(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】光回折素子、及び、光演算システム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240125BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240125BHJP
G02F 3/00 20060101ALI20240125BHJP
G06E 3/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/18
G02F3/00
G06E3/00
(21)【出願番号】P 2022507835
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2021022976
(87)【国際公開番号】W WO2022049864
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020149859
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】日下 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】柏木 正浩
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/147828(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/133592(WO,A1)
【文献】特開2007-141295(JP,A)
【文献】特開平02-063027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0109643(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/18
5/32
G03H 1/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルにより構成された光回折素子であって、
各セルにおいて第1偏光成分を透過する第1領域の厚み又は屈折率は、互いに独立に設定されており、
各セルにおいて前記第1偏光成分とは偏光方向が異なる第2偏光成分を透過する第2領域の厚み又は屈折率は、一様であ
り、
各セルの第1領域を透過した信号光の前記第1偏光成分を相互に干渉させることによって、予め定められた演算を行い、
当該光回折素子から出力される信号光の前記第1偏光成分は、前記演算後の情報を表し、当該光回折素子から出力される信号光の前記第2偏光成分は、前記演算前の情報を表す、
ことを特徴とする光回折素子。
【請求項2】
各セルの第1領域は、高さが互いに独立に設定されたピラーであって、前記第1偏光成分を選択的に透過する偏光フィルタが出射面又は入射面に設けられたピラーにより構成されている、
ことを特徴とする請求項
1に記載の光回折素子。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の光回折素子と、
前記光回折素子に入力する信号光を出力する発光装置と、
前記光回折素子から出力される信号光の第1偏光成分及び第2偏光成分を区別なく検出する受光装置と、を備えている、
ことを特徴とする光演算システム。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の光回折素子と、
前記光回折素子に入力する信号光を出力する発光装置と、
前記光回折素子から出力される信号光の第1偏光成分を検出する第1受光装置と、
前記光回折素子から出力される信号光の第2偏光成分を検出する第2受光装置と、を備えている、
ことを特徴とする光演算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光演算を行う光回折素子に関する。また、そのような光回折素子を備えた光演算システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率が個別に設定された複数のマイクロセルを有し、各マイクロセルを透過した光を相互に干渉させることによって、予め定められた演算を光学的に実行するように設計された光回折素子が知られている。光回折素子を用いた光学的な演算は、プロセッサを用いた電気的な演算と比べて高速且つ低消費電力である。特許文献1には、入力層、中間層、及び出力層を有する光ニューラルネットワークが開示されている。上述した光回折素子は、例えば、このような光ニューラルネットワークの中間層として利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
演算においては、演算前の情報及び演算後の情報の両方を参照する必要が生じることがある。例えば、画像から被写体の欠陥を抽出する欠陥抽出演算は、そのような演算の一例であり、演算前の画像に演算後の画像を合成することによって、被写体のどこにどのような欠陥があるのかを検査者が視認し易い画像を得ることができる。しかしながら、従来の光回折素子の出力光は、演算後の信号光のみを含み、演算前の信号光を含まない。このため、従来の光回折素子は、演算前の情報及び演算後の情報の両方を参照する必要がある演算に適さなかった。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、演算後の情報を表す信号光に加えて、演算前の情報を表す信号光を出力することが可能な光回折素子を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光回折素子は、複数のセルにより構成された光回折素子である。本発明の態様1に係る光回折素子において、各セルにおいて第1偏光成分を透過する第1領域の厚み又は屈折率は、互いに独立に設定されており、各セルにおいて前記第1偏光成分とは偏光方向が異なる第2偏光成分を透過する第2領域の厚み又は屈折率は、一様である。
【0007】
本発明の一態様に係る光演算システムは、上述した光回折素子と、前記光回折素子に入力する信号光を出力する発光装置と、前記光回折素子から出力される信号光の第1偏光成分及び第2偏光成分を区別なく検出する受光装置と、を備えている。
【0008】
本発明の一態様に係る光演算システムは、上述した光回折素子と、前記光回折素子に入力する信号光を出力する発光装置と、前記光回折素子から出力される信号光の第1偏光成分を検出する第1受光装置と、前記光回折素子から出力される信号光の第2偏光成分を検出する第2受光装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、演算後の情報を表す信号光に加えて演算前の情報を表す信号光を出力することが可能な光回折素子を実現することができる。また、本発明の一態様によれば、そのような光回折素子を備えた光演算システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光回折素子の構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す光回折素子の一部分を拡大した斜視図である。
【
図3】
図1に示す光回折素子を備えた第1の光演算システムの要部構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す光回折素子を備えた第2の光演算システムの要部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔光回折素子の構成〕
本発明の一実施形態に係る光回折素子1の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、光回折素子1の平面図である。
図2は、光回折素子1の一部分(
図1において破線で囲んだ部分)を拡大した斜視図である。
【0012】
光回折素子1は、平板状の光回折素子であり、複数のマイクロセル(特許請求の範囲における「セル」の一例)により構成されている。ここで、「マイクロセル」とは、例えば、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、「セルサイズ」とは、セルの面積の平方根のことを指す。例えば、マイクロセルの平面視形状が正方形である場合、セルサイズとは、セルの一辺の長さである。セルサイズの下限は、特に限定されないが、例えば1nmである。
【0013】
図1に例示した光回折素子1は、マトリックス状に配置された12×12個のマイクロセルにより構成されている。各マイクロセルの平面視形状は、1μm×1μmの正方形であり、光回折素子1の平面視形状は、12μm×12μmの正方形である。
【0014】
各マイクロセルには、信号光に含まれる第1偏光成分を選択的に透過する第1領域C1と、信号光に含まれる第2偏光成分を選択的に透過する第2領域C2と、が含まれている。各マイクロセルにおいて、第1領域C1の厚み又は屈折率は、互いに独立に設定されている。これにより、各マイクロセルを透過する際の第1偏光成分の位相変化量が、互いに独立に設定される。一方、各マイクロセルにおいて、第2領域C2の厚み又は屈折率は、一様に設定されている。これにより、各マイクロセルを透過する第2偏光成分の位相変換量が、一様に設定される。このため、光回折素子1は、信号光の第1偏光成分に選択的に作用する。すなわち、光回折素子1は、各マイクロセルを透過した信号光の第1偏光成分のみを相互に干渉させることによって、予め定められた光演算を実行する。このため、光回折素子1から出力される光信号の第1偏光成分は、演算後の情報を表す光信号となるのに対して、光回折素子1から出力される信号光の第2偏光成分は、演算前の情報を表す光信号となる。ここで、「第1偏光成分を選択的に透過する」、及び「第1偏光成分に選択的に作用する」とは、換言すると、「第2偏光成分の透過率よりも第1偏光成分の透過率の方が高い」ことである。また、「第2偏光成分を選択的に透過する」とは、換言すると、「第1偏光成分の透過率よりも第2偏光成分の透過率の方が高い」ことである。
【0015】
なお、第1偏光成分(光回折素子1が作用する偏光成分)と第2偏光成分(光回折素子1が作用しない偏光成分)とは、互いに偏光方向が異なる偏光成分であればよい。例えば、X偏光(偏波面がZX平面に平行な直線偏光)を第1偏光成分とし、Y偏光(偏波面がYZ面に平行な直線偏光)を第2偏光成分とすることができる。或いは、右円偏光を第1偏光成分とし、左光円偏光を第2偏光成分とすることができる。本実施形態においては、光回折素子1として、前者の形態の光回折素子、すなわち、X偏光に対して選択的に作用する光回折素子1を用いる。換言すると、Y偏光の透過率よりもX偏光の透過率の方が高い光回折素子1を用いる。
【0016】
X偏光に対して選択的に作用する光回折素子1の各マイクロセルの第1領域C1及び第2領域C2は、例えば
図2に示すように、出射面に偏光フィルタが設けられたピラーにより実現することができる。第1領域C1を構成するピラーの出射面に設けられた偏光フィルタは、X偏光を選択的に透過する(すなわち、Y偏光の透過率よりもX偏光の透過率の方が高い)偏光フィルタである。第2領域C2を構成するピラーの出射面に設けられた偏光フィルタは、Y偏光を選択的に透過する(すなわち、X偏光の透過率よりもY偏光の透過率の方が高い)偏光フィルタである。これにより、各マイクロセルのY偏光に対する位相変化量を一定にしつつ、各マイクロセルのX偏光に対する位相変化量をピラーの高さに応じた値に設定することができる。すなわち、X偏光に対して選択的に作用する光回折素子1を実現することができる。なお、上述した偏光フィルタとしては、例えば、メタサーフェースを用いることができる。また、偏光フィルタは、各ピラーの出射面に設ける代わりに、各ピラーの入射面に設けてもよいし、各ピラーの入射面及び出射面の双方に設けてもよい。
【0017】
なお、各マイクロセルの第1領域C1の厚み又は屈折率の設定は、例えば、機械学習を用いて実現することができる。この機械学習において用いられるモデルとしては、例えば、光回折素子1に入力される信号光の強度分布を入力とし、光回折素子1から出力される信号光の第1偏光成分の強度分布を出力するモデルであって、各マイクロセルの第1領域C1の厚み又は屈折率をパラメータとして含むモデルを用いることができる。
【0018】
〔第1の光演算システム〕
光回折素子1を用いれば、演算前の信号と演算後の信号との和信号を導出する演算を光学的に実現することができる。
図3は、このような光演算を行うための光演算システム10Aの要部構成を示す斜視図である。
【0019】
光演算システム10Aは、光回折素子1の他に、発光装置2と、受光装置3と、を備えている。
【0020】
発光装置2は、光回折素子1に入力される信号光を生成するための装置である。発光装置2は、マトリックス状に配置された複数のセルを有しており、例えば、2次元ディスプレイにより構成される。発光装置2のセルと光回折素子1のマイクロセルとは、1対1に対応している。発光装置2の各セルから出力される光は、第1偏光成分と第2偏光成分とを含んでおり、光回折素子1の対応するマイクロセルに入力される。本実施形態において、信号光の進行方向は、Z軸正方向であり、第1偏光成分は、X偏光成分であり、第2偏光成分は、Y偏光成分である。
【0021】
受光装置3は、光回折素子1から出力される信号光を検出するための装置である。受光装置3は、マトリックス状に配置された複数のセルを有しており、例えば、2次元イメージセンサにより構成される。受光装置3のセルと光回折素子1のマイクロセルとは、1対1に対応している。光回折素子1の各マイクロセルを透過した信号光のX偏光成分は、光回折素子1の他のマイクロセルを透過した信号光のX偏光成分と干渉し、受光装置3の各セルに入力される。一方、光回折素子1の各マイクロセルを透過した信号光のY偏光成分は、光回折素子1の他のマイクロセルを透過した信号光のY偏光成分と干渉することなく、そのマイクロセルに対応する受光装置3のセルに入力される。受光装置3の各セルは、X偏光成分とY偏光成分とを区別することなく、光回折素子1から出力される信号光を検出する。したがって、受光装置3にて検出される信号光は、演算前の信号と演算後の信号との和信号を表す。
【0022】
以上のように、光演算システム10Aによれば、演算前の信号と演算後の信号との和信号を導出する光演算を、光回折素子1を用いて実現することができる。一例として、光演算システム10Aは、画像から被写体の欠陥を抽出する欠陥抽出演算に好適に利用することができる。この場合、ディスプレイである発光装置2に原画像を表示すると、原画像から抽出した欠陥のみを被写体として含む欠陥画像を原画像に重畳した合成画像をイメージセンサである受光装置3にて検出することができる。
【0023】
なお、本実施形態においては、発光装置2から出力された光の光路上に単一の光回折素子1を配置し、この光回折素子1を透過した光を受光装置3に入力する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、発光装置2から出力された光の光路上に複数の光回折素子を配置し、これらの光回折素子を透過した光を受光装置3に入力する構成を採用してもよい。これにより、複数の光演算を順次実行することが可能な光演算システム10Aを実現することが可能になる。この場合、X偏光に対して選択的に作用する光回折素子1は、これら複数の光回折素子のなかに少なくとも1枚含まれていればよい。
【0024】
〔第2の光演算システム〕
光回折素子1を用いれば、演算前の信号と演算後の信号とをそれぞれ導出する演算を光学的に実現することができる。
図4は、このような光演算を行うための光演算システム10Bの要部構成を示す斜視図である。
【0025】
光演算システム10Bは、光回折素子1の他に、発光装置2と、受光装置3a,3bと、偏光ビームスプリッタ4と、ミラー5と、を備えている。
【0026】
発光装置2は、光演算システム10Aが備える発光装置2と同様の装置である。発光装置2は、マトリックス状に配置された複数のセルを有しており、例えば、2次元ディスプレイにより構成される。発光装置2のセルと光回折素子1のマイクロセルとは、1対1に対応している。発光装置2の各セルから出力される光は、第1偏光成分と第2偏光成分とを含んでおり、光回折素子1の対応するマイクロセルに入力される。本実施形態において、信号光の進行方向は、Z軸正方向であり、第1偏光成分は、X偏光成分であり、第2偏光成分は、Y偏光成分である。
【0027】
偏光ビームスプリッタ4は、光回折素子1から出力される信号光のX偏光成分を透過すると共に、光回折素子1から出力される信号光のY偏光成分を反射する光学素子である。偏光ビームスプリッタ4を透過した信号光のX偏光成分は、受光装置3aに入力される。偏光ビームスプリッタ4にて反射された信号光のY偏光成分は、ミラー5にて更に反射された後、受光装置3bに入力される。
【0028】
受光装置3aは、偏光ビームスプリッタ4を透過した信号光のX偏光成分を検出するための装置である。受光装置3aは、マトリックス状に配置された複数のセルを有しており、例えば、2次元イメージセンサにより構成される。受光装置3aのセルと光回折素子1のマイクロセルとは、1対1に対応している。光回折素子1の各マイクロセルを透過した信号光のX偏光成分は、光回折素子1の他のマイクロセルを透過した信号光のX偏光成分と干渉し、受光装置3の各セルに入力される。受光装置3aにて検出される信号光は、演算後の信号を表す。
【0029】
受光装置3bは、偏光ビームスプリッタ4にて反射された信号光のY偏光成分を検出するための装置である。受光装置3bは、マトリックス状に配置された複数のセルを有しており、例えば、2次元イメージセンサにより構成される。受光装置3aのセルと光回折素子1のマイクロセルとは、1対1に対応している。光回折素子1の各マイクロセルを透過した信号光のY偏光成分は、光回折素子1の他のマイクロセルを透過した信号光のY偏光成分と干渉することなく、そのマイクロセルに対応する受光装置3のセルに入力される。受光装置3bにて検出される信号光は、演算前の信号を表す。
【0030】
以上のように、光演算システム10Bによれば、演算前の信号と演算後の信号とをそれぞれ導出する光演算を、光回折素子1を用いて実現することができる。一例として、光演算システム10Bは、画像から被写体の欠陥を抽出する欠陥抽出演算に好適に利用することができる。この場合、ディスプレイである発光装置2に原画像を表示すると、原画像から抽出した欠陥のみを被写体として含む欠陥画像をイメージセンサである受光装置3aにて検出すると共に、原画像をイメージセンサである受光装置3bにて検出することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、発光装置2から出力された光の光路上に単一の光回折素子1を配置し、この光回折素子1を透過した光を偏光ビームスプリッタ4に入力する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、発光装置2から出力された光の光路上に複数の光回折素子を配置し、これらの光回折素子を透過した光を偏光ビームスプリッタ4に入力する構成を採用してもよい。これにより、複数の光演算を順次実行することが可能な光演算システム10Bを実現することが可能になる。この場合、X偏光に対して選択的に作用する光回折素子1は、これら複数の光回折素子のなかに少なくとも1枚含まれていればよい。
【0032】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る光回折素子は、複数のセルにより構成された光回折素子である。本発明の態様1に係る光回折素子において、各セルにおいて第1偏光成分を透過する第1領域の厚み又は屈折率は、互いに独立に設定されており、各セルにおいて前記第1偏光成分とは偏光方向が異なる第2偏光成分を透過する第2領域の厚み又は屈折率は、一様である。
【0033】
上記の構成によれば、演算後の情報を表す信号光を第1偏光成分として出力すると共に、演算前の情報を第2偏光成分として出力することが可能な光回折素子を実現することができる。
【0034】
本発明の態様2に係る光回折素子においては、態様1の構成に加えて、各セルの第1領域を透過した信号光の前記第1偏光成分を相互に干渉させることによって、予め定められた演算を行い、当該光回折素子から出力される信号光の前記第1偏光成分は、前記演算後の情報を表し、当該光回折素子から出力される信号光の前記第2偏光成分は、前記光演算前の情報を表す、という構成が採用されている。
【0035】
上記の構成によれば、演算後の情報を表す信号光を第1偏光成分として出力すると共に、演算前の情報を第2偏光成分として出力することが可能な光回折素子を実現することができる。
【0036】
本発明の態様3に係る光回折素子においては、態様1又は2の構成に加えて、各セルの第1領域は、高さが互いに独立に設定されたピラーであって、前記第1偏光成分を選択的に透過する偏光フィルタが出射面又は入射面に設けられたピラーにより構成されている、という構成が採用されている。
【0037】
上記の構成によれば、演算後の情報を表す信号光を第1偏光成分として出力すると共に、演算前の情報を第2偏光成分として出力することが可能な光回折素子を容易に製造することができる。
【0038】
本発明の態様4に係る光演算システムは、態様1~3の何れか一態様に係る光回折素子と、前記光回折素子に入力する信号光を出力する発光装置と、前記光回折素子から出力される信号光の第1偏光成分及び第2偏光成分を区別なく検出する受光装置と、を備えている。
【0039】
上記の構成によれば、演算前の信号と演算後の信号との和信号を導出する演算を光学的に実現することができる。一例として、演算前の画像と演算後の画像との合成画像を導出する演算を光学的に実現することができる。
【0040】
本発明の態様5に係る光演算システムは、態様1~3の何れか一態様に係る光回折素子と、前記光回折素子に入力する信号光を出力する発光装置と、前記光回折素子から出力される信号光の第1偏光成分を検出する第1受光装置と、前記光回折素子から出力される信号光の第2偏光成分を検出する第2受光装置と、を備えている。
【0041】
上記の構成によれば、演算前の信号と演算後の信号とをそれぞれ導出する演算を光学的に実現することができる。一例として、演算前の画像と演算後の画像とをそれぞれ導出する演算を光学的に実現することができる。
【0042】
〔付記事項〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0043】
なお、本明細書における「光回折素子」は、或る情報(例えば、或る画像)を表す光信号を別の情報(例えば、別の画像)を表す光信号に変換する素子である。このため、或る画像を表す電気信号を別の画像を表す電気信号に変換する素子をフィルタと呼ぶのと同様の意味で、本明細書における「光回折素子」は、「光フィルタ」と言い換えることができる。また、本明細書における「光演算システム」は、光回折素子、すなわち、光フィルタを用いて光演算を実行するものである。
【符号の説明】
【0044】
1 光回折素子
10A、10B 光演算システム
2 発光装置
3 受光装置
4 偏光ビームスプリッタ
5 ミラー