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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20240125BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20240125BHJP
   B29B 11/08 20060101ALI20240125BHJP
   B29C 45/78 20060101ALI20240125BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B29C49/22
B29C49/06
B29B11/08
B29C45/78
B29C45/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022550575
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033866
(87)【国際公開番号】W WO2022059695
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2020155082
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】土屋 要一
(72)【発明者】
【氏名】石坂 和也
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-258751(JP,A)
【文献】特表2010-503565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/22
B29C 49/06
B29B 11/08
B29C 45/78
B29C 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の樹脂製の中間成形体を射出成形する第1射出成形工程と、
前記中間成形体の外側に樹脂材料を射出成形し、前記中間成形体の外周側に樹脂層が積層された多層のプリフォームを製造する第2射出成形工程と、
射出成形時の保有熱を含む状態で前記プリフォームをブロー成形して、胴部よりも底部の肉厚が厚い樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有し、
前記中間成形体の内周側の底部に臨む部位には、肉厚が底部に向けて増加してゆくテーパー領域が形成され
前記ブロー成形の前に、前記第2射出成形工程で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整工程をさらに有し、
前記温度調整工程において、前記テーパー領域の温度および前記底部の温度は、前記胴部よりも低い温度に調整される
樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂製容器の底部内面において、中央部よりも外縁部が厚肉である
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記温度調整工程では、
前記プリフォームの胴部に臨む第1金型で前記胴部は加熱され、
前記プリフォームの底部外面に臨む第2の金型と、前記プリフォーム内に挿入される第3の金型で前記プリフォームが挟み込まれて、前記テーパー領域および前記底部が冷却される
請求項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
有底筒状の樹脂製の中間成形体を射出成形する第1射出成形部と、
前記中間成形体の外側に樹脂材料を射出成形し、前記中間成形体の外周側に樹脂層が積層された多層のプリフォームを製造する第2射出成形部と、
射出成形時の保有熱を含む状態で前記プリフォームをブロー成形して、胴部よりも底部の肉厚が厚い樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備え、
前記第1射出成形部は、前記中間成形体の内周側の底部に臨む部位に、肉厚が底部に向けて増加してゆくテーパー領域を形成し、
前記ブロー成形部の前に、前記第2射出成形部で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整部をさらに有し、
前記温度調整部において、前記テーパー領域の温度および前記底部の温度は、前記胴部よりも低い温度に調整される
樹脂製容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品や乳液等を収容する容器には、消費者の購買意欲を高めるため、容器自体に美的鑑賞に堪える外観が要求される。この種の化粧品等を収容する容器には、重厚感や高級感があり、繰返し使用しても美麗な状態を保つことが可能なガラス製のびんが好んで用いられている。しかし、ガラス製のびんは重くて割れやすく、輸送や製造にかかるコストも高い。そのため、化粧品等を収容する容器においてもガラス製のびんを樹脂製容器に代替することが検討されている。
【0003】
ここで、樹脂製容器の製造方法の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形方法が従来から知られている。ホットパリソン式のブロー成形方法は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器がブロー成形される。そのため、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0004】
化粧品等を収容する容器として樹脂製容器を採用する場合、高級感や重量感を強調するために、底部を厚肉にするとともに胴部を薄く均肉化させた形状に樹脂製容器を成形することが望ましい。ホットパリソン式のブロー成形方法によって上記の肉厚分布の樹脂製容器を成形しようとする場合には、底部の厚さが最も厚く設定された厚肉のプリフォームが適用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6230173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような厚肉のプリフォームはヒケ・気泡・白化等が生じ易いため、射出型と溶融樹脂との接触時間を長く確保して十分に冷却させる必要がある。そのため、ホットパリソン式のブロー成形方法で厚肉のプリフォームを射出成形する場合、プリフォームの射出成形時間(射出時間(充填時間)、保圧時間および冷却時間からなる)を長く確保する必要が生じる。また、容器やプリフォームの材料に結晶性の合成樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)を用いる場合、従来の製法では射出成形時間を長くしたとしても、底部が5mm以上の厚さでヒケ・気泡・白化等の成形不良がない厚肉の容器をホットパリソン法で成形することは非常に困難であった。
【0007】
ホットパリソン式のブロー成形方法では、容器の成形サイクルにおける各工程の律速はプリフォームの射出成形時間で規定される。つまり、厚肉のプリフォームを射出成形する場合には、律速段階であるプリフォームの射出成形時間がより長くなることから、容器の成形サイクルも長くなってしまう。
【0008】
また、ホットパリソン式のブロー成形方法で、例えば厚底(底部が胴部より相対的に厚い形状)の角形容器などをブロー成形する場合、以下のような課題も生じる。
第1に、厚肉のプリフォームの白化を抑制するために射出成形時に十分な冷却を行うと、プリフォームから賦形に必要な熱量(保有熱)も奪われてしまう。厚肉のプリフォームはスキン層(表面層)も厚く(固く)形成されるため、温度調整部で再加熱してもプリフォームの熱量が不足しうる。厚底の容器はプリフォームの底部が厚肉なため、底部を射出成形時に十分に冷却しようとすると相対的に薄肉である胴部は過度に冷却される。すると、胴部ではスキン層の比率が大きくなり熱量が著しく低下してしまう。
【0009】
その結果として、ブロー成形時に容器胴部の角部や稜線のエッジがはっきり賦形されない事象が生じうる。化粧品等を収容する容器では美的外観が重要視され、容器の成形精度が低いと商品の購買意欲の低下にもつながる。なお、通常、射出型(射出コア型および射出キャビティ型)の温度は一律に設定されるため(例えば20℃)、プリフォームの厚肉部(底部等)のみ選択的に低温化させることは困難である。
【0010】
第2に、ブロー成形された容器底部の内部(内面)において、外周部(隅部)側が凹んだ形状に成形されうる。例えば、胴部および底部の横断面が多角形(四角形等)をなす底部が厚肉の角形容器を成形する場合、プリフォームの底部も厚肉に形成される。ホットパリソン成形法では厚肉な部分ほど熱量(保有熱)が高くブロー成形時に延伸され易い。容器底部の外部(外面)はブロー型や底型のキャビティ面に倣って賦形されるが、容器底部の内部は外周部側が中心側部より薄肉になり凹んでしまう。つまり、容器底部の内部(内面)の横断面形状において、外周部側が凹状で中心部側が凸状の曲面形状になってしまう。
【0011】
さらに、角形容器は対角方向と対面方向でプリフォームの延伸倍率が異なり、対角方向側は対面方向側より延伸量が大きい。そのため、底部の角部に対応する対角方向の部位が対面方向の部位より一層延伸されて薄肉になり、底部内部の角部近傍の凹みがより顕著になる。かかる形状の容器に香水等の高額な液状物を収容すると、内容物を完全に使い切ることが困難になるので使い勝手が悪い。
【0012】
第3に、プリフォーム(または容器)の底部にヒケや気泡(ボイド)が生じ易い。上記のような底部が厚肉のプリフォームの射出成形の条件は厳しく、特に厚肉の底部に十分な保圧や冷却処理を作用させることは困難である。プリフォーム(または容器)の底部の樹脂が冷却される際に、底部での樹脂の密度差や温度差により冷却速度が部位毎に相違して局所的な異常収縮が生じ、ヒケや気泡が発生しやすい。また、ブロー成形時の容器底部の冷却が不十分になり易く、ブロー成形後の容器の底部はヒケが生じ易い。
【0013】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、厚底(底部が胴部より相対的に厚い形状)の樹脂製容器を、良好な形状かつ短い成形サイクルで製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様である樹脂製容器の製造方法は、有底筒状の樹脂製の中間成形体を射出成形する第1射出成形工程と、中間成形体の外側に樹脂材料を射出成形し、中間成形体の外周側に樹脂層が積層された多層のプリフォームを製造する第2射出成形工程と、射出成形時の保有熱を含む状態でプリフォームをブロー成形して、胴部よりも底部の肉厚が厚い樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する。中間成形体の内周側の底部に臨む部位には、肉厚が底部に向けて増加してゆくテーパー領域が形成される。また、ブロー成形の前に、第2射出成形工程で製造されたプリフォームの温度調整を行う温度調整工程をさらに有し、温度調整工程において、テーパー領域の温度および底部の温度は、胴部よりも低い温度に調整される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、厚底の樹脂製容器を、良好な形状かつ短い成形サイクルで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本実施形態の容器の正面図であり、(b)は図1(a)のIb-Ib線断面図であり、(c)は本実施形態の容器の縦断面図である。
図2】(a)はプリフォームの縦断面図であり、(b)はプリフォームの中間成形体の縦断面図である。
図3】本実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
図4】温度調整部の構成例を示す図である。
図5】容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図6】ブロー成形装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0018】
<樹脂製容器の構成例>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る樹脂製容器(以下、単に容器とも称する)10の構成例を説明する。
図1(a)は、本実施形態の容器10の正面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb-Ib線断面図であり、図1(c)は、本実施形態の容器10の縦断面図である。
【0019】
図1(b)に示すように、容器10は横断面形状が多角形、好ましくは四角形の角形容器である。容器10は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂材料で形成され、化粧水や乳液等の化粧品が内部に収容される。
【0020】
図1(a)、(c)に示すように、容器10は、上端に口部11を有する首部12と、首部12から連続する筒状の胴部13と、胴部13から連続する底部14とを有している。図1(c)に示すように、容器10の胴部13および底部14は、容器内面に臨む第1層(内層)24と容器外面に臨む第2層(外層)25とが積層された構造を有している。この構造は、後述するプリフォーム20をブロー成形することで形成される。
【0021】
また、図1(c)に示すように、容器10の底部14の肉厚(厚さ方向寸法)t2は、胴部13の肉厚t1よりも厚く形成されている。すなわち、胴部13の肉厚t1は底部14に対してかなり薄く形成されており、また胴部13は均肉化されている。例えば、肉厚t2は肉厚t1の2倍以上、より好ましくは3倍以上に設定される。なお、底部14において、第2層(外層)25は第1層(内層)24より厚く設定されることが好ましい。また、胴部13の肉厚t1は、例えば1.5~6mm(好ましくは2~4mm)に形成され、底部14の肉厚t2は、例えば4~20mm(好ましくは6~12mm、より好ましくは8~10mm)に形成される。
【0022】
容器10を上記の肉厚分布を有する形状とすることで高級感や重量感が強調され、容器10を消費者の持つ化粧品容器のイメージに近づけることができる。すなわち、容器10の美観を高めることができるため、容器10を見栄えが重要な化粧品容器等として使用することができる。
【0023】
また、図1(c)に示すように、容器10の底部内面の中央部14aは略平坦状に成形されている。容器10の底部内面において、中央部14aよりも外縁部14b(底部内面の外周側に位置し胴部内面と隣接する部分)が厚肉である。そして、底部内面の外縁部14bは、中央部14aからみて底側や外側に凹むことなく、底部14と胴部13とを曲線状につないでいる。これにより、内容液の残量が少ないときに底部内面の外縁部14bに内容液が残りにくくなり、内容液を最後まで使い切ることが容易となる。
【0024】
また、底部14において、第2層(外層)25と第1層(内層)24の底部内面の中央部14aはともに略平坦状に形成されていることが好ましい。また、底部14において、第2層(外層)25と第1層(内層)24の底部内面の外縁部14bはともに底側や外側に凹みがない曲線状に形成されていることが好ましい。なお、容器10の底部内面の縦断面は、中央部が外縁部よりもくぼんだ湾曲状であってもよい。
【0025】
<プリフォームの構成例>
図2は、本実施形態の容器10の製造に適用されるプリフォーム20の例を示す。
図2(a)は、プリフォーム20の縦断面図であり、図2(b)は、プリフォーム20の中間成形体20Aの縦断面図である。
【0026】
プリフォーム20の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム20は、円筒状に形成された胴部21と、胴部21の他端側を閉塞する底部22と、胴部21の一端側の開口に形成された首部23とを備える。
【0027】
また、プリフォーム20は、内周側に位置する第1層(内層)24と、外周側に位置する第2層(外層)25とが積層された構造を有している。首部23は第1層24の材料で構成されるが、胴部21および底部22においては、第1層24の外周に第2層25が積層されて構成されている。
【0028】
第2層25の胴部21の肉厚は、軸方向において略一定である。一方、第1層24の胴部21のうち底部22に臨む部位には、胴部21の肉厚が底部22に向けて増加してゆくテーパー領域(肉厚漸増領域)24aが内周側に形成されている。ここで、第1層24の胴部21の外径は軸方向において略一定であり、テーパー領域24aの内周面は底部22に向けて先細る形状をなしている。よって、テーパー領域24aの内周面は略円錐台形状になっている。なお、プリフォーム20において、容器10の対角方向と対面方向に対応する部位とでテーパー領域24aの肉厚の増加量を変更してもよい(例えば、テーパー領域24aにおいて対角方向の対応部位を対面方向の対応部位より厚くする、等)。
【0029】
プリフォーム20の胴部21の肉厚(第1層24と第2層25の胴部の厚さの合計)は、例えば4~10mm(好ましくは6~8mm)に、テーパー領域24aを除く底部22の肉厚(第1層24と第2層25の底部の厚さの合計)は、例えば8~20mm(好ましくは10~16mm)に、各々設定されている。また、プリフォーム20の第2層25において、底部22の肉厚は、例えば、胴部21の肉厚の2.0倍以下で10mm以下に設定されている。また、プリフォーム20の第1層24において、テーパー領域24aを除いた底部22の肉厚は、胴部21の肉厚の2.0倍以下、好ましくは1.5倍以下で6mm以下に設定されている。
このように、第1層24にテーパー領域24aを形成することで、プリフォーム20において、容器10の底部内面の外縁部14bに対応する部位が厚肉になる。
【0030】
図2(a)のプリフォーム20は、以下のようにして形成される。まず、胴部21、底部22および首部23を有する中間成形体20A(図2(b))を第1層24の材料で射出成形する。その後、中間成形体20Aの胴部21および底部22の外周に第2層25の材料をさらに射出成形することで、プリフォーム20が形成される。
【0031】
ここで、第1層24および第2層25の材料の組成は、同じでも異なっていてもよい。例えば、第1層24と第2層25で同じ樹脂材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。また、例えば、第1層24、第2層25の各材料で、着色材の分量(色の濃淡)や着色材の種類(色の種類)などを変化させてもよい。なお、第1層24または第2層25は、光を透過させる性質(透光性)を有していてもよい。
【0032】
プリフォーム20の寸法や仕様、例えば、第1層24および第2層25の厚さは、製造する容器10の形状に応じて適宜変更できる。なお、プリフォーム20の軸方向長さ(首部23の上端から底部22の第2層25の下端までの長さ)は、容器10より長く設定されることが好ましい。
【0033】
<容器の製造装置の説明>
図3は、本実施形態のブロー成形装置30の構成を模式的に示す図である。ブロー成形装置30は、容器の製造装置の一例であって、プリフォーム20を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して容器をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)を採用する。
【0034】
ブロー成形装置30は、第1射出成形部31と、第2射出成形部32と、温度調整部33と、ブロー成形部34と、取り出し部35と、搬送機構36とを少なくとも備える。第1射出成形部31、第2射出成形部32、温度調整部33、ブロー成形部34および取り出し部35は、搬送機構36を中心として所定角度(例えば72度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0035】
(搬送機構36)
搬送機構36は、図3の紙面垂直方向の軸を中心とする回転方向に移動する移送板(不図示)を備える。移送板は、単一の円盤状の平板部材または成形ステーションごとに分割された複数の略扇状の平板部材から構成される。移送板には、プリフォーム20の首部23(または容器10の首部12)を保持するネック型36a(図3では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。
【0036】
搬送機構36は、不図示の回転機構を備え、移送板を移動させることで、ネック型36aで首部23が保持されたプリフォーム20(または容器10)を、第1射出成形部31、第2射出成形部32、温度調整部33、ブロー成形部34、取り出し部35の順に搬送する。なお、搬送機構36は、昇降機構(縦方向の型開閉機構)やネック型の型開き機構をさらに備え、移送板を昇降させる動作や、第1射出成形部31や第2射出成形部32等における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0037】
(第1射出成形部31)
第1射出成形部31は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型(第1の射出キャビティ型)、射出コア型(第1の射出コア型)を備え、図2(b)に示すプリフォーム20の中間成形体20Aを製造する。第1射出成形部31には、プリフォーム20の第1層24の原材料(樹脂材料、合成樹脂)を供給する第1射出装置37が接続されている。
【0038】
第1射出成形部31においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構36のネック型36aとを型閉じして中間成形体20Aの型空間を形成する。そして、上記の型空間内に第1射出装置37から樹脂材料を流し込むことで、第1射出成形部31において、プリフォーム20の第1層24に相当する中間成形体20A(図2(b))が製造される。
【0039】
ここで、第1層24の原材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器10の仕様に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。また、樹脂材料には、着色材などの添加材が添加されていてもよい。また、第1層24(または第2層25)の原材料は、最終成形品である容器10の透明性が確保できる熱可塑性の結晶性樹脂であることが好ましい。
【0040】
なお、第1射出成形部31の型開きをしたときにも、搬送機構36のネック型は開放されずにそのまま中間成形体20Aを保持して搬送する。第1射出成形部31で同時に成形される中間成形体20Aの数(すなわち、ブロー成形装置30で同時に成形できる容器10の数)は、適宜設定できる。
【0041】
(第2射出成形部32)
第2射出成形部32は、図示を省略する射出キャビティ型を備え、中間成形体20Aの外周部に第2層25を射出成形する。第2射出成形部32には、プリフォーム20の第2層25の原材料(樹脂材料)を供給する第2射出装置38が接続されている。
【0042】
第2射出成形部32においては、射出キャビティ型の内部に中間成形体20Aを収容した後、中間成形体20Aの外周と射出キャビティ型の間に第2射出装置38から樹脂材料が射出される。これにより、第2射出成形部32において、中間成形体20Aの外周部に第2層25が形成され、図2(a)のプリフォーム20が製造される。
【0043】
第2層25の原材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、具体的な材料の種類は第1層24の原材料の説明と同様である。第2層25の原材料の組成は、第1層24と同じでも異なっていてもよい。例えば、第1層24と第2層25で同じ樹脂材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。また、例えば、第1層24、第2層25の各材料で、着色材の分量や着色材の種類などを変化させてもよい。
【0044】
(温度調整部33)
温度調整部33は、第2射出成形部32から搬送されるプリフォーム20の均温化や偏温除去、さらには温度分布の調整を行い、プリフォーム20の温度を最終ブローに適した温度(例えば約90℃~105℃)に調整する。また、温度調整部33は、射出成形後の高温状態のプリフォーム20を冷却する機能も担う。
【0045】
図4は、温度調整部33の構成例を示す図である。温度調整部33は、プリフォーム20の胴部21を収容する第1金型(加熱ポット41)と、プリフォーム20の底部22の外面に臨む第2金型(温度調整ポット42)と、プリフォーム20の内部に挿入される第3金型(温度調整ロッド43)とを備える。特に限定するものではないが、第1金型(加熱ポット41)と第2金型(温調ポット)は一体化されて単一の温度調整用キャビティ型として構成されることが好ましい。
【0046】
加熱ポット41は、例えば、ヒーターの設置または温度調整媒体の流れる流路の形成により、金型が所定の温度に保たれている。加熱ポット41は、径方向に所定の間隔をあけて非接触状態でプリフォーム20の胴部21を収容する内部空間を有し、プリフォーム20の胴部21を外側から輻射熱で加熱する。温度調整部33において、加熱ポット41に臨むプリフォーム20の胴部21は、底部22と比べて高い温度に調整される。
【0047】
温度調整ポット42は、プリフォーム20の底部22に対応する形状の金型であり、プリフォーム20の底部22を外側から接触して冷却する機能を担う。温度調整ポット42は、加熱ポット41の下側に配置され、プリフォーム20の底部22に面接触することで底部22の熱を逃がして冷却を行う。
【0048】
温度調整ロッド43は、軸方向に延びる本体部43aと、本体部43aの先端に形成された押圧部43bとを有している。温度調整ロッド43は、プリフォーム20を温度調整ポット42に向けて押圧し、プリフォーム20の底部22を温度調整ポット42に押し当てる機能を担う。
【0049】
本体部43aの外径は、プリフォーム20の第1層24の内径よりも小さい。したがって、温度調整ロッド43を第1層24に挿入したときに、本体部43aは第1層24の胴部21とは接触しない。
【0050】
押圧部43bの先端は、テーパー領域24aの形状に対応する先細のテーパー形状に形成されている。温度調整ロッド43を第1層24に挿入すると、本体部43aの先端に形成された押圧部43bは第1層24のテーパー領域24aと密着し、押圧部43bとテーパー領域24aとの熱交換が行われる。さらに、この状態で温度調整ロッド43を下方に押し込むことで、プリフォーム20の底部22は、温度調整ポット42の上側の金型面に押し当てられる。
【0051】
(ブロー成形部34)
ブロー成形部34は、温度調整部33で温度調整されたプリフォーム20に対してブロー成形を行い、容器10を製造する。
ブロー成形部34は、容器10の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、底型と、延伸ロッドおよびエア導入部材(いずれも不図示)を備える。ブロー成形部34は、プリフォーム20を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム20がブローキャビティ型の形状に賦形されて容器10を製造することができる。
【0052】
(取り出し部35)
取り出し部35は、ブロー成形部34で製造された容器10の首部12をネック型36aから開放し、容器10をブロー成形装置30の外部へ取り出すように構成されている。
【0053】
<容器の製造方法の説明>
次に、本実施形態のブロー成形装置30による容器の製造方法について説明する。図5は、容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【0054】
(ステップS101:第1射出成形工程)
まず、第1射出成形部31において、射出キャビティ型(第1の射出キャビティ型)、先端側にテーパー部を有する射出コア型(第1の射出コア型)および搬送機構36のネック型36aで形成された中間成形体20Aの型空間に第1射出装置37から樹脂材料を射出し、プリフォーム20の第1層24に相当する中間成形体20Aが製造される。
図2(b)に示すように、中間成形体20Aの内周側には、胴部21の肉厚が底部22に向けて増加してゆくテーパー領域24aが形成されている。
【0055】
その後、第1射出成形部31が型開きされると、搬送機構36の移送板が所定角度分移動し、ネック型36aに保持された中間成形体20Aが、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第2射出成形部32に搬送される。
【0056】
(ステップS102:第2射出成形工程)
続いて、第2射出成形部32において、射出キャビティ型(第2の射出キャビティ型)の内部に中間成形体20Aを収容した後、中間成形体20Aの外周と射出キャビティ型の間に第2射出装置38から樹脂材料が射出される。これにより、中間成形体20Aの外周部に第2層25が形成され、プリフォーム20が製造される。
【0057】
ここで、第2射出成形部32で射出成形を行う際には、中間成形体20Aの形状を保持するために、中間成形体20Aの内面形状に倣ったコア金型(第2の射出コア型、不図示)が中間成形体20Aに挿入される。中間成形体20Aが第2射出成形部32のコア金型と接触することでテーパー領域24aを含めて第1層24の追加冷却が行われ、第1層24の過剰な保有熱が低減される。
【0058】
その後、第2射出成形部32が型開きされると、搬送機構36の移送板が所定角度分移動し、ネック型36aに保持されたプリフォーム20が、射出成形時の保有熱を含んだ状態で温度調整部33に搬送される。
【0059】
(ステップS103:温度調整工程)
続いて、温度調整部33において、プリフォーム20の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
温度調整部33では、プリフォーム20が加熱ポット41(または温度調整用キャビティ型)内に収容され、プリフォーム20には温度調整ロッド43が挿入される。プリフォーム20の胴部21は、胴部21に臨む加熱ポット41の加熱を受けて温度調整される。なお、温度調整ロッド43の本体部43aは、第1層24とは接触しないので第1層24の温度調整に大きな影響を与えない。なお、加熱ポット41内にプリフォーム20を収容した際、プリフォーム20の底部22を温度調整ポット42に接触させて冷却してもよい。
【0060】
また、プリフォーム20の胴部21において、特に第1層24は、第1射出成形部31と第2射出成形部32の射出型に2度接触して熱量が低下している。そのため、胴部21は、第1金型(加熱ポット41)で加熱されることで賦形(ブロー成形)に必要な熱量を補充できる。
【0061】
一方、温度調整ロッド43の押圧部43bは第1層24のテーパー領域24aと密着(当接)し、押圧部43bとテーパー領域24aとの熱交換が行われる。さらに、この状態で温度調整ロッド43を下方に押し込むと、プリフォーム20の底部22は温度調整ポット42に押し当てられる。そして、プリフォーム20の底部22は、温度調整ポット42と温度調整ロッド43に挟み込まれて接触冷却される。
【0062】
これにより、プリフォーム20の底部22およびテーパー領域24aは、胴部21と比べて低い温度に調整される。つまり、プリフォーム20の胴部21は保有熱の大きな状態となり、プリフォーム20の底部22とテーパー領域24aは保有熱の小さい状態となる。なお、プリフォーム20に温度調整ロッド43を挿入した後、加熱ポット41と温度調整ポット42(または温度調整用キャビティ型)を上昇させてプリフォーム20を上記のポット内に収容してもよい。
【0063】
その後、搬送機構36の移送板が所定角度分移動し、ネック型36aに保持された温度調整後のプリフォーム20が、ブロー成形部34に搬送される。
【0064】
(ステップS104:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部34において、容器10のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型を型閉じしてプリフォーム20を型空間に収容し、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム20の首部23にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッド(縦軸延伸部材)を降下させてプリフォーム20の底部22を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム20を横軸延伸する。これにより、プリフォーム20は、ブローキャビティ型の型空間に密着するように膨出して賦形され、容器10にブロー成形される。なお、底型は、ブローキャビティ型の型閉じ前はプリフォーム20の底部22と接触しない下方の位置で待機し、型閉前または型閉後に成形位置まで素早く上昇する。
【0065】
ホットパリソン方式のブロー成形では、プリフォーム20の保有する内部熱量が大きいほどプリフォーム20が変形しやすくなる。上記のように、加熱ポット41に臨んでいたプリフォーム20の胴部21は保有熱の大きな状態となる一方、温度調整ポット42で接触冷却されたプリフォーム20の底部22とテーパー領域24aは保有熱の小さい状態となっている。つまり、プリフォーム20は、内部熱量の大きな胴部21の方が底部22よりも変形しやすい。
【0066】
したがって、プリフォーム20にブローエアが供給されると、内部熱量の大きな胴部21が先行して延伸され、内部熱量の小さい底部22が遅れて延伸される。これにより、プリフォーム20の底部22が延伸されにくくなるので、ブロー成形で賦形される容器10の底部14を厚肉にすることができる。
【0067】
また、プリフォーム20の底部近傍には、第1層24の肉厚が底部22に向けて増加するテーパー領域24aが形成されている。テーパー領域24aは温度調整ロッド43により接触冷却され、さらに、テーパー領域24aは外部からも温度調整ポット42により冷却されるため、胴部21よりも保有熱が小さく変形しにくい状態にある。そのため、ブロー成形のときには容器10の底部14にテーパー領域24aの分の樹脂が残り、図1(c)に示すように容器10の底部内面の外縁部14bが中央部14aよりも厚肉になる。
【0068】
特に、容器10の胴部や底部の横断面形状が多角形状(四角形状)である場合、容器底部の内面形状において、対角領域にあたる外縁部14bの凹みが確実に抑制できる。つまり、容器底部の内面において中央部14aから外縁部14bへのヒケや延伸による肉厚減少が抑制されるので、容器底部の内面形状を平らに形成することができる。
【0069】
(ステップS105:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型が型開きされる。これにより、ブロー成形部34から容器10が移動可能となる。
続いて、搬送機構36の移送板が所定角度分移動し、容器10が取り出し部35に搬送される。取り出し部35において、容器10の首部12がネック型36aから開放され、容器10がブロー成形装置30の外部へ取り出される。
【0070】
以上で、容器の製造方法における1つのサイクルが終了する。その後、搬送機構36の移送板を所定角度分移動させることで、上記のS101からS105の各工程が繰り返される。なお、ブロー成形装置30の運転時には、1工程ずつの時間差を有する少なくとも5組分の容器の製造が並列に実行される。
また、ブロー成形装置30の構造上、第1射出成形工程、第2射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の各時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0071】
以上のように、本実施形態では、第1射出成形工程でプリフォーム20の第1層24に相当する中間成形体20Aが射出成形され、第2射出成形工程で中間成形体20Aの外周部に第2層25を射出成形して多層のプリフォーム20が製造される。そして、ブロー成形工程では、上記のプリフォーム20をブロー成形して、容器胴部の肉厚t1よりも容器底部の肉厚t2が厚い容器10が製造される。特に、胴部または底部の横断面形状が多角形状(例えば四角形)であり、胴部の肉厚t1よりも底部の肉厚t2が厚い容器において、中央部14aから外縁部14bのヒケや延伸による肉厚減少を抑制して底部内面形状を平らとした容器が良好に製造できる。
【0072】
化粧品容器等に適した厚肉の容器10をホットパリソン式のブロー成形方法で製造する場合、容器底部の肉厚に相応する厚肉のプリフォームを使用する必要が生じる。本実施形態では、厚肉のプリフォーム20を2回の射出成形工程で製造する。そのため、厚肉のプリフォームを1回の射出成形工程で成形するときの射出成形時間と比べて、第1射出成形工程および第2射出成形工程のそれぞれの射出成形時間はいずれも短くなる。これにより、律速段階となるプリフォームの射出成形時間が短縮されるので、化粧品容器等に適した厚肉の容器10を製造するときの成形サイクルを短縮できる。
【0073】
また、本実施形態では、厚肉のプリフォーム20を2回の射出成形工程で製造するので、厚肉のプリフォームを1回の射出成形工程で成形するときと比べて、第1射出成形工程、第2射出成形工程で射出するプリフォームを薄くすることができ、成形の難度も低下する。つまり、本実施形態では、プリフォームにおいて相対的に厚肉である底部にも、冷却や保圧の処理を十分に及ぼすことができる。そのため、胴部等より相対的に厚肉であるプリフォームの底部も十分に冷却できるためヒケや気泡の発生を抑制でき、容器10の品質を向上させることができる。また、第1射出成形工程、第2射出成形工程での金型内での冷却によって、冷却不足による白化(結晶化)も生じにくくなるので、容器10の品質を向上させることができる。
【0074】
特に、プリフォーム20や容器10においてはコア層(内層)が冷却不足になりやすいが、本実施形態でのプリフォーム20および容器10は、第1層24および第2層25を有している。第1層24、第2層25では、それぞれのスキン層の間にコア層が形成されるので、プリフォーム20全体でコア層が分割されている。そして、第1層24のコア層は、第1の射出キャビティ型等で冷却される。これにより、従来よりも短時間の冷却でも白化を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、厚肉のプリフォーム20を2回の射出成形工程で製造するので、冷却時間などのパラメータを内層と外層で別々に調整できる。したがって、厚肉のプリフォームを1回の射出成形工程で成形するときと比べて、外層側の熱量が調整しやすく、プリフォーム20の外側である第2層側に熱量を残しやすい。これにより、ブロー成形で容器胴部の角部や稜線のエッジをはっきりと賦形させることが容易となり、容器10の品質を向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、プリフォーム20の底部近傍に第1層24の肉厚が底部22に向けて増加するテーパー領域24aが形成されている。そのため、ブロー成形のときには容器10の底部14にテーパー領域24aの分の樹脂が残るので、容器10の底部内面の外縁部14bが中央部14aよりも厚肉にできる。かかる容器10では、内容液の残量が少ないときに底部内面の外縁部14bに内容液が残りにくくなり、内容液を最後まで使い切ることが容易となる。
【0077】
また、本実施形態の温度調整工程では、プリフォーム20の底部22およびテーパー領域24aを金型で接触冷却し、プリフォーム20の胴部21よりも保有熱を小さくしている。これにより、内部熱量の大きな胴部21が先行して延伸され、内部熱量の小さい底部22とテーパー領域24aが遅れて延伸され、容器10の底部14を所望の形状に成形することがより容易となる。
【0078】
なお、本実施形態では、厚肉のプリフォーム20を2回の射出成形工程で製造するので、プリフォーム20の内周側の第1層24の材料と外周側の第2層25の材料の組成を異ならせることもできる。これにより、容器10の製造コストの抑制や意匠性の高い容器10の製造を実現することができる。
【0079】
例えば、容器10を着色材で内部着色する場合、第1層24または第2層25の着色材の添加量を抑制することで、製造コストを低下させることができる。例えば、第1層24の材料にのみ着色材を添加させても構わない。
また、第1層24と第2層25とで色彩や模様のパターンを変化させて容器10の意匠性を向上させてもよい。また、第1層24と第2層25で屈折率に差を生じさせて、第1層24と第2層25の界面で内部反射による光の散乱が生じるようにしてもよい。
【0080】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0081】
例えば、本発明の製造方法で製造される容器は、上記実施形態のように横断面が四角形の角形容器に限定されるものではない。例えば、上記実施形態のテーパー領域を有するプリフォームを用いて、横断面が三角形状または五角形以上の多角形状、あるいは楕円状の容器などをブロー成形することもできる。
【0082】
また、ブロー成形装置30の構成は、図3の構成に限定されることはない。例えば、図6に示すように、ブロー成形装置30は、第1射出成形部31と第2射出成形部32の間に、プリフォーム20の第1層24のみを加熱または冷却できる温度調整部(第2の温度調整部)31aを更に備えていてもよい。この場合、各成形ステーションは、搬送機構36を中心として60度ずつ回転した位置に配置される。そして、プリフォーム20は、搬送機構36の移送板36aにより各成形ステーションに順次搬送される。温度調整部31bの構成は温度調整部31と同様に、第1金型(加熱ポット41)と第2金型(温度調整ポット42)と第3金型(温度調整ロッド43)とを備えた構成が好ましい。但し、中間成形体20A(第1層24)の底部の厚さが胴部とほぼ同じ場合(例えば、底部の厚さが胴部の0.7~1.3倍の場合)には、温度調整部31bは第1金型(加熱ポット41)と第3金型(温度調整ロッド43)のみ備えた構成としてもよい。また、図6のブロー成形装置30の構成は、温度調整部31bを除き、図3のものと同様であることが好ましい。
【0083】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
10…容器、20…プリフォーム、20A…中間成形体、21…胴部、22…底部、23…首部、24…第1層、24a…テーパー領域、25…第2層、30…ブロー成形装置、31…第1射出成形部、32…第2射出成形部、33…温度調整部、34…ブロー成形部、37…第1射出装置、38…第2射出装置、41…加熱ポット、42…温度調整ポット、43…温度調整ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6