(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】抽出装置及び抽出装置の操作方法
(51)【国際特許分類】
A47J 31/36 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A47J31/36 120
A47J31/36 320
(21)【出願番号】P 2021568821
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019062945
(87)【国際公開番号】W WO2020233783
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】513046892
【氏名又は名称】オイグスター/フリスマーク アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーシュベック,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】イェシル,サーデティン
(72)【発明者】
【氏名】エッガー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シュオイラー,ロマン
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504183(JP,A)
【文献】特表2009-539443(JP,A)
【文献】特表2013-506474(JP,A)
【文献】米国特許第06510783(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルサーブカプセル(2)から飲料を作るための抽出装置(1)であって、第一の抽出室要素(3)と第二の抽出室要素(4)とシール手段(5)とを有し、前記第一の抽出室要素(3)は、中心軸(12)に沿って、前記第一の抽出室要素(3)及び前記第二の抽出室要素(4)が相互に離れている装填位置と、前記第一の抽出室要素(3)及び前記第二の抽出室要素(4)が相互に向かって移動して実質的に閉じた抽出室(10)を形成する動作位置との間で移動可能であり、前記動作位置では、前記シール手段(5)が、前記第一の抽出室要素(3)と前記第二の抽出室要素(4)との間に配置され、前記第一の抽出室要素(3)又は第二の抽出室要素(4)が、液体を前記抽出室(10)内にあるシングルサーブカプセル(2)に注入するための液体供給手段(6)を有し、前記液体供給手段(6)が、前記中心軸(12)に沿って変位可能なスライダ(9)によって前記抽出室(10)に対して境界が画定される圧力空間(8)を有する抽出装置(1)において、
前記スライダ(9)は、前記抽出室(10)に面する面に前記シール手段(5)と、前記圧力空間(8)に面する面に圧力解放手段(11)が統合されたシール要素(7)とを有していることを特徴とする抽出装置(1)。
【請求項2】
前記シール要素(7)が、前記中心軸(12)に対して、同心円状且つ回転対称に形成されている、請求項1に記載の抽出装置(1)。
【請求項3】
前記第一の抽出室要素(3)又は第二の抽出室要素(4)が、ピストンハウジング(14)を有し、その中には、前記スライダ(9)が前記中心軸(12)に沿って変位可能に取り付けられ、
前記シール要素(7)が、前記スライダ(9)を前記ピストンハウジング(14)の内壁に対してシールするための動的な外側シール(13)を有し、
前記内壁が、少なくとも前記中心軸(12)に平行な領域において延びている、請求項1又は請求項2に記載の抽出装置(1)。
【請求項4】
前記動的な外側シール(13)が、外側シールリップ(15)を含み、その自由端が、前記圧力空間(8)内の圧力により前記ピストンハウジング(14)の前記内壁の方向に押される、請求項3に記載の抽出装置(1)。
【請求項5】
前記ピストンハウジング(14)が、後壁(17)を有し、前記中心軸(12)に垂直な領域において延び、前記圧力空間(8)の、前記スライダ(9)と反対の壁を形成している、請求項3又は請求項4に記載の抽出装置(1)。
【請求項6】
前記圧力解放手段(11)が、内側シールリップ(16)を含み、その自由端が、その開始地点において前記後壁(17)に押し付けられて、前記圧力空間(8)内で圧力閾値を超えると、前記後壁(17)から離れた解除位置へと押される、請求項5に記載の抽出装置(1)。
【請求項7】
前記液体供給手段(6)が、前記圧力空間(8)の中へと開放する液体入口(18)と前記抽出室(10)へと開放する液体出口(19)とを有し、
前記液体出口(19)は、前記液体入口(18)と、前記内側シールリップ(16)が前記解除位置にあるときのみ流体接続される、請求項6に記載の抽出装置(1)。
【請求項8】
前記シール要素(7)が、前記ピストンハウジング(14)の後壁(17)に面するその面において、前記中心軸(12)に実質的に垂直に延び、前記圧力解放手段(11)の内側シールリップ(16)から前記外側シールリップ(15)まで延び、前記スライダ(9)に面する固定手段を含む接続領域(20)を有している、請求項4に記載の抽出装置(1)。
【請求項9】
前記スライダ(9)が、前記後壁(17)に面するその面において、前記ピストンハウジング(14)上の対応するガイド(22)の中に軸方向に変位可能に取り付けられる中央突出部(21)を有し、
前記ガイドが、前記後壁(17)の中央に形成されている、請求項5に記載の抽出装置(1)。
【請求項10】
前記液体入口(18)が、ポンプ及び/又はサーモカップルを介して液体貯蔵部に流体接続されている、請求項7に記載の抽出装置(1)。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の抽出装置(1)の操作方法であって、
第一の方法ステップで、シングルサーブカプセル(2)が、前記第一の抽出室要素(3)と前記第二の抽出室要素(4)との間に提供され、
次の第二の方法ステップで、前記第一の抽出室要素(3)又は第二の抽出室要素(4)は、前記装填位置から前記動作位置に移動され、
第三の方法ステップで、液体が、前記圧力空間(8)内へと流され、その結果、前記圧力空間(8)内の圧力上昇により、まず、第一のサブステップで、前記スライダ(9)が、前記中心軸(12)に沿って前記抽出室(10)の方向に変位させられて、前記シール手段(5)のシール作用をもたらし、第二のサブステップで、前記圧力空間(8)内で所定の圧力閾値に到達すると、続いて、前記圧力解放手段を作動させ、その結果として、前記液体が前記抽出室(10)の中へと注入される抽出装置(1)の操作方法。
【請求項12】
前記第三の方法ステップ中、前記圧力空間(8)内の圧力によって、前記シール要素(7)の周囲外側シールリップ(15)の自由端が、前記第一の抽出室要素(3)又は第二の抽出室要素(4)のピストンハウジング(14)の内壁に押し付けられる、請求項11に記載の抽出装置(1)の操作方法。
【請求項13】
前記第三の方法ステップ中、前記圧力空間(8)内の圧力によって、前記シール手段(5)が、前記シングルサーブカプセル(2)のフランジ(23)に、又は、前記第二の抽出室要素(4)若しくは第一の抽出室要素(3)に押し付けられる、請求項11又は請求項12に記載の抽出装置(1)の操作方法。
【請求項14】
前記第一のサブステップ中、前記圧力空間(8)が、前記圧力解放手段の内側シールリップ(16)により、前記抽出室(10)へと開放する液体出口(19)に向かってシールされる、請求項11~請求項13のいずれか一項に記載の抽出装置(1)の操作方法。
【請求項15】
前記第二のサブステップ中、前記内側シールリップ(16)が、前記圧力空間(8)内の圧力により前記第一の抽出室要素(3)又は第二の抽出室要素(4)のピストンハウジング(14)の後壁(17)から離間されて、前記液体出口(19)を前記圧力空間(8)と流体連通させる、請求項14に記載の抽出装置(1)の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シングルサーブカプセルから飲料を作るための抽出装置であって、第一の抽出室要素と第二の抽出室要素とシール手段とを有し、第一の抽出室要素は、中心軸に沿って、第一の抽出室要素及び第二の抽出室要素が相互に離間される装填位置と、第一の抽出室要素及び第二の抽出室要素が相互に向かって移動して、実質的に閉じた抽出室を形成する動作位置との間で移動可能であり、動作位置では、シール手段が、第一の抽出室要素と第二の抽出室要素との間に配置され、第一の抽出室要素又は第二の抽出室要素が、液体を抽出室内にあるシングルサーブカプセルの中に注入するための液体供給手段を有し、液体供給手段は、中心軸に沿って変位可能なスライダによって抽出室に対して境界が画定される圧力空間を有する抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような抽出装置は、例えば、独国特許出願公開第10 2010 044 945 A1号明細書において開示されている。
抽出装置は、飲料、特に、コーヒーを作るためのシングルサーブカプセルからの抽出用として意図されている。
抽出装置は、第二の抽出室要素を含み、これは、飲料物質が充填されているシングルサーブカプセルを受けるためのベル形窩洞として設計される。
第一の抽出室要素は、閉止要素として設計され、トグルレバーに接続されて、軸方向に沿って装填位置から抽出位置へと移動可能である。
抽出位置では、閉止要素は、ベル形窩洞を閉じて、実質的に閉じた抽出室を形成する。
抽出液体をシングルサーブカプセル内へと導入するための注入装置が、閉止要素上に配置され、抽出液体は、シングルサーブカプセル内部の飲料物質と相互作用し、その後、第二の抽出室要素の上に配置された抽出装置によってシングルサーブカプセルから取り出され、飲料容器に供給されて、飲料が提供される。
装填位置では、閉止要素とベル形窩洞は、離れていて、抽出装置にシングルサーブカプセルが装填される。
閉止要素は、その後、トグルレバーによって抽出位置へと変位される。
ここで、閉止要素の上及びベル形窩洞の上に配置された穿孔手段は、抽出位置において、シングルサーブカプセルを穿孔して、抽出動作中に抽出液体を導入し、搬出するための開口が作られ、抽出室内には、高い抽出圧力が生じる。
このタイプの抽出装置には、トグルレバージョイントが備えられることが知られており、これは、閉止要素を装填位置から抽出位置へと変位させて、実質的に閉じた抽出室を形成する。
【0003】
このような抽出装置の欠点は、抽出動作中に抽出室内に生じる高い抽出圧力をトグルレバージョイントだけで吸収しなければならないことであり、したがって、抽出液体の漏出が防止され、適正な気密性を有する抽出室を保証することができない。
この種の要求事項を満たすトグルレバージョイントの使用は、非常に複雑で、高コストである。
したがって、抽出動作中に高い抽出圧力下にある抽出室を、抽出室内の高い抽出圧力による力全体をトグルレバージョイントだけで補償しなくてもよいような方法で閉じた状態に保持し、それゆえ、前記抽出室を抽出液体の漏出から保護する抽出装置を提供することが望ましい。
さらに、抽出室の高レベルのシールを有しながら、製造及び材料コストの低い抽出装置を提供することが望ましい。
【0004】
国際公開第2008/037 642 A1号パンフレットは、抽出室を機械的に閉じ、その後、圧力室に加圧された抽出液体を充填することによって、この問題を解決しており、圧力室内の圧力上昇により、抽出室内で飲料が生成されている間に、抽出室要素とシングルサーブカプセルのフランジとの間に配置されたシールのシール作用が増大する。
抽出液体が入る。
したがって、この解決策の欠点は、抽出室の設計が、第一に、比較的複雑であり、高コストであることと、第二に、抽出液体も常に直接抽出室内に注入され、その結果、抽出室内に反対の力が生成され、この反対の力が圧力室からシールの方向に発生する力に対抗し、したがって、少なくとも部分的にそれを打ち消すことである。
【0005】
文献、欧州特許第2 485 628 B1号明細書は他の抽出装置を開示しているが、その中では、抽出液体は、まず、圧力室のみに伝えられて、上昇した水圧が抽出室要素の移動可能なピストンを反対の抽出室要素の方向へと押し、抽出室がシールされる。
それに加えて、圧力室は、加熱素子、及び、それ自体は、抽出室に接続される外部弁に流体接続される。
外部弁は、所定の圧力に到達したときにのみ開き、抽出液体を加熱素子を通じて抽出室の方向に伝える。
前述の問題は、この解決策では発生しないものの、この解決策は、比較的複雑、高コストで、エラーが生じやすく、大きなスペースが必要となり、これは、例えば、抽出液体の供給を抽出室のピストンに繰り返し案内しなければならず、外部弁と加熱素子の接続のために、抽出室ピストンから再び一時的に完全に取り除かなければならないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、先行技術に関連して説明した欠点がなく、特に、小型で、費用効果が高く、抽出室の上流に取り付けられ、圧力解放手段を有する圧力空間の単純な実装を可能にする抽出装置、及び、抽出装置の操作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明によれば、シングルサーブカプセルから飲料を作るための抽出装置により達成され、この抽出装置は、第一の抽出室要素と第二の抽出室要素とシール手段とを有し、第一の抽出室要素は、中心軸に沿って、第一の抽出室要素及び第二の抽出室要素が相互に離れている装填位置と、第一の抽出室要素及び第二の抽出室要素が相互に向かって移動して、実質的に閉じた抽出室を形成する動作位置との間で移動可能であり、動作位置では、シール手段は、第一の抽出室要素と第二の抽出室要素との間に配置され、第一の抽出室要素又は第二の抽出室要素は、液体を抽出室内にあるシングルサーブカプセルに注入するための液体供給手段を有し、液体供給手段は、中心軸に沿って変位可能なスライダによって抽出室に対して境界が画定される圧力空間を有し、スライダは、抽出室に面する面におけるシール手段と、圧力空間に面する面における圧力解放手段が統合されたシール要素と、を有している。
【0008】
先行技術に対して、本発明による抽出装置は、シール要素を備えるスライダが2つの機能、すなわち、水圧上昇によりシール手段のシール作用を改善する圧力空間としての圧力室と、この圧力室内で所定の圧力閾値に到達した場合のみ液体を抽出室内に注入する圧力解放手段との実現の両方を組み合わせ、したがって、気密性が大きく改善された抽出室のきわめてコンパクトな設計が可能になるという利点を有する。
それに加えて、比較的単純な設計によって、費用効果の高い実装と信頼できる機能が可能となる。
特に、別のコンポーネントが不要であり、抽出液体の供給を移動可能な抽出室要素から再び取り外さなくてよい。
それに加えて、高い抽出圧力下でも所望のシールを実現し、保持するための閉止力を、手作業又はモータにより駆動可能な抽出室の機械的閉止機構によりもたらす必要がない。
第一の抽出室要素及び/又は第二の抽出室要素は、装填位置と動作位置との間で直線的に変位可能である。
第一の抽出室要素が、シングルサーブカプセルのための、特に、静止したベル形の受容部を含むことが考えられ、他方で、第二の抽出室要素は、閉止要素を含み、これは、中心軸に沿って装填位置と動作位置との間で直線的に変位可能であり、その中で、液体供給手段と、シール要素及び圧力解放手段を備えるスライダとが一体化される。
抽出装置の充填中に、シングルサーブカプセルは、装填位置で、中心軸に垂直の向きである装填方向に沿って第一の抽出室要素と第二の抽出室要素との間に導入され、抽出室が閉じると、第二の抽出室要素によって第一の抽出室要素の方向に移動されて、シングルサーブカプセルが受容部の中へと押し込まれる。
代替的に、受容要素としてシングルサーブカプセルが充填されるように設計される第一の抽出室要素が抽出装置から手で取り外せるようにすることも考えられる。
したがって、新しいシングルサーブカプセルが充填された第一の抽出室要素が、再び、挿入されると、第二の抽出室要素だけが装填位置から動作位置へと移動される。
特に、液体は、シングルサーブカプセル内に収容された生の飲料物質、特に、焙煎されたコーヒー豆粒子、インスタントコーヒー粉末、ブレンド茶葉、チョコレート及びココア粉末、ミルク粉末などを抽出するための加圧された熱湯である。
【0009】
本発明の改良と発展は、従属する特許請求項及び図面に関する説明から推測できる。
【0010】
本発明の実施形態によれば、シール要素は、中心軸に対して同心円状且つ回転対称に形成されるようになされる。
そして、抽出室は、中心軸に対して回転対称に形成されて、特に、回転対称で形成されたシングルサーブカプセルを嵌合式に受け入れる。
したがって、シール要素は、動作位置において抽出室を確実に取り囲み、それを完全にシールすることができる。
特に、シール手段は、動作位置において周囲のフランジに押し付けられるシールであり、カバーフィルムにより被覆されていてもよい。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、第一の抽出室要素又は第二の抽出室要素が、ピストンハウジングを有するようになされ、その中には、スライダが中心軸に沿って変位可能に取り付けられ、シール要素は、スライダをピストンハウジングの内壁に対してシールするための動的な外側シールを有し、前記内壁は、少なくとも中心軸に平行な領域において延びる。
そして、動的な外側シールは、周囲の外側シールリップを含み、その自由端は、圧力空間内の圧力によりピストンハウジングの内壁の方向に押される。
それゆえ、圧力空間内の圧力上昇によって、確実にシール手段のシール作用が改善されるだけでなく、それと同時に、スライダとピストンハウジングとの間のシールが、圧力空間内の圧力上昇によって改善され、外側シールリップが、確実にピストンハウジングの内壁に押し付けられ、それによって、スライダと内壁との間のギャップにより、圧力室内の圧力損失は生じ得ない。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、ピストンハウジングは、後壁を有し、中心軸に垂直な領域において延び、圧力空間の、スライダと反対の壁を形成する。
圧力解放手段は、周囲の内側シールリップを含み、その自由端は、その開始地点で後壁に押し付けられて、圧力空間内で圧力閾値を超えると、後壁から離れた解除位置へと押される。
液体供給手段は、圧力空間の中へと開放する液体入口と抽出室へと開放する液体出口とを有し、この液体出口は、液体入口と内側シールリップが解除位置にあるときのみ流体接続される。
この内側シールリップは、圧力空間内で所定の圧力に到達すると後壁から引き離され、抽出室への入口を解除することによって圧力解放手段として機能する。
それによって、液体は、シール手段のシール作用が十分に高いレベルであるときにのみ抽出室に入る、ということが確実となる。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、シール要素が、後壁に面するその面において、中心軸に実質的に垂直に延び、内側シールリップから外側シールリップまで延び、スライダに面する固定手段を含む接続領域を有する。
それゆえ、内側シールリップと外側シールリップは、一体のシール要素の形態で実現でき、特に、費用効果の高い抽出装置の実装と組立が可能となる。
それに加えて、スライダ全体は、比較的コンパクトに形成され、圧力室とスライダを実装した抽出装置の中心軸に沿った範囲は、圧力室を持たない従来の抽出装置の場合よりほとんど大きくない。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、スライダは、後壁に面するその面において、ピストンハウジング上の対応するガイドの中に軸方向に変位可能に取り付けられる中央突出部を有するようになされ、前記ガイドは、後壁の中央に形成される。
スライダは、その突出部により中心軸に平行なその移動に沿って案内及び支持され、後壁のガイド内にスライド式に取り付けられる。
【0015】
本発明の他の実施形態によれば、液体入口は、ポンプ及び/又はサーモカップルを介して液体貯蔵部に流体接続されるようになされる。
液体に圧力を加えるためのポンプ及び/又は液体を加熱するためのサーモカップルは、液体の流れる方向に、特に、圧力空間の下流にある。
【0016】
本発明の別の主題は、本発明による抽出装置の操作方法であり、第一の方法ステップでは、シングルサーブカプセルが第一の抽出室要素と第二の抽出室要素との間に提供され、次の第二の方法ステップで、第一の抽出室要素又は第二の抽出室要素は、装填位置から動作位置に移動され、第三の方法ステップで、液体が圧力空間内へと流され、その結果、圧力空間内の圧力上昇により、まず、第一のサブステップで、スライダは、中心軸に沿って抽出室の方向に変位させられて、シール手段のシール作用をもたらし、第二のサブステップで、圧力空間内で所定の圧力閾値に到達すると、その後、圧力解放手段を作動させ、その結果として、液体が抽出室の中へと注入される。
特に、第一の方法ステップにおけるシングルサーブカプセルの提供は、第一の抽出室要素及び/又は第二の抽出室要素にシングルサーブカプセルが充填され、その後、抽出装置の中に配置されるか、又は、シングルサーブカプセルが、第一の抽出室要素と第二の抽出室要素との間の空間内に直接配置されることのいずれによっても行うことができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、第三の方法ステップ中、圧力空間内の圧力によって、シール要素の周囲外側シールリップの自由端が、第一の抽出室要素又は第二の抽出室要素のピストンハウジングの内壁に押し付けられるようになされる。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、第三の方法ステップ中、圧力空間内の圧力によって、シール手段は、シングルサーブカプセルのフランジに、又は、第二の抽出室要素若しくは第一の抽出室要素に押し付けられるようになされる。
【0019】
本発明の他の実施形態によれば、第一のサブステップ中、圧力空間は、圧力解放手段の内側シールリップにより、抽出室へと開放する液体出口に向かってシールされるようになされる。
【0020】
本発明の他の実施形態によれば、第二のサブステップ中、周囲の内側シールリップは、圧力空間内の圧力によりピストンハウジングの後壁から離間されて、液体出口を圧力空間と流体連通させるようになされる。
【0021】
以下に、図面に描かれた実施形態を参照しながら本発明をより詳しく説明する。
図面は、本発明の実施形態を例として図解しており、重要な発明概念を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態による抽出装置の断面略図を示す。
【
図2】本発明の実施形態による抽出装置の断面略図を示す。
【
図3】本発明の実施形態による抽出装置の断面略図を示す。
【
図4】本発明の実施形態による抽出装置の断面略図を示す。
【
図5】本発明の実施形態による抽出装置の断面略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
様々な図面中、同じ部品には、常に同じ参照符号が付され、各々について一度のみ明示又は説明される。
【0024】
図1は、シングルサーブカプセル2から飲料を作るための本発明による抽出装置1の当初の状態を示す。
【0025】
ここで、抽出装置1は、第一の抽出室要素3と第二の抽出室要素4を含む。
そして、この第一の抽出室要素3は、ベル形の受容要素として設計され、その中に、シングルサーブカプセル2が嵌合式に収容される。
ここで、このシングルサーブカプセル2の底部は、受容要素の底部に載せられ、その間、その上面で、シングルサーブカプセル2がカバーフィルムにより閉じられる周囲カプセルフランジ23が、第一の抽出室要素3の縁辺突出部の上に載る。
【0026】
また、第二の抽出室要素4は、受容要素のための閉止要素として設計される。
第二の抽出室要素4は、第一の抽出室要素3に対して、第一の抽出室要素3及び第二の抽出室要素4の中央を通る中心軸12に沿って、動作位置と装填位置との間で線形に変位可能である。
図1において、第二の抽出室要素4は、装填位置にあり、その状態では、第二の抽出室要素4は、第一の抽出室要素3から離れており、それによって、第一の抽出室要素3を抽出装置1に手で挿入できる(又は、代替的に、使用者がシングルサーブカプセル2を手で第一の抽出室要素3と第二の抽出室要素4との間に配置できる)。
図2~
図5では、第二の抽出室要素4は、それぞれのケースで動作位置にあり、その状態では、第二の抽出室要素4は、第二の抽出室要素4に近付けられ、カプセルフランジ23が、第一の抽出室要素3の縁辺突出部と第二の抽出室要素4に形成されるシール手段5との間で押さえられるようにされる。
動作位置では、第一の抽出室要素3及び第二の抽出室要素4は、気密状態にシールされた抽出室10を生成し、その中に、シングルサーブカプセル2が位置付けられる。
【0027】
それゆえ、第二の抽出室要素4の装填位置から動作位置へと移動中に、シングルサーブカプセル2は、受容要素の中に嵌合式に押し込まれる。
受容要素の底部は、中央穿刺スパイクを有し、これは、第二の抽出室要素4が装填位置から動作位置に移動させるとすぐにシングルサーブカプセル2の底部を穿刺する。
同様に、第二の抽出室要素4は、シングルサーブカプセル2に面するその面に複数の穿孔先端を有し、これは、第二の抽出室要素4が装填位置から動作位置に移動されるとすぐにシングルサーブカプセル2のカバーフィルムを穿孔する。
第二の抽出室要素4は、液体供給手段6を有し、それを通じて液体、特に、熱湯が加圧されて抽出室10に注入される。
ここで、液体は、穿孔先端によってカバーフィルムに作られた穿孔穴を通ってシングルサーブカプセル2の内部に入り、シングルサーブカプセル2の中に配置された生の飲料物質と相互作用して所望の飲料を生成することができ、すると、これは、シングルサーブカプセル2と抽出室10から、穿刺スパイクによってシングルサーブカプセル2の底部に作られた開口を通って出ることができ、飲料排出点へと伝えられる。
【0028】
第二の抽出室要素4は、ピストンハウジング14を有し、その中に、スライダ9が、ピストンハウジング14に対して中心軸12に平行及び逆平行に線形に変位可能に配置される。
このスライダ9の、第一の抽出室要素3に面する面は、抽出室10を形成するための実際の閉止要素として機能し、閉止要素は、動作位置においてカバーフィルムと接触する。
それに加えて、中心軸12と穿孔点を同心円状に取り囲む環状シールの形態のシール手段5が、スライダ9のこの面に固定される。
【0029】
第二の抽出室要素4は、抽出室10と反対に面する面において、圧力空間8を有し、これは、液体供給手段6の一部として設計され、スライダ9とピストンハウジング14の後壁17との間に形成される。
そして、この後壁17は、少なくとも中心軸12に垂直な領域において延びる。
特に、圧力空間8は、中心軸12を同心円状に取り囲む環状空間として設計される。
【0030】
さらに、液体供給手段6は、圧力空間8へと開放する液体入口18を有する。
液体入口18は、ポンプ及びサーモカップルと直接流体接続される。
ポンプは、液体を液体貯蔵部から液体供給手段6へと搬送する。
ここで、この液体は、サーモカップルを通って搬送され、それによって加熱される。
さらに、液体供給部6は、抽出室10へと開放する液体出口19を有する。
【0031】
また、スライダ9の、後壁17に面する面において、スライダ9は、シール要素7を有する。
ここで、シール要素7は、一体の環状シール要素7として設計され、これも、同様に中心軸12の周囲に同心円状且つ回転対称に延びる。
ここで、このシール要素7は、内側シールリップ16、外側シールリップ15、並びに内側シールリップ16及び外側シールリップ15を半径方向に相互に接続する周囲接続領域20を有する。
特に、このシール要素7は、一体のゴムリング部として、又は、ゴム様リング部として設計される。
外側シールリップ15は、その周囲自由端がピストンハウジング14の内壁と当接する状態である。
したがって、この外側シールリップ15は、外側シール13を形成し、これは、液体が圧力空間8から、スライダ9とピストンハウジング14の内壁との間の周囲スロットの中に入り込むのを防止する。
ここで、外側シール13は、液体が加圧されて圧力空間8の中へと流れることによる圧力空間8内での圧力上昇によって内壁に押し付けられることにより、水圧シールとしての機能を果たす。
外側シール13のシール作用は、圧力空間8内の圧力が上昇するほど大きくなる。
【0032】
それと同時に、圧力空間8内の圧力上昇により、スライダ9は、確実に中心軸12に沿って抽出室10の方向へと押される。
また、シール手段5のシール作用は、スライダ9のこの水圧による圧迫によっても増大し、これは、圧力空間8内の圧力が上昇すると、シール手段が、シングルサーブカプセル2のフランジ23へとはるかによりしっかりと押し付けられることによる。
【0033】
図1~
図4に示される開始位置において、内側シールリップ16は、その周囲自由端がピストンハウジング14の後壁17と当接した状態である。
したがって、この内側シールリップ16は、圧力空間8と液体入口18との間の直接的な流体接続を遮断し、ポンプにより圧力空間8の中に運ばれる液体は、当初、圧力空間8から出られず、その中の圧力上昇につながり、それが同時にシール手段5及び外側シール13のシール作用を増大させる。
【0034】
そして、圧力室8内の圧力が、内側シールリップ14の機械的剛性又は柔軟性に依存する圧力閾値を超えると、この内側シールリップ16は、前記開始位置から解除位置へと押され、これは
図5に示され、その位置では、それは後壁17から離れている。
圧力空間8と抽出室10との間の流体接続は、それによって解除され、したがって、液体は、抽出室10の中に、ひいては、シングルサーブカプセル2の中へと運ばれて飲料が作られる。
したがって、内側シールリップ16は、圧力解除手段11を形成し、これは、圧力要素7の一体構成により、圧力要素7と一体である。
【0035】
中心軸12に沿ったスライダ9の変位を案内するために、スライダ9は、抽出室10と反対に面するその面において、中央円筒形の突出部21を有する。
突出部21は、ピストンハウジング14の後壁17上の中央に配置された対応する円筒形ガイドの中で長さ方向に変位可能に案内される。
【0036】
本発明による抽出装置1の機能は、以下のとおりである。
【0037】
抽出装置1に新しいシングルサーブカプセル2が装填され、及び/又は、新しいシングルサーブカプセル2が装填された第一の抽出室要素3が抽出装置1の中に挿入されると(又は旋回されると)(
図1参照)、抽出室10は、第二の抽出室要素4が装填位置から動作位置へと移動することによって閉じられ(
図2参照)、その結果、カバーフィルムとカプセル底部が穿孔され、シール手段5は、すでにカプセルフランジ23とシール係合状態となっている。
【0038】
続いて、ポンプが作動され、その結果、サーモカップルにより加熱された液体が液体貯蔵部から液体入口18を通って圧力空間8へと運ばれる(
図3参照)。
このとき、内側シールリップ16は、その開始位置になく、抽出室10との流体接続を遮断する。
したがって、液体は、圧力空間8の中にのみ運ばれ、この圧力空間8内の圧力は、上昇を続ける。
この手段により、スライダ9は、抽出室10の方向に変位し、その結果、シール手段5のシール作用が増大する(
図4参照)。
それに加えて、外側シールリップ15が内壁に押し付けられ、したがって、外側シール13のシール作用も増大する。
【0039】
圧力空間8内の圧力が上昇して圧力閾値に到達すると、内側シールリップ16は、その解除位置へと押され、その結果、抽出室10との流体接続が解除される(
図5参照)。
すると、液体は、圧力空間8から、又は、ポンプから液体出口19を通ってシングルサーブカプセル2に流れることしかできず、その結果、作られる予定の飲料が生成される。
【符号の説明】
【0040】
1 ・・・抽出装置
2 ・・・シングルサーブカプセル
3 ・・・第一の抽出室要素
4 ・・・第二の抽出室要素
5 ・・・シール手段
6 ・・・液体供給手段
7 ・・・シール要素
8 ・・・圧力空間
9 ・・・スライダ
10 ・・・抽出室
11 ・・・圧力解放手段
12 ・・・中心軸
13 ・・・外側シール
14 ・・・ピストンハウジング
15 ・・・外側シールリップ
16 ・・・内側シールリップ
17 ・・・後壁
18 ・・・液体入口
19 ・・・液体出口
20 ・・・接続領域
21 ・・・突出部
22 ・・・ガイド
23 ・・・カプセルフランジ