(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】液圧式パルスユニットを備えたパワーレンチ
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B25B21/02 J
B25B21/02 D
(21)【出願番号】P 2021512887
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019073217
(87)【国際公開番号】W WO2020053000
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ショーステン ロジャー トビアス
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-526416(JP,A)
【文献】特開2001-341080(JP,A)
【文献】米国特許第05611404(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーレンチであって、
モータと、
出力シャフト(10)と、
前記モータに接続され回転軸(A-A)を中心に回転可能な慣性駆動部材(21)と前記慣性駆動部材(21)で囲まれたオイルチャンバ(22)と前記出力シャフト(10)に運動エネルギーを間欠的に伝達するように構成されたインパルス発生手段(23)とを有する液圧パルスユニット(20)と、を備え、
前記慣性駆動部材(21)が更に、横方向壁(24a)を有する末端要素(24)を含むパワーレンチであって、
オイルから空気を抽出するために分離装置(30)が設けられ、前記分離装置(30)は、ディスク形セパレータ要素(31)と、前記ディスク形セパレータ要素(31)と前記横方
向壁(24a)との間にシールを設けるように配置されたシール装置(32)と、を含み、これにより、これらの間で前記オイルチャンバ(22)と流体連通した受入空間(27)を部分的に境界付け、前記ディスク形セパレータ要素(31)は更に、前記回転軸(A
-A)から半径方向距離(a1)に配置された流体開口部(33)によって、前記オイルチャンバと前記受入空間(27)との間に通路を設けるように配置され、
前記分離装置(30)は更に、前記受入空間(27)に配置された仕切り要素(34)を備え、第1の部分容積が前記仕切り要素(34)の第1の側に形成され、第2の部分容積が他方の側に形成され、前記第1及び第2の部分容積が流体連通し、前記流体開口部(33)が前記第1の側に配置され、
前記流体連通は、少なくとも部分的に前記仕切り要素(34)によって形成された流体通路によって提供され、
前記シール装置(32)が、外側シール(32a)と内側シール(32b)とを備え、前記内側シール(32b)が、前記流体通路が前記外側シール(32a)と前記内側シール(32b)とによって境界付けられたチャネル(C)によって提供されるように、前記仕切り
要素(34)を形成している、
ことを特徴とするパワーレンチ。
【請求項2】
前記流体通路が、前記第1の
部分容積を構成する、
請求項1に記載のパワーレンチ。
【請求項3】
前記流体通路は、前記ディスク形セパレータ要素(31)の円周の一部の形状によって定められた経路に従って、前記回転軸(A-A)から半径方向距離(a1)のところに延びている、
請求項1又は2に記載のパワーレンチ。
【請求項4】
前記流体通路は、前記ディスク形セパレータ要素(31)
の円周の半分の形状によって定められる経路に従って、前記回転軸(A-A)から半径方向距離(a1)のところに延びる、
請求項1に記載のパワーレンチ。
【請求項5】
前記
流体開口部(33)が、長さ方向で測定したときに、前記流体通路のほぼ中央に配置されている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のパワーレンチ。
【請求項6】
前記外側シール(32a)は、前記回転軸(A-A)から半径
方向距離(a2)のところに前記ディスク形セパレータ要素(31)の円周の湾曲に従って延び、前記横方向壁(24a)に当接し且つ間に液密シールを形成するように構成され、前記半径方向距離(a2)が、前記半径方向距離(a1)よりも大きく、前記内側シール(32b)は、前記回転軸(A-A)から半径方向距離(a3)のところで前記円周の一部の湾曲に従って延び、横方向壁(24a)を支持し且つ間に液密シールを形成するように構成され、前記半径方向距離(a3)は、前記半径方向距離(a1)よりも小さく、前記流体通路が、前記前記
外側シールと
前記内側シールとの間に形成されている、
請求項
3又は4に記載のパワーレンチ。
【請求項7】
前記仕切り要素(34)が、突出する肩部を含む、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のパワーレンチ。
【請求項8】
前記仕切り手段(34)が、前記流体通路を有するように管状要素を備える、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のパワーレンチ。
【請求項9】
前記仕切り要素(34)が、前記ディスク形セパレータ要素(31)の一部を形成する、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のパワーレンチ。
【請求項10】
前記仕切り要素(34)が、前記横方向壁(24a)の一部を形成する、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のパワーレンチ。
【請求項11】
前記パワーレンチが電動レンチである、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のパワーレンチ。
【請求項12】
前記パワーレンチが空気圧レンチである、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のパワーレンチ。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載のパワーレンチの分離装置(30)で使用するためのディスク形セパレータ要素(31)であって、
前記ディスク形セパレータ
要素が、
回転軸(A-A)から半径距離(a1)に位置する流体開口部(33)と、
仕切り要素(34)と、を備え、
前記仕切り要素(34)が、第1の部分容積が前記仕切り要素(34)の第1の側に形成され、第2の部分容積が他方の側に形成され、前記第1及び第2の部分容積が流体連通し、前記流体開口部(33)が前記第1の側に配置され、前記分離装置(
30)が、外側シール(32a)と内側シール(32b)とを備え、前記内側シール(32b)が、前記流体通路が前記外側シール(32a)と前記内側シール(32b)とによって境界付けられたチャネルCによって提供されるように、前記仕切り手段(34)を形成している、
ディスク形セパレータ要素(31)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ねじを締め付けるためのパワー工具に関し、より具体的には、液圧パルスユニットとオイルから空気を抽出するための分離装置とを有するインパルス型パワー工具に関する。
【背景技術】
【0002】
締め付け用の電動工具は、様々な業種で使用されていることが知られている。例えば、液圧パルスユニットを備えたインパルス型のパワーレンチは、連続的な大量生産に一般的に使用される。
【0003】
このような工具の液圧ユニットは、オイルで充填されている。しかしながら、これらのユニットは、作動中にオイルが加熱したときのオイルの熱膨張に対応するように設計される必要がある。この熱膨張を吸収するために、オイルに少量の空気が導入される解決策が提案されている。しかしながら、このタイプのパワーレンチでは、既知の問題に、オイルの膨張を吸収するためパルスユニット内に十分な空気が残されるように、正確に適正な量のオイルをパルスユニットに充填することが含まれる。
【0004】
これらの問題の幾つかを軽減するために、弾性要素又はアキュムレータを使用して熱関連の膨張を補償する試みがなされており、これにより、オイル容積中に空気を残すことなくパルスユニットを完全に充填することができる。
【0005】
しかしながら、最初はわずかではあるが、レンチの作動中にパルスユニットから必然的に、いくらかのオイル漏れがあるという問題が依然として残っており、このことは、対応する量の空気がパルスユニットに侵入することを意味している。その結果、時間の経過と共にパルスユニット内の空気容積が増加することになる。従って、オイル容積中の空気の割合が連続的に増加し、レンチの何回かの作動後、パルスユニット内の空気容積の増加により効率の低下が生じることになる。
【0006】
提案された更に別の解決策は、熱膨張を吸収するため、オイルチャンバと連通して配置された空気容積を提供することを含む。例えば、オイルが膨張すると、少量のオイルがこのような空間に逃げることができるようになり、従って、空間内の空気が圧縮され、パルスユニットが冷えると、オイルがオイルチャンバに吸い戻される。しかしながら、オイルが吸い戻されると、空気容積から空気がオイルチャンバに導入され、この場合も効率が低下する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6,110,045号明細書
【文献】米国特許第13,697,107号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、液圧パルスユニットを含むパワーレンチの分野での改善の必要性が存在する。
【0009】
従って、オイル容積中の空気の割合が低く保たれるパワーレンチを提供することが望ましい。特に、漏れに対する感度が低く、従って、空気の割合を、時間が経過しても、低く保つことができるパワーレンチを提供することが望ましいであろう。これらの懸念点の1又は2以上に良好に対処するために、独立請求項に規定されているように、シール装置及びディスク形セパレータ要素を備えた締め付け工具が提供される。好ましい実施形態は、従属請求項に規定されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、モータと、出力シャフトと、モータに接続されて回転軸の周りで回転可能な慣性駆動部材、慣性駆動部材で囲まれたオイルチャンバ及び出力シャフトに運動エネルギーを間欠的に伝達するように配置されたインパルス発生手段又は機構を含む液圧パルスユニットと、を備えたパワーレンチが提供される。慣性駆動部材は更に、横方向壁を有する後部又は末端要素を含み、オイルから空気を抽出するために分離装置が設けられ、分離装置は、ディスク形のセパレータ要素と、ディスク形のセパレータ要素と横方向端壁との間にシールを設けるように配置されたシール装置とを含み、これによりこれらの間でオイルチャンバと流体連通した受入空間を部分的に境界付け、ディスク形の要素は更に、回転軸から半径方向距離a1のところに配置された流体開口部を利用して、オイルチャンバと受入空間との間に通路を設けるように配置され、分離装置は更に、受入空間に配置された仕切り要素を含み、仕切り要素の第1の側に第1の部分容積が形成され、他方の側に第2の部分容積が形成されるようになり、第1及び第2の部分容積が流体連通しており、流体開口部が、第1の側に配置されている。
【0011】
第1の態様によれば、パワーレンチ(又はパワー工具又は締め付け工具、これらの用語は、本明細書全体で同義的に使用される)は、オイルチャンバを受入空間から分離するディスク形のセパレータ要素を含む分離装置を組み込み、ディスク形のセパレータ要素が、オイルチャンバと受入空間との間をオイルが流れることができる開口部を含み、加熱時に膨張したときにこの開口部を介してオイルチャンバから受入空間にオイルが流れ、工具が停止してオイルが冷却されると再び戻ることができるようになる設計によって、更に、この受入空間を流体連通している第1及び第2の部分流体容積部分に部分的に分割する仕切り要素によって、上記の懸念に対する本発明の解決策を提供する。
【0012】
より詳細には、第1及び第2の容積部分とも呼ぶことができる第1及び第2の部分容積(これらの用語は本明細書全体で同義的に使用される)が部分的に分割されているが、依然として流体通信中している設計は、受け取りスペースに存在する流体をこの間に移動可能にする。その結果として、各容積部分の流体は、空気、オイル、又は混合物とすることができることになる。
【0013】
更に、この設計は、空気とオイルの密度の違いを利用する効率的な「エアトラップ」によって回転分離装置の適切な機能を確保し、以下に説明するように、オイルが冷えるにつれてオイルチャンバに空気がほとんど又は全く戻らないことを確保するという問題を巧みに解決する。
【0014】
分離装置が慣性駆動部材と共に回転すると、仕切り要素によって形成された第1及び第2の容積部分の相対的な向きは、回転中に交互する。更に、及び(恐らくは)より重要なことに、コース外の開口部の回転位置も変化し、工具が回転位置を停止したときに、ディスク形要素における開口部の回転位置が任意になる。しかしながら、空気とオイルの密度の差異に起因して、存在する空気は、受入空間の上部(出力シャフトが加工物の水平面に平行に延びる例示的な使用事例では(すなわち、ディスク形のセパレータ要素が実質的に垂直に配置される場合))に集まり、一方、より重いオイルは、受入空間の下部に集まる。他方、前述のように、工具は何時でも停止する可能性があり、フロー開口部の位置は任意であるため、これは問題を引き起こす。従って、開口部が空間の上部に配置されたときに工具が停止した場合、本発明の仕切り要素がないと、オイルが冷却されると、空気のみがオイルチャンバに吸い戻され、工具及びひいてはオイルが冷えて、これにより工具の機能が大幅に損なわれる状況が生じる可能性がある。
【0015】
従って、本発明の仕切り要素は、開口部へのオイルの流体接続が常に提供されることを確実にするために導入された。ある意味では、仕切り要素は、停止時の回転位置に関係なく、存在する空気とディスク形のセパレータ要素の開口部との間にオイルがオイルバリアを形成できるように適合されていると言える。これは、オイルと空気の密度差の影響を利用した仕切り要素の本発明の設計、並びに第1及び第2の容積部分の間に提供される流体接続により、回転方向に関係なく常にオイルと流体接続して流体開口部が流体中に残ることを確実にすることによって実施可能である。
【0016】
これにより、オイルが冷えるときにオイルのみがオイルチャンバに確実に吸い戻され、これに応じて、パワー工具の性能が大幅に向上することができる。
【0017】
ディスク形要素及び/又は仕切り要素は、回転方向に関係なく、仕切り要素の少なくとも一端が受入空間内のオイルの表面の下に常にあるように有利に設計することができる。従って、幾つかの実施形態では、ディスク形要素は、第1の半部分H1及び第2の半部分H2を含むことができ、第1の容積部分は、第1の半部分に配置される。仕切り要素は更に、仕切り要素の第1及び第2の端部の少なくとも一方が他の半分部分に配置されるように拡張することができる。
【0018】
参照されるパワーレンチは、空気圧レンチ又は電動レンチとすることができる。更に、ディスク形状とは、実質的に円形の外周を有し、厚みが直径よりもかなり小さいが、必ずしも完全に平坦な表面である必要はない構造体であると理解されたい。受入空間は、空気チャンバと呼ぶことができ、流体開口部は、圧力均等化のための開口部と呼ぶことができる。ディスク形のセパレータ要素の向きに関しては、出力シャフトに垂直な平面内に延びるように配置することができる。ディスク形の要素は更に、使用時に、実質的に垂直な平面内に延びるように配置することができる。更に、一般に、本明細書全体を通して、他に何も示されていない場合、言及される距離は、中心間の距離、すなわち、例えば、回転軸と開口部の中心との間の距離、回転軸と参照されるセパレータ要素、シーリング要素などとの間の平均距離(すなわち、軸と、半径方向で測定された要素の中央に位置する箇所との間の距離)である。
【0019】
一実施形態によれば、流体連通は、上記仕切り要素によって少なくとも部分的に形成された流体通路によって提供される。従って、このような実施形態では、第1の流体容積部分は、仕切り要素によって部分的に規定することができる。例えば、流体通路は、受入空間の境界を形成するシール要素と仕切り要素との間に形成することができる。更に、このような場合、流体開口部は、その間に形成することができる。一実施形態によれば、流体通路は、上記第1の容積部分を構成する。すなわち、第1の容積は、次に仕切り要素によって形成される流体通路によって形成される。
【0020】
例えば、一実施形態によれば、仕切り要素は、アーチ型であり、上記第2の容積を部分的に囲むことができる。このような実施形態は、上記部分的な囲みが、空気を閉じ込めることができるポケット又はトラップを形成できるという点で有利である。より詳細には、開口部が最上位に位置する回転位置で工具が停止すると、このようなポケットより空気が閉じ込められ、このような仕切り要素によって形成された流体チャネルを介してオイルが開口部に導くことができ、これによって閉じ込められた空気をバイパスする。当業者であれば、V字型、U字型、又は3辺の正方形又は矩形など、他の同様の形状でも理論的に同等の効果が得られることが理解される。
【0021】
一実施形態によれば、流体通路は、上記ディスク形セパレータ要素の円周の一部の形状によって定められる経路(経路長)に従って、回転軸(A-A)から半径方向距離a2で延びる。言い換えれば、このような流体通路は、扇形によって規定され、円周に沿って延びると説明することができる。好ましくは、通路の幅、すなわちある意味で半径方向の距離a1とa2との間の差は、例えば、0.1ないし5mmの範囲で小さく保たれる。
【0022】
一実施形態によれば、流体通路は、上記ディスク形セパレータ要素の上記円周の半分の形状によって定められる経路に従って、回転軸(A-A)から半径方向距離a2で延びる。言い換えれば、このような流体通路は、半円の形状を有し、円周に沿って延びると説明することができる。
【0023】
一実施形態によれば、開口部は、長手方向に測定したときに、上記流体接続のほぼ中央に配置される。すなわち、流体接続の長さの半分が、開口部の第1の側にあり、残りの半分が他方の側にあるようになる。例えば、上記の実施形態では、流体通路は、ディスクの円周の半分に沿って延在することができるが、流体開口部は、各側の円周の1/4に沿って部分的な流体通路を残して、中央に配置することができる。
【0024】
一実施形態によれば、シール装置は、外側シール及び内側シールを含み、内側シールは、流体通路が外側シール及び内側シールによって境界付けられたチャネルによって提供されるように、仕切り手段を形成(又はその一部を形成)する。これにより、外側シール及び内側シールの各々が、ディスク形状セパレータ要素と横方向壁との間に延在することができる。シールの各々は、ディスク要素又は横方向壁の一部を形成するか、その間に配置された別個のユニットとして提供することができる。その結果、チャネルは、ディスク形のセパレータ要素の表面及び横方向壁によって更に境界付けることができる。
【0025】
一実施形態によれば、外側シールは、回転軸から半径方向距離a2でディスクの円周の湾曲に従って延在して、横方向壁を支持し且つ間に液密シールを形成するように適合されており、半径方向距離 a2は、半径方向距離a1よりも大きく、内側シールは、回転軸から半径方向距離a3で円周の一部の湾曲に従って延在して、横方向壁を支持し且つ間に液密シールを形成するように適合されており、半径方向距離a3は半径方向距離a1よりも小さく、流体接続が第1のシールと第2のシールとの間に形成されるようになる。言い換えると、部分的に放射状の形状を有するチャネルがシール間に形成され、内側シールは、上記仕切り要素を含むか、又はこれによって構成することができ、流体開口部は、このチャネルに配置される。距離a2は、外側シールがディスク形要素(又は外側シールが別個のシール又は横方向壁により構成されるシールである場合はディスク形要素の形状)の縁部に従うような距離とすることができる。すなわち、外側シールは、円周に沿ってシールするように円形とすることができ、ここで、内側シールは、幾分小さい円の一部の形状を有し、その結果、チャネルは、扇形の形状を有するようになる。内側シールが半円の形状であり、形成されたチャネルが外周(円周)の半分に沿って延びる場合、1つの特に有利な形状を達成することができる。
【0026】
一実施形態によれば、仕切り手段は、上記流体通路が設けられるような管状要素を含む。実施例としては、管体、パイプ、ホース又は同様のものが挙げられる。
【0027】
一実施形態によれば、仕切り要素は、上記ディスク形セパレータ要素の一部を形成し、一方、別の実施形態によれば、仕切り要素は、上記横方向壁の一部を形成する。別の仕切り要素を含む実施形態も範囲内で考えられる。一実施形態によれば、仕切り要素は、突出した肩部を備える。このような肩部は、これに応じて、上記ディスク形要素又は上記横方向壁の何れかに配置されるか、又はその一部を形成することができる。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、上記の実施形態の何れかによる、パワーレンチ内に配置されるように適合されたディスク形セパレータ要素であって、シール配置及び仕切り要素を含むディスク形セパレータ要素。本発明の第2の態様の範囲内で考えられる、ディスク形のセパレータ要素の目的、利点及び特徴は、本発明の第1の態様を参照する上述の議論によって容易に理解される。
【0029】
本発明の更に別の態様によれば、上記の例示的な実施形態によって説明されるような液圧パルスユニットを備えたパワーレンチで使用され且つオイルから空気を抽出するための分離装置であって、ディスク形のセパレータ要素、シール装置、及び回転軸から半径方向距離a1に位置する流体開口部を含み、仕切り要素を更に含む、分離装置である。
【0030】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、以下の詳細な開示、図面及び添付の特許請求の範囲を研究すると明らかになるであろう。当業者であれば、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に記載されるもの以外の実施形態を作成できることは理解される。
【0031】
本発明は、添付図面を参照しながら、例示的な実施形態の以下の例示的且つ非限定的な詳細な説明において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】一実施形態による例示的なパワーレンチの斜視図である。
【
図2】一実施形態による液圧パルスユニットの断面図である。
【
図3a】一実施形態による例示的なディスク形のセパレータ要素の斜視図である。
【
図3b】一実施形態による例示的なディスク形セパレータ要素の正面図である。
【
図4a】異なる回転位置での分離配置の機能を示す図である。
【
図4b】異なる回転位置での分離配置の機能を示す図である。
【
図4c】異なる回転位置での分離配置の機能を示す図である。
【
図4d】異なる回転位置での分離配置の機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
全ての図は概略図であり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、本発明を明確に説明するために必要な部分のみを示しており、他の部分は省略又は単に示唆されている場合がある。
【0034】
図面において例示されているパワーレンチは、ハンドル110を有するハウジング100を備えたピストルタイプのレンチである。電源制御のために、レンチには、トリガーボタン140が設けられている。ハウジング内には、例示されていないモータと、四角形の出力シャフト10を有する液圧パルスユニット20とが更に設けられている。
【0035】
図2に示すように、インパルスユニットは、円筒形の前方要素25と、末端要素24を有し、オイルチャンバ22を囲む慣性駆動部材21を備える。後部24すなわち末端要素24は、モータに接続するための結合部と共に形成される。出力シャフト10は、オイルチャンバ22内に延在し、インパルス発生機構23を介して駆動部材21に間欠的に結合されるインパルス受け部を有する。インパルス機構単独での動作は、当技術分野で知られているので、これ以上、詳細には説明しない。同様の機構は、例えば米国特許第6,110,045号明細書及び米国特許第13,697,107号明細書に従来から記載されている。
【0036】
分離装置30は、オイルチャンバ22と受入空間27即ち空気チャンバ27との間に設けられ、ディスク形のセパレータ要素31と、ディスクと末端要素又は後部24の横方向壁24aとの間にシールを設けるように配置され、間に受入空間27が形成されるようにするシール装置32とを備える。この受入空間27は、室温で約60%のオイルと40%の空気の混合物を含み、熱膨張が発生したときにオイルチャンバ22からオイルが流入して、受入空間内の空気がこのオイル容積に対応するようこれに応じて圧縮されるチャンバとして説明することができる。この流れを可能にするために、ディスク形のセパレータ要素31は、
図3に示されるように、軸A-Aから距離a1に、オイル出口開口33を備える。
【0037】
ここで、ディスク形要素31について、
図3a及び
図3bを参照してより詳細に説明する。
図3から、図示の実施形態では、受入空間27に面するディスク形状要素の表面31aは、わずかに円錐形を有することが認識することができる。ディスク形の要素は更に、外側シール32aと、突出した肩部34の形態の仕切り要素34とを含む。外側シール32aは、回転軸A-Aから半径方向距離a2のところでディスク形要素の円周に沿って延在し、後部の横方向壁24aを支持するように構成される。仕切り要素34は、図示の実施形態では、内側シールによって形成され、回転軸A-Aから半径方向距離a3で円周の一部の湾曲に従って延在し、横方向壁24aを支持するように構成される。従って、内側シールと外側シールは同じ形状であり、従って、一定幅のチャネルCがその間に形成され、図示の実施形態では、半円の形状を有するチャネルCが形成される。
【0038】
ディスク形要素34がオイルチャンバ22と受入空間27との間に配置されると、第1の容積部分V1及び第2の容積部分V2は、仕切り要素34によって互いに部分的に境界付けられて形成され、ディスク形要素31の対応する領域が
図3に示されている。しかしながら、仕切り要素34は、第1及び第2の容積部分が流体連通を維持するように設計されている。オイル出口開口部33は、
図3において、ディスクの上部に示されている。図示の実施形態では、距離a1は、ディスク形要素31の半径Rよりもわずかに小さい。より詳細には、a1は、ディスクの半径から外側シール32aの半径方向の厚さを引いたものにほぼ等しい。外側シールと内側シールにより境界付けられたこの流体チャネルCはまた、第2の容積から第1の容積へ、従って、流体開口部33への流体通路を提供し、流体開口部は第1の容積部分に配置される。
【0039】
インパルスユニットの動作中、慣性駆動部材は、モータによって回転され、トルクインパルスが出力シャフト10において達成される。分離装置は、慣性駆動部材と共回転する。
【0040】
オイルが加熱されて膨張が起こると、幾らかのオイルがオイルチャンバ22から開口部33を介して受入空間27に流入し、その結果、この空間の空気容積が圧縮される。しかしながら、工具が停止すると、オイルは再び冷却され、オイルは、オイルチャンバ22に吸い戻される。
【0041】
しかしながら、空気とオイルとの密度の差異に起因して、出力シャフト10が水平面に平行に延在し、ディスク形のセパレータ要素31が実質的に垂直に配置される例示的な使用事例において、空気は、受入空間27の上部に移動し、より重いオイルは受入空間の下部に集まる。他方、分離装置が回転するにつれて変化し、工具が何時でも停止できるので、流れ開口部33の位置は任意である。
【0042】
図4a~
図4dを参照して、仕切り要素34の機能について説明する。
図4aでは、開口部33は、トップ位置と呼ばれる位置に配置される。ここで、仕切り要素34は、(アーチ型の)仕切り要素によって形成されたポケット内に空気を閉じ込めるという意味で、空気が開口部33に到達するのを防ぐバリアとして機能するだけでなく、オイルが開口部33に流れ込むことができる流体チャネルCを形成する外側シール32aとしても機能する。
図4bでは、同じディスクが45°回転して示され、空気は、依然としてポケット又は仕切り要素34によって形成された「エアトラップ」に閉じ込められ、オイルは、同じチャネルCを通って流れる。
図4cでは、ディスク形要素31が更に45°、すなわち
図4aと比較して合計で90°回転されて示しており、オイルレベルは依然として開口部33を十分に上回っており、空気は、上部に留まり、オイルがバリアを形成することに起因して、開口部33を介してオイルチャンバ22に入ることができない。最後に、
図4dでは、開口部33が最も低い位置にあるので、オイルレベルはチャネルCの両端より上にあり、この位置でもオイルのみがチャネルに流入する。
【0043】
従って、要素34は、停止時の回転位置に関係なく、オイルが案内されて、空気とディスク形セパレータ要素31の開口部33との間に障壁を形成するように設計されている。又は、言い換えると、チャネルの少なくとも一方の端は常にオイルレベルより下にあり、従って、開口部及びひいてはチャンバへのオイルの流体接続を常に提供する。
【0044】
本発明について、図面及び上述の記載において詳細に例示及び説明してきたが、このような例示及び記載は、例証又は例示のものであり、限定ではないと見なされるべきであり、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、添付の特許請求の範囲において規定される範囲内で、多くの修正、変形及び変更が考えられることは理解される。加えて、開示された実施形態の変形形態は、特許請求される発明を実施する当業者によって理解及び実施され、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の研究を形成することができる。特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数名詞の記載は複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。請求項における参照符号は、請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。