IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図1
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図2
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図3
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図4
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図5
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図6
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図7
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図8
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図9
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図10
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図11
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図12
  • 特許-バルクフィーダおよび部品装着機 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】バルクフィーダおよび部品装着機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H05K13/02 D
H05K13/02 Q
H05K13/02 R
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021555735
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044789
(87)【国際公開番号】W WO2021095218
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大崎 聡士
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特公昭57-043488(JP,B2)
【文献】特開2009-105363(JP,A)
【文献】特開2011-114084(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105591(WO,A1)
【文献】特開2007-007768(JP,A)
【文献】特開2000-236195(JP,A)
【文献】特開2000-034011(JP,A)
【文献】国際公開第2016/139742(WO,A1)
【文献】特開2018-125357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品装着機に装備されて部品供給装置の一部として機能するバルクフィーダであって、
前記部品装着機は、機内にセットされた前記バルクフィーダの整列部材の位置を認識するキャリブレーション処理を実行し、前記キャリブレーション処理の結果および前記整列部材により整列して供給された部品の供給状態の認識処理の結果に基づいて前記バルクフィーダから複数の前記部品を採取する採取動作を実行し、
前記バルクフィーダは、
フィーダ本体と、
前記フィーダ本体に設けられ、複数の前記部品をバルク状態で収容する部品ケースから排出される前記部品を受容する受容領域、前記部品を供給する供給領域、前記受容領域から前記供給領域への前記部品の搬送路、および前記キャリブレーション処理において前記バルクフィーダの基準位置を示す基準マークを有する軌道部材と、
前記フィーダ本体に設けられ、前記搬送路上の前記部品が搬送されるように前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、
前記軌道部材のうち前記供給領域に設けられ、前記軌道部材の振動に伴って搬送される複数の前記部品を前記フィーダ本体に対して整列させる前記整列部材と、
前記加振装置により前記軌道部材に付与された振動によって前記搬送路を搬送される前記部品の外部への飛散を防止するカバーと、
を備えるバルクフィーダ。
【請求項2】
前記整列部材は、複数の前記部品を個々に収容する複数のキャビティを有する、請求項1に記載のバルクフィーダ。
【請求項3】
複数の前記キャビティは、前記供給領域においてマトリックス状に配列される、請求項2に記載のバルクフィーダ。
【請求項4】
複数の前記キャビティのそれぞれは、前記搬送路の上面において開口し、前記部品の厚み方向が上下方向となる姿勢で前記部品を収容する、請求項2または3の何れか一項に記載のバルクフィーダ。
【請求項5】
複数の前記キャビティのそれぞれの深さは、前記部品の厚み以上に設定される、請求項4に記載のバルクフィーダ。
【請求項6】
複数の前記キャビティのそれぞれは、前記搬送路の上面において開口し、前記部品の長手方向が上下方向となる姿勢で前記部品を収容する、請求項2または3の何れか一項に記載のバルクフィーダ。
【請求項7】
記部品装着機は、前記部品供給装置から複数の前記部品を採取する前記採取動作と、採取した複数の前記部品を基板に装着する装着動作とを含むPPサイクルを繰り返し実行し、
前記整列部材における前記キャビティの数は、1回の前記PPサイクルにおける前記採取動作によって採取される前記部品の最大数よりも多く設定される、請求項2-6の何れか一項に記載のバルクフィーダ。
【請求項8】
前記整列部材は、前記キャビティに前記部品を磁力により誘導し、または前記キャビティに収容された前記部品を磁力により保持する磁石を有する、請求項2-7の何れか一項に記載のバルクフィーダ。
【請求項9】
前記整列部材は、前記軌道部材に対して交換可能に取り付けられ、
前記バルクフィーダは、供給する前記部品の種類に対応して互いの形状が異なる複数種類の前記整列部材から選択された1つを前記軌道部材に取り付けられる、請求項1-8の何れか一項に記載のバルクフィーダ。
【請求項10】
前記整列部材は、前記軌道部材に対して一体的に形成され、
前記軌道部材は、前記フィーダ本体に対して交換可能に取り付けられ、
前記バルクフィーダは、供給する前記部品の種類に対応して互いの形状が異なる複数種類の前記整列部材の一つを形成された複数種類の前記軌道部材から選択された1つを前記フィーダ本体に取り付けられる、請求項1-8の何れか一項に記載のバルクフィーダ。
【請求項11】
請求項1-10の何れか一項に記載の前記バルクフィーダと、
水平方向に移動可能に設けられ、前記バルクフィーダにより供給される前記部品をそれぞれ保持する複数の保持部材を昇降可能に支持する装着ヘッドと、
前記バルクフィーダおよび前記装着ヘッドの動作を制御し、前記バルクフィーダから複数の前記部品を採取する前記採取動作と、採取した複数の前記部品を基板に装着する装着動作とを含むPPサイクルを繰り返し実行する制御装置と、
を備える部品装着機。
【請求項12】
前記部品装着機は、前記供給領域を撮像可能なカメラをさらに備え、
前記制御装置は、前記カメラの撮像により取得された画像データに基づいて、前記供給領域における前記部品の供給状態を認識する認識処理を実行し、前記供給状態の認識処理の結果に基づいて前記採取動作における前記装着ヘッドの動作を制御する、請求項11に記載の部品装着機。
【請求項13】
前記整列部材は、複数の前記部品を個々に収容する複数のキャビティを有し、
前記制御装置は、前記供給状態の認識処理において、前記画像データに対する画像処理によって複数の前記キャビティに前記部品が採取可能に収容されているか否かを示す前記供給状態を認識する、請求項12に記載の部品装着機。
【請求項14】
前記装着ヘッドは、負圧エアにより前記部品を吸着する吸着ノズルを支持し、
前記制御装置は、前記採取動作において、前記部品を採取可能に収容する前記キャビティの中心に前記吸着ノズルを位置決めするように前記装着ヘッドの動作を制御する、請求項13に記載の部品装着機。
【請求項15】
前記制御装置は、今回の前記PPサイクルの前記採取動作が終了してから次回の前記PPサイクルの前記採取動作が開始するまでの期間において、前記バルクフィーダに前記供給領域において前記部品を整列させる整列処理を実行させる、請求項12-14の何れか一項に記載の部品装着機。
【請求項16】
前記制御装置は、前記供給状態の認識処理の結果において採取可能な前記部品の数が、今回の前記PPサイクルと次回の前記PPサイクルとにおいて採取予定である前記部品の数の和以上である場合に、今回の前記PPサイクルの前記採取動作が終了した後に予定されていた前記整列処理の実行を省略するとともに、前記供給状態の認識処理の結果に基づいて次回の前記PPサイクルの前記採取動作における前記装着ヘッドの動作を制御する、請求項15に記載の部品装着機。
【請求項17】
前記制御装置は、前記供給状態の認識処理の結果において採取可能な前記部品の数が、今回の前記PPサイクルにおいて採取予定である前記部品の数未満である場合に、前記バルクフィーダに再度の前記整列処理を実行させる、請求項15または16に記載の部品装着機。
【請求項18】
前記整列部材は、前記供給領域において複数の前記部品を規定間隔で整列させ、
前記装着ヘッドは、2つの前記保持部材を前記規定間隔の整数倍の間隔で支持し、
前記制御装置は、前記採取動作において、前記装着ヘッドの水平方向位置を維持させた状態で、2つの前記保持部材の昇降の少なくとも一部が重複するように動作させることにより2つの前記部品を採取させる、請求項11-17の何れか一項に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルクフィーダおよび部品装着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルクフィーダは、基板に部品を装着する部品装着機に装備され、バルク状態で収容された部品の供給に用いられる。バルクフィーダには、例えば搬送路上に設けられた整列機構によって複数の部品を一列に整列させた状態で部品を供給するタイプがある。また、バルクフィーダには、特許文献1に示すように、上記のような整列機構を省略し、吸着ノズルが部品を採取可能な供給領域において部品を散在させたバルク状態で供給するタイプがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-114084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように供給領域に複数の部品をバルク状態で供給するタイプのバルクフィーダの場合に、部品装着機は、供給領域を撮像して取得した画像データを用いて、部品の供給状態を認識する。このとき、画像処理では、複数の部品ごとに採取可能か否か判定するとともに、採取可能であれば部品の位置および角度を割り出す必要がある。そのため、画像処理の負荷が高くなることが懸念される。また、バルクフィーダには、特に幅方向の小型化が望まれる。
【0005】
本明細書は、幅方向の小型化を図りつつ好適に複数の部品を供給可能として供給領域における部品の供給状態の認識処理の負荷を軽減することが可能なバルクフィーダ、および上記バルクフィーダを備える部品装着機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、フィーダ本体と、前記フィーダ本体に設けられ、複数の部品をバルク状態で収容する部品ケースから排出される前記部品を受容する受容領域、前記部品を供給する供給領域、および前記受容領域から前記供給領域への前記部品の搬送路を有する軌道部材と、前記フィーダ本体に設けられ、前記搬送路上の前記部品が搬送されるように前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、前記軌道部材のうち前記供給領域に設けられ、前記軌道部材の振動に伴って搬送される複数の前記部品を前記フィーダ本体に対して整列させる整列部材と、を備えるバルクフィーダを開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、供給領域に効率的に部品を整列するので、バルクフィーダの幅方向の小型化を図りつつ好適に複数の部品を採取可能に供給することができる。また、供給領域において部品が整列された状態なので、バルク状態と比較して供給状態の認識処理の負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】部品装着機の構成を示す模式図である。
図2】バルクフィーダの外観を示す斜視図である。
図3】バルクフィーダの要部を模式的に示す側面図である。
図4図3のIV方向から見た平面図である。
図5】供給領域における整列部材の第一態様を示す斜視図である。
図6図4のVI-VI断面を拡大して示す模式図である。
図7】供給領域における整列部材の第二態様を示す図6に対応する模式図である。
図8】供給領域における整列部材の第三態様を示す図4に対応する平面図である。
図9】供給領域における整列部材の第四態様を拡大して示す図4に対応する平面図である。
図10】バルクフィーダに軌道部材または整列部材が選択的に取り付け可能な構成を示す概念図である。
図11】部品装着機による装着処理を示すフローチャートである。
図12】供給領域における部品の供給状態の認識処理に用いられる画像データを示す図である。
図13】実施形態の変形態様における複数の吸着ノズルが同時期に部品の採取動作を実行する態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.部品装着機10の構成
部品装着機10は、例えば他の部品装着機10を含む複数種類の対基板作業機とともに、基板製品を生産する生産ラインを構成する。上記の生産ラインを構成する対基板作業機には、印刷機や検査装置、リフロー炉などが含まれ得る。
1-1.基板搬送装置
部品装着機10は、図1に示すように、基板搬送装置11を備える。基板搬送装置11は、基板91を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板91を機内の所定位置に位置決めする。
【0010】
1-2.部品供給装置12
部品装着機10は、部品供給装置12を備える。部品供給装置12は、基板91に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、複数のスロット121にフィーダ122をそれぞれ装備される。フィーダ122には、例えば多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給するテープフィーダが適用される。また、フィーダ122には、バルク状態(それぞれの姿勢が不規則なばら状態)で収容された部品を採取可能に供給するバルクフィーダ20が適用される。バルクフィーダ20の詳細については後述する。
【0011】
1-3.部品移載装置13
部品装着機10は、部品移載装置13を備える。部品移載装置13は、部品供給装置12により供給された部品を基板91上の所定の装着位置に移載する。部品移載装置13は、ヘッド駆動装置131、移動台132、装着ヘッド133、および吸着ノズル134を備える。ヘッド駆動装置131は、直動機構により移動台132を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。装着ヘッド133は、図示しないクランプ部材により移動台132に着脱可能に固定され、機内において水平方向に移動可能に設けられる。
【0012】
装着ヘッド133は、回転可能に且つ昇降可能に複数の吸着ノズル134を支持する。吸着ノズル134は、フィーダ122により供給される部品92を採取して保持する保持部材である。吸着ノズル134は、供給される負圧エアにより、フィーダ122により供給される部品を吸着する。装着ヘッド133に取り付けられる保持部材としては、部品を把持することにより保持するチャックなどが採用され得る。
【0013】
ここで、上記の装着ヘッド133には、種々のタイプが採用され得る。具体的には、複数の保持部材を、鉛直軸(Z軸)に平行なR軸周りに回転可能に設けられたロータリヘッドにより支持するタイプが装着ヘッド133にはある。本実施形態では、装着ヘッド133は、ロータリヘッドにより24本の吸着ノズル134を支持する。その他に、直線状またはマトリックス状に配列された複数の保持部材を支持するタイプ、1つの保持部材を支持するタイプなどが装着ヘッド133にはある。これらの装着ヘッド133のタイプは、例えば生産する基板製品の種類などに応じて適宜選択され得る。
【0014】
1-4.部品カメラ14、基板カメラ15
部品装着機10は、部品カメラ14、および基板カメラ15を備える。部品カメラ14、および基板カメラ15は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ14、および基板カメラ15は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ14は、吸着ノズル134に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ15は、装着ヘッド133と一体的に水平方向に移動可能に移動台132に設けられる。基板カメラ15は、基板91を上方から撮像可能に構成される。
【0015】
また、基板カメラ15は、基板91の表面を撮像対象とする他に、移動台132の可動範囲であれば種々の機器などを撮像対象にできる。例えば、基板カメラ15は、本実施形態において、バルクフィーダ20が部品92を供給する供給領域As(図4を参照)を撮像することができる。このように、基板カメラ15は、種々の画像処理に用いられる画像データを取得するために、異なる撮像対象の撮像に兼用され得る。
【0016】
1-5.制御装置16
部品装着機10は、制御装置16を備える。制御装置16は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置16は、図略の記憶装置を備える。記憶装置は、ハードディスク装置などの光学ドライブ装置、またはフラッシュメモリなどにより構成される。制御装置16の記憶装置には、装着処理の制御に用いられる制御プログラムなどの各種データが記憶される。制御プログラムは、装着処理において基板91に装着される部品の装着位置および装着順序を示す。
【0017】
制御装置16は、複数の保持部材(吸着ノズル134)のそれぞれに保持された部品の保持状態の認識処理を実行する。具体的には、制御装置16は、部品カメラ14の撮像により取得された画像データを画像処理し、装着ヘッド133の基準位置に対する各部品の位置および角度を認識する。なお、制御装置16は、部品カメラ14の他に、例えば装着ヘッド133に一体的に設けられるヘッドカメラユニットなどが部品を側方、下方、または上方から撮像して取得された画像データを画像処理するようにしてもよい。
【0018】
制御装置16は、制御プログラムに基づいて、装着ヘッド133による部品の装着動作を制御して装着処理を実行する。ここで、装着処理には、採取動作と装着動作とが含まれるピックアンドプレースサイクル(以下、「PPサイクル」と称する)を複数回に亘って繰り返す処理が含まれる。上記の「採取動作」とは、部品供給装置12により供給された部品を吸着ノズル134により採取する動作である。
【0019】
本実施形態において、制御装置16は、上記の採取動作の実行に際して、バルクフィーダ20を含む部品供給装置12の動作を制御するとともに、バルクフィーダ20の供給領域Asにおける部品92の供給状態の認識処理を実行する。上記の「供給状態の認識処理」には、供給領域Asに採取可能な部品92があるか否かを認識し、ある場合には必要に応じて部品92の位置を認識する処理が含まれる。そして、制御装置16は、供給状態の認識処理の結果に基づいて、採取動作における装着ヘッド133の動作を制御する。
【0020】
また、上記の「装着動作」とは、採取した部品を基板91における所定の装着位置に装着する動作である。制御装置16は、装着処理において、各種センサから出力される情報や画像処理の結果、制御プログラムなどに基づき、装着ヘッド133の動作を制御する。これにより、装着ヘッド133に支持された複数の吸着ノズル134の位置および角度が制御される。
【0021】
2.バルクフィーダ20の構成
バルクフィーダ20は、部品装着機10に装備されて部品供給装置12の少なくとも一部として機能する。バルクフィーダ20は、テープフィーダと異なりキャリアテープを用いないため、キャリアテープの装填や使用済みテープの回収などを省略できる点でメリットがある。一方で、バルクフィーダ20は、キャリアテープのように整列されていないバルク状態で収容された部品92を供給するため、部品92の供給状態が吸着ノズル134などの保持部材による採取動作に影響し得る。
【0022】
詳細には、供給領域Asにおいて部品92同士が接触するほど接近していたり堆積(上下方向に重なり合っている状態)していたりすると、採取対象にすることができない。また、供給領域Asに不規則な姿勢で部品92が供給されると、供給状態(部品92の採取可否、および採取可能な部品92の姿勢)を認識するための画像処理が必要となる。そのため、バルクフィーダ20には、供給領域Asにおいて採取可能な複数の部品92が必要数に不足することなく供給され、さらには適宜分散した状態にあることが望まれる。
【0023】
これに対して、バルクフィーダ20には、供給領域Asに部品92が到達する前に、例えば搬送路上に設けられた整列機構によって複数の部品92を一列に整列させる構成を採用することが想定される。しかしながら、上記のような構成では、搬送路上の整列機構を設ける必要があるとともに、さらに整列された状態を維持して部品92を供給領域Asまで搬送する必要がある。そこで、本実施形態のバルクフィーダ20は、振動を用いた部品92の搬送を行うとともに、供給領域Asにおいて振動を用いて部品92を整列する構成を採用する。
【0024】
2-1.フィーダ本体21
バルクフィーダ20は、図2に示すように、フィーダ本体21を備える。フィーダ本体21は、扁平な箱状に形成される。フィーダ本体21は、部品供給装置12のスロット121にセットされる。フィーダ本体21の前部には、コネクタ211および2つのピン212が形成される。コネクタ211は、バルクフィーダ20がスロット121にセットされると、部品装着機10の本体側と通信可能に接続する。また、バルクフィーダ20は、コネクタ211を介して給電される。2つのピン212は、フィーダ本体21がスロット121にセットされる際の位置決めに用いられる。
【0025】
2-2.部品ケース22、排出装置23、カバー24
本実施形態においてフィーダ本体21には、複数の部品92をバルク状態で収容する部品ケース22が着脱可能に取り付けられる。部品ケース22は、外部へ部品92を排出可能に構成される。本実施形態において、部品ケース22は、バルクフィーダ20の外部装置であって、例えば種々のタイプのものから装着処理に適合する一つが選択されて、フィーダ本体21に取り付けられる。
【0026】
バルクフィーダ20は、排出装置23を備える。排出装置23は、部品ケース22から排出させる部品92の数量を調整する。排出装置23は、部品ケース22から排出された複数の部品92を後述する軌道部材30の受容領域Arに供給する。バルクフィーダ20は、カバー24を備える。カバー24は、フィーダ本体21の前側上部に着脱可能に取り付けられる。カバー24は、後述する軌道部材30の搬送路Rを搬送される部品92の外部への飛散を防止する。
【0027】
2-3.軌道部材30
バルクフィーダ20は、軌道部材30を備える。軌道部材30は、フィーダ本体21の前側上部に設けられる。軌道部材30は、図3および図4に示すように、フィーダ本体21の前後方向(図3および図4の左右方向)に延伸するように形成される。軌道部材30の幅方向(図4の上下方向)の両縁には、上方に突出する一対の側壁31が形成される。一対の側壁31は、軌道部材30の先端部32とともに搬送路Rの周縁を囲い、搬送路Rを搬送される部品92の漏出を防止する。先端部32の上面には、バルクフィーダ20の基準位置を示す円形の基準マーク33が付される。
【0028】
上記のような構成からなる軌道部材30は、受容領域Ar、供給領域As、および搬送路Rを有する。ここで、「受容領域Ar」とは、部品ケース22から排出されるバルク状態の部品92を受容する領域である。本実施形態の受容領域Arは、部品ケース22の排出口の下方に位置する。また、「供給領域As」とは、部品92を供給する領域である。換言すると、装着ヘッド133に支持された吸着ノズル134により部品92を採取可能な領域であり、装着ヘッド133の可動範囲に含まれる。
【0029】
また、軌道部材30の「搬送路R」とは、受容領域Arから供給領域Asへの部品92の通り道である。本実施形態において、搬送路Rは、溝底面が水平となる溝形状に形成される。搬送路Rの溝側面は、一対の側壁31により形成される。搬送路Rの上側の溝開口は、カバー24により概ね閉塞される。軌道部材30は、前後方向および上下方向により形成される仮想的な垂直面において、フィーダ本体21に対して僅かに変位可能(即ち、振動可能)に支持される。
【0030】
2-4.加振装置40
バルクフィーダ20は、加振装置40を備える。加振装置40は、フィーダ本体21に設けられる。加振装置40は、搬送路R上の部品92が搬送されるように軌道部材30に振動を付与する。具体的には、加振装置40は、複数の第一支持部41、複数の第一圧電素子42、複数の第二支持部43、複数の第二圧電素子44、および駆動部45を有する。第一支持部41および第二支持部43は、フィーダ本体21と軌道部材30とを連結する連結部材である。
【0031】
第一支持部41は、鉛直方向に対して前方に傾斜して延伸した形状に形成される。第二支持部43は、鉛直方向に対して後方に傾斜して延伸した形状に形成される。第一圧電素子42および第二圧電素子44は、駆動部45から給電される電力に応じた周波数で振動する。第一圧電素子42は、第一支持部41に貼付されている。第二圧電素子44は、第二支持部43に貼付されている。第一圧電素子42が振動すると、第一支持部41を介して軌道部材30に振動が付与される。同様に、第二圧電素子44が振動すると、第二支持部43を介して軌道部材30に振動が付与される。
【0032】
また、第一圧電素子42または第二圧電素子44に印加する電圧に応じて、軌道部材30の振幅が変動する。加振装置40は、前方に傾斜する第一支持部41に貼付された第一圧電素子42を振動させることによって軌道部材30に振動を付与する。これにより、加振装置40は、搬送路Rにおける部品92の搬送方向に直交する水平方向(図3の前後方向)において軌道部材30に時計回りの楕円運動をさせる。このとき、加振装置40は、搬送路R上の部品92に対して前方且つ上方に向かう外力が加えられるように軌道部材30を振動させる。
【0033】
また、加振装置40は、後方に傾斜する第二支持部43に貼付された第二圧電素子44を振動させることによって軌道部材30に振動を付与する。これにより、加振装置40は、搬送路Rにおける部品92の搬送方向に直交する水平方向(図3の前後方向)において軌道部材30に反時計回りの楕円運動をさせる。このとき、加振装置40は、搬送路R上の部品92に対して後方且つ上方に向かう外力が加えられるように軌道部材30に振動させる。
【0034】
駆動部45は、後述するフィーダ制御装置70の指令に基づいて、第一圧電素子42および第二圧電素子44に供給する電力の周波数、および印加電圧を変動させる。これにより、軌道部材30に付与される振動の周波数および振幅が調整され、軌道部材30の楕円運動の回転方向が定まる。軌道部材30の振動の周波数や振幅、振動による楕円運動の回転方向が変動すると、搬送される部品92の搬送速度、部品92の分散度合い、および搬送方向などが変動する。
【0035】
上記のような構成により、加振装置40は、軌道部材30に所定の振動を付与し、部品ケース22から軌道部材30の受容領域Arに排出された複数の部品92を、搬送路Rを介して供給領域Asへと搬送可能とする。以下では、搬送路R上の部品92を供給領域Asへ向かう方向に搬送する加振装置40の動作を「送り動作」とする。また、搬送路R上の部品92を受容領域Arへ向かう方向に搬送する加振装置40の動作を「戻し動作」とする。なお、加振装置40の送り動作および戻し動作の切り換えによって、軌道部材の楕円運動は、逆回転となる。
【0036】
2-5.整列部材50
バルクフィーダ20は、整列部材50を備える。整列部材50は、軌道部材30のうち供給領域Asに設けられる。整列部材50は、軌道部材30の振動に伴って搬送される複数の部品92を案内してフィーダ本体21に対して整列させる。部品92を整列させる整列部材50には、例えば以下の第一態様-第四態様を採用し得る。
【0037】
2-5-1.整列部材50の第一態様
第一態様における整列部材50Aは、図5に示すように、複数の部品92を個々に収容する複数のキャビティ51を有する。詳細には、複数のキャビティ51は、供給領域Asにおいてマトリックス状に配列される。例えば、整列部材50Aは、規則的に搬送方向に10個、搬送路Rの幅方向に12個それぞれ配列された計120個のキャビティ51を有する。
【0038】
また、複数のキャビティ51のそれぞれは、図6に示すように、搬送路Rの上面において開口し、部品92の厚み方向が上下方向となる姿勢で部品92を収容する。キャビティ51の開口は、上方視における部品92の外形状よりも僅かに大きくなる寸法に設定される。キャビティ51の深さDcは、部品92の種類(形状、質量など)に応じて適宜設定することが可能である。キャビティ51の深さDcを浅く設定し、部品92が搬送路Rの上面より突出する状態では、採取動作における吸着ノズル134と整列部材50Aの干渉を確実に防止できる。
【0039】
一方で、キャビティ51の深さDcを深く設定し、部品92が搬送路Rの上面より低い状態では、キャビティ51に一旦収容された部品92が再び抜け出すことが低減される。そこで、第一態様の整列部材50Aにおける複数のキャビティ51のそれぞれの深さDcは、部品92の厚みTp以上に設定される。但し、キャビティ51の深さDcが深すぎると、部品92を収容した状態のキャビティ51の上側を別の部品92が搬送方向に移動することを妨げるおそれがある。
【0040】
そのため、キャビティ51の深さDcは、キャビティ51に収容された状態の部品92の上端が搬送路Rの上面より僅かに低くなるように設定されると好適である。上記のように、キャビティ51の形状(開口、深さなど)は、適宜設定される。第一態様の整列部材50Aのキャビティ51の形状は、当該部品92がキャリアテープに収納されてテープフィーダにより供給されると仮定したときに、そのキャリアテープに形成されるキャビティの形状に類似する。
【0041】
2-5-2.整列部材50の第二態様
第二態様における整列部材50Bは、第一態様と比較して、部品92の収納方向が異なる。具体的には、複数のキャビティ51のそれぞれは、図7に示すように、搬送路Rの上面において開口し、部品92の長手方向が上下方向となる姿勢で部品92を収容する。このような構成によると、部品92を上記のような姿勢で供給することが可能となる。また、キャビティ51の開口寸法を小さくできるので、限りのある供給領域Asにおいてキャビティ51を比較的多く配列することが可能となる。
【0042】
第二態様の整列部材50Bのキャビティ51の深さDcは、適宜設定することが可能である。例えば、キャビティ51の深さは、部品92の長手方向の長さLpよりも僅かに大きく設定され、収納された部品92の上端が搬送路Rの上面より低くなるように設定される。また、このような姿勢で部品92を収容する態様では、一旦収容された部品92が比較的安定しているので、部品92の上端が搬送路Rの上面よりも高くなるようにキャビティ51の深さDcが設定されてもよい。
【0043】
2-5-3.整列部材50の第三態様
第三態様における整列部材50Cは、第一態様と比較して、キャビティ51の形状、および数が異なる。具体的には、整列部材50Cは、規則的に搬送方向に6個、搬送路Rの幅方向に8個それぞれ配列された計48個のキャビティ51を有する。第三態様の整列部材50Cは、第一態様と比較して、バルクフィーダ20が供給する部品92の寸法が大きなものに対応するために、上記のような形状および数からなるキャビティ51を有する。
【0044】
なお、第一態様および第三態様に示すように、キャビティ51の形状は、部品92の形状および収容する姿勢によって適宜設定される。そして、キャビティ51の形状が設定されると、供給領域Asにおける1個辺りのキャビティ51の占有面積が定まる。さらに、キャビティ51の形状、必要数、搬送性に影響し得る密集度を加味して、整列部材50におけるキャビティ51の数が適宜設定される。
【0045】
第一態様-第三態様の整列部材50A-50Cにおけるキャビティ51の数は、1回のPPサイクルにおける採取動作によって採取される部品92の最大数よりも多く設定される。なお、上記の「最大数」は、装着ヘッド133が支持する吸着ノズル134の数に相当する。本実施形態において、装着ヘッド133は、24本の吸着ノズル134を支持することから、キャビティ51の数は、少なくとも24個より多くなるように設定されている。
【0046】
その他に、第一態様-第三態様を含む整列部材50は、上部に位置する部品92またはキャビティ51に収容された部品92に作用する磁石(図示しない)を有する構成としてもよい。具体的には、磁石は、キャビティ51の底部よりも深い部位に埋め込まれる。磁石の磁力が整列部材50の上部まで作用する大きさの場合には、磁石は、キャビティ51に部品92を磁力により誘導する。これにより、複数のキャビティ51に部品92が効率的に収容される。
【0047】
また、磁石の磁力が整列部材50の上部まで作用せずキャビティ51に収容された部品92に作用する大きさの場合には、磁石は、キャビティ51に収容された部品92を磁力により保持する。これにより、一旦収容された部品92の飛び出しを防止できる。なお、上記の磁石は、永久磁石でもよいし、電磁石であってもよい。また、磁石は、複数のキャビティ51の底部に配置された素材を磁化したものでもよい。さらに、磁石は、複数のキャビティ51ごとに配置されてもよいし、一部または全部に作用するように配置されてもよい。
【0048】
2-5-4.整列部材50の第四態様
第四態様における整列部材50Dは、キャビティ51に換えて複数の整列溝55および複数の案内部56を有する。複数の整列溝55のそれぞれは、図9に示すように、搬送方向に延伸するように形成される。整列溝55の溝幅は、部品92の幅Wpよりも僅かに広く、部品92の長さLpよりも短い溝幅に形成される。
【0049】
複数の案内部56のそれぞれは、整列溝55の搬送方向の後側に連通し、搬送方向の後側に向かうに従って開口幅が大きくなる漏斗形状に形成される。このような第四態様の整列部材50Dの構成によると、送り動作により搬送される部品92は、搬送方向の前側に搬送されるに従って整列溝55に案内される。部品92は、さらに搬送方向の前側に搬送されると長手方向が搬送方向に向くように整列される。
【0050】
複数の部品92は、それぞれの整列溝55に収容された状態で、整列溝55の前端に到達するまで順次搬送される。このような構成によると、整列された複数の部品92が整列溝55に沿って順次供給することができる。また、整列部材50Dには、部品92同士が堆積していた場合に、上側の部品92の搬送を規制する規制部材をさらに有してもよい。これにより、複数の部品92を整列させることができる。
【0051】
2-6.フィーダ制御装置70
バルクフィーダ20は、フィーダ制御装置70を備える。フィーダ制御装置70は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。フィーダ制御装置70は、バルクフィーダ20がスロット121にセットされた状態において、コネクタ211を介して給電され、また部品装着機10の制御装置16と通信可能な状態となる。
【0052】
フィーダ制御装置70は、図3に示すように、記憶部71を有する。記憶部71は、フラッシュメモリなどにより構成される。記憶部71には、部品供給処理の制御に用いられるプログラムや搬送パラメータF1などの各種データが記憶される。上記の「搬送パラメータF1」は、部品供給処理において部品92を搬送する際に、軌道部材30に付与する振動が適正となるように加振装置40の動作を制御するためのパラメータであり、例えば部品92の種類ごとに関連付けて予め設定される。
【0053】
フィーダ制御装置70は、搬送制御部72を有する。搬送制御部72は、加振装置40の動作を制御して、上記の送り動作、および戻し動作を実行する。詳細には、搬送制御部72は、送り動作を実行する場合に、加振装置40の駆動部45に対して指令を送出する。これにより、駆動部45が第一圧電素子42に所定の電力を供給することにより、第一支持部41を介して軌道部材30に振動が付与される。結果として、搬送路R上の部品92が搬送方向の前側に移動するように外力を受けて搬送される。
【0054】
また、搬送制御部72は、加振装置40の送り動作および戻し動作の実行時間などを組み合わせることにより種々の搬送態様を実現する。例えば、整列部材50が複数のキャビティ51を有する場合に、搬送制御部72は、以下のような収容工程および退避工程を実行してもよい。上記の「収容工程」とは、搬送路R上の複数の部品92の少なくとも一部が供給領域Asに到達するまで送り動作を実行して、複数のキャビティ51の少なくとも一部に部品92を収容させる工程である。
【0055】
このとき、搬送制御部72は、収容工程において、搬送路R上の複数の部品92の少なくとも一部が供給領域Asに到達した後に、送り動作および戻し動作を繰り返し実行して、軌道部材30が振動した状態で供給領域Asに複数の部品92を滞留させるようにしてもよい。また、上記の「退避工程」とは、収容工程を実行した後に、搬送路R上の複数の部品92の少なくとも一部が複数のキャビティ51に収容された状態で戻し動作を実行して、残りの部品92を供給領域Asから受容領域Ar側に退避させる工程である。
【0056】
搬送制御部72は、各工程における送り動作や戻し動作の実行時間、収容工程における滞留の動作の時間や繰り返し動作の実行回数を適宜設定することができる。また、搬送路R上の部品92の残数によっては、収容工程における滞留の動作や、退避工程を省略してもよい。さらに、搬送制御部72は、部品ケース22に収容された部品92の種類に応じて、加振装置40により軌道部材30に付与される振動の周波数、および振幅の少なくとも一方を調整してもよい。
【0057】
詳細には、バルクフィーダ20に部品ケース22が取り付けられる際に、部品ケース22に補充された部品92の種類と、バルクフィーダ20の識別情報とが照合される。そして、バルクフィーダ20がスロット121にセットされると、搬送制御部72は、搬送パラメータF1から部品92の種類に応じたパラメータを取得する。これにより、搬送制御部72は、加振装置40の駆動部45に送出する指令を調整する。
【0058】
結果として、加振装置40により軌道部材30に付与される振動の周波数などが部品の種類に応じて調整される。上記の搬送パラメータF1は、部品92の種類に加えて、整列部材50に採用される各種態様によっても適宜切り換えられる構成としてもよい。これにより、収容工程や滞留の動作、退避工程が好適に実行される。さらに、搬送パラメータF1は、過去に実行された部品供給処理の結果(成功率などを含む)に基づいて、管理者によりアップデートされてもよい。
【0059】
3.整列部材50、軌道部材30の交換性
ここで、バルクフィーダ20の整列部材50は、軌道部材30に対して交換可能に取り付けられる構成としてもよい。具体的には、バルクフィーダ20のセットアップに際して、図10に示すように、例えば第一態様-第四態様に対応した複数種類の整列部材50A-50Dが交換可能に準備される。そして、バルクフィーダ20は、供給する部品92の種類に対応して互いの形状が異なる複数種類の整列部材50A-50Dから選択された1つを軌道部材30に取り付けられる。
【0060】
このような構成によると、バルクフィーダ20は、フィーダ本体21や軌道部材30、加振装置40を共通にし、整列部材50の交換によって部品92の種類や供給態様に対応することが可能となる。これにより、バルクフィーダ20の利用範囲を拡大することができ、基板製品の生産コストを低減できる。
【0061】
さらに、バルクフィーダ20の軌道部材30は、フィーダ本体21に対して交換可能に取り付けられる構成としてもよい。このとき、整列部材50は、軌道部材30に対して一体的に形成されるようにしてもよいし、交換可能としてもよい。具体的には、バルクフィーダ20のセットアップに際して、図10に示すように、例えば第一態様-第四態様に対応した複数種類の整列部材50A-50Dが形成された複数種類の軌道部材30A-30Dが交換可能に準備される。
【0062】
そして、バルクフィーダ20は、供給する部品92の種類に対応して互いの形状が異なる複数種類の整列部材50A-50Dの一つを形成された複数種類の軌道部材30A-30Dから選択された1つをフィーダ本体21に取り付けられる。このような構成によると、バルクフィーダ20は、フィーダ本体21や加振装置40を共通にし、軌道部材30の交換によって部品92の種類や供給態様に対応することが可能となる。これにより、バルクフィーダ20の利用範囲を拡大することができ、基板製品の生産コストを低減できる。
【0063】
4.部品装着機10による装着処理
部品装着機10による装着処理について図11および図12を参照して説明する。ここで、バルクフィーダ20は、複数のキャビティ51がマトリックス状に形成された整列部材50を備える構成とする。また、上記のバルクフィーダ20がスロット121にセットされた後に、制御装置16は、キャリブレーション処理を実行し、機内における整列部材50の位置を認識する。
【0064】
上記のキャリブレーション処理において、制御装置16は、先ず基板カメラ15をバルクフィーダ20の基準マーク33の上方に移動させて、基板カメラ15の撮像により画像データを取得する。そして、制御装置16は、画像処理により画像データに含まれる基準マーク33の位置、および撮像した際の基板カメラ15の位置に基づいて、機内における整列部材50の位置を認識する。
【0065】
また、制御装置16は、バルクフィーダ20が備える整列部材50の形状、即ち複数のキャビティ51の位置関係を示す配列情報を備える。制御装置16は、上記の配列情報を、バルクフィーダ20のフィーダ制御装置70から取得してもよいし、基準マーク33を撮像して取得された画像データに基づいて識別した整列部材50の種類に対応して上位装置などから取得してもよい。制御装置16は、キャリブレーション処理によって、整列部材50の位置、詳細には個々のキャビティ51の位置を認識する。
【0066】
装着処理において、先ず、部品装着機10の基板搬送装置11は、基板91の搬入処理を実行する(S11)。これにより、機内に基板91が搬入されるとともに、機内の所定位置に位置決めされる。制御装置16は、S11の後に、またはS11に並行して、バルクフィーダ20による第一部品供給処理を実行する。具体的には、先ずバルクフィーダ20に供給領域Asにおいて部品92を整列させる整列処理を実行させる(S21)。これにより、バルクフィーダ20の搬送制御部72は、上記の収容工程や退避工程を実行する。
【0067】
次に、制御装置16は、供給領域Asにおける部品92の供給状態の認識処理を実行する(S22)。具体的には、制御装置16は、先ず基板カメラ15をバルクフィーダ20の供給領域Asにおける整列部材50の上方に移動させて、基板カメラ15の撮像により画像データMを取得する。そして、制御装置16は、図12に示すように、画像データMに所定の画像処理を実行し、複数のキャビティ51にそれぞれ収容された部品92を認識する。
【0068】
詳細には、制御装置16は、画像処理された画像データMにおいて、キャリブレーション処理により認識した複数のキャビティ51の位置、および部品92の姿勢に基づいて、採取可能か否かを判定する。具体的には、制御装置16は、キャビティ51に適正に収容されている部品92について採取可能と判定する(図12の「OK」)。制御装置16は、キャビティ51に傾斜するなど不適正な姿勢で収容されている部品92や、互いに堆積した状態の複数の部品92について採取不可と判定する(図12の「NG」)。
【0069】
上記のように、制御装置16は、供給状態の認識処理(S22)において、画像データMに対する画像処理によって複数のキャビティ51に部品92が採取可能に収容されているか否かを示す供給状態を認識する。なお、制御装置16は、これに加えて、採取可能な部品92を対象として、当該部品92の位置を認識してもよい。即ち、制御装置16は、基準位置の座標値を割り出す。
【0070】
上記の採取可能部品の「基準位置」とは、部品92の上面のうち任意に設定される位置であり、採取動作に吸着ノズル134が用いられる場合に、例えば吸着ノズル134による吸着に適した部品92の中心や重心、平坦領域などに設定される。制御装置16は、画像処理において、採取可能部品について例えば外形や中心位置などを認識することによって、採取可能部品における基準位置の座標値を割り出す。
【0071】
続いて、制御装置16は、供給状態の認識処理(S22)の結果において採取可能な部品92の数(供給数)が、今回のPPサイクルにおいて採取予定である部品92の数未満である場合に(S23:No)、バルクフィーダ20に再度の整列処理(S21)を実行させる。例えば、今回のPPサイクルの採取動作において24本の吸着ノズル134のうち20本でバルクフィーダ20により供給される部品92を採取する場合には、採取予定である部品92の数(必要数)は、20個となる。
【0072】
このように、制御装置16は、現在の供給領域Asにおける部品92の供給状態で、今回のPPサイクルにおける必要数の部品92が採取可能でないと、整列処理(S21)および供給状態の認識処理(S22)を繰り返し実行する。なお、必要数が多数の場合には、必要数のうち現在の供給数だけ先に採取し、その後に整列処理(S21)および供給状態の認識処理(S22)を実行して再度の採取を試行するようにしてもよい。
【0073】
一方で、現在の供給数が今回のPPサイクルの必要数以上である場合に(S23:Yes)、制御装置16は、PPサイクルを実行する。PPサイクルにおいて、制御装置16は、複数の吸着ノズル134を用いて部品を採取する採取動作を繰り返し実行する(S12)。このとき、制御装置16は、供給状態の認識処理(S22)の結果に基づいて、採取可能な部品92の位置に応じて装着ヘッド133を順次位置決めするように、採取動作における装着ヘッド133の動作を制御する。
【0074】
ここで、供給状態の認識処理(S22)の結果は、複数のキャビティ51ごとに採取可能な部品92があるか否かであるものとする。この場合に、制御装置16は、採取動作において、部品92を採取可能に収容するキャビティ51の中心に吸着ノズル134を位置決めするように装着ヘッド133の動作を制御する。また、供給状態の認識処理(S22)の結果に、採取可能部品における基準位置の座標値が含まれる場合に、制御装置16は、キャビティ51の中心ではなく、上記の基準位置の座標値に吸着ノズル134を位置決めするように装着ヘッド133の動作を制御してもよい。
【0075】
続いて、制御装置16は、複数の吸着ノズル134にそれぞれ保持された部品92の保持状態の認識処理を実行する(S13)。詳細には、制御装置16は、装着ヘッド133を部品カメラ14の上方に移動させ、部品カメラ14に撮像指令を送出する。制御装置16は、部品カメラ14の撮像により取得された画像データを画像処理して、複数の吸着ノズル134のそれぞれに保持された部品92の姿勢(位置および角度)を認識する。
【0076】
その後に、制御装置16は、複数の吸着ノズル134を用いて部品を装着する装着動作を繰り返し実行する(S14)。なお、この装着動作(S14)では、制御装置16は、制御プログラムにて指定される装着位置に、部品92をそれぞれ装着するように装着ヘッド133の動作を制御する。さらに、装着ヘッド133は、装着位置に対して、認識処理(S13)の結果に基づいて、吸着ノズル134が位置決めおよび角度決めされるように装着ヘッド133の動作を制御する。
【0077】
また、制御装置16は、上記のような今回のPPサイクルの採取動作(S12)が終了してから次回のPPサイクルの採取動作(S12)が開始するまでの期間において、バルクフィーダ20に供給領域Asにおいて部品92を整列させる整列処理を実行させる(第二部品供給処理)。具体的には、制御装置16は、今回のPPサイクルの採取動作(S12)が終了した後に、現在の供給数が次回のPPサイクルの必要数未満である場合に(S31:No)、バルクフィーダ20に先行の整列処理(S32)を実行させる。この先行の整列処理(S32)は、整列処理(S21)と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0078】
一方で、制御装置16は、現在の供給数が次回のPPサイクルの必要数以上である場合に(S31:Yes)、または整列処理(S32)の実行後に、今回のPPサイクルと並列に実行した第二部品供給処理を終了する。制御装置16は、制御プログラムに基づいて、全てのPPサイクルが終了したか否かを判定する(S15)。全てのPPサイクルが終了していない場合には(S15:No)、直前のPPサイクルの実行中に先行の整列処理(S32)が実行されたか否かを判定する(S16)。
【0079】
先行の整列処理(S32)が実行された場合には(S16:Yes)、現在の供給領域Asの状態が不明であるため、制御装置16は、第一部品供給処理における供給状態の認識処理(S22)から再度実行し、次回のPPサイクル(S12-S14)を実行する。一方で、先行の整列処理(S32)が実行されなかった場合には(S16:No)、第一部品供給処理を省略して、次回のPPサイクル(S12-S14)を実行する。
【0080】
このように、キャビティ51の数によっては、第一部品供給処理における供給状態の認識処理(S22)の結果において採取可能な部品92の数(供給数)が、今回のPPサイクルと次回のPPサイクルとにおいて採取予定である部品92の数の和以上であることがある。このような場合に、制御装置16は、今回のPPサイクルの採取動作が終了した後に予定されていた次回のPPサイクル用の整列処理(S21)の実行を省略する。さらに、制御装置16は、先に実行された供給状態の認識処理(S22)の結果に基づいて次回のPPサイクルの採取動作(S12)における装着ヘッド133の動作を制御する。
【0081】
全てのPPサイクルが終了した場合に(S15:Yes)、制御装置16は、基板91の搬出処理を実行する(S17)。基板91の搬出処理において、基板搬送装置11は、位置決めされていた基板91をアンクランプするとともに、部品装着機10の機外に基板91を搬出する。
【0082】
上記のような構成によると、バルクフィーダ20は、整列部材50を用いて供給領域Asに複数の部品92を整列させる。これにより、採取可能な供給数を確保するために供給領域Asを拡大することなく、効率的に供給領域Asにおいて部品92を供給することが可能となる。結果として、バルクフィーダ20の幅方向の小型化を図りつつ好適に複数の部品92を採取可能に供給することができる。また、供給領域Asにおいて部品が整列された状態なので、バルク状態で供給される構成と比較して供給領域Asにおける部品92の供給状態の認識処理(S22)の負荷を軽減できる。
【0083】
5.実施形態の変形態様
実施形態において、装着ヘッド133は、複数の吸着ノズル134を昇降可能に支持するロータリヘッドを備える構成とした。これに対して、装着ヘッド133は、図13に示すように、2つの吸着ノズル134を独立して昇降可能に、且つ所定の間隔(ノズルピッチPn)で支持してもよい。また、バルクフィーダ20の整列部材50は、供給領域Asにおいて複数の部品92を規定間隔Psで整列させる。
【0084】
上記のような構成において、装着ヘッド133は、ノズルピッチPnが規定間隔Psの整数(N)倍の間隔となるように2つの吸着ノズル134を支持する。そして、制御装置16は、採取動作(S12)において、装着ヘッド133の水平方向位置を維持させた状態で、2つの吸着ノズル134の昇降の少なくとも一部が重複するように動作させることにより2つの部品92を採取させる。
【0085】
このような構成によると、部品装着機10は、PPサイクルの採取動作において、例えば複数の吸着ノズル134の昇降動作を同時に実行することができるので、採取動作の所要時間を短縮することができる。また、装着ヘッド133がロータリヘッドを備える構成において、2つの吸着ノズル134を昇降させる昇降装置を複数備える構成であれば、上記と同様の採取動作を実行することができる。
【符号の説明】
【0086】
10:部品装着機、 12:部品供給装置、 13:部品移載装置、 133:装着ヘッド、 134:吸着ノズル(保持部材)、 14:部品カメラ、 15:基板カメラ、 16:制御装置、 20:バルクフィーダ、 21:フィーダ本体、 22:部品ケース、 30,30A-30D:軌道部材、 40:加振装置、 50,50A-50D:整列部材、 51:キャビティ、 55:整列溝、 56:案内部、 70:フィーダ制御装置、 72:搬送制御部、 91:基板、 92:部品、 Ar:受容領域、 As:供給領域、 R:搬送路、 Dc:(キャビティの)深さ、 Ps:(キャビティの)規定間隔、 Pn:ノズルピッチ(吸着ノズル(保持部材)の間隔)、 F1:搬送パラメータ、 M:画像データ、 Tp:(部品の)厚み、 Wp:(部品の)幅、 Lp:(部品の)長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13