(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】粘度測定装置及び粘度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 11/12 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01N11/12
(21)【出願番号】P 2022111668
(22)【出願日】2022-07-12
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 龍田
(72)【発明者】
【氏名】楊 杰舜
(72)【発明者】
【氏名】蕭 存佑
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-012705(JP,A)
【文献】特開平09-243542(JP,A)
【文献】特開平05-034256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0178796(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109253945(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物質及び球体を収容するように配置される測定容器と、
前記測定容器の片側に設けられ、前記測定容器の被測定映像を取得するように配置され、且つ前記被測定映像に対して分析を行う光学検出処理装置と、を備え、
前記光学検出処理装置は
、
前記測定容器の
前方に設けられ、前記測定容器に対して前記被測定映像を取得するように配置される光学検出器と、
前記光学検出器に信号接続され、前記被測定映像を処理及び分析するように配置される処理ユニットと、
前記処理ユニットと前記光学検出器に信号接続され、前記光学検出器の取得した前記被測定映像、又は前記処理ユニットにより処理された前記被測定映像を記憶するように配置されるデータベースと、
前記光学検出器及び前記処理ユニットに信号接続され、前記光学検出器と前記処理ユニットの動作を制御するように配置される制御ユニットと、
前記光学検出器、前記処理ユニット及び前記制御ユニットに電気的に接続され、前記光学検出器、前記処理ユニット及び前記制御ユニットの必要な電力を提供するように配置される給電ユニットと、
前記光学検出器と共に前記測定容器の対向する両側に位置し、前記制御ユニットと前記給電ユニットに電気的に接続され、且つ、光を照射するように前記測定容器の後方に位置し、背景を過度露出させて、前記光学検出器の取得した映像を顕在化させて比較する発光ユニットと、
を含む粘度測定装置。
【請求項2】
前記光学検出処理装置は、前記処理ユニット、前記制御ユニット及び前記給電ユニットに信号接続され、前記処理ユニットの分析結果を表示するように配置される表示装置を更に含む請求項1に記載の粘度測定装置。
【請求項3】
前記測定容器は、光透過性容器であり、且つその表面に複数の目盛りが設けられる請求項1に記載の粘度測定装置。
【請求項4】
前記被測定映像は、前記被測定物質における前記球体の移動映像を含む動的映像であり、前記処理ユニットは、前記動的映像の撮影時間に基づいて前記被測定物質の液体粘度を換算するように配置される請求項1に記載の粘度測定装置。
【請求項5】
前記光学検出器は、前記球体の動作を検出するように配置される動的検出素子を含む請求項
4に記載の粘度測定装置。
【請求項6】
前記被測定映像は、前記被測定物質における前記球体の画面を含む静止映像であり、前記処理ユニットは、前記静止映像と前記データベースの基準映像を照合して前記球体が前記測定容器の内壁に当たるか否かを判断する請求項1に記載の粘度測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の粘度測定装置を提供する工程と、
前記被測定物質を前記測定容器に充填する工程と、
前記球体を前記被測定物質が収容された前記測定容器に投入する工程と、
前記被測定映像として、前記光学検出器によって前記球体が前記測定容器を移動する映像を取り込む工程と、
前記被測定物質の液体粘度を取得するように、前記処理ユニットによって前記被測定映像を分析する工程と、を含む粘度測定方法。
【請求項8】
前記被測定映像は、前記被測定物質における前記球体の移動映像を含む動的映像であり、前記処理ユニットは、前記動的映像の撮影時間に基づいて前記被測定物質の液体粘度を換算するように配置される請求項
7に記載の粘度測定方法。
【請求項9】
前記光学検出器は、前記球体の動作を検出するように配置される動的検出素子を含む請求項
7に記載の粘度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度測定技術に関し、特に、光学式粘度測定装置及びそれを用いた粘度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハチミツや水をカップに注ぐ経験がある方々がいるが、液体はその性質によって異なる流速を有する。例えば、ハチミツを注ぐ時の流速は遅いが、水を注ぐ時の流速は速い。或いは、オリーブ油を用いて野菜を煮る時、鍋の温度が高いほど油が滑りやすくなる。このような現象があるのは、異なる液体、又は同一の液体が異なる温度で異なる粘度を有するからである。粘度は、液体が例えばせん断応力(shear stress)、引張応力(tensile stress)のような力を受けて、流動や変形に抗するために生成する尺度である。
【0003】
液体は、巨視的に見ると、温度が高くなると粘度が低下する一方、温度が低くなると粘度が増加する。また、微視的に見ると、液体の温度上昇は分子の運動速度を増加することに等しいので、分子間の吸引力を克服しやすく、粘度の低下を招く。一方、粘度が分子間吸引力に影響されるため、分子間吸引力を多く確立することができる分子は、粘度が高い。また、分子の大きさや形状も粘度に影響を与える。
【0004】
よく見られる粘度測定装置として、例えば、中華民国発明公開第201205061号に開示された粘度測定装置や、米国特許第5287732号及び第6240770号に開示された回転式粘度計がある。しかし、これらの粘度測定装置は、操作しにくいだけでなく、装置自体のコストが高価で、且つ精度が悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な測定精度と測定速度を有する粘度測定装置及び粘度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粘度測定装置は、被測定物質及び球体を収容するように配置される測定容器と、測定容器の前方に設けられ、測定容器の被測定映像を取得するように配置され、且つ被測定映像に対して分析を行う光学検出処理装置と、を備える。光学検出処理装置は、測定容器の片側に設けられ、測定容器に対して被測定映像を取得するように配置される光学検出器と、光学検出器に信号接続され、被測定映像を処理及び分析するように配置される処理ユニットと、処理ユニットと光学検出器に信号接続され、光学検出器の取得した被測定映像、又は処理ユニットにより処理された被測定映像を記憶するように配置されるデータベースと、光学検出器及び処理ユニットに信号接続され、光学検出器と処理ユニットの動作を制御するように配置される制御ユニットと、光学検出器、処理ユニット及び制御ユニットに電気的に接続され、光学検出器、処理ユニット及び制御ユニットの必要な電力を提供するように配置される給電ユニットと、光学検出器と共に測定容器の対向する両側に位置し、制御ユニットと給電ユニットに電気的に接続され、且つ、光を照射するように測定容器の後方に位置し、背景を過度露出させて、光学検出器の取得した映像を顕在化させて比較する発光ユニットと、を含む。
【0007】
本発明の一実施例によれば、前記光学検出処理装置は、処理ユニット、制御ユニット及び給電ユニットに信号接続され、処理ユニットの分析結果を表示するように配置される表示装置を更に含む。
【0009】
本発明の一実施例によれば、前記測定容器は、光透過性容器であり、且つその表面に複数の目盛りが設けられる。
【0010】
本発明の一実施例によれば、前記被測定映像は、被測定物質における球体の移動映像を含む動的映像であり、処理ユニットは、動的映像の撮影時間に基づいて被測定物質の液体粘度を換算するように配置される。
【0011】
本発明の一実施例によれば、前記光学検出器は、球体の動作を検出するように配置される動的検出素子を含む。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記被測定映像は、被測定物質における球体の画面を含む静止映像であり、処理ユニットは、静止映像とデータベースの基準映像を照合して球体が測定容器の内壁に当たるか否かを判断する。
【0013】
本発明の粘度測定方法は、前記粘度測定装置を提供する工程と、被測定物質を測定容器に充填する工程と、球体を被測定物質が収容された測定容器に投入する工程と、被測定映像として、光学検出器によって球体が測定容器を移動する映像を取り込む工程と、被測定物質の液体粘度を取得するように、処理ユニットによって被測定映像を分析する工程と、を含む。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記被測定映像は、被測定物質における球体の移動映像を含む動的映像であり、処理ユニットは、動的映像の撮影時間に基づいて被測定物質の液体粘度を換算するように配置される。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記光学検出器は、球体の動作を検出するように配置される動的検出素子を含む。
【0016】
上述から分かるように、本発明の粘度測定装置は、主に、光学検出器によって被測定物質における球体の移動過程を検出し、且つ映像分析の方法により被測定物質の粘度を算出し、このため、測定の全体精度を向上させることができる。一方、本発明の全体構成は、従来技術に比べて簡略化され、このため、操作しやすく且つ装置コストが低いというメリットを有する。
本発明の上記及び他の目的、特徴、メリット及び実施例をより明確に理解するために、添付図面の説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による粘度測定装置を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による粘度測定装置における光学検出処理装置を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による粘度測定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態による粘度測定装置を示す装置模式図である
図1、及び本発明の一実施形態による粘度測定装置における光学検出処理装置を示すブロック図である
図2を同時に参照する。粘度測定装置100は、測定容器200及び光学検出処理装置300を備える。測定容器200は、被測定物質S1及び球体A1を収容するように配置される。一実施例において、測定容器200は光透過性容器であり、且つ測定容器200の表面に複数の目盛り201が設けられ、これらの目盛り201は、球体A1が被測定物質S1を移動する距離を示すように配置され、又はこれらの目盛り201がそれぞれ測定容器200の上端と下端に接近する両方を、開始位置及び終点位置のマークとすることができる。光学検出処理装置300は、測定容器200の片側に設けられ、測定容器200の被測定映像を取得するように配置され、且つ被測定映像に対して分析を行い、さらに測定容器200中の被測定物質S1の液体濃度を算出する。
【0019】
図1及び
図2を参照すると、光学検出処理装置300は、光学検出器310、処理ユニット320、データベース330、制御ユニット340、給電ユニット350及び表示装置360を備える。ここで、光学検出器310、処理ユニット320、制御ユニット340及び表示装置360は、それぞれ、給電ユニット350に電気的に接続され、且つ給電ユニット350は、主に、光学検出器310、処理ユニット320、制御ユニット340及び表示装置360の動作に必要な電力を提供することができる。
【0020】
図1に示すように、光学検出器310は、測定容器200の片側に設けられ、測定容器200に対して被測定映像を取得するように配置される。一実施例において、光学検出器310は、被測定映像として、球体A1が測定容器200中の被測定物質S1を移動する動的映像又は静止映像を取得することができるカメラであってもよい。ここで、動的映像は、カメラが録画した球体A1が測定容器200中の被測定物質S1において初期位置から終点位置まで移動する映像である。静止映像は、カメラが撮影した測定容器200中の被測定物質S1における球体A1の複数枚の写真である。
【0021】
図1及び
図2に示すように、本実施形態による粘度測定装置100は、発光ユニット400を更に備える。発光ユニット400は、光学検出器310と共にそれぞれ測定容器200の対向する両側に位置し、且つ制御ユニット340と給電ユニット350に電気的に接続される。具体的には、光学検出器310は、撮影するように、測定容器200の前方に設けられ、発光ユニット400は、光を照射するように、測定容器200の後方に位置する。発光ユニット400が測定容器200の後方に設けられて光を照射する目的は、主に、背景を過度露出させて、光学検出器310の取得した映像を顕在化させて比較することであり、被測定物質S1が光透過性測定容器200に収容される時、発光ユニット400の照射により光学検出器310の検出時の被測定物質S1における微小気泡の影響を回避することができる。他の実施例において、測定容器200における球体A1の動作を検出するように、光学検出器310は、カメラ及び動的検出素子、例えば、赤外線又はレーザーセンサを含んでもよい。
【0022】
図2に示すように、処理ユニット320は、光学検出器310に信号接続される。処理ユニット320は、光学検出器310の取得した被測定映像を処理及び分析するように配置される。いくつかの例において、処理ユニット320は、映像処理の方法により被測定映像を処理してもよい。データベース330は、処理ユニット320と光学検出器310に信号接続され、光学検出器310の取得した被測定映像、処理ユニット320により処理された被測定映像、参考や比較するための複数の基準映像、又はその他の、例えば球体A1の密度と重量及び被測定物質S1の密度、温度等の他のパラメータデータを記憶するように配置される。具体的に言えば、被測定映像が、球体A1が被測定物質S1を移動する動的映像を含む場合、処理ユニット320は、動的映像の撮影時間及び被測定物質S1における球体A1の移動距離に基づいて被測定物質S1の液体粘度を換算するように配置される。被測定映像が被測定物質S1における球体A1の複数の静止映像を含む場合、処理ユニット320は、静止映像とデータベース330の基準映像を照合して球体A1が測定容器200の内壁に当たるか否かを判断するように配置され、これにより、測定ミスの可能性のあるデータを排除する。他の実施例において、処理ユニット320は、複数枚の静止映像の撮影時間及び被測定物質S1における球体A1の移動距離に基づいて被測定物質S1の液体粘度を換算してもよい。他の応用形態において、操作者は、データベース330における被測定映像を再生することにより、球体A1が測定容器200の内壁に当たるか否かを判断することもできる。
【0023】
図2に示すように、制御ユニット340は、光学検出器310及び処理ユニット320に信号接続される。制御ユニット340は、光学検出器310と処理ユニット320の動作を制御するように配置され、例えば光学検出器310を開閉し、又は、処理ユニット320を設定する。具体的な例において、制御ユニット340は、コンピュータの操作インタフェースであってもよい。表示装置360は、処理ユニット320の被測定物質S1の粘度の分析結果と、全体の測定過程における関連情報とを表示するように配置される。
【0024】
また、本発明の一実施形態による粘度測定方法を示すフローチャートである
図3と
図1を同時に参照する。本発明は、また、以下の工程を含む粘度測定方法500を提供する。まず、工程510を行い、
図1及び
図2に示す粘度測定装置100を提供する。次に、工程520を行い、被測定物質S1を測定容器200に充填する。その後、工程530を行い、球体A1を被測定物質S1が収容された測定容器200に投入する。工程530を行うと同時に、工程540を行い、被測定映像として、光学検出器310によって球体A1が測定容器200を移動する映像を取り込む。被測定映像を取得した後、工程550を行い、被測定物質の液体粘度を取得するように、処理ユニット320によって被測定映像を分析する。異なる被測定物質S1は異なる特性及び密度等の特性を有するため、球体A1を被測定物質S1に投入した後、球体A1が測定容器200内の最高点から最低点まで受けた被測定物質S1からの抵抗力も異なり、このため、移動速度が異なることもあるので、光学検出器310の撮影及び処理ユニット320の分析により、被測定物質S1の粘度を正確に算出することができる。
【0025】
以下の表1は、本発明の実施例による粘度測定装置によって被測定物質の粘度を測定することと、光学検出器を使用しないこととの比較を示す。ここで、実施例は、操作者が被測定物質を本発明の粘度測定装置100の測定容器200内に入れ、さらに制御ユニット340によって光学検出器310をオンにして被測定物質S1における球体A1の移動映像を取り込めれば、表示装置360から被測定物質S1の現在温度と粘度を知ることができる。一方、比較例は、操作者が球体の落下過程を目視で観察し、コードメータで球体の落下時間を算出し、さらに被測定物質の粘度を算出する。
【表1】
【0026】
上記表1から分かるように、本発明の実施例及び比較例を利用してそれぞれ3回の粘度測定試験を行ったが、比較例は、目視で球体落下過程を検出し、且つコードメータで記録された落下時間の変異率が実施例の測定試験より明らかに高いことを示す。このことは、本発明の実施形態による粘度測定装置及び粘度測定方法が高い精度を有することを示している。
【0027】
上述の本発明の実施形態から分かるように、本発明の粘度測定装置は、主に、光学検出器によって被測定物質における球体の移動過程を検出し、且つ映像分析の方法により被測定物質の粘度を算出し、このため、測定の全体精度を向上させることができる。一方、本発明の全体構成は、従来技術に比べて簡略化され、このため、操作しやすく且つ装置コストが低いというメリットを有する。
【0028】
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0029】
100 粘度測定装置
200 測定容器
201 目盛り
300 光学検出処理装置
310 光学検出器
320 処理ユニット
330 データベース
340 制御ユニット
350 給電ユニット
360 表示装置
400 発光ユニット
500 粘度測定方法
510 工程
520 工程
530 工程
540 工程
550 工程
A1 球体
S1 被測定物質