IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トーレ アドバンスト マテリアルズ コリア インク.の特許一覧

特許7426497有機溶媒可溶性共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜形成用組成物及びそれにより製造された高水透過度逆浸透膜
<>
  • 特許-有機溶媒可溶性共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜形成用組成物及びそれにより製造された高水透過度逆浸透膜 図1
  • 特許-有機溶媒可溶性共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜形成用組成物及びそれにより製造された高水透過度逆浸透膜 図2
  • 特許-有機溶媒可溶性共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜形成用組成物及びそれにより製造された高水透過度逆浸透膜 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】有機溶媒可溶性共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜形成用組成物及びそれにより製造された高水透過度逆浸透膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/48 20060101AFI20240125BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240125BHJP
   C08G 63/181 20060101ALI20240125BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20240125BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20240125BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B01D71/48
C08L67/02
C08G63/181
B01D69/02
B01D69/10
B01D69/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022547302
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 KR2021004104
(87)【国際公開番号】W WO2021246629
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0065953
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500254664
【氏名又は名称】トーレ アドバンスト マテリアルズ コリア インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】グワン スー ビョン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ ウォン イム
(72)【発明者】
【氏名】チョン ホワン イ
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-080334(JP,A)
【文献】特開平02-158620(JP,A)
【文献】特開平07-081247(JP,A)
【文献】特開昭61-283304(JP,A)
【文献】特開2013-189507(JP,A)
【文献】特開2008-163110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00- 63/91
C08K 1/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B01D 69/00- 69/14
B01D 71/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
限外ろ過膜(Ultrafiltration)形成用組成物であって、
有機溶媒と、
前記有機溶媒中に溶解した、8~12の芳香族ジカルボン酸(dicarboxylic acid)を少なくとも1種含む酸成分とエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールからなるジオール成分との間のエステル化反応により形成された共重合ポリエステルとを含み
前記共重合ポリエステルは、炭素原子数Nと酸素原子数Nのモル比N/N2.83.2であり、常温でジメチルホルムアミド(Dimethyl Formamide、DMF)に対する溶解度が20重量%以上であり、
前記限外ろ過膜形成用組成物の粘度が10~600cPである
ことを特徴とする限外ろ過膜形成用組成物。
【請求項2】
前記酸成分は、テレフタル酸(terephthalic acid)及びテレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の限外ろ過膜形成用組成物
【請求項3】
前記テレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸(isophthalic acid、IPA)、ナフタレン二酸(naphthalendioic acid)及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩(5-sulfoisophthalic acid(SIA)sodium salt)の中から選ばれた1種以上の化合物であり、
前記酸成分は、テレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸を酸成分の全体に対して5~50モル%で含むことを特徴とする、請求項2に記載の限外ろ過膜形成用組成物
【請求項4】
前記ジオール成分は、前記エチレングリコールを前記ジオール成分の全体に対して35~65モル%で含むことを特徴とする、請求項に記載の限外ろ過膜形成用組成物
【請求項5】
前記有機溶媒は、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、エチレングリコールジアセテート(ethylene glycol diacetate)、エチレングリコールジメチルエーテル(ethylene glycol dimethylether)、トルエン(toluene)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチルピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)、m-クレゾール(m-cresol)、ジグリコールアミン(diglycolamine)及びテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)の中から選ばれた1つまたは2つ以上の混合溶液であることを特徴とする、請求項に記載の限外ろ過膜形成用組成物。
【請求項6】
前記限外ろ過膜形成用組成物は、前記共重合ポリエステルを10~30重量%の濃度で含むことを特徴とする、請求項に記載の限外ろ過膜形成用組成物。
【請求項7】
多孔性支持層、及び前記多孔性支持層の一面上に形成され、共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜を含む逆浸透膜であって、
前記共重合ポリエステルが、C 8~12 の芳香族ジカルボン酸(dicarboxylic acid)を少なくとも1種含む酸成分とエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールからなるジオール成分との間のエステル化反応により形成されているとともに、
炭素原子数N と酸素原子数N のモル比N /N が2.8~3.2であり、常温でジメチルホルムアミド(Dimethyl Formamide、DMF)に対する溶解度が20重量%以上であるものであり、
前記逆浸透膜は、下記の測定条件に従って測定した水透過度が200~1,000gfdであることを特徴とする、逆浸透膜。
[測定条件]
逆浸透膜に対して脱イオン水(DI)である原水を用いて25℃の温度及び1kgf/cmの圧力条件で運転して水透過度を測定する。
【請求項8】
前記限外ろ過膜は、前記多孔性支持層に接した面(下面)から反対面(上面)に向かうほど平均気孔のサイズが次第に増加または減少する非対称構造を有し、前記限外ろ過膜の上面表面での平均気孔のサイズ(D50)が0.01~0.2μmであることを特徴とする、請求項に記載の逆浸透膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒可溶性共重合ポリエステル、それを含む限外ろ過膜形成用組成物及びそれにより製造された高水透過度逆浸透膜に関し、具体的には、常温で有機溶媒に高い溶解度を持ち、低コストで限外ろ過膜の製造が可能なポリエステル、それを含む限外ろ過膜形成用組成物及びそれにより製造して高い水透過度を持ちながら、生産コストが節減される高水透過度逆浸透膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水処理用限外ろ過膜は、ポリスルホン(PSf)及びポリエーテルスルホン(polytether sulfone、PES)などの疎水性高分子を用いて製造された。ポリエステルは、一般にフィルム、コーティング、射出造形物素材として使用されているが、ポリエステルを用いて製造した水処理用膜は、これまでに殆ど報告されていない。ただし、気孔のない緻密なポリエステルフィルムをイオン化放射線(ionizing radiation(thermal neutron))に露出させて均一で狭い気孔分布を有するトラック-エッチド(track-etched)メンブレンのような特定の形態の膜がある。この分離膜は、微生物を膜表面に残留させ、溶媒及び低分子物質を通過させて微生物分離用途に用いられている。言い換えれば、ポリエステルを使用し、相分離(phase separation)法により多孔性膜を製造し、商用化した事例は、近年までになかった。
【0003】
一方、分離膜にポリエステル繊維から製造された不織布を用いた事例に対する報告は多くある。国際公開番号WO2015/046250には、不織布繊維表面に飽和ポリエステルと親水性ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートブロック共重合体を塗布して洗浄効果を高め、その他にも親水性官能基としてスルホン基、カルボキシル基、水酸基などが可能である。この場合にも共重合体ではないブロック共重合体を使用し、高分子物性及び微細構造においてランダム共重合体とは異なる特性を用いた。
【0004】
商用ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートを用いて製造した限外ろ過膜の場合、ポリエチレンテレフタレートの半結晶性及び高い高分子極性により、常温での極性非量子性有機溶媒に対する溶解度が低く、限外ろ過膜の形成のための組成物の形成時、常温よりはるかに高い温度(60℃)まで昇温しなければならず、相分離のための凝固槽と温度差が大きくなることを避けられなかった。言い換えれば、様々な温度条件による製膜性能の最適化が困難であり、粗液に対する高温維持は、工程の側面でエネルギー消費が高いという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたもので、本発明が第1に解決しようとする課題は、常温で有機溶媒に対する溶解度に優れており、低コストで限外ろ過膜の形成が可能な共重合ポリエステルを提供することである。
【0006】
また、本発明が第2に解決しようとする課題は、前記共重合ポリエステルを用いて高い水透過度を有するポリエステル限外ろ過膜の製造が可能な限外ろ過膜形成用組成物を提供することである。
【0007】
また、本発明が第3に解決しようとする課題は、ポリエステルを用いて原水内の膜汚染に対する抵抗性が強く、かつ優れた水透過度を有する逆浸透膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した第1の課題を解決するため、本発明の共重合ポリエステルは、C8~12の芳香族ジカルボン酸(dicarboxylic acid)を少なくとも1種含む酸成分及びC2~10の線状又は分枝状の脂肪族多価アルコールを少なくとも1種含むジオール成分間のエステル化反応により形成される。
【0009】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の共重合ポリエステルは、炭素原子数Nと酸素原子数Nのモル比N/Nが2.7~6であってもよい。
【0010】
本発明の好ましい一実施例において、常温でジメチルホルムアミド(Dimethyl Formamide、DMF)に対する溶解度が20重量%以上であってもよい。
【0011】
本発明の好ましい一実施例において、酸成分は、テレフタル酸(terephthalic acid)及びテレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸化合物を含んでもよい。
【0012】
本発明の好ましい一実施例において、テレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸(isophthalic acid、IPA)、ナフタレン二酸(naphthalendioic acid)及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩(5-sulfoisophthalic acid(SIA)sodium salt)の中から選ばれた1種以上の化合物であってもよい。
【0013】
本発明の好ましい一実施例において、酸成分は、テレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸を酸成分の全体に対して5~50モル%で含んでもよい。
【0014】
本発明の好ましい一実施例において、C2~10の線状または分枝状の脂肪族多価アルコールは、エチレングリコール(Ethylene glycol、EG)及びC5~10の線状または分岐状の脂肪族多価アルコールから選ばれた1種以上の多価アルコールを含んでもよい。
【0015】
本発明の好ましい一実施例において、ジオール成分は、エチレングリコールをジオール成分の全体に対して35~65モル%で含んでもよい。
【0016】
一方、本発明の限外ろ過膜(Ultrafiltration)形成用組成物は、本発明の共重合ポリエステル及び有機溶媒を含んでもよい。
【0017】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の限外ろ過膜形成用組成物は、粘度が10~600cPであってもよい。
【0018】
本発明の好ましい一実施例において、有機溶媒は、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、エチレングリコールジアセテート(ethylene glycol diacetate)、エチレングリコールジメチルエーテル(ethylene glycol dimethylether)、トルエン(toluene)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチルピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、m-クレゾール(m-cresol)、ジグリコールアミン(diglycolamine)及びテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)の中から選ばれた1つまたは2つ以上の混合溶液であってもよい。
【0019】
本発明の好ましい一実施例において、限外ろ過膜形成用組成物は、共重合ポリエステルを10~30重量%の濃度で含んでもよい。
【0020】
さらに、本発明の逆浸透膜は、多孔性支持層及び前記多孔性支持層の一面上に形成され、本発明の共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜を含んでもよい。
【0021】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜は、下記の測定条件に従って測定した水透過度が200~1,000gfdであってもよい。
【0022】
[測定条件]
逆浸透膜に対して脱イオン水(DI)である原水を用いて25℃の温度及び1kgf/cmの圧力条件で運転して水透過度を測定する。
【0023】
本発明の好ましい一実施例において、限外ろ過膜は、前記多孔性支持層に接した面(下面)から反対面(上面)に向かうほど、平均気孔のサイズが次第に増加または減少する非対称構造を有してもよい。
【0024】
本発明の好ましい一実施例において、限外ろ過膜の上面表面での平均気孔のサイズ(D50)が0.01~0.2μmであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明による共重合ポリエステルは、従来の共重合ポリエステルとは異なり、常温でも有機溶媒に対する溶解度に優れており、限外ろ過膜形成用組成物の製造時のエネルギー消費を著しく節減できるという長所がある。
【0026】
また、本発明による限外ろ過膜形成用組成物を用いて製造した限外ろ過膜を含む逆浸透膜は、従来のポリスルホンやポリエーテルスルホン系高分子を含む限外ろ過膜を用いた逆浸透膜に比べて優れた膜汚染抵抗性を有し、水透過度に優れた長所がある。また、ポリエステル限外ろ過膜の高い極性で不織布及びポリアミド(polyamide、PA)層との付着力に優れており、逆浸透膜の機械的な耐久性も優れているという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の好ましい一実施例による限外ろ過膜の気孔を含む微細構造を撮影したSEMイメージである。
図2】本発明の好ましい一実施例による逆浸透膜の層状構造を撮影したSEMイメージである。
図3】本発明の好ましい一実施例による逆浸透膜を撮影したSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について、添付の図面を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【0029】
上述したように、従来のポリスルホン(polysulfone、PSf)またはポリエーテルスルホン(polyethersulfone、PES)系高分子を含む限外ろ過膜は、高分子の疎水性で水との親和力が低く、分離膜に製造の際、水透過度が著しく低く、原水の濾過時に原水中に含まれている各種の疎水性の有機浮遊物質が分離膜の表面に容易に吸着して膜汚染を誘発し、水透過度及び分離膜の性能を低下させるという問題があった。
【0030】
また、ポリエステル高分子を用いて限外ろ過膜を製造する場合には、逆にポリエステルの親水性により有機溶媒に対する溶解度が低く、限外ろ過膜形成のための高分子組成物の製造時に高い温度を維持しなければならず、これによって多くの製造上の費用がかかるという短所があった。
【0031】
よって、本発明では、上述した第1の課題を解決するため、本発明は、C8~12の芳香族ジカルボン酸(dicarboxylic acid)を少なくとも1種含む酸成分及びC2~10の線状または分枝状の脂肪族多価アルコールを少なくとも1種含むジオール成分間のエステル化反応で形成され、炭素原子数Nと酸素原子数Nのモル比N/Nが2.7~6であり、常温でジメチルホルムアミド(Dimethyl Formamide、DMF)に対する溶解度が20重量%以上である共重合ポリエステルを提供し、このような問題点の解決を模索した。
【0032】
本発明による共重合ポリエステルは、常温での有機溶媒に対する溶解度に優れており、限外ろ過膜形成用組成物の製造時に加熱せずに常温で反応を行ってもよいという長所がある。
【0033】
好ましくは、本発明による共重合ポリエステルは、常温でジメチルホルムアミドに対する溶解度が20重量%以上、好ましくは、24重量%以上であってもよい。より好ましくは、常温でのジメチルホルムアミドに対する溶解度が26重量%~50重量%であってもよい。もし、前記共重合ポリエステルの常温でのジメチルホルムアミドに対する溶解度が20重量%未満の場合には、組成物の濃度及び粘度調整が容易ではないので、製造する限外ろ過膜の用途によって物性を調整することが容易ではない。
【0034】
ジメチルホルムアミドは極性非プロトン性溶媒であって、本発明による共重合ポリエステルは、炭素原子と酸素原子数のモル比をモノマーの種類及び含量を調節して適当な範囲に調節することにより、ポリエステル高分子の極性を調節して溶解度を調節できた。
【0035】
本発明による共重合ポリエステルは、ジメチルホルムアミドだけでなく、他の種類の極性非プロトン性有機溶媒に対しても優れた常温溶解度を持ち、したがって、常温での相分離が容易であるという長所がある。
【0036】
本発明において、「常温」とは、15℃~25℃の温度を意味するもので、常温での溶解度がA以上であるという意味は、15~25℃の全区間での溶解度がA以上という意味である。
【0037】
以下、本発明の共重合ポリエステルを各構成別に説明する。
【0038】
まず、本発明による共重合ポリエステルは、C8~12の芳香族ジカルボン酸を少なくとも1種含む酸成分と、C2~10の線状または分枝状の脂肪族多価アルコールを少なくとも1種含むジオール成分間のエステル化重合反応によって形成される。
【0039】
前記酸成分は、好ましくは、前記C8~12の芳香族ジカルボン酸化合物に加えて、C6~12の脂肪族ジカルボン酸化合物の中から選ばれた1種以上のジカルボン酸化合物をさらに含んでもよいが、必ずしもこの化合物に限定されるものではない。
【0040】
また、前記C8~12の芳香族ジカルボン酸化合物は、テレフタル酸及びテレフタル酸を除くC8~12の芳香族ジカルボン酸化合物の中から選ばれた1種以上の芳香族ジカルボン酸化合物を含んでもよい。この際、テレフタル酸を除いたC8~12の芳香族ジカルボン酸化合物は、好ましくは、イソフタル酸(isophthalic acid、IPA)、ナフタレン二酸(naphthalendioic acid)及び5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩(5-sulfoisophthalic acid(SIA)sodium salt)の中から選ばれる1種以上の化合物であってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0041】
また、前記C6~14の脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸(adipic acid、AA)、ドデカン二酸(dodecandioic acid)及びテトラデカン二酸(tetradecandioic acid)の中から選ばれた1種以上の化合物であってもよい。しかし、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0042】
酸成分は、好ましくは、テレフタル酸及びテレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸を含んでもよい。このとき、テレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸は、酸成分の全体に対して5~50モル%、好ましくは、15~45モル%、より好ましくは、25~35モル%の含量で含んでもよい。もし、テレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸の含量が5モル%未満の場合、有機溶媒に対する溶解度が低くなるという問題があり、50モル%を超える場合、重合された共重合ポリエステルのガラス転移温度(glass transition temperature、T)が低くなりすぎ、耐熱性低下の問題が発生することがある。
【0043】
より具体的に、酸成分は、酸成分の全体に対してテレフタル酸は、50~95モル%、好ましくは、55~85モル%、より好ましくは、65~75モル%の含量で含んでもよく、C8~12の芳香族ジカルボン酸は、5~50モル%、好ましくは、15~45モル%、より好ましくは、25~35モル%の含量で含んでもよい。
【0044】
一方、前記テレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸であってもよい。このように、テレフタル酸ではないC8~12の芳香族ジカルボン酸としてイソフタル酸を使用するとき、テレフタル酸とイソフタル酸を比較すると、分子が対称をなして双極子モーメントが0になるテレフタル酸に比べて双極子モーメントの和が0にならないイソフタル酸の方がより極性が大きいため、イソフタル酸の含量を調節して合成されたポリエステルの極性を調節でき、イソフタル酸は、高分子の主鎖を曲がった構造(kinked structure)を有するため、高分子主鎖間の空間(free volume)を形成して溶解性を高める役割を果たすことができる。
【0045】
また、酸成分として、C6~14の脂肪族ジカルボン酸化合物をさらに含んでもよく、C6~14の脂肪族ジカルボン酸は、酸成分の全体に対して1~10モル%の含量で含んでもよい。
【0046】
2~10の線状または分枝状の脂肪族多価アルコールは、エチレングリコール(ethylene glycol、EG)及びC5~10の線状または分岐状の脂肪族多価アルコールの中から選ばれた1種以上の多価アルコールを含んでもよい。このとき、多価アルコールは、2価アルコール、すなわち、ジオール(diol)を意味する。
【0047】
好ましくは、前記ジオール成分は、エチレングリコールを含み、C5~10の線状または分枝状の脂肪族多価アルコールの中から選ばれた1種以上の脂肪族多価アルコールをさらに含んでもよい。これにより共重合ポリエステル内の炭素原子と酸素原子のモル比を調節してもよい。
【0048】
また、好ましくは、前記ジオール成分は、C1,000以下のポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)をさらに含んでもよい。
【0049】
また、C5~10の線状または分枝状の脂肪族多価アルコールは、ネオペンチルグリコールまたはブチルエチルプロパンジオールであってもよい。しかし、必ずしもこれに制限されるものではない。ブチルエチルプロパンジオールは、好ましくは、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(2-butyl-2-エチル-1,3-propandiol、BEPD)を含んでもよい。
【0050】
好ましくは、前記ジオール成分は、エチレングリコールとネオペンチルグリコール、またはエチレングリコールとBEPDを含んでもよい。しかし、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0051】
また、ジオール成分は、エチレングリコールの含量がジオール成分の全体に対して35~65モル%、好ましくは、40~60モル%、より好ましくは、45~55モル%であってもよい。
【0052】
もし、ジオール成分中のエチレングリコールの含量がジオール成分の全体に対して35モル%未満の場合、合成された共重合ポリエステルの親水性が低くなりすぎ、常温での有機溶媒に対する溶解性が低くなるおそれがあり、逆にエチレングリコールの含量がジオール成分の全体に対して65モル%を超える場合には、ガラス転移温度が低くなりすぎ、限外ろ過膜の耐熱性が低下するという問題が発生することがある。
【0053】
本発明による共重合ポリエステルは、炭素原子数Nと酸素原子数Nのモル比であるN/Nが2.7~6.0、好ましくは2.7~5.0、より好ましくは、2.8~3.2、さらに好ましくは、2.8~3.1であってもよい。
【0054】
前記範囲内のN/N値を持つとき、親水性及び極性非プロトン性有機溶媒に対する溶解度がすべて優れたレベルを持つことができ、逆浸透膜などのメンブレンに限外ろ過膜で形成したとき、多孔性支持体に対する付着力及びポリアミド(polyamide、PA)コーティング層に対する付着力がすべて優れており、良好な機械的耐久性を有するだけでなく、限外ろ過膜形成用組成物の製造の際、相分離反応を高温で行う必要なく常温で行うことが可能となり、製造コストを大きく節減できるという長所がある。
【0055】
ここで、N/Nは、ポリエステル一分子に対する値ではないポリエステル樹脂の全体に対する平均値を示し、測定方法は、ポリエステル重合時に使用されるコモノマーの設定したモル比率で重合を行い、合成された高分子をFT-NMRを介して各モノマーの実際の重合に参加したモル比を得ることにより、単位ユニット当たり炭素数(N)と酸素数(N)の数を計算した。
【0056】
もし、N/Nが2.7未満の場合、極性非プロトン性有機溶媒によく溶解せず、常温で限外ろ過膜の相分離反応を行うことができないという問題がある。これは製造コストの上昇及び生産性低下の問題をもたらす。また、N/Nが6.0を超える場合、ポリエステルの極性が過度に小さくなるため、水に対する親和力が低くなり、水透過度が減少し、有機汚染物質に対する膜汚染抵抗能力が減少するという短所がある。
【0057】
本発明の他の態様は、上述した酸成分及びジオール成分をエステル反応及び縮合重合反応させて合成した共重合ポリエステル及び有機溶媒を含み、粘度が10~600cPである限外ろ過膜(ultrafiltration membrane)形成用組成物を提供する。
【0058】
前記限外ろ過膜形成用組成物は、好ましくは、前記共重合ポリエステルを前記有機溶媒に溶解させた溶液の形態であってもよい。
【0059】
本発明による限外ろ過膜形成用組成物は、前記共重合ポリエステルを有機溶媒に常温で溶解させたもので、低コストで限外ろ過膜の相分離反応が可能である。
【0060】
また、前記限外ろ過膜形成用組成物は、粘度が10~600cPであり、この範囲内にある場合、最も優れた水透過度を有する限外ろ過膜を製造することができ、膜に対する汚染性も最もよい。好ましくは、組成物の粘度は、30~500cPであってよく、好ましくは、35~450cPであってもよく、より好ましくは、35~400cP、さらに好ましくは、35~100cPであってもよい。
【0061】
もし、粘度が10cP未満の場合、組成物の粘度が低く支持体である不織布を透過して不織布上に多孔性層が形成されず、逆に粘度が600cPを超える場合、膜の厚さを一定レベル以下に形成することが困難であり、これによって気孔を形成しにくく、水透過度が低くなり、限外ろ過膜の特性を具現できなくなる。
【0062】
前記有機溶媒は、好ましくは、極性非プロトン性有機溶媒であって、例えば、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)、エチレングリコールジアセテート(ethylene glycol diacetate)、エチレングリコールジメチルエーテル(ethylene glycol dimethylether)、トルエン(toluene)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチルピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、m-クレゾール(m-cresol)、ジグリコールアミン(diglycolamine)及びテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)の中から選ばれた1つまたは2つ以上の混合溶液であってもよい。しかし、前記有機溶媒が必ずしもこれに制限されるものではない。
【0063】
好ましくは、限外ろ過膜形成用組成物は、共重合ポリエステルを10~20重量%、好ましくは、11~19重量%、より好ましくは、12~17重量%、さらに好ましくは、13~15重量%の濃度で含むものであってもよい。もし、濃度が10重量%未満の場合、組成物の粘度が高くなりすぎるおそれがあり、逆に濃度が20重量%を超える場合、組成物の粘度が低くなりすぎるおそれがある。この場合の問題点は、それぞれ組成物の粘度範囲の臨界的意義について説明した通りである。
【0064】
本発明のさらに他の態様は、上述した共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜を含む逆浸透膜を提供する。
【0065】
具体的に、本発明の逆浸透膜は、多孔性支持層、及び前記多孔性支持層の一面上に形成され、上述した共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜を含む。
【0066】
好ましくは、本発明による逆浸透膜は、前記限外ろ過膜上にポリアミドコーティング層をさらに含んでもよい。
【0067】
本発明による逆浸透膜は、上述した共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜を含むことにより、多孔性支持体に対する付着性及び前記ポリアミドコーティング層との付着性が従来のポリスルホン又はポリエーテルスルホン系限外ろ過膜に比べて優れており、機械的耐久性が著しく良好である。
【0068】
前記多孔性支持体は、好ましくは、織物又は不織布であってもよい。
【0069】
前記織物または不織布は、好ましくは、ポリエステル繊維から製造されたものであってもよい。織物または不織布がポリエステル繊維から製造されたものである場合、本発明による共重合ポリエステルを含む限外ろ過膜との付着性がさらに優れており、逆浸透膜の運転条件における機械的耐久性が良くなることがある。
【0070】
また、本発明による逆浸透膜は、下記の測定条件に従って測定した水透過度が200~1,000gfdであってもよい。
【0071】
[測定条件]
逆浸透膜に対して脱イオン水(DI)である原水を用いて25℃の温度及び1kgf/cmの圧力条件で運転して水透過度を測定する。
【0072】
本発明による逆浸透膜は、上述した共重合ポリエステルを従来のポリスルホン系またはポリエーテルスルホン系高分子に代えて限外ろ過膜として使用することにより、より優れた水透過度を有してもよい。もし、水透過度が200gfd未満の場合、逆浸透膜の運転条件に対する耐圧性が弱くなることがあり、1,000gfdを超える場合、塩の除去率が悪くなることがある。
【0073】
前記限外ろ過膜は、好ましくは、120~200μmの厚さを有してもよい。もし、限外ろ過膜の厚さが120μm未満の場合、膜の耐圧性及び/又は耐汚染性が低下することがあり、200μmを超える場合、膜の水透過度が低下することがある。
【0074】
前記限外ろ過膜は、膜の断面を基準として前記多孔性支持体に接した下面とその反対面である上面を有するが、下面から上面に向かうほど、平均気孔のサイズが次第に増加するか、または次第に減少する非対称的な断面構造を有するものであってもよい。
【0075】
また、前記限外ろ過膜の上面表面における平均気孔のサイズ(D50)は、0.01~0.2μmであってもよい。好ましくは、0.025~0.075μm、より好ましくは、0.025~0.055μm、さらに好ましくは、0.025~0.045μm、最も好ましくは、0.025~0.033μmであってもよい。もし、前記上面表面における平均気孔のサイズ(D50)が0.01μm未満の場合、逆浸透膜の水透過度が低下することがあり、0.2μmを超える場合、分離膜の除去率が低下し、本発明の目的を達成することが困難な場合もある。
【0076】
次に、本発明による逆浸透膜の製造方法について説明する。
【0077】
本発明による逆浸透膜は、逆浸透膜及び一般的な限外ろ過膜の製造方法によって製造することができ、これは通常の技術者によく知られた方法によって製造することが可能である。
【0078】
具体的に、(1)酸成分及びジオール成分をエステル化反応及び縮合重合反応を通じて共重合ポリエステル樹脂を製造する段階、(2)前記共重合ポリエステル樹脂を有機溶媒と所定の温度で混合して限外ろ過膜形成用組成物を製造する段階、(3)前記高分子溶液を多孔性支持体上に処理する段階、及び(4)前記多孔性支持体上に処理された限外ろ過膜形成用組成物を所定の温度の非溶媒に沈殿させる誘導相転移段階を含んで製造されてもよい。
【0079】
(1)段階で共重合に使用される酸成分、ジオール成分のモノマーの種類及び各成分間の構成比は、上述の通りであるために説明を省略し、酸成分とジオール成分間の反応比は、当業界でポリエステル製造のために使用される一般的な含量比の範囲内で所望のポリエステルの物性を得るために通常の技術者が適切に選択できる。
【0080】
(2)段階で使用される有機溶媒及び共重合ポリエステルの濃度は、上述のような範囲内で所望の物性を得るために通常の技術者が調節できるものである。本発明によれば、(2)段階で前記共重合ポリエステルを前記有機溶媒に溶解させるために加熱する必要がなく常温で高い溶解度を有するので、製造コストを節減できる。
【0081】
(3)段階で多孔性支持体上に処理する方法は、当業界で知られている方法を用いて前記限外ろ過膜形成用組成物を前記多孔性支持体上に塗布するものであり、例えば、ディッピング(dipping)、スプレー(spraying)、ドロップキャスティング(drop casting)、磁気組立、スピンコーティング(spin coating)、ドクターブレード(doctor blade)、バーコーティング(bar coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、マイクログラビアコーティング(microgravure coating)、コンマコーティング(comma coating)及びプリンティング(printing)、キャスティング法(casting method)の中から選ばれたいずれかの方法、好ましくは、キャスティング法を用いて行ってもよい。
【0082】
(4)段階では、非溶媒が前記限外ろ過膜形成用組成物に含まれる有機溶媒と相転移して共重合ポリエステル限外ろ過膜内に気孔を形成することができ、前記非溶媒は、水、アルコール類及びグリコール類の中から選ばれた少なくともいずれかを含んでもよい。
【0083】
誘導相転移段階を行う方法は、一般的な限外ろ過膜の製造方法と同じであり、通常の技術者は、相転移条件を発明の目的に合わせて変更して行ってもよい。
【0084】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて、より詳細に説明する。下記実施例は、本発明の範囲を制限する意味ではなく、単に本発明の理解を助けるための具体的な例示に過ぎない。通常の技術者は、本発明の目的に応じて本発明の範囲内で構成要素を追加、削除及び変更して容易に実施できるだろう。
【0085】
準備例1:共重合ポリエステル樹脂の製造
(1)テレフタル酸(TPA)70モル%及びイソフタル酸(IPA)30モル%の組成を持つ酸成分とエチレングリコール(EG)50モル%及びネオペンチルグリコール(NPG)50モル%の組成を持つジオール成分を1:1.5のモル比で反応器内に投入してエステル反応物を準備した。
【0086】
前記エステル反応物を255℃で1,140トル(Torr)の圧力下でエステル化反応させてエステル反応生成物を得た。以後、前記エステル反応生成物を重縮合反応器に移送し、チタンクエン酸系重合触媒350ppm及び熱安定剤としてトリエチルリン酸(triethyl phosphate)150ppmを投入して重縮合反応物を準備した。前記重縮合反応物を最終圧力が0.5Torrとなるように徐々に減圧しながら280℃まで昇温させて重縮合反応を行い、有機溶媒可溶性共重合ポリエステル樹脂をチップ状に製造した。
【0087】
準備例2~10:共重合ポリエステル樹脂の製造
準備例1と同様に製造するが、各モノマーの種類及び含量を下記表1のように異にして有機溶媒可溶性共重合ポリエステル樹脂を製造した。
【0088】
比較準備例1:ポリスルホン系高分子樹脂
商用ポリスルホン系高分子(PSf)であるSolvay社のUdel P-3500を準備した。
【0089】
比較準備例2:ポリエチレンテレフタレート樹脂
商用PET高分子であるToray社のFHH22130を準備した。
【0090】
【表1】
【0091】
*DA:ドデカン二酸(dodecandioic acid)
*BEPD:ブチルエチルプロパンジオール(2-butyl-2-ethyl-1,3-propandiol)
【0092】
実験例1:高分子樹脂の物性評価
前記準備例1、8、9及び比較準備例1及び2による高分子樹脂の物性を下記のように評価した。
【0093】
1)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC)を用いてガラス転移温度を測定し、測定時の昇温速度を20℃/minとして測定した。結果は、下記表2に示した通りである。
【0094】
2)重量平均分子量(M
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて重量平均分子量を測定し、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)を標準で使用して測定した。その結果を下記表2に示した。
【0095】
3)常温溶解度
前記高分子樹脂を25℃でジメチルホルムアミド溶媒に22重量%の濃度で溶解して樹脂が完全に溶解するか否かを観察した。樹脂が完全に溶解して透明な場合を○で表し、未溶解の樹脂が残っているか、または不透明な場合には、Xで表した。測定結果は、下記表2に示した。
【0096】
4)炭素原子と酸素原子間のモル比測定
前記準備例1、8、9及び比較製造例1及び2による高分子樹脂内の炭素原子と酸素原子間のモル比N/NをFT■NMRを用いて測定した。その結果を下記表2にそれぞれ示した。
【0097】
【表2】
【0098】
前記表2を参照すると、本発明による共重合ポリエステル樹脂は、いずれも60℃以上の高いガラス転移温度を有し、溶剤に対する常温溶解度も優れていることが分かった。
【0099】
一方、商用ポリエチレンテレフタレート樹脂である比較準備例2は、炭素原子と酸素原子間のモル比が低すぎて有機溶媒に対する親和度が低いことが予測でき、常温でのDMFに対する溶解度が低く、ほとんど溶けないことを実験で確認できた。
【0100】
また、商用ポリスルホン系高分子樹脂である比較準備例1は、炭素原子と酸素原子間のモル比であるN/N値が高すぎる値を示すことが分かった。
【0101】
実施例1~13、比較例1及び2
前記準備例で製造した共重合ポリエステル樹脂をそれぞれ下記表3のような濃度で極性非プロトン性有機溶媒であるジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)に溶解させて限外ろ過膜形成用組成物溶液を製造した。
【0102】
前記それぞれの溶液は、すべて常温(25℃)で溶解させたものである。
【0103】
製造された各組成物溶液を厚さが90μmのポリエステル不織布上に約150μmの厚さでキャスティングし、これを18℃の蒸留水に浸漬して相転移させ、十分に水洗して溶媒と水を置換した後、前記限外ろ過膜形成用組成物がキャスティングされた多孔性逆浸透膜を製造した。図1図3は、実施例1により製造された逆浸透膜の表面、断面をそれぞれ走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
【0104】
実験例2:限外ろ過膜形成用組成物の粘度及び限外ろ過膜がコーティングされた逆浸透膜の水透過度測定
前記実施例1~実施例13で製造された限外ろ過膜形成用コーティング組成物とこれをコーティングして製造した逆浸透膜をそれぞれ下記実験方法により物性及び性能を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0105】
1)組成物溶液の粘度測定方法
実施例及び比較例による限外ろ過膜形成用コーティング組成物溶液をそれぞれB型回転粘度計(Brookfield社製、ローターNo.LV-3,100rpm)を用いて25℃の条件下でコーティング液の粘度を測定した。
【0106】
2)逆浸透膜の水透過度測定方法
実施例及び比較例による限外ろ過膜形成用組成物がキャスティングされた多孔性逆浸透膜に対して、脱イオン水(DI)である原水を用いて25℃の温度及び1kgf/cmの圧力条件で運転して水透過度を測定した。
【0107】
【表3】
【0108】
前記表3を参照すると、実施例1~実施例13による本発明の共重合ポリエステル樹脂を含んで製造された限外ろ過膜を含む逆浸透膜は、共重合ポリエステル樹脂の溶液内の濃度によって粘度は上昇し、水透過度が変わることが分かった。特に、ポリエステル樹脂の濃度が高くなるほど水透過度は低くなることが確認でき、機械的耐久性、膜汚染抵抗性及び水透過度を考慮すると、濃度が14~16重量%であるとき、最も適切な物性が得られることが分かった。
【0109】
また、比較例1はポリスルホン系高分子を用いて限外ろ過膜を形成し、有機溶媒に対する溶解度も優れていることが分かった。しかし、ポリスルホン系高分子は、疎水性有機物質に対する親和度が高く、長期使用時には膜の汚染問題が発生し、水透過度が低いという短所があった。
【0110】
比較例2の場合、商用ポリエチレンテレフタレート樹脂で限外ろ過膜を形成しようと試みたが、有機溶媒に対する溶解度が低すぎて常温での限外ろ過膜の製造が不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、有機溶媒可溶性共重合ポリエステル、それを含む限外ろ過膜形成用組成物及びそれにより製造された高水透過度逆浸透膜に関し、具体的には、常温で有機溶媒に高い溶解度を持ち、低コストで限外ろ過膜の製造が可能なポリエステル、それを含む限外ろ過膜形成用組成物及びそれにより製造して高い水透過度を持ちながら、生産コストが節減される高水透過度逆浸透膜に関する。
図1
図2
図3