上昇させる。
【0019】
図5A及び
図5Bは、ボックス格納部11内の第1回収ボックス3を示す正面図である。
図5Aでは、第1回収ボックス3は、回収位置に配置されている。
図5Bでは、第1回収ボックス3は、引き上げ位置に配置されている。引き上げ位置は、回収位置よりも上方に位置する。第1回収ボックス3は、回収位置と引き上げ位置とに移動可能に船体2に保持されている。
【0020】
図5Aに示すように、第1回収ボックス3は、回収位置おいて、少なくとも一部が水中に位置する。第1回収ボックス3の底面25は、回収位置おいて、水面100の下方に位置する。ゴミ回収艇1は、ストッパ33,34を備えている。ストッパ33,34は、船体2に取り付けられている。ストッパ33,34は、固定状態と開放状態とに切り替え可能である。
【0021】
図5Aに示すように、ストッパ33,34は、固定状態で、第1回収ボックス3を船体2に固定する。例えば、ストッパ33,34は、第1回収ボックス3を側方から押圧することで、第1回収ボックス3を固定する。或いは、ストッパ33,34は、第1回収ボックス3に係止してもよい。
【0022】
第1回収ボックス3は、回収位置に沈められた状態で、ストッパ33,34によって固定される。ストッパ33,34は、第1浮力体31の浮力に抗して、第1回収ボックス3を回収位置に保持する。この状態で、ゴミ回収艇1が前進することで、水中のゴミ200が、取入れ口21から第1回収ボックス3内に入る。
【0023】
ストッパ33,34は、開放状態で、第1回収ボックス3の固定を解除する。それにより、
図5Bに示すように、第1回収ボックス3は、第1浮力体31の浮力によって、引き上げ位置に上昇する。この状態で、作業者は、第1回収ボックス3からゴミ200を引き上げる。
【0024】
なお、
図6に示すように、第1回収ボックス3が引き上げ位置に位置している状態で、ストッパ33,34を固定状態とすることで、第1回収ボックス3が引き上げ位置に固定される。それにより、第1回収ボックス3が安定的に船体2に保持されるため、ゴミ200を引き上げる作業がさらに容易になる。
【0025】
図3及び
図4に示すように、第2回収ボックス4には、第2浮力体32が取り付けられている。第2回収ボックス4も、第1回収ボックス3と同様に、回収位置と引き上げ位置とに移動可能であり、
図2に示すストッパ35,36によって回収位置と引き上げ位置とに固定可能である。また、ストッパ35,36が開放状態となることで、第2回収ボックス4は、第2浮力体32の浮力によって、回収位置から引き上げ位置に上昇する。
【0026】
例えば、
図7Aに示すように、第1回収ボックス3が引き上げ位置に配置されている状態で、第2回収ボックス4が回収位置に配置されてもよい。それにより、第1回収ボックス3からゴミ201を引き上げながら、水中のゴミ200を第2回収ボックス4に取り入れることができる。また、
図7Bに示すように、第2回収ボックス4が引き上げ位置に配置されている状態で、第1回収ボックス3が回収位置に配置されてもよい。それにより、第2回収ボックス4からゴミ201を引き上げながら、水中のゴミ200を第1回収ボックス3に取り入れることができる。
【0027】
以上説明した本実施形態に係るゴミ回収艇1では、浮力体31,32の浮力によって、回収ボックス3,4が回収位置から引き上げ位置に移動する。そのため、クレーン及びその動力源を船体2に搭載する必要がなく、船体2の小型化が可能である。また、浮力体31,32の浮力によって、回収ボックス3,4が移動するため、回収ボックス3,4からゴミを引き上げる作業において、作業者の負担が軽減される。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0029】
回収ボックスの数は、2つに限らず、1つであってもよく、或いは2つより多くてもよい。複数の回収ボックスは、前後方向に限らず、左右方向に並んで配置されてもよい。回収ボックスの形状は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【0030】
図8に示すように、回収ボックス3に、取入れ口21を開閉可能な蓋40が取り付けられてもよい。回収ボックス4にも同様に、蓋が取り付けられてもよい。蓋40は、閉位置と開位置とに移動可能であってもよい。蓋40は、閉位置において、取入れ口21を閉じる。蓋40は、開位置において、取入れ口21を開く。なお、
図8において破線で示される符号40’は、開位置での蓋40を示す。例えば、蓋40は、回収ボックス3に対してスライド可能に取り付けられる。或いは、蓋40は、回収ボックス3に対して回転可能に取り付けられてもよい。或いは、蓋40は、回収ボックス3に対して着脱可能であってもよい。ゴミ回収艇1が後進するときに、蓋40によって取入れ口21が閉じられることで、回収ボックス3からのゴミの逆流が防止される。
【0031】
船体2の構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、上記の実施形態では、船体2は、いわゆるカタマラン艇であるが、他の種類の船であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、ゴミ回収艇が小型化されると共に、作業者の負担が軽減される。
【符号の説明】
【0033】
2:船体
3:回収ボックス
6:第1舟艇
7:第2舟艇
8:連結部
11:ボックス格納部
15:貫通孔
21:取入れ口
31:浮力体
33:ストッパ