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特許7426376バイオマスの自己加熱傾向を低減する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】バイオマスの自己加熱傾向を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/6427 20220101AFI20240125BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C12P7/6427
C12N1/12 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021505950
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 US2019045838
(87)【国際公開番号】W WO2020036814
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】62/718,549
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/876,076
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, マイケル ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】リソップ, シャノン エリザベス イーシアー
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0000130(US,A1)
【文献】特表2013-509860(JP,A)
【文献】International journal of food properties,2002年,vol.5,p.451-461
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/12
C12P 7/64
C12N 1/14
A23L 33/115
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、前記組成物がPUFAを少なくとも20重量%PUFA有し、且つ前記方法が、発酵プロセスの長さを6日未満に制限することを含む、方法であって、
前記細胞が、シゾキトリウム(Schizochytrium)属に属する微生物細胞である、方法
【請求項2】
少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、前記組成物がPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ前記方法が、発酵後の低温殺菌工程を省くことを含み、かつ、凍結乾燥工程を含む、方法であって、
前記細胞が、シゾキトリウム(Schizochytrium)属に属する微生物細胞である、方法
【請求項3】
少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、前記組成物がPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ前記方法が、凍結乾燥工程の代わりにドラム乾燥工程を含む、方法であって、
前記細胞が、シゾキトリウム(Schizochytrium)属に属する微生物細胞である、方法
【請求項4】
少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、前記組成物がPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ前記方法が、レシチンとエトキシキンの組合せ、或いは、レシチンと、ローズマリー乾燥葉抽出物と、TAP1010と、TBHQとの組合せを、発酵の最後に発酵ブロスに添加することを含む、方法であって、
前記細胞が、シゾキトリウム(Schizochytrium)属に属する微生物細胞である、方法
【請求項5】
少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、前記組成物がPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ前記方法が、少なくとも50g/Lの糖を発酵の最後に発酵ブロスに含ませることを含む、方法であって、
前記細胞が、シゾキトリウム(Schizochytrium)属に属する微生物細胞であり、
前記糖が、ブドウ糖、フルクトース、スクロース、及びマルトースからなる群から選択される1つ又は複数のタイプである、方法
【請求項6】
前記組成物がバイオマスである、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2018年8月14日出願の米国仮特許出願第62/718,549号及び2019年7月19日出願の米国仮特許出願第62/876,076号の出願日の利益を主張する。
【0002】
[本発明の分野]
[0002]本発明は、著しい量の多価不飽和脂肪酸を含有するバイオマスの自己加熱傾向を低減する方法に関する。
【0003】
[発明の背景]
[0003]多価不飽和脂肪酸(PUFA)含有脂質は、飼料、食品及び製薬産業において高い関心を集めている。脂肪酸は、炭素鎖の長さ及び飽和特徴に基づいて分類される。脂肪酸は、その鎖に存在する炭素数に基づいて、短鎖、中鎖、又は長鎖脂肪酸と呼ばれる。脂肪酸は、炭素原子間に二重結合が存在しない場合には飽和脂肪酸と呼ばれる。二重結合が存在する場合、脂肪酸は不飽和脂肪酸と呼ばれる。二重結合が1つのみ存在する場合、不飽和長鎖脂肪酸は一価不飽和である。複数の二重結合が存在する場合、不飽和長鎖脂肪酸は多価不飽和である。
【0004】
[0004]発酵プロセスにおいて微生物によって、PUFAを産生することができる。PUFA含有微生物のバイオマスは、その中に含有されるPUFAオイルを抽出するために処理される前に、回収される。PUFA含有微生物のバイオマスは、飼料製品として、特に飼料産業において直接使用することもできる。
【0005】
[0005]PUFA含有組成物が自己加熱を受けやすいことが判明している。例えば、保管又は輸送中に、容器又はパッケージ内のバイオマスの温度が自発的に高くなり、最終的には予想外の爆発及び火災が生じる場合がある。
【0006】
[0006]自己加熱バイオマスなど、可燃性材料の輸送における安全性を確実にするために、適切な包装が必要とされる。可燃性材料を分類するための広く許容される基準の1つが、自己加熱物質の国連(UN)分類(United Nations(UN)Classification of Self-Heating Substance)である。図1を参照されたい。この分類において、いくつかの自己加熱試験が考案された。その試験の結果に基づき、包装基準が決定される。例えば、バイオマス物質は、オーブン内で100mm試料キューブの形でそれを24時間加熱した場合に、危険な自己加熱を起こす。国際連合の基準に従って、かかる材料は、容器等級(Packing Group)IIIで包装することが推奨されており、自己加熱材料として、輸送ハザードのクラス4.2に分類される。他の実施形態において、バイオマス物質が25mm試料キューブの形で140℃にて24時間試験された場合には、危険な自己加熱を起こさず、且つ100mm試料キューブの形で120℃にて24時間試験された場合に危険な自己加熱を起こさないならば、体積3立方メートル以下のパッケージでそれが輸送される場合には、自己加熱物質としての表示が免除される。バイオマスの自己加熱傾向を分類する代替方法として、異なる包装基準も使用される。
【0007】
[0007]バイオマスの自己加熱傾向を低減する経路において、いくつかの試みがなされてきた。例えば、国際公開第2011/054800号パンフレットに、バイオマスの自己加熱傾向を低減するために、乾燥工程中にバイオマスの水分をコントロールするプロセスが記載されている。国際公開第2018/005856号パンフレットには、藻類バイオマスの酸化安定性を高めるための、酸化防止剤の使用が記載されている。
【0008】
[0008]しかしながら、自己加熱は、多量のPUFAを含有するバイオマスの輸送及び保管において難しい問題のままである。したがって、バイオマスの自己加熱を有効に低減することができる新規な方法を同定することが必要とされる。
【0009】
[発明の概要]
[0009]本発明は、自己加熱傾向が低減されたバイオマス組成物を提供する。この組成物は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸(PUFA)の1つ又は複数のタイプを含有する細胞を含み、組成物はPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ100mm試料キューブの形で120℃にて試験された場合に、危険な自己加熱を起こさない。自己加熱試験において、試料キューブはオーブン内に吊り下げられ、オーブン温度は120℃にて24時間維持された。試料温度が自発的に、オーブン温度を60℃以上超える温度である180℃に上昇した場合に、自己加熱材料として分類される。
【0010】
[0010]本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸(PUFA)の1つ又は複数のタイプを含有する細胞を含む組成物も提供し、その組成物はPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ100mm試料キューブの形で100℃にて試験された場合に、危険な自己加熱を起こさない。この自己加熱試験において、試料キューブはオーブン内に吊り下げられ、オーブン温度は100℃にて24時間維持された。試料温度が自発的に、オーブン温度を60℃以上超える温度である160℃に上昇した場合に、自己加熱材料として分類される。
【0011】
[0011]本発明はさらに、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸(PUFA)の1つ又は複数のタイプを含有する細胞を含む組成物を提供し、その組成物はPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ25mm試料キューブの形で140℃にて試験された場合には危険な自己加熱を起こさないが、100mm試料キューブの形で100℃にて試験された場合に、危険な自己加熱を起こす。
【0012】
[0012]本発明によるバイオマス組成物は、自己加熱傾向が低減された利点を有し、したがって本発明に開示される方法によって処理されていないバイオマス組成物よりも安全に輸送することができる。本発明に開示される方法で処理されたバイオマス組成物の包装基準は、かかる処理なしの組成物よりも1レベル以上低減され得る。本発明の組成物の更なる利点は、組成物に含有されるPUFAの質が処理後でさえ、低下しないことである。本発明で開示される方法は、PUFAの質にネガティブな影響を及ぼさない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】自己加熱物質の国連(UN)分類を示すダイアグラムである。
図2】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D1及びD2の温度プロファイルを示す。図2~25において、右側のダイアグラムは、左側のダイアグラムに示すピーク面積の拡大図を表す。
図3】100℃で試験された100mmキューブ形の試料D1及びD2の温度プロファイルを示す。
図4】140℃で試験された25mmキューブ形の試料S1~S5の温度プロファイルを示す。
図5】120℃で試験された100mmキューブ形の試料S1~S5の温度プロファイルを示す。
図6】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D2及びD3の温度プロファイルを示す。
図7】100℃で試験された100mmキューブ形の試料D2及びD3の温度プロファイルを示す。
図8】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D3及びD4の温度プロファイルを示す。
図9】100℃で試験された100mmキューブ形の試料D3及びD4の温度プロファイルを示す。
図10】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D4及びD5の温度プロファイルを示す。
図11】100℃で試験された100mmキューブ形の試料D4及びD5の温度プロファイルを示す。
図12】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D5及びD6の温度プロファイルを示す。
図13】120℃で試験された100mmキューブ形の試料D5及びD6の温度プロファイルを示す。
図14】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D4及びD7の温度プロファイルを示す。
図15】100℃で試験された100mmキューブ形の試料D4及びD7の温度プロファイルを示す。
図16】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D7及びD8の温度プロファイルを示す。
図17】120℃で試験された100mmキューブ形の試料D7及びD8の温度プロファイルを示す。
図18】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D8及びD9の温度プロファイルを示す。
図19】120℃で試験された100mmキューブ形の試料D8及びD9の温度プロファイルを示す。
図20】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D9及びD10の温度プロファイルを示す。
図21】120℃で試験された100mmキューブ形の試料D9及びD10の温度プロファイルを示す。
図22】140℃で試験された25mmキューブ形の試料D4及びD11の温度プロファイルを示す。
図23】100℃で試験された100mmキューブ形の試料D4及びD11の温度プロファイルを示す。
図24】140℃で試験された25mmキューブ形の試料S6~S9の温度プロファイルを示す。
図25】100℃で試験された100mmキューブ形の試料S6~S9の温度プロファイルを示す。
図26】140℃の25mmキューブ形及び120℃で100mmキューブ形の様々なPUFAパーセンテージを有する試料で達した最高温度を示す。
【0014】
[発明の詳細な説明]
[0039]乾燥PUFA含有油性バイオマスが、酸化を生じることは知られており、自発的に自己加熱し得る。かかる自己加熱問題は特に、長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)を含有する微生物細胞において特に著しい。バイオマスの自己加熱傾向を低減する手段を同定するために、発酵の長さ、低温殺菌、乾燥方法、不活性成分の添加、及び酸化防止剤の添加など、異なる条件が実験によって調べられた。表1は、本出願で製造及び試験される試料のチャートを示す。
【0015】
【表1】
【0016】
[0041]国連番号49 CFR173.124-クラス4,区分4.2の分類を用いて、自己加熱材料の試料を試験した(図1参照)。自己加熱試験において、試料キューブをオーブン内に吊り下げ、オーブン温度を所定の温度で24時間維持した。試料温度が自発的に、オーブンの周囲内部温度(設定ポイント)を60℃以上超えて上昇した場合に、危険な自己加熱を起こすと考えられる。100~140℃の範囲の温度で25mm及び100mmキューブで試験を行った。いずれかの所定の自己加熱物質の分類を決定するために、一連の試験が行われる。例えば、100mm試料キューブで140℃にて試験した場合に、物質が上記で定義される危険な自己加熱を起こさない場合、物質は、国連基準の区分4.2の非自己加熱物質とみなされる。物質が上記の条件で自己加熱する場合、140℃での25mm試料キューブの更なる試験が実施される。物質が新たな条件下にて自己加熱する場合、輸送の場合には、容器等級IIの包装材料を必要とする危険な自己加熱材料として国連基準区分4.2下に分類される。本発明において、図1に示す温度プロファイルに基づいて、相当する試料を比較及び分析し、酸化及び自己加熱特性の低減が得られたかどうかを決定した。
【0017】
[0042]PUFA含有量が多くなるにしたがって、バイオマスの感受性が増加することは知られていた。特に、炭素原子20個以上を有するPUFAは、自己加熱に対してより高い感受性を有する。バイオマスの感受性は、PUFAの二重結合の数が多くなるにしたがって増加することも知られている。特に、二重結合を3個以上有するPUFAは、自己加熱に対してより高い感受性を有する。
【0018】
[0043]発酵の長さの低減、低温殺菌工程(発酵後のバッチ式又はインライン式)の排除、乾燥方法の変更、不活性成分の添加、及び酸化防止剤の添加が、自己加熱に対するバイオマスの感受性の低減を助けることが確認された。
【0019】
[0044]上記の方法の1つ又は複数を用いることによって、自己加熱傾向が低減されたバイオマス組成物が生成された。
【0020】
[0045]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数のタイプの多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物を提供し、その組成物はPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ試験オーブン内で自発的に自己加熱しない、つまり組成物が100mm試料キューブの形で120℃にてオーブン内に置かれ、24時間加熱される場合に、120℃のオーブン温度を60℃以上超える温度に、組成物の温度が上昇しないと定義される。一実施形態において、上記組成物はさらに、酸化安定性を付与するのに有効な量で、少なくとも1種類の酸化防止剤を含む。
【0021】
[0046]上記の説明に該当する組成物は、国連番号49 CFR173.124-クラス4,区分4.2の分類に基づいて体積3立方メートル以下のパッケージで輸送される場合には、免除物質として分類することができる。図1を参照されたい。
【0022】
[0047]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数のタイプの多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物を提供し、その組成物はPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ国連番号49 CFR173.124-クラス4,区分4.2の分類に基づいて体積3立方メートル以下のパッケージで輸送される場合には、免除物質として分類される。一実施形態において、上記の組成物はさらに、酸化安定性を付与するのに有効な量で少なくとも1種類の添加酸化防止剤を含む。
【0023】
[0048]他の実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数のタイプの多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物を提供し、その組成物は試験オーブン内で自発的に自己加熱せず、つまり組成物が100mm試料キューブの形で100℃にてオーブン内に置かれ、24時間加熱される場合に、100℃のオーブン温度を60℃以上超える温度に、組成物の温度が上昇しないと定義される。一実施形態において、上記組成物はさらに、酸化安定性を付与するのに有効な量で、少なくとも1種類の添加酸化防止剤を含む。
【0024】
[0049]上記の説明に該当する組成物は、国連番号49 CFR173.124-クラス4,区分4.2の分類に基づいて、体積450リットル以下のパッケージで輸送される場合には、免除物質として分類される。図1を参照されたい。
【0025】
[0050]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数のタイプの多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物を提供し、その組成物はPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ国連番号49 CFR173.124-クラス4,区分4.2の分類に基づいて体積450リットル以下のパッケージで輸送される場合には、免除物質として分類される。一実施形態において、上記の組成物はさらに、酸化安定性を付与するのに有効な量で少なくとも1種類の添加酸化防止剤を含む。
【0026】
[0051]他の実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数のタイプの多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物を提供し、その組成物はPUFAを少なくとも20重量%有し、且つその組成物は試験オーブン内で自発的に自己加熱せず、つまり組成物が25mm試料キューブの形で140℃にてオーブン内に置かれ、24時間加熱される場合に、140℃のオーブン温度を60℃以上超える温度に組成物の温度が上昇しないと定義されるが、組成物は試験オーブン内で危険な自己加熱を生じ、つまり組成物が100mm試料キューブの形で100℃にてオーブン内に置かれ、24時間加熱される場合に、100℃のオーブン温度を60℃以上超える温度に組成物の温度が上昇すると定義される。一実施形態において、上記組成物はさらに、酸化安定性を付与するのに有効な量で、少なくとも1種類の添加酸化防止剤を含む。
【0027】
[0052]上記の説明に該当する組成物は、容器等級II表示の必要性を回避することができるが、依然として容器等級III包装材料を使用する必要があり、国連番号49 CFR173.124-クラス4,区分4.2の分類に従ってその旨を表示される。図1を参照されたい。
【0028】
[0053]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数のタイプの多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物を提供し、その組成物はPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ国連番号49 CFR173.124-クラス4,区分4.2の分類に基づいて容器等級II表示基準を有することを必要とされない。
【0029】
[0054]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数のタイプの多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物を提供し、その組成物はPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ国連番号49 CFR173.124-クラス4,区分4.2の分類に基づいて容器等級III表示基準を有することが単に必要とされる。
【0030】
[0055]以下に記載の本発明によって提供される教示に基づき、上記の自己加熱傾向が低減された組成物が得られる。
【0031】
[0056]通常よりも早く発酵ブロスから細胞を収集して若い細胞を得ることによって、バイオマスの自己加熱傾向を低減することができることが判明した。一実施形態において、発酵プロセスを発酵5日目以前に終えた場合に、バイオマスの自己加熱傾向を低減することができる。一実施形態において、発酵プロセスを発酵6日目以前に終えた場合に、バイオマスの自己加熱傾向を低減することができる。一実施形態において、発酵プロセスを発酵7日目以前に終えた場合に、バイオマスの自己加熱傾向を低減することができる。
【0032】
[0057]凍結乾燥法の代わりにドラム乾燥法によって乾燥させた場合に、バイオマスの自己加熱傾向を低減することができることも判明した。
【0033】
[0058]2つの異なるタイプの酸化防止剤を添加して、バイオマスの自己加熱傾向を低減することができることも判明した。天然酸化防止剤を合成酸化防止剤と併せて使用した場合には、意外なことにバイオマスの自己加熱傾向の低減は優れている。一実施形態において、天然酸化防止剤はレシチン又はRoseenのいずれかであり得る。他の実施形態において、合成酸化防止剤は、エトキシキン、TAP1010又はTBHQのうちの1つであり得る。
【0034】
[0059]不活性成分を乾燥バイオマスに添加することによって、バイオマスの自己加熱傾向を低減することができることも判明した。ブロスを低温殺菌した後に発酵ブロスに糖を添加することによって、バイオマスの自己加熱傾向の低減が助けられ得ることが発見された。一実施形態において、不活性成分は、細胞バイオマスと反応性ではない任意の組成物であり得る。特定の実施形態において、不活性成分は糖である。一実施形態において、糖はブドウ糖、フルクトース、スクロース、及びマルトースからなる群から選択され得る。糖供給源が微生物によって、完全に消費される前に、例えば上記の早い収集例などで発酵を終えることによって、同じ効果が達成され得る。
【0035】
[0060]一実施形態において、上述の方法のいずれか2つ以上を組み合わせたプロセスで処理された場合、バイオマスの自己加熱傾向はさらに低減することができる。
【0036】
[0061]好ましい実施形態において、本発明による組成物は、以下に記載のオイル含有率及びPUFAを有する。
【0037】
[0062]妥当なレベルの多価不飽和脂肪酸を含有することから、本発明のバイオマス組成物は、処理前に自己加熱傾向を有する。一実施形態において、組成物は、組成物の重量に対して少なくとも20重量%、例えば少なくとも25重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも35重量%、例えば少なくとも40重量%、例えば少なくとも45重量%、例えば少なくとも50重量%、例えば少なくとも55重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも65重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも75重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%のオイルを含む。他の実施形態において、組成物は、組成物の重量に対して30~70重量%、例えば40~60重量%、45~55重量%のオイルを含む。一実施形態において、組成物の重量は、バイオマスの乾燥細胞重量と呼ばれる。かかるバイオマスは、藻類細胞又は他のいずれかのPUFA含有微生物細胞であり得る。
【0038】
[0063]本発明の実施形態において、組成物は、PUFA、具体的にはLC-PUFAを含む。一実施形態において、組成物はバイオマスである。他の実施形態において、組成物は乾燥バイオマスである。他の実施形態において、組成物は、微生物細胞の乾燥バイオマスである。他の実施形態において、組成物は藻類細胞の乾燥バイオマスである。
【0039】
[0064]一実施形態において、組成物は、オイル中の総脂肪酸に対して、少なくとも3個の二重結合を有するPUFAを、少なくとも20重量%、例えば少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも100重量%含む。一実施形態において、組成物の重量は、バイオマスの乾燥細胞重量と呼ばれる。
【0040】
[0065]一実施形態において、組成物は、前記組成物の重量に対して、少なくとも3個の二重結合を有するPUFAを少なくとも20重量%、例えば少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%含む。他の実施形態において、組成物は、前記組成物の重量に対して、少なくとも3個の二重結合を有するPUFAを20~55重量%、20~40重量%、20~30重量%、又は20~25重量%含む。一実施形態において、組成物の重量は、バイオマスの乾燥細胞重量と呼ばれる。
【0041】
[0066]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、その組成物がPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ発酵プロセスの長さを6日未満制限することを含む、方法に関する。
【0042】
[0067]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、組成物がPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ発酵後の低温殺菌工程を省くことを含む、方法に関する。
【0043】
[0068]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、組成物がPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ凍結乾燥工程の代わりにドラム乾燥工程を含む、方法に関する。
【0044】
[0069]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、組成物がPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ天然酸化防止剤の少なくとも1種類及び合成酸化防止剤の少なくとも1種類を、発酵の最後に発酵ブロスに添加することを含む、方法に関する。
【0045】
[0070]一実施形態において、天然酸化防止剤はレシチン又はRoseenであり、且つ前記合成酸化防止剤はエトキシキン、TAP1010又はTBHQである。
【0046】
[0071]一実施形態において、本発明は、少なくとも20個の炭素原子及び少なくとも3個の二重結合を有する、1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する細胞を含む組成物の自己加熱傾向を低減する方法であって、組成物がPUFAを少なくとも20重量%有し、且つ少なくとも50g/Lの糖を発酵の最後に発酵ブロスに添加することを含む、方法に関する。
【0047】
[0072]一実施形態において、糖は、ブドウ糖、フルクトース、スクロース、及びマルトースからなる群から選択される1つ又は複数のタイプである。
【0048】
[0073]一実施形態において、上記の方法に記載の組成物は、前記組成物の重量に対して、少なくとも3個の二重結合を有するPUFAを少なくとも20重量%、例えば少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%含む。他の実施形態において、組成物は、前記組成物の重量に対して、少なくとも3個の二重結合を有するPUFAを20~55重量%、20~40重量%、20~30重量%、又は20~25重量%含む。一実施形態において、組成物の重量は、バイオマスの乾燥細胞重量と呼ばれる。
【0049】
[0074]一実施形態において、組成物の重量は、バイオマスの乾燥細胞重量と呼ばれる。かかるバイオマスは、藻類細胞又は他のいずれかのPUFA含有微生物細胞であり得る。
【0050】
[0075]本発明の実施形態において、上記の方法に記載の組成物は、PUFA、具体的にはLC-PUFAを含む。一実施形態において、組成物はバイオマスである。他の実施形態において、組成物は乾燥バイオマスである。他の実施形態において、組成物は、微生物細胞の乾燥バイオマスである。他の実施形態において、組成物は藻類細胞の乾燥バイオマスである。
【0051】
[0076]一実施形態において、組成物はバイオマスである。他の実施形態において、バイオマスは微生物細胞である。微生物細胞は、モルティエラ属(Mortierella)、シゾキトリウム属(Schizochytrium)、トラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、又はクリプテコジニウム属(Crypthecodinium)の細胞であり得る。
【0052】
[0077]一実施形態において、上述のPUFAは、長鎖PUFAの1つ又は複数のタイプである。他の実施形態において、上述のPUFAはω-3又はω-6PUFAである。他の実施形態において、上述のPUFAは、ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA,20:3ω-6)、アラキドン酸(ARA,20:4ω-6)、エイコサペンタエン酸(EPA,20:5ω-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA:22:6ω-3)、ドコサペンタエン酸(DPA22:5ω-3、又はDPA22:5,ω-6)から選択される1種又は複数種のPUFAである。
【0053】
[0078]本出願に記載のLC-PUFAは、少なくとも3個の二重結合を含有し、且つ炭素20個以上の鎖長を有する脂肪酸である。多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、脂肪酸のメチル末端からの最初の二重結合の位置に基づいて分類される;オメガ-3(n-3)脂肪酸は第3炭素に最初の二重結合を含有し、オメガ-6(n-6)脂肪酸は第6炭素に最初の二重結合を含有する。例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、炭素22個及び二重結合6個の鎖長を有するオメガ-3長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)であり、しばしば「22:6n-3」と示される。一実施形態において、PUFAは、オメガ-3脂肪酸、オメガ-6脂肪酸、及びその混合物から選択される。他の実施形態において、PUFAは、LC-PUFAから選択される。更なる実施形態において、PUFAは、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、アラキドン酸(ARA)、γ-リノレン酸(GLA)、ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA)、ステアリドン酸(SDA)、及びその混合物から選択される。他の実施形態において、PUFAは、DHA、ARA、及びその混合物から選択される。更なる実施形態において、PUFAはDHAである。更なる実施形態において、PUFAはARAである。
【0054】
[0079]本明細書で使用される、「細胞」とは、油性微生物に由来する生体材料など、オイル含有生体材料を意味する。微生物によって産生される、又は微生物細胞から得られるオイルは、「微生物オイル」と呼ばれる。一実施形態において、微生物オイルとは、さらに処理することなく、微生物のバイオマスから抽出された粗製オイルを意味する。藻類及び/又は真菌によって産生されるオイルは、それぞれ藻類及び/又は真菌オイルとも呼ばれる。
【0055】
[0080]明細書で使用される「微生物」とは、藻類、細菌、真菌、酵母、原生生物、及びその組み合わせ、例えば単細胞生物などの生物を意味する。一部の実施形態において、微生物細胞は真核細胞である。微生物細胞としては、限定されないが、黄金藻類(例えば、ストラメノパイル界(kingdomStramenopiles)の微生物);緑色藻類;ケイ藻綱;渦鞭毛藻類(例えば、クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii又はC.cohnii)などのクリプテコジニウム(Crypthecodinium)属のメンバーを含む渦鞭藻綱(Dinophyceae)目の微生物);ヤブレツボカビ(Thraustochytriales)目の微細藻類;酵母(子嚢菌綱又は担子菌類);及びケカビ属(Mucor)、限定されないが、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)及びモルティエレラ・セクト(Mortierella sect)、シュムッケリ(schmuckeri)などのモルティエラ属(Mortierella)、及び限定されないがピシウム・インシディオサム(Pythium insidiosum)などのクサレカビ属(Pythium)の真菌;が挙げられる。
【0056】
[0081]一実施形態において、微生物は、モルティエラ(Mortierella)属、クリプテコジニウム(Crypthecodinium)属、又はヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)に由来する。更なる実施形態において、微生物は、クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)に由来する。また更なる実施形態において、微生物は、クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)、トラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、シゾキトリウム属(Schizochytrium)、及びその混合物から選択される。
【0057】
[0082]更なる実施形態において、微生物としては、限定されないが、モルティエラ属(Mortierella)属、コニディオボルス(Conidiobolus)属、クサレカビ属(Pythium)、エキビョウキン(Phytophthora)属、ペニシリウム属(Penicillium)、クラドスポリウム属(Cladosporium)、ケカビ属(Mucor)、フザリウム属(Fusarium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ロードトルラ(Rhodotorula)、エントモフソーラ属(Entomophthora)、エキノスポランギウム属(Echinosporangium)、及びミズカビ属(Saprolegnia)に属する微生物が挙げられる。他の実施形態において、ARAは、モルティエラ属(Mortierella)由来の微生物細胞から得られ、限定されないが、モルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)、モルティエレラ・ヒグロフィラ(Mortierella hygrophila)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)、モルティエラ・シュムッケリ(Mortierella schmuckeri)及びモルティエレラ・ミヌティシマ(Mortierella minutissima)が挙げられる。更なる実施形態において、微生物細胞はモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)に由来する。
【0058】
[0083]また更なる実施形態において、微生物細胞は、限定されないが、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)属(アルジメンタレ(arudimentale)、アウレウム(aureum)、ベンチコラ(benthicola)、グロボスム(globosum)、キンネイ(kinnei)、モチバム(motivum)、マルチルジメンタレ(multirudimentale)、パキデルマム(pachydermum)、プロリフェルム(proliferum)、ロゼウム(roseum)、ストリアツム(striatum)を包含する種);シゾキトリウム(Schizochytrium)属(アグレガツム(aggregatum)、リムナセウム(limnaceum)、マングロベイ(mangrovei)、ミヌツム(minutum)、オクトスポルム(octosporum)を包含する種);ウルケニア(Ulkenia)属(アメボイデア(amoeboidea)、ケルゲレンシス(kerguelensis)、ミヌタ(minuta)、プロフンダ(profunda)、ラジアテ(radiate)、サイレンス(sailens)、サルカリアナ(sarkariana)、シゾキトロプス(schizochytrops)、ビスルゲンシス(visurgensis)、ヨルケンシス(yorkensis)を包含する種);オーランチオキトリウム属(Aurantiacochytrium);オブロンギキトリウム属(Oblongichytrium);サイコイドキトリウム属(Sicyoidochytium);パリエンティチトリウム属(Parientichytrium);ボツリオキトリウム属(Botryochytrium);及びその組み合わせなどのヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)に由来する。他の実施形態において、微生物細胞は、ヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)の微細藻類に由来する。さらに他の実施形態において、微生物細胞は、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)に由来する。また更なる実施形態において、微生物細胞はシゾキトリウム属(Schizochytrium)に由来する。またさらに他の実施形態において、微生物細胞は、トラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、シゾキトリウム属(Schizochytrium)、又はその混合物から選択される。
【0059】
[実施例]
[0084][実施例1]
[0085]この実施例において、シゾキトリウム(Schizochytrium)種を発酵容器内で培養した。若い細胞(D1)を得るために発酵ブロスを早期に収集することによって、発酵の最後にブロスを収集した場合(D2)と比較して、自己加熱特性が取り除かれた。両方の試料を凍結乾燥によって乾燥させた。表2を参照されたい。2つの試験をこれら2つの試料のそれぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを100℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルが図2及び図3に示される。自己加熱がD2においてはっきりと見られ、その温度はオーブン温度設定ポイントを60℃超える温度に上昇したのに対して、D1では自己加熱は確認されなかった:両方を100℃にて100mmキューブを使用して比較した場合、試料温度は、オーブン温度を超えて決して上昇しなかった。したがって、図1によれば、D2は容器等級IIIに分類され、D1は分類されない。
【0060】
【表2】
【0061】
[0087]次に、異なる時点でのブロスの収集を試験して、自己加熱特性がいつ発生するのかを決定した。以下の時点:2(S1)、3(S2)、4(S3)、5(S4)、及び6(S5)日目にて試料を試験した。表2を参照されたい。2つの試験をこれら2つの試料のそれぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを120℃で実施した。これらの試験の温度プロファイルは図4及び図5に示される。自己加熱がS4及びS5(それぞれ5及び6日間の発酵試料)においてはっきりと見られる。140℃での25mmキューブに関して、S4は設定ポイントを14℃超えたのに対して、S5は設定ポイントを24℃超えた。120℃での100mmキューブに関しては、S4は設定ポイントを30℃超えたのに対して、S5は危険な自己加熱を示し、設定ポイントを240℃超える温度に達した。したがって、5日目に発酵を終わらせることは、生成物の自己加熱を低減することを助け得る。試料S1~S4は、体積3立方メートル以下のパッケージで輸送される場合には、国連基準によって免除として分類され得る。
【0062】
[0088][実施例2]
[0089]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。低温殺菌細胞に対する非低温殺菌の比較から、意外且つ驚くべき結果が判明した。非低温殺菌発酵ブロス(D2)の乾燥は、低温殺菌後に乾燥されたブロス(D3)と比較して、自己加熱傾向の改善を助けた。表3を参照されたい。どちらの試料も凍結乾燥によって同様に乾燥された。2つの試験を試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを100℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図6及び図7に示される。140℃での25mmキューブに関して、D3は危険な自己加熱を起こし、D2よりも60℃高い最高温度に達した。100℃での100mmキューブに関して、D3はD2よりも50℃高い最高温度に達し、どちらも周囲オーブン温度を超えて上昇した。したがって、図1によれば、D3は容器等級IIに分類され、D2は容器等級III下に分類されるだろう。
【0063】
【表3】
【0064】
[0091][実施例3]
[0092]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。乾燥方法を調べた場合に意外な発見がなされた。全細胞バイオマスを回転ドラム乾燥(D4)で乾燥させた場合に、自己加熱特性は、凍結乾燥で乾燥された全細胞バイオマス(D3)と比較して改善された。表4を参照されたい。残留含水量の差が著しい場合には、これは意外である。2つの試験をこれらの試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを100℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図8及び図9に示される。140℃での25mmキューブに関して、最高温度に達する時間はそれぞれの試料に関してほぼ同じであったが、D4が達した最高温度はD3の最高温度よりも48℃低かった。100℃での100mmキューブに関しては、その逆が観察され、最高温度はほぼ同じ(約230℃)であったが、D4は、D3よりもこの温度に達するのに1.7時間長くかかった。このデータから、D3は容器等級II下に分類されるのに対して、D4は容器等級IIIに分類されるであろう(図1を参照されたい)。
【0065】
【表4】
【0066】
[0094][実施例4]
[0095]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。異なる酸化防止剤及びその組み合わせの有効性を試験するために、いくつかの異なる実験を行った。酸化防止剤エトキシキンの低温殺菌発酵ブロス(D5)への添加は、酸化防止剤を含まないブロス(D4)と比較して、自己加熱性能の改善を助けた。表5を参照されたい。後の実施例から、酸化防止剤の組み合わせによって意外な結果が得られることが分かる。両方の試料をドラム乾燥で乾燥させた。2つの試験をこれらの試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを100℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図10及び図11に示される。140℃での25mmキューブに関して、D4と比較した場合に、D5では最高温度は28℃低減され、且つその温度に達するのにかかった時間は12.5時間増加した。100℃での100mmキューブに関しては、D4が危険な自己加熱を起こし、D5では自己加熱は観察されなかった。両方の結果から、自己加熱の可能性の低減におけるエトキシキンの有効性が確認される。したがって、図1によれば、D4は容器等級III下に分類されるのに対して、D5は容器等級III又は容器等級IIのいずれかに分類されるであろう。
【0067】
【表5】
【0068】
[0097][実施例5]
[0098]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。低温殺菌発酵ブロス(D6)にレシチンと共に酸化防止剤エトキシキンを添加することは、エトキシキンのみ有するブロス(D5)と比較して、自己加熱性能の改善を助けた。両方の試料をドラム乾燥で乾燥させた。表6を参照されたい。2つの試験をこれらの試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを120℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図12及び図13に示される。140℃での25mmキューブに関して、最高温度は、D5と比較してD6において7℃低かった。120℃での100mmキューブに関しては、両方の試料が同様の温度プロファイルを示したが、D6は、試験全体を通してD5よりも約5℃低いままだった。両方の試験の結果から、エトキシキンと共にレシチンを添加することは、自己加熱の可能性の低減を助け得ることが分かった。
【0069】
【表6】
【0070】
[0100][実施例6]
[0101]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。低温殺菌発酵ブロス(D7)にレシチンと共に酸化防止剤Roseenを添加することは、酸化防止剤を含有しないブロス(D4)と比較して、自己加熱の改善を助けた。表7を参照されたい。両方の試料をドラム乾燥で乾燥させた。2つの試験をこれらの試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを100℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図14及び図15に示される。140℃での25mmキューブに関して、最高温度は、D4と比較してD7において18℃低く、その温度に達するのにかかった時間は1.1時間増加した。100℃での100mmキューブに関しては、試験窓の終了まで、D7は自己加熱を示さなかったが、D4は、試験から6.2時間で危険な自己加熱を示した。図1による両方の試験結果から、D4は容器等級IIIに分類され、体積450リットル以下で輸送される場合には、容器等級III下での包装及び表示から免除されるだろう。
【0071】
【表7】
【0072】
[0103][実施例7]
[0104]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。低温殺菌発酵ブロス(D8)にレシチンと共に酸化防止剤Roseenを添加することは、Roseenのみ含有するブロス(D7)と比較して、自己加熱の改善を助けた。両方の試料をドラム乾燥で乾燥させた。表8を参照されたい。2つの試験をこれらの試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを120℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図16及び図17に示される。140℃での25mmキューブに関して、最高温度は、D7と比較してD8では14℃高いが、その温度に達するのにかかった時間は、D8は、D7よりも0.2時間長くかかった。120℃での100mmキューブに関しては、最高温度は、D7と比べてD8において52℃低減され、その温度に達する時間は1.1時間増加した。図1によれば、D7は、体積<450リットルで輸送される場合には、容器等級III下での包装及び表示から免除され、D8に分類するには、より多くの試験が必要とされるだろう。
【0073】
【表8】
【0074】
[0106][実施例8]
[0107]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。低温殺菌発酵ブロス(D9)にレシチンと共に酸化防止剤Roseen及びTAP1010を添加することは、Roseen及びレシチンのみを含むブロス(D8)と比較して、自己加熱の改善を助けた。両方の試料をドラム乾燥で乾燥させた。2つの試験をこれらの試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを120℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図18及び図19に示される。140℃での25mmキューブに関して、最高温度は、D8と比較してD9では37℃低減され、その温度に達するのにかかった時間は、D9で3時間増加した。120℃での100mmキューブに関しては、最高温度は、両方の試料の最高温度はほぼ同じであったが、D9は、その温度に達するのにD8よりも6.5時間長くかかった。両方の試験結果から、TAP1010の添加によって自己加熱の可能性がさらに低減され得ることが分かる。
【0075】
【表9】
【0076】
[0109][実施例9]
[0110]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。低温殺菌発酵ブロス(D10)にレシチンと共に酸化防止剤Roseen、TAP1010、及びTBHQを添加することは、Roseen、TAP1010、及びレシチンのみを含むブロス(D9)と比較して、自己加熱の改善を助けた。表10を参照されたい。両方の試料をドラム乾燥で乾燥させた。2つの試験をこれらの試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを120℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図20及び図21に示される。140℃での25mmキューブに関して、最高温度は、D9と比較してD10では6℃低減され、その温度に達するのにかかった時間は、D10で1.1時間増加した。120℃での100mmキューブに関しては、最高温度はD9と比べてD10で53℃高かったが、最高温度に達するのに2.4時間長くかかった。これらの試験両方の結果から、TBHQの添加は、自己加熱の開始を遅らせるのを助け得ることが分かる。
【0077】
【表10】
【0078】
[0112][実施例10]
[0113]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。バイオマス中に不活性成分を含ませることの有効性を試験するための実験も行った。低温殺菌発酵ブロス(D11)にブドウ糖を含ませることは、低残留グルコースを有するブロス(D4)と比較して、自己加熱の改善を助けた。表11を参照されたい。両方の試料をドラム乾燥で乾燥させた。2つの試験をこれらの試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを100℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図22及び図23に示される。140℃での25mmキューブに関して、D4と比較して、D11では最高温度に達するのにかかった時間は0.4時間低減したが、最高温度は50℃下がった。100℃での100mmキューブに関しては、D4と比べてD11では、最高温度に達するのにかかった時間は2.9時間低減したが、最高温度は110℃下がった。したがって、図1によれば、D4は容器等級IIIに分類され、D11は、容器等級III又は容器等級IIにおいて包装及び表示される必要がないだろう。
【0079】
【表11】
【0080】
[0115]次いで、異なる糖(フルクトース、スクロース、及びマルトース)を添加して、実験を行った。低温殺菌発酵ブロス(S7~9)へのこれらの糖の添加は、低残留グルコースを含むブロス(S6)と比較して、自己加熱の改善を助けた。これらの試料をすべて、凍結乾燥によって乾燥させた。2つの試験をこれらの試料それぞれについて、25mmキューブを140℃にて、100mmキューブを100℃で実施した。それぞれの試験の温度プロファイルは図24及び図25に示される。140℃での25mmキューブに関して、糖を含有するすべての試料が、対照(S6)よりも低い最高温度に達した。しかし、それぞれの糖は、様々な量で温度を下げた:フルクトース(S7)-24℃、スクロース(S8)-14℃、及びマルトース(S9)-9℃。同様に、100℃での100mmキューブに関して、糖を含有するすべての試料(S7~9)が、対照(S6)よりも低い最高温度に達した。フルクトースを含有する試料(S7)については、最高温度は、対照を48℃下回るが、この温度に約2時間早く達した。スクロースを含有する試料(S8)については、最高温度は、対照を35℃下回り、その温度に達するのに2.5時間長くかかった。マルトースを含有する試料(S9)では、最高温度は、対照を36℃下回ったが、この温度に約0.6時間早く達した。したがって、発酵ブロス内の糖は、自己加熱特性の低減を助け得る。糖の存在は、完全発酵に糖を添加することによって、又は残留量(供給原料からの糖がすべて消費される前に、発酵が終了される)によって達成することができる。
【0081】
[0116][実施例11]
[0117]この実施例において、実施例1と同じシゾキトリウム(Schizochytrium)種株を使用した。様々な時点での発酵ブロスの収集によって、様々な量のPUFA(多価不飽和脂肪)を有する乾燥試料が得られ、最初の試料は最小量のPUFAを有し、最後の試料は最大量を有する。表12を参照されたい。オーブン試験中に試料(25mmキューブを140℃で、且つ100mmキューブを120℃で)が達した最高温度に対して、試料S1~S5中に存在するPUFA(実施例1に上述の)を以下のグラフにプロットした(図26)。140℃での25mmキューブに関して、到達した最高温度は、PUFA含有量の増加に伴ってわずかに上昇した。しかし120℃での100mmキューブについては、バイオマス中に存在するPUFAパーセントが20%を超えた場合には、到達した最高温度は大幅に上昇した。したがって、乾燥バイオマスのPUFAパーセントを20%未満に維持することが、生成物の自己加熱の低減を助け得る。
【0082】
【表12】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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図19
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図22
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図26