(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】扉および扉の製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/82 20060101AFI20240125BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20240125BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240125BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
E06B3/82
B27M3/00 N
B32B27/00 E
B32B27/42 102
(21)【出願番号】P 2022160920
(22)【出願日】2022-10-05
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391034488
【氏名又は名称】イビケン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 正幸
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6171296(JP,B2)
【文献】特許第3360209(JP,B2)
【文献】特開2010-143126(JP,A)
【文献】特許第6614287(JP,B2)
【文献】特許第6379466(JP,B2)
【文献】特許第5198451(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54- 3/88
B27M 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材の表面を覆うメラミン化粧板と、によって構成されている板状の扉であって、
板状の本体部と、
前記本体部の端部に設けられている手掛け部と、を備え、
前記手掛け部は、前記本体部の前面に連続する前面側縁部と、前記本体部の後面に連続する後面側縁部と、前記前面側縁部と前記後面側縁部との間を窪みによって繋ぐ溝部と、を有し、
前記溝部は、前記後面側縁部と連続して円弧状に湾曲する円弧部と、前記円弧部と連続して前記前面側縁部まで延びる内壁部と、を有し、
前記本体部から前記手掛け部に亘って一体の前記メラミン化粧板が
前記芯材の形状に沿って前記芯材に貼り付けられて
おり、
前記メラミン化粧板のうち前記手掛け部に貼り付けられている部分の厚さは、前記手掛け部に貼り付けられている当該部分の全体において、前記メラミン化粧板のうち前記本体部に貼り付けられている部分よりも薄く、
前記メラミン化粧板のうち前記手掛け部に貼り付けられている部分を薄肉部として、前記メラミン化粧板のうち前記本体部に貼り付けられている部分を厚肉部として、
前記メラミン化粧板は、前記厚肉部と前記薄肉部との間に、前記厚肉部から前記薄肉部に向かって傾斜するように厚さが薄くなっている中間部を備え、
前記薄肉部における全体の厚さが一定であることを特徴とする扉。
【請求項2】
前記内壁部は、前記円弧部に近いほど前記後面側縁部に近づくように傾斜しており、
前記内壁部の傾斜角度は、前記本体部の広がる平面に対して24度以上35度以下である請求項
1に記載の扉。
【請求項3】
芯材と、該芯材の表面を覆うメラミン化粧板と、によって構成されており、
板状の本体部と、
前記本体部の端部に設けられている手掛け部と、を備え、
前記手掛け部は、前記本体部の前面に連続する前面側縁部と、前記本体部の後面に連続する後面側縁部と、前記前面側縁部と前記後面側縁部との間を窪みによって繋ぐ溝部と、を有し、
前記溝部は、前記後面側縁部と連続して円弧状に湾曲する円弧部と、前記円弧部と連続して前記前面側縁部まで延びる内壁部と、を有し、
前記本体部から前記手掛け部に亘って一体の前記メラミン化粧板が前記芯材に貼り付けられている扉の製造方法であって、
前記メラミン化粧板のうち前記手掛け部に接着する部分の厚さを均一に薄く削る化粧板加工工程と、
前記メラミン化粧板を前記本体部に接着する第1接着工程と、
前記メラミン化粧板を前記手掛け部に接着する第2接着工程と、を行うものであり、
前記第2接着工程は、前記第1接着工程によって前記本体部に前記メラミン化粧板が接着されている前記芯材に対して、前記化粧板加工工程によって薄くした前記メラミン化粧板を、加熱しながら前記手掛け部の形状に沿って曲げることで前記手掛け部に接着する扉の製造方法。
【請求項4】
前記メラミン化粧板のうち、前記本体部に接着する部分を厚肉部として、
前記化粧板加工工程は、前記メラミン化粧板のうち前記手掛け部に接着する部分の厚さを均一に薄く削ることにより形成する薄肉部と、前記厚肉部から前記薄肉部に向かって徐々に薄くなるように削ることにより形成する中間部と、を形成する工程である
請求項3に記載の扉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を開閉するための手掛けを備える扉および扉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、扉に適用できる積層体として、指を掛けることができる窪みを端部に有している積層体が開示されている。積層体の基材における平面部分には、化粧板が接着されている。積層体の端部には、上記平面部分に接着されている化粧板とは別の化粧材が接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面部分の化粧板と端部の化粧材とが別である特許文献1に開示されているような積層体では、化粧板と化粧材との継ぎ目が露出する。このため、端部に指を掛ける際に、指に付着している水分等が継ぎ目から浸入するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための扉は、芯材と、該芯材の表面を覆うメラミン化粧板と、によって構成されている板状の扉であって、板状の本体部と、前記本体部の端部に設けられている手掛け部と、を備え、前記手掛け部は、前記本体部の前面に連続する前面側縁部と、前記本体部の後面に連続する後面側縁部と、前記前面側縁部と前記後面側縁部との間を窪みによって繋ぐ溝部と、を有し、前記溝部は、前記後面側縁部と連続して円弧状に湾曲する円弧部と、前記円弧部と連続して前記前面側縁部まで延びる内壁部と、を有し、前記本体部から前記手掛け部に亘って一体の前記メラミン化粧板が前記芯材に貼り付けられていることをその要旨とする。
【0006】
上記構成では、手掛け部にはメラミン化粧板の継ぎ目が存在しない。これによって、芯材とメラミン化粧板との間に水分等が浸入することを抑制できる。
上記扉の一例では、前記メラミン化粧板のうち前記手掛け部に貼り付けられている部分の厚さは、前記手掛け部に貼り付けられている当該部分の全体において、前記メラミン化粧板のうち前記本体部に貼り付けられている部分よりも薄い。
【0007】
上記扉の一例では、前記メラミン化粧板のうち前記手掛け部に貼り付けられている部分を薄肉部として、前記メラミン化粧板のうち前記本体部に貼り付けられている部分を厚肉部として、前記メラミン化粧板は、前記厚肉部と前記薄肉部との間に、前記厚肉部から前記薄肉部に向かって傾斜するように厚さが薄くなっている中間部を備え、前記薄肉部における全体の厚さが一定である。
【0008】
上記構成によれば、手掛け部のように湾曲した形状であっても、その形状に沿ってメラミン化粧板を貼り付けることができる。
上記扉の一例では、前記内壁部は、前記円弧部に近いほど前記後面側縁部に近づくように傾斜しており、前記内壁部の傾斜角度は、前記本体部の広がる平面に対して24度以上35度以下である。
【0009】
上記構成によれば、内壁部が傾斜していることで手掛け部に指を掛けやすい。さらに、手掛け部に指を掛けた手を引くことによって扉を開閉しやすい。
上記課題を解決するための扉の製造方法は、芯材と、該芯材の表面を覆うメラミン化粧板と、によって構成されており、板状の本体部と、前記本体部の端部に設けられている手掛け部と、を備え、前記手掛け部は、前記本体部の前面に連続する前面側縁部と、前記本体部の後面に連続する後面側縁部と、前記前面側縁部と前記後面側縁部との間を窪みによって繋ぐ溝部と、を有し、前記溝部は、前記後面側縁部と連続して円弧状に湾曲する円弧部と、前記円弧部と連続して前記前面側縁部まで延びる内壁部と、を有し、前記本体部から前記手掛け部に亘って一体の前記メラミン化粧板が前記芯材に貼り付けられている扉の製造方法であって、前記メラミン化粧板のうち前記手掛け部に接着する部分の厚さを均一に薄く削る化粧板加工工程と、前記メラミン化粧板を前記本体部に接着する第1接着工程と、前記メラミン化粧板を前記手掛け部に接着する第2接着工程と、を行うものであり、前記第2接着工程は、前記第1接着工程によって前記本体部に前記メラミン化粧板が接着されている前記芯材に対して、前記化粧板加工工程によって薄くした前記メラミン化粧板を、前記手掛け部の形状に沿って曲げながら前記手掛け部に接着することをその要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、手掛け部にメラミン化粧板の継ぎ目が存在しない扉を製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の扉、および扉の製造方法によれば、扉を構成する芯材とメラミン化粧板との間に水分等が浸入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、扉の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の扉における手掛け部を拡大した拡大図である。
【
図4】
図4は、
図1の扉を製造する製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1の扉を製造する製造方法を説明する図である。
【
図6】
図6は、
図1の扉を製造する製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、扉の一実施形態である扉10について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1および
図2は、板状の扉10を示す。扉10は、一例として、収納棚等の家具に適用できる。扉10は、建具としての扉として用いることもできる。扉10は、開き扉として使用することもできるし、引き扉として使用することもできる。なお、収納棚等が備える引き出しの前板も扉の一例である。すなわち、引き出しの前板にも扉10を適用できる。
【0014】
[扉]
図1および
図2に示すように、扉10は、板状の本体部11を備えている。扉10は、手掛け部12を備えている。
【0015】
手掛け部12は、本体部11の端部に設けられている。一枚の扉10につき一つの手掛け部12を備えている。たとえば、手掛け部12は、本体部11の一端の全幅に亘って設けられている。詳細は後述するが、手掛け部12は、扉10を開閉するために手を掛けることのできる窪みを有する形状である。
【0016】
扉10は、本体部11のうち手掛け部12を備える端部とは反対側の端部に、逆端部19を備えている。逆端部19は、たとえば扉10を開き扉として用いる場合に蝶番を取り付けることのできる位置の一例である。
【0017】
図1および
図2には、第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zのそれぞれを示す矢印を表示している。第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zの三方向は、それぞれが直交する方向である。
【0018】
第1方向Xは、板状の扉10における厚さ方向の一方を示す。厚さ方向のことを前後方向ということもある。第2方向Yおよび第3方向Zは、扉10の辺に沿って延びる方向を示す。具体的には、第2方向Yは、手掛け部12が設けられている辺の延びる方向のうち一方を示す。当該辺の延びる方向を幅方向ということもある。第3方向Zは、手掛け部12と逆端部19とを繋ぐ辺の延びる方向のうち一方を示す。当該辺の延びる方向を上下方向ということもある。
【0019】
板状の扉10において、第2方向Yおよび第3方向Zと平行な面を前面10cという。扉10において前面10cとは反対側の面を後面10aという。前面10cは、
図1の前方側の面である。後面10aは、
図1の後方側の面である。前面10cと後面10aとを繋ぐ面のうち第1方向Xおよび第3方向Zと平行な面を側面10bという。扉10は、前面10cおよび後面10aにおける幅方向の両端部に一対の側面10bを有する。
【0020】
図1および
図2に示す第1方向Xは、後面10aから前面10cに向かう方向である。
図1および
図2に示す第2方向Yは、手掛け部12を上にした扉10の前面10cに向き合って右手から左手に向かう方向である。
図1および
図2に示す第3方向Zは、逆端部19から手掛け部12に向かう方向である。
【0021】
[扉の材質]
図2に示すように、扉10は、芯材20とメラミン化粧板30とによって構成されている。メラミン化粧板30は、芯材20の表面を覆うように芯材20に貼り付けられている。言い換えれば、扉10の本体部11は、芯材20と、芯材20の表面を覆うメラミン化粧板30とによって構成されている。また、扉10の手掛け部12は、芯材20と、芯材20の表面を覆うメラミン化粧板30とによって構成されている。
【0022】
芯材20は、たとえば、パーティクルボード、MDF等の木質ボードを用いることができる。他の例として、芯材20は、合板を用いてもよい。芯材20は、樹脂材料を成形したものでもよい。
【0023】
メラミン化粧板30の一例は、コア層と、コア層の表面に積層されている化粧層と、によって構成されている積層構造の板である。コア層は、たとえば、フェノール樹脂を含浸させた紙によって構成されている。化粧層は、メラミン樹脂を含浸させた紙によって構成されている。なお、各図面では、メラミン化粧板30の積層構造を省略して図示している。メラミン化粧板30としては、詳細は後述するが、たとえば厚さが0.2mm以上1.0mm以下であるものを採用することができる。
【0024】
メラミン化粧板30は、コア層および化粧層に加えて、他の層を備えていてもよい。たとえば、化粧層を覆う保護層を備えていてもよい。メラミン化粧板30は、積層構造であるものに限らず、メラミン樹脂を材料とした一層の板でもよい。
【0025】
扉10では、前面10cがメラミン化粧板30によって覆われている。具体的には、扉10は、本体部11から手掛け部12に亘って一体のメラミン化粧板30が芯材20に貼り付けられている。一例として、
図2に示すように、逆端部19、本体部11および手掛け部12に一体のメラミン化粧板30が芯材20に貼り付けられている。
【0026】
たとえば、側面10bにもメラミン化粧板が貼り付けられていてもよい。たとえば、後面10aにもメラミン化粧板が貼り付けられていてもよい。たとえば、後面10aには、メラミン化粧板とは別のシート材が貼り付けられていてもよい。側面10bおよび後面10aに貼り付けることのできるメラミン化粧板は、手掛け部12に貼り付けられているメラミン化粧板30とは一体でなくてもよい。側面10bおよび後面10aのうちいずれか一方、または、側面10bおよび後面10aの両方は、芯材20が露出していてもよい。
【0027】
芯材20とメラミン化粧板30とは、たとえば接着剤を用いて貼り合わせることができる。なお、芯材20にメラミン化粧板30を貼り付ける接着剤は、メラミン化粧板を接着する際に用いることのできる公知の接着剤を適宜採用できる。接着剤の具体例としては、木工用の酢酸ビニル系接着剤、ゴム系接着剤およびホットメルト系接着剤等が挙げられる。
【0028】
[手掛け部]
図2に示すように、手掛け部12は、本体部11の前面における上方側の端部から連続する前面側縁部14を備えている。手掛け部12は、本体部11の後面における上方側の端部から連続する後面側縁部13を備えている。手掛け部12は、前面側縁部14と後面側縁部13との間を窪みによって繋ぐ溝部15を備えている。
【0029】
後面側縁部13の一例について説明する。後面側縁部13は、扉10の後面10aと同一平面上に位置する第1平行面13aを備えている。後面側縁部13は、第2平行面13bを備えている。第2平行面13bは、第1平行面13aに対して第1方向Xに移動した位置にあり、第1平行面13aと平行な面である。後面側縁部13は、端面13cを備えている。端面13cは、第3方向Zにおける第1平行面13aの端から第2平行面13bに向けて第1方向Xに延びる面である。後面側縁部13は、第2平行面13bと端面13cとを繋ぐ第1R面13rを備えている。
図2に示す断面において、第1R面13rの曲がり具合を曲率半径で示した値を第1曲率半径R1とする。
【0030】
前面側縁部14の一例について説明する。前面側縁部14は、扉10の前面10cと溝部15とを繋ぐ第3R面14rを備えている。
図2に示す断面において、第3R面14rの曲がり具合を曲率半径で示した値を第3曲率半径R3とする。
【0031】
溝部15について説明する。溝部15は、後面側縁部13と連続して円弧状に湾曲する円弧部16を備えている。具体的には、円弧部16は、第2平行面13bに連続している。溝部15は、円弧部16と連続して前面側縁部14まで延びる内壁部17を備えている。具体的には、内壁部17は、円弧部16と第3R面14rとを繋いでいる。内壁部17は、
図2に示す断面において直線状に円弧部16と第3R面14rとを繋いでいる。
図2に示す断面において、円弧部16の曲がり具合を曲率半径で示した値を第2曲率半径R2とする。
【0032】
[内壁部の傾斜角度]
図2に示すように、内壁部17は、円弧部16に近いほど後面側縁部13に近づくように傾斜している。内壁部17の傾斜角度を角度θとする。角度θは、本体部11が広がる平面に対しての内壁部17の傾斜角度を示す。
【0033】
角度θとしては、特に制限されないが、たとえば24度以上35度以下の角度を採用することができる。上記角度θの範囲を示す下限値としては、25度が好ましく、より好ましくは26度であり、さらに好ましくは27度である。角度θの範囲を示す上限値としては、33度が好ましく、より好ましくは31度であり、さらに好ましくは29度である。
【0034】
[手掛け部の曲率半径]
図2に示す第1曲率半径R1、第2曲率半径R2および第3曲率半径R3の値は、特に制限されないが、たとえば円弧部16の曲率半径を示す第2曲率半径R2が最も大きい。たとえば、第1曲率半径R1、第3曲率半径R3、第2曲率半径R2の順に大きい値である。
【0035】
一例として、第2曲率半径R2は、4.5mmよりも小さいことが好ましい。第2曲率半径R2は、4.0mm以下であることがより好ましい。第2曲率半径R2は、3.4mmよりも大きいことが好ましい。第2曲率半径R2は、3.9mm以上であることがより好ましい。
【0036】
一例として、第3曲率半径R3は、1.0mmよりも大きいことが好ましい。第3曲率半径R3は、2.0mm以上であることがより好ましい。第3曲率半径R3は、2.4mmよりも小さいことが好ましい。第3曲率半径R3は、2.2mm以下であることがより好ましい。
【0037】
[メラミン化粧板の厚さ]
図3に示すように、メラミン化粧板30のうち手掛け部12に接着されている部分を薄肉部33とする。メラミン化粧板30のうち本体部11に接着されている部分を厚肉部31とする。すなわち、一体のメラミン化粧板30が厚肉部31および薄肉部33を備えている。
【0038】
薄肉部33の厚さは、薄肉部33の全体において、厚肉部31よりも薄いことが好ましい。すなわち、薄肉部33は、厚肉部31よりも薄い部分が面として広がっているとよい。たとえば、メラミン化粧板30を構成するコア層の一部を削り取って薄くした部分が薄肉部33に相当する。この場合には、薄肉部33と厚肉部31とでは、化粧層の厚さが等しいことが好ましい。薄肉部33としては、メラミン化粧板30を構成する化粧層が削り取られていてもよい。手掛け部12に接着されている部分である薄肉部33における全体の厚さは、一定であることが好ましい。厚肉部31における全体の厚さは、一定であることが好ましい。
【0039】
図3に示すように、扉10では、メラミン化粧板30は、厚肉部31と薄肉部33との間に、厚肉部31から薄肉部33に向かって傾斜するように厚さが薄くなっている中間部32を備えていることが好ましい。
図3には、メラミン化粧板30のうち厚肉部31よりも薄い範囲を示す始点30aから終点30bを表示している。
【0040】
図3には、厚肉部31の厚さを第1化粧板厚Eと表示している。
図3には、薄肉部33の厚さを第2化粧板厚Fと表示している。すなわち、第2化粧板厚Fは、第1化粧板厚Eよりも小さい。
【0041】
第1化粧板厚Eの具体例を説明する。第1化粧板厚Eは、0.5mm以上1.0mm以下であることが好ましい。第1化粧板厚Eの範囲の下限値は、0.65mmであることが好ましく、より好ましくは0.8mmである。第1化粧板厚Eの範囲の上限値は、0.95mmであることが好ましく、より好ましくは0.9mmである。
【0042】
第2化粧板厚Fの具体例を説明する。第2化粧板厚Fは、0.2mm以上0.5mm以下であることが好ましい。第1化粧板厚Eの範囲の下限値は、0.25mmであることが好ましく、より好ましくは0.3mmである。第1化粧板厚Eの範囲の上限値は、0.45mmであることが好ましく、より好ましくは0.4mmである。
【0043】
扉10では、第1化粧板厚Eに対する第2化粧板厚Fの比率(F/E)は、たとえば0.2以上0.7以下である。上記比率(F/E)の範囲の上限は、0.6であることが好ましく、より好ましくは0.5である。上記比率(F/E)の範囲の下限は、0.3であることが好ましく、より好ましくは0.4である。
【0044】
[他の寸法関係]
図2に示すように、溝部15のうち、円弧部16の最も深い位置、すなわち上下方向における下方側の端を第1点P1とする。前面側縁部14のうち、第3方向Zにおける第3R面14rの端、すなわち上下方向における上端を第2点P2とする。
【0045】
図2には、第1点P1と第2点P2との間の第3方向Zにおける距離を第1長さBと表示している。第2点P2と端面13cとの間の第3方向Zにおける距離を第2長さCと表示している。
【0046】
図2には、第1平行面13aと第2平行面13bとの間の第1方向Xにおける距離を第1厚さAと表示している。後面10aと前面10cとの間の第1方向Xにおける距離を第2厚さDと表示している。
【0047】
扉10では、第1厚さAに対する第2厚さDの比率(D/A)は、4.1以上であることが好ましい。上記比率(D/A)は、より好ましくは、4.5以上である。第2厚さDは、特に制限されないが、たとえば19mmである。
【0048】
扉10では、第1長さBと第2長さCとの和(B+C)に対する第1長さBの比率〔B/(B+C)〕は、0.25よりも大きいことが好ましい。第1長さBは、特に制限されないが、たとえば10mmである。
【0049】
[扉の製造方法]
扉10の製造方法の一例を説明する。
図4に示すように、扉10の製造方法は、芯材加工工程S1、化粧板加工工程S2、第1接着工程S3および第2接着工程S4を含む。たとえば、芯材加工工程S1、化粧板加工工程S2、第1接着工程S3、第2接着工程S4の順に各工程を実施することによって扉10を製造することができる。
【0050】
芯材加工工程S1は、芯材20を形成する工程である。たとえば、木質ボードを切削加工して芯材20を形成することができる。
化粧板加工工程S2は、メラミン化粧板30を加工して中間部32および薄肉部33を形成する工程である。
【0051】
化粧板加工工程S2の一例を説明する。化粧板加工工程S2では、たとえば、電動サンダーを用いてメラミン化粧板30を削ることができる。電動サンダーとしては、ベルトサンダーが挙げられる。ベルトサンダーによって、薄肉部33および中間部32を削り出すことができる。具体的には、まず、コア層が上を向く姿勢でメラミン化粧板30を作業台に載せる。次に、薄肉部33および中間部32を形成する範囲にベルトサンダーを当てて切削を行う。詳しくは、均一に薄く削った薄肉部33と、厚肉部31から薄肉部33に向かって徐々に薄くなるように削った中間部32と、を形成する。化粧板加工工程S2の他の例としては、カッターを用いてメラミン化粧板30を切削してもよい。
【0052】
第1接着工程S3および第2接着工程S4は、芯材20にメラミン化粧板30を接着する工程である。たとえば、メラミン化粧板30は、ポストフォーム加工によって芯材20に貼り付けることができる。
【0053】
図5を用いて、第1接着工程S3の一例を説明する。第1接着工程S3では、本体部11にメラミン化粧板30を接着する。具体的には、まず、化粧層を下に向けて作業台に載せたメラミン化粧板30の厚肉部31に接着剤を塗布する。次に、
図5に示すように前面10cが下を向く姿勢で芯材20を厚肉部31の上から重ねることで、本体部11と厚肉部31とを接着する。なお、
図5および
図6では、接着剤の図示を省略している。
【0054】
図6を用いて、第2接着工程S4の一例を説明する。第2接着工程S4では、手掛け部12にメラミン化粧板30を接着する。より詳しくは、第1接着工程S3によって本体部11に接着された部分と繋がっている一枚のメラミン化粧板30を手掛け部12の形状に沿って曲げながら手掛け部12に接着する。具体的には、まず、厚肉部31に本体部11が接着されているメラミン化粧板30に対して接着剤を塗布する。ここでは、接着剤は、中間部32および薄肉部33に塗布する。次に、中間部32および薄肉部33を加熱する。続いて、
図6に示すように中間部32および薄肉部33に圧力を加えながら中間部32および薄肉部33を曲げる加工を行う。より詳しくは、中間部32および薄肉部33を上方に持ち上げるようにして、手掛け部12に中間部32および薄肉部33を押し当てることで、手掛け部12の形状に沿って中間部32と薄肉部33とを順に曲げ込む。このようにして、中間部32、薄肉部33の順に、手掛け部12にメラミン化粧板30を接着する。
【0055】
第2接着工程S4において、メラミン化粧板30の加熱には、たとえば、赤外線ランプ、ハロゲンランプ等の非接触ヒーターを使用できる。
第2接着工程S4の他の例では、中間部32および薄肉部33を加熱しながら中間部32および薄肉部33を曲げる加工を行ってもよい。
【0056】
第2接着工程S4において、逆端部19にメラミン化粧板30を接着するように曲げ加工を行ってもよい。
扉10の製造方法では、芯材加工工程S1、化粧板加工工程S2、第1接着工程S3および第2接着工程S4に加えて、他の工程を行ってもよい。たとえば、第2接着工程S4の後に冷却工程を行ってもよい。たとえば、冷却工程では、送風によってメラミン化粧板30を冷却することができる。
【0057】
上記製造方法に従って扉10を製造する製造装置の一例を説明する。たとえば扉10は、メラミン化粧板30および芯材20を搬送する送り装置と、ヒーターと、メラミン化粧板30の曲げ加工を行う曲げ加工装置と、を備える製造装置によって製造できる。一例として、送り装置による搬送経路上に、ヒーターおよび曲げ加工装置を配置するとよい。搬送経路では、上流からヒーター、曲げ加工装置の順に装置を配置するとよい。製造装置は、接着剤を塗布する塗布装置を備えていてもよい。
【0058】
[作用および効果]
本実施形態の作用について説明する。
扉10では、本体部11および手掛け部12に対して一体のメラミン化粧板30を貼り付けている。このため、手掛け部12にはメラミン化粧板30の継ぎ目が存在しない。
【0059】
メラミン樹脂製の化粧板は、強度に優れている一方で、丸みを持った芯材の表面に沿って貼り付けることが難しいという問題がある。この点、扉10のメラミン化粧板30は、面として広がるように薄くした薄肉部33を備えていることによって、手掛け部12のような湾曲した形状に貼り付ける場合にも曲げ加工しやすい。
【0060】
本実施形態の効果について説明する。
(1)扉10によれば、手掛け部12にメラミン化粧板30の継ぎ目が存在しないことによって、手掛け部12に爪等が引っ掛かることを抑制できる。
【0061】
(2)仮にメラミン化粧板30の継ぎ目が存在する場合には、水等の異物が継ぎ目から浸入するおそれがある。扉10によれば、こうした異物の浸入を抑制できる。たとえば台所等の水回りに置かれる収納棚等では、指に水分等が付着している状態で扉に触れることが考えられる。耐水性に優れる扉10は、水回りに置かれる収納棚等にも採用することができる。
【0062】
(3)手掛け部12にメラミン化粧板30の継ぎ目が存在しないことによって、扉10の外観を良好にできる。
(4)扉10では、手掛け部12における内壁部17が傾斜していることによって、手掛け部12に指を掛けやすい。さらに、手掛け部12に指を掛けた手を引くことによって扉10を開閉しやすい。本実施形態に記載の扉10を開き扉として適用した収納棚を用いて、扉10の評価を行った。この結果、以下のことを確認した。手掛け部12に指を掛けた際に違和感がない。手掛け部12に爪の引っ掛かりが生じにくい。扉10を開閉しやすい。
【0063】
(5)薄肉部33を備えているメラミン化粧板30によれば、メラミン化粧板30を芯材20の形状に沿って曲げることで形成される湾曲形状の曲率半径に関して、曲げ加工によって形成が可能な最小の曲率半径を小さくすることができる。芯材20の形状がより複雑な場合であっても、メラミン化粧板30を貼り付けることができる。
【0064】
(6)扉10では、メラミン化粧板30は、薄肉部33と厚肉部31とが一体になっている。このため、仮にメラミン化粧板の全体を薄くするような場合と比較して、本体部11に貼り付けられている厚肉部31では強度を確保することができる。
【0065】
(7)扉10の製造方法では、第2接着工程S4で行う全ての作業を同一の生産ライン上で実施することができる。すなわち、接着剤の塗布、メラミン化粧板30の加熱、およびメラミン化粧板30の曲げ加工を同一の生産ライン上で実施することができる。
【0066】
(8)手掛け部12および本体部11に一体のメラミン化粧板30を貼り付ける扉10の製造方法によれば、手掛け部12と本体部11とで別の化粧板を貼り付けるような場合と比較して、製造効率を向上させることができる。
【0067】
[変更例]
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
・上記実施形態では、化粧板加工工程S2に続いて、第1接着工程S3と第2接着工程S4とを順に実施する製造方法を例示した。これに替えて、第1接着工程S3に続いて化粧板加工工程S2を実施して、化粧板加工工程S2の次に第2接着工程S4を実施することもできる。すなわち、厚さが均一であるメラミン化粧板を本体部に接着してから、メラミン化粧板を切削して薄肉部を形成するようにしてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、メラミン化粧板30の一部を削って薄肉部33を形成する例を示した。これに替えて、メラミン化粧板30を製造する際に、厚肉部31と薄肉部33とが形成されるようにしてもよい。すなわち、予め厚さに差があるメラミン化粧板30を製造してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、手掛け部12が備える溝部15において内壁部17が直線状に延びるように形成されている例を示した。手掛け部は、
図7に示すような形状でもよい。
図7は、手掛け部112を備える扉110の断面構造を示す。手掛け部112は、前面側縁部114、後面側縁部113、溝部115を備えている。
【0071】
扉110では、円弧部116と、円弧部116と連続して前面側縁部114まで延びる内壁部117とによって溝部115が構成されている点で、上記実施形態の扉10と共通している。扉110は、内壁部117が湾曲して円弧部116と第3R面114rとを繋いでいる点で、上記実施形態の扉10と異なる。内壁部117は、前面側縁部114に向けて窪むように湾曲している。
図7には、湾曲している内壁部117との比較のための直線を二点鎖線で表示している。二点鎖線は、第3R面114rにおける内壁部117側の端部に沿って延びており、扉110の本体部が広がる平面に対して角度θで傾斜する直線である。内壁部117は、二点鎖線と重複している部分において角度θで傾斜しているといえる。
図7に示す断面において、内壁部117の曲がり具合を曲率半径で示した値を第4曲率半径R4とする。第4曲率半径R4は、特に制限されないが、内壁部117における円弧部116と第3R面114rとの間の距離に対して大きい値であることが好ましい。すなわち、内壁部117の曲がり具合は僅かであることが好ましい。たとえば、第4曲率半径R4は、90mm以上である。
【0072】
・
図7には、前面側縁部114に向けて窪むように湾曲している内壁部117を備える扉110を例示した。これに替えて、内壁部は、後面側縁部に向けて突き出るように湾曲していてもよい。この場合における内壁部の曲率半径は、上記第4曲率半径R4と同様に大きい値であることが好ましい。すなわち、当該内壁部の曲がり具合は僅かであることが好ましい。
【0073】
・上記実施形態では、手掛け部12における内壁部17が傾斜している例を示した。これに替えて、溝部が備える内壁部は、扉10の前面10cに対して平行でもよい。すなわち、前面10cに対して平行な内壁部によって、前面側縁部の第3R面と、円弧部と、を繋ぐこともできる。
【0074】
・上記実施形態では、メラミン化粧板30として、厚肉部31と中間部32と薄肉部33とを備えるものを例示した。メラミン化粧板30としては、中間部32を備えることは必須ではない。たとえば、厚肉部31と薄肉部33との境界において段差があってもよい。
【0075】
・上記実施形態では、メラミン化粧板30のうち手掛け部12の全体に接着する部分の厚さについて、厚肉部31よりも薄くした。これに替えて、手掛け部12に接着するメラミン化粧板30のうち一部を薄くしてもよい。たとえば、前面側縁部14および溝部15に接着する部分を薄くして、後面側縁部13に接着する部分については本体部11に接着する厚肉部31と同等の厚さとしてもよい。
【0076】
・上記実施形態では、メラミン化粧板30のうち手掛け部12に接着する部分の厚さを薄くした。さらに、メラミン化粧板30のうち逆端部19に接着する部分の厚さを薄くしてもよい。
【0077】
・逆端部19には、本体部11および手掛け部12に貼り付けられているメラミン化粧板30とは別のメラミン化粧板が貼り付けられていてもよい。すなわち、逆端部19に貼り付けられているメラミン化粧板は、本体部11および手掛け部12に貼り付けられているメラミン化粧板30と一体であることは必須ではない。
【0078】
・扉10を家具等に取り付ける向きは、扉10を使用する態様に応じて適宜設定できる。たとえば、手掛け部12の溝部15が鉛直に延びる向きで取り付けてもよいし、溝部15が鉛直方向に対して直交する方向に延びる向きで取り付けてもよい。
【0079】
・上記実施形態において方向を説明する際の「上下」、「前後」、「幅」等は、説明の便宜上付したものであり、扉10を使用する態様と必ずしも対応するものではない。
・上記実施形態では、扉10を開き扉とする場合に蝶番を取り付ける位置として逆端部19を例示したが、蝶番の位置はこれに限らない。扉10を使用する態様に応じて、扉10の側面または側面周辺に蝶番を取り付けることもできる。
【0080】
・上記実施形態では、手掛け部12について、手の指を掛けることができるものとして説明したが、手掛け部12の大きさは特に制限されない。たとえば、溝部の深さは、指の第1関節まで挿し入れることができるような大きさでもよいし、指の第2関節まで挿し入れることができるような大きさでもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…扉
10a…後面
10b…側面
10c…前面
11…本体部
12…手掛け部
13…後面側縁部
14…前面側縁部
15…溝部
16…円弧部
17…内壁部
20…芯材
30…メラミン化粧板
31…厚肉部
32…中間部
33…薄肉部
【要約】
【課題】手掛け部を備える板状の扉に関して、手掛け部を改良する。
【解決手段】扉10は、芯材20と、芯材20の表面を覆うメラミン化粧板30と、によって構成されている。扉10は、板状の本体部11を備えている。扉10は、本体部11の端部に設けられている手掛け部12を備えている。手掛け部12は、本体部11の前面に連続する前面側縁部14と、本体部11の後面に連続する後面側縁部13と、前面側縁部14と後面側縁部13との間を窪みによって繋ぐ溝部15と、を有する。溝部15は、後面側縁部13と連続して円弧状に湾曲する円弧部16と、円弧部16と連続して前面側縁部14まで延びる内壁部17と、を備えている。扉10では、本体部11から手掛け部12に亘って一体のメラミン化粧板30が芯材20に貼り付けられている。
【選択図】
図2