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特許7426405低侵襲性の外科的縫合のための縫合糸セキュリティ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】低侵襲性の外科的縫合のための縫合糸セキュリティ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/06 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A61B17/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021562113
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 US2020029688
(87)【国際公開番号】W WO2020219791
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】62/838,281
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506243057
【氏名又は名称】エルエスアイ ソルーションズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】サウアー, ジュード, エス.
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518671(JP,A)
【文献】特表2002-501413(JP,A)
【文献】特表2008-514305(JP,A)
【文献】特開平07-000402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/06
A61B 17/062
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラッチと、複数のプレートと、アクチュエータを備え、
前記複数のラッチの各々が細長い形状を有して第1端から第2端まで延び、前記第1端は係合部を有し、前記第2端は軸の周りで回転可能であり、これにより、前記複数のラッチの各々が係合位置と非係合位置との間を回転可能であり、
前記複数のプレートの各々は表面を有し、この表面は、前記複数のラッチの対応する1つが係合位置にある時、前記複数のラッチの対応する1つの前記係合部と選択的に係合し、これにより、縫合糸の一部を前記係合部と前記プレートの前記表面との間に固定し、前記複数のプレートの各々の前記表面は、前記複数のラッチの対応する1つが非係合位置にある時、前記複数のラッチの対応する1つから離れ、これにより、前記係合部と前記プレートの前記表面との間から縫合糸の一部を解放するように構成され、
前記アクチュエータは、前記複数のラッチの各々の前記第2端に結合され、第1位置と第2位置との間を移動するように構成され、前記アクチュエータが前記第1位置から前記第2位置に移動する時、前記複数のラッチの各々が前記係合位置から前記非係合位置へと回転する、自動縫合用の縫合糸セキュリティ装置。
【請求項2】
複数のカムリンケージをさらに備え、前記複数のカムリンケージの各々は細長い形状を有して第1端から第2端まで延び、前記複数のカムリンケージの各々の前記第1端は、前記複数のラッチの対応する1つの前記第2端に固定的に結合され、前記複数のカムリンケージの各々の前記第2端は、前記アクチュエータに結合され、これにより、前記アクチュエータが前記第1位置から前記第2位置へと移動する時、前記複数のカムリンケージの各々の前記第1端が変位して、前記複数のラッチの対応する1つが前記軸の周りを前記係合位置から前記非係合位置へ回転するように構成された、請求項1に記載の縫合糸セキュリティ装置。
【請求項3】
複数の針をさらに備え、前記複数の針の各々が細長い形状を有して第1端から第2端まで延び、前記複数の針の各々が第1針位置から第2針位置まで進むように構成された、請求項1に記載の縫合糸セキュリティ装置。
【請求項4】
複数のフェルールホルダをさらに備え、前記複数のフェルールホルダの各々は、縫合糸の端部に配置されたフェルールを解放可能に固定するように構成され、前記複数の針の各々が前記第1針位置にある時、前記複数の針の各々の前記第1端が前記複数のフェルールホルダの対応する1つから離れて配置され、前記複数の針の各々が前記第2針位置にある時、前記複数の針の各々の前記第1端が、前記複数のフェルールホルダの対応する1つ又はその近傍に配置され、これにより、前記第1端が前記複数のフェルールホルダの対応する1つに固定された前記フェルールと係合する、請求項3に記載の縫合糸セキュリティ装置。
【請求項5】
前記複数の針の各々の前記第2端が前記アクチュエータに結合され、前記アクチュエータが前記第1位置から前記第2位置に移動する時、前記複数の針の各々の前記第1端が前記第1針位置から前記第2針位置に進むように構成された、請求項3に記載の縫合糸セキュリティ装置。
【請求項6】
ハウジングをさらに備え、前記複数のラッチの各々の前記第2端は、前記ハウジングの第1部分に結合され前記軸に沿って延びる軸部材の周りを回転可能であり、前記複数のプレートの各々が前記ハウジングの第2部分に固定され、前記アクチュエータが前記ハウジングの第3部分に移動可能に結合された、請求項1に記載の縫合糸セキュリティ装置。
【請求項7】
前記ハウジングの第4部分に結合された窓をさらに備えた、請求項に記載の縫合糸セキュリティ装置。
【請求項8】
前記窓が透明な材料からなる、請求項に記載の縫合糸セキュリティ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動縫合のための外科用器具に関し、より具体的には、縫合糸が時期尚早に展開されないことを保証するための縫合糸セキュリティ装置を有する外科用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューヨーク州VictorのLSI Solutions,Inc. (www.lsi Solutions .com)によるRD180(登録商標)装置などの自動縫合用の外科用器具は、低侵襲の外科的開口を介して縫合ステッチ(縫い目)を遠隔で提供するための、信頼性が高く効果的な方法をもたらす。このような装置は、典型的には、その中に装填された縫合糸を有し、縫合糸はその端部に取り付けられた金属チューブまたはフェルールを有する。フェルールは、縫合装置の先端の組織ギャップの一方側にあるフェルールホルダに着座する。装置の組織ギャップの反対側にある針が、保持されているフェルールと軸方向にアライメントされる。
【0003】
装置は、組織ギャップ内に標的となる組織が配置するように方向付けられ、針アクチュエータが、針をギャップ内の組織を通すように動かして、フェルールと干渉接触させ、これによりフェルールと針を結合させる。針アクチュエータが解放されると、針が組織ギャップ内の組織を通って後退し、フェルールに取り付けられた縫合糸も組織を通って引き戻される。このようにして組織にステッチが形成される。
【0004】
一般的に、フェルールホルダは、ステッチが行われるまでフェルールを装置の針にアライメントさせた状態で保持するのに非常に有効である。しかしながら、自動縫合装置は、拡大し続ける用途のために進化し続けており、装置が使用され得る環境及び/又は組織ギャップを標的組織上に配置するために必要とされる装置シャフトの柔軟性および操縦性により、針が作動する前に、フェルールホルダに保持されたフェルールが外れる可能性がある。このような事態が発生すると、縫合装置は意図したとおりに作動することができない。
【0005】
したがって、このような自動縫合装置のための縫合糸セキュリティ装置が必要であり、針がフェルールをピックアップする準備ができるまで、フェルールがそのフェルールホルダに留まるように、高度の保証を与えることが求められる。
【発明の概要】
【0006】
縫合糸セキュリティ装置が開示されている。縫合糸セキュリティ装置は、ラッチと、皿部材と、ラッチに結合されラッチを皿部材から離すように動作可能なアクチュエータと、を備えている。
【0007】
別の縫合糸セキュリティ装置も開示されている。この縫合糸セキュリティ装置は、第1のラッチアレイと、第2のラッチアレイと、複数の皿部材と、第1のラッチアレイに結合され第1のラッチアレイを複数の皿部材から離すように動作可能な第1のアクチュエータと、第2のラッチアレイに結合され第2のラッチアレイを複数の皿部材から離すように動作可能な第2のアクチュエータと、を備えている。
【0008】
さらなる縫合糸セキュリティ装置も開示されている。この縫合糸セキュリティ装置は、ハウジングと、複数のラッチを有してハウジングに結合された第1のラッチアレイと、複数のラッチを有してハウジングに結合され、第1のラッチアレイと組み合わされた第2のラッチアレイと、複数の皿部材と、第1のラッチアレイに結合され第1のラッチアレイを複数の皿部材から離すように動作可能である第1のアクチュエータと、第2のラッチアレイに結合され第2のラッチアレイを複数の皿部材から離すように動作可能である第2のアクチュエータと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】外科的縫合のための縫合糸セキュリティ装置の一実施形態の概略図である。
図1B】同縫合糸セキュリティ装置の概略図である。
図1C】同縫合糸セキュリティ装置の概略図である。
【0010】
図2A】縫合糸セキュリティ装置の別の実施形態の組み立てを示す分解図である。
図2B】同縫合糸セキュリティ装置の組み立ての次の工程を示す分解図である。
図2C】同縫合糸セキュリティ装置の組み立ての次の工程を示す分解図である。
図2D】同縫合糸セキュリティ装置の組み立ての次の工程を示す分解図である。
図2E】同縫合糸セキュリティ装置の組み立ての次の工程を示す分解図である。
図2F】同縫合糸セキュリティ装置の組み立ての次の工程を示す分解図である。
図2G】同縫合糸セキュリティ装置の組み立ての次の工程を示す分解図である。
図2H】同縫合糸セキュリティ装置の組み立ての次の工程を示す分解図である。
図2J】同縫合糸セキュリティ装置の組み立ての次の工程を示す分解図である。
【0011】
図3】同縫合糸セキュリティ装置のアセンブリを部分的に露出して示す図である。
【0012】
明確にするためにそして適切であると思われる場合に、参照番号が対応するフィーチャを示すために図で繰り返されていること、およびフィーチャをより良く示すために図面内の種々の構成要素が必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないこと、を理解されたい。
【発明の詳細な説明】
【0013】
図1Aは、外科的縫合のための縫合糸セキュリティ装置20の一実施形態の概略図である。装置は、皿部材(プレート;plate)24に向かって選択的に保持されるラッチ22を有している。縫合糸26は、ラッチ22と皿部材24との間に配置される。縫合糸26の少なくとも一端は、そこに結合されたフェルール28を有する。フェルール28はフェルールホルダ30内に配置され、縫合糸26はラッチ22および皿部材24に向かって戻される。縫合糸26は、フェルール28がフェルールホルダ30内に保持されるように、軽く張力をかけられるか、さもなければ長さを調整される。縫合糸の位置を維持し、フェルール28がフェルールホルダ30から時期尚早に離脱しないことを追加保証するために、ラッチ22は皿部材24に向かって係合または保持され、両者の間で縫合糸26を把持する。背景技術で説明したように、針32は、装填されたフェルール28と反対側において軸方向にアライメントされている。
【0014】
図1Bに概略的に示されているように、針32は、フェルール28に向かって作動され、フェルール28と接する。ほぼ同時に、または任意の所望の相対時間で、保持された縫合糸26を解放するために、アクチュエータ34がラッチ22を皿部材24から遠ざかるように動かす。図1Bの時点で、針32はフェルール28に適切に係合しているので、この時点でフェルール28をフェルールホルダ30に固定する必要はない。縫合糸26へのラッチ22の把持(グリップ)を解放することにより、針32は、図1Cに示されるように自由に後退することができ、フェルール28およびそれに取り付けられた縫合糸26を、組織ギャップを横切って引き戻すことができる。
【0015】
図1A~1Bの実施形態では、ラッチ22を皿部材24から遠ざけるように動かすアクチュエータ34は、針32のアクチュエータと結合することができ、又はそれとは別個に作動することができる。図示の実施形態では、ラッチ22は軸36の周りで旋回可能であり、アクチュエータ34に結合されたカムリンケージ38によって動かされる。このようにして、縫合糸26は、解放される必要があるまで固定される。いくつかの実施形態では、皿部材24は、窓40の一部であるか、窓40に支持されているか、または窓40に隣接している。使用者は、窓40を通して保持された縫合糸26を見ることができ、針のピックアップが成功したことを遠隔で確認するため(針32およびフェルール28を備えた先端は、使用者には見えないからである)、フェルールのピックアップ後に縫合糸が移動した時にこれを見ることができる。
【0016】
図2A~2Jは、縫合糸セキュリティ装置の別の実施形態のアセンブリを示す分解図である。この装置は、第1のラッチアレイ42と第2のラッチアレイ44によって表示された複数のラッチを有する。第1のラッチアレイ42は複数のラッチ46を有し、第2のラッチアレイも複数のラッチ48を有している。本実施形態では、各ラッチアレイ42、44は、それぞれ6つのラッチ46、48を有している。このことは、組み立て完了した最終形態のユニットが12本の縫合糸を固定できることを意味する。6本は第1のラッチアレイ42で、6本は第2のラッチアレイ44で固定される。各ラッチアレイ42、44は、それぞれカムリンケージ50、52を有する。同様に、各ラッチアレイ42、44は、それぞれのピボット軸54、56を有する。本実施形態では、第2のラッチアレイ44は、よりコンパクトなアセンブリのために、2つのラッチアレイを組み合わせることを可能にするクリアランススロット58を有する。コンパクトに組み合わされたラッチアレイアセンブリ60を図2Bで見ることができる。
【0017】
ラッチアセンブリ60は内側ハウジング62内に配置され、ピボット軸54、56の端部は、いずれかかの側の穴64、66を通って出ており(この図では片側のみが見える)、その位置でブッシュ68,70により保持されている(ただし回転は可能である)。
【0018】
図2Cに示されるように、オプションの櫛72が、ハウジングと接合し、縫合糸をハウジング62に導くためのチューブ(図示せず)を保持するのを助けるために提供される。縫合糸は、先端から内側ハウジング62を通ってチャネル74に入り、基端側において内側ハウジング62の開口76から出る。
【0019】
図2Dに示されるように、外側ハウジング78が内側ハウジング62を覆うようにして配置される。図2Eに示されるように、第1のアクチュエータ80は、外側ハウジング78と内側ハウジング62を通って、第1のラッチアレイ42のカムリンケージ50と結合する。同様に、第2のアクチュエータ82は、外側ハウジング78と内側ハウジング62を通って、第2のラッチアレイ44のカムリンケージ52と結合する。
【0020】
図2Fに示されるように、暫定組立ポスト84が、ラッチ46、48のそれぞれのアライメント穴に配置される。個々の縫合糸は、一直線にならないように、各アセンブリポスト84の周辺に配線される。
【0021】
図2Gに示されるように、皿部材86の集合は、前述のアセンブリのラッチ46、48とアライメントするパターンで透明な窓88に結合されている。他の実施形態では、皿部材86は窓と一体であってもよい、さらに他の実施形態では、透明窓は、半透明であってもよいし、半透明でもないか全く不透明であってもよい(この場合、表示機能が失われる)。
【0022】
図2Hに示されるように、図2Gの窓と皿部材のアセンブリ90は、図2Fのハウジングアセンブリ85の上に被せられる。皿部材86はそれぞれ穴を有しており、この穴は、暫定組立ポストが通過することを可能にし、皿部材86とラッチ46が単一の縫合糸部分を挟むのを可能にする。(第1のラッチアレイによって6本が保持され、第2のラッチアレイによって別の6本が保持される)。
【0023】
図2Iは数字の21と似ているように見えるので存在しない。図2Jに示されるように、暫定組立ポスト84が装置から取り外される。
【0024】
図3は、図2Jのアセンブリを部分的に露出して示す図である。この図では、2つのラッチアレイ42、44が、それらのラッチを対応する皿部材に押し付けているのを、見ることができる。第1のアクチュエータ80は、第1のラッチアレイ42によって保持されている縫合糸を解放し、第2のアクチュエータは、第2のラッチアレイ44によって保持されている縫合糸を解放する。
【0025】
低侵襲性縫合のための縫合糸セキュリティ装置の様々な利点について議論してきた。本明細書で論じられる実施形態は、本明細書の例として記述されている。前述の詳細な開示は、例としてのみ提示されることを意図しており、限定するものではないことは、当業者には明らかであろう。本明細書に明示的に記載されていないが、様々な変更、改善、および修正が当業者は意図する。これらの変更、改善、および修正は、ここに示唆されることを意図しており、クレームされた発明の精神および範囲内にある。さらに、要素の処理またはシーケンスの記載された順序、または数字、文字、または他の指定は、したがって、特許請求の範囲で指定されている場合を除き、請求項を任意の順序に限定することを意図しない。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲およびその均等物よってのみ限定される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2J
図3