(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】マイクロフォン及びそれを有する電子機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/40 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H04R1/40 320A
H04R1/40 320B
(21)【出願番号】P 2022540530
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2020103201
(87)【国際公開番号】W WO2021143084
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】202010051694.7
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521080118
【氏名又は名称】シェンツェン・ショックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェンビン・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】シン・チ
(72)【発明者】
【氏名】フェンユン・リャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンシュアイ・ユアン
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-163477(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005008515(DE,A1)
【文献】特許第5977473(JP,B1)
【文献】特開2012-147418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音信号を受信するためのハウジングと、
前記音信号に応答して電気信号を生成するように振動し、各々がマイクロフォンに特有の共振ピークを提供するための少なくとも2つのトランスデューサと、
前記電気信号を処理するための処理回路と、
を含
み、
前記電気信号は前記少なくとも2つのトランスデューサの一方から出力され、前記少なくとも2つのトランスデューサの残りは前記少なくとも2つのトランスデューサの一方に振動を伝達する、マイクロフォン。
【請求項2】
前記少なくとも2つのトランスデューサの残りは、少なくとも1つの減衰層を介して前記少なくとも2つのトランスデューサの一方に物理的に接続される、請求項
1に記載のマイクロフォン。
【請求項3】
前記電気信号は、前記少なくとも2つのトランスデューサの少なくとも2つの電気出力を含み、前記少なくとも2つのトランスデューサの前記少なくとも2つの電気出力の各々は、前記少なくとも2つのトランスデューサの一方から出力される、請求項1に記載のマイクロフォン。
【請求項4】
前記少なくとも2つのトランスデューサのうちの少なくとも1つのトランスデューサは、少なくとも1つの減衰層に接続される、請求項
3に記載のマイクロフォン。
【請求項5】
前記少なくとも2つのトランスデューサの前記少なくとも2つの電気出力は、正-負-負-正処理モードを使用して処理され、前記正-負-負-正処理モードは、
前記少なくとも2つの電気出力の位相を調整することと、
前記調整された少なくとも2つの電気出力を組み合わせることと、
を含む、請求項
3又は請求項
4に記載のマイクロフォン。
【請求項6】
前記少なくとも2つの電気出力の位相を調整することは、
前記少なくとも2つの電気出力の一方の位相を反転することと、
前記少なくとも2つの電気出力の他方の位相を維持することと、
を含む、請求項
5に記載のマイクロフォン。
【請求項7】
前記少なくとも2つの電気出力は、共振周波数に従って降順又は昇順でソートされる、前記少なくとも2つのトランスデューサのうちの隣接するトランスデューサのものである、請求項
3~
6のいずれか一項に記載のマイクロフォン。
【請求項8】
前記少なくとも1つの減衰層は、それに接続されたトランスデューサの少なくとも1つの表面の少なくとも一部を覆う、請求項
2又は請求項
4に記載のマイクロフォン。
【請求項9】
前記少なくとも1つの減衰層は、前記接続されたトランスデューサの上面、前記接続されたトランスデューサの下面、前記接続されたトランスデューサの側面、又は前記接続されたトランスデューサの内部のうちの少なくとも1つの位置に配置される、請求項
8に記載のマイクロフォン。
【請求項10】
前記少なくとも1つの減衰層は、前記接続されたトランスデューサの少なくとも1つの表面に所定の角度で配置され、前記所定の角度は、30°、45°、60°、又は90°である、請求項8又は請求項
9に記載のマイクロフォン。
【請求項11】
前記少なくとも1つの減衰層は、前記ハウジングに接続される、請求項
8~
10のいずれか一項に記載のマイクロフォン。
【請求項12】
前記少なくとも1つの減衰層は、少なくとも2つの減衰層を含み、前記少なくとも2つの減衰層は、前記少なくとも2つのトランスデューサの一方の中心線に対して対称的に配置される、請求項
8~
11のいずれか一項に記載のマイクロフォン。
【請求項13】
前記少なくとも1つの減衰層を介して前記少なくとも2つのトランスデューサの一方に接続された少なくとも1つの弾性要素をさらに含む、請求項
8~
12のいずれか一項に記載のマイクロフォン。
【請求項14】
音信号を受信するためのハウジングと、
前記音信号に応答して電気信号を生成するように振動し、各々がマイクロフォンに特有の共振ピークを提供するための少なくとも2つのトランスデューサと、
前記電気信号を処理するための処理回路と、
を含むマイクロフォンを含
み、
前記電気信号は前記少なくとも2つのトランスデューサの一方から出力され、前記少なくとも2つのトランスデューサの残りは前記少なくとも2つのトランスデューサの一方に振動を伝達する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年1月17日に提出された中国特許出願第202010051694.7号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、マイクロフォンに関し、特に、少なくとも2つのトランスデューサを有するマイクロフォンに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロフォンは、日常の通信装置に広く使用されている。様々な環境で良好な通信品質を実現するために、高い信号対雑音比(SNR)と優れた耐ノイズ性能を備えたマイクロフォンが、ますます普及してきている。優れた性能を備えたマイクロフォンは、通常、滑らかな周波数応答曲線と高いSNRを有する。滑らかな周波数応答曲線を滑らかにするための既存の技術では、通常、マイクロフォンの振動装置の変位応答曲線の共振ピークの前に平坦な領域が使用される。振動装置の共振周波数を大きな値に設定しなければならない場合があるが、その結果、マイクロフォンのSNR又は感度が低下して、マイクロフォンの通信品質が低下する。マイクロフォンのSNR又は感度を向上させるための既存の方法では、通常、共振周波数が音声周波数帯域に設定される。マイクロフォンの振動装置が大きなQ値(又は小さな減衰)を有し、共振周波数(周波数応答曲線の高いピーク)の近くで多くの音信号をピックアップするため、周波数帯域全体における周波数信号の分布が不均一になり、明瞭度が低くなり、さらに音信号の歪みが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、高い感度、滑らかな周波数応答曲線、及び広い周波数帯域などの高性能を備えたマイクロフォンを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、マイクロフォンを紹介する。前記マイクロフォンは、音信号を受信するためのハウジングと、前記音信号に応答して電気信号を生成するように振動するための少なくとも2つのトランスデューサと、前記電気信号を処理するための処理回路と、を含んでもよい。前記少なくとも2つのトランスデューサの各々は、前記マイクロフォンに特有の共振ピークを提供してもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つのトランスデューサは、前記少なくとも2つのトランスデューサの振動方向に平行な方向に前記ハウジング内に配列されてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つのトランスデューサは、前記少なくとも2つのトランスデューサの振動方向に垂直な方向に前記ハウジング内に配列されてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記電気信号は、前記少なくとも2つのトランスデューサの一方から出力され、前記少なくとも2つのトランスデューサの残りは、振動を前記少なくとも2つのトランスデューサの一方に伝達してもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つのトランスデューサの残りは、少なくとも1つの減衰層を介して前記少なくとも2つのトランスデューサの一方に物理的に接続されてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記電気信号は、前記少なくとも2つのトランスデューサの少なくとも2つの電気出力を含み、前記少なくとも2つのトランスデューサの前記少なくとも2つの電気出力の各々は、前記少なくとも2つのトランスデューサの一方から出力されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つのトランスデューサのうちの少なくとも1つのトランスデューサは、少なくとも1つの減衰層に接続されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つのトランスデューサの前記少なくとも2つの電気出力は、正-負-負-正処理モードを使用して処理されてもよい。前記正-負-負-正処理モードは、前記少なくとも2つの電気出力の位相を調整することと、前記調整された少なくとも2つの電気出力を組み合わせることと、を含んでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つの電気出力の位相を調整することは、前記少なくとも2つの電気出力の一方の位相を反転することと、前記少なくとも2つの電気出力の他方の位相を維持することと、を含んでもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つの電気出力は、前記少なくとも2つのトランスデューサのうち、それらの共振周波数の降順又は昇順でソートされる場合に隣接するトランスデューサの出力したものであってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの減衰層は、それに接続されたトランスデューサの少なくとも1つの表面の少なくとも一部を覆ってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記接続されたトランスデューサの前記少なくとも1つの表面は、前記トランスデューサの上面、下面、側面、又は内面のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの減衰層は、前記接続されたトランスデューサの上面、前記接続されたトランスデューサの下面、前記接続されたトランスデューサの側面、又は前記接続されたトランスデューサの内部のうちの少なくとも1つの位置に配置されてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの減衰層は、前記接続されたトランスデューサの少なくとも1つの表面に所定の角度で配置されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記所定の角度は、30°、45°、60°、又は90°であってもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの減衰層は、前記ハウジングに接続されてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの減衰層は、少なくとも2つの減衰層を含んでもよく、前記少なくとも2つの減衰層は、前記少なくとも2つのトランスデューサの一方の中心線に対して対称的に配置されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記マイクロフォンは、前記少なくとも1つの減衰層を介して前記少なくとも2つのトランスデューサの一方に接続された少なくとも1つの弾性要素をさらに含んでもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの弾性要素及び前記少なくとも2つのトランスデューサは、前記少なくとも2つのトランスデューサの振動方向に平行な方向に前記ハウジング内に配列されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの弾性要素及び前記少なくとも2つのトランスデューサは、前記少なくとも2つのトランスデューサの振動方向に垂直な方向に前記ハウジング内に配列されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの減衰層は、前記少なくとも1つの弾性要素の少なくとも1つの表面の少なくとも一部を覆ってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの減衰層の幅は可変であってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの減衰層の厚さは可変であってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つのトランスデューサの各々は、ダイアフラム、圧電セラミックプレート、ピエゾフィルム、又は静電フィルムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つのトランスデューサの各々の構造は、フィルム、カンチレバー、又はプレートのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記音信号は、気体、液体、又は固体のうちの少なくとも1つによって引き起こされてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記音信号は、非接触モード又は接触モードに従って、前記ハウジングから前記少なくとも2つのトランスデューサに送信されてもよい。
【0032】
本開示の別の態様によれば、マイクロフォンを含む電子機器が提供される。前記マイクロフォンは、音信号を受信するためのハウジングと、前記音信号に応答して電気信号を生成するように振動するための少なくとも2つのトランスデューサと、前記電気信号を処理するための処理回路と、を含んでもよい。前記少なくとも2つのトランスデューサの各々は、前記マイクロフォンに特有の共振ピークを提供してもよい。
【0033】
以下の説明においては、さらなる特徴の一部が記載され、これらの特徴の一部は、以下の検討や添付図面によって、当業者には明らかになるか又は実施例の製造又は動作によってわかるであろう。本開示の特徴は、以下に説明する具体的な実施例に記載された方法、機器及び組み合わせの様々な態様を実施又は使用することにより、実現及び達成されるであろう。
【0034】
本開示を例示的な実施形態をもとにさらに説明する。これらの例示的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。これらの実施形態は、非限定的で例示的な実施形態であり、図面のいくつかの図にわたって、同様の参照符号は、類似する構造を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示すブロック図である。
【
図2A】本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの例示的なばね-質量-ダンパシステムを示す概略図である。
【
図2B】本開示のいくつかの実施形態による、ばね-質量-ダンパシステムの例示的な正規化された変位共振曲線を示す概略図である。
【
図3A】本開示のいくつかの実施形態による、減衰層に接続されたトランスデューサの例示的な等価モデルを示す概略図である。
【
図3B】本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、トランスデューサの共振ピークを前方に移動した後の例示的な周波数応答曲線と、トランスデューサに減衰層を追加した後の例示的な周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による、異なるトランスデューサの例示的な周波数応答曲線を示す概略図である。
【
図5A】本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、弾性要素の例示的な変位曲線と、弾性要素に接続されるときのトランスデューサの例示的な周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図5B】本開示のいくつかの実施形態による、数の異なる弾性要素に接続されたトランスデューサの例示的な周波数応答曲線を示す概略図である。
【
図6A】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図6B】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図6C】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図7A】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図7B】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図7C】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図8】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図9A】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図9B】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図9C】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図10A】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図10B】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図10C】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図10D】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図11】本開示のいくつかの実施形態による、第1のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、減衰層を介して第2のトランスデューサに接続された第1のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図12A】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図12B】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図12C】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図12D】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図13】本開示のいくつかの実施形態による、第1のトランスデューサ、第2のトランスデューサ、及び第3のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、弾性要素の例示的な変位曲線と、3つの減衰層を介してそれぞれ第2のトランスデューサ、第3のトランスデューサ、及び弾性要素に接続された第1のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図14】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示すブロック図である。
【
図15A】本開示のいくつかの実施形態による、マイクロフォンの一次共振周波数よりも小さい第1の周波数で動作するマイクロフォンのトランスデューサの振動状態を示す概略図である。
【
図15B】本開示のいくつかの実施形態による、マイクロフォンの一次共振周波数よりも大きく、マイクロフォンの二次共振周波数よりも小さい第2の周波数で動作するマイクロフォンのトランスデューサの振動状態を示す概略図である。
【
図15C】本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの電気出力と周波数との関係をそれぞれ表す例示的な曲線と、電気出力のモジュラスと周波数との関係をそれぞれ表す例示的な曲線と、電気出力の総信号と周波数との関係を表す曲線とを示す概略図である。
【
図15D】本開示のいくつかの実施形態による、3つのトランスデューサの例示的な変位曲線と、他の2つのトランスデューサに接続されたトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、3つのトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図15E】本開示のいくつかの実施形態による、弾性要素又は2つのトランスデューサの例示的な変位曲線と、他のトランスデューサ及び弾性要素に接続されたトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、2つのトランスデューサ及び弾性要素を含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図15F】本開示のいくつかの実施形態による、1つ以上の減衰層を介して互いに接続された複数のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、複数のトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図16A】本開示のいくつかの実施形態による、マイクロフォンの少なくとも2つのトランスデューサの少なくとも2つの電気出力を処理するための例示的なプロセスを示す概略図である。
【
図16B】本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの電気出力と周波数との関係をそれぞれ表す例示的な曲線と、電気出力のモジュラスと周波数との関係をそれぞれ表す例示的な曲線と、電気出力の総信号と周波数との関係を表す曲線とを示す概略図である。
【
図17A】本開示のいくつかの実施形態による、複数のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、複数のトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図17B】本開示のいくつかの実施形態による、減衰層を備えた複数のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、減衰層を備えた複数のトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図17C】本開示のいくつかの実施形態による、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、第1の弾性要素及び第2の弾性要素の例示的な変位曲線と、2つのトランスデューサ及び2つの弾性要素を含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
【
図18A】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図18B】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図18C】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図18D】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図19】本開示のいくつかの実施形態による、異なるトランスデューサの例示的な周波数応答曲線を示す概略図である。
【
図20A】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図20B】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図20C】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図20D】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【
図20E】本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明は、当業者が本開示を実施及び使用することを可能にするために提示され、特定の用途及びその要件に照らして提供される。開示された実施形態の様々な変形は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義された一般原則は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途にも適用することができる。従って、本開示は、示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【0037】
本明細書において使用される用語は、単に特定の例示的な実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定的なものではない。本明細書において使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「(the)」は、文脈中に特に明示しない限り、同様に複数形も含むことを意図することができる。さらに、本開示において使用される場合、用語「含み/含む(comprises/comprising、includes/including)」が、記載された特徴、整数、ステップ、動作、素子、及び/又は、構成要素の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、素子、構成要素、及び/又は、これらのグループの存在や追加を排除するものではないことが理解されよう。
【0038】
本開示のこれら及び他の特徴及び特性、動作の方法、構造の関連する素子及び部品の組み合わせの機能、及び製造上の経済性は、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照して以下の説明を検討することによってより明らかとなるであろう。しかしながら、図面は単に例示及び説明のためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことが明らかに理解される。図面は縮尺通りではないことが理解される。
【0039】
本開示に使用されるフローチャートは、本開示のいくつかの実施形態に従ってシステムが実行する動作を示す。フローチャートの動作は、順番に実行されなくてもよいことが明示的に理解される。逆に、動作は、逆の順序で、又は同時に実行されてもよい。さらに、1つ以上の他の動作を、フローチャートに追加してもよい。1つ以上の動作は、フローチャートから削除されてもよい。
【0040】
本開示の一態様は、マイクロフォン及びそれを有する電子機器に関する。マイクロフォンは、音信号を受信するためのハウジングと、音信号に応答して電気信号を生成するように振動するための少なくとも2つのトランスデューサと、電気信号を処理するための処理回路と、を含んでもよい。少なくとも2つのトランスデューサの各々がマイクロフォンに特有の共振ピークを提供することにより、マイクロフォンの性能を向上させて、例えば、より高い感度、より滑らかな周波数応答、及び/又はより広い周波数帯域を達成することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、電気信号は、少なくとも2つのトランスデューサの一方から出力され、少なくとも2つのトランスデューサの残りは、少なくとも1つの減衰層を介して振動を少なくとも2つのトランスデューサの一方に伝達してもよい。このようにして、少なくとも1つの減衰層は、少なくとも2つのトランスデューサの間で振動を伝達して、複数の共振ピークを備えた振動システムを形成すると共に、少なくとも2つのトランスデューサの各々のQ値を減少させて、マイクロフォンの周波数応答を滑らかにしてもよい。
【0042】
いくつかの代替の実施形態では、電気信号は、少なくとも2つのトランスデューサの少なくとも2つの電気出力を含んでもよい。少なくとも2つのトランスデューサの少なくとも2つの電気出力の各々は、少なくとも2つのトランスデューサの一方から出力されてもよい。少なくとも2つの電気出力を生成するトランスデューサの周波数特性が異なるため、少なくとも2つの電気出力は位相がずれている可能性があることを考慮すると、処理回路は、(例えば、少なくとも2つの電気出力の一方の位相を反転すること及び少なくとも2つの電気出力の他方の位相を維持することによって)少なくとも2つの電気出力の位相を調整し、調整された少なくとも2つの電気出力を組み合わせて、音信号を表す電気信号を取得してもよい。このようにして、異なるトランスデューサから得られた異なる電気出力の位相を調整することにより、組み合わせたときに少なくとも2つの電気出力の相殺による電気信号の信号強度の望ましくない低下を回避することができる。
【0043】
さらに、マイクロフォンは、少なくとも1つの弾性要素をさらに含んでもよい。少なくとも1つの弾性要素は、少なくとも1つの減衰層を介して前記少なくとも2つのトランスデューサの一方に接続されてもよい。少なくとも1つの弾性要素がマイクロフォンに追加の共振周波数ピークを提供することにより、マイクロフォンの性能を向上させて、例えば、より高い感度、より滑らかな周波数応答、及び/又はより広い周波数帯域を達成することができる。
【0044】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示すブロック図である。例えば、マイクロフォン100は、電話、イヤホン、ヘッドホン、ウェアラブルデバイス、スマートモバイルデバイス、仮想現実デバイス、拡張現実デバイス、コンピュータ、ラップトップなどの電子機器のマイクロフォンであってもよい。マイクロフォン100は、ハウジング110、少なくとも2つのトランスデューサ120(例えば、トランスデューサ120-1、トランスデューサ120-2、トランスデューサ120-3、トランスデューサ120-n)、少なくとも1つの減衰層130、及び処理回路150を含んでもよい。
【0045】
ハウジング110は、音信号を受信するように構成されてもよい。ハウジング110は、1つ以上の密閉収容空間又は非密閉収容空間を形成してもよい。少なくとも2つのトランスデューサ120及び少なくとも1つの減衰層130は、ハウジング110の密閉収容空間又は非密閉収容空間内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング110は、音源に接触すること又はそれに接触しないことによって音信号を受信してもよい。例えば、マイクロフォン100は、骨伝導マイクロフォンであり、ハウジング110は、ユーザの体との直接接触によって音信号を受信してもよい。別の例として、マイクロフォン100は、気導マイクロフォンであり、ハウジング110は、空気振動を介して音信号をハウジング110に導いて少なくとも2つのトランスデューサ120の各々を振動させるための1つ以上の開口部を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、ハウジング110は、接触モード又は非接触モードで、少なくとも2つのトランスデューサ120(例えば、トランスデューサ120-1、120-2、120-3)の各々に音信号を送信してもよい。例えば、マイクロフォン100が骨伝導マイクロフォンである場合、トランスデューサ120-1は、ハウジング110に物理的に取り付けられて、ハウジング110の振動によって振動してもよい。別の例として、マイクロフォン100が気導マイクロフォンである場合、トランスデューサ120-1は、ハウジング110内の空気振動によって振動するように駆動されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つのトランスデューサ120は、少なくとも1つの減衰層130を介して互いに接続されてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロフォン100の少なくとも1つの減衰層130と少なくとも2つのトランスデューサ120との間の接続は、接着、リベット留め、ネジ接続、一体成形、吸引接続など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0048】
各トランスデューサ120は、音信号に応答して振動し、及び/又は少なくとも1つの減衰層130を介して振動を他のトランスデューサ120に伝達するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのトランスデューサ120は、特定の分布モードで、例えば、少なくとも2つのトランスデューサ120の振動方向に平行又は垂直な方向に、ハウジング110内に配列されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、各トランスデューサ120は、エネルギー変換プロセスによって音信号を電気出力に変換することができてもよい。処理回路150によって処理される電気信号は、トランスデューサ120からの電気出力の全部又は一部を含んでもよい。簡潔のために、電気出力を処理回路150に出力するトランスデューサは、出力トランスデューサと呼ばれてもよい。出力トランスデューサは、音信号、必要に応じて、出力トランスデューサに伝達された、他のトランスデューサ120の振動を受信するように構成されてもよい。例えば、少なくとも2つのトランスデューサ120は、減衰層を介して接続された第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサを含んでもよい。第2のトランスデューサは、一態様では、音信号に応答して振動し、別の態様では、処理回路150に電気的に接続していない第1のトランスデューサから伝達された振動を受信する。すなわち、第2のトランスデューサの振動は、ハウジング110を介して送信される音信号と第1のトランスデューサの振動の両方の影響を受ける。次に、第2のトランスデューサ(すなわち、出力トランスデューサ)の振動は、電気出力に変換され、さらなる処理のために処理回路150に送信されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、各トランスデューサ120は、特有の共振ピークを有し得る。トランスデューサ120の共存が、マイクロフォン100の周波数応答曲線における複数の共振ピークを提供することにより、マイクロフォンの性能を向上させて、例えば、より高い感度、より滑らかな周波数応答、及び/又はより広い周波数帯域を達成することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つのトランスデューサ120の各々の信号変換タイプは、電磁型(例えば、可動コイル型、可動鉄片型)、圧電型、逆圧電型、静電型、エレクトレット型、平面磁気型、バランスドアーマチュア型、熱音響型など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのトランスデューサ120の各々は、ダイアフラム、圧電セラミックプレート、ピエゾフィルム、静電フィルムなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのトランスデューサ120の各々の形状は可変であってもよい。例えば、少なくとも2つのトランスデューサ120の各々の形状は、円形、長方形、正方形、楕円形など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのトランスデューサ120の各々の構造は可変であってもよい。例えば、少なくとも2つのトランスデューサ120の各々の構造は、フィルム、カンチレバー、プレートなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0052】
少なくとも1つの減衰層130は、トランスデューサの複合減衰及び/又は複合重量を変更してマイクロフォン100の周波数応答曲線を調整するように構成されてもよい。例えば、少なくとも1つの減衰層130は、トランスデューサ120-1の複合減衰を調整するようにトランスデューサ120-1に配置されてもよい。この配置がトランスデューサ120-1の共振ピークの鋭さを低下させるため、マイクロフォン100は、より平坦な周波数応答曲線を有し得る。さらに、少なくとも1つの減衰層130は、トランスデューサ120-1の複合重量を調整してもよく、これは、トランスデューサ120-1の共振ピークを前方又は後方にシフトしてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの減衰層130は、フィルム、ブロック、複合体構造など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの減衰層130の材料は、金属、無機非金属、ポリマー材料、複合材料など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの減衰層130は、トランスデューサの任意の位置に配置されてもよい。例えば、少なくとも1つの減衰層130は、トランスデューサ120-1の上面、トランスデューサ120-2の下面、トランスデューサ120-1の側面、トランスデューサ120-1の内部など、又はそれらの任意の組み合わせに配置されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの減衰層130は、トランスデューサの表面の少なくとも一部を覆ってもよい。例えば、少なくとも1つの減衰層130は、トランスデューサ120-1の下面又は上面の一部を覆ってもよい(例えば、
図8に示されるマイクロフォン100を参照)。別の例として、少なくとも1つの減衰層130は、トランスデューサ120-1の下面又は上面を完全に覆ってもよい(例えば、
図6Cに示されるマイクロフォン100を参照)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの減衰層130は、少なくとも2つのトランスデューサ120とハウジング110の両方に接続してもよい(例えば、
図7A~
図7Cに示されるマイクロフォン100を参照)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの減衰層130は、少なくとも2つのトランスデューサ120に接続し、ハウジング110に接続しなくてもよい(例えば、
図8に示されるマイクロフォン100を参照)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの減衰層130は、トランスデューサの少なくとも1つの表面に所定の角度で配置されてもよい。例えば、所定の角度は、10°、15°、30°、45°、60°、70°、90°などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの減衰層130は、2つ以上の減衰層を含んでもよい。2つ以上の減衰層は、トランスデューサの中心線に対して対称的(例えば、
図10A~
図10Cに示されるマイクロフォン100を参照)又は非対称的に(例えば、
図9A~
図9Cに示されるマイクロフォン100を参照)配置されてもよい。いくつかの実施形態では、各減衰層130の幅は、同じであっても異なっていてもよい。各減衰層の幅は、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、500μm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mmなどであってもよい。いくつかの実施形態では、各減衰層130の厚さは、同じであっても異なっていてもよい。各減衰層の厚さは、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、10μm、50μm、0.1mm、0.2mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.8mm、1mmなどであってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、マイクロフォン100は、1つ以上の弾性要素140をさらに含んでもよい。弾性要素は、1つ以上の減衰層を介してトランスデューサ120(例えば、出力トランスデューサ)に接続されてもよい。弾性要素は、音信号に応答して振動し、振動を弾性要素に接続されたトランスデューサに伝達して、マイクロフォン100に別の共振ピークを提供するように構成されてもよい。なお、マイクロフォン100に共振ピークを提供することができるトランスデューサと比較して、弾性要素140は、音信号を電気出力に直接変換することができなくてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の減衰層は、弾性要素140の表面の少なくとも一部を覆ってもよい。例えば、1つ以上の減衰層は、弾性要素140の上面の一部を覆ってもよい(例えば、
図12Cに示されるマイクロフォン100を参照)。別の例として、1つ以上の減衰層は、弾性要素140の下面を完全に覆ってもよい(例えば、
図12Aに示されるマイクロフォン100を参照)。いくつかの実施形態では、トランスデューサ120及び弾性要素140は、トランスデューサ120の振動方向に平行又は垂直な方向にハウジング110内に配列されてもよい。
【0055】
処理回路150は、電気信号を処理するように構成されてもよい。例えば、処理回路150は、1つ以上のバンドパスフィルタにより、電気信号に基づいてサブバンド信号を生成してもよい。別の例として、処理回路150は、さらなる処理のために電気信号に対して1つ以上の機能を実行してもよい。例示的な機能は、増幅、変調、単純なフィルタリングなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0056】
なお、マイクロフォン100への上記説明は、単に例示の目的で提供されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本開示の教示に基づいて、複数の変更及び変形を行うことができる。しかしながら、これらの変更及び変形は、本開示の範囲から逸脱するものではない。例えば、減衰層は、トランスデューサ120の表面の一部を覆ってもよく、弾性要素140の表面を完全に覆ってもよい。別の例として、各トランスデューサ120は、対応して1つの弾性要素に接続されてもよい。
【0057】
図2Aは、本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの例示的なばね-質量-ダンパシステムを示す概略図である。マイクロフォンにおいて、そのトランスデューサは、
図2Aに示すようなばね-質量-ダンパシステムに等価に簡略化されてもよい。マイクロフォンが動作すると、ばね-質量-ダンパシステムは、加振力を受けて強制的に振動してもよい。
【0058】
図2Aに示すように、ばね-質量-ダンパシステムは、微分方程式(1)に従って移動しもよい:
【数1】
式中、Mは、ばね-質量-ダンパシステムの質量を表し、xは、ばね-質量-ダンパシステムの変位を表し、Rは、ばね-質量-ダンパシステムの減衰を表し、Kは、ばね-質量-ダンパシステムの弾性係数を表し、Fは、駆動力の振幅を表し、ωは、外力の角周波数を表す。
【0059】
微分方程式(1)を解いて定常状態での変位(2)を得てもよい:
【数2】
式中、xは、出力電気信号の値に等しい、マイクロフォンが動作するときのばね-質量-ダンパシステムの変形を表し、
【数3】
であり、
【数4】
は、出力変位を表し、
【数5】
は、機械インピーダンスを表し、θは、発振位相を表す。
【0060】
変位振幅の比率Aの正規化は、式(3)として記述されてもよい:
【数6】
式中、
【数7】
であり、
【数8】
は、定常状態での変位振幅(又はω=0であるときの変位振幅)を表し、
【数9】
であり、
【数10】
は、固有周波数に対する外力の周波数の比率を表し、
【数11】
であり、
【数12】
は、振動の角周波数を表し、
【数13】
であり、
【数14】
は、機械的品質係数を表す。
【0061】
図2Bは、本開示のいくつかの実施形態による、ばね-質量-ダンパシステムの例示的な正規化された変位共振曲線を示す概略図である。
【0062】
マイクロフォンに含まれるトランスデューサは、トランスデューサとマイクロフォンのハウジングとの間の相対変位に従って電気出力を生成してもよい。例えば、エレクトレットマイクロフォンは、変形したダイアフラムトランスデューサと基板との間の距離変化に応じて電気出力を生成してもよい。別の例として、カンチレバー骨伝導マイクロフォンは、変形したカンチレバートランスデューサによって引き起こされた逆圧電効果に応じて電気出力を生成してもよい。トランスデューサが変形する変位が大きいほど、マイクロフォンが出力し得る電気出力は大きくなる。従って、マイクロフォンにおいて、そのトランスデューサは、ばね-質量-ダンパシステムに等価に簡略化されてもよい。トランスデューサの変位共振曲線は、
図2Bに示すようなばね-質量-ダンパシステムの変位共振曲線と一致してもよい。
図2Bに示すように、線201、202、203、204、205、及び206は、減衰値の昇順に配置されたばね-質量-ダンパシステムの変位共振曲線を表してもよい。トランスデューサの減衰値(例えば、材料減衰値、構造減衰値など)が小さいほど、変位応答曲線の共振ピークでの鋭さが向上し、3dB帯域幅が狭くなり得る。いくつかの実施形態では、共振ピークは、優れた性能を有するマイクロフォンでは音声周波数範囲に設定されなくてもよい。
【0063】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による、減衰層に接続されたトランスデューサの例示的な等価モデルを示す概略図である。
図3Aに示すように、Rは、トランスデューサの減衰を表し、Kは、トランスデューサの弾性係数を表し、R1は、減衰層の減衰を表す。いくつかの実施形態では、トランスデューサの複合減衰は、減衰層を追加することによって増加してもよい。トランスデューサの減衰は、変更されてもよい。
【0064】
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、トランスデューサの共振ピークを前方に移動した(すなわち、共振ピークを低周波数領域に向かって移動した)後の例示的な周波数応答曲線と、トランスデューサに減衰層を追加した後の例示的な周波数応答曲線とを示す概略図である。
図3Bに示すように、点線301は、トランスデューサの周波数応答曲線を表し、点線302は、トランスデューサの共振ピークを前方に移動した後の周波数応答曲線を表し、実線303は、トランスデューサに減衰層を追加した後の周波数応答曲線を表す。
【0065】
いくつかの実施形態では、
図3Bの点線301及び点線302によって示されるように、マイクロフォンの全体的な感度を向上させるために、共振ピークを音声周波数範囲(例えば、10Hz~7kHz)の前方に移動することにより、トランスデューサの固有周波数を前方に移動して、マイクロフォンの、共振ピークの前の感度を向上させることができる。出力変位
【数15】
は、式(4)に従って決定されてもよい:
【数16】
式(4)に従って、
【数17】
であれば、
【数18】
である。Mを増加させ及び/又はKを減少させることによってトランスデューサの
【数19】
を減少させると、
【数20】
は減少してもよく、対応する出力変位
【数21】
は増加してもよい。
【数22】
であると、
【数23】
である。トランスデューサの
【数24】
を減少又は増加させると、出力変位
【数25】
は一定であってもよい。
【数26】
であると、
【数27】
である。Mを増加させ及び/又はKを減少させることによってトランスデューサの
【数28】
を減少させると、
【数29】
は増加し、対応する出力変位
【数30】
は減少し得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、共振ピークが前方に移動されるにつれて、共振ピークは、音声周波数範囲に現れる可能性がある。共振ピークの付近で複数の信号をピックアップすると、共振ピークの周りの急激な変動により、通信品質が悪くなる可能性がある。いくつかの実施形態では、トランスデューサに減衰層を追加すると、振動中のエネルギー損失、特に共振ピークの付近のエネルギー損失が増加する可能性がある。Q値の逆数は、式(5)に従って記述されてもよい:
【数31】
式中、
【数32】
は、Q値の逆数を表し、
【数33】
は、3dB帯域幅(それぞれ共振振幅の半分での2つの周波数
【数34】
の差分値、
【数35】
を表し、
【数36】
は、共振周波数を表す。なお、Q値は、共振ピークの鋭さを反映し得る。Q値が大きいほど、共振ピークは鋭くなり得る。
【0067】
トランスデューサの減衰が増加するにつれて、Q値は減少し、共振の鋭さは低下し、対応する3dB帯域幅は増加する。いくつかの実施形態では、減衰層の減衰は、変形プロセス中に一定ではなく、大きな力又は大きな振幅下で大きくなる可能性がある。結果として、非共振領域における振幅による減衰は、共振領域における振幅による減衰よりも小さくなり得る。
図3Bの点線302及び実線303によって示されるように、非共振領域におけるマイクロフォンの感度は、明らかに低下しないのに対して、共振領域におけるQ値は、トランスデューサに適切な減衰層を追加することによって大幅に低下してもよい。従って、共振ピークを音声周波数範囲まで前方に移動し、共振ピークでのQ値を減少させることにより、マイクロフォンの周波数応答曲線は比較的に平坦であり、それによってマイクロフォンの性能を向上させることができる。
【0068】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、異なるトランスデューサの例示的な周波数応答曲線を示す概略図である。
図4に示すように、線401、402、及び403の各々は、3つのトランスデューサのうちの単一のトランスデューサの周波数応答曲線を表す。線404は、3つのトランスデューサが2つの減衰層によって互いに物理的に直列に接続される場合の出力トランスデューサの周波数応答曲線を表す。出力トランスデューサは、3つのトランスデューサのいずれか1つであってもよい。出力トランスデューサの周波数応答曲線(すなわち、線404)は、3つのトランスデューサ(すなわち、線401、402、及び403)のうちの1つにそれぞれ対応する3つの共振ピークを有してもよい。つまり、3つのトランスデューサの各々は、振動を出力トランスデューサに伝達して、出力トランスデューサに特有の共振ピークを提供してもよい。このように、(線404で表される)出力トランスデューサの感度は、(線401、402、及び403でそれぞれ表される)3つのトランスデューサのいずれの感度よりも高くなり得る。
【0069】
図4によれば、直列に接続されたトランスデューサの数は、出力トランスデューサの周波数応答曲線に影響を与える可能性がある。直列に接続されたトランスデューサが多いほど、出力トランスデューサの周波数応答曲線は平坦になる。いくつかの実施形態では、出力トランスデューサの周波数応答範囲を、直列に接続されたトランスデューサの各単一のトランスデューサの共振ピークを調整することによって調整してもよい。例えば、出力トランスデューサの周波数応答における1つ以上の共振ピークは、20Hz~8kHz、50Hz~7kHz、100Hz~5kHzなどの音声周波数範囲に調整されてもよい。
【0070】
図5Aは、本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、弾性要素の例示的な変位曲線と、弾性要素に接続されるときのトランスデューサの例示的な周波数応答曲線とを示す概略図である。
図5Aに示すように、線501は、弾性要素に接続されないときのトランスデューサの周波数応答曲線を表す。点線502は、弾性要素の変位曲線を表す。実線503は、減衰層を介して弾性要素に接続されるときのトランスデューサの周波数応答曲線を表す。トランスデューサに接続された弾性要素は、振動をトランスデューサに伝達して、トランスデューサに共振ピークを提供してもよい。弾性要素に接続されたトランスデューサの周波数応答曲線(すなわち、実線503)は、トランスデューサの共振ピーク(すなわち、線501)又は弾性要素(すなわち、点線502)の共振ピークにそれぞれ対応する2つの共振ピークを有してもよい。(実線503で表される)弾性要素に接続されたトランスデューサの感度は、(点線502で表される)弾性要素に接続されないトランスデューサの感度よりも高くなり得る。
【0071】
図5Bは、本開示のいくつかの実施形態による、数の異なる弾性要素に接続されたトランスデューサの例示的な周波数応答曲線を示す概略図である。
図5Bに示すように、線510は、いずれの弾性要素にも接続されないトランスデューサの周波数応答曲線を表す。線511は、1つの弾性要素に接続されたトランスデューサの周波数応答曲線を表す。線512は、2つの弾性要素に接続されたトランスデューサの周波数応答曲線を表す。実線513は、3つの弾性要素に接続されたトランスデューサの周波数応答曲線を表す。3つの弾性要素に接続されたトランスデューサの周波数応答曲線(すなわち、実線513)は、トランスデューサの共振ピーク(すなわち、線510)又は3つの弾性要素の共振ピークにそれぞれ対応する4つの共振ピークを有してもよい。トランスデューサに接続された各弾性要素は、振動をトランスデューサに伝達して、トランスデューサに共振ピークを提供してもよい。(実線513で表される)3つの弾性要素に接続されたトランスデューサの感度は、(線510、511、又は512で表される)3つよりも少ない弾性要素に接続されたトランスデューサの感度よりも高くなり得る。
【0072】
図5A及び
図5Bによれば、トランスデューサに接続された弾性要素の数は、トランスデューサ(すなわち、出力トランスデューサ)の周波数応答曲線に影響を与える可能性がある。トランスデューサに接続された弾性要素が多いほど、トランスデューサの周波数応答曲線は平坦になり、トランスデューサの感度は高くなる。いくつかの実施形態では、トランスデューサの周波数応答における1つ以上の共振ピークを、トランスデューサ又はトランスデューサに接続された弾性要素の各々の共振ピークを調整することによって調整してもよい。
【0073】
図6Aは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図6Aに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、及び2つのトランスデューサ120の各々に接続され、ハウジング110から切断された減衰層130を含んでもよい。2つのトランスデューサ120の各々は、音信号に応答して振動してもよい。例えば、骨伝導マイクロフォンの場合、2つのトランスデューサ120の各々は、ハウジングに直接取り付けられ、ハウジング110の振動によって振動してもよい。気導マイクロフォンの場合、例えば、トランスデューサ120及び/又は減衰層130は、1つ以上の音響キャビティを形成して、ハウジング110は、気導音を取り込む1つ以上の開口部を含み、2つのトランスデューサ120の各々は、ハウジング110内の空気振動に応答して振動してもよい。2つのトランスデューサ120は、減衰層130の同じ側に配置されてもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の各々の下面を覆ってもよい。
【0074】
図6Bは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図6Bに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、及び2つのトランスデューサ120の各々に接続され、ハウジング110から切断された減衰層130を含んでもよい。
図6Aと同様に、2つのトランスデューサ120は、減衰層130の同じ側に配置されてもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の各々の上面を覆ってもよい。
【0075】
図6Cは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図6Cに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、及び2つのトランスデューサ120の各々に接続され、ハウジング110から切断された減衰層130を含んでもよい。2つのトランスデューサ120は、減衰層130の対向側に配置されてもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の一方の下面及び2つのトランスデューサ120の他方の上面を覆ってもよい。2つのトランスデューサ120及び減衰層130は、サンドイッチ構造を形成してもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の間に挟まれてもよい。
【0076】
図7Aは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図7Aに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、及び2つのトランスデューサ120の各々及びハウジング110に接続された減衰層130を含んでもよい。
図6Aと同様に、2つのトランスデューサ120は、減衰層130の同じ側に配置されてもよい。減衰層130は、減衰層130の両端でハウジング110に接続してもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の各々の下面を覆ってもよい。
【0077】
図7Bは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図7Bに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、及び2つのトランスデューサ120の各々及びハウジング110に接続された減衰層130を含んでもよい。
図7Aと同様に、2つのトランスデューサ120は、減衰層130の同じ側に配置されてもよい。減衰層130は、減衰層130の両端でハウジング110に接続してもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の各々の上面を覆ってもよい。
【0078】
図7Cは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図7Aに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、並びに2つのトランスデューサ120の各々及びハウジング110に接続された減衰層130を含んでもよい。
図6Cと同様に、2つのトランスデューサ120は、減衰層130の対向側に配置されてもよい。減衰層130は、減衰層130の両端でハウジング110に接続してもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の一方の下面及び2つのトランスデューサ120の他方の上面を覆ってもよい。2つのトランスデューサ120及び減衰層130は、サンドイッチ構造を形成してもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の間に挟まれてもよい。
【0079】
図8は、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図8に示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、ハウジング110にそれぞれ接続する2つのカンチレバートランスデューサ120、及び2つのカンチレバートランスデューサ120の各々に接続された減衰層130を含んでもよい。2つのカンチレバートランスデューサ120の各々は、一端(「固定端」とも呼ばれる)でハウジング110に固定されてもよい。この場合、ハウジング110の振動は固定端を介して各カンチレバートランスデューサ120に伝達されて、各カンチレバートランスデューサ120を振動させて1つ以上の電気出力を生成してもよい。減衰層130は、ハウジング110から切断されてもよい。
図6C及び
図7Cと同様に、2つのカンチレバートランスデューサ120は、減衰層130の対向側に配置されてもよい。減衰層130は、2つのカンチレバートランスデューサ120の一方の上面の少なくとも一部及び2つのカンチレバートランスデューサ120の他方の下面の少なくとも一部を覆ってもよい。2つのカンチレバートランスデューサ120及び減衰層130は、サンドイッチ構造を形成してもよい。減衰層130は、2つのカンチレバートランスデューサ120の間に挟まれてもよい。
【0080】
図9A~
図9Cは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図9A~
図9Cに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、ハウジング110にそれぞれ接続する2つのカンチレバートランスデューサ120(すなわち、第1のカンチレバートランスデューサ120-1及び第2のカンチレバートランスデューサ120-2)、及び3つの減衰層130(すなわち、第1の減衰層130-1、第2の減衰層130-2、及び第3の減衰層130-3)を含んでもよい。第1の減衰層130-1は、第1の減衰層130-1の一端でハウジング110に接続し、第1の減衰層130-1の他端で第1のカンチレバートランスデューサ120-1に接続してもよい。第2の減衰層130-2は、2つのカンチレバートランスデューサ120の各々に接続し、ハウジング110から切断されてもよい。第3の減衰層130-3は、第3の減衰層130-3の一端でハウジング110に接続し、第3の減衰層130-3の他端で第2のカンチレバートランスデューサ120-2に接続してもよい。2つのカンチレバートランスデューサ120の各々は、一端(「固定端」とも呼ばれる)でハウジング110に固定されてもよい。この場合、ハウジング110の振動は固定端を介して各カンチレバートランスデューサ120に伝達されて、各カンチレバートランスデューサ120を振動させて1つ以上の電気出力を生成してもよい。
【0081】
第1の減衰層130-1は、第1のカンチレバートランスデューサ120-1の上面の一部を覆ってもよい。第2の減衰層130-2は、第1のカンチレバートランスデューサ120-1の下面の一部及び第2のカンチレバートランスデューサ120-2の上面の一部を覆ってもよい。第3の減衰層130-3は、第2のカンチレバートランスデューサ120-2の下面の一部を覆ってもよい。いくつかの実施形態では、3つの減衰層の各々は、帯状であり、減衰層の軸方向に沿って伸びていてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、減衰層は、同じ角度又は異なる角度でトランスデューサに配置されてもよい。例えば、
図9Aに示すように、3つの減衰層の各々は、第1のカンチレバートランスデューサ120-1及び第2のカンチレバートランスデューサ120-2の振動方向でもある上下方向に沿って伸びていてもよい。言い換えると、3つの減衰層の各々は、第1のカンチレバートランスデューサ120-1又は第2のカンチレバートランスデューサ120-2に90°の角度で配置されてもよい。別の例として、
図9Bに示すように、第1の減衰層130-1は、第1のカンチレバートランスデューサ120-1に60°~90°の間の角度で配置されてもよい。第2の減衰層130-2は、第1のカンチレバートランスデューサ120-1又は第2のカンチレバートランスデューサ120-2に90°の角度で配置されてもよい。第3の減衰層130-3は、第2のカンチレバートランスデューサ120-2に60°~90°の間の角度で配置されてもよい。更なる例として、
図9Cに示すように、第1の減衰層130-1は、第1のカンチレバートランスデューサ120-1に60°~90°の間の角度で配置されてもよい。第2の減衰層130-2は、第1のカンチレバートランスデューサ120-1及び第2のカンチレバートランスデューサ120-2に90°の角度で配置されてもよい。第3の減衰層130-3は、第2のカンチレバートランスデューサ120-2に90°の角度で配置されてもよい。
【0083】
図10Aは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図10Aに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、3つのトランスデューサ120(すなわち、第1のトランスデューサ120-1、第2のトランスデューサ120-2、及び第3のトランスデューサ120-3)、及び2つの減衰層130を含んでもよい。2つの減衰層130の各々は、一端で1つのトランスデューサに接続し、他端でもう1つのトランスデューサに接続してもよい。3つのトランスデューサ120及び2つの減衰層130は、ハウジング110内で類似する「V」字形状を形成してもよい。2つの減衰層130又は3つのトランスデューサ120のうちの2つ(すなわち、第1のトランスデューサ120-1及び第3のトランスデューサ120-3)は、第2のトランスデューサ120-2の中心線に対して対称であってもよい。2つの減衰層130は、ハウジング110に接続しなくてもよい。
【0084】
図10Bは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図10Bに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、3つのトランスデューサ120(すなわち、第1のトランスデューサ120-1、第2のトランスデューサ120-2、及び第3のトランスデューサ120-3)、及び4つの減衰層130を含んでもよい。4つの減衰層130の各々は、一端で1つのトランスデューサに接続し、他端でもう1つのトランスデューサに接続してもよい。3つのトランスデューサ120及び4つの減衰層130は、ハウジング110内で類似する「V」字形状を形成してもよい。4つの減衰層130のうちの2つ又は3つのトランスデューサ120のうちの2つ(すなわち、第1のトランスデューサ120-1及び第3のトランスデューサ120-3)は、第2のトランスデューサ120-2の中心線に対して対称であってもよい。4つの減衰層130のうちの2つは、ハウジング110に接続しなく、他の2つは、ハウジングにそれぞれ接続してもよい。
【0085】
図10Cは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図10Cに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、5つのトランスデューサ120、及び4つの減衰層130を含んでもよい。4つの減衰層130の各々は、一端で1つのトランスデューサに接続し、他端でもう1つのトランスデューサに接続してもよい。5つのトランスデューサ120及び4つの減衰層130は、ハウジング110内で類似する「X」字形状を形成してもよい。4つの減衰層130のうちの2つ又は5つのトランスデューサ120のうちの2つは、5つのトランスデューサ120のうちの、中心位置に配置されたトランスデューサの中心線に対して対称であってもよい。4つの減衰層130は、ハウジング110に接続しなくてもよい。
【0086】
図10Dは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図10Dに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、5つのトランスデューサ120、及び8つの減衰層130を含んでもよい。8つの減衰層130の各々は、一端で1つのトランスデューサに接続し、他端でもう1つのトランスデューサに接続してもよい。5つのトランスデューサ120及び8つの減衰層130は、ハウジング110内で類似する「X」字形状を形成してもよい。8つの減衰層130のうちの2つ又は5つのトランスデューサ120のうちの2つは、5つのトランスデューサ120のうちの、中心位置に配置されたトランスデューサの中心線に対して対称であってもよい。8つの減衰層130のうちの4つは、ハウジング110に接続しなく、他の4つは、ハウジングにそれぞれ接続してもよい。
【0087】
図3A及び
図3Bの減衰層に関連して説明したように、
図6A~
図6C、
図7A~
図7C、
図8、
図9A~
図9C、及び
図10A~
図10Dの減衰層の配置は、トランスデューサの複合減衰及び/又は複合重量を変更してマイクロフォン100の周波数応答曲線を調整するように構成されてもよい。減衰層が振動をトランスデューサの間で互いに伝達できるため、出力トランスデューサ(又はマイクロフォン100)の共振ピークは、より低い周波数領域に向かって移動され、共振ピークでの出力トランスデューサのQ値は減少し得る。このように、共振周波数よりも低い周波数帯域での出力トランスデューサ(又はマイクロフォン100)の感度は、いずれの他のトランスデューサにも接続しない各トランスデューサの感度よりも高くなり得る。
【0088】
なお、本開示に記載される例示的なマイクロフォンは、単に例示の目的で提供されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本開示の教示に基づいて、複数の変更及び変形を行うことができる。しかしながら、これらの変更及び変形は、本開示の範囲から逸脱するものではない。例えば、マイクロフォン100のハウジング110は、(例えば、マイクロフォン100が気導マイクロフォンである場合に)音信号をハウジング110に導いてハウジング110内の任意のトランスデューサを振動させるための1つ以上の開口部を含んでもよい。この場合、上記カンチレバートランスデューサは、空気振動に対してより敏感なダイアフラムに置き換えられてもよい。別の例として、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、及び2つの減衰層130を含んでもよい。2つの減衰層130の各々は、2つのトランスデューサ120の各々に接続し、ハウジング110から切断されてもよい。2つの減衰層130の一方は、2つのトランスデューサ120の各々の下面を完全に覆ってもよい。2つの減衰層130の他方は、2つのトランスデューサ120の各々の上面を完全に覆ってもよい。更なる例として、マイクロフォン100は、少なくとも2つの収容空間を含むハウジング110を含み、収容空間の各々は、少なくとも1つの減衰層を介して接続された少なくとも2つのトランスデューサを含んでもよい。なお更なる例として、異なる減衰層は、同じ又は異なる材料で製造されてもよい。各減衰層は、任意にハウジングに接続されてもよく、それから切断されてもよい。減衰層又はトランスデューサの数は限定されなく、トランスデューサに対する減衰層の位置は、実際の必要に応じて調整されてもよい。
【0089】
図11は、本開示のいくつかの実施形態による、第1のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、減衰層を介して第2のトランスデューサに接続された第1のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線とを示す概略図である。
図11に示すように、線1101は、第1のトランスデューサのみの周波数応答曲線を表す。線1102は、減衰層を介して第2のトランスデューサに接続されるときの第1のトランスデューサの周波数応答曲線を表す。本明細書における第2のトランスデューサに接続された第1のトランスデューサは、出力トランスデューサであってもよい。減衰層は、第1のトランスデューサと第2のトランスデューサとの間で振動信号を伝達してもよい。出力トランスデューサの周波数応答曲線(すなわち、線1102)は、第1のトランスデューサ又は第2のトランスデューサの共振ピークにそれぞれ対応する2つの共振ピークを有してもよい。減衰層により、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサの共振ピークは、低周波数領域に向かって移動され、共振ピークでの出力トランスデューサのQ値は、第1のトランスデューサのQ値よりも小さくなり得る。このように、例えば、100Hz~3000Hz又は100Hz~2250Hzの周波数帯域での出力トランスデューサの感度は、第2のトランスデューサに接続しない第1のトランスデューサの感度よりも高くなり得る。
【0090】
図12Aは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図12Aに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、弾性要素140、並びに2つのトランスデューサ120の各々及び弾性要素140にそれぞれ接続され、ハウジング110から切断された減衰層130を含んでもよい。2つのトランスデューサ120及び弾性要素140は、減衰層130の同じ側に配置されてもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の各々及び弾性要素140の下面を覆ってもよい。弾性要素140は、例えば、ハウジング110内の空気振動に応答して振動して、その振動を、減衰層130に伝達し、さらに2つのトランスデューサ120に伝達してもよい。2つのトランスデューサ120の一方が出力トランスデューサとして選択される場合、弾性要素140及び2つのトランスデューサ120の他方の振動は、出力トランスデューサに2つの特有の共振ピークを提供してもよい。従って、出力トランスデューサの感度を向上させることができる。さらに、減衰層130が出力トランスデューサのQ値の減少に役立つため、マイクロフォンの周波数応答をより平坦にすることができる。
【0091】
図12Bは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図12Bに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、2つの減衰層130、及び弾性要素140を含んでもよい。2つの減衰層130の各々は、2つの減衰層130の各々の両端でハウジング110に接続してもよい。2つのトランスデューサ120、弾性要素140、及び減衰層130は、サンドイッチ構造を形成してもよい。2つの減衰層130の一方は、2つのトランスデューサ120の一方の下面及び2つのトランスデューサ120の他方の上面を覆ってもよい。2つの減衰層130の他方は、2つのトランスデューサ120の他方の下面及び弾性要素140の上面を覆ってもよい。
【0092】
図12Cは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図12Cに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのカンチレバートランスデューサ120、2つの減衰層130、及び弾性要素140を含んでもよい。2つの減衰層130の各々は、ハウジング110に接続しなくてもよい。カンチレバートランスデューサ又は弾性要素は、一端でハウジング110に固定されてもよい。2つのカンチレバートランスデューサ120、弾性要素140、及び減衰層130は、サンドイッチ構造を形成してもよい。2つの減衰層130の一方は、2つのカンチレバートランスデューサ120の一方の下面及び2つのカンチレバートランスデューサ120の他方の上面を覆ってもよい。2つの減衰層130の他方は、2つのカンチレバートランスデューサ120の他方の下面及び弾性要素140の上面を覆ってもよい。2つの減衰層130の各々は、2つのカンチレバートランスデューサ120及び/又は弾性要素140の間に挟まれてもよい。
【0093】
図12Dは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図12Dに示すように、マイクロフォン100は、ハウジング110、3つのトランスデューサ120、8つの減衰層130、及び2つの弾性要素140を含んでもよい。8つの減衰層130の各々は、一端で1つのトランスデューサ又は1つの弾性要素に接続し、他端でもう1つのトランスデューサ又は弾性要素に接続してもよい。3つのトランスデューサ120、2つの弾性要素140、及び8つの減衰層130は、ハウジング110内で類似する「X」字形状を形成してもよい。8つの減衰層130のうちの2つ、3つのトランスデューサ120のうちの2つ、又は2つの弾性要素140は、トランスデューサ120及び/又は弾性要素140のうちの、中心位置に配置されたトランスデューサの中心線に対して対称であってもよい。8つの減衰層130のうちの4つは、ハウジング110に接続しなく、他の4つは、ハウジングにそれぞれ接続してもよい。
【0094】
なお、本開示に記載される例示的なマイクロフォンは、単に例示の目的で提供されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本開示の教示に基づいて、複数の変更及び変形を行うことができる。しかしながら、これらの変更及び変形は、本開示の範囲から逸脱するものではない。例えば、マイクロフォン100のハウジング110は、(例えば、マイクロフォン100が気導マイクロフォンである場合に)音信号をハウジング110に導いてハウジング110内の任意のトランスデューサを振動させるための1つ以上の開口部を含んでもよい。この場合、上述したトランスデューサは、空気振動に対してより敏感なダイアフラムに置き換えられてもよい。別の例として、マイクロフォン100は、ハウジング110、2つのトランスデューサ120、弾性要素140、並びに2つのトランスデューサ120の各々及び弾性要素140にそれぞれ接続され、ハウジング110から切断された減衰層130を含んでもよい。減衰層130は、2つのトランスデューサ120の各々及び弾性要素140の上面を覆ってもよい。更なる例として、マイクロフォン100は、少なくとも2つの収容空間を含むハウジング110を含み、収容空間の少なくとも1つは、少なくとも2つのトランスデューサ、少なくとも1つの減衰層を介して接続された少なくとも1つの弾性要素を含んでもよい。なお更なる例として、異なる減衰層は、同じ又は異なる材料で製造されてもよく、トランスデューサのタイプは、同じであっても異なっていてもよい。各減衰層は、任意にハウジングに接続されてもよく、それから切断されてもよい。減衰層、トランスデューサ、又は弾性要素の数は限定されなく、トランスデューサ及び/又は弾性要素に対する減衰層の位置は、実際の必要に応じて調整されてもよい。
【0095】
図13は、本開示のいくつかの実施形態による、第1のトランスデューサ、第2のトランスデューサ、及び第3のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、弾性要素の例示的な変位曲線と、3つの減衰層を介してそれぞれ第2のトランスデューサ、第3のトランスデューサ、及び弾性要素に接続された第1のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線とを示す概略図である。
図13に示すように、線1301、1302、及び1303は、第1のトランスデューサ、第2のトランスデューサ、及び第3のトランスデューサの周波数応答曲線をそれぞれ表す。線1304は、弾性要素の変位曲線を表す。線1305は、第2のトランスデューサ、第3のトランスデューサ、及び弾性要素に接続されるときの第1のトランスデューサの周波数応答曲線を表す。本明細書における第2のトランスデューサ、第3のトランスデューサ、及び弾性要素に接続された第1のトランスデューサは、出力トランスデューサであってもよい。いくつかの実施形態では、第1のトランスデューサを除く別のトランスデューサは、出力トランスデューサとして機能してもよい。減衰層は、トランスデューサと弾性要素との間で振動信号を伝達してもよい。出力トランスデューサの周波数応答曲線(すなわち、線1305)は、各トランスデューサ又は弾性要素(すなわち、線1301、1302、1303、又は1304)の共振ピークにそれぞれ対応する4つの共振ピークを有してもよい。減衰層により、各トランスデューサ又は弾性要素の共振ピークは、低周波数領域に向かって移動され、共振ピークでの出力トランスデューサのQ値は、第1のトランスデューサのQ値よりも小さくなり得る。このように、(線1305で表される)出力トランスデューサの感度は、(線1301、1302、又は1303で表される)3つのトランスデューサのいずれの感度よりも高くなり得る。
【0096】
図13によれば、直列に接続されたトランスデューサ及び/又は弾性要素の数は、出力トランスデューサの周波数応答曲線に影響を与える可能性がある。直列に接続されたトランスデューサ及び/又は弾性要素が多いほど、出力トランスデューサの周波数応答曲線は平坦になる。
【0097】
図14は、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示すブロック図である。例えば、マイクロフォン1400は、電話、イヤホン、ヘッドホン、ウェアラブルデバイス、スマートモバイルデバイス、仮想現実デバイス、拡張現実デバイス、コンピュータ、ラップトップなどの電子機器のマイクロフォンであってもよい。マイクロフォン1400は、ハウジング1410、少なくとも2つのトランスデューサ1420(例えば、トランスデューサ1420-1、トランスデューサ1420-2、トランスデューサ1420-3、…、トランスデューサ1420-n)、及び処理回路1450を含んでもよい。
【0098】
ハウジング1410について、
図1に記載されたハウジング110を参照してもよい。例えば、ハウジングは、音源に接触すること又はそれに接触しないことによって音信号を受信してもよい。
【0099】
少なくとも2つのトランスデューサ1420の各々は、音信号に応答して電気出力を出力するように振動し、及び/又は減衰層を介して振動を他のトランスデューサに伝達するように構成されてもよい。例えば、音信号は、ハウジング1410から送信されて、少なくとも2つのトランスデューサ1420を変形させて、電気信号を生成してもよい。電気信号は、少なくとも2つのトランスデューサ1420の2つ以上の電気出力を含んでもよい。各電気出力は、1つのトランスデューサから出力されてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、減衰層は、1つのトランスデューサに配置されて、トランスデューサの複合減衰及び/又は複合重量を変更して、トランスデューサのQ値及び周波数応答を調整してもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上のトランスデューサ(例えば、トランスデューサ1420-1及び1420-2)は、少なくとも1つの減衰層1430によって互いに接続されてもよい。少なくとも1つの減衰層1430は、相互接続されたトランスデューサの各々の複合減衰及び/又は複合重量を変更して、各トランスデューサのQ値及び周波数応答を調整してもよい。相互接続されたトランスデューサのうち、各トランスデューサは、ハウジング1410を介して音信号と、少なくとも1つの減衰層1430を介して他のトランスデューサからの振動とを同時に受信してもよい。結果として、相互接続されたトランスデューサの各々の周波数応答曲線は、少なくとも2つの共振ピークを含んでもよい。少なくとも1つの減衰層1430、減衰層とトランスデューサとの関係に関するより多くの説明は、本開示の他の箇所(例えば、
図1及びその説明)において見出すことができる。例えば、少なくとも1つの減衰層1430は、少なくとも2つのトランスデューサ1420の各々の少なくとも1つの表面に所定の角度(例えば、10°、15°、30°、45°、60°、70°、90°など)で配置されてもよい。別の例として、少なくとも1つの減衰層1430を介した少なくとも2つのトランスデューサ1420のうちの任意の2つの間の接続は、接着、リベット留め、ネジ接続、一体成形、吸引接続など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、マイクロフォン1400は、1つ以上の弾性要素1440をさらに含んでもよい。弾性要素は、音信号に応答して振動し、1つ以上の減衰層を介して振動をその接続されたトランスデューサに伝達するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、
図20Cに示すようなマイクロフォン1400のように、各トランスデューサは、減衰層を介して弾性要素に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、トランスデューサの一部は、弾性要素に接続されてもよく、他の部分は、減衰層のみに接続されてもよく、任意の減衰層と切断されてもよい。いくつかの実施形態では、
図20Bに示すようなマイクロフォン1400のように、トランスデューサ、減衰層、及び弾性要素は、直列に接続されてもよい。弾性要素に関するより多くの説明は、本開示の他の箇所(例えば、
図1及びその説明)において見出すことができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、各トランスデューサ(例えば、トランスデューサ1420-1、1420-2、1420-3)は、電気出力を処理回路1450に出力するための出力トランスデューサとして機能してもよい。
図14に示すように、トランスデューサ1420-1、1420-2、1420-3、…は、電気出力1422-1、1422-2、1422-3、…を処理回路1450にそれぞれ出力してもよい。あるいは、少なくとも2つのトランスデューサ1420の一部は、電気出力を出力する出力トランスデューサであって、少なくとも2つのトランスデューサ1420の他の部分は、単にそれらに接続した出力トランスデューサに振動を伝達してもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、電気出力を生成するトランスデューサの周波数特性が異なるため、2つ以上の電気出力は位相がずれている可能性があることを考慮すると、少なくとも2つのトランスデューサ1420の2つ以上の電気出力の位相を、2つ以上の電気出力を組み合わせる前に調整してもよい。例えば、2つ以上の電気出力の位相を、位相調整動作に従って、処理回路1450によって調整してもよい。特定のトランスデューサがマイクロフォン回路に接続される場合、特定のトランスデューサの電気出力の位相は、電気出力がさらに処理される前に、処理回路1450によって反転されてもよい。換言すれば、特定のトランスデューサの位相処理モードは、他のトランスデューサとは異なってもよい。独立して配置された2つの出力トランスデューサ(例えば、
図18A~
図18Dのトランスデューサ)を例として取り上げると、2つの出力トランスデューサの各々は、電気出力を出力してもよい。上述した位相調整動作によれば、1つの電気出力の位相は反転され、他の電気出力の位相は維持され、これは、正-負-負-正(PNNP)処理モードと呼ばれてもよい。追加的に又は代替的には、独立して配置された各トランスデューサ(例えば、
図20Dのトランスデューサ)に減衰層を追加して各トランスデューサのQ値を減少させてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、電気信号を出力しない1つ以上の追加のトランスデューサ及び/又は1つ以上の弾性要素も、独立して配置されたトランスデューサ(例えば、
図20Cのトランスデューサ)の少なくとも1つに接続されてマイクロフォンの共振ピークを増加させてもよい。独立して配置されたトランスデューサによって提供された共振周波数が互いに交差しない場合、1つの電気出力の位相は反転されて、他の電気出力の位相は維持されてもよい。本明細書に記載されているように、独立して配置されたトランスデューサによって提供された共振周波数が互いに交差しないことは、独立して配置されたトランスデューサの一方及びその接続されたトランスデューサによって提供された最大の共振周波数が、独立して配置されたトランスデューサの他方及びその接続されたトランスデューサによって提供された最小の共振周波数よりも小さいことを指す。このようにして、異なる出力トランスデューサから得られた異なる電気出力の位相を調整することにより、組み合わせたときに2つ以上の電気出力の相殺による電気信号の信号強度の望ましくない低下を回避することができる。いくつかの実施形態では、2つ以上の電気出力は、少なくとも2つのトランスデューサ1420のうち、それらしゅうはすう共振周波数の降順又は昇順でソートされる場合に隣接するトランスデューサの出力したものであってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの出力トランスデューサ1420(例えば、
図20A及び
図20Bのトランスデューサ)が、1つ以上の減衰層を介して互いに接続される場合、少なくとも2つのトランスデューサの各トランスデューサから生成された各電気出力は、同じ数の共振ピークを有してもよい(例えば、各々が少なくとも2つの共振ピークを有する)。処理回路1450は、正-負-正(PNP)処理モードと呼ばれる、2つの電気出力のいずれかの位相を反転させることなく、少なくとも2つのトランスデューサの電気出力を直接重ね合わせることによって、音信号を表す電気信号を取得してもよい。電気信号を処理するためのより多くの説明は、本開示の他の箇所(例えば、
図15A~
図15C及び
図16A~
図16Bとそれらの説明)において見出すことができる。
【0106】
なお、マイクロフォン1400への上記説明は、単に例示の目的で提供されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本開示の教示に基づいて、複数の変更及び変形を行うことができる。しかしながら、これらの変更及び変形は、本開示の範囲から逸脱するものではない。例えば、少なくとも2つのトランスデューサ1420の1つ以上は、1つ以上の弾性要素に接続されてもよい。
【0107】
図15Aは、本開示のいくつかの実施形態による、マイクロフォンの一次共振周波数よりも小さい第1の周波数で動作するマイクロフォンのトランスデューサの振動状態を示す概略図である。
図15Bは、本開示のいくつかの実施形態による、マイクロフォンの一次共振周波数よりも大きく、マイクロフォンの二次共振周波数よりも小さい第2の周波数で動作するマイクロフォンのトランスデューサの振動状態を示す概略図である。例示の目的のために、骨伝導マイクロフォンを、トランスデューサの様々な振動状態を説明するための例として取り上げる。
図15A及び
図15Bに示すように、矢印Aは、マイクロフォン(例えば、マイクロフォン1400)のハウジングの振動方向を指す。トランスデューサ1521、1522、1523、…は、ハウジングにそれぞれ独立して固定されてもよい。便宜上、トランスデューサ1521、1522、1523、…は、それらの共振周波数の昇順にソートされてもよい。すなわち、トランスデューサ1521は、最小の共振周波数を有し、トランスデューサ1522は、2番目に小さい共振周波数を有する、等々である。簡潔のために、トランスデューサ1521の共振周波数は、マイクロフォンの一次共振周波数と呼ばれて、トランスデューサ1522の共振周波数は、マイクロフォンの二次共振周波数とも呼ばれる、等々である。
【0108】
各トランスデューサ(例えば、トランスデューサ1521、1522、又は1523)は、ハウジング1510から音信号を受信して振動して電気出力を生成してもよい。一般に、特定のトランスデューサからの電気出力の位相は、特定のトランスデューサの振動状態に関連し得る。例えば、ハウジングの振動方向に対する特定のトランスデューサの異なる振動方向は、特定のトランスデューサによって生成された電気出力の異なる位相をもたらす可能性がある。別の例として、特定のトランスデューサの異なる振動変位(又は変形度)は、特定のトランスデューサによって生成された電気出力の異なる強度を引き起こす可能性がある。
【0109】
特定のトランスデューサの振動状態と電気出力との関係を理解するために、ハウジング1510の振動方向を基準とすることができる。具体的には、特定のトランスデューサの振動方向がハウジング1510の振動方向と同じであると、特定のトランスデューサの電気出力の位相(θとして表される)は、0°とすることができる。特定のトランスデューサの振動方向がハウジング1510の振動方向と反対であると、特定のトランスデューサの電気出力の位相は、180°であり得る。
【0110】
図15Aに示すように、マイクロフォンがマイクロフォンの一次共振周波数よりも小さい第1の周波数で動作する場合、各トランスデューサは、ハウジング1510の振動方向と同じ振動方向を有することができる(すなわち、各トランスデューサの変形方向も
図15Aに示す矢印Aの方向である)。この場合、各トランスデューサの電気出力は、同じ位相を有し、θ=0°として表すことができる。しかしながら、
図15Bに示すように、マイクロフォンが、マイクロフォンの一次共振周波数よりも大きく、マイクロフォンの二次共振周波数よりも小さい第2の周波数で動作する場合、トランスデューサ1521の振動方向は、ハウジング1510の振動方向と反対で、残りのトランスデューサ(例えば、トランスデューサ1522、1523など)の各々の振動方向は、ハウジング1510の振動方向と同じであり得る。この場合、トランスデューサ1521の電気出力は、残りのトランスデューサと逆位相を有することができる。すなわち、トランスデューサ1521の電気出力の位相は、θ=180°として表し、残りのトランスデューサの各々の電気出力の位相は、θ=0°として表すことができる。
【0111】
例示の目的のために、トランスデューサ1521及び1522の電気出力を、例として取り上げることができる。トランスデューサ1521の電気出力(簡潔のために、「第1の電気出力」)とトランスデューサ1522の電気出力(簡潔のために、「第2の電気出力」)との重ね合わせは、式(6~8)に従って以下のように決定されてもよい:
【数37】
【数38】
【数39】
式中、
【数40】
は、第1の電気出力を表し、
【数41】
は、第2の電気出力を表し、
【数42】
は、第1の電気出力の第1の振幅を表し、
【数43】
は、第2の電気出力の第2の振幅を表し、
【数44】
は、第1の電気出力の第1の位相を表し、
【数45】
は、第2の電気出力の第2の位相を表し、
【数46】
は、第1の電気出力と第2の電気出力の総信号の振幅を表す。
【0112】
マイクロフォンが第1の周波数で動作する場合、第1の位相は、第2の位相と同じ、すなわち、
【数47】
であり、従って、
【数48】
である。マイクロフォンが第2の周波数で動作する場合、第1の位相は、第2の位相と反対で、すなわち、
【数49】
であり、そして
【数50】
であり、従って、
【数51】
である。このように、トランスデューサ1521の第1の電気出力とトランスデューサ1522の第2の電気出力が直接重ね合わせられる(すなわち、PNP処理モードを使用する)場合、マイクロフォンの総周波数応答曲線は、トランスデューサ1521及び1522の共振ピークの間に深い谷を形成して(すなわち、谷での第1の電気出力及び第2の電気出力の総信号は、第1の電気出力及び第2の電気出力のうちの1つよりも小さい)、例えば、
図15Cに示すように、マイクロフォンの総周波数応答曲線をより不均一にする可能性がある。
【0113】
図15Cは、本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの電気出力と周波数との関係をそれぞれ表す例示的な曲線と、電気出力のモジュラスと周波数との関係をそれぞれ表す例示的な曲線と、電気出力の総信号と周波数との関係を表す曲線とを示す概略図である。
図15Cに示すように、線1501及び1502の各々は、トランスデューサの電気出力と周波数との関係を表す曲線を表す。線1503及び1504の各々は、電気出力のモジュラスと周波数との関係を表す曲線を表し、この曲線は、トランスデューサの周波数応答曲線と呼ばれてもよい。線1505は、2つのトランスデューサの電気出力の総信号と周波数との関係を表す曲線を表し、この曲線は、2つのトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線と呼ばれてもよい。マイクロフォンの2つのトランスデューサは、減衰層を介して互いに接続しなくてもよい。総周波数応答曲線は、電気出力を直接重ね合わせることによって(すなわち、PNP処理モードを使用して)取得することができる。
図15Cによれば、あるトランスデューサの電気出力の位相は、振動周波数が上記トランスデューサの共振周波数よりも低い周波数からその共振周波数よりも高い周波数にシフトする場合、180°変更されてもよい(線1501及び1502を参照)。2つのトランスデューサの各々は、総周波数応答曲線に特有の共振ピークを提供してもよい。2つのトランスデューサの2つの共振周波数の間の深い谷により、(線1505で表される)2つのトランスデューサの共振ピークの間のマイクロフォンの感度は、(線1503又は1504で表される)2つのトランスデューサのいずれの感度よりも低くなり得る。結果として、単に少なくとも2つのトランスデューサの電気出力を直接重ね合わせることにより、少なくとも2つのトランスデューサを含むマイクロフォンの任意の2つの隣接する共振周波数の間に比較的深い谷が形成されて、マイクロフォンの周波数応答曲線が不均一になり、マイクロフォンの性能に深刻な影響を及ぼし得る。
【0114】
図15Dは、本開示のいくつかの実施形態による、3つのトランスデューサの例示的な変位曲線と、他の2つのトランスデューサに接続されたトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、3つのトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
図15Dに示すように、線1541、1542、及び1543は、3つのトランスデューサ(例えば、第1のトランスデューサ、第2のトランスデューサ、及び第3のトランスデューサ)の変位曲線をそれぞれ表す。線1544は、他の2つのトランスデューサに接続されるときのトランスデューサの周波数応答曲線を表す。線1545は、3つのトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線を表す。マイクロフォンの3つのトランスデューサは、少なくとも1つの減衰層を介して互いに物理的に接続されてもよい。本明細書における各トランスデューサは、電気出力を処理回路に出力するための出力トランスデューサとして機能してもよい。減衰層により、各トランスデューサは、振動を他のトランスデューサに伝達して、他のトランスデューサの各々に共振ピークを提供してもよい。このようにして、各トランスデューサは、(例えば、線1541、1542、又は1543で表される)3つのトランスデューサのうちの1つにそれぞれ対応する(例えば、線1544で表される)3つの共振ピークを有する電気出力を出力してもよい。処理回路は、PNP処理モードを使用して3つのトランスデューサの電気出力を処理して、マイクロフォンの総周波数応答曲線(すなわち、線1545)に対応する総信号を取得してもよい。しかしながら、電気出力の位相により、
図15A~
図15Cに記載されているように、マイクロフォンの任意の2つの隣接する共振周波数の間に比較的深い谷が形成され得る。従って、比較的平坦な総周波数応答曲線を得るために、3つのトランスデューサの各々の複合減衰を、1つ以上の追加の減衰層によって調整して、各トランスデューサのQ値を著しく減少させてもよい。結果として、マイクロフォンの感度は向上させ、マイクロフォンの総周波数応答曲線はより平坦になることができる。
【0115】
図15Eは、本開示のいくつかの実施形態による、弾性要素又は2つのトランスデューサの例示的な変位曲線と、他のトランスデューサ及び弾性要素に接続されたトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、2つのトランスデューサ及び弾性要素を含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
図15Eに示すように、線1561、1562、及び1563は、2つのトランスデューサ(例えば、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサ)及び弾性要素の変位曲線をそれぞれ表す。線1564は、他のトランスデューサ及び弾性要素に接続されるときのトランスデューサの周波数応答曲線を表す。線1565は、2つのトランスデューサ及び弾性要素を含むマイクロフォンの総周波数応答曲線を表す。マイクロフォンの2つのトランスデューサ及び弾性要素は、少なくとも1つの減衰層を介して互いに物理的に接続されてもよい。本明細書における各トランスデューサは、電気出力を処理回路に出力するための出力トランスデューサとして機能してもよい。減衰層により、各トランスデューサ及び弾性要素は、振動を他のトランスデューサ(すなわち、出力トランスデューサ)に伝達して、共振ピークを出力トランスデューサに提供してもよい。このようにして、各出力トランスデューサは、(例えば、線1561、1562、又は1563で表される)2つのトランスデューサ及び弾性要素のうちの1つにそれぞれ対応する(例えば、線1564で表される)3つの共振ピークを有する電気出力を出力してもよい。結果として、総周波数応答曲線(すなわち、線1565)の感度は、電気出力を処理回路によって直接重ね合わせることによって(すなわち、PNP処理モードを使用して)向上させることができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、マイクロフォンの任意の2つの隣接する共振周波数の間の谷を浅くするために、各トランスデューサ及び/又は弾性要素に1つ以上の減衰層を追加して、その複合減衰を調整してもよい。1つ以上の減衰層は、各トランスデューサ及び/又は弾性要素のQ値を減少させて、さらに平坦な総周波数応答曲線を得ることができる。いくつかの代替の実施形態では、各トランスデューサ及び/又は弾性要素の複合減衰を、1つ以上の減衰層によって調整して、各トランスデューサ及び/又は弾性要素のQ値を比較的高くしてもよく、その結果として、マイクロフォンの共振ピークは鋭くなり得る。さらに、マイクロフォンの共振周波数は、マイクロフォンの2つの隣接する共振周波数の間に適切な周波数間隔を提供するために、実際の必要に応じて設計されてもよい。総周波数応答曲線に対応する総信号は、処理回路によってさらに処理されて、
図15Fに関連して説明したようにマイクロフォンの性能を向上させることができる。
【0117】
図15Fは、本開示のいくつかの実施形態による、1つ以上の減衰層を介して互いに接続された複数のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、複数のトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
図15Fに示すように、線1571、1572、1573、及び1574の各々は、単一のトランスデューサ(すなわち、出力トランスデューサ)が1つ以上の他のトランスデューサに接続されるときの単一のトランスデューサ(すなわち、出力トランスデューサ)の周波数応答曲線を表す。線1575は、複数のトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線を表す。マイクロフォンの複数のトランスデューサは、1つ以上の減衰層を介して互いに接続されてもよい。本明細書における複数のトランスデューサの各々は、電気出力を処理回路に出力するための出力トランスデューサとして機能してもよい。マイクロフォンの総周波数応答曲線は、複数のトランスデューサの電気出力を直接重ね合わせることによって(すなわち、PNP処理モードを使用して)取得されてもよい。
図15Fによれば、線1571、1572、1573、1574、及び1575は、同じ数の共振ピークを有する。各共振ピークは、単一のトランスデューサに対応してもよい。いくつかの実施形態では、複数のトランスデューサの各々の複合減衰を、1つ以上の追加の減衰層によって調整して、複数のトランスデューサの各々のQ値を比較的高くしてもよく、その結果として、マイクロフォンの共振ピークは鋭くなり得る。さらに、複数のトランスデューサの共振周波数は、マイクロフォンの2つの隣接する共振周波数の間に適切な周波数間隔を提供するために、実際の必要に応じて設計されてもよい。例えば、収集される音声が主に500Hz~3000Hzの特定の周波数帯域にあれば、それに応じて、上記特定の周波数帯域内に共振周波数を備えたトランスデューサをより多く設定し、つまり、上記特定の周波数帯域内の隣接する2つの共振周波数の周波数間隔を比較的小さくしてもよい。このような場合、総周波数応答曲線(すなわち、線1575)に対応する総信号は、処理回路によってさらに処理されて、マイクロフォンの性能を向上させることができる。例えば、処理回路は、1つ以上のバンドパスフィルタにより、総信号に基づいてサブバンド信号を生成し、さらなる処理のためにサブバンド信号に対して1つ以上の機能(例えば、増幅、変調など)を実行して、マイクロフォンの感度を向上させることができる。
【0118】
図16Aは、本開示のいくつかの実施形態による、マイクロフォンの少なくとも2つのトランスデューサの少なくとも2つの電気出力を処理するための例示的なプロセスを示す概略図である。
図16Aに示すように、トランスデューサ1620-1、1620-2、1620-3、…、1620-nは、それらの共振周波数の昇順にソートされてもよい。各トランスデューサは、電気出力を出力してもよい。処理回路(例えば、処理回路1450)は、任意に一部の電気出力(例えば、トランスデューサ1620-2の電気出力)の位相を反転させ、別部分の電気出力(例えば、トランスデューサ1620-1及び/又は1620-3の電気出力)のの位相を維持してもよい。
【0119】
具体的には、
図16Aに示すように、対応する電気出力の処理モード、すなわち、トランスデューサの電気出力の位相を維持するか又は反転させるかは、各トランスデューサの周りにマークされた1対の記号「+」及び「-」の配置で示したとおりであってもよい。例えば、トランスデューサ1620-2の周りにマークされた記号の配置は、トランスデューサ1620-1の配置とは逆であり、すなわち、トランスデューサ1620-1の電気出力の処理モードは、トランスデューサ1620-2の電気出力の処理モードとは異なるとしてもよい。換言すれば、処理回路がトランスデューサ1620-1の電気出力の位相を維持すれば、処理回路は、トランスデューサ1620-2の電気出力の位相を反転させるとしもよい。処理回路がトランスデューサ1620-2の電気出力の位相を維持すれば、処理回路は、トランスデューサ1620-1の電気出力の位相を反転させるとしてもよい。本開示の他の箇所に記載されるように、一部の電気出力の位相を維持し、他の電気出力の別の部分の位相を反転させる処理モードは、正-負-負-正(PNNP)処理モードと呼ばれてもよい。いくつかの実施形態では、処理回路は、奇数位置に配置されたトランスデューサの電気出力の位相を反転させ、偶数位置に配置されたトランスデューサの電気出力の位相を維持してもよい。トランスデューサは、それらの共振周波数の昇順/降順でソートされてもよい。いくつかの実施形態では、処理回路は、任意の1つの電気出力(例えば、最大の共振周波数を有する電気出力)を反転させ、任意の1つの他の電気出力(例えば、最小の共振周波数を有する電気出力)を維持してもよい。
【0120】
例示の目的のために、トランスデューサ1620-1及び1620-2の電気出力を、例として取り上げることができる。処理回路が、トランスデューサ1620-1の第1の電気出力及びトランスデューサ1620-2の第2の電気出力を、PNNP処理モードを使用して処理する場合、すなわち、処理回路は、第1の電気出力の位相を維持し、第2の電気出力の位相を反転させてもよい。具体的には、この場合、マイクロフォンがマイクロフォンの一次共振周波数よりも低い第1の周波数で動作する場合、式(6-8)に従って、第1の位相は、
【数52】
として表され、反転された第2の位相は、
【数53】
として表されてもよい。マイクロフォンが、マイクロフォンの一次共振周波数よりも大きく、マイクロフォンの二次共振周波数よりも小さい第2の周波数で動作する場合、第1の位相は、反転された第2の位相と等しくてもよく、すなわち、
【数54】
であり、従って、
【数55】
である。なお、トランスデューサ1620-1及び1620-2の各々の感度は、一次共振周波数での感度と比較して、一次共振周波数の前の周波数帯域で比較的低くてもよい。周波数が一次共振周波数に近づくにつれて、総信号の決定的な成分が
【数56】
であるため、
【数57】
は依然として大きい可能性がある。一次共振周波数の後、第1の位相が
【数58】
に変化するため、
【数59】
である。結果として、PNNP処理モードを使用して第1の電気出力と第2の電気出力を重ね合わせる場合、マイクロフォンの総周波数応答は、トランスデューサ1620-1及び1620-2の共振周波数の間に浅い谷を有し(すなわち、谷での第1の電気出力及び第2の電気出力の総信号は、第1の電気出力及び第2の電気出力のいずれよりも強い)、これにより、例えば、
図16Bに示すように、マイクロフォンの総周波数応答曲線をより均一にすることができる。
【0121】
図16Bは、本開示のいくつかの実施形態による、トランスデューサの電気出力と周波数との関係をそれぞれ表す例示的な曲線と、電気出力のモジュラスと周波数との関係をそれぞれ表す例示的な曲線と、電気出力の総信号と周波数との関係を表す曲線とを示す概略図である。
図16Bに示すように、線1601及び1602の各々は、1つのトランスデューサの電気出力と周波数との関係を表す曲線を表す。線1603及び1604の各々は、電気出力のモジュラスと周波数との関係を表す曲線を表し、この曲線は、トランスデューサの周波数応答曲線と呼ばれてもよい。線1605は、2つのトランスデューサの電気出力の総信号と周波数との関係を表す曲線を表し、この曲線は、2つのトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線と呼ばれてもよい。マイクロフォンの2つのトランスデューサは、任意の減衰層を介して互いに接続しなくてもよい。総周波数応答曲線は、
図14及び
図16Aに記載されているように、PNNP処理モードを使用して取得されてもよい。
図16Bによれば、あるトランスデューサの電気出力の位相は、振動周波数が上記トランスデューサの共振周波数よりも低い周波数からその共振周波数よりも高い周波数にシフトする場合、180°変更されてもよい(線1601及び1602を参照)。2つのトランスデューサの各々は、総周波数応答曲線に特有の共振ピークを提供してもよい。PNNP処理モードによる2つのトランスデューサの2つの共振周波数の間の浅い谷により、(線1605で表される)2つのトランスデューサの共振ピークの間のマイクロフォンの感度は、(線1603又は1604で表される)2つのトランスデューサのいずれの感度よりも高くなり得る。結果として、少なくとも2つのトランスデューサを含むマイクロフォンの感度は、PNNP処理モードを使用して少なくとも2つのトランスデューサの電気出力を重ね合わせることにより、向上させることができる。例えば、少なくとも2つのトランスデューサの共振周波数を合理的に設定することにより、2つの隣接する共振周波数の間の総信号は、隣接する応答周波数の1つでの総信号に近く、これにより、マイクロフォンの総周波数応答を非常に敏感にし、周波数応答曲線を平坦にすることができる。
【0122】
図17Aは、本開示のいくつかの実施形態による、複数のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、複数のトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
図17Aに示すように、線1701、1702、1703、1704、1705、及び1706は、複数のトランスデューサの周波数応答曲線をそれぞれ表す。線1707は、複数のトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線を表す。マイクロフォンの複数のトランスデューサは、任意の減衰層を介して互いに接続しなくてもよい。総周波数応答曲線は、本開示の他の箇所(例えば、
図16A及びその説明)に記載されるように、PNNP処理モードを使用して取得されてもよい。
図17Aによれば、複数のトランスデューサの各々は、総周波数応答曲線に特有の共振ピークを提供してもよい。(線1707で表される)マイクロフォンの感度は、(線1701、1702、1703、1704、1705、又は1706で表される)複数のトランスデューサのいずれの感度よりも高くなり得る。PNNP処理モードによるマイクロフォンの任意の2つの隣接する共振周波数の間の谷は浅くなり得る。換言すれば、総周波数応答曲線は、比較的平坦になり得る。いくつかの実施形態では、複数のトランスデューサの少なくとも1つに減衰層を追加して、対応するトランスデューサのQ値を減少させてもよい。結果として、マイクロフォンの総周波数応答曲線は、より平坦になることができる(例えば、
図17Bを参照)。
【0123】
図17Bは、本開示のいくつかの実施形態による、減衰層を備えた複数のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、減衰層を備えた複数のトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
図17Bに示すように、線1711、1712、1713、1714、1715、及び1716は、減衰層を備えた複数のトランスデューサの周波数応答曲線をそれぞれ表す。線1717は、減衰層を備えた複数のトランスデューサを含むマイクロフォンの総周波数応答曲線を表す。複数のトランスデューサは、任意の減衰層を介して互いに接続しなくてもよい。マイクロフォンの複数のトランスデューサの各々は、1つ以上の減衰層に接続してもよい。1つ以上の減衰層は、各トランスデューサの複合減衰を調整して、各トランスデューサのQ値を減少させることができる。総周波数応答曲線は、本開示の他の箇所(例えば、
図16A及びその説明)に記載されるように、PNNP処理モードを使用して取得されてもよい。PNNP処理モードによるマイクロフォンの任意の2つの隣接する共振周波数の間の谷は浅くなり得る。結果として、複数のトランスデューサの各々の複合減衰を互いに独立して調整することにより、総周波数応答曲線の平坦性を調整してもよい。
【0124】
図17Cは、本開示のいくつかの実施形態による、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサの例示的な周波数応答曲線と、第1の弾性要素及び第2の弾性要素の例示的な変位曲線と、2つのトランスデューサ及び2つの弾性要素を含むマイクロフォンの総周波数応答曲線とを示す概略図である。
図17Cに示すように、線1751及び1753は、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサの周波数応答曲線をそれぞれ表す。線1752及び1754は、第1の弾性要素及び第2の弾性要素の変位曲線をそれぞれ表す。線1555は、2つのトランスデューサ及び2つの弾性要素を含むマイクロフォンの総周波数応答曲線を表す。第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサは、マイクロフォン内に独立して配置されてもよい。第1の弾性要素は、第1のトランスデューサに接続されてもよく、第2の弾性要素は、減衰層を介して第2のトランスデューサに接続されてもよい。各弾性要素は、振動を対応するトランスデューサに伝達して、対応するトランスデューサに特有の共振ピークを提供してもよい。このようにして、各トランスデューサは、2つの共振ピークを有する電気出力を出力してもよい。トランスデューサの電気出力の共振周波数が互いに交差しないため、総周波数応答曲線の感度は、本開示の他の箇所(例えば、
図16A及びその説明)に記載されるように、PNNP処理モードを使用して向上されてもよい。いくつかの実施形態では、トランスデューサ及び/又は弾性要素の複合減衰を、減衰層(例えば、トランスデューサ及び対応する弾性要素に接続された減衰層又は1つ以上の追加の減衰層)によって調整してもよい。減衰層は、各トランスデューサ及び/又は各弾性要素のQ値を減少させることができる。結果として、
図15A~
図15Cに記載されているように引き起こされた第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサの電気出力の2つの隣接する共振周波数の間の深い谷は、回避され得る。換言すれば、総周波数応答曲線は、比較的平坦になり得る。
【0125】
図18Aは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図18Aに示すように、マイクロフォン1400は、ハウジング1410及び3つのカンチレバートランスデューサ1420を含んでもよい。3つのカンチレバートランスデューサ1420の各々は、一端でハウジング1410に接続されてもよい。各カンチレバートランスデューサは、音信号に応答して振動し、電気出力を処理回路1450に出力してもよい。処理回路は、PNNP処理モードを使用して電気出力を処理してもよい。この場合、各カンチレバートランスデューサは、マイクロフォン1400に特有の共振ピークを提供してもよい。換言すれば、マイクロフォン1400の周波数応答曲線は、1つのカンチレバートランスデューサにそれぞれ対応する3つの共振ピークを含んでもよい。
【0126】
図18Bは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図18Bに示すように、マイクロフォン1400は、ハウジング1410及び3つのトランスデューサ1420を含んでもよい。各トランスデューサは、音信号に応答して振動してもよい。例えば、骨伝導マイクロフォンの場合、3つのトランスデューサ1420の各々は、ハウジングに直接取り付けられ、ハウジング1410の振動によって振動してもよい。気導マイクロフォンの場合、ハウジング1410は、気導音を取り込む1つ以上の開口部を含んでもよく、3つのトランスデューサ1420の各々は、ハウジング1410内の空気振動に応答して振動してもよい。
図18Aと同様に、各トランスデューサが電気出力を処理回路に出力し、処理回路がPNNP処理モードを使用して電気出力を処理して、3つのトランスデューサに対応する共振ピークを有するマイクロフォン1400の周波数応答曲線を形成してもよい。
【0127】
図18Cは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図18Cに示すように、マイクロフォン1400は、ハウジング1410及び3つのトランスデューサ1420を含んでもよい。ハウジング1410は、トランスデューサをそれぞれ収容し得る3つの収容空間を含んでもよい。
図18Bと同様に、各トランスデューサは、音信号に応答して電気出力を出力し、電気出力を処理回路に送信してもよい。処理回路がPNNP処理モードを使用して電気出力を処理して、3つのトランスデューサに対応する共振ピークを有するマイクロフォン1400の周波数応答曲線を形成してもよい。
【0128】
図18Dは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図18Dに示すように、マイクロフォン1400は、3つの収容空間を含むハウジング1410、及びハウジング1410にそれぞれ接続する6つのトランスデューサ1420を含んでもよい。3つの収容空間の各々は、6つのトランスデューサ1420のうちの2つに対応してもよい。6つのトランスデューサ1420の各々は、3つのトランスデューサ1420の各々の両端でハウジング1410に固定されてもよい。
【0129】
図19は、本開示のいくつかの実施形態による、異なるトランスデューサの例示的な周波数応答曲線を示す概略図である。
図19に示すように、線1901、1902、及び1903は、トランスデューサ1、トランスデューサ2、及びトランスデューサ3の周波数応答曲線をそれぞれ表す。線1904は、トランスデューサ1、トランスデューサ2、及びトランスデューサ3を含むマイクロフォンの総周波数応答曲線を表す。マイクロフォンのトランスデューサ1、トランスデューサ2、及びトランスデューサ3は、任意の減衰層を介して互いに接続しなくてもよい。本明細書における各トランスデューサは、出力トランスデューサとして機能して、電気出力を処理回路に出力してもよい。処理回路は、
図16Aに記載されているように、PNNP処理モードを使用して電気出力を処理して総信号を生成してもよい。このようにして、総信号に対応する総周波数応答曲線は、トランスデューサに対応する共振ピークを有してもよい。
図19によれば、各トランスデューサは、総周波数応答曲線に特有の共振ピークを提供してもよい。(線1904で表される)マイクロフォンの感度は、(線1901、1902、又は1903で表される)トランスデューサのいずれの感度よりも高くなり得る。総周波数応答曲線は、トランスデューサの各周波数応答曲線よりも平坦になり得る。
【0130】
図20Aは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図20Aに示すように、マイクロフォン1400は、ハウジング1410、ハウジング1410にそれぞれ接続する2つのカンチレバートランスデューサ1420、及び2つのカンチレバートランスデューサ1420の各々に接続され、ハウジング1410から切断された減衰層1430を含んでもよい。
図8と同様に、2つのカンチレバートランスデューサ1420は、減衰層1430の対向側に配置されてもよい。減衰層1430は、2つのカンチレバートランスデューサ1420の一方の上面及び2つのカンチレバートランスデューサ1420の他方の下面を覆ってもよい。2つのカンチレバートランスデューサ1420の各々は、一端(「固定端」とも呼ばれる)でハウジング1410に固定されてもよい。この場合、各カンチレバートランスデューサが、(固定端を介して)ハウジング1410及び(減衰層を介して)他のカンチレバートランスデューサの振動に応答して振動することにより、各カンチレバートランスデューサ1420に2つの共振ピークを有する電気出力を生成させてもよい。2つの電気出力の総信号に対応する周波数応答曲線の感度は、2つの電気出力を直接重ね合わせることによって(すなわち、PNP処理モードを使用して)向上させることができる。さらに、減衰層130は、出力トランスデューサのQ値の減少に役立って、マイクロフォンの周波数応答をより平坦にすることができる。
【0131】
図20Bは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図20Bに示すように、マイクロフォン1400は、ハウジング1410、2つのカンチレバートランスデューサ1420、2つの減衰層1430、及び弾性要素1440を含んでもよい。
図12Cと同様に、2つのカンチレバートランスデューサ1420、弾性要素1440、及び2つの減衰層1430は、サンドイッチ構造を形成してもよい。弾性要素1440は、例えば、ハウジング1410内の空気振動に応答して振動して、その振動を、減衰層1430に伝達し、さらに2つのトランスデューサ1420に伝達してもよい。本明細書における各トランスデューサは、出力トランスデューサとして機能してもよく、弾性要素1440及び2つのトランスデューサ1420の他方の振動は、出力トランスデューサに2つの特有の共振ピークを提供してもよい。従って、出力トランスデューサは、3つの共振周波数を備えた電気出力を出力してもよい。2つの電気出力の総信号に対応する周波数応答曲線の感度は、2つの電気出力を直接重ね合わせることによって(すなわち、PNP処理モードを使用して)向上させることができる。さらに、減衰層130は、出力トランスデューサのQ値の減少に役立って、マイクロフォンの周波数応答をより平坦にすることができる。
【0132】
図20Cは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図20Cに示すように、マイクロフォン1400は、ハウジング1410、2つのカンチレバートランスデューサ1420、2つの減衰層1430、及び2つの弾性要素1440を含んでもよい。2つのカンチレバートランスデューサ1420及び2つの弾性要素1440の各々は、ハウジング1410にそれぞれ接続してもよい。2つのカンチレバートランスデューサ1420の各々は、2つの弾性要素1440の一方に接続してもよい。
図20Cに示すように、2つのカンチレバートランスデューサ1420の各々、対応する弾性要素1440及び減衰層1430は、サンドイッチ構造を形成してもよい。弾性要素は、対応するカンチレバートランスデューサに特有の共振ピークを提供してもよい。従って、各カンチレバートランスデューサは、2つの共振周波数を備えた電気出力を出力してもよい。2つのカンチレバートランスデューサ1420の電気出力の共振周波数が互いに交差しなければ、2つの電気出力の総信号に対応する周波数応答曲線の感度は、PNNP処理モードを使用して向上させることができる。任意に、2つのカンチレバートランスデューサ1420の電気出力の共振周波数が互いに交差すれば、2つの電気出力の総信号に対応する周波数応答曲線の感度は、任意の電気出力の位相を反転させることなく、2つの電気出力を直接重ね合わせることによって向上させることができる。さらに、減衰層130は、出力トランスデューサのQ値の減少に役立って、マイクロフォンの周波数応答をより平坦にすることができる。
【0133】
図20Dは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図20Dに示すように、マイクロフォン1400は、ハウジング1410、2つのカンチレバートランスデューサ1420、及び2つの減衰層1430を含んでもよい。2つのカンチレバートランスデューサ1420の各々は、ハウジング1410に接続してもよい。2つのカンチレバートランスデューサ1420の各々は、2つの減衰層1430の一方に接続してもよい。各減衰層は、対応するカンチレバートランスデューサの複合減衰を調整して、対応するカンチレバートランスデューサのQ値を減少させてもよい。従って、PNNP処理モードを使用して処理された後、2つのカンチレバートランスデューサの2つの電気出力の総信号に対応する周波数応答曲線は、より平坦になることができる。
【0134】
図20Eは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なマイクロフォンを示す構造概略図である。
図20Eに示すように、マイクロフォン1400は、ハウジング1410、2つのカンチレバートランスデューサ1420(例えば、第1のトランスデューサ及び第2のトランスデューサ)、弾性要素1440、及び4つの減衰層1430を含んでもよい。2つのカンチレバートランスデューサ1420及び弾性要素1440の各々は、ハウジング1410にそれぞれ接続してもよい。2つのカンチレバートランスデューサ1420(例えば、第1のトランスデューサ)の一方は、減衰層(例えば、第1の減衰層)を介して弾性要素1440に接続してもよい。弾性要素1440は、例えば、ハウジング1410内の空気振動に応答して振動して、その振動を、第1の減衰層に伝達し、さらに第1のトランスデューサに伝達してもよい。弾性要素1440の振動は、第1のトランスデューサに特有の共振ピークを提供してもよい。本明細書における各トランスデューサは、出力トランスデューサとして機能してもよい。従って、第1のトランスデューサは、2つの共振周波数を備えた第1の電気出力を出力し、第2のトランスデューサは、1つの共振周波数を備えた第2の電気出力を出力してもよい。さらに、4つの減衰層は、対応するカンチレバートランスデューサ及び弾性要素1440の複合減衰を調整して、対応するカンチレバートランスデューサ及び弾性要素1440のQ値を減少させることができる。従って、2つのカンチレバートランスデューサ1420の電気出力の共振周波数が互いに交差しない場合、PNNP処理モードを使用して処理された後、2つのカンチレバートランスデューサの2つの電気出力の総信号に対応する周波数応答曲線の感度は向上させることができる。
【0135】
なお、本開示に記載される例示的なマイクロフォン1400は、単に例示の目的で提供されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本開示の教示に基づいて、複数の変更及び変形を行うことができる。しかしながら、これらの変更及び変形は、本開示の範囲から逸脱するものではない。例えば、マイクロフォン1400のハウジング1410は、(例えば、マイクロフォン1400が気導マイクロフォンである場合に)音信号をハウジング1410に導いてハウジング1410内の任意のトランスデューサを振動させて電気出力を出力するための1つ以上の開口部を含んでもよい。このような場合、上記カンチレバートランスデューサは、空気振動に対してより敏感なダイアフラムに置き換えられてもよい。別の例として、マイクロフォン1400は、マイクロフォン100と同じ構造(例えば、
図6A~
図6C、
図7A~
図7C、
図8、
図9A~
図9C、
図10A~
図10D、
図12A~
図12Dなどに示される構造)を含んでもよい。マイクロフォン1400に含まれる各トランスデューサは、電気出力を出力してもよい。更なる例として、異なるトランスデューサは、異なるタイプのものであってもよい。マイクロフォン1400内のトランスデューサは、骨伝導トランスデューサ、気導トランスデューサ、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。なお更なる例として、異なる減衰層は、同じ又は異なる材料で製造されてもよい。各減衰層は、任意にハウジングに接続されてもよく、それから切断されてもよい。減衰層、トランスデューサ、又は弾性要素の数は限定されなく、トランスデューサ及び/又は弾性要素に対する減衰層の位置は、実際の必要に応じて調整されてもよい。
【0136】
このように、基本的な概念を説明したが、当業者であれば、本明細書の詳細な開示を読んだ後、前述の詳細な開示が単なる例として提示されることを意図し、限定的なものではないことが明らかであろう。本明細書に明示的に記載していないが、当業者には、様々な変更、改良及び変形が想到され、意図されるであろう。これらの変更、改良及び変形は、本開示に示唆されることを意図し、本開示の例示的な実施形態の精神及び範囲内にある。
【0137】
また、本開示の実施形態を説明するために所定の用語が使用されている。例えば、「一実施形態」、「1つの実施形態」、及び/又は「いくつかの実施形態」という用語は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書の様々な部分における「1つの実施形態」、「一実施形態」又は「代替実施形態」への2つ以上の参照は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではないことが強調され、理解されるべきである。さらに、特定の特徴、構造及び特性は、本開示の1つ以上の実施形態において適宜組み合わせてもよい。
【0138】
また、当業者によって理解されるように、本開示の態様は、任意の新規で有用なプロセス、機械、製造工程、若しくは物質の組成、又は任意の新規で有用なその改善を含む、いくつかの特許性のある種類又は状況のうちの任意のものにおいて、本明細書において図示及び説明することができる。従って、本開示の態様は、全体的にハードウェア又はソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)によって実装されてもよく、又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実装されてもよく、これらは全て、本明細書では一般に「ブロック」、「モジュール」、「エンジン」、「ユニット」、「コンポーネント」又は「システム」と呼ぶことができる。さらに、本開示の態様は、そこに具体化されたコンピュータ可読プログラムコードを有する、1つ以上のコンピュータ可読媒体内に具体化されたコンピュータプログラム製品の形態をとってもよい。
【0139】
コンピュータ可読信号媒体は、例えば、ベースバンドで、又は搬送波の一部として、コンピュータ可読プログラムコードがその中に具現化された伝搬データ信号を含んでもよい。このような伝搬信号は、電磁的、光学的など、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含む様々な形態のいずれをとることができる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではないが、命令実行システム、装置、又はデバイスによって、又はこれらに関連して使用するためのプログラムの通信、伝搬、又は伝送が可能な任意のコンピュータ可読媒体であってもよい。コンピュータ可読信号媒体に具現化されたプログラムコードは、無線、有線、光ファイバケーブル、RFなど、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含む任意の適切な媒体を用いて送信されてもよい。
【0140】
本開示の態様における動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java、Scala、SmallTalk、Eiffel、JADE、Emerald、C++、C#、VBなどのオブジェクト指向プログラミング言語を含む1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されてもよい。NET、Pythonなど、「C」プログラミング言語、Visual Basic、Fortran 1703、Perl、COBOL 1702、PHP、ABAPなどの従来の手続型プログラミング言語、Python、Ruby、Groovyなどの動的プログラミング言語、又はその他のプログラミング言語がある。プログラムコードは、その全体がユーザコンピュータ上で実行されるものであってもよく、その一部がスタンドアローンのソフトウェアパッケージとしてユーザコンピュータ上で実行されるものであってもよく、その一部がユーザコンピュータ上で、他の一部がリモートコンピュータ上で実行されるものであってもよく、その全体がリモートコンピュータ又はサーバ上で実行されるものであってもよい。後者の場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザコンピュータに接続されてもよく、この接続は、外部コンピュータ(例えば、インターネットサービスプロバイダを利用したインターネットを介して)やクラウドコンピューティング環境で行われてもよく、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)などのサービスとして提供されてもよい。
【0141】
さらに、処理要素もしくはシーケンスの記述された順序、又は数字、文字、もしくはその他の指定の使用は、特許請求の範囲に指定されている場合を除き、特許請求されるプロセス及び方法をいずれの順序に限定することを意図するものではない。上記開示は、本開示の様々な有用な実施形態であると現在のところ考えられる様々な具体例によって議論されているが、そのような詳細事項は説明のためであるに過ぎず、添付の特許請求の範囲は開示される実施形態に限定されず、むしろ、開示される実施形態の精神及び範囲内の変形及び均等な配置を包含するように意図されることが理解されるべきである。例えば、上述した各構成要素の実装は、ハードウェアデバイスに具現化されてもよいが、ソフトウェア-唯一の解決法-例えば、既存のサーバ又はモバイルデバイスへのインストールとして実装されてもよい。
【0142】
同様に、本開示の実施形態の前述の説明において、様々な特徴は、様々な実施形態のうちの1つ以上の理解を助ける開示を簡略化するために、単一の実施形態、図面、又はその説明にまとめられている場合があることが理解されるべきである。しかしながら、本開示の方法は、特許請求される主題が、各請求項に明示的に記載されたものよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映しているものとして解されるべきでない。むしろ、特許請求される主題は、先に開示された単一の実施形態の全ての特徴よりも少ない特徴を含んでもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、本願の特定の実施形態を説明及び特許請求するために使用される量又は特性を表す数字は、場合によっては、「約」、「近似値」又は「実質的に」という用語によって変更されると理解されるべきである。例えば、「約」、「近似値」又は「実質的に」は、特に明記されていない限り、記載されている値の±20%の変動を示してもよい。従って、いくつかの実施形態では、明細書の記載及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、特定の実施形態によって得られるように求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、そして通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。本願のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにも関わらず、特定の例に示される数値は、実行可能な限り正確に報告される。
【0144】
本明細書で参照される、特許、特許出願、公開特許公報、及びその他の資料、例えば、論文、書物、仕様書、刊行物、文献、物などの各々は、それらに関連した任意の出願経過書類、本文書と不一致であるか又は矛盾するそれらのいずれか、あるいは本文書と今又は後ほど関連がある請求項の最も広い範囲に関して制限的な影響を及ばし得るそれらのいずれかを除き、この参照により、その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる。例として、組み込まれている資料のいずれかに関連する記述、定義、及び/又は用語の使用と本文書に関連するものとの間に何らかの不一致又は矛盾がある場合、本文書における記述、定義、及び/又は用語の使用を優先するものとする。
【0145】
最後に、本明細書に開示されている本願の実施形態は本願の実施形態の原理を例示するものであることが理解されるべきである。採用され得る他の変更は、本願の範囲内であり得る。従って、限定するものではなく、例として、本明細書における教示に従って本願の実施形態の代替の構成を利用することができる。従って、本願の実施形態は、示され、記載されているものに正確には限定されない。
【符号の説明】
【0146】
100 マイクロフォン
110 ハウジング
120 トランスデューサ
130 減衰層
140 弾性要素
150 処理回路
1400 マイクロフォン
1410 ハウジング
1420 トランスデューサ
1430 減衰層
1440 弾性要素
1450 処理回路
1510 ハウジング
1521 トランスデューサ
1522 トランスデューサ
1523 トランスデューサ
1620 トランスデューサ