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特許7426384鉄レドックスフロー電池、電力システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】鉄レドックスフロー電池、電力システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20240125BHJP
   H01M 8/04186 20160101ALI20240125BHJP
   H01M 8/04276 20160101ALI20240125BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240125BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20240125BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20240125BHJP
   H01M 8/2455 20160101ALI20240125BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04186
H01M8/04276
H01M8/04537
H01M8/04664
H01M8/04955
H01M8/2455
H01M8/2465
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021518606
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2019051344
(87)【国際公開番号】W WO2020072190
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】16/153,447
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519297300
【氏名又は名称】イーエスエス テック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ESS Tech,Inc.
【住所又は居所原語表記】26440 SW Parkway Avenue,Wilsonville,Oregon 97070 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー-スターン アイザック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデルザンデン アーロン
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-341964(JP,A)
【文献】特開2004-265821(JP,A)
【文献】特表2008-527647(JP,A)
【文献】特開2015-079738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0175430(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0144895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正反応器と、負反応器と、正反応器と負反応器との間の流体分離を提供する障壁と、第1電解液の第1部分と、前記第1電解液と流体連通していない第2電解液の第1部分とを含む電気エネルギー貯蔵セルと、
前記正反応器と流体連通する前記第1電解液の第2部分を収容する第1流体通路と、
前記負反応器と流体連通する前記第2電解液の第2部分を収容する第2流体通路と、
前記第1電解液及び前記第2電解液と電気的に連絡している金属デバイスであって、基準電位に電気的に接続している金属デバイスと、
を含み、
前記金属デバイスは前記第1流体通路及び前記第2流体通路内に配置され、
前記基準電位は、接地電位である、
鉄レドックスフロー電池
【請求項2】
前記第1流体通路と流体連通する少なくとも1つのポンプをさらに含む、
請求項1に記載の鉄レドックスフロー電池
【請求項3】
前記第2流体通路と流体連通する少なくとも1つのポンプをさらに含む、
請求項2に記載の鉄レドックスフロー電池
【請求項4】
前記金属デバイスは、前記第1流体通路及び第2流体通路に沿って配置される、
請求項1に記載の鉄レドックスフロー電池
【請求項5】
前記金属デバイスは、前記第1電解液及び前記第2電解液を複数の電気エネルギー貯蔵セルに導く流体マニホールドである、
請求項1に記載の鉄レドックスフロー電池
【請求項6】
前記金属デバイスは加熱素子である、請求項1に記載の鉄レドックスフロー電池
【請求項7】
前記金属デバイスはポンプのハウジングである、請求項1に記載の鉄レドックスフロー電池
【請求項8】
前記金属デバイスはポンプのインペラである、請求項1に記載の鉄レドックスフロー電池
【請求項9】
複数の電気エネルギー貯蔵セルであって、複数の電気エネルギー貯蔵セルの各々は、正反応器と、負反応器と、正反応器と負反応器との間の流体分離を提供する障壁と、第1電解液の第1部分と、前記第1電解液と流体連通していない第2電解液の第1部分とを含む、複数の電気エネルギー貯蔵セルと、
前記第1電解液、前記第2電解液を含む複数の通路を含むマニホールドと、
前記第1電解液及び前記第2電解液を複数の電気エネルギー貯蔵セルに送達するように構成された1つ以上のポンプと、
前記第1電解液及び前記第2電解液と電気的に連絡している金属デバイスであって、基準電位に電気的に接続している金属デバイスと、
を含み、
前記金属デバイスは複数の前記通路内に配置され、
前記基準電位は、接地電位である、
電力システム。
【請求項10】
記金属デバイスは前記接地電位に直接電気的に接続されている、
請求項9に記載の電力システム。
【請求項11】
記金属デバイスは電流検知装置を介して前記接地電位に電気的に接続される、
請求項9に記載の電力システム。
【請求項12】
前記電流検知装置を通って流れるしきい値電流よりも大きい電流に応答して前記電力システムを停止するための非一時的なメモリに記憶された実行可能命令を含むコントローラをさらに含む、
請求項11に記載の電力システム。
【請求項13】
前記電力システムを停止することは、前記1つ以上のポンプを停止することを含む、
請求項12に記載の電力システム。
【請求項14】
前記金属デバイスは加熱素子である、請求項9に記載の電力システム。
【請求項15】
第1電解液を電気エネルギー貯蔵装置の正反応器に、第2電解液を該電気エネルギー貯蔵装置の負反応器に供給し、前記第1電解液は前記第2電解液と流体連通しておらず、
前記第1電解液、前記第2電解液を含む複数の通路内に配置された金属デバイスを介して前記第1電解液を前記第2電解液に電気的に接続し、該金属デバイスは前記第1電解液及び前記第2電解液に物理的に接触し、
前記金属デバイスを接地電位に電気的に接続する、
電力システムのための方法。
【請求項16】
前記接地電位と前記金属デバイスとの間を流れる電流がしきい値電流よりも大きいことに応答して、前記電気エネルギー貯蔵装置を停止するステップをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属デバイスを介して前記第1電解液及び前記第2電解液を加熱するステップをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記金属デバイスを含む単一のポンプを介して前記第1電解液及び前記第2電解液を供給することをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記金属デバイスは前記単一のポンプのインペラである、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本説明は、電気エネルギー貯蔵装置に電力を注入(sinking)又は供給(sourcing)するためのシステム及び方法に関する。本方法及びシステムは、流体連通状態にない2つの電解液を含む電力システムに特に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギー貯蔵装置は、太陽電池、風力タービン、水力発電機、又は他のソースのアレイを介して生成された電力を貯蔵することができ、その結果、電力源の出力が低い場合又は電気負荷が高い場合に、電力が後に電気負荷に供給される。
電気エネルギー貯蔵装置は、電気エネルギー貯蔵装置の電位を増加させるために直列に接続され得る複数のセルを含むことができる。電気エネルギー貯蔵装置はまた、電気エネルギー貯蔵装置の出力容量を増加させるために並列に電気的に接続されたセルを含み得る。電気エネルギー貯蔵装置の電位が増加すると、電気エネルギー貯蔵装置は、より低い電位(例:アース)を求め、より低い電位に放電する傾向が高くなる。電気エネルギー貯蔵装置の周囲及び内部の電気絶縁を高めることによって、電気エネルギー貯蔵装置がより低い電位の物体に放電する可能性を低減することができるが、電気絶縁材料の量及び品質を増加させることは、電気エネルギー貯蔵装置のコストを著しく増加させる可能性がある。したがって、電気エネルギー貯蔵装置のコストを実質的に増大させることなく、電気エネルギー貯蔵装置がより低い電位の物体に意図せず放電する可能性を低減する方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、上記の課題を認識し、以下を含む電力貯蔵セルを含む電力システムを開発した。電力システムは、正反応器と、負反応器と、正反応器と負反応器との間の流体分離を提供する障壁と、第1電解液の第1部分と、前記第1電解液と流体連通していない第2電解液の第1部分とを含む電気エネルギー貯蔵セルと、前記正反応器と流体連通する前記第1電解液の第2部分を収容する第1流体通路と、前記負反応器と流体連通する前記第2電解液の第2部分を収容する第2流体通路と、前記第1電解液及び前記第2電解液と電気的に連絡している金属デバイスであって、基準電位に電気的に連絡している金属デバイスとを含む。
【0004】
第1電解液及び第2電解液を接地基準に電気的に接続することにより、電気エネルギー貯蔵装置の正及び負端子をアースに対してバイアスすることができ、電気エネルギー貯蔵装置をアース又はアースに近い物体に放電する可能性を低減することができる。具体的には、電解液分配マニホールドの電圧をアースを基準とすることができ、電気エネルギー貯蔵装置の負端子をアースを基準とする場合と比較して、正端子とアースとの間の電圧を大幅に低減することができる。したがって、絶縁材料を低減することにより、電力システムに対して所望のレベルの放電保護を提供することが可能である。
【0005】
本説明は、いくつかの利点を提供し得る。特に、この手法は電力システムコストを低減できる。さらに、この手法は、柔軟なシステムを可能にする様々な方法で適用することができる。加えて、この手法はシステム重量を減らし、システム信頼性を改善する。
【0006】
上記の利点及び他の利点、及び本説明の特徴は、以下の詳細な説明から、単独で又は添付の図面に関連して、容易に明らかになるであろう。
【0007】
上記の要約は、詳細な説明でさらに説明される概念の選択を簡略化した形で導入するために提供されることを理解されたい。クレームされた主題の主要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、その範囲は、詳細な説明に続く請求項によって独自に定義される。さらに、クレームされた主題は、上記又は本開示のいずれかの部分に記載されたいずれかの不利な点を解決する実施に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書に記載される利点は、単独で又は図面を参照して、本明細書において詳細な説明と呼ばれる実施形態の例を読むことによって、より完全に理解されるであろう。
【0009】
図1図1は、電力貯蔵及び供給システムの単一のセルを示す概略図である。
【0010】
図2図2は、マニホールド電圧が接地電位を基準とする電力システムの概略図である。
【0011】
図3図3は、図2の電力システムの一例の詳細な概略図を示す。
【0012】
図4図4は、第2例の電力システムの詳細な概略図を示す。
【0013】
図5図5は、第3例の電力システムの詳細な概略図を示す。
【0014】
図6図6は、第4例の電力システムの詳細な概略図を示す。
【0015】
図7図1~6のシステムを動作させる方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本説明は、図1に示すように、電気エネルギー貯蔵装置(例えば、直流(DC)電源)を介した電力の貯蔵、供給に関する。電気エネルギー貯蔵装置は、太陽電池、水力、風力、又は化学エネルギーを介して生成された電気エネルギーを貯蔵することができる。電気エネルギー貯蔵装置は、変換プロセスの後に交流ACとして分配され得るDC電力を出力し得る。電気エネルギー貯蔵装置は、図1図6に示すような鉄フロー装置(iron flow device)であってもよい。電気エネルギー貯蔵装置は、図2及び図3に示すように、接地を基準とするヒータを含むことができる。あるいは、電解液分配マニホールドは、電気エネルギー貯蔵装置と基準電位(例えば、アース)との間の電位を低下させるために、図4に示すように接地を基準とすることができる。さらに他の例では、ポンプハウジング又はインペラを基準電位に電気的に接続して、電気エネルギー貯蔵装置と基準電位との間の電位を低減することができる。図1図6のシステムは、電力を貯蔵して供給するために、図7の方法に従って動作することができる。
【0017】
図1を参照すると、全鉄レドックスフロー電池(IFB)セルの例が示されている。IFBセル175は、電気エネルギー貯蔵装置である。IFBセルには、メッキ電解液タンク100に貯留される、メッキ電解液160(例えば、FeCL)が供給される。IFBはまた、レドックス電解液タンク101に貯留されるレドックス電解液161を含むことができる。メッキ電解液及びレドックス電解液は、FeCL又はFeCLなどの水に溶解した適切な塩であってもよい。めっき電解液及びレドックス電解液の両方が、異なるモル濃度の同じ塩を使用してもよく、IFBの特徴は、異なる反応性化合物を有する電池では利用できない。タンク100は、負反応器122と流体連通していてもよい。タンク101は、正反応器124と流体連通していてもよい。タンク100及び負反応器122内の電解液は、タンク101及び正反応器124内の電解液から流体的に分離されている。負反応器と正反応器及びそれらのそれぞれの電解液を分離するのはバリア120である。バリアは、電解液のクロスオーバーを防止し、イオン伝導性を提供するために、めっき電解液とレドックス電解液との間に配置される、イオン交換膜又は微孔性膜などの膜バリアとして具現化することができる。
【0018】
センサ102及び104は、pHを含む電解液の化学的特性を決定するために使用され、光学センサとして具現化することができる。プローブ126及び128は、電解液の化学的特性(後述する)を決定するために追加的に又は代替的に使用され得る。他の例は、めっき電解液プローブ、めっき電解液センサ、レドックス電解液プローブ、レドックス電解液センサ、又はそれらのいずれかの組み合わせを有してもよい。プローブは、負反応器122及び正反応器124内のIFBの反応部分内に配置することもできる。酸添加剤は、追加のタンク106及び108に貯留することができる。これらは異なる添加剤を含み、異なるルーチンによって制御され得る。他の例では、IFBはまた、正側添加剤又は負側添加剤のいずれかを有し、両方を有していなくてもよい。正側添加剤は、正添加ポンプ112によって正反応器124内に加速され、負添加剤は、負添加ポンプ110によって負反応器122内に加速され得る。あるいは、電解液添加剤は、タンク100及び101内にポンプ注入されてもよい。ポンプ110及び112は、ポンプに通信可能に接続された制御システム150を介して作動させることができる。制御システムは、プローブ126、プローブ128、センサ102、センサ104、又はそれらの任意の組み合わせに応答することができる。電解液は、ポンプ131によって負反応器122へ、又は負反応器からポンピングされてもよい。電解液は、ポンプ130を介して正反応器124へ、又は正反応器からポンピングされてもよい。IFBは、負極114と正極116とを含む。
【0019】
制御システム150は、入出力154(例えば、デジタル入力、デジタル出力、アナログ入力、アナログ出力、パルス幅出力など)、中央処理装置152、ランダムアクセスメモリ155、及び読み取り専用(例えば、非一時的メモリ)156を含み得る。
【0020】
ここで図2を参照すると、モデル化された抵抗を含む回路に示される複数のIFBセル175a~175eを含む電力システムの概略ブロック図である。概略ブロック図は、IFBセル175a~175eの正反応器に電解液を分配する通路又は導管290を示す。通路又は導管290が負反応器に分配されること(例えば、175a~175eの負側への290の接続)を除いて、同様の概略図が、IFBセル175a~175eの負反応器に分配される電解質について生成され得る。
【0021】
複数のIFBセル175a~175eは、IFBセルスタック225の電位を増加させるために電気的に直列に接続されて示されているが、追加のセルは、IFBセルスタック225の出力容量を増加させるために並列に接続されてもよい。この例では、IFBセルスタック225は、直列に電気的に接続された5つのセルから構成されるが、セルスタック225は、直列に接続された1からN個のセルを含むことができ、Nは、セルスタック225内の最後のセルの整数である。IFBセルスタック225の最低電位235は、第1セル175aの負端子に設けられている。IFBセルスタック225の最高電位236は、第Nセル175eの正端子に設けられる。
【0022】
抵抗250は、IFBセル175a~175eの内部抵抗を表し、各抵抗250は、名目上、他のIFBセル175a~175eの内部抵抗250に等しい。抵抗253a~253eは、マニホールド及びファーム配置におけるセル間抵抗を表す。抵抗252は、ヒータ電解液分配抵抗(例えば、電解液分配マニホールド260とヒータ210との間の通路における電解液の抵抗)に対するスタックマニホールドである。
【0023】
IFBセルスタック225は、電気エネルギー源(例えば、太陽電池、風力タービン、水力発電機など)279から電力を受け取ることができる。IFBセルスタック225はまた、電力を電気エネルギー消費器(例えば、ハウスホールド機器、産業用モータ、車両推進源など)278に供給してもよい。接触器277を開けて、IFBセルスタック225を電気エネルギー源279及び電気エネルギー消費器278から電気的に絶縁することができる。同様に、接触器277を閉じて、IFBセルスタック225を電気エネルギー源279及び電気エネルギー消費器278に電気的に接続することができる。電気エネルギー源279及び電気エネルギー消費器278は、IFBセルスタック225の外部にある。
【0024】
電解液は、ポンプ130、ヒータ210、通路又は導管290、及び電解液分配マニホールド260を介して、タンク101からIFBセルスタック225に分配され得る。あるいは、電解液は、IFBセルスタック225から、ポンプ130、ヒータ210、通路又は導管290、及び電解液分配マニホールド260を介してタンク101に分配されてもよい。電解液は、ヒータ210を通過するときに加熱されてもよい。一例では、ヒータ210は、電解液から加熱素子(例えば、抵抗)214を覆ってシールする金属製(例えば、チタン)のハウジング(例えば、管状ハウジング)211を含む。ハウジング211は、図3に詳細に示すように、第1電解液及び第2電解液と電気的に連絡していてもよい。ヒータ210は、ハウジング211をアース202に電気的に接続する導体212を含んでもよい。電流がハウジング211からアース202に流れるとき、任意の電流検知抵抗器220の両端に電圧が生成される。コントローラ150が、抵抗器220を介して生成された電圧を介して電流のしきい値量よりも大きい電流を検知する場合、コントローラ150は、接触器277を開いてポンプ130を停止させることによって、IFBセルスタック225を停止させることができる。電解液は、加熱素子214に電気エネルギーを供給する電源230を介して加熱され得る。
【0025】
図3を参照すると、図2の電力システムの一例の詳細な概略図が示されている。図3は、図1及び図2に以前に導入された、いくつかの構成要素を含む。これらの構成要素の番号付けは、図3において一貫している。これらの構成要素の説明は、図全体を通して一貫している。したがって、簡略化のために、先に導入した構成要素の説明は省略する。図3の説明には、図3において新たに特定された構成要素が含まれる。
【0026】
電解液分配マニホールド260は、IFBセルスタック225を形成する複数のIFBセル175a~175e(175A及び175eは具体的に特定されている)に接続される。第1電解液161は正反応器124に供給され、第2電解液は負反応器122に供給される。通路又は導管290は、電解液分配マニホールド260、及びポンプ130を電解液分配マニホールド260に連結する通路又は導管の一部を介して、第1電解液を正反応器124に供給する。同様に、通路又は導管390は、電解液分配マニホールド260、及びポンプ131を電解液分配マニホールド260に連結する通路又は導管の一部を介して第2電解液を負反応器122に供給する。通路又は導管290は、第1電解液161がハウジング329内に封入され、ヒータ210及びバッフル330を介して第2電解液162から分離される部分350を含む。ヒータ210は、第1電解液161及び第2電解液162と同時に物理的及び電気的に連絡している。バッフル330は、第1電解液161と第2電解液162が流体連通しないように、ヒータ210からハウジング329まで延びる。さらに、バッフル330は、ヒータ210をハウジング329の内部に固定して保持する。バッフル330は、溶接されるか、又は他の方法で、ヒータハウジング211及びハウジング329に接続され得る。ヒータ210は、導体313a及び313bならびに電源230を介して、ヒータ210に電力を供給することによって活性化され得る。したがって、ヒータ210は、第1電解液161及び第2電解液162を同時に加熱することができる。ヒータハウジング211は金属構造であり、単一の導体333を介してアース202に直接電気的に接続されている。このようにして、第1電解液161及び第2電解液162は、ヒータハウジング211を介してアースを基準とすることができ、その結果、アースを基準とする最高電位を有するIFBセルスタック225の端子の電圧は、それが、最低電位のIFBセルスタック225の負端子がアースを基準とする場合と比較して低下し得る。したがって、意図しないIFBセルスタック225の放電の可能性を低減することができる。
【0027】
ポンプ130、131は、タンク101、100から第1電解液161及び第2電解液を供給する。第1電解液及び第2電解液162が正反応器124及び負反応器122を通過すると、第1電解液161及び第2電解液162は、電解液合流マニホールド312、及び通路又は導管308及び314を介してタンク101及び100に戻される。
【0028】
ここで図4を参照すると、第2例の電力システムの詳細な概略図が示されている。図4のシステムは、図1図3において以前に導入された、いくつかの構成要素を含む。これらの構成要素の番号付けは、図4において一貫している。これらの構成要素の説明は、図全体を通して一貫している。したがって、簡略化のために、先に導入した構成要素の説明は省略する。図4の説明には、図4において新たに特定された構成要素が含まれる。
【0029】
このシステム構成において、通路又は導管290及び390は、正及び負反応器122及び124に第1及び第2電解液を供給する。通路290及び390は、ポンプ130及び131から電解液分配マニホールド260まで延びている。電解液分配マニホールド260は、第1電解液161及び第2電解液162が同じ電位を基準とすることができるように金属構造であってもよい。換言すれば、電解液分配マニホールド260は、第1電解液161と第2電解液162とは流体連通していないが、第1電解液161と第2電解液162との間に電流を流すための金属導電路を提供する。この実施例では、電解液分配マニホールド260はアース202に電気的に接続されており、第1及び第2電解液が同じ基準レベルを基準とすることができる。これにより、アースを基準とする最高電位を有するIFBセルスタック225の端子の電圧を、それが、IFBセルスタック225の最低電位負端子を基準とし、IFBセルスタック225の最低電位負端子がアースを基準とする場合と比較して低減することができる。したがって、意図しないIFBセルスタック225の放電の可能性を低減することができる。
【0030】
第1及び第2電解液161及び162は、電解液分配マニホールド260から、正及び負反応器122及び124、並びに電解液合流マニホールド312を通って流れ、タンク100及び101に戻る。この例では、ヒータ210は図示されていないが、必要に応じて含まれてもよい。しかし、ヒータ210が含まれる場合、電解液分配マニホールド260がアースを基準とするので、ヒータ210はアースを基準としない。別の例では、電解液合流マニホールド312は金属構造であってもよい。また、電解液分配マニホールド260の代わりにアースに電気的に接続されていてもよい。加えて、電流検知抵抗器が、地絡検出のためにアース202と電解液分配マニホールド260との間に設けられてもよい。
【0031】
図5を参照すると、第3例の電力システムの詳細な概略図が示されている。図5のシステムは、図1図3において以前に導入された、いくつかの構成要素を含む。これらの構成要素の番号付けは、図5において一貫している。これらの構成要素の説明は、図全体を通して一貫している。したがって、簡略化のために、先に導入した構成要素の説明は省略する。図5の説明には、図5において新たに特定された構成要素が含まれる。
【0032】
このシステム構成において、通路又は導管290及び390は、再び、第1及び第2電解液161及び162を正及び負反応器122及び124に供給する。しかしながら、単一のポンプ531は、第1電解液161と第2電解液162との間には流体連通がないが、第1電解液161と第2電解液162とに動力を提供する。単一のポンプ531は、第1電解液161上で動作する第1インペラ504と、第2電解液162上で動作する第2インペラ506とを含む。第1インペラ504及び第2インペラ506はモータ528を介して回転する。ポンプ531は、第1電解液及び第2電解液が同じ電位を基準とすることができるように、金属構造であり得るハウジング502を含む。ハウジング502はアース202に電気的に接続されている。換言すれば、ハウジング502は、第1電解液と第2電解液とは流体連通していないが、第1電解液と第2電解液との間に電流を流すための金属導電路を提供する。これにより、アースを基準とする最高電位を有するIFBセルスタック225の端子の電圧を、それが、IFBセルスタック225の最低電位負端子を基準とし、IFBセルスタック225の最低電位負端子がアースを基準とする場合と比較して低減することができる。したがって、意図しないIFBセルスタック225の放電の可能性を低減することができる。この実施例は、2つのインペラ及び1つのモータを備えたポンプを示しているが、他の構成は、第1電解液と第2電解液との間の電流のための金属導電路が維持されるように、単一のハウジング内に2つのモータ及び2つのインペラを含んでもよい。
【0033】
第1及び第2電解液は、電解液分配マニホールド260から、正及び負反応器122及び124、ならびに電解液合流マニホールド312を通って流れ、タンク100及び101に戻る。この例では、ヒータ210は図示されていないが、必要に応じて含まれてもよい。しかし、ヒータ210が含まれている場合、ヒータ210は、アースを基準としない。これは、ハウジング502がアースを基準にしているためである。さらに、電流検知抵抗器を、地絡検出のためにアース202とハウジング502との間に設けてもよい。
【0034】
図6を参照すると、第3例の電力システムの詳細な概略図が示されている。図6のシステムは、図1図5において以前に導入された、いくつかの構成要素を含む。これらの構成要素の番号付けは、図6において一貫している。したがって、簡略化のために、先に導入した構成要素の説明は省略する。図6の説明には、図6において新たに特定された構成要素が含まれる。
【0035】
図6のシステムは、図5のポンプ531に類似したポンプ531を含むが、この例のポンプ531は、スリップリング630、又はインペラ506及び504がアース202に電気的に接続されることを可能にする異なる公知の装置を含む。インペラ504及び506は、金属構造であってもよい。インペラ504及び506は、第1電解液と第2電解液とは流体連通していないが、第1電解液と第2電解液との間に電流を流すための金属導電路が存在するように、互いに電気的に連絡している。これにより、接地を基準とする最高電位を有するIFBセルスタック225の端子の電圧を、それが、IFBセルスタック225の最低電位負端子を基準とし、IFBセルスタック225の最低電位負端子が接地を基準とする場合と比較して低減することができる。したがって、意図しないIFBセルスタック225の放電の可能性を低減することができる。ハウジング502は非金属であってもよい。
【0036】
したがって、図1~6のシステムは、正反応器と、負反応器と、正反応器と負反応器との間の流体絶縁を提供する障壁と、第1電解液の第1部分と、第1電解液と流体連通していない第2電解液の第1部分とを含む電気エネルギー貯蔵セルと、正反応器と流体連通する第1電解液の第2部分を収容する第1流体通路と、負反応器と流体連通する第2電解液の第2部分を収容する第2流体通路と、第1電解液及び第2電解液と物理的及び電気的に連絡している金属デバイスであって、基準電位に電気的に連絡している金属デバイスを備える電力システムを提供する。電力システムは、基準電位は接地電位であることを含み、第1流体通路と流体連通する少なくとも1つのポンプをさらに含む。電力システムは、第2流体通路と流体連通する少なくとも1つのポンプをさらに含む。したがって、金属デバイスは、同時に第1電解液及び第2電解液の両方に接触することができる。
【0037】
いくつかの例において、電力システムは、金属デバイスが第1及び第2流体通路に沿って配置されることを含む。電力システムは、金属デバイスが、第1電解液及び第2電解液を複数の電気エネルギー貯蔵セルに導く流体マニホールドであることを含む。電力システムは、金属デバイスが加熱素子であることを含む。電力システムは、金属デバイスがポンプのハウジングであることを含む。電力システムは、金属デバイスがポンプのインペラであることを含む。
【0038】
また、図1図6のシステムは、複数の電気エネルギー貯蔵セルであって、複数の電気エネルギー貯蔵セルの各々は、正反応器と、負反応器と、正反応器と負反応器との間の流体絶縁を提供する障壁と、第1電解液の第1部分と、第1電解液と流体連通していない第2電解液の第1部分とを含む、複数の電気エネルギー貯蔵セルと、第1電解液及び第2電解液を含む複数の通路を含むマニホールドと、第1電解液及び第2電解液を複数の電気エネルギー貯蔵セルに送達するように構成された1つ以上のポンプと、第1電解液及び第2電解液と物理的及び電気的に連絡している金属デバイスであって、基準電位に電気的に接続している金属デバイスとを含む、電力システムを提供する。電力システムは、基準電位が接地電位であることと、金属デバイスが接地電位に直接電気的に接続されていることとを含む。
【0039】
いくつかの例において、電力システムは、基準電位が接地電位であることと、金属デバイスが電流検知装置を介して接地電位に電気的に接続されることとを含む。電力システムは、電流検知装置を通って流れるしきい値電流よりも大きい電流に応答して電力システムを停止するための非一時的なメモリに記憶された実行可能命令を含むコントローラをさらに含む。電力システムは、電力システムを停止させることは1つ以上のポンプを停止することを含む。電力システムは、金属デバイスが加熱素子であることを含む。
【0040】
図7を参照すると、図1図6に示すような電気エネルギーシステムを動作させる方法が示されている。図7の方法の一部は、図1図7のシステムの非一時的なメモリに記憶された実行可能命令として含まれてもよく、方法の他の部分は、人間又はロボットを介して実行されてもよい。さらに、図7の方法は、データを受信し、アクチュエータを調整して図1図6のシステム又は物理的又は現実世界の外部システムを制御するために、図1図6のシステムと協働して動作することができる。
【0041】
ステップ702において、第1電解液と第2電解液との間に流体分離が提供される。流体分離は、第1及び第2電解液を閉鎖された通路又は導管で輸送することによって提供することができる。さらに、流体分離は、膜を介して電気エネルギー貯蔵セル内に維持され得る。第1電解液及び第2電解液はまた、別々のタンク内に維持されてもよい。方法700は704に進む。
【0042】
ステップ704において、方法700は、金属デバイス(例えば、ポンプハウジング、ポンプインペラ、ヒータハウジング、電解液マニホールドなど)を介して第1電解液と第2電解液との間の電気的接続性を提供する。第1電解液及び第2電解液は、デバイスと直接物理的に接触していてもよい。方法700は706に進む。
【0043】
方法700のステップ706において、デバイスがアースに直接接続される。あるいは、デバイスは、電流検出抵抗器に直接接続されてもよく、電流検出抵抗器は、アースに直接接続されてもよい。電力システムとアースとの間の単一の又は唯一の接続は、704に記載の装置を介して行うことができる。方法700は708に進む。
【0044】
金属デバイスを介して第1電解液と第2電解液との間に電気的な連絡を提供し、金属デバイスをアース接地電位に電気的に接続することによって、電力システムの最高電位端子及び最低電位端子と、アース又は他の電気的基準電位との間の電位を、ほぼ以下の値に低減することが可能であり得る。
【数1】
【数2】
ここで、Vstack-は、アースを基準とするIFBセルスタックの最低電位端子における電圧であり、Vocは、平均開回路セル電圧であり、Nは、セルスタック内の実際の総セル数であり、Vstack+は、アースを基準とするIFBセルスタックの最高電位端子における電圧である。
【0045】
ステップ708において、方法700は、電力システムの動作が所望されるか否かを判断する。電力システムが電源から電荷を貯蔵することが望ましい場合、又は電力システムが電力消費器に電荷を供給することが望ましい場合には、電力システムの動作が望ましい。電力システムの動作は、スイッチを介して、又は2つのコントローラ間のデータの交換を介して要求されてもよい。電力システムの動作が要求された場合、答えはYESであり、方法700は710に進む。そうでなければ、答えはNOであり、方法700は720に進む。
【0046】
720において、方法700は、1つ以上の電解液ポンプを停止する(例えば、ポンプの回転を停止し、ポンプへのエネルギー供給を停止する)。方法700は722に進む。
【0047】
ステップ722において、方法700は、電気接触器(例えばスイッチ)を開き、電力システムを外部の電源及び負荷から電気的に分離する。方法700は、終了に進む。
【0048】
712において、方法700は、1つ以上の電解液ポンプを作動させる(例えば、ポンプを回転させ、ポンプにエネルギーを供給する)。方法700は714に進む。
【0049】
ステップ714において、方法700は、電気接触器を閉じ、電力システムを外部電源及び負荷に電気的に接続する。方法700は716に進む。
【0050】
716において、電力システムは、外部電力システムから電荷を受け取り、及び/又は、電力消費器に電力を供給する。方法700は、終了に進む。
【0051】
このようにして、電力システムと基準電圧(例えば、アース)との間の電圧レベルを低減することが可能である。この説明では、アースを基準電圧レベルとして言及しているが、本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、異なる基準レベル(例えば、外部電気システムの基準レベル)をアースに代えてもよい。また、アースとは、金属棒を地表面に所定の深さまで打ち込んだ後に金属棒で観測される電位であってもよい。
【0052】
図7の方法は、第1電解液を電気エネルギー貯蔵装置の正反応器に、第2電解液を電気エネルギー貯蔵装置の負反応器に供給し、第1電解液は第2電解液と流体連通しておらず、金属デバイスを介して第1電解液を第2電解液に電気的に接続し、該金属デバイスは第1電解液及び第2電解液と物理的に接触する、電力システムの方法を提供する。この方法は、金属デバイスを接地電位に電気的に接続するステップをさらに含む。この方法は、接地電位と金属デバイスとの間を流れる電流がしきい値電流よりも大きいことに応答して、電気エネルギー貯蔵装置を停止するステップをさらに含む。この方法は、金属デバイスを介して第1電解液及び第2電解液を加熱するステップをさらに含む。この方法は、金属デバイスを含む単一のポンプを介して第1電解液及び第2電解液を供給することをさらに含む。この方法は、金属デバイスが単一のポンプのインペラであることを含む。
【0053】
本明細書に含まれる例示的な制御及び推定ルーチンは、様々な電力変換システム構成で使用することができることに留意されたい。本明細書に開示された制御方法及びルーチンは、実行可能な命令として非一時的なメモリに格納されてもよく、各種センサ、アクチュエータ、及びその他のシステムハードウェアと組み合わせたコントローラを含む制御システムによって実行され得る。本明細書に記載される特定のルーチンは、イベント駆動、割り込み駆動、マルチタスク、マルチスレッドなどの任意の数の処理戦略のうちの1つ以上を表すことができる。このように、図示された種々の動作(actions)、作用(operations)、及び/又は機能は、図示された順序で、並列に、又は場合によっては省略して実行されてもよい。同様に、処理の順序は、本明細書に記載される例示的な実施形態の特徴及び利点を達成するために必ずしも必要ではなく、説明及び説明を容易にするために提供される。例示された動作、作用及び/又は機能のうちの1つ又は複数は、使用される特定の戦略に応じて繰り返し実行されてもよい。さらに、記述された動作、作用及び/又は機能の少なくとも一部は、制御システム内のコンピュータ可読記憶媒体の非一時的なメモリにプログラムされるコードをグラフィカルに表すことができる。制御動作はまた、1つ以上のコントローラと組み合わせて様々な説明されたハードウェア構成要素を含むシステム内で命令を実行することによって説明された動作が実行される場合に、物理世界における1つ以上のセンサ又はアクチュエータの動作状態を変換してもよい。
【0054】
これで説明は終了する。当業者によるその読解は、説明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの変更及び修正をもたらすであろう。例えば、電力システム内の異なる構成要素は、電力システムとアースとの間の電位を低下させるために、アースと第1及び第2電解液とに電気的に接続されてもよい。
【0055】
本開示は、本出願は、「電力供給システム及び方法」と題する、2018年10月5日に出願された米国特許出願第16/153,447号に対する優先権を主張する。上記出願の全内容は、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7