(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】オゾン発生装置
(51)【国際特許分類】
C01B 13/11 20060101AFI20240125BHJP
G05D 21/00 20060101ALI20240125BHJP
G05D 21/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C01B13/11 K
G05D21/00 A
G05D21/02
(21)【出願番号】P 2022541114
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016681
(87)【国際公開番号】W WO2022030050
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2020132350
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳竹 滋和
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-500855(JP,A)
【文献】国際公開第2011/065088(WO,A1)
【文献】特開2009-046345(JP,A)
【文献】特開2005-126267(JP,A)
【文献】国際公開第2015/049780(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103885511(CN,A)
【文献】特開昭54-155991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/10 - 13/11
A61L 9/00 - 9/22
G05B 1/00 - 7/04
G05B 11/00 - 13/04
G05B 17/00 - 17/02
G05B 21/00 - 21/02
G05D 9/00 - 11/16
G05D 21/00 - 21/02
G05D 24/00 - 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、該電源部の電源出力に応じてオゾンガスを生成するオゾン発生部とを備えたオゾン発生装置であって、
オゾン発生部で生成したオゾンガス中のオゾン濃度を検出オゾン濃度として検出する濃度検出部と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記電源出力と、該電源出力に対応するオゾン濃度との関係を示す2つ以上の関数を、オゾン発生部における異なるガス流量に応じて記憶する記憶部を有するとともに、
オゾン発生部の設定オゾン濃度と、前記オゾン発生部のガス流量を示す指標と、前記検出オゾン濃度と、前記複数の関数とに基づいて、前記設定オゾン濃度に対応する第1電源出力と、前記検出オゾン濃度に対応する第2電源出力とを求め、該第1電源出力と前記第2電源出力との差に基づいて前記電源出力を制御するフィードバック制御を実行するオゾン発生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記記憶部は、互いに異なるガス流量に応じた3つ以上の関数を記憶するオゾン発生装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記複数の関数のそれぞれは、電源出力と、該電源出力に対応するオゾン濃度とを示す複数の点を直線的に結んだ関数であるオゾン発生装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つにおいて、
前記制御装置は、前記ガス流量を示す指標が所定値以上変化する第1条件、及び前記設定オゾン濃度が所定値以上変化する第2条件の少なくとも一方が成立すると、前記電源出力を該第1電源出力に近づけるように制御するフィードフォワード制御を実行するオゾン発生装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つにおいて、
前記制御装置は、前記ガス流量を変更しながら前記検出オゾン濃度を検出することにより、前記複数の関数を自動的に取得する自動取得運転を実行するオゾン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンガスを発生するオゾン発生装置は、半導体の製造プロセス等に広く用いられている。特許文献1のオゾン発生装置には、フィードバック制御により、オゾン発生装置の電源出力を制御する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなフィードバック制御では、設定オゾン濃度と、検出オゾン濃度とを比較し、検出オゾン濃度が設定オゾン濃度に近づくように、オゾン発生装置の電源出力を増減させる。しかしながら、オゾン発生部を流れるガス流量を十分に考慮しない場合、フィードバック制御により電源出力を最適に調節できないことがある。
【0005】
具体的には、ガス流量が比較的小さい条件下では、電源出力の変化に対してオゾン濃度が大きく変化する。したがって、このような条件下では、電源出力の調節に応じてオゾン濃度がハンチングしやすくなる。また、ガス流量が比較的大きい条件下では、電源出力の変化に対してオゾン濃度がさほど変化しない。したがって、このような条件下では、電源出力の調節量が不十分となり、オゾン濃度がなかなか設定オゾン濃度に近づかない。このため、従来のフィードバック制御では、オゾン濃度を速やかに設定オゾン濃度に収束させることができなかった。
【0006】
本開示は、このような課題に着目したものであり、その目的は、フィードバック制御により、ガス流量の変化に関係なくオゾン濃度を速やかに設定オゾン濃度に収束させることができるオゾン発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のオゾン発生装置では、オゾン発生部の設定オゾン濃度と、前記オゾン発生部のガス流量を示す指標と、前記検出オゾン濃度と、複数の関数とに基づいて、前記設定オゾン濃度に対応する第1電源出力と、前記検出オゾン濃度に対応する第2電源出力とを求め、該第1電源出力と前記第2電源出力との差に基づいて前記電源出力を制御するフィードバック制御を実行するようにした。
【0008】
これにより、オゾン発生部のガス流量が変化したとしても、複数の関数に基づき、ガス流量に応じた電源出力の最適な調節量を求めることができる。このため、検出オゾン濃度を速やかに設定オゾン濃度に収束させることができる。
【0009】
記憶部は、互いに異なるガス流量に応じた3つ以上の関数を記憶するのが好ましい。
【0010】
ガス流量に応じた3つ以上の関数を用いることで、より細かいガス流量の変化に追従できる。これにより、電源出力のより最適な調節量を求めることができる。
【0011】
複数の関数のそれぞれは、電源出力と、該電源出力に対応するオゾン濃度とを示す複数の点を直線的に結んだ関数であるのが好ましい。
【0012】
これにより、関数の簡素化を図ることができ、関数の作成に伴う演算処理の負荷を軽減できる。
【0013】
制御装置は、ガス流量を示す指標が所定値以上変化する第1条件、及び設定オゾン濃度が所定値以上変化する第2条件の少なくとも一方が成立すると、電源出力を第1電源出力に近づけるように制御するフィードフォワード制御を実行する。
【0014】
第1条件、あるいは第2条件が成立すると、検出オゾン濃度と設定オゾン濃度との差が大きくなり、上述のフィードバック制御では、検出オゾン濃度が設定オゾン濃度になかなか収束しない可能性がある。第1条件及び第2条件の少なくとも一方が成立すると、電源出力を設定オゾン濃度に対応する第1電源出力に近づけることで、検出オゾン濃度を設定オゾン濃度に速やかに近づけることができる。
【0015】
制御装置は、ガス流量を変更しながら検出オゾン濃度を検出することにより、複数の関数を自動的に取得する自動取得運転を実行するのが好ましい。
【0016】
この自動取得運転により、オゾン発生装置を現地に据え付けた後、複数の関数を自動的に作成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィードバック制御により、オゾン濃度を速やかに収束させることができるオゾン発生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係るオゾン発生装置が適用されるオゾン発生システムの概略の全体構成図である。
【
図2】
図2は、記憶部に記憶される複数の関数の特性を表すグラフである。
【
図3】
図3は、新たに作成される複数の関数を追加した
図2に相当するグラフである。
【
図4】
図4は、オゾン発生装置の運転の基本のフローチャートである。
【
図5】
図5は、フィードフォワード制御のフローチャートである。
【
図6】
図6は、フィードバック制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
《発明の実施形態》
本実施形態のオゾン発生装置20は、オゾンガス生成システムSに組み込まれる。オゾンガス生成システムSは、例えば半導体の製造設備に適用される。オゾンガス生成システムSは、第1流路11と、第2流路12とを有する。第1流路11は、オゾン発生部22の上流側に設けられる。第2流路12は、オゾン発生部22の下流側に設けられる。
【0021】
第1流路11は、原料ガスが流れる流路である。第1流路11には、酸素を含む原料ガスが供給される。原料ガスとしては、高純度の酸素ガス(99.9%以上)が用いられる。原料ガスは、PSA(pressure swing adsorption)式などの酸素発生装置で生成された濃縮酸素ガスであってもよい。原料ガスは、空気であってもよい。
【0022】
第2流路12は、オゾン発生部22で生成したオゾンガスが流れる流路である。オゾンガスは、第2流路12を介して所定の対象へ供給される。第2流路12には、圧力調節弁13が設けられる。
【0023】
〈オゾン発生装置〉
オゾン発生装置20は、オゾンガスを生成する。オゾン発生装置20は、電源部21、オゾン発生部22、流量検出部23、濃度検出部24、圧力検出部25、及び制御装置30を備える。
【0024】
電源部21は、高周波高圧電源で構成される。電源部21は、高圧の電源出力をオゾン発生部22に供給する。
【0025】
オゾン発生部22は、放電によってオゾンを発生する。オゾン発生部22は、無声放電方式である。オゾン発生部22には、第1流路11の原料ガスが供給される。電源部21から放電セルへ電力が供給されると、少なくとも一対の電極ユニットの間で放電が行われる。この放電に伴い原料ガス中の一部がオゾンに変換される。オゾン発生部22で発生したオゾンは、第2流路12を介して所定の対象へ供給される。
【0026】
流量検出部23は、第1流路11を流れる原料ガスの流量を検出ガス流量として検出する。検出ガス流量は、オゾン発生部22を流れるガス流量を示す指標である。
【0027】
濃度検出部24は、第2流路12を流れるオゾンガス中のオゾン濃度を検出オゾン濃度Cdとして検出する。
【0028】
圧力検出部25は、第2流路12の圧力を検出圧力として検出する。
【0029】
制御装置30は、マイクロコンピュータ及びメモリディバイスを含む。メモリディバイスは、マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納する。
【0030】
制御装置30には、検出ガス流量、検出オゾン濃度Cd、及び検出圧力が入力される。
【0031】
制御装置30は、設定部31と、演算部32と、記憶部33と、出力制御部34とを有する。
【0032】
設定部31には、対象へ供給するオゾンガス中のオゾン濃度の目標値が、設定オゾン濃度Csとして設定される。設定部31には、詳細は後述する複数の関数を作成するためのデータが入力される。
【0033】
演算部32は、電源出力と、該電源出力に対応するオゾン濃度との関係を示す2つ以上の関数を、オゾン発生部における異なるガス流量に応じて作成する。ここで、「電源出力に対応するオゾン濃度」とは、所定の電源出力でオゾン発生部を運転したときに、この電源出力に応じてオゾン発生部で発生するオゾンガスのオゾン濃度を意味する。
【0034】
記憶部33は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)などを含む。記憶部33には、演算部32で作成した複数の関数が記憶される。
【0035】
出力制御部34は、電源部21の電源出力(放電出力)を制御する。電源出力が変化すると、オゾン発生部22で発生するオゾンの量が変化する。これに伴い、対象へ供給されるオゾンガス中のオゾン濃度が変化する。
【0036】
出力制御部34は、電源出力をフィードバック制御する。加えて、出力制御部34は、詳細は後述する第1条件及び第2条件の少なくとも一方が成立すると、電源出力をフィードフォワード制御する。出力制御部34は、記憶部33に記憶された複数の関数に基づいて、フィードバック制御及びフィードフォワード制御を実行する。
【0037】
〈複数の関数について〉
図2に示すように、記憶部33には、複数の関数が記憶される。これらの関数は、演算部32によって作成される。本実施形態では、人(ユーザ、据え付け業者、メンテナンス業者等)が設定部31に入力したデータに基づいて、演算部32が複数の関数を作成する。
【0038】
複数の関数は、電源部21の電源出力と、この電源出力に対応するオゾン濃度との関係を示す情報である。これらの関数は、ガス流量に応じて定められる。これらの関数は、電源出力が大きくなるにしたがって、オゾン濃度が大きくなる特性を有する。加えて、これらの関数は、電源出力が大きくなるにしたがって、傾きが小さくなる特性を有する。これらの関数の傾きは、ガス流量が小さくなるにしたがって大きくなる傾向にある。
【0039】
本実施形態では、記憶部33に3つの関数が記憶される。3つの関数は、第1関数R1、第2関数R2、及び第3関数R3で構成される。
【0040】
第1関数R1は、オゾン発生部22の最大ガス流量に対応している。本例の第1関数R1は、50L/minのガス流量に対応している。第3関数R3は、最小ガス流量に対応している。本例の第3関数は、10L/minのガス流量に対応している。第2関数R2は、最大ガス流量と最小ガス流量との間の中間ガス流量に対応している。本例の第2関数R2は、30L/minのガス流量に対応している。
【0041】
最大ガス流量、最小ガス流量、及び中間ガス流量は、オゾン発生装置20の実際の運転時において、オゾン発生部22を流れる頻度が高いガス流量であることが好ましい。最大ガス流量は、オゾン発生部22に供給可能な最も高いガス流量であることが好ましい。最小ガス流量は、オゾン発生部22に供給可能な最も低いガス流量、あるいはそれ以下であることが好ましい。
【0042】
3つの関数は、オゾン濃度発生点、最大点、第1中間点、及び第2中間点に基づいて定められる。オゾン濃度発生点は、オゾン発生部22でオゾンを生成するために必要な最小の電源出力と、この電源出力に対応するオゾン濃度とを示す点である。オゾン濃度発生点は、電源部21などの構造や方式によって定まり、ガス流量に応じて大きく変動しない。このため、オゾン濃度発生点は、ガス流量によらず同じ値としてもよい。本例のオゾン濃度発生点の電源出力は20%である。
【0043】
最大点は、電源部21の最大の電源出力と、この電源出力に対応するオゾン濃度とを示す点である。最大点の電源出力は100%である。第1中間点及び第2中間点は、オゾン濃度発生点と、最大点との間の所定の電源出力に対応する点である。本例では、第1中間点の電源出力が50%であり、第2中間点の電源出力が70%である。
【0044】
人は、複数のガス流量毎のオゾン濃度発生点、最大点、第1中間点、及び第2中間点を制御装置30に設定する。これらの点は、オゾン発生装置20を設備に据え付けた後、ガス流量に応じて求められる実測値に基づいて定められる。
【0045】
演算部32は、これらの点に基づいて、複数のガス流量毎に複数の関数を作成する。具体的には、演算部32は、最大ガス流量、最小ガス流量、中間ガス流量のそれぞれにおける各点を直線で結ぶことで、曲線に近い関数を作成する。
【0046】
図2において、一点鎖線k、l、mは、ガス流量に応じた電源出力とオゾン濃度との関係を実験的に得たグラフである。k、l、mは、3つの関数よりも細かい間隔で電源出力を変更し、電源出力とオゾン濃度との関係をより正確に特定したものである。kは、ガス流量50L/minに対応し、lはガス流量30L/minに対応し、mはガス流量10L/minに対応している。
図2から明らかなように、演算部32により得た3つの関数は、それぞれのグラフk、l、mとほぼ一致している。したがって、3つの関数によりガス流量に応じたオゾン濃度と電源出力の関係を正確に特定できることがわかる。
【0047】
-運転動作―
オゾン発生装置20の運転動作について
図3~
図6を参照しながら詳細に説明する。
【0048】
本実施形態のオゾン発生装置20の運転前には、上述したようにして取得した3つの関数が記憶部33に記憶される。
【0049】
図4に示すように、オゾン発生装置20の運転が開始されると(ステップST1のYES)、ステップST2へ移行し、フィードフォワード制御が実行される。
【0050】
図5に示すように、フィードフォワード制御では、ステップST11において、演算部32がガス流量に応じた関数を決定または作成する。
【0051】
例えば検出ガス流量が10L/minである場合、予め作成された第3関数R3がそのまま用いられる。例えば検出ガス流量が予め作成された関数の流量に対応しない場合には、新たな関数が作成される。
【0052】
オゾン濃度発生点、最大点、第1中間点、及び第2中間点は、ガス流量に応じて比例的に変化する。したがって、例えばガス流量が20L/minである場合、
図3に示すように、新たに作成される関数の各点は、第2関数R2と第3関数R3のそれぞれの各点の中間位置(半分の位置)に決定される。演算部32は、ガス流量20L/minに対応する、オゾン濃度発生点、最大点、第1中間点、及び第2中間点に基づき新たな関数(
図3に示す第4関数R4)を作成する。第4関数R4は、これらの点を直線的に結ぶことで作成される。
【0053】
また、例えばガス流量が40L/minである場合、
図3に示すように、新たに作成される関数の各点は、第1関数R1と第2関数R2のそれぞれの各点の中間位置(半分の位置)に決定される。演算部32は、ガス流量40L/minに対応する、オゾン濃度発生点、最大点、第1中間点、及び第2中間点に基づき新たな関数(
図3に示す第5関数R5)を作成する。第5関数R5は、これらの点を直線的に結ぶことで作成される。
【0054】
ステップST12において、演算部32は、現在の検出ガス流量に対応する関数に基づき、電源出力の目標値を決定する。具体的には、演算部32は、現在の検出ガス流量に対応する関数において、設定オゾン濃度Csに対応する電源出力を目標値とする。
図3の例では、現在の検出ガス流量が20L/minである場合に、第4関数R4における設定オゾン濃度Csに対応する電源出力の目標値Poを図示している。
【0055】
ステップST13において、出力制御部34は、電源部21の実際の電源出力が、ステップST12において求めた目標値となるように電源部21を制御する。
【0056】
図6に示すように、フィードフォワード制御は、ステップST3において、所定時間が経過するまで繰り返し実行される。なお、フィードフォワード制御を繰り返し実行する場合、電源部21の実際の電源出力が最終的に上記の目標値Poとなるように、段階的に電源出力を増大させてもよい。
【0057】
オゾン発生装置20の運転開始時にフィードフォワード制御を実行することで、対象へ供給されるオゾンガス中のオゾン濃度を速やかに設定オゾン濃度Csに近づけることができる。
【0058】
ステップST3において所定時間が経過すると、ステップST4に移行し、フィードバック制御が実行される。
【0059】
図5に示すように、ステップST21では、例えば検出ガス流量が10L/minである場合、予め作成された第3関数R3がそのまま用いられる。例えば検出ガス流量が予め作成された関数の流量に対応しない場合には、新たな関数が作成される。新たな関数の作成方法は、上述したフィードフォワード制御と同様である。つまり、演算部32は、既存の3つの関数に基づき、流量に応じた比例配分によりオゾン濃度発生点、最大点、第1中間点、及び第2中間点を決定する。演算部32は、これらの点を直線的に結ぶことで、新たな関数を作成する。
【0060】
ステップST22において、演算部32は、現在の検出ガス流量に対応する関数に基づいて、設定オゾン濃度Csに対応する第1電源出力P1と、検出オゾン濃度に対応する第2電源出力P2とを求める。
図3では、ガス流量が40L/minである場合に、設定オゾン濃度Csに対応する第1電源出力P1と、検出オゾン濃度Cdに対応する第2電源出力P2とを図示している。
【0061】
次いで、ステップST23において、演算部32は、第1電源出力P1と第2電源出力P2との差ΔP(=P1-P2)を算出する。次いで、演算部32は、現在の電源出力Pcに、ΔPを加算した値を電源出力の目標値とする。ΔPは、電源出力の調節量である。
【0062】
これにより、第1電源出力P1が第2電源出力P2より大きい場合には、電源出力が増大する。第1電源出力P1が第2電源出力P2より小さい場合には、電源出力が減少する。
【0063】
ステップST24において、出力制御部34は、電源部21の実際の電源出力が、ステップST23において求めた目標値となるように電源部21を制御する。
【0064】
以上のようなフィードバック制御では、オゾン発生部22のガス流量に応じた関数に基づいて、電源出力の差ΔPが求められ、この差ΔPに基づき電源出力の目標値が決定される。このため、ガス流量に応じたオゾン濃度と電源出力の特性を十分に考慮しながら、電源出力を最適に制御できる。
【0065】
図4に示すように、フィードバック制御の後、ステップST5の条件が成立しない場合、ステップST1を経由して、ステップST4のフィードバック制御が繰り返し実行される。ここで、フィードバック制御が実行される間隔ΔTbは、オゾン発生部22から濃度検出部24までの管内のガスが置換される時間(置換時間ΔTr)を考慮して決定されるのが好ましい。具体的には、制御装置30の設定部31には、管内の容積Vをパラメータとして設定できる。置換時間ΔTrは、管内の容積Vと、検出ガス流量とに基づき算出できる。フィードバック制御の実行の間隔ΔTbは、少なくとも置換時間ΔTr以上であるのが好ましい。
【0066】
加えて、置換時間ΔTrは、管内の容積V、及び検出ガス流量に加えて、上述した検出圧力に基づき算出されてもよい。
【0067】
加えて、フィードバック制御の間隔ΔTbは、出力電圧を変更してから検出オゾン濃度Cdが変化するまでの時間遅れや、オゾンの拡散などの影響を考慮して決定されてもよい。このような影響を考慮すると、間隔ΔTbは、置換時間ΔTrに所定の係数αを乗じた時間に設定されるのが好ましい。ここで、係数αは1より大きく、2~3程度に設定されるのが好ましい。
【0068】
ステップST4のフィードバック制御の後、ステップST5の条件が成立すると、ステップST2に移行し、再びフィードフォワード制御が実行される。ステップST5では、運転条件が大きく変化したことを示す条件が成立したか否かの判定が行われる。具体的に、この条件は、以下の第1条件及び第2条件を含む。
【0069】
第1条件は、ガス流量を示す指標である検出ガス流量が所定値以上変化する条件である。第2条件は、設定オゾン濃度Csが所定値以上変化する条件である。ステップST5において、第1条件及び第2条件の少なくとも一方が成立すると、ステップST4に移行し、フィードフォワード制御が実行される。
【0070】
オゾン発生部22を流れるガス流量が大きく変化すると、フィードバック制御では、検出オゾン濃度Cdと、設定オゾン濃度Csとの差が大きくなり、検出オゾン濃度Cdを設定オゾン濃度Csに速やかに近づけることができない可能性がある。これに対し、第1条件が成立した場合に、上述したフィードフォワード制御を実行させることで、検出オゾン濃度Cdを設定オゾン濃度Csに速やかに近づけることができる。
【0071】
設定オゾン濃度Csが大きく変化すると、フィードバック制御では、検出オゾン濃度Cdと、設定オゾン濃度Csとの差が大きくなり、検出オゾン濃度Cdを設定オゾン濃度Csに速やかに近づけることができない可能性がある。これに対し、第2条件が成立した場合に、上述したフィードフォワード制御を実行させることで、検出オゾン濃度Cdを設定オゾン濃度Csに速やかに近づけることができる。
【0072】
なお、ステップST5においては、第1条件のみの成立を判定してもよいし、第2条件のみの成立を判定してもよい。
【0073】
-実施形態の効果-
上記実施形態に係るフィードバック制御では、制御装置30が、オゾン発生部22の設定オゾン濃度Csと、オゾン発生部のガス流量を示す指標である検出ガス流量と、検出オゾン濃度Cdと、複数の関数とに基づいて、設定オゾン濃度Csに対応する第1電源出力P1と、検出オゾン濃度Cdに対応する第2電源出力P2とを求める。制御装置30は、第1電源出力P1と第2電源出力P2との差に基づいて電源出力を制御する。
【0074】
これにより、電源部21の電源出力は、ガス流量に応じた電源出力とオゾン濃度との関係の特性を考慮して調節される。したがって、例えばガス流量が小さい条件下において、電源出力の調節量が過剰となって検出オゾン濃度Cdが大きくハンチングすることを抑制できる。また、例えばガス流量が大きい条件下において、電源出力の調節量が不足し、検出オゾン濃度Cdが設定オゾン濃度Csになかなか近づかないことを抑制できる。その結果、本実施形態では、実際のオゾン濃度を速やかに設定オゾン濃度に収束させることができる。
【0075】
上記実施形態に係るフィードフォワード制御では、制御装置30が電源出力を第1電源出力P1に近づけるように制御する。第1電源出力P1は、ガス流量に応じた設定オゾン濃度Csに対応する電源出力である。このため、検出オゾン濃度Cdと設定オゾン濃度Csとの差が比較的大きい条件下において、ガス流量に応じた最適な電源出力を求めることができ、検出オゾン濃度Cdを設定オゾン濃度Csに速やかに近づけることができる。
【0076】
記憶部33に記憶される複数の関数は、電源出力と、該電源出力に対応するオゾン濃度を示す複数の点を直線的に結んで得られる関数である。このため、これらの関数を簡素化でき、演算部32の負荷を軽減できる。
【0077】
ガス流量が、記憶部33に記憶された複数の関数に対応しない場合は、流量に応じた比例配分により複数の点を求め、これらの点に基づいて新たな関数を作成する。このため、検出ガス流量が、記憶部33に記憶されたガス流量に対応しない場合であっても、検出ガス流量に対応する最適な電源出力を求めることができる。
【0078】
記憶部33に記憶される関数は3つであるため、細かいガス流量の変化に対応して最適な電源出力を求めることができる。
【0079】
記憶部33に記憶される複数の関数は、電源出力と、該電源出力に対応するオゾン濃度を示す複数の点を直線的に結んで得られる関数である。このため、これらの関数を簡素化でき、演算部32の負荷を軽減できる。
【0080】
フィードフォワード制御は、第1条件及び第2条件の少なくとも一方が成立すると、実行される。このため、検出オゾン濃度Cdと設定オゾン濃度Csとの差が比較的大きい条件下において、検出オゾン濃度Cdを設定オゾン濃度Csに速やかに近づけることができる。
【0081】
フィードフォワード制御は、運転開始時に実行される。このため、検出オゾン濃度Cdと設定オゾン濃度Csとの差が比較的大きい条件下において、検出オゾン濃度Cdを設定オゾン濃度Csに速やかに近づけることができる。
【0082】
《実施形態の変形例》
上述した実施形態については、以下のような変形例の構成としてもよい。
【0083】
図7に示す変形例は、上記実施形態とオゾン発生装置20の構成が異なる。
【0084】
オゾン発生装置20は、上記実施形態の流量検出部23に代わってMFC(厳密には、マスフローコントローラ等自動調整弁)26を有する。MFC26は、オゾン発生部22に供給されるガス流量を、予め設定した設定ガス流量とするように制御する。設定ガス流量は、制御装置30に入力された設定値、あるいはオゾン発生装置20が適用される施設側の装置の要求に応じて決定される。
【0085】
オゾン発生装置20は、上記実施形態の圧力検出部25及び圧力調節弁13に代わって、APC(厳密には、オートプレッシャーコントローラ等自動圧力調節弁)27を有する。APC27は、その一次側の圧力を予め設定した圧力とするように制御する。
【0086】
変形例1では、ガス流量を示す指標として、検出ガス流量ではなく、設定ガス流量が用いられる。具体的には、フィードバック制御のステップST21では、設定ガス流量に応じた関数を決定または作成する。ステップST22~ステップST24では、設定ガス流量に応じた関数に基づき、同様の制御が行われる。
【0087】
同様に、フィードフォワード制御のステップS11では、設定ガス流量に応じた関数を決定または作成する。ステップST12~ステップST13では、設定ガス流量に応じた関数に基づき、同様の制御が行われる。
【0088】
このように、設定ガス流量に応じた関数を用いることで、実際のガス流量がなかなか設定ガス流量に収束しない場合においても、電源出力を最終的な目標値に向かって制御できる。このため、フィードバック制御、及びフィードフォワード制御において、オゾン濃度を速やかに設定オゾン濃度Csに収束させることができる。
【0089】
なお、変形例1においても、上記実施形態と同様、MFC26で検出した検出ガス流量に応じた関数を用いるようにしてもよい。
【0090】
また、変形例1において、MFC26とAPC27の配置を入れ替えてもよい。この場合、APC27は、その二次側の圧力を予め設定した圧力とするように制御する。
【0091】
〈自動取得運転〉
変形例1の制御装置30は、自動取得運転を実行させる。自動取得運転は、オゾン発生装置20を施設に据え付けた後に実行される。自動取得運転は、オゾン発生装置20の初回の運転の開始前に実行される。
【0092】
自動取得運転は、複数の関数を自動的に取得するための運転である。このため、制御装置30の設定部には、複数の関数に対応する複数のガス流量と、ガス流量毎の関数を作成するための複数の電源出力が設定される。
【0093】
上述した実施形態の3つの関数を自動的に作成する場合、複数のガス流量として、10L/min、30L/min、及び50L/minが設定される。また、複数の電源出力として、オゾン濃度発生点に対応する20%、最大点に対応する100%、第1中間点に対応する50%、第2中間点に対応する70%が設定される。自動取得運転では、これらの設定ガス流量、及び設定電源出力に対応する検出オゾン濃度Cdが順次計測される。なお、オゾン濃度発生点に対応するオゾン濃度は、上述したように電源部21などの構造や方式によって定まる。このため、自動取得運転では、オゾン濃度発生点に対応する電源出力での計測を省略してもよい。
【0094】
具体的には、自動取得運転では、MFC26によって、ガス流量が上記の設定値(例えば10L/min)に調整される。ガス流量が10L/minの条件下において、出力制御部34は、電源出力を所定の設定値に制御する。この際、濃度検出部24は、オゾン濃度を安定させるための所定時間が経過した後に、オゾン濃度を検出する。次いで、出力制御部34は、同様のガス流量において電源出力を異なる設定値に変更し、その後、濃度検出部24がオゾン濃度を検出する。このようにすると、ガス流量が10L/minに対応する各点(オゾン濃度発生点、最大点、第1中間点、第2中間点)のデータを取得でき、これらのデータから
図3に示す第3関数R3を作成できる。これらのデータ及び関数は、記憶部33に記憶される。
【0095】
制御装置30は、同様の動作を、ガス流量を変更しながら繰り返す。これにより、自動取得運転では、ガス流量が異なる複数の関数を自動的に作成することができる。この結果、制御装置30の据え付け後において、人が各データを入力せずとも、据え付け環境に応じた最適な関数を得ることができる。
【0096】
《その他の実施形態》
上記実施形態、及び変形例では、以下のような構成としてもよい。
【0097】
上記実施形態のオゾンガス発生装置20は、オゾン発生部22で生成したオゾンガス(流体)を対象へ供給する。しかし、オゾン発生装置20は、オゾン発生部22で生成したオゾンガスを水中に溶存させてオゾン水を生成し、オゾン水を対象へ供給するものであってもよい。
【0098】
記憶部33に記憶される複数の関数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0099】
複数の関数を作成するための複数の点は、2つでもよいが、3つ以上であることが好ましく、上記実施形態のように4つ以上であるのがさらに好ましい。これらの複数の点は、少なくともオゾン濃度発生点と、最大点を含んでいるのが好ましい。
【0100】
オゾン発生部22は、無声放電方式でなくてもよく、例えば沿面放電方式や電解方式であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上説明したように、本発明は、オゾン発生装置に関し有用である。
【符号の説明】
【0102】
20 オゾン発生装置
21 電源部
22 オゾン発生部
24 濃度検出部
30 制御装置
33 記憶部