(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240125BHJP
G06F 3/044 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
G06F3/03 400B
G06F3/044 B
(21)【出願番号】P 2022081216
(22)【出願日】2022-05-18
(62)【分割の表示】P 2018528543の分割
【原出願日】2017-07-18
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2016144439
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】小田 康雄
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-031221(JP,A)
【文献】特開平07-104908(JP,A)
【文献】特開2014-035631(JP,A)
【文献】国際公開第2016/079776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041 - 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の芯体と、
電源部と、
第1の信号と前記第1の信号とは異なる第2の信号とを生成する信号生成回路と、
前記芯体を通じて前記第1の信号を第1のタブレットに送信する第1の動作モードに設定する第1のスイッチの状態、および、前記芯体を通じて前記第2の信号を前記第1のタブレットとは異なる第2のタブレットに送信する第2の動作モードに設定する第2のスイッチの状態を取り得ることが可能な操作スイッチと、
を有
し、
前記操作スイッチは、前記第1のタブレットおよび前記第2のタブレットのうちのいずれか1つのタブレットを使用する際にユーザにより操作される操作スイッチであり、前記第1のスイッチの状態および前記第2のスイッチの状態のうち前記ユーザの操作によっていずれか1つのスイッチの状態となる一つの操作スイッチであり、
前記第1の信号は静電結合を通じて前記第1のタブレットに送信される信号であり、前記第2の信号は静電結合を通じて前記第2のタブレットに送信される信号である、
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記操作スイッチをユーザが操作することに基づく前記第1の信号と前記第2の信号とのいずれを前記芯体に供給するかの指定に応じて、前記第1の信号と前記第2の信号とのいずれかを前記芯体に供給するように制御する制御部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記第1の信号と前記第2の信号とは、異なる振幅及び/または異なる周波数を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記第1の信号及び前記第2の信号は、送信情報に応じた変調が施された信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記第1の信号の波形のタイプは、前記第2の信号の波形のタイプと異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記第1の信号の波形のタイプは正弦波であり、前記第2の信号の波形のタイプは矩形波である、
ことを特徴とする請求項
5に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タブレットと共に使用され、タブレットに対して信号を送出する、いわゆるアクティブ静電結合方式の電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
タブレット用の電子ペン(スタイラスペン)としては、電磁誘導方式や静電結合方式など、種々の方式のものが提案されている。それらの内、最近は、アクティブ静電結合方式の電子ペンが登場してきている。このアクティブ静電結合方式の電子ペンは、一次電池や二次電池を用いた電源部と信号発信部とを内蔵すると共に、芯体を導体で構成し、信号発信部からの信号を、導体の芯体から、タブレットに対して静電結合により送信するようにするものである(例えば特許文献1(特許第5687398号公報)参照)。
【0003】
このアクティブ静電結合方式の電子ペンから送出される信号は、振幅が例えば15ボルト以上というような大振幅の信号とされるので、タブレットでは、高精細に電子ペンにより指示された位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このアクティブ静電結合方式の電子ペンでは、一次電池あるいは充電式の二次電池を電源として用いるが、送信する信号の波形としては、種々の波形が考えられ、例えば代表的なものとして、正弦波と矩形波とが考えられている。正弦波信号を送信信号とする電子ペンの場合には、共振回路の共振用キャパシタにより浮遊容量分の影響を吸収することが可能であるので、電力ロスを小さくすることができ、電池寿命を長くすることができる。しかし、その反面、トランスを用いるのが好ましく、回路構成が、比較的複雑になるというデメリットがある。
【0006】
一方、矩形波信号を送信信号とする電子ペンの場合には、電子ペンからタブレットに供給する例えばデジタル信号を2値化信号とすれば、信号生成回路の構成が簡単になるというメリットがある。その反面、浮遊容量による電力ロスが大きく、電池寿命が短くなるというデメリットがある。なお、電池電圧から大振幅の矩形波信号を簡単な構成により生成するためには、トランスを用いて昇圧をする回路が用いられることがある。
【0007】
以上のように、アクティブ静電結合方式の電子ペンから送信する信号として、正弦波信号と矩形波信号のいずれを用いるかについては、一長一短がある。このため、アクティブ静電結合方式の電子ペンとしては、正弦波信号を送信信号とするタイプのものと、矩形波信号を送信信号とするタイプのものとが、いずれも提供されて、両者が併存することが予想される。そして、タブレットも、正弦波信号を電子ペンから受信して位置検出その他の信号処理をするタイプのものと、矩形波信号を電子ペンから受信して位置検出その他の信号処理をするタイプのものとが併存することが予想される。
【0008】
このようになると、利用者は、タブレットが正弦波信号を電子ペンから受信するタイプのものか、矩形波信号を電子ペンから受信するタイプのものかに応じて、電子ペンを変えなければならず、面倒であると共に、経済的にも不効率である。
【0009】
この発明は、以上の問題点を解決することができる電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、
導電性の芯体と、
電源部と、
第1の信号と前記第1の信号とは異なる第2の信号とを生成する信号生成回路と、
前記芯体を通じて前記第1の信号を第1のタブレットに送信する第1の動作モードに設定する第1のスイッチの状態、および、前記芯体を通じて前記第2の信号を前記第1のタブレットとは異なる第2のタブレットに送信する第2の動作モードに設定する第2のスイッチの状態を取り得ることが可能な操作スイッチと、
を有し、
前記操作スイッチは、前記第1のタブレットおよび前記第2のタブレットのうちのいずれか1つのタブレットを使用する際にユーザにより操作される操作スイッチであり、前記第1のスイッチの状態および前記第2のスイッチの状態のうち前記ユーザの操作によっていずれか1つのスイッチの状態となる一つの操作スイッチであり、
前記第1の信号は静電結合を通じて前記第1のタブレットに送信される信号であり、前記第2の信号は静電結合を通じて前記第2のタブレットに送信される信号である、
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0011】
上述の構成の発明の電子ペンによれば、第1のタブレットと、第2のタブレットとのいずれにも対応することができる電子ペンを提供することができる。よって、タブレット毎に電子ペンを用意する必要がなく、共用できるため便利であると共に、経済的であるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明による電子ペンの第1の実施形態の概要を説明するための図である。
【
図2】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電気的な構成例を示すブロック図である。
【
図3】この発明による電子ペンの第1の実施形態における正弦波モードを説明するための図である。
【
図4】この発明による電子ペンの第1の実施形態における正弦波モードを説明するための図である。
【
図5】この発明による電子ペンの第1の実施形態における矩形波モードを説明するための図である。
【
図6】この発明による電子ペンの第1の実施形態における矩形波モードを説明するための図である。
【
図7】この発明による電子ペンの第1の実施形態における矩形波モードを説明するための図である。
【
図8】この発明による電子ペンの第1の実施形態におけるモード切替制御処理の流れを説明するためのフローチャートを示す図である。
【
図9】この発明による電子ペンの第1の実施形態と共に使用される正弦波タイプのタブレットの電気的な構成例を説明するための図である。
【
図10】この発明による電子ペンの第1の実施形態における正弦波モード時の送信信号を説明するための図である。
【
図11】この発明による電子ペンの第2の実施形態の概要を説明するための図である。
【
図12】この発明による電子ペンの第2の実施形態の電気的な構成例を示すブロック図である。
【
図13】この発明による電子ペンの第2の実施形態におけるモード切替制御処理の流れを説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【
図14】この発明による電子ペンの第2の実施形態におけるモード切替制御処理の流れを説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【
図15】この発明による電子ペンの第2の実施形態と共に使用される正弦波タイプのタブレットの電気的な構成例を説明するための図である。
【
図16】この発明による電子ペンの第3の実施形態の電気的な構成例を示すブロック図である。
【
図17】この発明による電子ペンの第4の実施形態の概要を説明するための図である。
【
図18】この発明による電子ペンの第5の実施形態の電気的な構成例を示すブロック図である。
【
図19】この発明による電子ペンの第5の実施形態における矩形波モードを説明するための図である。
【
図20】この発明による電子ペンの第5の実施形態における矩形波モードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下、この発明による電子ペン及び座標入力装置の第1の実施形態を説明する。まず、
図1を参照しながら、この発明による電子ペン及び座標入力装置の第1の実施形態の概要を説明する。なお、以下に説明する第1の実施形態においては、電子ペン1から送出する異なる波形の第1の信号と第2の信号の例として、第1の信号は正弦波信号、第2の信号は矩形波信号としている。
【0014】
そして、以下の実施形態においては、第1の信号としての正弦波信号と、第2の信号としての矩形波信号とは、波形が異なるのみではなく、周波数及び振幅も異なるものとされている。例えば正弦波信号の周波数は、1.8MHz、振幅は17ボルトとされ、矩形波信号は数十kHz、振幅は20ボルトとされる。また、この第1の実施形態の電子ペン1では、タブレットとの間で信号を送受する芯体側部材は、導電性の芯体11とされている。
【0015】
この実施形態の電子ペン1は、タブレットと共に座標入力装置を構成する。この実施形態においては、タブレットとしては、
図1に示すように、電子ペン1から送信される正弦波信号Ssを受信して当該電子ペン1により指示された位置を検出する第1のタイプ(以下、正弦波タイプという)のタブレット2Sと、電子ペン1から送信される矩形波信号Srを受信して当該電子ペン1により指示された位置を検出する第2のタイプ(以下、矩形波タイプという)のタブレット2Rとの2種が存在する。
【0016】
そして、この実施形態の電子ペン1は、送信信号として正弦波信号Ssを発生する正弦波モードと、矩形波信号Srを発生する矩形波モードとを備えていると共に、タブレット2Sまたはタブレット2Rに応じたモードに切り替えられるように構成されている。
【0017】
この実施形態では、タブレット2S及びタブレット2Rは、電子ペン1と静電結合して信号の授受をする位置検出センサ部21S及び21Rを筐体20S及び20R内に備えると共に、位置検出センサ部21S及び21Rに接続されて信号処理を行うペン指示検出回路22S及び22Rを備える。
【0018】
この場合に、位置検出センサ部21S及び21Rは、同一の構成を有する。しかし、ペン指示検出回路22S及び22Rは異なる構成を備えている。すなわち、ペン指示検出回路22Sは、電子ペン1からの正弦波信号Ssを受信して位置検出処理やその他の処理をする回路構成を備え、ペン指示検出回路22Rは、電子ペン1からの正弦波信号Ssを受信して位置検出処理やその他の処理をする回路構成を備えている。
【0019】
この実施形態の電子ペン1は、モード切替操作手段の例としてのスライド操作スイッチ30を備えている。スライド操作スイッチ30は、入力受付部を構成する。この例では、
図1に示すように、スライド操作スイッチ30においては、長穴31の筐体10の軸心方向に一方側には「S」の文字が、他方側には「R」の文字が印刷や刻印等されて表示されている。
【0020】
そして、この例のスライド操作スイッチ30は、スライド操作ボタン32が、長穴31の「S」側にあるときには、正弦波モードを示す例えばローレベルの状態となり、長穴31の「R」側にあるときには、矩形波モードを示す例えばハイレベルの状態となるモード指定信号SE(後述する
図2参照)を発生する。
【0021】
利用者は、使用するタブレットが正弦波タイプのタブレット2Sか、矩形波タイプのタブレット2Rかに応じて、このスライド操作スイッチ30を切替操作する。すると、電子ペン1は、その切替操作に応じたモードになり、芯体11を通じて正弦波信号Ssまたは矩形波信号Srを送出する。なお、電子ペン1は、正弦波信号Ssまたは矩形波信号Srを、芯体11をカバーするコーン形状をしたカバー10Cを通じて送出するようにしてもよい。
【0022】
タブレット2Sまたはタブレット2Rは、電子ペン1からの自身のタイプに応じた正弦波信号Ssまたは矩形波信号Srを受信して、電子ペン1により指示された位置の検出処理や、筆圧情報や、電子ペン1の識別情報などの検出、その他の付加情報の処理を行う。
【0023】
以上のようにして、この実施形態の電子ペン1は、タブレット2Sとタブレット2Rのいずれにおいても位置指示用として使用可能とされる。
【0024】
なお、モード切替操作手段は、スライド操作スイッチ30の構成に限られるものではなく、例えばシーソー式の切替スイッチや、正弦波モードと矩形波モードとのそれぞれに応じた2個の押釦スイッチであってもよい。また、1個の押釦スイッチを押下する毎に、正弦波モードと矩形波モードとを切り替えるようにするものであってもよい。さらに、タブレット2Sやタブレット2Rから送出される信号によって、正弦波モードと矩形波モードとを切り替えるようにしてもよい。
【0025】
[電子ペン1の電気的な構成例]
この実施形態の電子ペン1は、上記の2種の異なる波形の信号を、簡単な構成により、発生することが可能な構成を備えるように工夫されている。ここで、電子ペン1を簡単な構成とすることにより、2種の異なる波形の信号を送出可能な電子ペン1を、大型化させずに実現することも、この実施形態の電子ペン1の特徴の一つである。
【0026】
図2は、この実施形態の電子ペン1の電気的な構成例としての信号処理回路の一例を示す図である。この実施形態の電子ペン1は、正弦波信号Ssまたは矩形波信号Srを送信するための、導電性を備える芯体11を備える。芯体11は、例えば導電性金属で構成される。
【0027】
そして、この実施形態の電子ペン1は、一次電池あるいは二次電池を備える電源回路12により、電源電圧VDDを形成するようにしている。二次電池としては、例えばリチウムイオン電池などを用いる。また、二次電池に代えて、あるいは、二次電池と組み合わせて電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどの蓄電素子を用いて、電源回路12を構成してもよい。さらには、太陽電池などの自律型発電素子と、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどの蓄電素子を用いて、電源回路12を構成してもよい。
【0028】
この実施形態の電子ペン1の信号処理回路は、IC(Integrated Circuit;集積回路)100と、IC100の外付け部品とからなる構成とされている。IC100は、端子101~109を備える。電源回路12からの電源電圧VDDは、端子101を通じてIC100に供給される。
【0029】
IC100と外付け部品とからなる信号処理回路は、送信情報生成回路110と、第1の信号の例としての正弦波信号Ssを発生する正弦波信号発生回路120と、第2の信号の例としての矩形波信号Srを発生する矩形波信号発生回路130と、制御回路140と、モード切替回路150と、整流回路17とを備える。
【0030】
モード切替回路150は、正弦波モード端子Tsと、矩形波モード端子Trと、共通端子Cmとを備え、後述する制御回路140のモード切替信号生成回路141からのモード切替信号SWにより、共通端子Cmを、正弦波モード端子Tsと、矩形波モード端子Trとのいずれかに接続させるように切り替えられる。
【0031】
モード切替回路150の共通端子Cmは、IC100の端子102を通じて電子ペン1の導電性の芯体11に接続されている。モード切替回路150の正弦波モード端子Tsには、正弦波信号発生回路120からの正弦波信号Ssが、IC100の端子103を通じて供給されるように構成されている。また、モード切替回路150の矩形波モード端子Trには、矩形波信号発生回路130からの矩形波信号Srが供給されるように構成されている。
【0032】
制御回路140は、この実施形態では、モード切替信号生成回路141と、正弦波用制御信号生成回路142と、矩形波用制御信号生成回路143と、切替スイッチ回路144とを備えて構成されている。
【0033】
モード切替信号生成回路141には、IC100の端子109を通じて、スライド操作スイッチ30からのモード指定信号SEが入力される。モード切替信号生成回路141は、入力されるモード指定信号SEに基づいて、電子ペン1の送信モードを、正弦波モードとするか、矩形波モードとするかを決定し、その決定に基づいてモード切替信号SWを生成する。そして、モード切替信号生成回路141は、生成したモード切替信号SWを送信信号発生回路110と、正弦波信号発生回路120の後述する切替スイッチ回路122と、制御回路140の切替スイッチ回路144と、モード切替回路150とに供給する。
【0034】
送信情報生成回路110は、モード切替信号生成回路141からのモード切替信号SWを受けて、タブレット2Sまたはタブレット2Rに送信する送信情報を生成する。送信情報生成回路110が発生する送信情報に応じた信号自体は、モード切替信号SWにより切替制御されて、正弦波モードと矩形波モードとで異なるが、送信情報の情報内容としては、正弦波モードと、矩形波モードとで同一である。
【0035】
送信情報生成回路110は、正弦波モードのときには、正弦波モード用の信号を制御回路140の正弦波用制御信号生成回路142に供給する。また、送信情報生成回路110は、矩形波モードのときには、矩形波モード用の信号を矩形波信号生成回路130に供給する。
【0036】
送信情報には、位置検出用信号の他に、電子ペン1が備える筆圧検出機構(図示は省略)で検出した筆圧の情報、電子ペン1に設けられているサイドスイッチ(図示は省略)のオン、オフ情報、メモリ(図示は省略)に記憶されている電子ペン1の識別情報などの情報信号を含む。
【0037】
正弦波信号発生回路120は、外付け部品としてのトランス13、共振用キャパシタ14、カップリング用キャパシタ15、逆流防止用のダイオード16と、IC100内のスイッチ回路121及び切替スイッチ回路122とを備えて構成されている。なお、トランス13は、この実施形態の電子ペン1では、正弦波信号の生成のために用いられると共に、矩形波信号の生成のための高電圧の電源電圧の生成用としても用いられる。
【0038】
前述もしたように、この実施形態の電子ペン1からタブレット2Sまたはタブレット2Rに送出する信号は17ボルト、あるいは20ボルトというような、高振幅の信号である。しかし、一次電池あるいは二次電池を用いる電源回路12からの電源電圧VDDは、低電圧である。そのため、トランス13は、正弦波信号Ssの生成用とすると共に、当該正弦波信号Ssの振幅を高振幅にするための昇圧処理も行うようにする。
【0039】
矩形波信号Srも、同様に高振幅であるために、電源電圧VDDから高電圧を生成する必要があり、トランスを用いて昇圧することが一般に行われる。しかし、正弦波信号の生成及び昇圧用のトランス13の他に、矩形波信号用の高電圧を生成するための別個にトランスを設けると、電子ペン1内に、2個のトランスを搭載することになり、電子ペン1が大型化すると共に、電子ペン1を細型にすることが困難になる。この問題を解決するために、この実施形態では、トランス13を、正弦波信号の生成用としてだけでなく、矩形波信号の生成のための高電圧の生成用としても兼用する構成としている。
【0040】
トランス13は、一次巻線13aと二次巻線13bとを備える。一次巻線13aと二次巻線13bとの巻数比は、1:n(n>1で、例えばn=5)とされている。トランス13の一次巻線13aの一方の端部は、当該一次巻線13aと共に共振回路を構成する共振用キャパシタ14の一端に接続されていると共に、電源電圧VDDが得られるIC100の端子105に接続されている。トランス13の一次巻線13aの他方の端部は、端子107を通じてスイッチ回路121の一端と、切替スイッチ回路122の他方の切替端子bとの接続点P1に接続されている。
【0041】
共振用キャパシタ14の他端は、IC100の端子106を通じて切替スイッチ回路122の共通端子cに接続されている。切替スイッチ回路122の一方の切替端子aは、電源電圧VDDが得られる端子101が接続されている。また、この切替スイッチ回路122の他方の切替端子bは、スイッチ回路121の一端に接続されている。切替スイッチ回路121の他端は、接地端に接続されている端子108に接続されている。
【0042】
この実施形態では、トランス13の一次巻線13aと共振用キャパシタ14とからなる共振回路と、スイッチ回路121とを含む回路により発振回路120Rを構成する。そして、正弦波モードにおいては、トランス13の一次巻線13aと共振用キャパシタ14とからなる共振回路を用いた発振回路120Rで発振動作がなされると共に、適宜のタイミングで、スイッチ回路121がオン・オフ制御されることで発振回路120Rにエネルギーが注入され、この発振回路120Rの発振出力信号(正弦波信号)が減衰せずに、発振が継続するようにされる。
【0043】
また、この実施形態では、スイッチ回路121は、矩形波モードにおいては、トランス13をフライバック方式の昇圧トランスとして用いて、発生させる矩形波信号の振幅分の電源電圧(高電圧HV(=HVr))を生成するように、オン・オフ制御される。すなわち、この実施形態では、トランス13のみでなく、スイッチ回路121も、正弦波モードと矩形波モードとの両方で用いられる。
【0044】
ただし、この実施形態では、スイッチ回路121のオン・オフ制御は、正弦波モード時と矩形波モード時とで異なる。そのため、
図2に示すように、制御回路140の一部を構成する回路として、正弦波用制御信号生成回路142と、矩形波用制御信号生成回路143とが設けられていると共に、切替スイッチ回路144が設けられている。
【0045】
切替スイッチ回路122は、共振用キャパシタ14を、トランス13の一次巻線13aに対して、正弦波モードには、並列に接続して共振回路を構成させるようにし、矩形波モードでは、共振用キャパシタ14のトランス13の一次巻線13aに対する並列接続を切断して共振回路を構成しないように切り替えるためのものである。この切替スイッチ回路122は、モード切替信号生成回路141からのモード切替信号SWにより、正弦波モード時には、共通端子cが切替端子b側に接続され、矩形波モード時には、共通端子cが切替端子a側に接続されるように切り替え制御される。
【0046】
正弦波用制御信号生成回路142は、接続点P1に得られる電圧VCを監視することで、発振回路120Rにおいて、正弦波信号Ssを生成するように、スイッチ回路121をオン・オフ制御する正弦波用制御信号を生成する。また、矩形波用制御信号生成回路143は、整流回路17から矩形波信号Srを生成する際に必要とされる高電圧HV(HVr)を生成するように、スイッチ回路121をオン・オフ制御する矩形波用制御信号を生成する。
【0047】
そして、正弦波用制御信号生成回路142からの正弦波用制御信号と、矩形波用制御信号生成回路143からの矩形波用制御信号とが、切替スイッチ回路144を通じて選択的にスイッチ回路121に供給されるように構成されている。
【0048】
切替スイッチ回路144は、モード切替信号生成回路141からのモード切替信号SWにより、正弦波モード時には、正弦波用制御信号生成回路142側に切り替えられ、矩形波モード時には、矩形波用制御信号生成回路143側に切り替えられる。正弦波用制御信号生成回路142及び矩形波用制御信号生成回路143による処理動作については、後で詳述する。
【0049】
トランス13の二次巻線13bの一端はバイアス生成用のダイオード16のカソードに接続され、このダイオード16のアノードは、接地端に接続されていると共に、IC100の端子108に接続されている。また、トランス13の二次巻線13bの他端は、バイアス生成用キャパシタ15を通じて、接地端に接続されていると共に、IC100の端子108に接続されている。
【0050】
そして、トランス13の二次巻線13bの一端とダイオード16のカソードとの接続点P2は、IC100の端子103に接続されており、この接続点P2に得られる信号は、端子103を通じてIC100内に供給される。端子103を通じてIC100内に供給された信号は、モード切替回路150の正弦波モード端子Tsに供給される。
【0051】
また、接続点P2には、整流用ダイオード18とキャパシタ19とからなる整流回路17が接続されている。この整流回路17の出力端は、IC100の端子104に接続されている。整流回路17は、トランス13の二次巻線13bの一端側の接続点P2に得られる信号を整流して、トランス13の一次巻線13aと二次巻線13bとの巻数比に応じて昇圧された高電圧HVを生成する。
【0052】
すなわち、整流回路17は、正弦波モード時には、トランス13の二次巻線13bの一端側の接続点P2に得られる正弦波信号Ssを整流して、当該正弦波信号Ssの振幅に応じた高電圧HV(=HVs)を生成する。この正弦波モード時の高電圧HV(=HVs)は、モード切替回路150の電源電圧として用いられる。
【0053】
また、整流回路17は、矩形波モード時には、後述するように、フライバック方式で二次巻線13bの一端側の接続点P2に得られる信号を整流して、矩形波信号Srの生成に必要な高電圧HV(=HVr)を生成する。この矩形波モード時の高電圧HV(=HVr)は、矩形波信号発生回路130の電源電圧とされると共に、モード切替回路150の電源電圧として用いられる。
【0054】
矩形波信号発生回路130は、この実施形態では、矩形波信号生成用のレベル変換回路131で構成される。レベル変換回路131の電源電圧は、整流回路17で生成された高電圧HV(HVr)とされている。矩形波信号発生回路130については、後で詳述する。
【0055】
以上のように構成されている電子ペン1の信号処理回路における正弦波信号の生成モードにおける正弦波用制御信号生成回路142による処理動作及び矩形波モードにおける矩形波用制御信号生成回路143による処理動作について、以下に説明する。
【0056】
[正弦波用制御信号生成回路142による処理動作について]
図3は、正弦波用制御信号生成回路142の具体回路例及び正弦波モードにおける正弦波用制御信号生成回路142による処理動作を説明するための図である。また、
図4は、その処理動作を説明するために用いる図である。
【0057】
図3の回路例では、スイッチ回路121は、1個のFET(Field Effect Transistor)で構成されている。切替スイッチ回路122は、正弦波モードの切替状態を示しており、共通端子cが切替端子bに切り替えられていて、トランス13の一次巻線13aと共振用キャパシタ14とからなるLC共振回路を含む発振回路120Rが形成されている。なお、
図3では、簡単のため、スイッチ回路144は省略してある。
【0058】
この例の正弦波用制御信号生成回路142は、ゼロクロス検出回路1421と、遅延回路1422と、パルス発生回路1423とからなる。
【0059】
トランス13の一次巻線13a及び共振用キャパシタ14からなるLC共振回路を含む発振回路120Rにより、接続点P1には、
図4(A)に示すような、周波数が例えば1.8MHzで、振幅が2VDDの正弦波電圧VCが得られる。この接続点P1に得られる正弦波電圧VCがゼロクロス検出回路1421の入力信号として供給される。
【0060】
ゼロクロス検出回路1421は、この正弦波電圧VCの正弦波としてのゼロクロス時点、すなわち、正弦波電圧VCが電圧値VDDと交差する時点Zc1,Zc2を検出し、その検出したゼロクロス時点Zc1,Zc2の内、高い電圧から低い電圧にゼロクロスする時点Zc2を示す信号、例えばパルスを遅延回路1422に供給する。
【0061】
遅延回路1422は、ゼロクロス検出回路1421からの信号に基づいて、ゼロクロスの時点Zc2から、正弦波電圧VCの1周期Tの1/4の遅延時間DLだけ遅延した時点を示す信号、例えばパルス信号を、パルス発生回路1423に供給する。パルス発生回路1423は、遅延回路1422からの信号に基づいて、所定のパルス幅のスイッチング信号SWs(
図4(B)参照)を生成する。このスイッチング信号SWsのパルス幅は短い。このパルス発生回路1423からのスイッチング信号SWsは、
図3では図示を省略した切替スイッチ回路144を介してスイッチ回路121に供給され、スイッチ回路121は、スイッチング信号SWsのパルス幅期間でオンとされる。正弦波モードでは、スイッチ回路121は、スイッチング信号SWsのパルス幅期間以外ではオフとされる。
【0062】
このスイッチ回路121がスイッチング信号SWsのパルス幅期間でオンとされることにより、トランス13の一次巻線13a及び共振用キャパシタ14からなる共振回路に、スイッチ回路121を通じて電流が流れ、発振回路120Rで生成される正弦波電圧VCは、減衰することなく、継続的に生成される。
【0063】
ここで、遅延回路1422での遅延時間DLは、ゼロクロスの時点Zc2から正弦波電圧VCの1周期Tの1/4の時間長であるので、スイッチ回路121がオンとなる切替時点は、
図4(B)から分かるように、正弦波電圧VCが零ボルトとなる時点である。したがって、スイッチ回路121におけるスイッチング時の電圧ロスは略ゼロとなる。
【0064】
そして、トランス13の二次巻線13b側には、一次巻線13aと二次巻線13bとの巻数比1:nに応じて、正弦波電圧VCのn倍の正弦波信号(正弦波電圧)Ssが得られる。
【0065】
この正弦波信号Ssは、IC100の端子103を通じてモード切替回路150に供給されると共に、整流回路17に供給される。整流回路17では、正弦波信号Ssが整流されて高電圧HV(=HVs)が生成される。そして、整流回路17で生成された高電圧HV(=HVs)が、IC100の端子104を通じて、
図3の例では、図示を省略するモード切替回路150の電源電圧として供給される。
【0066】
なお、送信情報発生回路110からの信号は、正弦波用制御信号生成回路142にイネーブル信号として供給され、正弦波信号発生回路120がイネーブル制御されるようにされている。すなわち、送信情報生成回路110からの送信する情報のデジタル信号(後述の
図5参照)により、例えば「1」の区間では、正弦波信号発生回路120をイネーブル状態とし、「0」の区間では、正弦波信号発生回路120をディスエーブル状態とする。これにより、トランス13の二次巻線13b側に得られる正弦波信号Ssは、送信情報生成回路110で生成された送信信号(デジタル信号)に応じて、後述するように、ASK(Amplitude Shift Keying)変調あるいはOOK(On Off Keying)変調が施されたものとなる。
【0067】
なお、
図2及び
図3では、送信情報発生回路110からの送信信号は、正弦波信号発生回路120の正弦波用制御信号生成回路142にのみ供給するようにしたが、共振回路を構成するトランス13の一次巻線13a及びキャパシタ14に並列にスイッチ回路を設けて、そのスイッチ回路を、送信情報発生回路110からの信号により、正弦波用制御信号生成回路142の制御と同期してオン・オフ制御するようにしてもよい。また、端子103から入力される正弦波信号Ssに対してスイッチ回路を設けて、そのスイッチ回路を送信情報発生回路110からの信号により、正弦波用制御信号生成回路142の制御と同期してオン・オフ制御して、ASK変調やOOK変調をするようにしてもよい。
【0068】
さらに、正弦波信号発生回路120の正弦波用制御信号生成回路142は、正弦波モードのときには、常に動作状態にしておき、共振回路を構成するトランス13の一次巻線13a及びキャパシタ14に並列に設けたスイッチ回路、あるいは、端子103から入力される正弦波信号Ssに対して設けたスイッチ回路を、送信情報発生回路110からの信号により、オン・オフ制御して、ASK変調やOOK変調をするようにしてもよい。
【0069】
[矩形波信号発生回路130及び矩形波用制御信号生成回路143による処理動作について]
矩形波信号発生回路130のレベル変換回路131には、送信情報生成回路110からの送信する情報のデジタル信号(
図5参照)が、送信信号として供給される。レベル変換回路131は、入力された2値信号が「0」の区間では、ゼロレベル(0ボルト)を出力し、2値信号が「1」の区間では、高電圧HV(HVr)を出力して、2値信号に対応した矩形波信号Sr(
図5参照)を生成する。そして、レベル変換回路131は、生成した矩形波信号Srを、モード切替回路150を通じ、端子102を通じた電子ペン1の芯体11に供給する。
【0070】
図6は、矩形波用制御信号生成回路143による矩形波モードにおける高電圧HVrの生成処理動作を説明するための図である。また、
図7は、その動作を説明するための図である。この
図6の例でもスイッチ回路121は、FETで構成されているものとして示していると共に、切替スイッチ回路144は省略してある。
【0071】
そして、切替スイッチ回路122は、矩形波モードの切替状態を示しており、共通端子cが切替端子aに切り替えられていて、トランス13の一次巻線13aに対する共振用キャパシタ14の並列接続は切断されている。すなわち、電源電圧VDDが得られる端子105が、トランス13の一次巻線13aとスイッチ回路121との直列回路を介して接地されている回路構成となっている。
【0072】
矩形波モードにおいては、スイッチ回路121は、矩形波用制御信号生成回路143からのスイッチング信号SWr(
図7(A)参照)により、オン・オフ制御される。そして、トランス13の二次巻線13b側には、
図7(B)に示すようなパルス状電圧VFが得られ、このパルス状電圧VFが整流回路17で整流されて、高電圧HV(=HVr)が生成される。
【0073】
矩形波用制御信号生成回路143では、整流回路17からの高電圧HV(=HVr)を端子104を通じて受けて監視し、この高電圧HV(=HVr)が、矩形波モードにおける例えば20Vの電圧となるように、スイッチング信号SWrの、スイッチ回路121をオンとする区間の時間長を制御する。
【0074】
以上のようにして、矩形波モードにおいては、スイッチ回路121が、矩形波用制御信号生成回路143からのスイッチング信号SWrによるオン・オフ制御を受けて、整流回路17から高電圧HV(=HVr)が生成されるようにされる。そして、この高電圧HV(=HVr)が、矩形波信号発生回路130のレベル変換回路131の電源電圧とされることで、
図5に示した矩形波信号Srが生成される。また、整流回路17から高電圧HV(=HVr)がモード切替回路150の電源電圧とされて、モード切替回路150から矩形波信号Srを歪みなく端子102に出力することが可能となる。
【0075】
[制御回路140によるモード切替制御]
次に、
図8のフローチャートを参照しながら、制御回路140によるモード切替制御動作の流れについて説明する。
【0076】
この実施形態では、使用するタブレットが正弦波タイプか、矩形波タイプかに応じて、予め、使用者は、
図1に示した電子ペン1のスライド操作スイッチ30のスライド操作ボタン32を切り替え操作する。
【0077】
上述したようにして、この実施形態の電子ペン1の制御回路140は、端子109から入力されている、スライド操作スイッチ30の切替状態に応じたモード指定信号SEを判別する(
図8のステップS101)。その判別の結果、正弦波モードが指定されているか、矩形波モードが指定されているかを判断する(ステップS102)。
【0078】
ステップS102で、正弦波モードが指定されていると判断したときには、制御回路140は、モード切替信号生成回路141からのモード切替信号SWを、電子ペン1を正弦波モードに切り替える信号とする。そして、そのモード切替信号SWにより、モード切替スイッチ回路150を、共通端子Cmを正弦波モード端子Tsに接続するように切り替え、送信情報発生回路110から正弦波信号Ssを生成させる送信情報の信号を正弦波用制御信号生成回路142に供給する。また、モード切替信号SWにより、切替スイッチ回路122の共通端子cを端子bに接続する状態にして、トランス13の一次巻線13aにキャパシタ14を並列に接続させて共振回路を構成させると共に、スイッチ回路144を正弦波用制御信号生成回路142側を選択する状態に切り替え、発振回路120Rを動作させるように構成する。これにより、電子ペン1は、正弦波モードの状態に切り替えられて、上述した正弦波モードが行われる状態になる(ステップS103)。
【0079】
また、ステップS102で、矩形波モードが指定されていると判断したときには、制御回路140は、モード切替信号生成回路141からのモード切替信号SWを、電子ペン1を矩形波モードに切り替える信号とする。そして、そのモード切替信号SWにより、モード切替スイッチ回路150を、共通端子Cmを矩形波モード端子Trに接続するように切り替え、送信信号発生回路110から矩形波信号Srを生成させる送信情報の信号を矩形波信号生成回路130のレベル変換回路131に供給する。また、モード切替信号SWにより、切替スイッチ回路122の共通端子cを端子aに接続する状態にして、トランス13の一次巻線13aに対するキャパシタ14の並列接続を解除させて共振回路が構成されないようにすると共に、スイッチ回路144を矩形波用制御信号生成回路143側を選択する状態に切り替える。これにより、電子ペン1は、矩形波モードの状態に切り替えられて、上述した矩形波モードが行われる状態になる(ステップS104)。
【0080】
ステップS103またはステップS104の次には、制御回路140は、ステップS101に処理を戻して、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0081】
[タブレット2Sの構成例及び電子ペン1からの送信信号]
次に、この実施形態の電子ペン1と共に使用されるタブレットの構成例を、正弦波タイプのタブレット2Sの場合を例に取って説明する。
【0082】
図9は、この実施形態の電子ペン1と共に使用する正弦波タイプのタブレット2Sの主要部の回路例を示す図である。電子ペン1は、周波数が1.8MHzの正弦波信号を用いて、位置検出用信号と、電子ペン1として重要な付加情報の例である筆圧情報及びサイドスイッチ情報、更には識別情報(電子ペン1を識別する情報)とを芯体11を通じてタブレット2Sに送出する。タブレット2Sは、
図9に示すように、位置検出センサ部21Sと、ペン指示検出回路22Sとを備えている。
【0083】
位置検出センサ部21Sは、下層側から順に、第1の導体群211、絶縁層(図示は省略)、第2の導体群212を積層して形成されたものである。第1の導体群211は、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体211Y1、211Y2、…、211Ym(mは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置したものである。
【0084】
また、第2の導体群212は、第1の導体211Y1、211Y2、…、211Ymの延在方向に対して交差する方向、この例では直交する縦方向(Y軸方向)に延在した複数の第2の導体212X1、212X2、…、212Xn(nは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置したものである。
【0085】
なお、以下の説明において、第1の導体211Y1、211Y2、…、211Ymについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第1の導体211Yと称する。同様に、第2の導体212X1、212X2、…、212Xnについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第2の導体212Xと称することとする。
【0086】
制御回路220と位置検出センサ部21Sとの間には、入出力インターフェースとされる選択回路221が設けられている。選択回路221は、制御回路220からの制御信号に基づいて、第1の導体群211Yおよび第2の導体群212Xの中からそれぞれ1本の導体を選択するように制御される。なお、選択回路221は、第1の導体群211Yおよび第2の導体群212Xの中から複数本を同時に選択するようにしてもよい。
【0087】
そして、ペン指示検出回路22Sは、選択回路221に接続されている増幅回路222と、バンドパスフィルタ223と、検波回路224と、サンプルホールド回路225と、AD(Analog to Digital)変換回路226と、制御回路220とからなる。
【0088】
制御回路220からの制御信号により選択回路221で選択された位置検出センサ部21Sの導体から、ペン指示検出回路22Sに入力される。ペン指示検出回路22Sにおいては、電子ペン1からの正弦波信号の変調信号からなる送信信号Ssは、増幅回路222により増幅される。この増幅回路222の出力はバンドパスフィルタ223に供給されて、正弦波信号Ssの周波数成分のみが抽出される。
【0089】
バンドパスフィルタ223の出力信号は検波回路224によって検波される。この検波回路224の出力信号はサンプルホールド回路225に供給されて、制御回路220からのサンプリング信号により、所定のタイミングでサンプルホールドされた後、AD変換回路226によってデジタル値に変換される。AD変換回路226からのデジタルデータは制御回路220によって読み取られ、処理される。
【0090】
制御回路220は、内部のROMに格納されたプログラムによって、サンプルホールド回路225、AD変換回路226、および選択回路221に、それぞれ制御信号を送出するように動作する。また、制御回路220は、AD変換回路226からのデジタルデータから、電子ペン1によって指示された位置検出センサ部21S上の位置座標を算出する。
【0091】
この例においては、電子ペン1は、前述したように、送信情報生成回路110からの位置検出用信号と、筆圧情報及びサイドスイッチ情報を含む送信情報により、正弦波信号Ssが変調された送信信号をタブレット2Sに送出する構成を備えている。
【0092】
図10(A)は、電子ペン1の送信情報生成回路110から正弦波用制御信号生成回路142に供給される信号の例を示すものである。
図10(B)及び
図10(C)に示すように、電子ペン1から送信される信号(正弦波信号Ss)は、この例では、連続送信期間と送信データ期間を1周期とするパターンの信号を繰り返し出力するようなものとなる。すなわち、電子ペン1から出力される信号Ssは、
図10(A)の正弦波用制御信号生成回路142に供給される信号のハイレベルを維持する一定期間の連続送信期間では、
図10(B)に示すように、正弦波信号がバースト信号として連続する状態のものとなる(
図10(C)の連続送信期間)。
【0093】
この連続送信期間の長さは、タブレット2Sのペン指示検出回路22Sにおいて、電子ペン1による位置検出センサ部21S上の指示位置を検出することが可能な時間長とされ、例えば第1の導体211Y及び第2の導体212Xの全てを1回以上、好ましくは複数回以上スキャンすることができる時間長とされる。
【0094】
この連続送信期間の終了後、電子ペン1に印加されている筆圧値の情報を複数ビットの値(2進コード)とした筆圧情報と、サイドスイッチのオン・オフ情報をサイドスイッチ情報とした1ビットあるいは複数ビットの情報と、その他、識別情報などからなる送信データを、電子ペン1は芯体11から送信する。
【0095】
すなわち、電子ペン1の送信情報生成回路110は、
図10(A)に示すように、連続送信期間の終了後の送信データ期間において、所定の周期(Td)でハイレベルまたはローレベルとなる送信データの信号を、
図3に示した正弦波用制御信号生成回路142に供給することで、発振回路120Rをオン・オフ制御する。これにより、電子ペン1からの送信信号は、正弦波信号がASK(Amplitude Shift Keying)変調あるいはOOK(On Off Keying)変調された信号Ssとされる。すなわち、
図10(A)及び(B)に示すように、送信データ(2進コード)が「0」のときは、正弦波信号の送出はせず、送信データ(2進コード)が「1」のときは、正弦波信号を送出するように制御して、ASK変調あるいはOOK変調が行なわれる。
【0096】
このとき、連続送信期間の後の所定の周期(Td)の初回は必ずハイレベルとされ、それを
図10(C)のスタート信号とする。このスタート信号は、以降のデータ送出タイミングをタブレット2Sのペン指示検出回路22Sの制御回路220が正確に判定することができるようにするためのタイミング信号である。なお、このスタート信号に代えて、連続送信期間の正弦波信号のバースト信号をタイミング信号として利用することもできる。
【0097】
図9に示すタブレット2Sのペン指示検出回路22Sにおいては、制御回路220は、連続送信期間の受信信号から、電子ペン1による位置検出センサ部21S上での指示位置を検出する。そして、制御回路220は、連続送信期間の終了を待ち、連続送信期間の終了後のスタート信号を検出したら、送信データ期間の筆圧情報及びサイドスイッチ情報、識別情報などのその他のデータを検出して、それらを復元する動作を行う。そして、制御回路220は、電子ペン1による指示位置の検出情報と、筆圧情報と、サイドスイッチ情報と、識別情報などのその他の情報を、ホストコンピュータなどに出力するようにする。
【0098】
以上は、正弦波タイプのタブレット2Sの構成及び動作について、電子ペン1が正弦波モードのときの動作と併せて説明したが、
図6に示す矩形波タイプのタブレット2Rの構成及び動作も、ほぼ同様とすることができるので、ここでは、その詳細な説明は省略する。すなわち、矩形波タイプのタブレット2Rは、位置検出を行うと共に、筆圧情報及びサイドスイッチ情報、識別情報などを検出するためのペン指示検出回路を備える。
【0099】
ただし、矩形波タイプのタブレット2Rのペン指示検出回路の構成は、電子ペン1から送信されてくる矩形波信号Srを処理する構成である点で、正弦波タイプのタブレット2Sとは異なっている。この場合、電子ペン1から送信される矩形波信号Srは、
図10(A)に示した信号に対応したものとなっており、矩形波タイプのタブレット2Rのペン指示検出回路は、当該矩形波信号Srを処理することができる構成とされる。
【0100】
[第1の実施形態の効果]
上述した電子ペン1によれば、正弦波タイプと矩形波タイプとの異なる2種のタブレット2S,2Rに対して、共通に使用可能なものを実現することができる。そして、上述の実施形態の電子ペン1によれば、高電圧の信号を生成するための回路は、トランス13を含めて、正弦波モードと矩形波モードとで共用する構成としたことにより、電子ペン1の構成を簡単にすることができ、電子ペン1の大型化を回避することもできる。
【0101】
[第2の実施形態]
以上の第1の実施形態では、使用者がスライド操作スイッチ30を操作することで、電子ペンを正弦波モードと矩形波モードのいずれかに切替指定するようにした。このため、使用者は、タブレットが正弦波タイプと矩形波タイプとのいずれかを知っている必要がある。しかし、タブレットが正弦波タイプと矩形波タイプとのいずれかであるかが不明である場合もあり、タブレットのタイプに応じて電子ペンのモードが自動的に切り替え設定されれば非常に便利である。第2の実施形態は、タブレットが正弦波タイプまたは矩形波タイプのいずれであるかに応じて自動的にモード切り替え設定がされるようにした電子ペンの場合である。
【0102】
図11は、この第2の実施形態における電子ペン1Aと、正弦波タイプのタブレット2SA及び矩形波タイプの2RAとからなる座標入力装置の概要を説明するための図である。この
図11において、
図1と同一部分には、同一参照符号を付すものとする。
【0103】
第2の実施形態の電子ペン1Aは、
図11に示すように、第1の実施形態の電子ペン1におけるスライド操作スイッチ30は備えていない。一方、この第2の実施形態では、正弦波タイプのタブレット2SAは、自身が正弦波タイプであることを示すタイプ指定情報CMsを、また、矩形波タイプのタブレット2RAは、自身が矩形波タイプであることを示すタイプ指定情報CMrを送出する機能を備える。
【0104】
そして、この第2の実施形態の電子ペン1Aは、第1の実施形態の電子ペン1と同様に、送信信号として正弦波信号Ssを発生する正弦波モードと、矩形波信号Srを発生する矩形波モードとを備えていると共に、タブレット2SAまたはタブレット2RAからのタイプ指定情報CMsまたはCMrを受信して、自動的に、タブレット2Sまたはタブレット2Rのタイプに応じたモードに切り替えられるように構成されている。
【0105】
この第2の実施形態では、タブレット2SA及びタブレット2RAは、第1の実施形態のタブレット2S及びタブレット2Rと同様に、位置検出センサ部21S及び21Rを筐体20S及び20R内に備えることに加えて、この位置検出センサ部21S及び21Rを通じてタイプ指定情報CMs及びCMrを送出するようにする。このため、この第2の実施形態のタブレット2SA及びタブレット2RAは、位置検出センサ部21S及び21Rに接続されて信号処理を行うペン指示検出回路22SA及び22RAは、電子ペン1Aからの正弦波信号Ssまたは矩形波信号Srを受信して位置検出処理やその他の処理をすると共に、タイプ指定情報CMs及びタイプ指定情報CMrを位置検出センサ部21S及び位置検出センサ部21Rから送出する機能を備える。
【0106】
電子ペン1は、この実施形態では、芯体11を通じて正弦波信号Ssまたは矩形波信号Srを送出すると共に、芯体11を通じてタブレット2SAからのタイプ指定情報CMsまたはタブレット2RAからのタイプ指定情報CMrを受信するように構成されている。この第2の実施形態では、後述するように、電子ペン1Aは、正弦波信号Ssまたは矩形波信号Srを送出する送信モードと、タイプ指定情報CMsまたはタイプ指定情報CMrを受信する受信モードとを、時分割で実行するように構成されている。
【0107】
同様に、タブレット2SAまたはタブレット2RAも、タイプ指定情報CMsまたはタイプ指定情報CMrを送信する送信モードと、電子ペン1からの正弦波信号Ssまたは矩形波信号Srを受信する受信モードとを時分割で実行するように構成されている。そして、電子ペン1における時分割処理は、タブレット2SAまたはタブレット2RAからの受信信号に基づいてタイミング制御されることで、電子ペン1Aとタブレット2SAまたはタブレット2RAとの間で時分割処理が同期されるように構成されている。すなわち、電子ペン1が送信モードとなっているときには、タブレット2SAまたはタブレット2RAは受信モードとなっており、電子ペン1Aが受信モードとなっているときには、タブレット2SAまたはタブレット2RAは送信モードとなっている。そして、この第2の実施形態では、電子ペン1Aの送信モードにおいては、正弦波モードと矩形波モードのいずれかが選択される。
【0108】
この第2の実施形態では、電子ペン1Aは、タブレット2SAまたはタブレット2RAの位置検出センサ部21Sまたは21Rからの信号を受信しない状態であるときには、常に、受信モードとなっている。そして、電子ペン1Aがタブレット2SAまたはタブレット2RAに近づけられて、タイプ指定情報CMsまたはタイプ指定情報CMrを受信する状態となると、電子ペン1Aでは、受信したタイプ指定情報CMsまたはタイプ指定情報CMrに基づき、静電結合しているタブレットが、タブレット2SAまたはタブレット2RAのいずれであるかを判別する。
【0109】
そして、電子ペン1Aは、タブレット2SAまたはタブレット2RAから受信したタイプ指定情報CMsまたはタイプ指定情報CMrの受信タイミングに基づき、受信期間と送信期間との時分割制御を開始する。そして、電子ペン1Aは、判別したタイプが正弦波タイプであるときには、送信期間においては、自機を正弦波モードにして正弦波信号Ssを生成し、生成した正弦波信号Ssを、芯体11を通じて、タブレット2SAに対して送出する。また、電子ペン1Aは、判別したタイプが矩形波タイプであるときには、送信期間においては、自機を矩形波モードにして矩形波信号Srを生成し、生成した矩形波信号Srを、芯体11を通じて、タブレット2RAに対して送出する。
【0110】
このとき、前述したように、タブレット2SAまたはタブレット2RAは、電子ペン1Aの送信期間と受信期間の時分割タイミングと同期しており、その受信期間において、電子ペン1Aからの自身のタイプに応じた正弦波信号Ssまたは矩形波信号Srを受信して、電子ペン1Aにより指示された位置の検出処理や、筆圧情報や、電子ペン1Aの識別情報などの検出、その他の付加情報の処理を行う。
【0111】
この第2の実施形態の電子ペン1Aでは、タブレット2SAまたはタブレット2RAのタイプに応じて、正弦波モードまたは矩形波モードに自動的に切り替わるので、電子ペン1Aの使用者は、タブレットが、タブレット2SAとタブレット2RAのいずれであるかを気にすることなく、電子ペン1Aによるタブレット2SAまたはタブレット2RAの位置指示ができて、非常に便利である。
【0112】
[第2の実施形態の電子ペン1Aの電気的な構成例]
図12に、この第2の実施形態の電子ペン1Aの電気的な構成例を示す。この第2の実施形態の電子ペン1Aの電気的な構成は、前述した第1の実施形態の電子ペン1とは、タブレット2SAからのタイプ指定情報CMsまたはタブレット2RAからのタイプ指定情報CMrを受信することで自身を正弦波モードとするか矩形波モードとするかを自動的に切り替える部分が追加される点が異なるだけで、その他の部分は同様である。
図12において、
図2に示した第1の実施形態の電子ペン1の電気的な構成例と同一部分には、同一参照符号を付して、その説明は省略する。
【0113】
すなわち、この第2の実施形態においては、
図12に示すように、IC100には、端子109は設けられない。そして、第1の実施形態とは、モード切替回路150とモード切替信号生成回路141に代えてモード切替回路150Aとモード切替信号生成回路141Aとが設けられると共に、受信信号処理回路160が設けられる点が異なる。
【0114】
この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、芯体11は、電子ペン1Aからの位置検出用信号の送信用だけではなく、タブレット2SAまたはタブレット2RAの位置検出センサ21Sまたは21Rから送信されるタイプ指定情報CMsまたはCMrの受信用としても用いられる。
【0115】
モード切替回路150Aは、正弦波モード端子Tsと、矩形波モード端子Trと、共通端子Cmとに加えて、受信用端子Rを備え、制御回路140Aのモード切替信号生成回路141Aからのモード切替信号により、共通端子Cmを、受信用端子Rと、正弦波モード端子Tsと、矩形波モード端子Trとのいずれかに接続させるように切り替えられる。すなわち、電子ペン1Aが受信モードの期間においては、モード切替回路150Aにおいては、共通端子Cmが受信用端子Rに接続するように切り替えられる。また、電子ペン1Aが送信モードの期間においては、共通端子Cmが、正弦波モード端子Tsと矩形波モード端子Trとのいずれかに接続するように切り替えられる。
【0116】
モード切替回路150Aの受信側端子Rは、受信信号処理回路160の入力端に接続されている。受信信号処理回路160は、アンプ161と、受信信号判別回路162とからなる。受信信号判別回路162は、アンプ161から受け取った信号から、受信した信号は、タイプ指定情報CMsか、あるいは、タイプ指定情報CMrかを判別する。そして、受信信号判別回路162は、タイプ指定情報CMsか、あるいは、タイプ指定情報CMrかの判別結果を、制御回路140Aのモード切替信号生成回路141Aに供給する。また、受信信号判別回路62は、受信した信号から、タブレット2SAまたはタブレット2RAの送信モードの期間及び受信モードの期間と同期させるためのタイミング信号を生成し、そのタイミング信号をモード切替信号生成回路141Aに供給する。
【0117】
モード切替信号生成回路141Aは、受信信号判別回路162からのタイプ指定情報CMsか、あるいは、タイプ指定情報CMrかの判別結果に基づいて、電子ペン1Aの送信モードを、正弦波モードとするか、矩形波モードとするかを決定する。また、モード切替信号生成回路141Aは、受信信号判別回路162からのタイミング信号から、送信モードの期間と受信モードの期間とを時分割で切り替えるタイミングを決定する。
【0118】
モード切替信号生成回路141Aは、第1の実施形態と同様に、正弦波モードと矩形波モードとを切り替えるモード切替信号SWを生成すると共に、モード切替回路150Aを切り替え制御するためのモード切替信号SWAを生成する。すなわち、この第2の実施形態では、モード切替回路150Aは、モード切替信号SWではなく、モード切替信号SWAにより切り替えられる。
【0119】
モード切替回路150Aは、モード切替信号SWAにより、共通端子Cmが、受信モードの期間では、受信用端子Rに接続され、送信モードの期間では、決定した正弦波モード端子Tsあるいは矩形波モード端子Trのいずれかに接続されるように切り替え制御される。
【0120】
その他の構成、すなわち、送信情報発生回路110、正弦波信号発生回路120、矩形波信号発生回路130及び制御回路140Aのモード切替信号生成回路141A以外の回路142,143,144は、第1の実施形態の電子ペン1と同様であるので、説明を省略する。
【0121】
[制御回路140Aによるモード切替制御]
上述したようにして、この第2の実施形態の電子ペン1Aの制御回路140Aは、タブレット2SAから受信したタイプ指定情報CMsまたはタブレット2RAから受信したタイプ指定情報CMrに基づいて、電子ペン1Aをいずれのモードにするかを決定すると共に、送信モードと受信モードとの時分割管理を含めた送受信モード切替管理を行うようにする。
【0122】
この制御回路140Aにおける処理動作の流れの一例を、
図13及び
図14のフローチャートを参照しながら説明する。
【0123】
制御回路140Aは、モード切替信号生成回路141Aからのモード切替信号SWAにより、モード切替回路150Aの共通端子Cmを受信用端子Rに接続する状態とし、電子ペン1Aを、タブレット2SAまたはタブレット2RAからの受信信号を監視するモードとする(
図13のステップS111)。そして、制御回路140Aは、タブレット2SAまたはタブレット2RAからの信号を受信したか否か判別する(ステップS112)。
【0124】
電子ペン1Aがタブレット2SAまたはタブレット2RAから離れた状態であるときには、電子ペン1Aは、タブレット2SAまたはタブレット2RAから信号を受信しないので、制御回路140Aは、このステップS112では、信号を受信していないと判別して、処理をステップS111に戻し、タブレット2SAまたはタブレット2RAからの信号の受信を監視するモードを継続する。
【0125】
そして、電子ペン1Aがタブレット2SAまたはタブレット2RAに接近して、ステップS112で、タブレット2SAまたはタブレット2RAからの信号を受信したと判別したときには、制御回路140Aは、受信信号判別回路162で、受信した信号から正弦波タイプのタイプ指定情報CMsまたは矩形波タイプのタイプ指定情報CMrのいずれかを判別できたか否か判別する(ステップS113)。このステップS113で、正弦波タイプのタイプ指定情報CMsまたは矩形波タイプのタイプ指定情報CMrのいずれかを判別できなかったと判別したときには、制御回路140Aは、処理をステップS111に戻し、このステップS111以降の処理を繰り返す。
【0126】
そして、ステップS113で、正弦波タイプのタイプ指定情報CMsまたは矩形波タイプのタイプ指定情報CMrのいずれかを判別できたと判別したときには、制御回路140Aは、その判別結果のタイプ指定情報CMsまたはタイプ指定情報CMrのいずれかを、モード切替信号生成回路141Aに内蔵するバッファメモリ(図示は省略)に記憶するようにする(ステップS114)。
【0127】
そして、制御回路140Aは、受信モードと送信モードとを時分割で実行する状態に変更すると決定する(ステップS115)。そして、制御回路140Aは、モード切替信号生成回路141Aからのモード切替信号SWAにより、モード切替回路150Aの共通端子Cmを受信用端子Rに接続して、電子ペン1Aを受信モードの状態とする(ステップS116)。
【0128】
そして、制御回路140Aは、タブレット2SAまたはタブレット2RAからの信号を受信したか否か判別する(ステップS117)。このステップS117で、タブレット2SAまたはタブレット2RAからの信号を受信したと判別したときには、制御回路140Aは、受信信号判別回路162で、受信及び判別したタイプ指定情報CMsまたはタイプ指定情報CMrにより、バッファメモリのタイプ指定情報を更新する(ステップS118)。
【0129】
ステップS117で、タブレット2SAまたはタブレット2RAからの信号を受信しなくなったと判別したときには、制御回路140Aは、受信信号が消滅してから、受信信号無しの状態が、予め定めた所定時間Ta以上継続したか否か判別する(ステップS119)。ここで、所定時間Taは、電子ペン1Aがタブレット2SAまたはタブレット2RAから一旦離れたが、当該タブレット2SAまたはタブレット2RAに対して継続して指示入力すると考えられるような短時間よりは長い時間とされている。なお、この所定時間Taは、1~複数の受信モードの期間に亘るものである。
【0130】
ステップS119で、受信信号無しの状態が、予め定めた所定時間Ta以上継続したと判別したときには、制御回路140Aは、処理をステップS111に戻して、タブレット2SAまたはタブレット2RAからの信号の受信を監視するモードに切り替え、このステップS111以降の処理を繰り返す。
【0131】
ステップS119で、受信信号無しの状態が、予め定めた所定時間Ta以上は継続してはいないと判別したとき、また、ステップS118の次には、制御回路140Aは、時分割の受信モードの期間が終了したか否か判別し(
図14のステップS121)、終了してはいないと判別したときには、処理をステップS116に戻して、受信モードを継続する。
【0132】
そして、ステップS121で、時分割の受信モードの期間が終了したと判別したときには、制御回路140Aは、電子ペン1Aを送信モードの状態とすると決定し、バッファメモリに記憶しているタイプ指定情報に応じて、モード切替信号生成回路141Aからのモード切替信号SWAによりモード切替回路150Aを切り替え、また、モード切替信号SWにより切替スイッチ回路122を切り替え、更に、モード切替信号SWにより切替スイッチ回路144を切り替えて送信モードを実行する(ステップS122)。
【0133】
すなわち、バッファメモリにタイプ指定情報CMsが記憶されているときには、電子ペンA1は、この送信モードの期間では正弦波モードとなり、モード切替回路150Aは、モード切替信号SWAにより、正弦波モード端子Tsに共通端子Cmが接続される状態に切り替えられると共に、切替スイッチ回路122は、モード切替信号SWにより共通端子cが切替端子bに切り替えられて、トランス13の一次巻線13aに共振用キャパシタ14が並列に接続されて共振回路が構成される状態とされる。さらに、切替スイッチ回路144が、モード切替信号SWにより、正弦波用制御信号生成回路142からのスイッチング信号SWsを、スイッチ回路121に供給してオン・オフ制御される状態に切り替えられる。これにより、発振回路120Rが発振動作をする状態とされる。
【0134】
したがって、電子ペン1Aでは、この正弦波モードにおいては、
図3及び
図4を用いて前述したようにして、正弦波信号Ssがトランス13の二次巻線13b側に得られる状態となり、当該正弦波信号Ssが、IC100の端子103を通じ、更にモード切替回路150A、端子102を通じて、芯体11に供給される状態となる。そして、モード切替回路150Aには、正弦波信号Ssが整流回路17で整流された高電圧HV(=HVs)が電源電圧として供給されて、正弦波信号Ssが歪みなく、モード切替回路150Aを通じて芯体11に供給されるようにされる。
【0135】
また、バッファメモリにタイプ指定情報CMrが記憶されているときには、電子ペン1Aの時分割の送信モードの期間では矩形波モードとなり、モード切替回路150Aは、モード切替信号SWAにより、矩形波モード端子Trに共通端子Cmが接続される状態に切り替えられると共に、切替スイッチ回路122は、モード切替信号SWにより共通端子cが切替端子aに切り替えられて、トランス13の一次巻線13aに対する共振用キャパシタ14の並列接続が解除される状態とされる。さらに、切替スイッチ回路144が、モード切替信号SWにより、矩形波用制御信号生成回路143からのスイッチング信号SWrを、スイッチ回路121に供給してオン・オフ制御される状態に切り替えられる。
【0136】
したがって、電子ペン1Aでは、この矩形波モードにおいては、
図5~
図7を用いて前述したようにして、矩形波信号発生回路130からの矩形波信号Srが、モード切替回路150A、端子102を通じて、芯体11に供給される状態となる。そして、モード切替回路150Aには、トランス13の二次巻線13bの整流回路17で整流されて形成された高電圧HV(=HVr)が電源電圧として供給されて、矩形波信号Srが歪みなく、モード切替回路150Aを通じて芯体11に供給されるようにされる。
【0137】
このステップS122の次には、制御回路140Aは、送信モードの期間が終了したか否か判別し(ステップS123)、終了してはいないと判別したときには、処理をステップS122に戻して、送信モードを継続する。そして、ステップS123で、送信モードの期間が終了したと判別したときには、制御回路140は、処理を
図13のステップS116に戻し、電子ペン1Aを受信モードの状態とし、このステップS116以降の処理を繰り返す。
【0138】
[第2の実施形態におけるタブレット2Sの構成例]
次に、この第2の実施形態の電子ペン1Aと共に使用されるタブレットの構成例を、正弦波タイプのタブレット2SAの場合を例に取って説明する。
【0139】
図15は、この第2の実施形態の電子ペン1Aと共に使用する正弦波タイプのタブレット2SAの主要部の回路例を示す図である。この
図15の回路例において、
図9に示した第1の実施形態における正弦波タイプのタブレット2Sの回路例と同一部分には、同一参照符号を付与して、その説明は省略する。
【0140】
タブレット2SAは、
図15に示すように、位置検出センサ部21Sと、ペン指示検出回路22Sとに加えて、切替スイッチ回路23と、タイプ指定情報発生回路24とを備えている。タイプ指定情報発生回路24は、タブレット2Sが正弦波タイプであることを示すタイプ指定情報CMsを送出する。
【0141】
切替スイッチ回路23は、タイプ指定情報CMsの送信時と、電子ペン1Aからの正弦波信号Ssの受信時とで後述する制御回路220Aにより切り替えられるスイッチ回路であり、送信側端子TXは、タイプ指定情報発生回路24の出力端が接続され、受信側端子RXは、ペン指示検出回路22Sの増幅回路222に接続されている。そして、切替スイッチ回路23の共通端子Ctは、位置検出センサ部21Sとの間の入出力インターフェースである選択回路221に接続されている。
【0142】
選択回路221は、制御回路220Aからの制御信号に基づいて、タイプ指定情報CMsの送信時には、第1の導体群211Yおよび/または第2の導体群212Xの中の1本ずつの導体、あるいは複数本の導体を選択し、また、電子ペン1Aからの正弦波信号Ssの受信時には、第1の導体群211Yおよび第2の導体群212Xの中からそれぞれ1本の導体を選択するように制御される。なお、選択回路221は、第1の導体群211Yおよび第2の導体群212Xの中から複数本を同時に選択するようにしてもよい。
【0143】
制御回路220Aは、前述したように、切替スイッチ回路23を切り替えて、タブレット2SAにおいて送信モードと受信モードとを時分割で切り替える。そして、送信モードにおいては、制御回路220Aからの制御信号により、切替スイッチ回路23の共通端子Ctが送信側端子TXに接続され、タイプ指定情報発生回路24からのタイプ指定情報CMsが、この切替スイッチ回路23及び選択回路221を通じて、1本ずつの導体、あるいは複数本の導体に供給されて、電子ペン1Aに対して送信される。
【0144】
電子ペン1Aは、前述したようにして、このタイプ指定情報CMsを受信して、タブレット2SAが正弦波タイプであることを判別する。そして、電子ペン1Aは、前述したように、タブレット2SAの送信モードと受信モードとの切り替えに同期して、受信モードと送信モードとを切り替え、送信モードでは正弦波信号Ssをタブレット2SAに送信してくる。
【0145】
タブレット2SAの制御回路220Aは、電子ペン1Aの送信モードにおいては、受信モードとなっている。タブレット2SAの受信モードにおいては、制御回路220Aからの制御信号により、切替スイッチ回路23の共通端子Ctは受信側端子RXに接続され、電子ペン1Aから送られてくる正弦波信号Ssが、選択回路221で選択された位置検出センサ部21Sの導体から、スイッチ回路23を通じて、ペン指示検出回路22Sに入力され、上述の第1の実施形態で説明したようにして電子ペン1Aからの信号を検出して、電子ペン1Aにより指示された位置を検出するようにする。
【0146】
制御回路220Aは、内部のROMに格納されたプログラムによって、サンプルホールド回路225、AD変換回路226、選択回路221に、それぞれ制御信号を送出すると共に、切替スイッチ回路23に送信モードと受信モードとで切り替える切替制御信号を供給するように動作する。また、制御回路220Aは、AD変換回路226からのデジタルデータから、電子ペン1によって指示された位置検出センサ部21S上の位置座標を算出する。
【0147】
以上は、正弦波タイプのタブレット2SAの構成及び動作について、電子ペン1Aが正弦波モードのときの動作と併せて説明したが、矩形波タイプのタブレット2RAのペン指示検出回路22Rの構成及び動作も、ほぼ同様とすることができる。すなわち、矩形波タイプのタブレット2RAも、位置検出センサ部21Sと全く同様の位置検出センサ部21Rを備えると共に、矩形波タイプのタイプ指定情報CMrを発生するタイプ指定情報発生回路を備える。そして、矩形波モードの電子ペン1Aからの受信信号を処理して、位置検出を行うと共に、筆圧情報及びサイドスイッチ情報、識別情報などを検出するためのペン指示検出回路22Rを備える。
【0148】
なお、上述の説明では、タブレットからのタイプ指定情報としては、正弦波タイプと矩形波タイプのそれぞれを指定するタイプ指定情報CMsとCMrとを用意するようにしたが、いずれか一方のみが用意されていてもよい。例えば、正弦波タイプのタブレットはタイプ指定情報CMsを送出するが、矩形波タイプのタブレットはタイプ指定情報を送出しない場合、電子ペンは、タイプ指定情報CMsを受信しなかった場合には、タブレットは矩形波タイプと判断する。逆に、矩形波タイプのタブレットのみが、タイプ指定情報CMrを送出する場合であってもよい。
【0149】
[第2の実施形態の効果]
上述の第2の実施形態の電子ペン1によれば、タブレット2Sからのタイプ指定情報CMsまたはタブレット2Rからのタイプ指定情報CMrを検出することで、何れのタイプのタブレットと静電結合して位置指示することが可能になったかを判別して、自動的に、タブレット2Sまたはタブレット2Rのタイプに応じたモードに切り替えられる。したがって、使用者は、タブレットがいずれのタイプのものかを把握しなくてもよく、非常に便利である。
【0150】
[第3の実施形態]
この第3の実施形態は、第2の実施形態の変形例である。すなわち、以下に説明する第3の実施形態の電子ペンは、上述した第2の実施形態の電子ペン1Aとは、芯体側部材の構成及びそれに伴う部分の構成が異なる。そして、第3の実施形態の電子ペンのその他の構成は、第2の実施形態の電子ペン1Aと同様である。
図16は、この第3の実施形態の電子ペン1Bの電気的な構成例を示すものである。この
図16の例において、
図12に示した第2の実施形態の電子ペン1Aと同一部分には、同一の参照符号を付してある。
【0151】
上述の第2の実施形態の電子ペン1Aと、タブレット2SAまたは2RAとの間で信号を送受する芯体側部材としては、導電性の芯体11とした。このため、第2の実施形態の電子ペン1Aでは、送信モードと受信モードとを時分割で切り替えて、芯体11を送信用と受信用とで兼用するようにした。
【0152】
これに対して、第3の実施形態の電子ペン1Bでは、
図16に示すように、芯体側部材を、導電性の芯体11と導電性のスリーブ部材31とで構成するようにして、導電性の芯体11と導電性のスリーブ部材31との一方を送信用とし、他方を受信用とするように構成する。
【0153】
スリーブ部材31は、詳細な図示は省略するが、電子ペン1Bの筒状の筐体のペン先側に、芯体11とは電気的に絶縁された状態で設けられる。すなわち、スリーブ部材31は、外形が円錐台形状であると共に、円錐台形状の中心線方向(軸心方向)に直交する方向の断面がリング状形状を有していて、内部が中空の部材である。そして、芯体11が、
図16に示すように、このスリーブ部材31の中空部内を挿通して、その先端部11aが、電子ペン1Bの筐体のペン先側に突出するように構成されている。
【0154】
図16の例では、芯体11は、第1の実施形態の電子ペン1と同様に、送信専用とされ、スリーブ部材31は、タブレット2SAまたはタブレット2RAからのタイプ指定情報CMsまたはCMrの受信用とされている。そして、スリーブ部材31でタブレット2SAまたはタブレット2RAから受信したタイプ指定情報CMsまたはCMrは、IC100の端子110を通じて、受信信号処理回路160に供給される構成とされる。
【0155】
なお、スリーブ部材31を送信用とし、芯体11をタブレット2SAまたはタブレット2RAからのタイプ指定情報CMsまたはCMrの受信用とするように構成することもできる。
【0156】
そして、この第3の実施形態の電子ペン1Bでは、送信モードと受信モードとを時分割で切り替える必要はない。そのため、この第3の実施形態のモード切替回路150Bは、第1の実施形態の電子ペン1のモード切替回路150と同様の構成とされ、受信側端子Rは備えず、共通端子Cmが、正弦波モード端子Tsと、矩形波モード端子Trとのいずれかに接続されるように構成される。そして、この第3の実施形態の電子ペン1Bでは、制御回路140Bのモード切替信号生成回路141Bは、第1の実施形態の電子ペン1と同様に、モード切替信号SWのみを生成する。モード切替回路150Bは、このモード切替信号SWにより切り替えられる。
【0157】
すなわち、受信信号処理回路160の受信信号判別回路162では、スリーブ31からの受信信号をアンプ161を通じて受けて、タブレット2SAからのタイプ指定情報CMsを受信したか、またはタブレット2RAからのタイプ指定情報CMrを受信したかを判別する。そして、この受信信号判別回路162からの判別結果に応じて、モード切替信号生成回路141Bは、モード切替信号SWを生成する。そして、このモード切替信号SWにより、電子ペン1Bがタイプ指定情報CMsを受信したと判別したときには、モード切替回路150Bは、共通端子Cmが正弦波モード端子Tsに接続され、電子ペン1Bがタイプ指定情報CMrを受信したと判別したときには、共通端子Cmが矩形波モード端子Trに接続される。その他の構成は、第2の実施形態の電子ペン1Aと同様とされる。
【0158】
この第3の実施形態の電子ペン1Bは、送信モードと受信モードとを時分割で切り替える必要がなく、単に、送信情報生成回路110で生成された送信信号を、タブレット2Sまたはタブレット2Rの受信モード期間に送出するようにタイミング制御するだけで良いので、第2の実施形態の電子ペン1Aに比較して、モード管理処理が簡単になるという効果がある。
【0159】
[第4の実施形態]
以上の第2の実施形態及び第3の実施形態では、電子ペンが信号発信回路から正弦波信号と矩形波信号のいずれを送出するかを指定する指定入力を受け付ける入力受付部は、タブレット2SAまたはタブレット2RAからのタイプ指定情報CMsまたはCMrを受信する芯体側部材としたが、入力受付部は、上述の構成に限られるものではない。
【0160】
第4の実施形態は、タブレット2SAまたはタブレット2RAからのタイプ指定情報CMsまたはCMrを受信する入力受付部を芯体側部材以外とした場合の一例である。
図17に、この第4の実施形態の場合の電子ペン1Cと、正弦波タイプのタブレット2SC、矩形波タイプのタブレット2RCとの要部の構成例を示す。
【0161】
この第4の実施形態の一例の電子ペン1Cと、タブレット2SCまたはタブレット2RCとは、無線通信により、タイプ指定情報CMsまたはCMrを送受信する。そのため、電子ペン1Cには無線通信回路41が設けられ、タブレット2SCまたはタブレット2RCには、電子ペン1Cの無線通信回路41と無線通信するための無線通信回路42が設けられる。
【0162】
すなわち、この第4の実施形態の電子ペン1Cでは、入力受付部は、無線通信回路41で構成されている。この実施形態における無線通信回路41及び無線通信回路42としては、例えばブルートゥース(登録商標)規格の無線通信を行う回路で構成することができる。無線通信回路41及び無線通信回路42は、この例の構成に限られるものではなく、また、電波に限らず、赤外線などの光を用いる他の無線通信手段で構成することもできる。
【0163】
この第4の実施形態においては、タブレット2SCまたはタブレット2RCの無線通信回路42は、タイプ指定情報CMsまたはCMrを変調して無線送信用に変換して、電子ペン1Cの無線通信回路41に対して送信する。電子ペンICの無線通信回路41は、受信した信号を復調して、タイプ指定情報CMsまたはCMrを復元し、IC100の端子110を通じて受信信号処理回路160に供給する。
【0164】
電子ペン1Cでは、上述した第2の実施形態または第3の実施形態の電子ペン1Aまたは1Bと同様にして、受信信号処理回路160の受信信号判別回路162で、受信した信号がタイプ指定情報CMsまたはCMrのいずれであるかを判別し、その判別結果に基づいて、正弦波モードまたは矩形波モードに切り替えられる。
【0165】
これにより、この第4の実施形態では、無線通信回路41と無線通信回路42との間で無線通信が可能となる状態となると、電子ペン1Cは、無線通信している相手のタブレットが、タブレット2SCであるか、タブレット2RCであるかに対応した正弦波モードまたは矩形波モードのいずれかに自動的に切り替えられる。
【0166】
[第2の実施形態~第4の実施形態の変形例]
なお、上述の第2の実施形態~第4の実施形態の説明では、タブレット2SA,2SB,2SCまたはタブレット2RA,2RB,2RCからの送信信号は、タイプ指定情報CMsまたはタイプ指定情報CMrのみとしたが、タイプ指定情報CMsまたはタイプ指定情報CMrに加えて、その他の信号を、電子ペン1A,1B,1Cに送信するようにしてもよい。その他の信号には、タブレット2SA,2SB,2SCまたはタブレット2RA,2RB,2RCの受信モードの期間の先頭のタイミングを示す情報を含ませてもよい。
【0167】
[第5の実施形態]
第5の実施形態の電子ペンは、上述の第1、第2、第3、第4の実施形態の電子ペン1,1A,1B,1Cよりも、更に、電源回路12を構成する一次電池あるいは二次電池の電力消費を少なくすることができるように構成したものである。
【0168】
上述の実施形態の電子ペン1,1A,1B,1Cにおける正弦波モードにおいて生成される正弦波信号Ssは、トランス13の一次巻線13aと共振用キャパシタ14との共振回路により定まる周波数となるが、この場合の共振回路には、浮遊容量の分も含まれたものとなっている。そして、前記共振回路を備える発振回路120Rで生成される正弦波信号Ssを継続させるようにするためのスイッチ回路121の切り替え時点は、前述したように、正弦波信号Ssの電圧がゼロとなるタイミング時点であり、電力ロスが非常に少ない。
【0169】
しかしながら、上述の第1、第2、第3、第4の実施形態の電子ペン1,1A,1B,1Cにおいては、正弦波モードと矩形波モードとの切り替えに対応して、共振用キャパシタ14を、トランス13の一次巻線13aに並列に接続する状態と、一次巻線13aとの並列接続を切断する状態とを切り替えるスイッチ回路122を設けられている。この切替スイッチ回路122は、例えば2個のトランジスタで構成することができ、正弦波モードにおいても、切替スイッチ回路122の共通端子c及び切替端子b間を構成するトランジスタのオン抵抗が存在する状態となる。このため、正弦波モードにおいても、このスイッチ回路122におけるオン抵抗における電力ロスが発生する。
【0170】
また、上述の第1、第2、第3、第4の実施形態の電子ペン1,1A,1B,1Cにおける矩形波モードにおいては、スイッチ回路121は、トランス13で生じる電圧が零ボルトになる時点で切り替えられるものではないので、浮遊容量が存在すると、大きな電力ロスが生じることになる。
【0171】
この第5の実施形態は、以上の問題を解決して、電力ロスが非常に少ない電子ペンを構成することを企図したものである。
図18は、この第5の実施形態の電子ペン1Dの電気的な構成例を示す図である。この
図18の例は、
図12に示した第2の実施形態の電子ペン1Aの電気的な構成例の場合と同様に、芯体11を通じてタブレット2SAまたはタブレット2RAの位置検出センサ21Sまたは位置検出センサ21Rからのタイプ指定情報CMsまたはCMrを受信する場合に適用した場合である。この
図18において、
図12に示した第2の実施形態の電子ペン1Aと同一の部分については、同一参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0172】
この
図18に示すように、この第5の実施形態の電子ペン1Dでは、切替スイッチ回路122は設けず、共振用キャパシタ14は、トランス13の一次巻線13aに並列に固定的に接続される。これに伴い、IC100の端子106は削減されている。
【0173】
また、この第5の実施形態の電子ペン1Dの制御回路140Dにおいては、上述の第2の実施形態の矩形波用制御信号生成回路143とは異なる矩形波用制御信号生成回路143Dが設けられる。この矩形波用制御信号生成回路143Dには、整流回路17の出力である高電圧HV(=HVr)が供給されると共に、スイッチ回路121と、トランス13の一次巻線13aとの接続点P1に矩形波モードにおいて得られる電圧VC(=VCr)が供給される。その他は、第2の実施形態の電子ペン1Aと同様に構成されている。
【0174】
この第5の実施形態の電子ペン1Dにおけるモード切替回路150Aの制御動作、また、受信モードにおける処理動作は、第2の実施形態の電子ペン1Aと全く同様である。
【0175】
そして、送信モードが正弦波モードの場合には、第2の実施形態の電子ペン1Aと同様である。この場合に、電子ペン1Dでは、切替スイッチ回路122が存在しないので、第2の実施形態の電子ペン1の場合のスイッチ回路122におけるオン抵抗は存在しない。このため、この第5の実施形態の電子ペン1Dの正弦波モードにおいては、スイッチ回路121における、正弦波電圧VCが零ボルトとなるタイミングでの切り替えによる発振回路120Rの継続発振制御動作により、電力ロスを生じることなく、正弦波信号Ssを生成することができると共に、整流回路17から高電圧HV(=HVs)を得ることが可能である。
【0176】
次に、この第5の実施形態の電子ペン1Dにおける矩形波用制御信号生成回路143Dの構成例及び送信モードが矩形波モードであるときの動作について、
図19及び
図20を参照しながら説明する。
【0177】
この第5の実施形態の電子ペン1Dにおいては、矩形波モードにおいても、トランス13の一次巻線13aには共振用キャパシタ14が並列に接続されていることから、トランス13の一次巻線13aとスイッチ回路121との接続点P1には、
図20(A)に示すような正弦波状の電圧VCrが得られる。
【0178】
この第5の実施形態の電子ペン1Dにおける矩形波用制御信号生成回路143Dは、
図3に示した正弦波用制御信号生成回路142と同様の回路構成のゼロクロス検出回路1431と、遅延回路1432と、パルス発生回路1433とを備えると共に、パルス幅制御回路1434を備える。ゼロクロス検出回路1431には、接続点P1に得られる電圧VCrが入力される。また、パルス幅制御回路1434には、整流回路17からの高電圧HV(=HVr)が入力される。
【0179】
ゼロクロス検出回路1431と、遅延回路1432とは、正弦波用制御信号生成回路142のゼロクロス検出回路1421と、遅延回路1422と同様に構成される。パルス発生回路1433は、スイッチング信号SWrD(
図20(B)参照)を発生するもので、固定のパルス幅のパルスを発生するのではなく、パルス幅制御回路1434からの制御信号により、パルス幅が可変される構成を備える。この場合に、パルス発生回路1433から出力されるスイッチング信号SWrDのパルス幅は、正弦波用制御信号生成回路142から出力されるスイッチング信号SWsのパルス幅よりも大きいものとされる。
【0180】
スイッチ回路121は、この矩形波用制御信号生成回路143Dからのスイッチング信号SWrDのパルス幅期間でオンとされ、その他の期間ではオフとされる。そして、パルス幅制御回路1434は、パルス発生回路1433からのスイッチング信号SWrDのパルス幅を制御することにより、高電圧HVが、矩形波モードの高電圧HVrとなるように、スイッチ回路121のオン時間を制御するようにする。
【0181】
すなわち、
図20(A)及び(B)に示すように、この第5の実施形態の電子ペン1Dにおいても、矩形波モードにおいては、矩形波用制御信号生成回路143Dからのスイッチング信号SWrDは、
図20(A)及び(B)に示すように、接続点P1に得られる正弦波状電圧VCrのゼロクロス時点Zc2から、正弦波モード時の正弦波信号Ssの周期Tの1/4の遅延時間DLだけ遅れた時点でパルス幅期間が立ち上るので、正弦波状電圧VCrが零ボルトになる時点でスイッチ回路121はオンとなる。
【0182】
しかし、この矩形波モードにおいては、スイッチング信号SWrDのパルス幅期間は、正弦波モード時のスイッチング信号SWsのパルス幅期間よりも長いので、スイッチング信号SWrDのパルス幅期間に亘って零ボルトが継続し、
図20(A)に示すように、正弦波状電圧VCrは、正弦波が変形したような波形となる。
【0183】
そして、スイッチング信号SWrDのパルス幅期間が終了して、スイッチ回路121がオフになると、
図20(A)に示すように、正弦波状電圧VCrは、正弦波モードの際の正弦波電圧VCよりも、スイッチング信号SWrDのパルス幅期間分に応じた分だけ、高振幅の波形となる。すなわち、正弦波状電圧VCrは、
図20(A)において、斜線を付して示す分だけ、電圧2VDDよりも高くなる。したがって、この高振幅の波形の正弦波状電圧VCrがトランス13の一次巻線13aと二次巻線13bとの巻き数比に応じて昇圧され、整流回路17で整流されることにより、正弦波モード時の高電圧HV(=HVs)よりも高い矩形波モードにおける高電圧HV(=HVr)が生成される。
【0184】
そして、前述もしたように、当該生成された高電圧HVが、矩形波用制御信号生成回路143Dのパルス幅制御回路1434に供給される。矩形波用制御信号生成回路143Dのパルス幅制御回路1434は、入力された高電圧HVが矩形波モード時の高電圧HVrとなるように、スイッチング信号SWrDのパルス幅期間を制御する。これにより、
図20(B)に示すスイッチ回路121のオン期間の長さが制御され、それに応じて、
図20(A)の正弦波状電圧VCrの斜線を付して示す分の大きさ(面積)が制御される。その結果、整流回路17から出力される高電圧HVが矩形波モード時の高電圧HVrとなるように制御される。
【0185】
この第5の実施形態の電子ペン1Dにおいては、切替スイッチ回路122が存在しないために、正弦波モードにおいては、切替スイッチ回路122におけるオン抵抗のための電力ロスがなくなり、低消費電力化に寄与する。
【0186】
そして、この第5の実施形態の電子ペン1Dにおいては、矩形波モードにおいても、スイッチ回路121は、正弦波状電圧VCrが零ボルトになるタイミングで切り替えられるために、電力ロスが殆ど無くなる。よって、この第5の実施形態の電子ペン1Dによれば、電源回路12の一次電池あるいは二次電池の電力消費を最小限に抑えることができて、電池寿命を長寿命化することができる。
【0187】
なお、
図18に示した第5の実施形態の電子ペン1Dにおいては、正弦波用制御信号生成回路142と、矩形波用制御信号生成回路143Dとはそれぞれ個別に設けるようにした。しかし、上述の説明から明らかなように、正弦波用制御信号生成回路142と、矩形波用制御信号生成回路143Dとでは、ゼロクロス検出回路1421とゼロクロス検出回路1431、また、遅延回路1422と遅延回路1432は、それぞれ同じもので良い。よって、第5の実施形態においては、正弦波用制御信号生成回路142と、矩形波用制御信号生成回路143Dとは、ゼロクロス検出回路と遅延回路とを共用する構成とすることで、より構成を簡単にすることができる。
【0188】
[その他の実施形態または変形例]
上述の実施形態では、電子ペンのIC化された信号処理回路は、モード切替回路150、150A,150B,150C,150DをIC100内に含むものとして説明したが、このモード切替回路150、150A,150B,150C,150Dは、IC100の外付け部品としてもよい。また、上述の実施形態では、電子ペンの信号処理回路の大部分は、IC化されたものとして説明したが、IC化することなく、ディスクリート部品からなる電子回路として構成してもよいことは言うまでもない。
【0189】
また、上述の実施形態においては、正弦波信号発生回路120は、他励式の発振回路の構成としたが、この発明は、これに限られるものではない。また、整流回路17の構成も、上述の実施形態の構成に限られるものではないことは勿論である。
【0190】
また、上述の実施形態においては、第1の信号の波形が正弦波、第2の信号の波形が矩形波としたが、第2の信号の波形は、矩形波に限らず、その他の波形、例えば三角波やその他の波形であってもよい。また、第1の信号の波形も、正弦波に限らず、その他の波形であってもよい。
【0191】
また、上述の実施形態においては、送信情報により正弦波信号をASK変調信号あるいはOOK変調信号に変換するためには、送信情報生成回路110からの信号により、正弦波制御用信号生成回路143を制御するようにしたが、この構成に限られる訳ではない。例えば、送信情報生成回路110は、正弦波制御用信号生成回路143を制御せず、その代わりに、トランス13の二次巻線13b側に連続波信号として得られる正弦波信号に対する変調回路(ASK変調またはOOK変調)を設け、送信情報を、当該変調回路に供給することで、当該変調回路からASK変調信号またはOOK変調信号を得るように構成してもよい。
【符号の説明】
【0192】
1,1A,1B,1C,1D…電子ペン、2S,2SA…正弦波タイプのタブレット、2R,2RA…矩形波タイプのタブレット、11…芯体、12…電源回路、13…トランス、14…共振用キャパシタ、17…整流回路、30…スライド操作スイッチ、41,42…無線通信回路、120…正弦波信号発生回路、130…矩形波信号発生回路、140,140A,140B,140D…制御回路、150,150A…モード切替回路、160…受信信号処理回路、162…受信信号判別回路