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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】細胞外小胞の固定および保持
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01N1/28 J
G01N1/28 F
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136685
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2020503951の分割
【原出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2022172233
(43)【公開日】2022-11-15
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】62/638,554
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/537,541
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508057896
【氏名又は名称】コーネル・ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】CORNELL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ティ・ジー・ペナ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0245809(US,A1)
【文献】特表2006-501485(JP,A)
【文献】特開2017-083451(JP,A)
【文献】特表2005-528612(JP,A)
【文献】特開2016-211925(JP,A)
【文献】特表2006-519376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0233706(US,A1)
【文献】E. VAN PELT-VERKUIL; ET AL,THE USE OF A CARBODIIMIDE-CONTAINING FIXATIVE FOR THE IMMUNOHISTOCHEMICAL 以下備考,HISTOCHEMISTRY,1981年,VOL:71,PAGE(S):187 - 194,DOI: 10.1007/BF00507823,DEMONSTRATION OF COAGULATION FACTOR VIII IN RAT VASCULAR TISSUE
【文献】The Use of a Carbodiimide-Containing Fixative for the Immunohistochemical Demonstration of Coagulati,Histochemistry,1981年,71,P187-194
【文献】MARCO RAGUSA; ET AL,MIRNA PROFILING IN VITREOUS HUMOR, VITREAL EXOSOMES AND SERUM FROM UVEAL MELANOMA PATIENTS: PATHOLOGICAL AND DIAGNOSTIC IMPLICATIONS,CANCER BIOLOGY & THERAPY,TAYLOR & FRANCIS,2015年,VOL:16, NR:9,PAGE(S):1387 - 1396,doi:10.1080/15384047.2015.1046021
【文献】BELLINGHAM S A; ET AL,EXOSOMES: VEHICLES FOR THE TRANSFER OF TOXIC PROTEINS ASSOCIATED WITH NEURODEGENERATIVE DISEASES?,FRONTIERS IN PHYSIOLOGY,2012年05月,VOL:3, NR:124,PAGE(S):1 - 12,DOI: 10.3389/fphys.2012.00124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 -37/00
G01N 33/48 -33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外小胞を含有する試料を用意する方法であって、
細胞外小胞を含有するがん組織または生物学的流体の試料を提供することと、
前記細胞外小胞を架橋によって固定するために前記試料を非可逆的架橋剤と接触させることと
を含み、
前記非可逆的架橋剤が、水溶性カルボジイミド、ハロゲン化シアンまたはこれらの混合物であるか、あるいは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドであるか、あるいは臭化シアン、フッ化シアン、塩化シアンまたはヨウ化シアンであり、
前記細胞外小胞が、エキソマー、エキソソーム、腔内小胞(ILV)、多小胞エンドソーム(MVE)、オンコソーム、アポトーシス小体、またはエンドソームまたは原形質膜に由来する小胞である、方法。
【請求項2】
前記細胞外小胞を架橋によってさらに固定するために、前記試料をアルデヒド含有固定剤と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的流体が、血液製剤、ゾル、懸濁液、ゲル、コロイド、流体、液体、血漿、プラスチック固体、懸濁液、ゲル、母乳、乳頭吸引液、尿、精液、羊水、脳脊髄液、硝子体液、房水、滑液、リンパ、胆汁、唾液、胆汁、耳垢(イヤーワックス)、乳び、糜粥、内リンパ、外リンパ、滲出液、糞便、射精液、胃酸、胃液、粘液、心膜液、腹水、胸水、膿、粘膜分泌物、皮脂(皮膚油)、漿液、恥垢、痰、汗、涙、膣分泌物、外科的廃棄物および嘔吐物から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的流体が、全血、血漿、血小板または血清である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記がん組織が、皮膚、骨、軟骨、腱、靭帯、椎間板、角膜、水晶体、半月板、毛、横紋筋、平滑筋、心筋、脂肪組織、線維組織、神経組織、結合組織、蝸牛、精巣、卵巣、胃、肺、心臓、肝臓、膵臓、腎臓、腸または眼である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記非可逆的架橋剤との前記接触および前記アルデヒド含有固定剤との前記接触と独立して、その前、後、またはこれと同時に、前記試料をさらなる架橋剤と接触させること
を含み、前記さらなる架橋剤が、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミドの誘導体、N,N-メチレンビスアクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、N,N-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、ホルムアルデヒドを含まない架橋剤、N-(1-ヒドロキシ-2,2-ジメトキシエチル)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ホルマリン固定液、ホルマールカルシウム、ホルマール生理食塩水、亜鉛ホルマリン(非緩衝)、Zenker固定液、Helly固定液、B-5固定液、Bouin液、Hollande液、Gendre液、Clarke液、Carnoy液、メタカン、アルコール性ホルマリンおよびホルモール酢酸アルコールからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋によって固定された細胞外小胞を画像化することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記画像化が、透過型電子顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法、低温電子顕微鏡法、双眼実体顕微鏡法、広視野顕微鏡法、偏光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、多光子顕微鏡法、微分干渉顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、レーザー走査型共焦点顕微鏡法、多光子励起顕微鏡法、光線顕微鏡法、超音波顕微鏡法、比色分析法、化学発光アッセイ、分光測光法、ポジトロン放射形断層撮影法、コンピュータ断層撮影法および磁気共鳴画像法のいずれかによって行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記画像化に基づいて前記試料中の前記細胞外小胞を検出すること
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記画像化に基づいて前記試料中の前記がんを検出することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記試料が臨床試料である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記臨床試料が、臨床薬で治療された患者からのものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
体液から用意する医学的な試料の液体生検のための方法であって、当該方法は、
細胞外小胞を架橋によって固定するために前記試料を非可逆的架橋剤と接触させることと、
前記細胞外小胞を疾患のバイオマーカーとして決定するために前記試料を画像化することと
を含み、
前記非可逆的架橋剤が、水溶性カルボジイミド、ハロゲン化シアンまたはこれらの混合物であるか、あるいは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドであるか、あるいは臭化シアン、フッ化シアン、塩化シアンまたはヨウ化シアンであり、
前記細胞外小胞が、エキソマー、エキソソーム、腔内小胞(ILV)、多小胞エンドソーム(MVE)、オンコソーム、アポトーシス小体、またはエンドソームまたは原形質膜に由来する小胞である、方法。
【請求項14】
前記体液が、血液製剤、全血、血漿、血小板、血清、母乳、乳頭吸引液、尿、精液、羊水、脳脊髄液、硝子体液、房水、滑液、リンパ、胆汁、唾液、胃液、粘液、心膜液または腹水から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患が、がん、炎症性疾患、感染症、変性疾患、病原体によって引き起こされる疾患、神経疾患または内部機能障害である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、臨床薬で治療された患者からのものである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年7月27日に出願された米国仮特許出願第62/537,541号および2018年3月5日に出願された米国仮特許出願第62/638,554号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所により与えられたUL1 TR000457-06の下で政府支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、非可逆的架橋剤、および任意にアルデヒド含有固定剤(aldehyde-containing fixative)を使用した細胞外小胞の固定方法に関する。この方法は、細胞外小胞の画像化ならびに疾患の診断または監視に利用できる。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
がんは主な死因であり(非特許文献1:Torreら、「A.Global Cancer Incidence and Mortality Rates and Trends--An Update」、Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.25:16~27(2016))、がんの早期診断およびその適切な特性評価が死亡率を低下させるために不可欠である(非特許文献2:McPhailら、「Stage at Diagnosis and Early Mortality from Cancer in England」、Br J Cancer S108~115(2015))。男性のがんの最も一般的な新規症例は前立腺がん(161,000人)、肺がん(116,900人)および結腸直腸がん(71,000人)である。女性については、がんの最も一般的な新規症例は乳がん(252,000人)、肺がん(105,510人)および結腸直腸がん(64,000人)である。2017年では、眼腫瘍の推定新規症例数は3,130人であり、推定死亡数は330人である。眼内腫瘍は他のがんよりほど流行性ではないが、眼組織および体液の研究が、転移の構造的メディエーターを画像化(イメージング)するための技術を開発するためのモデル系として眼を使用する機会となっている。いったんこれらの技術が確立されれば、これらの方法をより流行性のがんに適用することが可能となる。
【0005】
早期診断は死亡率を低下させるために不可欠であり、がん診断の究極の目標は非侵襲的スクリーニング検査である。ほとんどの腫瘍では、患者を痛みにさらす侵襲的外科的処置、コスト増加および合併症のリスクのため、組織生検が困難である。さらに、組織ベースの腫瘍プロファイルはサンプリングの偏りが生じやすく、腫瘍の不均一性のスナップショットのみを提供し、繰り返し取得することができない。この技術的制限に対する解決策は、血液または他の生物学的流体中の予測バイオマーカーを監視し、液体生検を実施することによって、がんを監視することである。腫瘍を検出および監視するための非侵襲的方法の開発が、がん研究および腫瘍学における主要な課題であり続けている。このプロジェクトの目標は、種々のがんの早期検出、監視または予後診断のために、液体生検(血液または他の生物学的流体)を使用して、がんから分泌されたバイオマーカーを非侵襲的に検出するプラットフォーム技術を開発することである。
【0006】
がんのバイオマーカーの潜在的供給源は、細胞外小胞(EV)であり、これは、ある細胞から別の細胞へのタンパク質、脂質および核酸などの生体分子の移動を介した細胞間コミュニケーションに関係している天然輸送ナノ小胞である(非特許文献3:Gyorgyら、「Membrane Vesicles, Current State-of-the-Art:Emerging Role of Extracellular Vesicles」、Cell Mol.Life Sci.68:2667~2688(2011);非特許文献4:Tramsら、「Exfoliation of Membrane Ecto-Enzymes in the Form of Micro-Vesicles」、Biochim.Biophys.Acta.645:63~70(1981);非特許文献5:Dvorakら、「Tumor Shedding and Coagulation」、Science 212:923~924、(1981))。多くの細胞型が、エキソマー(exomer)(約35nm)(非特許文献6:Zhangら、「Identification of Distinct Nanoparticles and Subsets of Extracellular Vesicles by Asymmetric Flow Field-Flow Fractionation」、Nat.Cell Biol.20:332~343(2018))、エキソソーム(40~100nm)、より大きなマイクロベシクル(100~10,000nm)またはアポトーシス小体(1~5μm)(非特許文献7:Hristovら、「Apoptotic Bodies From Endothelial Cells Enhance the Number and Initiate the Differentiation of Human Endothelial Progenitor Cells In Vitro」、Blood 104:2761~2766(2004))を、血液、脳脊髄液および尿などの体液に分泌する(非特許文献8:Raposoら、「Extracellular Vesicles:Exosomes, Microvesicles, and Friends」、J.Cell Biol.200:373~383(2013);非特許文献9:Zhaら、「Extracellular vesicles:An Overview of Biogenesis, Function, and Role in Breast Cancer」、Tumour Biol 39:1010428317691182(2017))。
【0007】
EVは、乳がん(非特許文献10:Lugaら、「Exosomes Mediate Stromal Mobilization of Autocrine Wnt-PCP Signaling in Breast Cancer Cell Migration」、Cell 151:1542~1556(2012);非特許文献11:Choら、「Exosomes From Breast Cancer Cells Can Convert Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells Into Myofibroblast-Like Cells」、Int J Oncol 40:130~138(2012);非特許文献12:Leeら、「Exosomes Derived From Mesenchymal Stem Cells Suppress Angiogenesis by Down-Regulating VEGF Expression in Breast Cancer Cells」、PLoS One 8:e84256(2013))、前立腺がん(非特許文献13:Nilssonら、「Prostate Cancer-Derived Urine Exosomes:A Novel Approach to Biomarkers for Prostate Cancer」、Br J Cancer 100:1603~1607(2009))、肺がん(非特許文献14:Wysoczynskiら、「Lung Cancer Secreted Microvesicles:Underappreciated Modulators of Microenvironment in Expanding Tumors」、Int J Cancer 125:1595~1603(2009);非特許文献15:Janowska-Wieczorekら、「Microvesicles Derived From Activated Platelets Induce Metastasis and Angiogenesis in Lung Cancer」、Int J Cancer 113:752~760(2005))および結腸直腸がん(非特許文献16:Jiら、「Proteome Profiling of Exosomes Derived From Human Primary and Metastatic Colorectal Cancer Cells Reveal Differential Expression of Key Metastatic Factors and Signal Transduction Components」、Proteomics 13:1672~1686(2013);非特許文献17:Silvaら、「Expression and Cellular Localization of MicroR A-29b and RAX, an Activator of the RNA-Dependent Protein Kinase (PKR), in the Retina of Streptozotocin-Induced Diabetic Rats」、Mo/ Vis 17:2228~2240(2011))を含むいくつかのがん(非特許文献18:Gattiら、「Microvesicles Derived From Human Adult Mesenchymal Stem Cells Protect Against Ischaemia-Reperfusi on-Induced Acute and Chronic Kidney Injury」、Nephrol Dial Transplant 26:1474~1483(2011);非特許文献19:Zomerら、「In Vivo Imaging Reveals Extracellular Vesicle-Mediated Phenocopying of Metastatic Behavior」、Cell 161:1046~1057(2015))、ならびに神経変性障害(非特許文献20:Bellinghamら、「Exosomes:Vehicles for the Transfer of Toxic Proteins Associated With Neurodegenerative Diseases?」Front Physiol.3:124(2012))の病態生理に関係している。
【0008】
EVはがん細胞の拡散を促進し、1)細胞の移動の促進、2)腫瘍微小環境の促進、および3)遠隔組織での前転移床(pre-metastatic alcove)の確立を含む、転移過程のさまざまな工程に関与している(非特許文献21:Tkachら「Communication by Extracellular Vesicles:Where We Are and Where We Need to Go」、Cell 164:1226~1232(2016))。さらに、EVは、前がん(非特許文献22:Lugaら、「Exosomes Mediate Stromal Mobilization of Autocrine Wnt-PCP Signaling in Breast Cancer Cell Migration」、Cell 151:1542~1556(2012))およびがん組織(非特許文献23:Nilssonら、「Prostate Cancer-Derived Urine Exosomes:A Novel Approach to Biomarkers for Prostate Cancer」、Br J Cancer 100:1603~1607(2009);非特許文献24:Rabinowitsら、「Exosomal MicroRNA:A Diagnostic Marker for Lung Cancer」、Clin Lung Cancer 10:42~46(2009))のバイオマーカーとして研究されている。
【0009】
体液中の改善されたEV画像化の必要性を確立することに加えて、インサイツで組織のEVを画像化する必要がある。生きている動物の組織におけるEV画像化の近年の進歩には、融合タンパク質(非特許文献25:Laiら、「Visualization and Tracking of Tumour Extracellular Vesicle Delivery and RNA Translation Using Multiplexed Reporters」、Nat.Commun.6:7029(2015))、CREリコンビナーゼとレポータータンパク質(非特許文献26:Ridderら、「Extracellular Vesicle-Mediated Transfer of Functional RNA in the Tumor Microenvironment」、Oncoimmunology 4:el008371(2015))、または多光子顕微鏡法(非特許文献27:Zomerら、「In Vivo Imaging Reveals Extracellular Vesicle-Mediated Phenocopying of Metastatic Behavior」、Cell 161:1046~1057(2015))の使用が含まれる。しかし、EV生物学を理解する上での主要な技術的課題は、インサイツで組織および生物学的流体中のEVを画像化できないことである(非特許文献28:Tkachら「Communication by Extracellular Vesicles:Where We Are and Where We Need to Go」、Cell 164:1226~1232(2016))。EV画像化を妨げる技術的な落とし穴を特定し、解決することが、正常状態および疾患状態のEVの構造および機能の解明に役立ってもよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Torreら、「A.Global Cancer Incidence and Mortality Rates and Trends--An Update」、CancerEpidemiol Biomarkers Prev.25:16~27(2016)
【文献】McPhailら、「Stage at Diagnosis and Early Mortality from Cancer in England」、Br J Cancer S108~115(2015)
【文献】Gyorgyら、「Membrane Vesicles, Current State-of-the-Art:Emerging Role of Extracellular Vesicles」、Cell Mol.Life Sci.68:2667~2688(2011)
【文献】Tramsら、「Exfoliation of Membrane Ecto-Enzymes in the Form of Micro-Vesicles」、Biochim.Biophys.Acta.645:63~70(1981)
【文献】Dvorakら、「Tumor Shedding and Coagulation」、Science 212:923~924、(1981)
【文献】Zhangら、「Identification of Distinct Nanoparticles and Subsets of Extracellular Vesicles by Asymmetric Flow Field-Flow Fractionation」、Nat.Cell Biol.20:332~343(2018)
【文献】Hristovら、「Apoptotic Bodies From Endothelial Cells Enhance the Number and Initiate the Differentiation of Human Endothelial Progenitor Cells In Vitro」、Blood 104:2761~2766(2004)
【文献】Raposoら、「Extracellular Vesicles:Exosomes, Microvesicles, and Friends」、J.Cell Biol.200:373~383(2013)
【文献】Zhaら、「Extracellular vesicles:An Overview of Biogenesis, Function, and Role in Breast Cancer」、Tumour Biol 39:1010428317691182(2017)
【文献】Lugaら、「Exosomes Mediate Stromal Mobilization of Autocrine Wnt-PCP Signaling in Breast Cancer Cell Migration」、Cell 151:1542~1556(2012)
【文献】Choら、「Exosomes From Breast Cancer Cells Can Convert Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells Into Myofibroblast-Like Cells」、Int J Oncol 40:130~138(2012)
【文献】Leeら、「Exosomes Derived From Mesenchymal Stem Cells Suppress Angiogenesis by Down-Regulating VEGF Expression in Breast Cancer Cells」、PLoS One 8:e84256(2013)
【文献】Nilssonら、「Prostate Cancer-Derived Urine Exosomes:A Novel Approach to Biomarkers for Prostate Cancer」、Br J Cancer 100:1603~1607(2009)
【文献】Wysoczynskiら、「Lung Cancer Secreted Microvesicles:Underappreciated Modulators of Microenvironment in Expanding Tumors」、Int J Cancer 125:1595~1603(2009)
【文献】Janowska-Wieczorekら、「Microvesicles Derived From Activated Platelets Induce Metastasis and Angiogenesis in Lung Cancer」、Int J Cancer 113:752~760(2005)
【文献】Jiら、「Proteome Profiling of Exosomes Derived From Human Primary and Metastatic Colorectal Cancer Cells Reveal Differential Expression of Key Metastatic Factors and Signal Transduction Components」、Proteomics 13:1672~1686(2013)
【文献】Silvaら、「Expression and Cellular Localization of MicroR A-29b and RAX, an Activator of the RNA-Dependent Protein Kinase (PKR), in the Retina of Streptozotocin-Induced Diabetic Rats」、Mo/ Vis 17:2228~2240(2011)
【文献】Gattiら、「Microvesicles Derived From Human Adult Mesenchymal Stem Cells Protect Against Ischaemia-Reperfusi on-Induced Acute and Chronic Kidney Injury」、Nephrol Dial Transplant 26:1474~1483(2011)
【文献】Zomerら、「In Vivo Imaging Reveals Extracellular Vesicle-Mediated Phenocopying of Metastatic Behavior」、Cell 161:1046~1057(2015)
【文献】Bellinghamら、「Exosomes:Vehicles for the Transfer of Toxic Proteins Associated With Neurodegenerative Diseases?」Front Physiol.3:124(2012)
【文献】Tkachら、「Communication by Extracellular Vesicles:Where We Are and Where We Need to Go」、Cell 164:1226~1232(2016)
【文献】Lugaら、「Exosomes Mediate Stromal Mobilization of Autocrine Wnt-PCP Signaling in Breast Cancer Cell Migration」、Cell 151:1542~1556(2012)
【文献】Nilssonら、「Prostate Cancer-Derived Urine Exosomes:A Novel Approach to Biomarkers for Prostate Cancer」、Br J Cancer 100:1603~1607(2009)
【文献】Rabinowitsら、「Exosomal MicroRNA:A Diagnostic Marker for Lung Cancer」、Clin Lung Cancer 10:42~46(2009)
【文献】Laiら、「Visualization and Tracking of Tumour Extracellular Vesicle Delivery and RNA Translation Using Multiplexed Reporters」、Nat.Commun.6:7029(2015)
【文献】Ridderら、「Extracellular Vesicle-Mediated Transfer of Functional RNA in the Tumor Microenvironment」、Oncoimmunology 4:el008371(2015)
【文献】Zomerら、「In Vivo Imaging Reveals Extracellular Vesicle-Mediated Phenocopying of Metastatic Behavior」、Cell 161:1046~1057(2015)
【文献】Tkachら、「Communication by Extracellular Vesicles:Where We Are and Where We Need to Go」、Cell 164:1226~1232(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
体液中のEV超微細構造を研究する最も一般的な方法は、ネガティブ染色と組み合わせた透過型電子顕微鏡法(TEM)である。しかしながら、この技術は一貫性のない、多くの場合否定的な結果をもたらすことが分かっている。さらに、溶液に適用された既知の量のEVを調べると、適用されたEVの量と最終的に画像化された少数のEVとの間にかなりの不一致が観察された。例えば、グルタルアルデヒド固定、ネガティブ染色およびTEM画像化のために、100万個以上のEVが電子顕微鏡グリッドの表面に添加された。しかしながら、最終工程では、あったとしてもまばらな数のEV(0~50)が観察された。驚くべきことに、結果はEVバッチ間で一貫していなかった;場合によっては、技術的複製が異なることがあった。したがって、方法論的ギャップが存在し、溶液における効率的で一貫性のある代表的なEV画像化を妨げる。医学的診断として、生物学的流体中のEVの画像化、または液体生検の可能性を最大限に実現するために、既存のTEM法はさらなる開発を要する。したがって、発明者らは、EV TEM画像化プロトコルの各工程を評価し、EVが失われてもよい点を特定しようとした。
【0012】
本発明は、当技術分野におけるこれらおよび他の欠陥を克服することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、細胞外小胞を固定する方法に関する。固定方法は、細胞外小胞を含有する試料を用意することと、細胞外小胞を固定するのに有効な条件下で試料を非可逆的架橋剤と接触させることとを伴う。
【0014】
本発明の方法は、任意に、試料を非可逆的架橋剤と接触させて細胞外小胞を固定する前、後、またはこれと同時に、試料をアルデヒド含有固定剤と接触させることをさらに含むことができる。
【0015】
本発明の一実施形態では、細胞外小胞を固定するために本発明で処理される試料が、生物学的流体または組織である。
【0016】
本発明の別の態様では、細胞外小胞を固定するために使用される非可逆的架橋剤(non-reversible cross-linking agent crosslinking agent)が、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。
【0017】
本発明の最後の態様は、生物学的試料中の細胞外小胞を固定するためのキットに関する。キットは、試料を保持するための支持基質と、非可逆的架橋剤とを含む。キットは、アルデヒド含有固定剤をさらに含んでもよい。
【0018】
細胞外小胞(EV)は、多くの生理学的機能および広範な病理学的関連を有する分泌性ナノサイズ粒子である。EVは細胞によって作られ、しばしば生物学的流体中に分泌され、遠くの細胞標的の遺伝子発現に影響を及ぼす。正常な流体標本および疾患流体標本におけるEVの役割を理解することの主要な技術的制限は、組織および流体中のEVの超微細構造を再現可能に可視化することの難しさにあった。ここでは、従来のTEMプロトコルがEVの電子顕微鏡グリッド表面への非効率的結合をもたらすことが実証されている。さらに、EVはグルタルアルデヒド固定後および洗浄工程で失われる。EVをグリッドの表面により効率的に付着させるために、EVを保持し堅牢なTEM画像化を可能にする非可逆的架橋剤、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を使用してEVを架橋することができる。さらに、この方法を使用して、血液(血漿)、脳脊髄液、乳頭吸引液、房水および硝子体液を含む種々の生物学的流体中のEVを画像化することができることが実証されている。最後に、この方法により、健康な対照(血漿)と種々のがん試料から単離されたEVの形態学的差異を観察することができることが示されている。
【0019】
正常な標本および疾患標本におけるEVの役割を理解することの別の技術的制限は、組織微小環境におけるEVの空間的局在化を可視化できないことである。ここでは、ウシおよびヒト眼組織、硝子体液が、EV画像化を研究するためのモデル系として使用されている。従来のホルムアルデヒド溶液で架橋された哺乳動物組織は、大幅なEV損失を引き起こし、その後の減少したまたは負のEVシグナルを伴う;しかしながら、EVエスケープを、これらのナノサイズ粒子を永久に保持し、インサイツでの正常な組織およびがん組織中のEVの可視化を可能にする1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)による追加の固定によって防止できる。
【0020】
体液中のEVを画像化する方法は非効率的であるが、健康な組織および疾患組織でEVを画像化する際の同様の技術的ギャップが発見された。組織中のEVの空間的局在化を研究するために、眼の硝子体をモデル系として使用した。水晶体と網膜との間に位置する硝子体は、光学的に透明な少数細胞性(paucicellular)組織であり、生物学的機能がほとんど知られていない(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Le Goffら、「Adult Vitreous Structure and Postnatal Changes」、Eye(Lond)22:1214~1222(2008))。硝子体EV関連マイクロRNAが記載されているが(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ragusaら「miRNA Profiling in Vitreous Humor, Vitreal Exosomes and Serum from Uveal Melanoma Patients:Pathological and Diagnostic Implications」、Cancer Biol.Ther.16:1387~1396(2015))、正常な硝子体EVはまだ画像化も特徴付けもされていない。正常な硝子体はEVを有していると仮定されたが、多光子顕微鏡法、共焦点顕微鏡法または広視野顕微鏡法を使用してナノ粒子を可視化する繰り返しの試みは失敗した。そのため、組織固定の最適化に努力の重点が置かれた。従来の固定方法は、10%ホルマリンを使用してタンパク質-タンパク質架橋を作成する。組織処理工程は一般に室温以上で行われる;しかしながら、高温がホルマリンタンパク質-タンパク質およびRNA-タンパク質架橋を復帰させることが知られている(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Shiら、「Antigen Retrieval In Formalin-Fixed, Paraffin-Embedded Tissues:An Enhancement Method for Immunohistochemical Staining Based On Microwave Oven Heating of Tissue Sections」、J Histochem.Cytochem.39:741~748(1991);Ikedaら、「Extraction and Analysis of Diagnostically Useful Proteins from Formalin-Fixed, Paraffin-Embedded Tissue Sections」、J.Histochem.Cytochem.46:397~403(1998);Penaら「miRNA In Situ Hybridization in Formaldehyde and EDC-Fixed Tissues」、Nat.Methods 6:139~141(2009))。EVが、処理および画像化工程中にホルマリン固定組織から失われると仮定された。ここでは、標準的なホルマリン固定により標本からEVが失われるが、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)によるタンパク質の固定がEVを保持し、インサイツでのEV画像化を可能にすることが示されている。
【0021】
組織中のEVの画像化に関する技術的課題は、従来のホルマリン固定ベースの方法が架橋の反転を可能にし、その結果、組織からEVが逃げて、ネガティブシグナルがもたらされることである。しかしながら、EDC-ホルマリン固定は組織中のEVの保持を有意に改善し、インサイツでの堅牢なEV画像化を可能にする。この方法は、長い間生物学的機能がほとんどないと考えられていた組織である正常な硝子体液中の機能性EVの以前特定されていなかったネットワークを照らした。さらに、硝子体はEVおよびECMを研究するための潜在的なモデルとなる。最後に、この固定技術をがんなどのEVによって媒介される疾患の診断目的に広く適用してもよい。
【0022】
組織および流体中のEVを画像化することの別の技術的制限は、EV関連構造の空間的局在化を決定することができないことである。例えば、研究により、腫瘍EVは腫瘍細胞の運動性を改変し、侵襲能力を高めることが示されている(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sungら、「Directional Cell Movement Through Tissues Is Controlled by Exosome Secretion」、Nat Commun 6:7164(2015))。これを研究するために、硝子体液をモデル系として使用して、EVの空間的局在化を研究した。眼の硝子体(vitreous body)(硝子体(vitreous))は水晶体と網膜の間に位置し、ほとんど無細胞の組織である。硝子体は、水および主にヒアルロン酸と会合したII型コラーゲン原線維の細胞外ゲルマトリックスで大部分が構成されている。硝子体を、生物学的流体中のEVの画像化のジレンマを解決するためのモデル系として使用した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A-1F】図1A~1Fは、グルタルアルデヒド固定による透過型電子顕微鏡法用に調製されたEVがほとんどEVを示さないことを示すグラフ図および透過型電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真である。しかしながら、非可逆的カルボジイミド架橋剤を使用すると、かなり多くのEVが電子顕微鏡グリッドの表面に付着したままとなる。図1Aは、透過型電子顕微鏡法(TEM)を使用した液体中のEVのグルタルアルデヒドベースの画像化に必要な工程を示す概略図である。(i)ホルムバール(黒丸、負電荷)およびポリ-L-リジン(丸、正電荷)でコーティングした銅グリッド(ディスク)を染色手順に使用し、(ii)ウシ硝子体EVの溶液(小丸、電荷なし)を、ホルムバールおよびポリ-L-リジンでコーティングした銅グリッドの表面に適用した。(iii)過剰なEV溶液を吸引し、その後、グリッドを従来のグルタルアルデヒド固定(Glut)溶液で固定した。Glut溶液を除去した;グリッドを水で洗浄し、(iv)試料を酢酸ウラニル(UA、黒丸輪郭)およびクエン酸鉛の数回の適用で染色した後、(v)TEM画像化した。図1Bは、Glutならびにその後のUAおよびクエン酸鉛溶液で銅グリッドに固定した単離ウシ硝子体EVの代表的な顕微鏡写真であり、低倍率(左)でも、中倍率(中)でも、高倍率(右)でも、ネガティブ染色されたEVを示していない図である。図1Cは、他の点では同一の条件下で、EDCをグルタルアルデヒド固定の前にEVに適用する、銅グリッドへのEVのEDCベースの固定のプロトコルを示す概略図である。図1Dは、EDC-グルタルアルデヒド固定、ネガティブ染色およびTEM画像化後の単離ウシ硝子体EVの代表的なTEM顕微鏡写真であり、弱拡大(左)、中倍率(中)および高倍率(右)で可視化された実質的に多いEVを明らかにしている図である。図1Eは、Glut固定グリッドと比較すると、EDC固定標本からの1画像当たりのカウントされるEVが有意に多い(350倍)ことを示す平均および±標準偏差のグラフ表示である(n=3、生物学的複製1つ当たり平均7つの画像でカウント、*p<0.05)。図1Fは、EDC-グルタルアルデヒド固定後のウシ硝子体EVの代表的なTEM顕微鏡写真が、トリス緩衝生理食塩水(TBS;TBSの平均円形シグナルサイズは20nm未満であった)を画像化することによって観察されるバックグラウンドシグナルと対照的に、EVの境界を囲むネガティブ染色を示し、真のネガティブ染色と偽ポジティブ染色の違いを実証している図である。スケールバーは、(B)左パネル600nm、中央パネル125nmおよび右パネル100nm;(D)左パネル3μmおよび中央パネル2μm;ならびに(F)左右パネル100nmである。
【0024】
図2A-2E】図2A~2Eは、EVを電子顕微鏡グリッドに架橋するよう設計されたグルタルアルデヒド固定プロトコルの連続工程を示す概略図である。EV損失がグリッドの表面で吸引液へ発生すると想定し;EVエスケープを、より堅牢な非可逆EDC固定プロトコル、ネガティブ染色およびTEM画像化を使用して、別個のグリッドで監視および定量化した。図2Aは、ホルムバールおよびポリ-L-リジンでコーティングされたTEMグリッドに適用された、単離された(超遠心分離された)房水由来のEV(灰色の泡、溶液;小円、EV)を含有する溶液を示す概略図である(左)。インキュベーション後、液体をグリッドから吸引し、分析のために収集した(中央)。吸引液を別個のグリッドに適用し;非可逆的EDC固定に供し、次いで、ネガティブ染色し、TEMによって画像化した。代表的なTEM顕微鏡写真は、工程1で吸引液に失われた相当数のEV(矢じり)を示している(右)。そのため、溶液中のEVは電子顕微鏡グリッド表面に接着できなかった。図2Bは、工程1からのグリッド表面へのグルタルアルデヒド固定液(泡)の適用を示す概略図である(左)。インキュベーション後、グルタルアルデヒド液を取り除き、検査のために収集する(中央)。代表的なTEM顕微鏡写真は、工程2から相当量のEV(矢じり)がグルタルアルデヒド固定液に漏れたことを示している(右)。図2Cは、工程2からのグリッドに適用された水洗浄液(左)、およびインキュベーション後、検査のために収集された水洗浄溶液(中央)を示す概略図である。工程3から収集され、別個のグリッドに適用され、EDC溶液で固定され、ネガティブ染色された溶液の代表的なTEM顕微鏡写真は、洗浄液に失われたEVのクラスターを示している(右)。図2Dは、グルタルアルデヒド固定プロトコルを使用してグリッド上に架橋されたままの少数のEV(小円)を示す概略図である(工程1~4、左)。代表的なTEM顕微鏡写真は、従来のグルタルアルデヒド固定およびネガティブ染色の後に銅グリッド上に残っている単一ウシ房水EVを示している(矢じり)。図2Eは、グリッド上にほとんどEVが残っていない、工程1および2で流体に失われたEVの数(カウントされた総EVの割合)の平均±標準偏差を表すグラフである(*p<0.05)。スケールバーは、(A)右パネル500nm;(B)右パネル100nm;(C)右パネル400nm;および(D)400nmである。
【0025】
図3A-3C】図3A~3Cは、神経膠腫患者のEVの写真である。図3Aは、EDC架橋およびネガティブ染色後の神経膠腫患者の血液(血漿)から単離された(超遠心精製された)EVの代表的な写真である。TEM画像は、種々のサイズの多数のEVを低倍率で示している(右)。矢じりはEVを示し、EVの周囲を囲むシグナル(黒)および中央の低いシグナル(白または灰色)がある。高倍率(挿入図、ボックスでマーク)では、大きな直径のEVが示され(4つの矢じりの間に囲まれている)、ネガティブ染色がEVの周囲を囲んでいる(右)。より小さなEVが強調されている(矢じり)。図3Bは、神経膠腫患者の血漿中の第2のヒト神経膠腫EVの代表的なTEM写真で、比較的小さいEV(右および左、矢じり)を示す図である。図3Cは、第3の患者の血漿試料の代表的なTEM写真で、シグナルの蓄積がEVの境界周囲で観察される(左および右、矢じり)神経膠腫由来のEVを示す図である。スケールバーは、(A)左パネル500nmおよび右パネル150nm;(B)左パネル500nmおよび右パネル200nm;ならびに(C)左右パネル200nmである。
【0026】
図4A-4B】図4A~4Bは、EDCによる固定後の正常な健康な小児患者および成人患者の血漿で可視化され、透過型電子顕微鏡法で画像化された単離細胞外小胞を示す図である。写真は、健康な成人および小児患者によって提供され、その後1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)溶液で固定された血漿からのネガティブ染色単離EVを示している。画像は、EVがほとんど存在しないことを示している。スケールバーは200nm(A)および100nm(B)である。
【0027】
図5A-5B】図5A~5Bは、EDCによる固定後の黒色腫患者の血漿で可視化され、透過型電子顕微鏡法で画像化された、単離細胞外小胞を示す図である。図5Aおよび図5Bは、黒色腫の成人の血漿から単離され、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)溶液で固定されたEVであり、TEMによって画像化された多数のネガティブ染色EVを示している。スケールバーは500nm(A)および200nm(B)である。
【0028】
図6A-6D】図6A~6Dは、さまざまな型のがん患者のEVのTEM画像である。図6Aは、EDC架橋およびネガティブ染色後の神経芽細胞腫患者の脳脊髄液(CSF)から単離されたEVの典型的な写真である。TEM画像は、低倍率で高密度のEVクラスターを示している(右)。矢じりはEVを示し、EVの周囲を囲むシグナル(黒)および中央の低いシグナル(白または灰色)がある。図6Bは、図6Aの典型的な例を高倍率で示す図である。大きな直径のEVが示され(二重矢じり)、ネガティブ染色がEVの周囲を囲んでいる(右)。図6Cは、EDC-グルタルアルデヒドで固定され、ネガティブ染色され、TEMで画像化された肉腫患者からのCSF中の単離EVの代表的なTEM写真である。写真は、低倍率で可視化した場合の直径が小さいEV(左、矢じり)を示している。図6Dは、図6Cからの同様の試料の典型的な例を高倍率で示し、肉腫由来のEVの境界を囲むシグナルの蓄積が観察される(左、矢じり)ことを示す図である。スケールバーは(A)2μm;(B)500nm;(C)左パネル250nm;および(D)50nmである。
【0029】
図7図7は、EDCによる固定後の乳がんと診断された患者から入手され、透過型電子顕微鏡法で画像化された乳頭吸引液で可視化された細胞外小胞の画像である。乳がんの成人のEVを含有する希釈乳頭吸引液を、その後1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド溶液で固定すると、TEMによって画像化されるネガティブ染色EVを示す。スケールバーは100nmである。
【0030】
図8A-8C】図8A~8Cは、ポジティブ染色を可能にする核酸染色剤でEVを特定している。図8Aは、EDC-グルタルアルデヒドで固定され、その後、UAおよびクエン酸鉛で標識されたウシ房水から単離されたEVの代表的な写真で;弱拡大(左)および強拡大(右)で多数のネガティブ染色されたEV(矢じり)を示す図である。ネガティブ染色EVの決定的な例は、丸い物体の周囲のシグナル(黒)およびEV内の最小シグナル(白)の蓄積として示される(図8A、右)。EVを囲む4つの矢じりが小胞を示す。曖昧なネガティブ染色された物体の例が示されており(矢印)、不明瞭なシグナルが周囲を囲み、低いシグナル(白)が周囲にある;潜在的偽ポジティブEV。図8Bは、EDC-グルタルアルデヒド固定および高電子密度の核酸選択的染色剤であるアクリジンオレンジ(AO)とのインキュベーション後のウシ房水から単離されたEVの代表的なTEM画像である。画像は、明確なバックグラウンドを有する、EV(図8B、矢じり)内に相当量のシグナル(黒)を有するいくつかの「ポジティブ染色」EVを示している。数百個のEVが弱拡大で示されている(左)。AO染色剤は、最小のバックグラウンドで大きな(二重矢じり)および小さなエキソソーム(矢印)を示している(右)。図8C、左は、神経膠腫患者の血漿から単離され、EDC-グルタルアルデヒドで固定され、UAおよびクエン酸鉛で染色されたネガティブ染色EVの代表的なTEM顕微鏡写真である。この画像は、大きな神経膠腫EV(左、二重矢印)および小さなエキソソーム(左、矢印)の周囲を囲むネガティブ染色を示している。図8C、右は、EDC-グルタルアルデヒドで固定され、AO染色剤で標識された神経膠腫EVを示す代表的なTEM顕微鏡写真で、神経膠腫EV内のポジティブ染色を示す図である。より大きなEV(二重矢印)ならびにエキソソーム(矢印)が示されている。ネガティブ(UAおよびクエン酸鉛)染色とポジティブ(AO)染色を比較すると、UAおよびクエン酸鉛で染色されたEV(図8C、左)は、AOで染色されたEV(図8C、右)とサイズおよび形状が類似である。スケールバーは、(A~B)左パネル1μmおよび右パネル200nm;ならびに(C)左右パネル500nmである。
【0031】
図9A-9E】図9A~9Eは、ウシおよびヒト硝子体液が細胞外小胞を含有することを示している。図9Aは、酢酸ウラニル(UA)およびクエン酸鉛で染色されたウシ硝子体組織切片の代表的な透過型電子顕微鏡法の顕微鏡写真で、サイズが多形性の相当数のEV(矢じり)を示す図である。挿入図(右上隅)は、右下隅の領域が囲まれたボックスの拡大であり、EV(矢じり)を示している。図9Bは、ウシ硝子体から単離され、高電子密度タンパク質染色剤のCSFEで染色されたEVの代表的なTEM顕微鏡写真であり、EVの形態および大きなEV(二重矢じり)を示す図である。図9Cは、ウシ硝子体から単離され、高電子密度の核酸染色剤であるアクリジンオレンジ(AO)で染色されたEVの代表的なTEM顕微鏡写真であり、サイズが多形性で、ポジティブ核酸シグナルを有する多数のEV(矢じりでマークされた小さいEV、二重矢じりでマークされた大きいEV)を示す図である。図9Dは、複数のEV(矢じり)を示す、高電子密度の核酸染色剤である臭化エチジウム(EtBr)で染色されたホールマウントウシ硝子体を示す図である。図9Eは、死後のヒト硝子体から単離され、AOで染色されたEVの代表的なTEM顕微鏡写真であり、ポジティブ核酸シグナルを有するEV(矢じり)を示す図である。スケールバーは、(A)100nm、(B、D~E)200nm、および(C)50nmである。
【0032】
図10A-10D】図10A~10Dは、健康な患者の房水から直接画像化されたEVの写真(すなわち、EVを超遠心分離で単離しなかった)であり、非特異的バックグラウンド染色を減らし、EVによって与えられるシグナルを改善するには生物学的流体の希釈が必要であることを示している。図10Aは、非希釈で、ホルムバールおよびポリ-L-リジンでコーティングされたTEMグリッドに適用され、EDC-グルタルアルデヒドで固定され、酢酸ウラニルでネガティブ染色され、TEMで画像化された生物学的流体であるヒト房水を示す写真である。左右の写真は、実質的に高いバックグラウンド(拡散した黒色染色)を示し、容易に特定できるEV(左パネル)の証拠はなく;右パネルで可能なEVの証拠はなかった。図10Bは、緩衝生理食塩水で1:1希釈された房水を示す写真(左および右)であり、減少したバックグラウンド(黒色染色)、およびEVの形態と一致するネガティブ染色の蓄積(矢じり)を示す図である。図10C(左右パネル)は、緩衝生理食塩水で1:2希釈された房水を示す写真であり、減少したバックグラウンドおよびEV(矢じり)を示す図である。図10D(左右パネル)は、緩衝生理食塩水で1:5希釈された房水を示す写真であり、減少したバックグラウンドおよびEV(矢じり)を示す図である。スケールバーは(図10A)左パネル1μmおよび右パネル500nm;(図10B)左パネル1μmおよび右パネル500nm;(図10C)左右パネル1μm;ならびに(図10D)左パネル500nmおよび右パネル200nmである。
【0033】
図11A-11I】図11A~11Iは、細胞外小胞がホルマリン固定されたウシ硝子体組織から逃げ、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-ホルマリン固定で保持されていることを示している。図11Aは、ホルマリン固定硝子体(Vit)組織を洗浄緩衝液(上清)に浸漬し、37℃に加熱すると、EV(EV、矢じり)および硝子体コラーゲン(図11C、閉じた矢印)が上清に逃げることを示す概略図である。図11B~11Cは、37℃でのインキュベーションならびに酢酸ウラニル(UA)およびクエン酸鉛染色後のホルマリン固定ウシ硝子体組織から収集された上清の代表的なTEM顕微鏡写真であり、弱拡大(図11B)および強拡大(図11C)で画像化した洗浄緩衝液中に存在するコラーゲン鎖(図11C、閉じた矢印)および多数のEV(矢じり)の証拠を示す図である。図11Dは、4℃保ち、重金属で染色されたウシ固定硝子体組織から収集された上清の代表的なTEM顕微鏡写真であり、コラーゲン鎖がほとんどなく(図11C、閉じた矢印)、EVがほとんどないことを明らかにしている図である。図11E~11Fは、コラーゲン鎖(図11C、閉じた矢印)およびEV(矢じり)を示す、25℃以上でのインキュベーション後にホルマリン固定硝子体組織から収集された上清の画像である。図11Gは、EDC-ホルマリン固定硝子体組織(Vit)を洗浄緩衝液に浸漬し、37℃に加熱すると、組織中のEV(矢じり)が保持され、上清へのEVの損失がなく、硝子体コラーゲン鎖(図11C、閉じた矢印)の損失が最小限であることを示す概略図である。図11Hは、37℃でのインキュベーションおよび重金属染色後のEDC-ホルマリン固定硝子体組織からの上清の代表的なTEM顕微鏡写真であり、上清中にコラーゲン鎖をほとんど示さず(図11C、閉じた矢印)、EVがないことを示す図である。図11Iは、特異性対照であるトリス緩衝生理食塩水(TBS)単独の代表的な画像であり、上清中にコラーゲン繊維もEVも示さないが、20nm未満の高電子密度の焦点(NS、開いた矢印)の非特異的な点状染色を示す図である。スケールバーは、(B)4μm、(C、D)200nm、(E)75nm、(F)40nm、および(G~H)200nmである。
【0034】
図12A-12J】図12A~12Jは、ホルマリン固定単独と比較すると、ウシ硝子体の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)-ホルマリン固定が細胞外小胞を保持することを示している。図12Aは、視力検査カード上に置かれたウシ硝子体の全体像であり、極めて透明なゲル様構造を示す図である。図12Bは、ホルマリン単独で固定し、タンパク質をマークするためのCFSEおよび核をマークするためのHoechstで染色したホールマウントウシ硝子体標本の代表的な多焦点顕微鏡法(MPM)顕微鏡写真である。CFSEシグナルは、核の周囲で観察されるが(左パネル、開いた矢印)、細胞外空間では観察されない(右パネル、開いた矢印)。核染色は細胞外シグナルを示さない(左パネル、開いた矢印)。図12Cは、CFSEおよびHoechstで染色したEDC-ホルマリン固定硝子体の代表的なMPM顕微鏡写真である。画像の重ね合わせは、細胞体と一致したポジティブシグナル(開いた矢じり)、ならびにEVとサイズおよび形状が一致した細胞外タンパク質シグナルの焦点(閉じた矢じり)を示している。図12Dは、図12Cの挿入図(白色ボックス)であり、核染色の領域(右パネル、開いた矢じり)を囲む複数の丸い細胞内焦点(左パネル、開いた矢じり)を示す図である。EVとサイズおよび形状が一致した多数の焦点細胞外タンパク質シグナルも観察され(左パネル、閉じた矢じり)、細胞外DNAは観察されない。図12Eは、EDC-ホルマリン固定硝子体がホルマリン固定硝子体よりも有意に多いEVを示すことを示す、硝子体細胞1個当たりのEVの数の平均±標準偏差を表すグラフである。*p<0.05。図12Fは、MPMによって測定されるウシ硝子体EV直径の頻度分布のグラフ表示である。図12Gは、酢酸ウラニル(UA)およびクエン酸鉛で染色されたウシ硝子体組織切片の代表的なTEM顕微鏡写真であり、異種集団サイズの相当数のEV(矢じり)を示す図である。挿入図(右上隅)は、右下隅の領域が囲まれたボックスの拡大であり、EV(矢じり)を示している。図12Hは、ウシ硝子体から単離され、高電子密度タンパク質染色剤のCSFEで染色されたEVの代表的なTEM顕微鏡写真であり、小さなEV(矢じり)と大きなEV(二重矢じり)の両方のEVの形態を示す図である。図12I~12Jは、UAおよびクエン酸鉛で染色された死後のヒト眼切片の代表的なTEM顕微鏡写真であり、毛様体の非色素上皮(PE)に隣接する、硝子体基底部(Vit)付近の細胞外マトリックス中の相当数のEVを示す図である(小さなEVを矢じりで示し、大きなEVを二重矢じりで示す)。スケールバーは、(A)1cm、(B)40μm、(C)50pmおよび(D)10pm、(G)100nm、(H)200nm、(I)2pm、および(J)100nmである。
【0035】
図13A-13B】図13A~13Bは、ウシおよびヒト硝子体液が細胞外小胞の異種集団を含有することを示している。図13Aは、ウシ硝子体から単離されたEVのナノ粒子追跡分析に基づく、EV直径に応じたEVの濃度の平均(線)±標準誤差(バー)のグラフ表示である。図13Bは、TEM画像化によって測定された死後のヒト硝子体EV直径の頻度分布のグラフ表示である。
【0036】
図14A-14C】図14A~14Cは、インサイツで硝子体細胞外小胞および細胞外RNAを保持する1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-ホルマリンによるウシ硝子体の固定を示している。図14A~14Bは、DNAおよびRNAをマークするヨウ化プロピジウム(PI)、DNAおよび核を可視化するHoechst、ならびにタンパク質を染色するカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で染色したEDC-ホルマリン固定ホールマウントウシ硝子体標本の代表的な共焦点蛍光顕微鏡写真である。図14Aは、EDC-ホルマリン固定ウシ硝子体からの画像の重ね合わせであり、細胞体(図14A、開いた矢印)と一致したポジティブシグナル、ならびにEVとサイズおよび形状が一致した細胞外RNA(閉じた矢じり)および細胞外タンパク質(閉じた矢じり)の焦点を示す図である。図14Bは、EDC-ホルマリン固定硝子体の代表的な共焦点蛍光顕微鏡写真であり、複数の円形細胞焦点(両方のパネル、開いた矢じり)ならびに細胞間の細胞外RNA(左パネル、閉じた矢じり、PI染色)および細胞外タンパク質(右パネル、閉じた矢じり、CFSE染色)の多数の焦点シグナルを示す図である。図14Cは、ホルマリン単独で固定したホールマウントウシ硝子体の代表的な顕微鏡写真であり、核染色(中央パネル、開いた矢じり、Hoechst)と同様に、核内のRNAのシグナル(左パネル、開いた矢じり、PI)を示す図である。ホルマリン単独固定硝子体は、細胞外RNAシグナルの焦点を示さない(左パネル)。CFSE染色は、細胞タンパク質シグナルを示すが(右パネル、開いた矢印)、EV形状の細胞外タンパク質シグナルを示さない(右パネル、開いた矢印の間に点状染色は観察されなかった)。細胞サイズは、おそらくホルマリン固定単独と比較して、EDC-ホルマリン固定によって細胞質RNAおよびタンパク質の保持が改善されるため、ホルマリン単独固定では小さく見える。スケールバーは、(A)25μm、(B、C)50μmである。
【0037】
図15A-15C】図15A~15Cは、細胞外核酸シグナルの減少を示す、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色された1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-ホルマリン固定ウシ硝子体のRNアーゼ処理を示している。図15Aは、硝子体組織の細胞外環境におけるシグナルを示す(閉じた矢じりで示される、挿入図)、EDC-ホルマリンで架橋され、PIで染色されたホールマウントウシ硝子体標本の弱拡大広視野蛍光顕微鏡写真である(図15A、上パネル);標識された核(図15A、中央パネル、Hoechst)、および合併した画像が示されている(下パネル)。硝子体細胞核はPIおよびHoechstでポジティブ染色;共局在シグナルが示される(下のパネル、挿入図)。細胞は開いた矢印で示され(図15A、中央パネルおよび下パネル、挿入図)、細胞外PIシグナルの焦点は閉じた矢じりでマークされている(上パネルおよび下パネル、挿入図)。核は染色され、細胞外DNAシグナルは観察されない(下パネル)。図15Bは、EDC-ホルマリンで固定し、RNアーゼAで処理したホールマウントウシ硝子体の顕微鏡写真である。試料をPI(上パネル)、Hoechst(中央パネル)で染色し、合併した画像が示される(下パネル)。RNアーゼA処理試料は、細胞体間のシグナルの欠如によって示される細胞外RNAの証拠を示さず(上パネルおよび下パネル)、2つの細胞核の間のシグナルを示さない(中央パネルおよび下パネル、開いた矢印Hoechst)。おそらくEDC-ホルマリンがより多くの細胞質RNAを保持するため、RNアーゼA処理試料(図15B、上パネルおよび下パネル)の細胞質RNAのPIシグナルが、RNアーゼ処理前試料(図15A、上パネルおよび下パネル)よりも小さく見える。図15Cは、RNアーゼ処理前およびRNアーゼ処理後にPIで染色されたEDC-ホルマリン固定組織の細胞外シグナルの焦点の平均±標準偏差のグラフ表示であり、RNアーゼ処理後のEVが有意に少ないことを示す図である、p<0.001。スケールバーは、(A、B)50μmおよび(A挿入図、B挿入図)20μmである。
【0038】
図16A-16B】図16A~16Bは、ウシ硝子体細胞外小胞の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-ホルマリン固定の広視野落射蛍光顕微鏡画像化を示している。図16A~16Bは、EDC-ホルマリン(図16A)またはホルマリン単独(図16B)で架橋されたホールマウントウシ硝子体標本の弱拡大広視野蛍光顕微鏡写真である。図16Aは、EDC-ホルマリンで固定され、タンパク質を標識するためのCFSE(上パネルおよび中央パネル、白色)および核を標識するためのHoechst(下パネル)で染色されたウシ硝子体の代表的な顕微鏡写真であり、EVと一致した多数の細胞外タンパク質シグナル(上パネルおよび中央パネル、閉じた矢じり、CSFE、白色)と複数の円形細胞焦点(全パネル、開いた矢じり)を示す図である。図16B は、ホルマリン単独で固定されたホールマウントウシ硝子体の顕微鏡写真であり、それぞれ細胞DNAおよび核酸(全パネル、開いた矢じり)と一致した、CFSE(上パネルおよび中央パネル、白)と共局在する核染色剤(中央パネルおよび下パネル、Hoechst、青)を示す図である。細胞外タンパク質シグナルの証拠はない(上パネルおよび中央パネル、CSFE、白)。おそらくホルマリン固体単独と比較して、EDC-ホルマリンがより小さな細胞タンパク質を保持するために、EDC-ホルマリン固定(図16A、中央パネル、白)と比較して、ホルマリン単独固定(図16B、中央パネル、白)でCFSE染色細胞サイズが小さく見える。スケールバーは(A、B)100μmである。
【0039】
図17A-17D】図17A~17Dは、腫瘍細胞外RNAおよび細胞外DNAの画像化を可能にする転移性乳がんのEDC-ホルマリン固定を示している。図17A~17Bは、細胞外空間でEV形状細胞外RNAシグナル(閉じた矢じり)を示す、マウスの乳腺脂肪パッドに移植された(同系移植)EDCホルマリン固定4T1マウス乳癌腫瘍細胞株の代表的なMPM顕微鏡写真である。腫瘍を解剖し、EDC-ホルマリンで固定し、核酸をPIで標識し(白色シグナルのみ)、DNA染色し(Hoechst)、細胞外マトリックス内の腫瘍表面付近で画像を取り込んだ(図17A、右)。重ね合わせ画像は、細胞からのシグナル(開いた矢じり、Hoechst)、ならびにEVとサイズおよび形状が一致した細胞間の細胞外RNAの多数の焦点(閉じた矢じり、PI)を示している。顕微鏡写真は、EVの異種集団を示しており、小さなマイクロベシクル(単一矢じり、約270nm)、中程度のマイクロベシクル(二重矢じり、約850nm)およびアポトーシス体(アスタリスクの付いた矢じり、約1.7μm)が強調されている。図17Bは、EDC-ホルマリン固定4T1マウス乳癌腫瘍の代表的なMPM顕微鏡写真であり、細胞からのシグナル(開いた矢じり、Hoechst)、ならびに細胞外空間(閉じた矢じり)のPI(RNAおよびDNA)とDNA染色剤(Hoechst)の共局在を示す図である。図17Cは、EDC-グルタルアルデヒド固定4T1マウス乳癌腫瘍の代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、細胞(標識、細胞)に隣接するEV(矢じり)の異種集団を示す図である。より大きなEVが示され(二重矢じり、約510nm)、エキソソームがマークされている(単一矢じり、約146nm)。図17Dは、細胞膜に接続しているEV(矢じり、約373nm)を示す代表的なTEM写真である。スケールバーは(A、B)5μm、(C)250nm、および(D)125nmである。
【0040】
図18A-18D】図18A~18Dは、正常なウシ硝子体における細胞外小胞(EV)特異的タンパク質TSG-101の染色の免疫組織化学結果を示している。図18Aは、ホルマリンで固定され、低温で処理されたホールマウントウシ硝子体標本の代表的な広視野蛍光顕微鏡写真を示し、細胞外空間におけるEV関連タンパク質TSG-101(上および中央、矢じり、Alexa 488)の免疫組織化学染色を示す図である。挿入図(全パネル、右上)は、中央のボックス(全パネル)の高倍率画像である。核をHoechst対比染色でマークしている(上および下、開いた矢印)。数百の点状細胞外タンパク質シグナルが観察された(上および中央、Alexa 488)。細胞外DNAの証拠は観察されなかった(下、Hoechst)。図18Bは、TSG-101免疫組織化学の特異性対照:非特異的IgG抗体で標識されたホールマウント正常ウシ硝子体からの代表的な顕微鏡写真である。挿入図(全パネル、右上)は、中央のボックス(全パネル)の高倍率画像である。核の周囲にシグナルが観察された(上および中央、Alexa 488)。画像は、細胞外TSG-101シグナルの証拠を示していない(上および中央)。核をマークしている(上および下、Hoechst)。図18Cは、細胞外および細胞内空間におけるTSG-101シグナルの平均±標準誤差のグラフ表示である、*p<0.001。図 18Dは、ホルマリン固定硝子体の細胞外空間におけるTSG-101のポジティブシグナルを示す図である(左、Alexa 488)。核をHoechst(左)およびPI(右)で標識している。ホルマリン固定試料では細胞外RNAの証拠はない(右、PI)。スケールバーは、(図18A図18B)40μmおよび(図18A挿入図、図18B挿入図、および図18D)10μmである。
【0041】
図19A-19B】図19A~19Bは、低速遠心分離後の細胞を含まないウシ硝子体の画像である。低速遠心分離、引き続いてヘマトキシリンおよびエオシン染色後のホールマウントウシ硝子体の代表的な弱拡大光学顕微鏡写真は、ヘマトキシリン染色細胞核の証拠はなく、硝子体コラーゲン(矢印)と一致した好酸球シグナルを示している。スケールバーは50μmである。
【0042】
図20A-20D】図20A~20Dは、ヒトおよびウシ硝子体細胞外小胞が内因性RNAを培養細胞に移入できることを示している。図20Aは、核酸染色剤アクリジンオレンジ(AO)で事前標識されたウシ硝子体EVのボーラスで24時間処理した後のヒト網膜色素上皮細胞(ARPE-19)の代表的な共焦点顕微鏡写真画像である。画像は、ARPE-19細胞への標識EV-RNAの取り込みを示している(左パネルおよび右パネル、AO)。核を標識し(中央パネルおよび右パネル、Hoechst)、合併した画像(右パネル)は、細胞質内のAOシグナルにより、ARPE-19細胞のトランスフェクションを示している。図20Bは、ウシ硝子体EVで処理したARPE-19細胞のトランスフェクション効率(トランスフェクション細胞の%)の平均±標準偏差のグラフ表示である(n=3、対照に対して*p<0.05)。図20Cは、死後のヒト硝子体から単離され、AOで事前標識されたEVの3時間のボーラスで処理されたARPE-19細胞の代表的な広視野落射蛍光弱拡大顕微鏡写真である。画像は細胞のトランスフェクションを示している(左パネル、AO)。核をマークしている(右パネル、Hoechst)。図20Dは、ヒト硝子体EVで処理したARPE-19細胞のトランスフェクション効率(トランスフェクション細胞の%)の平均±標準偏差のグラフ表示である(n=3、対照に対して*p<0.05)。スケールバーは、(図20A)50μm、(図20C)15μm、および(図20D)100μmである。
【0043】
図21A-21F】図21A~21Fは、培養ヒト網膜色素上皮(ARPE-19)細胞へのウシ硝子体細胞外小胞による組換えウシ血清アルブミン(BSA)タンパク質および組換え緑色蛍光タンパク質(GFP)の送達の画像およびグラフ表示である。図21Aは、300Vでの電気穿孔によってフルオレセインにコンジュゲートした1μg BSAをプレロードしたウシ硝子体EVのボーラスで処理したARPE-19細胞の代表的な顕微鏡写真であり、細胞質のフルオレセイン染色(左)を示す図である。核を標識し(中央、Hoechst染色)、合併した画像(右)は相当数のトランスフェクトされた細胞を示している。図21Bは、電気穿孔なし(0V、対照)でBSAフルオレセインと混合したウシ硝子体EVのボーラスで処理したARPE-19細胞の代表的な顕微鏡写真であり、フルオレセイン染色がないことを示す図である(左)。核を標識している(右、Hoechst染色)。図21Cは、300Vでの電気穿孔によって3μg、1μgまたは0.5μg BSA-フルオレセインをロードした硝子体EVで処理したARPE-19細胞の平均±標準偏差トランスフェクション効率(トランスフェクト細胞の%)のグラフ表示であり、EVに電気穿孔なしで0.5μgのBSA-フルオレセインをロードしている(0V、対照)、または電気穿孔なしでPBS単独をロードしている(0V、対照)図である。0Vの各対照に対して300Vでロードした各BSA-フルオレセイン投与量について*p<0.005。図21Dは、細胞質のポジティブGFP染色(左)を示す、300Vでの電気穿孔によって、1μgの組換えGFPをプレロードしたウシ硝子体EVのボーラスの適用後のARPE-19細胞の代表的な顕微鏡写真である。核を標識し(中央、Hoechst染色)、合併した画像(右)は相当数のトランスフェクトされた細胞を示している。図21Eは、フルオレセイン染色を示さない(左)、電気穿孔なし(0V、対照)でGFPと混合したウシ硝子体EVのボーラスの適用後のARPE-19細胞の代表的な顕微鏡写真である。核を標識している(右、Hoechst染色)。図21Fは、300Vでの電気穿孔によって1μg、0.5μgもしくは0.25μgのGFPをロードした、または電気穿孔なし(0V、対照)で1μgのGFPをロードしたEVの適用後のARPE-19細胞のトランスフェクション効率(トランスフェクト細胞の%)の平均±標準偏差のグラフ表示である。0Vの各対照に対して300Vでロードした各GFP投与量について*p<0.05。スケールバー(図21A図21B図21D図21E)50μm。全実験についてn=3。
【0044】
図22A-22D】図22A~22Dは、網膜を標的とし、組換えタンパク質をマウス網膜に送達するウシ硝子体EVのインビボ研究からの画像である。図22Aは、内境界膜を透過しない硝子体内のシグナルを示す、注射後3日目にフルオレセインとコンジュゲートした組換えウシ血清アルブミン(BSA)をロードした希釈量のウシEV(0.25μg)の注射後のマウス網膜組織切片の代表的な共焦点顕微鏡写真である。図22Bは、神経節細胞層(GCL)、EPL(内網状層)およびOPL(外網状層、矢じり)を横断する細胞中のシグナルを示す、BSA-フルオレセインをロードしたEVの注射3週間後のマウス網膜組織切片の代表的な共焦点顕微鏡写真である。図22Cは、(図22B)の挿入ボックスを強拡大で示し、GCLおよび網膜神経線維層の細胞クラスターでポジティブ染色を示している図である。図22Dは、PBS対照の注射3週間後のマウス網膜組織の代表的な共焦点顕微鏡写真であり、フルオレセインシグナルを示していない図である。(図22A~22D)核をHoechstで染色し(中央パネル)、右パネルで画像を合併した。略語:外顆粒層(ONL)、および内顆粒層(INL)。スケールバーは、(図22A)30μm、(図22B)50μm、(図22C)25μm、(図22D)40μmである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(発明の詳細な説明)
本発明は、細胞外小胞を固定する方法に関する。固定方法は、細胞外小胞を含有する試料を用意することと、細胞外小胞を固定するのに有効な条件下で試料を非可逆的架橋剤と接触させることとを伴う。
【0046】
本発明の方法は、任意に、試料を非可逆的架橋剤と接触させて細胞外小胞を固定する前、後、またはこれと同時に、試料をアルデヒド含有固定剤と接触させることをさらに含むことができる。さらに、本方法は、固定された細胞外小胞を画像化することを含むことができる。
【0047】
「細胞外小胞」という用語は、細胞によって分泌されるナノサイズの膜状粒子を指す。EV、多小胞体およびエクトソーム(ectosome)とも呼ばれる細胞外小胞は、ある細胞から別の細胞へのタンパク質、脂質およびRNAなどの生体分子の移動を介した細胞間コミュニケーションに関係している天然輸送ナノ小胞である。本明細書で使用される場合、細胞外小胞は、エキソマー、エキソソーム、多小胞体、腔内小胞(intraluminal vesicle)(ILV)、多小胞エンドソーム(MVE)、オンコソーム(oncosome)、20~10,000nmのサイズのマイクロベシクル、アポトーシス小体、またはエンドソームもしくは原形質膜に由来する小胞を含むことができる。
【0048】
本発明の一態様では、細胞外小胞が20ナノメートル~10,000nmのサイズを有する。
【0049】
細胞外小胞は、全ての細胞によって放出される膜に囲まれた小胞である。生合成経路に基づいて、さまざまなタイプの小胞を特定できる:(1)エキソソームは、細胞の境界膜と融合して同時にエキソソームを放出する多小胞体(MVB)を形成する後期エンドソームの内向きの出芽によって形成される;(2)脱落小胞は、境界細胞膜の外向きの出芽とそれに続く分裂によって形成される;また(3)細胞がアポトーシスを介して死にかけている場合、細胞は崩壊し、その細胞内容物をアポトーシス小体と呼ばれる異なる膜に囲まれた小胞に分割する。これらの機序が、細胞が廃棄物を廃棄することを可能にしており、近年、細胞間コミュニケーションに関連していることも発見された。これらの主要な構成要素は、脂質、タンパク質および核酸である。これらは、核酸および可溶性タンパク質を含む水性コアをカプセル化するタンパク質-脂質二重層で構成されている。細胞外小胞の起源の特定は、典型的には、生体分子特性評価技術を使用してタンパク質、核酸および脂質含有量を決定して行われる。
【0050】
「固定する(fixing)」および「固定される(fixed)」という用語は、その技術分野で受け入れられている意味に従って使用され、当技術分野で既知の多種多様な固定プロトコルによって達成することができるタンパク質および核酸などの生物学的材料の化学処理(典型的には架橋)を指す(例えば、Current Protocols In Molecular Biology、第2巻、ユニット14、Frederick M.Ausubulら編、1995参照)。
【0051】
組織のアルデヒド固定は、架橋タンパク質を生成すると考えられる。この架橋は、固定剤中のアルデヒド基と、リジンおよびN末端a-アミノ酸基などの組織タンパク質のアミノ酸残基上のアミノ基の反応によって媒介される。この相互作用の最初の生成物は、イミノシッフ塩基(CHR1=NR2R3)またはアミノ-メチロール(CHR1OHNR2R3)中間体のアミノ-アルデヒドコンジュゲートである。次いで、中間体は、酸性プロトン、求核性ヘテロ原子または電子に富む芳香環を有するα-カルボニルメチレン炭素などの感受性隣接アミノ酸基による求核攻撃を受けてもよい。主要な求核試薬には、チロシンのフェノール環のオルト位、トリプトファンのインドール環のC-2位およびヒスチジンのイミダゾール環などの芳香環;グルタミン酸およびアスパラギン酸の側鎖カルボン酸基に隣接する炭素;リジルε-アミノ基などの塩基性ヘテロ原子;ならびにアスパラギニルおよびグルタミニルアミド基などの中性窒素原子、ならびにトリプトファンのインドール環窒素が含まれる。正式には、このような反応は全て、少なくとも反応性求電子試薬が中間体アミノ-アルデヒド共役種である限り、マンニッヒ反応型または少なくともこれに類似である。これらの反応により、求電子性アルデヒド炭素と求核性炭素またはヘテロ原子との間に共有結合が生じる。
【0052】
結果として生じる架橋は、タンパク質を特定のコンフォメーションに固定し、隣接タンパク質間に共有結合を形成することによって組織全体を固定する。架橋タンパク質は、抗体などの高分子による浸透に抵抗する。さらに、エピトープの化学修飾(アミン、アミド、または芳香族アミノ酸残基を含む)は、そのエピトープに対する抗体に認識できない変化した構造を生成する。
【0053】
最も一般的なアルデヒド固定剤はホルムアルデヒドであり、これは単官能性で、リジンのメチロール-アミノ基と隣接感受性アミノ酸標的残基との間の直接接触によって架橋を生成する。しかしながら、他の二官能性または多官能性架橋アルデヒドが知られている。これらのうち、最も一般的なのは、両末端にアルデヒドを有する5炭素鎖であるグルタルアルデヒドである。この二官能性試薬は、試薬のアルキル鎖がスペーサーとして機能するため、架橋のための追加の機会を提供する。固定に使用される特定のアルデヒド試薬に関係なく、反応機序は同様と考えられる。
【0054】
架橋は、組織の形態および完全性を保護し、スライスのために組織を硬化させ、微生物の攻撃を阻害する。ホルムアルデヒドによるアミノ酸およびタンパク質の架橋の化学は、当技術分野で周知であり、全体が参照により本明細書に組み込まれる、HarlanおよびFeairheller、「Chemistry of the Cross-Linking of Collagen During Tanning」およびKellyら「Cross-Linking of Amino Acids By Formaldehyde」、(1976)に記載されている。タンパク質アミノ基および芳香族アミノ酸とホルムアルデヒドの架橋におけるマンニッヒ型反応の役割は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Fraenkel-Conratら、J.Biol.Chem.168:99~118(1947)およびFraenkel-Conratら、Biol.Chem.174:827~843(1948)に論じられている。アルデヒド架橋反応のさらなる議論は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Fox, J.Histochem.Cytochem.33:845~855(1985);Jones、「Reactions of Aldehyde with Unsaturated Fatty Acids During Histological Fixation」、P.J.Stoward編Fixation in Histochemistry、(1973);およびKunkelら、Mol.Cell.Biochem.34:3(1981)に見られる。マンニッヒ型反応は、一般的に、March、「Advanced Organic Chemistry」、特に333、424、670~672(1968)に記載されている。米国特許第5,578,452号明細書を参照されたい。
【0055】
本発明の方法で固定された試料を、当技術分野で一般的であり、周知であるように、さらに染色して試料の画像化を増強することができる。例示的な染色剤およびそれらの一般的な用途を記載する、例として以下がある:ホスホイノシチドを染色するために使用されるモナゾ化合物ヤヌスグリーンB;タンパク質を染色するためのジスアゾ化合物ポンソーS;エステラーゼ活性を検出するためのジアゾニウム塩ファストレッドTR、アルカリホスファターゼ、エステラーゼおよびβ-グルクロニダーゼ活性を検出するためのジアゾニウム塩ファストブルーRR;コラーゲンおよび他のタンパク質を染色および定量化するためのアリールメタン化合物ファストグリーンFCF;タンパク質を染色するためのアリールメタン化合物クーマシーブリリアントブルーR250、システインに富むタンパク質および硫酸化糖タンパク質を染色するためのアリールメタン化合物アルデヒドフクシン;アルミニウムを検出するためのヒドロキシトリフェニルメタンアウリントリカルボン酸;タンパク質を染色するためのキサンテン化合物エオシンY;ケラチンおよび脂質を染色するためのキサンテン化合物ローダミンB;RNAおよびDNAの存在を検出し、リン脂質を染色するためのキサンテン化合物ピロニンY;求核基、例えばアミノ基、ヒドロキシル基およびチオール基、特にタンパク質および核酸上の反応性基と反応するためのキサンテン化合物フルオレセインイソチオシアネート;硫酸化グリコサミニノグリカンを検出するためのアクリジン色素アクリフラビン;DNAおよびRNAならびにデンプン顆粒を染色するためのアクリジン化合物アクリジンオレンジ;脂質および酸性ムコ多糖類を染色するためのアクリジン化合物ホスフィン;核酸を染色のためのアクリジン化合物キナクリン;核酸、特に二本鎖核酸を検出するためのフェナントリジン化合物臭化エチジウム;タンパク質を検出のためのアジン化合物ニグロシンWS;核酸および脂質構造を検出するためのアジン化合物ニュートラルレッド;プロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンを検出するためのアジン化合物サフラニン-O;脂質を染色するためのオキサジン化合物ナイルレッド;DNAおよびRNAを検出するためのオキサジン化合物ガロシアニンクロムミョウバン;DNAを含む脂質および疎水性化合物を染色するためのオキサジン化合物ナイルブルー;DNAを含む脂質および疎水性化合物を染色するためのオキサジン化合物ナイルブルー;DNA、RNA、およびムチン(すなわち、高度にグリコシル化された糖タンパク質)を検出するためのチアジン化合物アズールB;硫酸化ムチンおよびアミロイドタンパク質を染色するためのチアジン化合物トルイジンブルー;キチンおよびセルロースを染色するためのポリエン化合物カルコフロールホワイトM2R;DNAおよびムコ多糖類を検出するためのポリエン化合物フルオロゴールド;DNAを染色するためのポリメチン化合物YO-PRO-1;脂質膜を染色するためのポリメチン化合物DiO、Dil、DiD;核酸を染色するためのベンズイミダゾール化合物DAPIおよびHoechst 33342;核酸を染色するためのチアゾール化合物チアゾールオレンジ;アミロイドタンパク質を染色するためのチアゾール化合物チオフラビンT;核酸、リン脂質、デンプン、セルロースおよび筋タンパク質を染色するフラビノイド化合物ヘマトキシリンおよびヘマテインならびにその誘導体;エステラーゼおよびグリコシダーゼ(glyosidase)活性を検出するためのカルボニル化合物インドキシルエステルおよびその誘導体;特に石灰化組織のカルシウムを検出するためのアントラキノン化合物アリザリンレッドS;ミエリンを検出するためのフタロシアニン化合物ルクソールファストブルーMBS;RNAおよびグリコサミノグリカンを染色するためのフタロシアニン化合物キュプロリニックブルー(cuprolinic blue)、ならびにグリコサミノグリカンのためのアルシアンブルー8G;脂肪およびコレステロールを含む脂質を染色するための四酸化オスミウム;デンプン、グリコーゲンおよびタンパク質の示差染色のためのヨウ素;例えば、銅代謝の生理学的異常の検出における、銅のアッセイのためのジチオオキサミドおよびp-ジメチルアミノベンジリデンローダミン;カルシウムの存在を検出するためのテトラサイクリンおよびその誘導体;ならびにペルオキシダーゼおよびカタラーゼなどのオキシダーゼを検出するためのジアミノベンジジン。
【0056】
当業者によって理解されるように、化合物および染色剤は、特定された化合物との反応に加えて、細胞および組織の構造を明らかにするための用途を有する。これらの細胞構造および組織構造への試薬の結合は、単一細胞成分ではなく、標本中の種々の構成成分(例えば、異質染色)を介して発生してもよい。これらの染色剤およびその使用は、当技術分野で周知であり、全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0070324号明細書に開示されている。
【0057】
本発明の一実施形態では、細胞外小胞を固定するために本発明で処理される試料が、生物学的流体または組織である。
【0058】
本発明の一態様では、試料が生物学的流体または組織である。好ましい生物学的流体試料は、血液製剤、ゾル、懸濁液、ゲル、コロイド、流体、液体、血漿、プラスチック固体、懸濁液、ゲル、母乳、乳頭吸引液、尿、精液、羊水、脳脊髄液、硝子体液、房水、滑液、リンパ、胆汁、唾液、胆汁、耳垢(イヤーワックス)、乳び、糜粥、内リンパ、外リンパ、滲出液、糞便、射精液、胃酸、胃液、粘液、心膜液、腹水、胸水、膿、粘膜分泌物、皮脂(皮膚油)、漿液、恥垢、痰、汗、涙、膣分泌物、外科的廃棄物および嘔吐物から選択される。最も好ましい生物学的流体試料は、硝子体液または房水、尿、脳脊髄液、乳頭吸引液および血液製剤である。本発明の別の好ましい実施形態では、生物学的流体試料が、全血、血漿、血小板および血清からなる群から選択される血液製剤である。
【0059】
本発明のさらなる態様では、生物学的組織試料が、皮膚、骨、軟骨、腱、靭帯、椎間板、角膜、水晶体、半月板、毛、横紋筋、平滑筋、心筋、脂肪組織、線維組織、神経組織、結合組織、蝸牛、精巣、卵巣、胃、肺、心臓、肝臓、膵臓、腎臓、腸および眼から選択される組織である。
【0060】
本発明の一実施形態では、細胞外小胞を固定するために使用される非可逆的架橋剤(non-reversible cross-linking agent crosslinking agent)が、水溶性カルボジイミド、ハロゲン化シアンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、非可逆的架橋剤が、臭化シアン、フッ化シアン、塩化シアンおよびヨウ化シアンから選択されるハロゲン化シアンである。最も好ましくは、非可逆的架橋剤が1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。
【0061】
さらに、本発明は、任意に、試料を非可逆的架橋剤およびアルデヒド含有固定剤と接触させるのと独立に、その前、後、またはこれと同時に、細胞外小胞をさらなる架橋剤で固定することを含むことができる。例示的には、架橋剤には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミドの誘導体、N,N-メチレンビスアクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、N,N-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、ホルムアルデヒドを含まない架橋剤、N-(1-ヒドロキシ-2,2-ジメトキシエチル)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ホルマリン固定液、ホルマールカルシウム、ホルマール生理食塩水、亜鉛ホルマリン(非緩衝)、Zenker固定液、Helly固定液、B-5固定液、Bouin液、Hollande液、Gendre液、Clarke液、Carnoy液、メタカン、アルコール性ホルマリンおよびホルモール(formol)酢酸アルコールが含まれる。
【0062】
本発明のさらなる態様では、固定細胞外小胞の画像化が、透過型電子顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法、低温電子顕微鏡法、双眼実体顕微鏡法、広視野顕微鏡法、偏光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、多光子顕微鏡法、微分干渉顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、レーザー走査型共焦点顕微鏡法、多光子励起顕微鏡法、光線顕微鏡法、超音波顕微鏡法、比色分析法、化学発光法、分光測光法、ポジトロン放射形断層撮影法、コンピュータ断層撮影法または磁気共鳴画像法によって行われてもよい。
【0063】
一般的に使用される3種類の電子顕微鏡は、それぞれ異なる造影機序を介して画像を生成する(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ruska, E.、「The Development of the Electron Microscope and of Electron Microscopy」、Nobel Lectures、Physics 1981~1990(1986);Reimerら、Transmission Electron Microscopy :Physics of Image Formation、Springer(2008);Bozzolaら、Electron Microscopy、JonesおよびBartlett(1992))。TEMでは、60~300keVのエネルギーを有する静止した広げられた電子ビームが、0.5μmよりも薄い(通常、はるかに薄い)試料を照射する。試料が、送信される電子の位相および振幅を修飾するので、結果として得られる画像は試料に関する情報を含む。走査型TEM(STEM)では、試料上で集束ビームを走査し、ピクセルごとに透過電子を検出することによって画像を記録する。走査型電子顕微鏡法(SEM)は、典型的には500eV~30keVのエネルギーを有する集束ビームを、(バルク)試料の表面上でスキャンし、ピクセルごとに後方散乱または二次電子を回収する。全ての電子顕微鏡法が、電子源の動作を可能にすると同時に、試料以外からの散乱を最小限に抑えるために、真空を要する。したがって、試料は真空下で安定でなければならないので、伝統的に固体状態で調製される。しかしながら、米国特許出願公開第2012/0120226号明細書に開示されている、流体試料の画像化で近年の進歩が見られる。さらに、顕微鏡法、測光法および断層撮影法を介した画像化の使用が当技術分野で周知であり、全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,831,781号明細書および同第5,205,291号明細書;ならびに米国特許出願公開第2009/0091566号明細書および同第2012/0208184号明細書;ならびに国際特許出願公開第2006022342号パンフレットおよび同第2012135961号パンフレットに開示されている。
【0064】
本発明の一実施形態では、生物学的試料中の非可逆的架橋剤および任意にアルデヒド含有固定剤で固定された細胞外小胞の検出が、画像化に基づく。さらに、生物学的試料が臨床試料であることができる。臨床試料は、臨床薬で治療された患者からのものであることができる。さらに、本発明の方法は、固定された細胞外小胞の画像化に基づいて、臨床試料を提供する対象が、疾患または障害を有するかどうかを診断することを含む。患者は、それだけに限らないが、ヒト、動物、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ヤギおよびウマなどの哺乳動物を含むことができる。
【0065】
本発明の別の態様では、疾患または障害が、がん、炎症性疾患、感染症、変性疾患、病原体によって引き起こされる疾患、神経疾患および障害、ならびに内部機能障害からなる群から選択される。好ましい実施形態では、疾患または障害が、緑内障および他の眼疾患からなる群から選択される内部機能障害である。
【0066】
本明細書に記載される本発明で検出することができる緑内障障害および眼疾患には、それだけに限らないが、境界線所見を伴う前緑内障開放隅角、開放隅角、低リスク、解剖学的狭隅角原発性隅角閉鎖の疑い、ステロイド応答者、高眼圧、緑内障による損傷のない原発性隅角閉鎖(視神経または視野喪失のないpasまたは高IOP)、不特定開放隅角緑内障、原発性開放隅角緑内障、慢性単純緑内障、低眼圧緑内障、色素性緑内障、水晶体の偽落屑を伴う水晶体嚢緑内障、開放隅角緑内障の残存段階、不特定原発性隅角閉鎖緑内障、急性隅角閉鎖緑内障発作、慢性隅角閉鎖緑内障、間欠性隅角閉鎖緑内障、隅角閉鎖緑内障の残存段階、眼の外傷に続発する緑内障、眼の炎症に続発する緑内障、網膜血管閉塞を含む他の眼障害に続発する緑内障、1型糖尿病合併症、2型糖尿病合併症、水晶体の障害、眼内レンズの障害、他の眼症状後の障害、新生物、良性新生物、または悪性腫瘍が含まれる。薬物に続発する緑内障、上強膜静脈圧が上昇した緑内障、分泌過多緑内障、房水逆流(aqueous misdirection)悪性緑内障、他に分類される疾患における緑内障、先天性緑内障、アクセンフェルト異常、牛眼、小児の緑内障、新生児の緑内障、水眼、球状角膜、緑内障を伴う先天性緑内障巨大角膜、先天性緑内障における巨大眼球、緑内障を伴う巨大角膜、および絶対緑内障も含まれる。眼科薬および製剤の副作用、急性濾胞性結膜炎、炭酸脱水酵素阻害剤の副作用、ならびに眼科薬および製剤の過少量投与の副作用も含まれる。
【0067】
疾患および障害の決定において、細胞外小胞は破壊されず、全体のままである。上記の方法のいずれかによって固定された細胞外小胞を観察することにより、サイズ、形態、密度および小胞上の可能なコーティングを使用して、対象から提供された試料が疾患または障害を有するかどうかを決定することができる。
【0068】
本発明のさらなる実施形態では、疾患または障害が、免疫不全または過敏症を特徴とする内部機能障害である。好ましい免疫不全または過敏症には、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、全身性強皮症、クローン病、潰瘍性大腸炎、アレルギー性状態、湿疹、喘息、エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、サルコイドーシス、肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症を含む)、無顆粒球症、血管炎(ANCAを含む)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、免疫溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病(Bechet disease)、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン筋無力症症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群(Sjorgen's Syndrome)、スティーブンス・ジョンソン症候群、固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病、またはギラン・バレー症候群が含まれる。
【0069】
本発明の別の実施形態では、非可逆的架橋剤およびアルデヒド含有固定剤で固定された細胞外小胞の画像化に基づいて診断される疾患または障害が、急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、腺癌、腺肉腫、副腎がん、副腎皮質癌、肛門がん、未分化星状細胞腫、血管肉腫、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、B細胞リンパ腫、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨髄がん、腸がん、脳がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳がん、カルチノイド腫瘍、子宮頸がん、胆管細胞癌、軟骨肉腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚リンパ腫、皮膚黒色腫、びまん性星状細胞腫、非浸潤性乳管癌(DCIS)、子宮内膜がん、上衣腫、類上皮肉腫、食道がん、ユーイング肉腫、肝外胆管がん、目のがん、卵管がん、線維肉腫、胆嚢がん、胃がん、胃腸がん、胃腸カルチノイドがん、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、多形性膠芽腫(GBM)、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部がん、血管内皮腫、ホジキンリンパ腫、ホジキン病、下咽頭がん、浸潤性乳管癌(IDC)、浸潤性小葉癌(ILC)、炎症性乳がん(IBC)、腸がん、肝内胆管がん、浸潤性/浸潤性乳がん、膵島細胞がん、顎がん、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、平滑筋肉腫、軟膜転移、白血病、唇がん、脂肪肉腫、肝臓がん、非浸潤性小葉がん、低悪性度星状細胞腫、肺がん、リンパ節がん、リンパ腫、男性乳がん、髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、間葉性軟骨肉腫、間葉腫(mesenchymous)、中皮腫、転移性乳がん、転移性黒色腫、転移性扁平上皮頚部がん、混合膠腫、口がん(mouth cancer)、粘液癌、粘膜黒色腫、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、鼻腔がん、鼻咽頭がん、頸部がん、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍(NET)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、非小細胞肺がん、燕麦細胞がん、眼がん、眼黒色腫、乏突起膠腫、口のがん(oral cancer)、口腔がん(oral cavity cancer)、中咽頭がん、骨原性肉腫、骨肉腫、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣原発性腹膜癌、卵巣性索間質腫瘍、ページェット病、膵臓がん、乳頭癌、副鼻腔がん、副甲状腺がん、骨盤がん、陰茎がん、末梢神経がん、腹膜がん、咽頭がん、褐色細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫、松果体領域の腫瘍、松果体芽腫、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞癌、腎盂がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、肉腫(骨)、肉腫(軟部組織)、肉腫(子宮)、洞がん、皮膚がん、小細胞肺がん(SCLC)、小腸がん、軟部組織肉腫、脊椎がん、脊柱がん、脊髄がん、脊髄腫瘍、扁平上皮癌、胃がん、滑膜肉腫、T細胞リンパ腫、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫/胸腺癌、甲状腺がん、舌がん、扁桃がん、移行上皮がん(膀胱)、移行上皮がん(腎臓)、移行上皮がん(卵巣)、トリプルネガティブ乳がん、卵管がん、管状癌、未診断がん、尿管がん、子宮腺癌、子宮がん、子宮肉腫、膣がんおよび外陰がんからなる群から選択されるがんである。より好ましい実施形態では、がんが眼がんである。
【0070】
さらなる実施形態では、非可逆的架橋剤および任意にアルデヒド含有固定剤で固定された細胞外小胞の画像化に基づいて診断される疾患または障害が、脱髄疾患、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病、ウィルソン病、脊髄性筋萎縮症、レビー小体病、フリードライヒ運動失調症、自閉症、自閉症スペクトラム障害、疾患に関連するシナプス密度、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群から選択される神経疾患である。
【0071】
さらに別の実施形態では、診断される疾患または障害が、物質乱用関連障害、アルコール使用障害、アンフェタミン使用障害、大麻使用障害、カフェイン誘発障害、コカイン使用障害、吸入剤使用障害、オピオイド使用障害、幻覚剤障害、鎮静剤使用、催眠剤使用または抗不安薬使用障害、多物質使用障害、性機能障害、性的興奮障害、男性勃起障害、男性機能低下障害、女性機能低下障害、摂食障害、過食障害、神経性過食症、神経性食欲不振、不安、強迫性障害症候群、パニック発作、心的外傷後ストレス障害、広場恐怖症、強迫性および強制行動、衝動制御障害、病的賭博、間欠性爆発性障害、盗癖、放火癖、パーソナリティ障害、スキゾイドパーソナリティ障害、妄想性パーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害および反社会性パーソナリティ障害、統合失調症サブタイプ、統合失調感情障害、統合失調症未分化型、妄想性障害、気分循環性障害、身体表現性障害、心気症、解離性障害、ならびに離人症性障害などの神経障害を含む。
【0072】
本発明の別の実施形態では、非可逆的架橋剤および任意にアルデヒド含有固定剤で固定された細胞外小胞の画像化に基づいて診断される疾患または障害が心血管疾患である。
【0073】
本発明の別の態様は、疾患マーカーについて2つ以上のアッセイを実施することによる疾患または障害の診断を含む。
【0074】
診断してもよい例示的な感染症には、インフルエンザA基質タンパク質、インフルエンザH3N2、インフルエンザH1N1(季節性)、インフルエンザH1N1(新規)、インフルエンザB、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A)、結核菌(Mycobacterium Tuberculosis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MR)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(RS)、百日咳菌(Bordetella pertussis)(百日咳)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B)、インフルエンザH5N1、インフルエンザH7N9、アデノウイルス(Adenovirus)B、アデノウイルス(Adenovirus)C、アデノウイルス(Adenovirus)E、b型肝炎、c型肝炎、デルタ型肝炎、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、HSV-1、HSV-2、HIV-1、HIV-2、デング熱1、デング熱2、デング熱3、デング熱4、マラリア、西ナイルウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、クエバ(Cueva)ウイルス、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)(シャーガス)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(腸内細菌科(Enterobacteriaceae)種)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)、エプスタインバーウイルス(モノ)、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス(1)、パラインフルエンザウイルス(2)、パラインフルエンザウイルス(3)、パラインフルエンザウイルス(4a)、パラインフルエンザウイルス(4b)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)A、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)B、コロナウイルス229E、コロナウイルスHKU1、コロナウイルスOC43、コロナウイルスNL63、新規コロナウイルス、ボカウイルス、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、肺炎連鎖球菌(penic R)、肺炎連鎖球菌(S)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、パラ百日咳菌(Bordetella parpertussis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(ampic R)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(ampic S)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、シュードモナス属(Pseudomonas)種(緑膿菌(aeruginosa))、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)(腸内細菌科(Enterobacteriaceae)種)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)(腸内細菌科(Enterobacteriaceae)種)、霊菌(Serratia marcescens)(腸内細菌科(Enterobacteriaceae)種)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)、レジオネラ属(Legionella)種、大腸菌(Escherichia coli)、カンジダ属(Candida)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、ヒトパピローマウイルス、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、プラスモジウム属(Plasmodium)およびトリコモナス属(Trichomonas)(膣)が含まれる。
【0075】
一実施形態では、診断が、非可逆的架橋剤で固定された細胞外小胞を含有する臨床試料の標準画像を用意することを含む。この画像は、特定の疾患または障害を有する対象からのものである。次いで、画像を、対象の臨床試料の画像と比較して使用する。画像化された固定された細胞外小胞を、サイズ、密度、形態および/または空間的分布に関して比較する。次いで、この比較を使用して、対象が特定の疾患または障害を有するかどうかを決定する。この方法は、任意に、試料を非可逆的架橋剤と接触させて細胞外小胞を固定する前、後、またはこれと同時に、試料の全てをアルデヒド含有固定剤と接触させることをさらに含むことができる。さらに、この方法は、対象が特定の疾患または障害を有するかどうかを決定する工程に基づいて、治療薬を対象に投与することをさらに含んでもよい。
【0076】
エキソマー、エキソソーム、エクトソーム(ここではマイクロベシクル、MVと呼ばれる)、およびアポトーシス小体などのEVは、種々のサイズで存在し、サイズ、形態、濃度および空間的局在化などのこれらの特性をEVの特性評価に利用できる。EV形態の変化が、正常な状態または病的状態のいずれかを表してもよく、EVの特性の信頼できる特性評価を可能にする方法が、EVの起源の決定に役立ってもよい。最初の工程は、EV画像化を信頼できるバイオマーカーとして使用することができるかどうかを決定することである。健康な患者に由来するEVと疾患に存在するEVを区別することが重要である。ここでは、神経膠腫を有する複数の患者の血漿が、図3A~3Cに示されるように、周囲の高電子密度の物質とのクラスターにグループ化された多数のEVを含有することが示される。このEVの形態および互いに関する空間的局在化は、図4A~4Bの健康な対照患者の血漿から単離されたEVの形態およびサイズと大きく異なる。健康な対照患者では、EVはより少ない頻度で、クラスター化なしで観察された。これらのデータは、疾患に由来するEVが健康な対照とは異なることを示唆しており、この方法を、疾患を正常から識別するための診断として使用できることを示唆している。
【0077】
潜在的な液体生検検査の別の重要な品質は、ある疾患と別の疾患を区別することである。EVの形態、サイズおよび空間的局在化が疾患の診断を容易にする可能性があるという仮説が立てられる。これを試験するために、種々の悪性腫瘍を調べ、血漿から単離したEVを可視化し、これらの形態を比較した。全身性黒色腫の患者では、神経膠腫の患者(図3A~3C)または健康な対照(図4A~4B)からのEVと比較すると形態は異なるが、EVに似た高電子密度のシグナルが観察された(図5A~5B)。さらに、EVの形態が種々の疾患で異なるかどうかを決定するために、他のがんおよび脳脊髄液などの他の流体を試験した。そのため、神経芽細胞腫および肉腫と診断された患者の脳脊髄液から試料を収集した;EVを、EDC-グルタルアルデヒド固定を使用して画像化したところ、両方の障害でEVを特定することが可能であった(図6A~6D)。データは、神経芽細胞腫の患者から画像化したEVが、クラスター化した大きなEVを含有していることを示している。しかしながら、肉腫患者の脳脊髄液からのEVを可視化すると、EVは神経芽細胞腫CSFで観察されたものよりも小さかった。これらのデータは、種々のがんについて試験した各液体生検でEVの形態が異なることを意味している。EDC-グルタルアルデヒド固定法が、種々の他の極めて流行性のがんの患者の他の生物学的流体標本(血漿、脳脊髄液および乳管液)に関連するEVの画像化に広く適用可能であると予想される。さらに、この基本技術により、眼液、血漿、CSFおよび乳管液中のEVの構造の研究が可能になる。次いで、種々の疾患および健康な対照におけるEVの形態を比較することができる。この情報は、がんの診断、排除、予後診断に、または転移能の可能性の指標として役立ってもよい。
【0078】
診断はまた、対象の疾患または障害の進行または退行を監視することも含むことができる。これは、非可逆的架橋剤で固定された細胞外小胞を含有する対象の臨床試料の前の画像を用意することと、これを非可逆的架橋剤で固定された細胞外小胞を含有する対象の臨床試料の画像と比較することとによって達成される。細胞外小胞を、サイズ、密度、形態および/または空間的分布に関して比較し、比較に基づいて、疾患または障害が進行しているまたは退行しているかどうかが決定される。この方法は、任意に、試料を非可逆的架橋剤と接触させて細胞外小胞を固定する前、後、またはこれと同時に、試料をアルデヒド含有固定剤と接触させることをさらに含むことができる。さらに、この方法は、疾患または障害が進行しているまたは退行しているかどうかを決定する工程に基づいて、治療薬を対象に投与することをさらに含んでもよい。
【0079】
本発明の最後の態様は、生物学的試料中の細胞外小胞を固定するためのキットに関する。キットは、試料を保持するための支持基質と、アルデヒド含有固定剤と、非可逆的架橋剤とを含む。非可逆的架橋剤は、水溶性カルボジイミド、ハロゲン化シアンおよびこれらの混合物から選択される。最も好ましくは、非可逆的架橋剤が1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。
【0080】
キットの支持基質は、スライド、チップ、カラムマトリックス、ディップスティック、膜、粒子(例えば、ビーズもしくはナノ粒子)またはマイクロタイタープレートのウェルなどの固体支持体を含むことができる。
【実施例
【0081】
以下の実施例は、本開示の実施形態の実施を例示することを意図しているが、その範囲を限定することを決して意図していない。
【0082】
実施例1-流体試料の調製および処理
EV単離のために収集された房水または硝子体液標本を、固定せずに直ちに処理した。EVを、以下に記載される超遠心プロトコルを使用して、ヒトまたはウシ硝子体液、房水、血漿、乳頭吸引液または脳脊髄液(CSF)から単離した。種々の黒色腫または神経膠腫と診断された患者が血漿を提供し、記載される方法を使用してEVを単離した。神経芽細胞腫または肉腫と診断された患者が脳脊髄液を提供し、EVを単離した。乳がんと診断された患者が乳頭吸引液を提供し、EVを単離した。
【0083】
実施例2-細胞外小胞の単離および流体試料の精製
流体から細胞外小胞を単離する方法を適合させた(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Waldら、「The Light Reaction in the Bleaching of Rhodopsin」、Science 111:179~181(1950))。この研究について、目標は硝子体液、房水、乳頭吸引液、血漿および脳脊髄液(CSF)標本が細胞を含まないようにすることであった。硝子体液を一連の低速遠心分離で清澄化した。ウシ硝子体液または房水については、およそ8mlの硝子体液(または100μlの房水)を15ml管に入れ、Sorvall legend RT Swingingバケット(Sorvall)で、4℃で30分間、2,000g(2500rpm)で遠心分離した。次いで、上清を新しい15ml管に移した。次いで、遠心分離工程を繰り返した。次いで、上清を新しい管に移し、SS-34ローター(DuPont)を使用して、4℃で30分間、Sorvall RC-58遠心分離機(Sorvall)で、10,000gで遠心分離した。次いで、上清を移し、工程を繰り返した。試料を超遠心管(Beckman)およびスイングバケットローター(SW-41、Beckman)に移し、L7-55超遠心機(Beckman)で、4℃で1時間、100,000gで遠心分離した。上清を新しい管に移した。この工程を繰り返した。試料を50μlの滅菌トリス緩衝生理食塩水(TBS、pH8)に再懸濁し、シリコン処理管に入れた。画像化用の試料を直ちに処理し、残りの試料を-80℃で凍結した。
【0084】
実施例3-液体試料のナノ粒子追跡分析
NanoSight NS300システム(Malvern)を使用して、ナノ粒子追跡分析を実施し、溶液中の30~800nmの粒子を特性評価した。硝子体液、房水、血漿またはCSFから単離した細胞外小胞を、1ml当たりおよそ2.5pgのタンパク質の濃度で100μlのトリス緩衝生理食塩水(TBS、pH7.0)に再懸濁し、次いで、試料を分析のためにTBS中最終体積2mlに希釈した。粒子をロードし、カメラの焦点を合わせ、5つの映像をそれぞれ60秒間取り込んだ。映像を記録し、次いで、NanoSightソフトウェア(バージョン3.0)を使用して分析して、EVのサイズ分布および粒子濃度を決定した。グラフを作成した。各粒子のブラウン運動をフレーム間で追跡し、最終的にはストークス・アインシュタイン方程式を適用してサイズの計算を可能にする。
【0085】
実施例4-電子顕微鏡法用の液体試料の従来のグルタルアルデヒドのみの固定
従来のTEM固定法で処理したEV溶液を、「グルタルアルデヒドのみ」または「Glutのみ」と呼ぶ。EVを入手し、上記のように緩衝液に再懸濁した。ホルムバール/カーボンコーティングEMグリッド(Electron Microscopy Sciences)の表面上をポリ-L-リジン溶液(%、Sigma Aldrich)でコーティングした。およそ15μlのポリ-L-リジンをEMグリッドのホルムバール/カーボンコーティング表面に適用し、試料を加湿チャンバー内で、室温で15分間インキュベートした。ポリ-L-リジン溶液をピペットで除去し、グリッドを室温で10分間乾燥させた。
【0086】
次に、5μLのEV含有溶液をポリ-L-リジン-ホルムバール/カーボンコーティングEMグリッドにピペットで移し、加湿チャンバー内で、室温で30分間インキュベートした。次に、EV溶液をピペットで除去した。試料を、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中2.5%グルタルアルデヒド、4%パラホルムアルデヒド、0.02%ピクリン酸からなる「グルタルアルデヒド固定液」で固定した。15μlのグルタルアルデヒド溶液をEMグリッドにピペットで移し、試料を室温で15分間インキュベートした(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Faivreら、「In Frame Fibrillin-1 Gene Deletion in Autosomal Dominant Weill-Marchesani Syndrome」、J.Med.Genet.40:34~36(2003))。その後、グルタルアルデヒド固定液をピペットで除去した。グリッドを、15μlの再蒸留水で、室温で5分間洗浄した。試料を室温でそれぞれ5分間、2回洗浄した。試料を室温で乾燥させ、以下に記載されるようにJEM 1400電子顕微鏡(JEOL, USA, Inc)で表示した。EDC-ホルマリン固定標本を、以下に記載されるようにさらに処理した。
【0087】
実施例5-EDC-ETT溶液の調製
EDC溶液固定法を、以前の報告から適合させた(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Reardonら、「Identification in Vitreous and Molecular Cloning of Opticin, a Novel Member of the Family of Leucine-Rich Repeat Proteins of the Extracellular Matrix」、J.Biol.Chem.275:2123~2129(2000);Wheatleyら、「Immunohistochemical Localization of Fibrillin in Human Ocular Tissues.Relevance to the Marfan Syndrome」、Arch.Ophthalmol.113:03~109(1996))。0.1M 1-メチルイミダゾール緩衝溶液(0.1M 1-メチルイミダゾール、300mM NaCl、12N NaOHでpHを8.0に調整)を調製し、室温で最大3か月間保存した。EDC溶液は各実験のために新たに調製した。0.96mlの0.1M 1-メチルイミダゾール緩衝溶液を測定し、13mgの5-(エチルチオ)-1H-テトラゾールを添加した(ETT、Sigma Aldrich、最終濃度は0.1Mであった)。12N NaOHでpHを8.0に調整した。次に、19.2mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を添加し(Sigma Aldrich、最終濃度0.10M)、次いで、12M HClを使用してpHを8.0に再調整した。EDC-ETT溶液を使用するまで氷上に置いた。
【0088】
実施例6-電子顕微鏡法での液体試料のEDC-グルタルアルデヒド固定
単離した全てのEVを、20μlのTBS(pH8.0)に再懸濁し、4℃に保った。ホルムバール/カーボンコーティングEMグリッド(Electron Microscopy Sciences)の表面上をポリ-L-リジン溶液(%、Sigma Aldrich)でコーティングした。およそ15μlのポリ-L-リジンをEMグリッドのホルムバール/カーボンコーティング表面に適用し、試料を加湿チャンバー内で、室温で15分間インキュベートした。ポリ-L-リジン溶液をピペットで除去し、使用準備ができるまでグリッドを加湿チャンバー中に置いておいた。次に、5μlの氷冷EDC/ETT溶液と5μlのTBS(pH8.0)に懸濁した氷冷EVを1.5mlの予冷シリコン処理管に添加することによって、等量の新たに作成したEDC ETT溶液とEV溶液を合わせた。試料を氷上で30分間インキュベートした。10μlのEDC/ETT-EV溶液をホルムバール/カーボンコーティングEMグリッドの表面に適用し、試料を、加湿チャンバー内で、4℃で30分間インキュベートした。EDC試薬の架橋能力を活性化するために、試料をインキュベーター内の加湿チャンバーに50℃で3時間入れた。試料をインキュベーターから取り出し、ピペットを使用してEDC溶液を除去した。試料を、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中2.5%グルタルアルデヒド、4%パラホルムアルデヒド、0.02%ピクリン酸を含有するグルタルアルデヒドベースの架橋溶液を使用した二次固定で固定し、室温で15分間インキュベートした。泡をEMグリッドからピペット処理することによって、グルタルアルデヒド溶液を除去した。15μlの再蒸留水をグリッド上に置き、室温で5分間インキュベートすることによって、グリッドを洗浄した。水を除去し、もう一度洗浄した。最後に、試料をネガティブに染色した、または以下に記載されるようにDNA、RNAおよびタンパク質について染色した。ネガティブ染色では、試料を2%酢酸ウラニル、pH7、および2%メチルセルロース/0.4%酢酸ウラニル、pH4で連続的に対比した。ポジティブ染色の場合、試料を、以下に記載されるようにアクリジンオレンジまたはCFSEで染色した。それぞれの染色剤で染色した後、次いで、EMグリッドを以下に記載されるように電子顕微鏡での画像化のために載置した。
【0089】
実施例7-流体試料の透過型電子顕微鏡(TEM)画像化
全てのEMグリッドを、100kVで動作するJEM 1400電子顕微鏡(JEOL, USA, Inc)で表示した。デジタル画像を、Veleta 2K x 2K CCDカメラ(Olympus-SIS)で取り込んだ。電子顕微鏡画像を記録し、ImageJソフトウェアを使用してEVのサイズおよび周波数を分析した。
【0090】
実施例8-TEMのための流体試料の核酸の染色
核酸のTEM染色では、アクリジンオレンジ染色液(Exo-Red Exosome RNA Fluorescent Label、System Biosciences)を、5μlの超遠心分離で精製したEVと、25℃で30分間インキュベートした。臭化エチジウム(EtBr)で染色したEVの場合、5μg mlのEtBr溶液を5μlの超遠心分離で精製したEVと25℃で30分間混合した。TEMでのタンパク質染色のために、TBS(pH7.4)に希釈した500μM CFSEを5μlの超遠心分離で精製したEVと25℃で30分間混合した。次いで、上記の全ての試料を固定し、載置し、上記のようにTEMで画像化した。
【0091】
実施例9-硝子体液および眼組織の透過型電子顕微鏡法
ヒトまたはウシ硝子体組織を上記のように入手した。試料から低速遠心分離で細胞を取り除き、以下に記載されるようにHおよびE染色ならびに画像化でホールマウント標本を試験した。硝子体の場合、2μLをブロックにピペットで移し、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中2.5%グルタルアルデヒド、4%パラホルムアルデヒド、0.02%ピクリン酸の溶液に固定し、室温で60分間インキュベートした(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Faivreら、「In Frame Fibrillin-1 Gene Deletion in Autosomal Dominant Weill-Marchesani Syndrome」、J.Med.Genet.40:34~36(2003))。標本を、室温でそれぞれ過剰量の緩衝液(pH7.3)で5分間洗浄した。試料を、室温で60分間、1%OsO4-1.5%フェリシアン化K(水溶液)で後固定した(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hubmacherら、「Human Eye Development is Characterized by Coordinated Expression of Fibrillin Isoforms」、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.55:7934~7944(2014))。試料を室温でそれぞれ5分間、3回緩衝液で洗浄した。試料をまとめてセットし、室温で60分間、1.5%酢酸ウラニルで染色した。試料を、段階的エタノール系列で脱水し、アセトニトリルを通して移行した。試料を浸透させ、Embed 812樹脂(Electron Microscopy Sciences)に包埋した。Leica Ultracut Tウルトラミクロトーム(Leica Microsystems)のDiatomeダイアモンドナイフ(Diatome)を使用して、組織切片を60~65nmで切断した。切片を、クエン酸鉛と対比し(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sakumaら、「Isolation and Characterization of the Human X-Arrestin Gene」、Gene 224:87~95(1998))、100kVで動作するIEM 1400電子顕微鏡(JEOL, USA, Inc)で表示した。デジタル画像を、Veleta 2K x 2K CCDカメラ(Olympus-SIS)で取り込んだ。電子顕微鏡画像を記録し、ImageJソフトウェアを使用してEVのサイズおよび周波数を分析した。核酸のTEM染色では、アクリジンオレンジ染色液(Exo-Red Exosome RNA Fluorescent Label、System Biosciences)を、5μlの超遠心分離で精製したEVと、25℃で30分間インキュベートした。臭化エチジウム(EtBr)で染色したEVの場合、5μg mlのEtBr溶液を5μlの超遠心分離で精製したEVと25℃で30分間混合した。TEMでのタンパク質染色のために、TBS(pH7.4)に希釈した500μM CFSEを5μlの超遠心分離で精製したEVと25℃で30分間混合した。次いで、上記の全ての試料を固定し、載置し、上記のようにTEMで画像化した。
【0092】
硝子体小胞のTEM可視化のために、小胞を上記のように超遠心分離を通してヒトまたはウシ硝子体から単離し、ホルムアルデヒドに再懸濁し、ホルムバール/カーボンコーティングEMグリッドにロードし、1%グルタルアルデヒドで後固定し、2%酢酸ウラニル、pH7、および2%メチルセルロース/0.4%酢酸ウラニル、pH4、またはアクリジンオレンジまたはCFSEで連続的に対比した。
【0093】
実施例10-死後の眼試料からの組織の調製および処理
疾患を有さない死後のヒトの眼を入手した(The Eye-Bank for Sight Restoration、ニューヨーク、NY)。Weill Cornell Medicine Institutional Review Boardは、この調査研究のための死後アイバンクの眼の使用に関するIRB承認の免除を与えた。死後のウシ眼は地元の精肉店(Green Village Packing、グリーンビレッジ、ニュージャージー)から入手した。解剖手順では、RNAおよびタンパク質の分解を防ぐために、眼を氷上の100mmプラスチック製ペトリ皿に入れた。SZX-16実体解剖顕微鏡(Olympus)を使用して、眼球に付着している眼窩脂肪および外眼筋を除去した。眼球を、4℃で1分間、50mM トリスHCl、150mM NaCl(pH8.0)を含有する5mlの氷冷トリス緩衝生理食塩水(TBS)ですすいだ。16g針を使用して角膜輪部(それぞれヒト眼およびウシ眼)の4mmまたは8mm後方に強膜切開を行い、次いで、ハサミで円周方向矢状切開を行い、眼球を前部カップと後部カップに分離することによって、硝子体を解剖した。ハサミを使用して、形成された硝子体を切断し、取り出し、硝子体構造と眼構造との間の癒着を切断した。ブドウ膜組織または神経網膜による硝子体汚染を避けるために注意を払った。組織試料を4℃で1分間、TBS(pH8.0)ですすいだ。電子顕微鏡法およびEV単離のために収集した硝子体標本を、以下に記載されるように固定せずに直ちに処理した。免疫組織化学、ウェスタンブロットまたはEDC-ホルマリン固定に使用する試料を15ml遠心管に入れ、4℃で少なくとも24時間、TBS(pH8.0)に希釈した10mlの4%ホルマリン(ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド(PFA)としても知られる)に浸漬した。「ホルマリンのみ」であった組織は、4℃で5分間、TBS(pH8.0)で3回洗浄し、EDCでさらに処理も固定もしなかった。免疫組織化学、ウェスタンブロットまたは核酸およびタンパク質画像化には、ホルマリンのみの組織を使用した。EDC-ホルマリン固定標本を、以下に記載されるようにさらに処理した。
【0094】
実施例11-4T1マウス乳癌腫瘍モデルおよび組織処理
4T1マウス乳がん細胞株を入手し(ATCC)、供給業者の指示に従って維持した。指数関数的に増殖する4T1細胞を収集し、室温で5分間、900rpmで遠心分離した。ペレットをPBSに再懸濁した。5x104個の4T1細胞を含有する50ulの懸濁液を、8週齢のBALB/c雌マウスの乳腺脂肪パッドに同所性注入した。2週目に、NEH動物福祉ガイドラインに従って動物を鎮静させ、安楽死させた。腫瘍および周囲組織を解剖し、4℃で1分間、TBS(pH8.0)ですすぎ、4℃で少なくとも24時間、TBS(pH8.0)に希釈した10mlの4%ホルマリンで固定した。組織を切片にした(厚さ1mm)。EDC-ホルマリン固定標本を以下に記載されるようにさらに処理し、その後、以下に記載されるようにMPMを使用して染色および画像化した。
【0095】
実施例12-EDC-ホルマリン組織固定
EDC-ホルマリン固定法を、以前の報告から適合させた(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Penaら、「iriiRNA in situ Hybridization in Formaldehyde and EDC-Fixed Tissues」、Nat Methods 6:139~141(2009)、enwickら、「Multiplexed miR A Fluorescence in situ Hybridization for Formalin-Fixed Paraffin-Embedded Tissues」、Methods Mol Biol 1211:171~187(2014))。硝子体組織を上記のように単離し、顕微鏡で検査して、試料に網膜または脈絡膜などの汚染組織がないことを確認した。マウスからの乳がん腫瘍を上記のように単離した。組織を100mmプラスチック製ペトリ皿に入れ、4℃で5分間、5mlのTBS(pH8.0)で2回洗浄し、次いで、TBS(pH8.0)に希釈した5mlの4%ホルマリンに24時間浸漬し、4℃の加湿チャンバーに保存した。試料を、4℃で5分間、氷冷TBS(pH8.0)で3回洗浄した。組織から残留ホスフェートを除去するために、試料を10mlの新たに調製した0.1M 1-メチルイミダゾール緩衝溶液(0.1M 1-メチルイミダゾール、300mM NaCl、12N NaOHでpHを8.0に調整)中4℃で30分間インキュベートした。次に、EDC固定液を調製した。最初に、9.6mlの0.1M 1-メチルイミダゾール緩衝溶液を作成し、130mgの5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール(ETT、Sigma Aldrich、最終濃度は0.1Mであった)を添加した。12N NaOHでpHを8.0に調整した。次に、192mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(Sigma Aldrich、最終濃度0.10M)を添加し、次いで、12M HClを使用してpHを8.0に再調整した。組織(1cm×1cm)を35mmのプラスチック製ペトリ皿に移し、2mlのEDC固定液を添加した。試料を加湿チャンバーに入れ、標本を37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、EDC-ETT溶液を除去し、標本をTBS(pH7.4)に希釈した5mlの0.2%(w/v)グリシンで洗浄した。試料をTBS(pH7.4)で2回洗浄した。最後に、試料を以下に記載されるようにDNA、RNAおよびタンパク質について染色した。
【0096】
実施例13-DNA、RNAおよびタンパク質についての染色
上記のように、4%ホルマリンのみ、またはEDCホルマリンで固定した組織を染色した。次いで、組織を種々の染色剤に浸漬して、DNA、RNAまたはタンパク質を標識した。DNAをマークするために、組織(1cm×1cm)を35mmペトリ皿に入れ、1mlの0.5μg/mlのHoechst 33342染色液(Sigma Aldrich)に浸漬した。試料を室温で15分間インキュベートし、次いで、組織を室温で3分間、5mlの1×TBS(pH7.4)で洗浄した。洗浄工程を2回繰り返した。試料を二次マーカーで染色した、または画像化のために載置した。DNAとRNAの両方を単一の染色剤で標識するために、DNA塩基の間に介入し、より低い親和性でRNAにも結合するヨウ化プロピジウム(PI、Sigma Aldrich)を使用した(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Suzukiら、「DNA Staining for Fluorescence and Laser Confocal Microscopy」、J Histochem Cytochem 45:49~53(1997))。TBS(pH7.4)に希釈した50μg/mlのPIの溶液が、ホールマウント硝子体試料でDNAとRNAを共染色するのに最適なPI濃度であることが分かった。したがって、組織を35mmペ取り皿に入れ、次いで、過失チャンバー内37℃で24時間、50μg/mlのPI(TBSに希釈)の1ml溶液に浸漬した。試料をTBS(pH7.4)で3回洗浄した。試料を別のマーカーで染色した、または画像化のために載置した。DNAとRNAを区別するために、全てのPi染色組織を上記のHoechst 33342染色液で共染色した。HoechstはDNAに対して強い親和性を有し、RNAを標識しない。HoechstおよびPI染色試料の場合、RNAシグナルは、Hoechstシグナルを除外して決定した。ホールマウント硝子体中の細胞および細胞外タンパク質を標識するために、細胞内アミンに共有結合する、細胞透過性で高電子密度の(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Griffithら、「Epithelial-Mesenchymal Transformation During Palatal Fusion:Carboxyfluorescein Traces Cells at Light and Electron Microscopic Levels」、Development 116:1087~1099(1992))染色剤カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Sigma Aldrich)(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Bronner-Fraser M.、「Alterations in Neural Crest Migration by a Monoclonal Antibody That Affects Cell Adhesion」、J Cell Biol 101:610~617(1985))を使用した。組織を35mmのプラスチック製ペトリ皿に入れ、次いで、TBS(pH7.4)に希釈した1mlの500μM CFSEに浸漬し、試料を、加湿チャンバー内37℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後、CFSE溶液を除去し、組織を100mmのプラスチック製ペトリ皿に入れた。組織を、室温で30分間、TBS(pH7.4)に希釈した5mlの0.2%(w/v)グリシンで洗浄した。次に、組織を室温で5分間、10mlのTBS(pH7.4)で洗浄し、洗浄工程を2回繰り返した。最後に、試料を上記のようにHoeschtおよび/またはPIで対比染色した。それぞれの染色剤で染色した後、次いで、試料を、以下に記載されるように多光子、共焦点または広視野蛍光顕微鏡で画像化するためにカスタムチャンバーに載置した。
【0097】
実施例14-インサイツでの細胞外RNAのRNアーゼ消化
硝子体組織をEDC-ホルマリンで固定し、100μg/mL RNアーゼA(Sigma Aldrich)を含有する2mlのRNアーゼ緩衝液(50mM トリスCl、pH8.0、10mM EDTA)に浸漬し、次いで、42℃で16時間インキュベートした。次に、RNアーゼ溶液を除去し、試料を洗浄し、上記のようにPIで染色し、広視野蛍光顕微鏡法で画像化した。
【0098】
実施例15-光学顕微鏡法、共焦点顕微鏡法および画像処理
axiocam 105カラーカメラ(Zeiss)を搭載したNikon eclipse直立e600顕微鏡(Nikon)でカラー明視野画像を取り込み、画像をZenソフトウェア(Zeiss、バージョン4.3)で処理した。蛍光画像化研究のために、組織を60mmガラス底皿(20mm表示領域、MatTek)に載置した。Axio Observer Z1倒立顕微鏡(Zeiss)を以下のフィルターセットと共に使用した:HoechstについてはZiessフィルターセット49(Ziess);Alexa 488、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびフルオレセインについてはZiessフィルターセット38(Ziess);ならびにPIについてはZiessフィルターセット45(Ziess)。共焦点画像化は、25x/0.8 NA油浸対物レンズを備えたZeiss LSM 880(Weill-Cornell Medicine Imaging Core Facility)で行った。
【0099】
実施例16-組織試料の多光子画像化
EDC-ホルマリンまたはホルマリン単独で固定し、上記の染色したDNA、RNAおよび/またはタンパク質で標識したホールマウント組織を、シリコンおよびガラスカバースリップでできた専用チャンバーに載置し、チャンバーの上部に置いた。カバースリップを1mlの1×TBSに浸漬し、多光子顕微鏡法(Olympus FV1000MPE、専用の25x/1.05 NA水浸対物レンズ、Weill-Cornell Medicine Imaging Core Facilityを使用)を使用して画像化した。次いで、組織をセクターごとに画像化した。画像を取り込み、zスタックを組み立て、二次元再構成を構築した(Fijiソフトウェア(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Schneiderら、「NUT Image to ImageJ:25 Years of Image Analysis」、Nat Methods 9:671~675(2012);Schindelinら、「Fiji:An Open-Source Platform for Biological-ImageAnalysis」、Nat.Methods 9:676~682(2012))およびImarisソフトウェア(Bitplane)、1標本当たり6つの領域を画像化、n=3)。データを細胞外タンパク質の染色について分析した。EVおよび細胞を測定し、以下に説明されるようにカウントした。
【0100】
実施例17-組織試料における細胞外小胞からの硝子体細胞の区別
目標は、硝子体組織のEVおよび細胞外RNAを特定するであった。これを行うために、硝子体細胞(vitreous cell)(硝子体細胞(hyalocyte)と推定)とEVを以下の方法によって区別した。上記のHoechstおよびCFSEで共染色したEDC-ホルマリン固定ウシ硝子体の多光子または共焦点画像を入手した。これらの画像を使用して、Hoechstシグナルを使用して核を特定し、次いで、CFSEシグナルを使用して細胞体を特定することによって、硝子体細胞を特定した。ImageJソフトウェア(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Schneiderら、「NUT Image to ImageJ:25 Years of Image Analysis」、Nat.Methods 9:671~675(2012))を使用して、100個超の細胞(n=3生物学的試料、1試料当たり6つの画像フレーム)から細胞体の直径を測定した。平均硝子体細胞体の直径および標準偏差(SD)を計算し、データをグラフで表示した。平均硝子体細胞サイズは10.5μm±1.77μmであり、正規分布に従うことが分かった。よって、平均(14μm)を超える2 SDの上限直径は、細胞のおよそ97.5%を包含する。したがって、ImageJソフトウェアでは、核を中心とする14μmの円が描かれ、ポジティブシグナルをこの円内で細胞内タンパク質とみなした。この14μm円の外側のシグナルを細胞外とみなした。2人の独立した盲目の研究助手を使用してEVをカウントした。EVをカウントする基準は、丸い形状、細胞半径外の位置および100nmより大きく細胞より小さいサイズを含んでいた。データを、フレームごとにカウントしたEVの数をフレーム内の細胞の数で割ることによって正規化した。データをグラフで表した。ウシ硝子体EVのサイズも、同様の技術を使用して測定した(n=4、および3つの生物学的複製)。
【0101】
実施例18-硝子体液および眼組織の電子顕微鏡法
ヒトまたはウシ硝子体組織を上記のように入手した。試料から低速遠心分離で細胞を取り除き、以下に記載されるようにHおよびE染色ならびに画像化でホールマウント標本を試験した。硝子体の場合、2μLをブロックにピペットで移し、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中2.5%グルタルアルデヒド、4%パラホルムアルデヒド、0.02%ピクリン酸の溶液に固定し、室温で60分間インキュベートした(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Itoら、「Formaldehyde-Glutaraldehyde Fixatives Containing Trinitro Compounds」、J Cell Biol 39:A168(1968))。標本を室温でそれぞれ5分間、過剰量の緩衝液(pH7.3)で洗浄した。試料を、室温で60分間、1%OsO4-1.5%フェリシアン化K(水溶液)で後固定した(全体が参照により本明細書に組み込まれる、de Bruijn W.C.、「Glycogen, Its Chemistry and Morphologic Appearance in the Electron Microscope.I.A Modified OsO4 Fixative Which Selectively Contrasts Glycogen」、J Ultrastruct Res 42:29~50(1973))。試料を室温でそれぞれ5分間、3回緩衝液で洗浄した。試料をまとめてセットし、室温で60分間、1.5%酢酸ウラニルで染色した。試料を、段階的エタノール系列で脱水し、アセトニトリルを通して移行した。試料を浸透させ、Embed 812樹脂(Electron Microscopy Sciences)に包埋した。Leica Ultracut Tウルトラミクロトーム(Leica Microsystems)のDiatomeダイアモンドナイフ(Diatome)を使用して、組織切片を60~65nmで切断した。切片を、クエン酸鉛と対比し(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Venableら、「A Simplified Lead Citrate Stain for Use in Electron Microscopy」、J Cell Biol 25:407~408(1965))、100kVで動作するJEM 1400電子顕微鏡(JEOL, USA, Inc)で表示した。デジタル画像を、Veleta 2K x 2K CCDカメラ(Olympus-SIS)で取り込んだ。電子顕微鏡画像を記録し、ImageJソフトウェアを使用してEVのサイズおよび周波数を分析した。TEMでのタンパク質染色のために、TBS(pH7.4)に希釈した500μM CFSEを5μlの超遠心分離で精製したEVと25℃で30分間混合した。次いで、上記の全ての試料を固定し、載置し、上記のようにTEMで画像化した。硝子体EVのTEM可視化のために、小胞を以下に記載されるように超遠心分離を通してヒトまたはウシ硝子体から単離し、ホルムアルデヒドに再懸濁し、ホルムバール/カーボンコーティングEMグリッドにロードし、1%グルタルアルデヒドで後固定し、2%酢酸ウラニル、pH7、および2%メチルセルロース/0.4%酢酸ウラニル、pH4、またはCFSEで連続的に対比した。
【0102】
実施例19-細胞外小胞の単離および組織試料の精製
流体から細胞外小胞を単離する方法を適合させた(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Theryら、「Isolation and Characterization of Exosomes from Cell Culture Supernatants and Biological Fluids」、Curr Protoc Cell Biol 第3章、ユニット3:22(2006))。この研究で、目標はガラス体標本が細胞を含まないようにすることであった。したがって、硝子体を一連の低速遠心分離で清澄化した。およそ8mlの硝子体を15ml管に入れ、Sorvall legend RT Swingingバケット(Sorvall)で、4℃で30分間、2,000g(2500rpm)で遠心分離した。次いで、上清を新しい15ml管に移した。次いで、遠心分離工程を繰り返した。次いで、上清を新しい管に移し、SS-34ローター(DuPont)を使用して、4℃で30分間、Sorvall RC-58遠心分離機(Sorvall)で、10,000gで遠心分離した。硝子体液または房水の各アリコートについて、以下に記載されるように細胞を調査するために、ホールマウントヘマトキシリンおよびエオシン(HおよびE)染色を行った(図18)。次いで、ホールマウントスライドを画像化し、全ての無細胞試料をさらに処理した。次いで、上清を移し、工程を繰り返した。試料を超遠心管(Beckman)およびスイングバケットローター(SW-41、Beckman)に移し、L7-55超遠心機(Beckman)で、4℃で1時間、100,000gで遠心分離した。上清を新しい管に移した。この工程を繰り返した。試料を50μlの滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.5)に再懸濁し、シリコン処理管に入れた。画像化用の試料を直ちに処理し、残りの試料を-80℃で凍結した。
【0103】
実施例20-試料の無細胞性を確認するための硝子体組織化学染色
硝子体EV分離技術を最適化するため、低速遠心分離後に組織化学染色を適用して、細胞で汚染された硝子体試料を除外した。硝子体試料を解剖し、上記のように収集した。遠心分離された硝子体をスライドガラスにホールマウントし、次いで、標本をHおよびEでの組織化学染色に供することによって、無細胞性を確認した。およそ1mlの硝子体上清をSuperFrost Plusスライドガラス(Thermo Fisher Scientific)に置き、次いで、4℃で16時間、チャンバーで乾燥させた。乾燥したスライドを、室温で3分間、5mlの1×TBSですすぎ、次いで、再度洗浄した。次いで、標準的な手順を使用して、スライドをHおよびEで染色した。スライドを、ガラスカバースリップを載置して保存し、次いで、密封した。試料を以下に記載されるように光学顕微鏡で分析した。ヘマトキシリン染色した細胞の標本を、繰り返しの遠心分離に供したまたは廃棄した。したがって、さらなる実験に使用した全ての硝子体画分が、汚染硝子体細胞がなかった。
【0104】
実施例21-ナノ粒子追跡分析
NanoSight NS300システム(Malvern)を使用して、ナノ粒子追跡分析を実施し、溶液中の30~800nmの粒子を特性評価した。ウシ硝子体から単離した細胞外小胞を、1ml当たりおよそ2.5μgのタンパク質の濃度で100μlのリン酸緩衝生理食塩水(TBS、pH7.0)に再懸濁し、次いで、試料を分析のためにPBS中最終体積2mlに希釈した。粒子をロードし、カメラの焦点を合わせ、5つの映像をそれぞれ60秒間取り込んだ。映像を記録し、次いで、NanoSightソフトウェア(バージョン3.0)を使用して分析して、EVのサイズ分布および粒子濃度を決定した。グラフを作成した。各粒子のブラウン運動をフレーム間で追跡し、最終的にはストークス・アインシュタイン方程式を適用してサイズの計算を可能にした。
【0105】
実施例22-ホルマリン固定組織からの細胞外小胞損失の評価
上記のように顕微解剖したウシ硝子体全体を50ml円錐管に入れ、次いで、TBS(pH7.4)に希釈した10mlの4%ホルマリンに浸漬し、4℃で24時間インキュベートした。固定後、組織を氷上でおよそ1cm×1cmの切片に切開し、硝子体切片の重量を記録した。次いで、組織を15ml遠心管に入れた。組織を250μlのTBSに浸漬し、試料とその上にある洗浄緩衝液(または上清)を37℃で1時間インキュベートした(n=3)。さらなる研究のために、上清を収集し、TEMおよびUAネガティブ染色で画像化した。
【0106】
実施例23-硝子体におけるエキソソームマーカータンパク質の免疫組織化学
免疫組織化学(IHC)を、ホールマウント4%ホルマリン固定ウシ硝子体で実施した。ホルマリン架橋の復帰を防ぎ、よって、EV損失の割合を減らすために、広視野落射蛍光顕微鏡画像化を除いて、全ての実験を実験期間中4℃で行った。ウシ硝子体液をおよそ1cm×1cmの小片に切断し、次いで、標本を4℃で3分間、5mlの氷冷TBS(pH7.4)ですすいだ。洗浄工程を2回繰り返した。次いで、標本を解剖顕微鏡(SZX-16 Olympus)で検査して、潜在的に汚染されている組織を除去した。次いで、試料を500μlのブロッキング緩衝液(TBSに希釈した10%ヤギ血清)に4℃で1時間浸漬した。試料を4℃で3分間、5mlのTBSで簡単に洗浄した。ウサギモノクローナル抗TSG-101抗体(Abeam PLC、1:500希釈)を使用して、ウシ硝子体を4℃で一晩免疫染色した。試料を4℃で3分間、5mlのTBSで洗浄した。洗浄工程を2回繰り返した。IHC染色を、Alexa Fluor 488(Abeam PLC)にコンジュゲートした二次抗体、ヤギ抗ウサギIgGを使用して可視化した。試料を3回洗浄した。ウシ硝子体をHoechst染色で対比染色して(上記のように)、核をマークし、次いで、4℃で5分間、5mlのTBSで2回洗浄した。次いで、硝子体を直ちに画像化し、顕微鏡写真を記録した。陰性対照では、一次抗体の代わりに正常なヤギ血清(1:1000希釈)を使用した(二次抗体のみ)。
【0107】
実施例24-硝子体プロテオーム解析
上記のプロトコルを使用して、ウシ硝子体試料から細胞を取り除き、上記のようにホールマウントHおよびE染色ならびにその後の画像化によって、ホールマウント試料を無細胞であると決定した。次いで、細胞を含まない試料をプロテオーム解析用に選択した。細胞外小胞を上記のように単離した。細胞外小胞画分または無細胞硝子体画分からのタンパク質を8M尿素で変性させ、ヨードアセトアミド(Sigma Aldrich)でのアルキル化の前に、ジチオトレイトール(Sigma Aldrich)でシステインを還元した。タンパク質をLysC(Wako Chemicals)、引き続いてトリプシン(Promega)で消化し、Empore CI 8 STaGETips(3M)で脱塩した(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ishihamaら、「Modular Stop and go Extraction Tips with Stacked Disks for Parallel and Multidimensional Peptide Fractionation in Proteomics」、J Proteome Res 5:988~994(2006))。ナノLC-MS/MS分析(Q-Exactive Plus、Thermo Scientific)のために、1μgの総タンパク質を注入した。ペプチドを、流量200nL/分、160分間に5~40%の勾配(緩衝液A 0.1%ギ酸、緩衝液Bアセトニトリル中0.1%ギ酸)で12cm×75μm C18カラム(Nikkyo Technos Co., Ltd.、日本)を使用して分離した。Q-Exactive Plusを、上位20法で、データ依存モードで動作した。ナノLC-MS/MSデータを、MaxQuant(バージョン1.6)(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Coxら、「MaxQuant Enables High Peptide Identification Rates, Individualized p.p.b.-Range Mass Accuracies and Proteome-Wide Protein Quantification」、Nat Biotechnol 26:1367~1372(2008))およびPerseusソフトウェア(バージョン1.4)(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Tyanovaら、「The Perseus Computational Platform for Comprehensive Analysis of (Prote)omics Data」、Nat Methods(2016))を使用し、Uniprotウシ(Bos taurus)データベース(2014年7月にダウンロード)に対して検索し(全体が参照により本明細書に組み込まれる、UniProt C、「UniProt:A Hub for Protein Information」、Nucleic Acids Res 43:D204~212(2015))、メチオニンの酸化およびタンパク質N末端アセチル化を可能にし、ペプチドレベルで2%の偽陽性率およびタンパク質レベルで1%の偽陽性率でフィルタリングすることによって分析した。iBAQ値を使用してタンパク質を定量化した。硝子体細胞外小胞画分と無細胞全硝子体画分との間でタンパク質の濃縮を比較した。
【0108】
実施例25-ARPE-19細胞培養
ヒト網膜色素上皮細胞、ARPE-19(ATCC)を、10%ウシ胎児血清およびペニシリンおよびストレプトマイシンを補充したDMEM:F12培地(ThermoFisher Scientific)で培養した。全ての細胞を、95%空気および5%CO2で、37℃でインキュベートし、標準的な滅菌技術を使用して維持した。
【0109】
実施例26-細胞外小胞への組換えタンパク質のロード
上記のように、単離したウシ硝子体EVの総タンパク質濃度を測定した(PierceTMBCA Protein Assay Kit、Thermo Fisher Scientific)。以下の濃度のBSA-フルオレセイン(3μg、1pg、0.5μg)またはGFP(0.25pg、0.5μgおよび1pg)と共に4pgの硝子体EVをインビトロ処理に使用し、0.025pgのウシ硝子体EVを、インビボ注射に使用した。組換えタンパク質およびEVを300μlの電気穿孔緩衝液(BioRad)中で混合し、4mmキュベットで電気穿孔した。EVの電気穿孔は、次の条件下で方形波プログラムを使用して実施した:電圧300V、パルス長時間35ms、パルス数2およびパルス間隔0.1秒。対照として、同じ濃度のEVを電気穿孔なし(0V)で最適濃度の組換えタンパク質と混合した。インビボ研究では、試料を、平衡塩溶液5倍量に再懸濁した後、脱塩し、次いで、遠心サイズ排除フィルター(Amicon、Millipore Sigma)で濃縮した。平衡塩溶液(BSS)の再懸濁量は75μlとし、注入ごとに0.5μlを使用した。
【0110】
実施例27-培養細胞への細胞外小胞のインビトロ適用
ウシまたは死後のヒトの硝子体EVを単離し、上記のように電気穿孔を介して組換えタンパク質をロードした。ARPE-19細胞を12ウェルプレートで培養し、EV処理時におよそ70%コンフルエントにした。次いで、100μlの電気穿孔したEV溶液を1mlの完全培地に添加した。細胞を標準的な培養条件下で16時間インキュベートし、次いで、培地を除去して完全培地に交換した。処理後48時間で、細胞培地を除去し、培養物を1mlのHoechst染色剤に浸漬し、37℃で15分間インキュベートした。染色剤を除去し、細胞を2mlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、室温で10分間、PBSに希釈した2mlの4%ホルマリンで固定した。細胞を2mlのPBSで5分間洗浄した。洗浄を2回繰り返した。広視野蛍光顕微鏡を使用して、細胞のトランスフェクション効率を評価した。
【0111】
実施例28-硝子体細胞外小胞のインビボ注射
全ての手順は、NTHガイドラインに従って実施し、Weill Cornell Medicineの動物実験委員会(IACUC)によって承認された。雄、6週齢のC57BL/6Jマウス(Jackson Labs)を、Weill Cornell Medical CollegeのResearch Animal Resource Center(RARC)で12時間の明/暗サイクルで維持した。マウスの眼の硝子体内注射を、全ての実験変数で8週齢で行った(n≧3)。NEH動物福祉ガイドラインに従って、動物をケタミンとキシラジンのカクテルで鎮静させた。動物の瞳孔を1滴の2.5%フェニレフリン、1滴の1%トロピカミドで拡張し、次いで、潤滑性眼軟膏を施用した。15分後、動物に注射の準備をした。綿棒を使用して眼軟膏を除去し、10滴のIX TBSで眼をすすいだ。解剖用実体顕微鏡(Olympus SZX50)の下で、32ゲージ針を角膜輪部、次いで強膜から後房へ横切って配置して眼にガイドトラックを作成した。水晶体を破壊しないよう注意を払った。次に、ガイド針を引き抜き、マイクロインジェクタ(Pneumatic picopump、PV830、World Precision Instruments)をガイド針トラックに配置し、網膜を避けてガラスピペット先端を後眼部に挿入した。500nlのEV溶液または対照溶液を注射した。注射の完了後、ガラスピペットを除去する前に10秒間隔を維持した。ガラスピペットを除去し、硝子体内注射手順の直後に、注射した眼に眼科用抗生物質軟膏を施用した。次いで、麻酔からの回復について動物を監視し、次いで、Weill Cornell MedicineのRARC施設に戻した。
【0112】
実施例29-げっ歯類の眼における硝子体内注射した細胞外小胞または対照の生体内分布の評価
EV硝子体内注射の生体内分布を、注射後3日目、1週目および3週目(n≧3)に分析した。NIH動物福祉ガイドラインに従って動物を鎮静させ、安楽死させた。眼を摘出し、4℃で16時間、1×TBS中5mlの4%ホルマリンに入れ、次いで、4℃で12時間、TBSに希釈した5mlの0.5Mスクロースに浸漬した。組織をOCT Compound(Tissue-Tek)に載置し、Cryomold(Tissue-Tek)のドライアイス/エタノール浴で凍結し、直ちにクライオスタット(Leica 3050 S、Leica)で5~40μmに連続切片を作成し、SuperFrost Plusスライドガラス(Thermo Fisher Scientific)に載置した。標本を室温で15分間、1mlのHoechst染色剤で対比染色した。スライドを室温で5分間、5mlのTBS(pH7.4)ですすいだ。洗浄工程を2回繰り返した。次いで、300μlの載置媒体を添加し、カバースリップ(VWR International LLC)を上に置いた。スライドを、BSA-フルオレセインについて広視野蛍光顕微鏡で画像化した。未処理標本および載置スライドを、-80℃で保存した。
【0113】
実施例30-統計分析
グラフ可視化および計算を、Excel(バージョン2011、Microsoft)を使用して実施した。特に明記しない限り、全ての実験を、n≧3の異なる実験試料で実施した。ナノ粒子追跡分析の場合、粒子のサイズ、濃度および分布を、ストークス・アインシュタイン方程式を使用して計算した。統計分析を、SPSSソフトウェアを使用した独立スチューデントt検定を使用して行い、0.05未満のp値を有意であるとみなした。
【0114】
流体試料のために確立されたTEMおよびネガティブ染色手順を最適化するために、硝子体液(眼に位置するゲル様マトリックス)および房水から単離したEVをモデル系として使用した。眼の硝子体(vitreous body)(硝子体(vitreous))は水晶体と網膜の間に位置し、ほとんど無細胞の組織である。硝子体は、水および主にヒアルロン酸と会合したII型コラーゲン原線維の細胞外ゲルマトリックスで大部分が構成されている。最初に、硝子体液を眼の後房から切開し、試料を均質化し、超遠心分離を使用してEVを単離し、試料を緩衝生理食塩水に再懸濁した。次に、ナノ粒子追跡分析(NTA)を使用してEVの数およびサイズを定量化し、1ml当たり3.98×108個のEVを見つけた。流体に懸濁した硝子体EVの超微細構造を可視化するために、従来のグルタルアルデヒドベースのTEM画像化プロトコルに従った(図1A)(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Stradleighら、「Fixation Strategies for Retinal Immunohistochemistry」、Progress in Retinal and Eye Research 48:181~202(2015))。およそ4×106個のEVを電子顕微鏡グリッドに適用し、インキュベーション後、試料を除去し、グルタルアルデヒド固定を適用し、試料を洗浄し、次いで、酢酸ウラニル溶液でのネガティブ染色を行った(図1A)。TEMを使用したその後の標本の画像化では、EVはほとんど検出されなかった(図1B)。グルタルアルデヒド固定を使用すると、25,000倍の強拡大顕微鏡視野あたり平均0.033(±0.182)個のEVが観察され(n=3生物学的複製、および同じサイズの10枚の写真を取り込んだ)、これは400万個を超えるEVのロードと一致しないように思われる。これらのデータは、EVが標本処理中に破壊された、または吸引された流体に失われたことを示唆していた。そのため、EVをグリッドに永久的に付着させるために、正に帯電したアミノ基側鎖とタンパク質のカルボキシル基との間に不可逆的な架橋を作成するEDC、カルボジイミドを使用して追加の固定工程を追加した。
【0115】
EDCがEVを不可逆的に固定するという仮説を試験するために、不活性EDC(低温、(4℃))を、緩衝生理食塩水に再懸濁した400万個のウシ硝子体EVと混合し、次いで、氷冷溶液をポリ-l-リジンコーティングしたホルマール電子顕微鏡法グリッドの表面に適用した(図1C)。次に、EDC溶液を加熱して活性化し、その後グルタルアルデヒドを添加し、試料を洗浄し、引き続いてネガティブ染色を行った。画像は、ネガティブ染色で画像化された堅牢な量のウシ硝子体EVを示した(図1D)。EDCで固定した房水試料は、一致した条件下で25,000倍の強拡大視野あたり16.5個のEV(±16.9)を示した。意義深いことに、グルタルアルデヒド固定試料(p<0.05、n=3)と比較すると、EDC固定流体試料でより多くのEV(357倍)が特定され(図1E)、生物学的流体に懸濁したEVのEDC固定が従来のグルタルアルデヒド固定よりも優れていることを示唆している。これらのデータは、流体中のEVのイメージングでは、グルタルアルデヒド固定単独と比較すると、EDC-グルタルアルデヒド固定が有意に優れていることを示している。要約すると、標準的なTEMおよびネガティブ染色プロトコルでは、EVが電子顕微鏡グリッドの表面に付着するのに実質的に失敗する。しかしながら、EDC-グルタルアルデヒドによるタンパク質の固定は、EVを保持するように作用し、生物学的流体中のEVの堅牢な画像化を可能にする。さらに、この技術はEV画像化法の大幅な改善を表している。
【0116】
EDC-グルタルアルデヒド固定液技術および従来のグルタルアルデヒド単独固定標本を使用して画像化したEVの量の不一致を説明するために、グルタルアルデヒドベースのプロトコルの各手順工程をEV損失の潜在的な原因について調べた。EVがグリッドの表面または吸引された洗浄緩衝液にあると仮定した。したがって、吸引液中のEV含有量を、別個のグリッドおよびEDC-グルタルアルデヒド固定を使用して吸引液を画像化することによって調べた。EV損失を試験するために、単離したウシ房水EVの溶液をグリッドに適用し、次いで、インキュベートした。次に、吸引された内容物を保持し、EDC-グルタルアルデヒド固定を使用して別のグリッドで画像化した。吸引された溶液にはかなりの量のEVが存在することが分かり(図2A)、EVがグリッドの表面に接着できなかったことを示唆した。次いで、グルタルアルデヒド固定(図2B)および洗浄工程(図2C)の間にEVが失われることも分かった;TEM画像化中にグリッドに残っているEVはごくわずかであった(図2D)。各工程での損失の量を定量化したところ、データは、ほとんどのEVが初期工程でグリッドに付着せず、最終画像化工程でほとんど残っていないことを示した(図2E)。概して、これらのデータは、従来のTEMおよびネガティブ染色プロトコルを使用して流体に懸濁したEVを画像化すると、EVがグリッドに付着できず、その後、グルタルアルデヒド固定および洗浄工程中にEVが失われることを示している。さらに、従来のTEMおよびネガティブ染色により、EVの代表的でない集団が生じ、従来の方法が液体中のEVの画像化に非効率的で一貫性がないことを示唆している。
【0117】
この技術の範囲を広げるために、他の臨床的に関連する生物学的流体を調べた。EVは、がん患者の血液中に高濃度で存在することが知られており、腫瘍由来のEVは腫瘍の成長および転移で重要な役割を果たすと考えられている。したがって、中枢神経系腫瘍の患者からの血漿(血液製剤)中のEVの画像化を探究した。神経膠腫と診断された患者の血漿を入手し、EVを超遠心分離で単離し、次いで、EDC-グルタルアルデヒド固定を行い、引き続いてネガティブ染色およびTEM画像化を行った。データは、神経膠腫の複数の患者が多数のEVを含み(図3A~3C)、健康な対照患者の血漿(図4A~4B)と比較すると、有意に異なる形態、存在量およびサイズを有することを示した。他の悪性腫瘍を調べるために、全身性黒色腫の患者の血漿から単離したEVを可視化した。神経膠腫の患者(図3A~3C)または健康な対照(図4A~4B)からのEVと比較すると形態は異なるが、全身性黒色腫の患者の血漿中でEVに似た高電子密度のシグナルが観察された(図5A~5B)。これらのデータは、修正されたEDC-グルタルアルデヒド固定が、がん患者の血液製剤中の腫瘍由来EVの特定を可能にすることを示唆している。さらに、これらのデータは、この方法が、がんの診断、予後診断または転移能の指標の有用なツールであってもよいことを示唆している。
【0118】
次に、中枢神経系腫瘍の生物学的流体中に分泌されたバイオマーカーを、患者の脳脊髄液(CSF)中のEV含有量を検査することによって調べた。したがって、CSFを、神経芽細胞腫、交感神経系の前駆細胞から生じる腫瘍、および最も一般的な固形小児固形腫瘍の患者から入手した(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Brodeur、「Neuroblastoma:Biological Insights Into A Clinical Enigma」、Nat Rev Cancer 3:203~216(2003))。EVを単離し、試料をEDC-グルタルアルデヒド固定で固定し、ネガティブ染色を行い、次いで、試料をTEMで画像化した。画像は、神経芽細胞腫由来のEVがサイズが大きく、EVを囲む高電子密度の物質を含有することを示した(図6A~6B)。この技術の範囲を他の腫瘍に広げるために、筋肉、骨または血管組織などの間葉系細胞に由来する腫瘍である、肉腫と診断された患者によって提供されたCSFから単離したEVを調べた(図6C~6D)。再び、EDC-グルタルアルデヒド固定により、神経芽細胞腫患者から単離したEVと比較すると、より小さく、形態学的に明確なCSF中のEVの特定が可能になった(図6A~6B)。これらのデータは、CSFがこの技術を使用して画像化してもよい生物学的流体の別の供給源であることを示唆している。さらに、これらの結果は、EDC-グルタルアルデヒド固定が、複数の生物学的流体および種々のがんからのバイオマーカーの画像化に有用であることを示唆している。最後に、これらの所見は、がんを含む中枢神経系へのEV画像化の適用に重要な意味を有してもよい。
【0119】
最後に、最も極めて流行性のがん型の患者、癌腫患者からの液体生検を使用するバイオマーカーを調べた(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Siegelら、「Cancer Statistics, 2017」、CA Cancer J Clin 67:7~30(2017))。これを行うために、乳頭吸引液(NAF)(全体が参照により本明細書に組み込まれる、HarrisらAmerican Society of Clinical Oncology 2007 Update of Recommendations for the Use of Tumor Markers in Breast Cancer」、J Clin Oncol 25:5287~5312(2007))を、乳がんと診断された患者または健康な対照から収集し、EDC-グルタルアルデヒド固定を行い、引き続いてネガティブ染色およびTEM画像化を行った。データは、乳頭吸引液でEVに似たシグナルを示した(図7)。これらのデータは、EDC-グルタルアルデヒド固定法が癌腫でEVを検出することができること、および乳頭吸引液が液体生検に使用してもよい生物学的流体の別の供給源であることを示唆している。
【0120】
TEM液体画像化技術をさらに最適化するために、EVを染色する方法を改善した。EVの従来のTEM画像化は、EVの輪郭の周りに高電子密度酢酸ウラニルの蓄積を可能にし、小胞の輪郭にシグナルを生成し、より少ない電子密度の中心核をもたらすネガティブ染色を必要とする(図8Aおよび図9A)。ここでは、EV自体を強調する高電子密度のシグナルを示す「ポジティブ染色剤」を使用することが提案される。エキソソームはRNAを含有することが知られている(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Valadiら、「Exosome-Mediated Transfer of mRNAs and MicroRNAs is a Novel Mechanism of Genetic Exchange Between Cells」、Nat Cell Biol 9:654~659(2007));よって、ウシ硝子体液を高電子密度および核酸感受性染色剤であるアクリジンオレンジで染色すると、EV内のポジティブ染色を示した(図8B)。神経膠腫患者の血漿からのEVをネガティブ染色し(図8C、左パネル)、次いで、図8C、右パネルに示されるように試料をアクリジンオレンジでポジティブ染色することが可能である。次いで、ホールマウントウシ硝子体のタンパク質を、細胞内アミンに共有結合する、細胞透過性で高電子密度の(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Griffithら、「Epithelial-Mesenchymal Transformation During Palatal Fusion:Carboxyfluorescein Traces Cells at Light and Electron Microscopic Levels」、Development 116:1087~1099(1992))染色剤カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Bronner-Fraser M.、「Alterations in Neural Crest Migration by a Monoclonal Antibody That Affects Cell Adhesion」、J Cell Biol 101:610~617(1985))で標識した。次いで、標本中のタンパク質をCSFEで標識し、TEMで画像化すると(図9B)、電子顕微鏡画像は、小胞内染色を伴う豊富な数の小胞を示す。単離したウシ硝子体EVをAOで標識すると、ポジティブ染色を示した(図9C)。次に、ホールマウントウシ硝子体を臭化エチジウム(EtBr)、高電子密度の核酸染色剤で染色すると、コラーゲンのネットワークに複数のEV(矢じり)が見られた(図9D)。EVを死後のヒト硝子体からも単離し、AOで染色した(図9E)。データは、EVを種々の高電子密度染色剤でマークし、「ポジティブ染色剤」で標識できることを示唆している。
【0121】
最後の目的は、通常は少量の生物学的流体内に存在するEVの空間的局在化を画像化する、またはインサイツでEVを可視化することであった。したがって、精製プロトコルを使用せずにEVを検出する試みを行って、生物学的流体の自然の環境でEVを直接検出しようとした。ヒト房水の微小試料(2.5μl)を入手し、非希釈流体をグリッドの表面に適用し、EDC-グルタルアルデヒド固定を行い、引き続いてネガティブ染色、次いで、TEMによる画像化を行った。非希釈水性流体の場合、写真は大量のバックグラウンド(図10A、左および右、黒色シグナル)を示し、容易に特定できるEVはなかった。シグナル対ノイズ比を改善するために、試料を緩衝生理食塩水で希釈し、手順を繰り返した。試料を希釈した後、観察されるバックグラウンドが実質的に少なくなり、希釈標本中のより多くのEVの特定が可能になることが分かった(図10B~10D)。これらのデータは、ヒト液体生検からの少量の流体から直接EVを画像化することが可能であることを示しており;これは診断、予後診断、もしくはEV関連疾患の治療に影響を及ぼすバイオマーカーとして、または房水もしくは他の生物学的流体の疾患を排除するのに役立ってもよい。
【0122】
要約すると、ネガティブ染色およびTEMを使用したEVを画像化するための従来のプロトコルは、溶液に懸濁したEVの大量の損失をもたらし、一貫性のない画像化、EV存在量の過小評価、または否定的な結果をもたらすことが示されている。対照的に、EDCグルタルアルデヒド固定を使用してEVを架橋すると、EVの保持が有意に改善し、生物学的流体中のEV超微細構造の堅牢な画像化が可能になり、EVの異種集団の表示が改善される。さらに、この固定法は、液体生検を含むEVベースの診断技術に広く適用してもよい。最後に、この技術によって、多くのがん型で転移の構造的メディエーターを画像化することが可能になる。EDC-グルタルアルデヒド固定法が、種々の他の極めて流行性のがんの患者の他の生物学的流体標本(血漿、脳脊髄液および乳管液)に関連するEVの画像化に広く適用可能であると予想される。さらに、この基本技術は、眼液、血漿、CSFおよび乳管液中のEVの構造の研究を可能にし、がんの進行および転移の根底にある基本的な機序の解明を促進してもよい。要約すると、TEMと組み合わせたEDC固定は、がんの病期および進行を区別、評価および監視するのに役立ってもよい液体生検の新たな技術として役立ってもよい。
【0123】
次いで、この方法を組織内のEVの研究に適用し、眼の硝子体をモデル系として使用した。水晶体と網膜との間に位置する硝子体は、豊富な細胞外基質(ECM)を含む光学的に透明な少数細胞性組織であり、生物学的機能がほとんど知られていない(Le Goffら、「Adult Vitreous Structure and Postnatal Changes」、Eye(Lond)22:1214~1222(2008))。硝子体EV関連マイクロRNAが記載されているが(Ragusaら、「miRNA Profiling in Vitreous Humor, Vitreal Exosomes and Serum From Uveal Melanoma Patients:Pathological and Diagnostic Implications」、Cancer Biol.Ther.16:1387~1396(2015));正常な硝子体EVはまだ画像化も特徴付けもされていない。正常な硝子体はEVを有していると仮定されるが、多光子顕微鏡法、共焦点顕微鏡法または広視野顕微鏡法を使用してナノ粒子を可視化する繰り返しの試みは失敗した。ここでは、標準的なホルマリン固定により組織からEVが失われるが、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)によるタンパク質の固定がEVを保持し、インサイツでのEV画像化を可能にすることが示されている。
【0124】
次いで、研究は組織固定の最適化に焦点を移した。従来の固定方法は、10%ホルマリンを使用してタンパク質-タンパク質架橋を作成する。組織処理工程は一般に室温以上で行われる;しかしながら、高温がホルマリンタンパク質-タンパク質およびRNA-タンパク質架橋を復帰させることが知られている(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Shiら、「Antigen Retrieval in Formalin-Fixed, Paraffin-Embedded Tissues:an Enhancement Method for Immunohistochemical Staining Based on Microwave Oven Heating of Tissue Sections」、J.Histochem.Cytochem.39:741~748(1991);Tkedaら、「Extraction and Analysis of Diagnostically Useful Proteins from Formalin-Fixed, Paraffin-Embedded Tissue Sections」、J.Histochem.Cytochem.46:397~403(1998);Penaら「miRNA In Situ Hybridization in Formaldehyde and EDC-Fixed Tissues」、Nat.Methods 6:139~141(2009))。EVが、処理および画像化工程中にホルマリン固定組織から失われると仮定される(図11A)。ホルマリン固定組織からのEV損失を調べるために、ホルマリン固定ウシ硝子体を37℃で洗浄緩衝液に浸漬し、次いで、上清を収集し、この上清の透過型電子顕微鏡法(TEM)によって、かなりの数のEVが組織から失われたことが明らかになった(図11B~11C)。EVの損失は、試験した全ての温度で記録され、4℃で損失したEVが少なく(図11D)、高温ではかなりの損失があった(図11E~11F)。組織内にEVを永久に保持するために、EDCによる固定を追加して、正に帯電したアミノ基側鎖とタンパク質のカルボキシル基の間に不可逆的架橋を作成した。同様の条件下で、EDC-ホルマリン固定は、洗浄緩衝液に対してEVの損失を示さなかった(図11G~11H)。粒子状物質が、EDC-ホルマリン上清ならびに洗浄緩衝液対照で観察された(図11I)。これらのデータは、ホルマリン固定標本からのEV損失、およびEDCホルマリン固定が組織中のEVを保持することを示唆している。
【0125】
硝子体組織の細胞外空間のEVを可視化するために(図12A)、比較する従来の固定(ホルマリン単独)をEDC-ホルマリン固定と比較し、次いで、インサイツでのEVの可視化を試みた。EVはタンパク質を含有することが知られている;よって、ホールマウント標本において、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)蛍光色素で、ホールマウント標本中のタンパク質を標識し(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Bronner-Fraser, M.、「Alterations in Neural Crest Migration by a Monoclonal Antibody That Affects Cell Adhesion」、J.Cell Biol.101:610~617(1985))、次いで、多光子顕微鏡法で画像化した。ホルマリン固定硝子体は細胞内でタンパク質シグナルを示したが、細胞外シグナルを示さず(図12B、n=4)、EVが存在しないまたは処理中に失われたことを示唆した。対照的に、EDC-ホルマリン固定硝子体は、ECMで堅牢なEV形状タンパク質シグナルを示す(図12C~12D)。図12Eに示されるように、ホルマリン固定組織(1画像当たりSD±0.9で1.2個のEVをカウント、n=4)に対して有意に多いEVがEDCホルマリン固定組織(1画像当たりSD±23.8で143.2個のEVをカウント、n=4)が特定された。硝子体EVは、MPM画像化に基づいて異種集団EVサイズを示す(図12F)。インサイツ光学顕微鏡法の所見をEVを可視化するために使用される他の方法と相関させるために、TEMを使用した硝子体EV超微細構造を研究した(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Raposoら、「B Lymphocytes Secrete Antigen-Presenting Vesicles」、J.Exp.Med.183:1161~1172(1996);Consortiumら、「EV-TRACK:Transparent Reporting and Centralizing Knowledge in Extracellular Vesicle Research」、Nat.Methods 14:228~232(2017))。ウシ硝子体組織切片は、硝子体のECMで相当数のEVを示した(図12G)。次に、ウシ硝子体EVを単離し、CFSE、高電子密度の染色剤で染色すると(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Griffithら、「Epithelial -Mesenchymal Transformation During Palatal Fusion:Carboxyfluorescein Traces Cells at Light and Electron Microscopic Levels」、Development 116:1087~1099(1992))、小胞内タンパク質シグナルを伴う豊富なEVが観察された(図12H)。ナノ粒子追跡分析(NTA)(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Dragovicら、「Sizing and Phenotyping of Cellular Vesicles Using Nanoparticle Tracking Analysis」、Nanomedicine 7:780~788(2011))によって、1ml当たり少なくとも2.98×107個の粒子のEV濃度が明らかになった(s.e.m±8.98×106図13A)。NTAによって測定されたEVサイズは、MPMによってインサイツで観察されたEVサイズとは異なり(図12F)、これは分析している流体からより大きなEVを除去する超遠心分離ベースの単離方法の結果であると考えられる(全体が参照により本明細書に組み込まれる、van der Polら、「Recent Developments in the Nomenclature, Presence, Isolation, Detection and Clinical Impact of Extracellular Vesicles」、J.Thromb.Haemost.14:48~56(2016))。TEMを死後のヒト眼で実施したところ、多数のEVが硝子体基底部および毛様体の近くのECMで確認された(図12I~12J)。単離したヒト硝子体EVのサイズ分布を図13Bに示す。これらのデータは、EVが硝子体のECMに存在し、超微細構造画像化がEDC-ホルマリン固定組織の光学画像化と相関していることを示唆している。さらに、インサイツでのEVの画像化では、EDC-ホルマリン固定がホルマリン固定よりも優れていることが示されている。
【0126】
EVは細胞外RNAを含有することが知られている(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Valadiら、「Exosome-Mediated Transfer of mRNAs and MicroRNAs is a Novel Mechanism of Genetic Exchange Between Cells」、Nat.Cell Biol.9:654~659(2007));そのため、ウシ硝子体核酸を、DNAおよびRNAをマークするヨウ化プロピジウム(PI)で染色した(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Suzukiら、「DNA Staining for Fluorescence and Laser Confocal Microscopy」、J.Histochem.Cytochem.45:49~53(1997))。EDC-ホルマリン固定硝子体の共焦点顕微鏡画像化は、細胞外RNAおよび細胞外タンパク質についてポジティブシグナルを示す(図14A~14B)。対照的に、ホルマリン単独で固定すると、細胞外RNAおよびタンパク質シグナルが実質的に少なくなった(図14C)。ホルマリンで固定された組織からのRNAの損失は、以前の研究と一致している(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Penaら、「miRNA In Situ Hybridization in Formaldehyde and EDC-Fixed Tissues」、Nat.Methods 6:139~141(2009))。細胞外PIシグナルがRNAであることを確認するために、EDC-ホルマリン固定硝子体をRNアーゼで処理したところ、細胞外シグナルの有意な減少が認められた(p<0.001;図15A~15C)。標準的な広視野蛍光顕微鏡法を使用しても同様の所見が観察された(図16A~16B)。興味深いことに、正常な硝子体EVはRNAを発現するが、DNAシグナルは示さない。これらのデータは、EDC-ホルマリン固定により、インサイツでのEV内の差次的発現RNAまたはDNAの評価が可能になることを示唆している。
【0127】
この技術の有用性を他の組織に広げるために、がん組織によって分泌されるEVの画像化に焦点を当てた(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Beckerら、「Extracellular Vesicles in Cancer:Cell-to-Cell Mediators of Metastasis」、Cancer Cell 30:836~848(2016);D'Souza-Schoreyら、「Tumor-Derived Microvesicles:Shedding Light on Novel Microenvironment Modulators and Prospective Cancer Biomarkers」、Genes Dev.26:1287~1299(2012);Peinadoら、「The Secreted Factors Responsible for Pre-Metastatic Niche Formation:Old Sayings and New Thoughts」、Semin.Cancer Biol.21:139~146(2011))。そのため、マウス転移性乳がんモデルを研究した。これを行うために、4T1マウス乳癌腫瘍細胞をマウスの乳房パッドに移植し(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Pulaskiら、「Mouse 4T1 Breast Tumor Model」、Curr.Protoc.Immunol.第20章、ユニット20:22(2001))、腫瘍を解剖し、試料をEDC-ホルマリンで固定し、核酸を標識した。次に、腫瘍表面をMPMで研究したところ、データは、ECMで細胞外RNAシグナルを示し、EVの異種集団を明らかにした(図17A)。さらに、細胞外DNAがより大きなEVの亜集団内で検出され(図17B)、細胞外DNAが腫瘍由来EV内に存在するという他の実験室の所見と一致した(全体が参照により本明細書に組み込まれる、D'Souza-Schoreyら、「Tumor-Derived Microvesicles:Shedding Light on Novel Microenvironment Modulators and Prospective Cancer Biomarkers」、Genes Dev.26:1287~1299(2012);Thakurら、「Double-Stranded DNA in Exosomes:A Novel Biomarker in Cancer Detection」、Cell Res.24:766~769(2014))。これらのデータは、EDC-ホルマリン固定技術により、組織内のEVの亜集団における核酸発現の空間的局在化が可能になることを示唆している。TEMを使用して、EDCおよびグルタルアルデヒドで固定した乳腺腫瘍組織の超微細構造分析も行った。データは、腫瘍細胞付近のECMにおけるEVの異種集団を示している(図17C~17D)。画像は、EDCホルマリン固定がEVを保持し、がん標本のECMでEVの画像化を可能にすることを支持している。
【0128】
硝子体EVがエキソソーム関連タンパク質を発現しているかどうかを決定するために、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)を使用して、ウシ硝子体全体をEV単離画分と比較するプロテオーム解析を行った。表1のデータは、TSG-101などのEV関連タンパク質がEV画分で濃縮されていたことを示している。この表は、液体クロマトグラフィー-質量分析によって特定されたEV画分で濃縮されているエキソソームマーカーを示している。無細胞硝子体画分は連続低速遠心分離によって得られ、EV濃縮画分(細胞外小胞画分)は無細胞硝子体の連続超遠心分離によって得られた。プロテオーム解析では、既知のエキソソームタンパク質マーカーがEV画分で濃縮されていることが示されている(左の列)。無細胞硝子体画分と比較したEV画分のlog2差を、EV濃縮画分(3列目)および無細胞硝子体画分におけるラベルフリー定量(LFQ)強度によって定量化したタンパク質の量に基づいて列挙する。タンパク質の総強度をiBAQ値によって表す(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Schwanhausserら、「Global Quantification of Mammalian Gene Expression Control」、Nature 473:337~342(2011);Volobouevaら、「(R)-Alpha-Lipoic Acid Protects Retinal Pigment Epithelial Cells from Oxidative Damage」、Invest Ophthalmol Vis Sci 46:4302~4310(2005);Vlassovら、「Exosomes:Current Knowledge of Their Composition, Biological Functions, and Diagnostic and Therapeutic 5 Potentials」、Biochim Biophys Acta 1820:940~948(2012))。右の列は、エキソソーム、エクトソームまたはEVマーカーを特定した以前の研究を参照している(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Vlassovら、「Exosomes:Current Knowledge of Their Composition, Biological Functions, and Diagnostic and Therapeutic Potentials」、Biochim Biophys Acta 1820:940~948(2012);Conde-Vancellsら、「Characterization and Comprehensive Proteome Profiling of Exosomes Secreted by Hepatocytes」、J Proteome Res 7:5157~5166(2008);Higashiyamaら、「The Membrane Protein CD9/DRAP 27 Potentiates the Juxtacrine Growth Factor Activity of the Membrane-Anchored Heparin-Binding EGF-Like Growth Factor」、J Cell Biol 128:929~938(1995);Keerthikumarら、「ExoCarta:A Web-Based Compendium of Exosomal Cargo」、JMolBiol 428:688~692(2016);Theryら、「Molecular Charactenzation of Dendritic Cell-Derived Exosomes.Selective Accumulation of the Heat Shock Protein hsc73」、J Cell Biol 147:599~610(1999))。さらに、この表は、一致するペプチドの数(全ておよび固有)、および配列包括度に加えて、タンパク質名、寄託番号および遺伝子記号を示している。各実験が、百分位数(パーセンタイル)群に従ってグループ化された関連するlog2変換iBAQ(強度ベースの絶対定量化)値を列挙している。無細胞硝子体画分の場合、0.90、0.75、中央値、0.25および0.10 iBAQ百分位数は、それぞれ24.4、22.3、21.2、19.1および17.5であった。細胞外小胞濃縮画分の場合、対応する数値は、29.1、26.8、25.2、22.5および21.1であった。
【0129】
【表1】
【0130】
これらの文献は、その全体が参照として本明細書中に援用されるものである。
表1 文献:
(1) Jiら、"Proteome Profiling of Exosomes Derived From Human Primary and Metastatic Colorectal Cancer Cells Reveal Differential Expression of Key Metastatic Factors and Signal Transduction Components," Proteomics 13:1672-1686 (2013);
(2) Koppenら、"Proteomics Analyses of Microvesicles Released by Drosophila Kcl67 and S2
Cells," Proteomics 1 1:4397-4410 (2011);
(3) Baiettiら、"Syndecan-Syntenin-ALIX Regulates the Biogenesis of Exosomes," Nat Cell Biol 14:677-685 (2012);
(4) Kimら、"Proteomic Analysis of Microvesicles Derived From Human Mesenchymal Stem Cells," J Proteome Res 11:839-849 (2012);
(5) Schwanhausserら、"Global Quantification of Mammalian Gene Expression Control," Nature 473:337-342 (2011);
(6) Vlassovら、"Exosomes:Current Knowledge of Their Composition, Biological Functions, and Diagnostic and Therapeutic Potentials," Biochim BiophysActa 1820:940-948 (2012);
(7) Higashiyamaら、"The Membrane Protein CD9 DRAP 27 Potentiates the Juxtacrine Growth Factor Activity of the Membrane-Anchored Heparin-Binding EGF-Like Growth Factor," J Cell Biol 128:929-938 (1995);
(8) Keerthikumarら、"ExoCarta:A Web-Based Compendium of Exosomal Cargo," JMol Biol 428:688-692 (2016);
(9) Keerthikumarら、"Proteogenomic Analysis Reveals Exosomes are More Oncogenic Than Ectosomes," Oncotarget 6:15375-15396 (2015),
(10) Inuiら、"Annexin VI Binds to a Synaptic Vesicle Protein, Synapsin I," JNeurochem 63:1917-1923 (1994);
(11) Mallawaaratchyら、"Comprehensive Proteome Profiling of Glioblastoma-Derived Extracellular Vesicles Identifies Markers for More Aggressive Disease," J Neurooncol 131:233-244 (2017);
(12) Wolfersら、"Tumor-Derived Exosomes are a Source of Shared Tumor Rejection Antigens for CTL Cross-Priming," Nat Med 7:297-303 (2001);
(13) Raposoら、"B Lymphocytes Secrete Antigen-Presenting Vesicles," J Exp Med 183:1161-1172 (1996).
【0131】
EDC-ホルマリン固定硝子体で観察される細胞外タンパク質シグナルが実際にEVであることを確認するために、TSG-101の免疫組織化学(IHC)を行った。EDC-ホルマリン固定はIHCと互換性がなかった;また、TSG-101シグナルは、室温で処理したホルマリン固定組織では、おそらく洗浄緩衝液へのEVの損失のために、確実に検出されなかった。ホルマリン架橋の反転は温度依存性であるので(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Tkachら「Communication by Extracellular Vesicles:Where We Are and Where We Need to Go」、Cell 164:1226~1232(2016))、EHCを4℃で実施し、次いで、試料を直ちに室温で顕微鏡によって画像化した。EDC-ホルマリン固定組織のCFSE染色EVの空間的分布と一致して、TSG-101ポジティブシグナルが細胞外空間で可視化された(図18A)。特異性対照は細胞外シグナルを示さなかった(図18B)。TSG-101は、細胞体内よりも細胞外空間で136倍優勢であった(p<0.001;図18C)。注目すべきことに、TSG-101のシグナルは、おそらくホルマリン架橋の温度依存性復帰により、室温での画像化中に数分以内に失われた。EDC-ホルマリンで固定した硝子体とは異なり(図14A~14B)、4℃で処理したホルマリン固定試料は、おそらく同様にホルマリン核酸架橋の復帰により、細胞外核酸シグナルを示さなかった(図18D)。これらのデータは、硝子体EVが、よく確立されたEV研究と一致するマーカーを含有することを示している(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Consortiumら、「EV-TRACK:Transparent Reporting and Centralizing Knowledge in Extracellular Vesicle Research」、Nat.Methods 14:228~232(2017))。
【0132】
表2は、液体クロマトグラフィー-質量分析(ナノLC-MS/MS、Q-Exactive Plus、Thermo Scientific)によって特定される、EV画分中で濃縮された眼生理学および病態生理学に関係するタンパク質を示している。無細胞硝子体画分は連続低速遠心分離によって得られ、EV濃縮画分は無細胞硝子体の連続超遠心分離によって得られた。プロテオーム解析では、EV画分で濃縮されている既知の眼特異的タンパク質が示されている(左の列)。プロテオーム解析では、既知のエキソソームタンパク質マーカーがEV画分で濃縮されていることが示されている(左の列)。無細胞硝子体画分と比較したEV濃縮画分のlog2差を、EV濃縮画分(3列目)および無細胞硝子体画分(データは示さない)におけるラベルフリー定量(LFQ)強度によって定量化したタンパク質の量に基づいて列挙する。右の列は、眼生理学および病態生理学でこれらのタンパク質を特定した以前の研究を参照している。一致するペプチドの数(全ておよび固有)、および配列包括度に加えて、タンパク質名、寄託番号および遺伝子記号を示している。各実験について、百分位数(パーセンタイル)群に従ってグループ化された関連するlog2変換iBAQ(強度ベースの絶対定量化)値を列挙している。無細胞硝子体画分の場合、0.90、0.75、中央値、0.25および0.10 iBAQ百分位数は、それぞれ24.4、22.3、21.2、19.1および17.5であった。細胞外小胞濃縮画分の場合、対応する数値は、29.1、26.8、25.2、22.5および21.1であった。
【0133】
【表2】
【0134】
aこれらの文献は、その全体が参照として本明細書中に援用されるものである。
表2 文献:
(1) Saariら、"Photochemistry and Stereoselectivity of Cellular Retinaldehyde-Binding Protein from Bovine Retina," J Biol Chem 262:7618-7622 (1987);
(2) Mawら、"Mutation of the Gene Encoding Cellular Retinaldehyde-Binding Protein in Autosomal Recessive Retinitis Pigmentosa," Nat Genet 17:198-200 (1997);
(3) Crabbら、"Structural and Functional Characterization of Recombinant Human Cellular Retinaldehyde-15 Binding Protein, " Protein Sci 7:746-757 (1998);
(4) den Hollanderら、"A Homozygous Missense Mutation in the ERBP Gene (RBP3) Associated with Autosomal Recessive Retinitis Pigmentosa," Invest Ophthalmol Vis Sci 50:1864-1872 (2009),
(5) Liら、"Secretory Defect and Cytotoxicity:The Potential Disease Mechanisms for the Retinitis Pigmentosa (RP)-Associated Interphotoreceptor Retinoid-Binding Protein (IRBP), " J Biol Chem 288:11395-1 1406 (2013);
(6) Friedmanら、" Protein Localization in the Human Eye and Genetic Screen of Opticin," Hum Mol Genet 11:1333-1342 (2002);
(7) Reardonら、"Identification in Vitreous and Molecular Cloning of Opticin, A Novel Member of the Family of Leucine-Rich Repeat Proteins of the Extracellular Matrix," J Biol Chem 275:2123-2129 (2000);
(8) Stoneら、"Missense Variations in the Fibulin 5 Gene and Age-Related Macular Degeneration," NEnglJ Med 351:346-353 (2004);
(9) Faivreら、"In Frame Fibrillin-1 Gene Deletion in Autosomal Dominant Weill-Marchesani Syndrome," JMed Genet 40:34-36 (2003);
(10) Hubmacherら、"Human Eye Development Is Characterized by Coordinated Expression of Fibrillin Isoforms," Invest Ophthalmol Vis Sci 55:7934-7944 (2014);
(11) Wheatleyら、Immunohistochemical Localization of Fibrillin in Human Ocular Tissues.Relevance to the Marfan Syndrome," Arch Ophthalmol 113:103-109 (1995);
(12) Sakumaら、"Isolation and Characterization of the Human X-Arrestin Gene," Gene 224:87-95 (1998);
(13) Dryjaら、"A Point Mutation of the Rhodopsin Gene in one Form of Retinitis Pigmentosa," Nature 343:364-366 (1990);
(14) Waldら、"The Light Reaction in the Bleaching of Rhodopsin," Science 111:179-181 (1950);
(15) Dryjaら、"Mutations Within the Rhodopsin Gene in Patients with Autosomal Dominant Retinitis Pigmentosa," NEngUMed 323:1302-1307 (1990);
(16) Lidenら、"Biochemical Defects in 11-cis-Retinol Dehydrogenase Mutants Associated With Fundus Albipunctatus," J Biol Chem 276:49251-49257 (2001);
(17) Yamamotoら、"Mutations in the Gene Encoding 11-cis Retinol Dehydrogenase Cause Delayed Dark Adaptation and Fundus Albipunctatus," Nat Genet 22:188-191 (1999);
(18) Moiseyevら、"RPE65 Is an Iron(II)-Dependent Isomerohydrolase in the Retinoid Visual Cycle," J Biol Chem 281:2835-2840 (2006);
(19) Nicolettiら、"Molecular Characterization of the Human Gene Encoding an Abundant 61 kDa Protein Specific to the Retinal Pigment Epithelium," Hum Mol Genet 4:641-649 (1995);
(20) Carterら、"Mapping of the Human CP49 Gene and Identification of an Intragenic Polymorphic Marker to Allow Genetic Linkage Analysis in Autosomal Dominant Congenital Cataract," Biochem Biophys Res Commun 270:432-436 (2000);
(21) Merdesら、"The 47-kD Lens-Specific Protein Phakinin is a Tailless Intermediate Filament Protein and an Assembly Partner of Filensin," J Cell Biol 123, 1507-1 16 (1993).
【0135】
本発明者らは、硝子体EVを特徴付け、これらのEVがRNAおよびタンパク質カーゴを標的細胞に移入できるかどうかを決定しようとした(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Valadiら、「Exosome-Mediated Transfer of mRNAs and MicroRNAs is a Novel Mechanism of Genetic Exchange Between Cells」、Nat.Cell Biol.9:654~659(2007);Skogら、「Glioblastoma Microvesicles Transport RNA and Proteins That Promote Tumour Growth and Provide Diagnostic Biomarkers」、Nat.Cell Biol.10:1470~1476(2008))。これを達成するために、ウシまたはヒト硝子体EV RNAをアクリジンオレンジで標識し、EV画分を精製し(図19A~19B)、次いで、網膜色素上皮細胞(ARPE-19)を標識EVのボーラスに曝露した。ウシ硝子体EVで、48時間で最大96.2%のトランスフェクション率が観察された(図20A~20B)。死後の眼試料から単離したヒト硝子体EVは、24時間で96%のトランスフェクション率を示し(図20C~20D)、いずれも対照よりも有意に多かった(p<0.05)。EVは、組換えタンパク質を送達するベクターとして機能することも知られている。よって、フルオレセインにコンジュゲートしたウシ血清アルブミン(BSA、66kDタンパク質)を、電気透過処理(electropermeabilization)を介してウシ硝子体EVにロードした。次いで、培養網膜色素上皮(ARPE-19)細胞を処理すると、細胞が最大97.6%トランスフェクトされたことが観察された。対照、PBS単独または電気穿孔なしでBSAフルオレセインと混合したEVは、ARPE-19細胞のトランスフェクションを生じなかった(図21A~21C、p<0.005、n=3)。対照は、BSA-フルオレセインの取り込みがEV依存性であることを実証した。硝子体EVが、蛍光を発するためにそのコンフォメーション状態を保持しなければならない機能的タンパク質をトランスフェクトすることができるかどうかを評価するために、組換え緑色蛍光タンパク質(GFP、26.9kD)をウシ硝子体EVにロードした。データは、ARPE-19細胞が、対照よりも有意に多く(p<0.05、n=3)、最大88.3%トランスフェクトされることを示した(図21D~21F)。これらのデータは、硝子体EVがRNAおよび組換えタンパク質をインビトロで輸送できることを示している。
【0136】
最後に、インビボでの硝子体EVトランスフェクションを研究した。BSA-フルオレセインをロードした希薄濃度のEVを、硝子体内注射を通してげっ歯類の眼に投与した。3日目に、EVは、網膜浸透の証拠を示さなかった(図22A)。3週目に、インビボで複数の網膜細胞層のトランスフェクションが観察された(図22B~22C)。特異性対照、PBS単独(図22D)または電気透過処理なしでBSA-フルオレセインと混合したEV試料は陰性であった。これらのデータは、硝子体EVがインビボで組換えタンパク質送達のためのベクターとして機能することを示している。
【0137】
本明細書で好ましい実施形態を詳細に描写および記載してきたが、本発明の精神から逸脱することなく種々の修正、追加、置換などを行うことができることが当業者は明らかであり、したがってこれらは以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内にあると考えられる。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
細胞外小胞を固定する方法であって、
細胞外小胞を含有する試料を用意することと、
前記細胞外小胞を固定するのに有効な条件下で前記試料を非可逆的架橋剤と接触させることと
を含む方法。
(態様2)
前記試料を非可逆的架橋剤と接触させて前記細胞外小胞を固定する前、後、またはこれと同時に、前記試料をアルデヒド含有固定剤と接触させること
をさらに含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記細胞外小胞が、エキソマー、エキソソーム、多小胞体、腔内小胞(ILV)、多小胞エンドソーム(MVE)、オンコソーム、20~10,000nmのサイズの範囲のマイクロベシクル、アポトーシス小体、およびエンドソームまたは原形質膜に由来する小胞からなる群から選択される、態様2に記載の方法。
(態様4)
前記試料が生物学的流体または組織である、態様2に記載の方法。
(態様5)
前記試料が、血液製剤、ゾル、懸濁液、ゲル、コロイド、流体、液体、血漿、プラスチック固体、懸濁液、ゲル、母乳、乳頭吸引液、尿、精液、羊水、脳脊髄液、硝子体液、房水、滑液、リンパ、胆汁、唾液、胆汁、耳垢(イヤーワックス)、乳び、糜粥、内リンパ、外リンパ、滲出液、糞便、射精液、胃酸、胃液、粘液、心膜液、腹水、胸水、膿、粘膜分泌物、皮脂(皮膚油)、漿液、恥垢、痰、汗、涙、膣分泌物、外科的廃棄物および嘔吐物からなる群から選択される生物学的流体である、態様4に記載の方法。
(態様6)
前記生物学的流体試料が硝子体液または房水である、態様5に記載の方法。
(態様7)
前記生物学的流体試料が、全血、血漿、血小板および血清からなる群から選択される血液製剤である、態様5に記載の方法。
(態様8)
前記生物学的流体試料が尿である、態様5に記載の方法。
(態様9)
前記生物学的流体試料が脳脊髄液である、態様5に記載の方法。
(態様10)
前記生物学的流体試料が乳頭吸引液である、態様5に記載の方法。
(態様11)
前記試料が、皮膚、骨、軟骨、腱、靭帯、椎間板、角膜、水晶体、半月板、毛、横紋筋、平滑筋、心筋、脂肪組織、線維組織、神経組織、結合組織、蝸牛、精巣、卵巣、胃、肺、心臓、肝臓、膵臓、腎臓、腸および眼からなる群から選択される組織である、態様4に記載の方法。
(態様12)
前記非可逆的架橋剤が、水溶性カルボジイミド、ハロゲン化シアンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、態様2に記載の方法。
(態様13)
前記非可逆的架橋剤が1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである、態様12に記載の方法。
(態様14)
前記非可逆的架橋剤が、臭化シアン、フッ化シアン、塩化シアンおよびヨウ化シアンからなる群から選択されるハロゲン化シアンである、態様12に記載の方法。
(態様15)
前記非可逆的架橋剤との前記接触および前記アルデヒド含有固定剤との前記接触と独立して、その前、後、またはこれと同時に、前記試料をさらなる架橋剤と接触させること
をさらに含み、前記さらなる架橋剤が、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミドの誘導体、N,N-メチレンビスアクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、N,N-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、ホルムアルデヒドを含まない架橋剤、N-(1-ヒドロキシ-2,2-ジメトキシエチル)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ホルマリン固定液、ホルマールカルシウム、ホルマール生理食塩水、亜鉛ホルマリン(非緩衝)、Zenker固定液、Helly固定液、B-5固定液、Bouin液、Hollande液、Gendre液、Clarke液、Carnoy液、メタカン、アルコール性ホルマリンおよびホルモール酢酸アルコールからなる群から選択される、態様2に記載の方法。
(態様16)
前記細胞外小胞が20ナノメートル~10,000nmのサイズを有する、態様2に記載の方法。
(態様17)
前記固定された細胞外小胞を画像化すること
をさらに含む、態様2に記載の方法。
(態様18)
前記画像化が、透過型電子顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法、低温電子顕微鏡法、双眼実体顕微鏡法、広視野顕微鏡法、偏光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、多光子顕微鏡法、微分干渉顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、レーザー走査型共焦点顕微鏡法、多光子励起顕微鏡法、光線顕微鏡法、超音波顕微鏡法、比色分析法、化学発光アッセイ、分光測光法、ポジトロン放射形断層撮影法、コンピュータ断層撮影法および磁気共鳴画像法によって行われる、態様17に記載の方法。
(態様19)
前記画像化に基づいて前記生物学的試料中の前記細胞外小胞を検出すること
をさらに含む、態様17に記載の方法。
(態様20)
前記生物学的試料が臨床試料である、態様19に記載の方法。
(態様21)
前記臨床試料が、臨床薬で治療された患者からのものである、態様20に記載の方法。
(態様22)
前記画像化に基づいて、前記臨床試料を提供する対象が、疾患または障害を有するかどうかを診断すること
をさらに含む、態様17に記載の方法。
(態様23)
前記疾患または障害が、がん、炎症性疾患、感染症、変性疾患、病原体によって引き起こされる疾患、神経疾患および障害、ならびに内部機能障害からなる群から選択される、態様22に記載の方法。
(態様24)
前記疾患または障害が、緑内障および他の眼疾患からなる群から選択される内部機能障害である、態様23に記載の方法。
(態様25)
前記疾患または障害が、免疫不全または過敏症を特徴とする内部機能障害である、態様23に記載の方法。
(態様26)
前記免疫不全または過敏症が、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、全身性強皮症、クローン病、潰瘍性大腸炎、アレルギー性状態、湿疹、喘息、エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、サルコイドーシス、肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症を含む)、無顆粒球症、血管炎(ANCAを含む)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、免疫溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病(Bechet disease)、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン筋無力症症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群(Sjorgen's Syndrome)、スティーブンス・ジョンソン症候群、固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病、およびギラン・バレー症候群からなる群から選択される、態様25に記載の方法。
(態様27)
前記疾患または障害が、急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、腺癌、腺肉腫、副腎がん、副腎皮質癌、肛門がん、未分化星状細胞腫、血管肉腫、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、B細胞リンパ腫、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨髄がん、腸がん、脳がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳がん、カルチノイド腫瘍、子宮頸がん、胆管細胞癌、軟骨肉腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚リンパ腫、皮膚黒色腫、びまん性星状細胞腫、非浸潤性乳管癌(DCIS)、子宮内膜がん、上衣腫、類上皮肉腫、食道がん、ユーイング肉腫、肝外胆管がん、目のがん、卵管がん、線維肉腫、胆嚢がん、胃がん、胃腸がん、胃腸カルチノイドがん、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、多形性膠芽腫(GBM)、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部がん、血管内皮腫、ホジキンリンパ腫、ホジキン病、下咽頭がん、浸潤性乳管癌(IDC)、浸潤性小葉癌(ILC)、炎症性乳がん(IBC)、腸がん、肝内胆管がん、浸潤性/浸潤性乳がん、膵島細胞がん、顎がん、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、平滑筋肉腫、軟膜転移、白血病、唇がん、脂肪肉腫、肝臓がん、非浸潤性小葉がん、低悪性度星状細胞腫、肺がん、リンパ節がん、リンパ腫、男性乳がん、髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、間葉性軟骨肉腫、間葉腫(mesenchymous)、中皮腫、転移性乳がん、転移性黒色腫、転移性扁平上皮頚部がん、混合膠腫、口がん(mouth cancer)、粘液癌、粘膜黒色腫、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、鼻腔がん、鼻咽頭がん、頸部がん、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍(NET)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、非小細胞肺がん、燕麦細胞がん、眼がん、眼黒色腫、乏突起膠腫、口のがん(oral cancer)、口腔がん(oral cavity cancer)、中咽頭がん、骨原性肉腫、骨肉腫、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣原発性腹膜癌、卵巣性索間質腫瘍、ページェット病、膵臓がん、乳頭癌、副鼻腔がん、副甲状腺がん、骨盤がん、陰茎がん、末梢神経がん、腹膜がん、咽頭がん、褐色細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫、松果体領域の腫瘍、松果体芽腫、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞癌、腎盂がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、肉腫(骨)、肉腫(軟部組織)、肉腫(子宮)、洞がん、皮膚がん、小細胞肺がん(SCLC)、小腸がん、軟部組織肉腫、脊椎がん、脊柱がん、脊髄がん、脊髄腫瘍、扁平上皮癌、胃がん、滑膜肉腫、T細胞リンパ腫、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫/胸腺癌、甲状腺がん、舌がん、扁桃がん、移行上皮がん(膀胱)、移行上皮がん(腎臓)、移行上皮がん(卵巣)、トリプルネガティブ乳がん、卵管がん、管状癌、未診断がん、尿管がん、子宮腺癌、子宮がん、子宮肉腫、膣がんおよび外陰がんからなる群から選択されるがんである、態様23に記載の方法。
(態様28)
前記がんが眼がんである、態様27に記載の方法。
(態様29)
前記疾患または障害が、脱髄疾患、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病、ウィルソン病、脊髄性筋萎縮症、レビー小体病、フリードライヒ運動失調症、自閉症、および自閉症スペクトラム障害、疾患に関連するシナプス密度、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群から選択される神経疾患である、態様23に記載の方法。
(態様30)
前記疾患または障害が、物質乱用関連障害、アルコール使用障害、アンフェタミン使用障害、大麻使用障害、カフェイン誘発障害、コカイン使用障害、吸入剤使用障害、オピオイド使用障害、幻覚剤障害、鎮静剤使用、催眠剤使用または抗不安薬使用障害、多物質使用障害、性機能障害、性的興奮障害、男性勃起障害、男性機能低下障害、女性機能低下障害、摂食障害、過食障害、神経性過食症、神経性食欲不振、不安、強迫性障害症候群、パニック発作、心的外傷後ストレス障害、広場恐怖症、強迫性および強制行動、衝動制御障害、病的賭博、間欠性爆発性障害、盗癖、放火癖、パーソナリティ障害、スキゾイドパーソナリティ障害、妄想性パーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害および反社会性パーソナリティ障害、統合失調症サブタイプ、統合失調感情障害、統合失調症未分化型、妄想性障害、気分循環性障害、身体表現性障害、心気症、解離性障害、ならびに離人症性障害から選択される神経障害である、態様23に記載の方法。
(態様31)
前記疾患が心血管疾患である、態様23に記載の方法。
(態様32)
前記診断が、疾患マーカーについて2つ以上のアッセイを実施することを含む、態様22に記載の方法。
(態様33)
前記診断が、
特定の疾患または障害を有する対象から、前記非可逆的架橋剤で固定された細胞外小胞を含有する臨床試料の標準画像を用意することと;
前記対象の前記臨床試料の前記画像を、前記固定された細胞外小胞のサイズ、密度、形態または空間的分布に関して、前記標準画像と比較することと;
前記比較に基づいて、前記対象が疾患または障害を有するかどうかを決定することと
を含む、態様22に記載の方法。
(態様34)
前記細胞外小胞を含有する臨床試料の前記標準画像を、前記非可逆的架橋剤で固定する前、後、またはこれと同時にアルデヒド含有固定剤で固定する、態様33に記載の方法。
(態様35)
前記決定に基づいて、治療薬を前記対象に投与すること
をさらに含む、態様33に記載の方法。
(態様36)
前記診断が、特定の疾患または障害の進行または退行を監視することと;
非可逆的架橋剤で固定された細胞外小胞を含有する対象の臨床試料の前の画像を用意することと;
前記非可逆的架橋剤で固定された前記細胞外小胞を含有する前記対象の前記臨床試料の前記画像を、前記固定された細胞外小胞のサイズ、密度、形態または空間的分布に関して、前記前の画像と比較することと;
前記比較に基づいて、前記特定の疾患または障害が進行しているまたは退行しているかどうかを決定することと
を含む、態様22に記載の方法。
(態様37)
前記細胞外小胞を含有する臨床試料を、前記非可逆的架橋剤で固定する前、後、またはこれと同時にアルデヒド含有固定剤で固定する、態様36に記載の方法。
(態様38)
前記決定に基づいて、治療薬を前記対象に投与すること
をさらに含む、態様36に記載の方法。
(態様39)
生物学的試料中の細胞外小胞を固定するためのキットであって、
前記試料を保持するための支持基質と;
非可逆的架橋剤と
を含むキット。
(態様40)
アルデヒド含有固定剤
をさらに含む、態様39に記載のキット。
(態様41)
前記非可逆的架橋剤が、水溶性カルボジイミド、ハロゲン化シアンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、態様39に記載のキット。
(態様42)
前記非可逆的架橋剤が1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである、態様41に記載のキット。
図1A-1D】
図1E-1F】
図2A-2C】
図2D-2E】
図3A-3C】
図4A-4B】
図5A-5B】
図6A-6D】
図7
図8A-8C】
図9A-9E】
図10A-10C】
図10D
図11A-11I】
図12A-12E】
図12F-12J】
図13A-13B】
図14A-14C】
図15A-15C】
図16A-16B】
図17A-17D】
図18A-18B】
図18C-18D】
図19A-19B】
図20A-20C】
図20D
図21A-21C】
図21D-21F】
図22A-22D】