(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】副室燃焼4ストロークエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 19/18 20060101AFI20240125BHJP
F02B 19/12 20060101ALI20240125BHJP
F02D 41/34 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F02B19/18 B
F02B19/12 B
F02D41/34
(21)【出願番号】P 2022570228
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2022039515
(87)【国際公開番号】W WO2023157382
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/005817
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】江頭 周一
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-017967(JP,A)
【文献】実開昭61-184820(JP,U)
【文献】特開2018-131911(JP,A)
【文献】特開2007-113535(JP,A)
【文献】特開昭52-021509(JP,A)
【文献】特開昭52-118109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 19/08 ~ 19/12
F02B 19/16 ~ 19/18
F02D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路が接続される少なくとも1つの吸気口および排気通路が接続される少なくとも1つの排気口を有する主燃焼室と、
前記吸気通路を通過して前記主燃焼室に吸入される空気の量を調整するスロットル弁と、
ガソリン燃料、アルコール燃料、またはガソリン・アルコール混合燃料である液体燃料を前記吸気通路の内部に噴射する吸気通路噴射弁と、
前記主燃焼室よりも容積が小さく形成され、その内部空間が複数の連通孔を介して前記主燃焼室の内部空間と連通し、その内部空間に副室スパークプラグの一部が露出する副室と、
前記吸気通路噴射弁および前記副室スパークプラグを制御する制御装置とを有する副室燃焼4ストロークエンジンであって、
(a)前記制御装置は、前記スロットル弁の開度が小さい低負荷領域の少なくとも一部において、排気上死点と吸気下死点との中間点よりも前に前記液体燃料の噴射が終了し、且つ、前記吸気通路および前記主燃焼室で混合された混合気が燃焼後に三元触媒で処理できる第1空燃比または前記第1空燃比よりもリッチな第2空燃比となるように、前記吸気通路噴射弁を制御し、
(b)前記副室燃焼4ストロークエンジンは、前記副室に燃料を噴射する副室燃料噴射弁、および、前記副室または前記主燃焼室における混合気の点火を補助する点火補助装置のどちらも有さず、
(c)前記副室の容積に対する前記副室の内面の面積の比率を抑えるように、前記副室は、(i)前記副室スパークプラグを除き前記副室の内面に突起が形成されず、且つ、(ii)前記副室の内部空間の前記副室スパークプラグの中心軸線と平行なプラグ軸方向の長さと前記副室の内部空間の前記プラグ軸方向に直交する方向の最大長さのうち大きい方の長さが小さい方の長さの2倍より小さく形成され、
(d)前記吸気通路に噴射された前記液体燃料が前記少なくとも1つの吸気口に含まれる第1吸気口から前記複数の連通孔のうちの1つである第1吸気孔を通って前記副室に導入されやすいように、前記第1吸気孔は、(i)前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線と前記第1吸気口の中心とを結ぶ線分が前記第1吸気孔の中心軸線に対してなす角度θが、-17°<θ<17°を満たし、且つ、(ii)前記主燃焼室を形成するシリンダ孔の中心軸線に平行で前記第1吸気孔の中心軸線を含む平面で切断した断面において、前記第1吸気孔の中心軸線が、前記第1吸気口を開閉する吸気弁の開弁時に前記吸気弁のバルブヘッドと前記第1吸気口との間を通るように形成されることを特徴とする副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項2】
前記第1吸気孔を通って前記副室に導入された前記液体燃料が前記複数の連通孔から排出され難くなるように、前記プラグ軸方向に見たとき、および、前記第1吸気孔の中心軸線を含む平面と前記シリンダ孔の中心軸線の両方に直交する方向に見たときに、前記第1吸気孔の中心軸線が、前記複数の連通孔のうち前記第1吸気孔ではないいずれの連通孔の中心軸線とも一致しないように前記複数の連通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項3】
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、
前記複数の連通孔のいずれかである複数の吸気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、且つ、前記第1吸気孔を含み、
前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、
前記複数の吸気孔の数が前記複数の排気孔の数よりも少ないことを特徴とする請求項1
に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項4】
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、
前記複数の連通孔のいずれかである複数の吸気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、且つ、前記第1吸気孔を含み、
前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、
前記複数の吸気孔の数が前記複数の排気孔の数よりも少ないことを特徴とする請求項2に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項5】
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、
前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、
前記第1吸気孔の最小径が前記複数の排気孔の最大径よりも大きいことを特徴とする請求項1
に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項6】
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、
前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、
前記第1吸気孔の最小径が前記複数の排気孔の最大径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項7】
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、
前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、
前記第1吸気孔の最小径が前記複数の排気孔の最大径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項8】
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、
前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、
前記第1吸気孔の最小径が前記複数の排気孔の最大径よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項9】
前記複数の連通孔が、前記主燃焼室の内部空間に突出する副室壁部に形成されており、
前記副室壁部の外面を通らず前記副室の内部空間を通り前記プラグ軸方向に直交するいずれかの平面によって前記副室の内部空間を2つの空間に分けた場合に、前記2つの空間のうち前記主燃焼室に近い方の空間の体積が、前記2つの空間のうち前記主燃焼室から遠い方の空間の体積よりも小さくなるように前記副室は形成されていることを特徴とする請求項1
に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項10】
前記複数の連通孔が、前記主燃焼室の内部空間に突出する副室壁部に形成されており、
前記副室壁部の外面を通らず前記副室の内部空間を通り前記プラグ軸方向に直交するいずれかの平面によって前記副室の内部空間を2つの空間に分けた場合に、前記2つの空間のうち前記主燃焼室に近い方の空間の体積が、前記2つの空間のうち前記主燃焼室から遠い方の空間の体積よりも小さくなるように前記副室は形成されていることを特徴とする請求項2~8のいずれか1項に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項11】
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、
前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、
前記第1吸気孔は、前記主燃焼室に近いほど径が大きくなるように形成され、
前記複数の排気孔は、前記主燃焼室に近いほど径が大きくなるように形成されていないことを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項12】
前記複数の連通孔の各々の中心軸線に直交する断面の面積の合計が、5.7mm
2以上7.6mm
2以下であることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項13】
前記複数の連通孔の各々の中心軸線に直交する断面の面積の合計が、5.7mm
2
以上7.6mm
2
以下であることを特徴とする請求項11に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項14】
前記第1吸気孔の最小径が1.0mm以上1.2mm以下であり、
且つ、前記副室の容積が328mm
3以上802mm
3以下である
か、または、
前記第1吸気孔の最小径が1.2mmよりも大きく1.4mm以下であり、且つ、前記副室の容積が328mm
3
以上1151mm
3
以下であることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項15】
前記第1吸気孔の最小径が1.0mm以上1.2mm以下であり、且つ、前記副室の容積が328mm
3
以上802mm
3
以下であるか、または、
前記第1吸気孔の最小径が1.2mmよりも大きく1.4mm以下であり、
且つ、前記副室の容積が328mm
3以上1151mm
3以下であることを特徴とする請求項
11に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項16】
前記第1吸気孔の最小径が1.0mm以上1.2mm以下であり、且つ、前記副室の容積が328mm
3
以上802mm
3
以下であるか、または、
前記第1吸気孔の最小径が1.2mmよりも大きく1.4mm以下であり、且つ、前記副室の容積が328mm
3
以上1151mm
3
以下であることを特徴とする請求項12に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項17】
前記副室燃焼4ストロークエンジンはノックセンサを有さず、
前記制御装置は、前記ノックセンサではない前記副室燃焼4ストロークエンジンの運転状態を検出する運転状態検出センサの出力に基づいて、予め定められた点火時期で前記副室の内部の混合気に点火するように前記副室スパークプラグを制御することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項18】
スーパーチャージャーおよびターボチャージャーのどちらも有さないことを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項19】
前記主燃焼室の内部に燃料を噴射する主燃焼室燃料噴射弁を有さないことを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【請求項20】
前記副室燃焼4ストロークエンジンの圧縮比が11以上であることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の副室燃焼4ストロークエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主燃焼室および副室を有する副室燃焼4ストロークエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているような、複数の連通孔を介して連通する主燃焼室および副室を有する副室燃焼4ストロークエンジンが知られている。副室の内部の混合気はスパークプラグによって点火される。特許文献1の副室燃焼4ストロークエンジンは、副室に燃料を噴射する副室燃料噴射弁を有さず、吸気通路に燃料を噴射する吸気通路噴射弁を有する。特許文献1の吸気通路噴射弁は、ストイキオメトリックまたはストイキオメトリックよりもリッチな空燃比の混合気が主燃焼室に生成されるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の副室燃焼4ストロークエンジンは、主燃焼室における混合気の点火を補助する補助スパークプラグ(点火補助装置)を有する。特許文献1の副室燃焼4ストロークエンジンは、低負荷時におけるエンジン性能を確保するために、補助スパークプラグを有する。そのため、仮に、補助スパークプラグ(点火補助装置)が設けられない場合、低負荷時のエンジン性能を確保することが困難となる。
【0005】
本発明は、点火補助装置が設けられなくても低負荷時のエンジン性能を確保できる副室燃焼4ストロークエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有する。
吸気通路が接続される少なくとも1つの吸気口および排気通路が接続される少なくとも1つの排気口を有する主燃焼室と、前記吸気通路を通過して前記主燃焼室に吸入される空気の量を調整するスロットル弁と、ガソリン燃料、アルコール燃料、またはガソリン・アルコール混合燃料である液体燃料を前記吸気通路の内部に噴射する吸気通路噴射弁と、前記主燃焼室よりも容積が小さく形成され、その内部空間が複数の連通孔を介して前記主燃焼室の内部空間と連通し、その内部空間に副室スパークプラグの一部が露出する副室と、前記吸気通路噴射弁および前記副室スパークプラグを制御する制御装置とを有する副室燃焼4ストロークエンジンである。(a)前記制御装置は、前記スロットル弁の開度が小さい低負荷領域の少なくとも一部において、排気上死点と吸気下死点との中間点よりも前に前記液体燃料の噴射が終了し、且つ、前記吸気通路および前記主燃焼室で混合された混合気が燃焼後に三元触媒で処理できる第1空燃比または前記第1空燃比よりもリッチな第2空燃比となるように、前記吸気通路噴射弁を制御する。(b)前記副室燃焼4ストロークエンジンは、前記副室に燃料を噴射する副室燃料噴射弁、および、前記副室または前記主燃焼室における混合気の点火を補助する点火補助装置のどちらも有さない。(c)前記副室の容積に対する前記副室の内面の面積の比率を抑えるように、前記副室は、(i)前記副室スパークプラグを除き前記副室の内面に突起が形成されず、且つ、(ii)前記副室の内部空間の前記副室スパークプラグの中心軸線と平行なプラグ軸方向の長さと前記副室の内部空間の前記プラグ軸方向に直交する方向の最大長さのうち大きい方の長さが小さい方の長さの2倍より小さく形成される。(d)前記吸気通路に噴射された前記液体燃料が前記少なくとも1つの吸気口に含まれる第1吸気口から前記複数の連通孔のうちの1つである第1吸気孔を通って前記副室に導入されやすいように、前記第1吸気孔は、(i)前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線と前記第1吸気口の中心とを結ぶ線分が前記第1吸気孔の中心軸線に対してなす角度θが、-17°<θ<17°を満たし、且つ、(ii)前記主燃焼室を形成するシリンダ孔の中心軸線に平行で前記第1吸気孔の中心軸線を含む平面で切断した断面において、前記第1吸気孔の中心軸線が、前記第1吸気口を開閉する吸気弁の開弁時に前記吸気弁のバルブヘッドと前記第1吸気口との間を通るように形成される。
【0007】
この構成によると、副室スパークプラグを除き副室の内面に突起が形成されていない。また、副室の内部空間のプラグ軸方向の長さと副室の内部空間のプラグ軸方向に直交する方向の最大長さのうち大きい方の長さが小さい方の長さの2倍より小さい。この2つの特徴により、副室の容積に対する副室の内面の面積の比率が抑えられている。
また、プラグ軸方向に平行な方向に見たときに、複数の連通孔のうちの1つである第1吸気孔の中心軸線に対して副室スパークプラグの中心軸線と第1吸気口の中心とを結ぶ線分がなす角度θは、-17°<θ<17°を満たす。また、シリンダ孔の中心軸線に平行で第1吸気孔の中心軸線を含む平面で切断した断面において、第1吸気孔の中心軸線は、第1吸気口を開閉する吸気弁の開弁時に吸気弁のバルブヘッドと第1吸気口との間を通る。この2つの特徴により、吸気弁の開弁時に、吸気弁のバルブヘッドに沿って拡散された液体燃料の粒子の流れが第1吸気孔に導入されやすい。それにより、吸気通路に噴射された液体燃料が第1吸気口から第1吸気孔を通って副室に導入されやすい。なお、副室に導入される液体燃料が通る連通孔は、複数の連通孔のうち第1吸気孔に限らない。
低負荷領域の少なくとも一部において、排気上死点と吸気下死点との中間点よりも前に、吸気通路噴射弁による液体燃料の噴射が終了する。そのため、吸気通路噴射弁から吸気通路内に噴射された燃料が、吸気口から主燃焼室に導入されやすい。低負荷領域の少なくとも一部において吸気通路および主燃焼室で混合された混合気は第1空燃比または第1空燃比よりもリッチな第2空燃比であるため、混合気が第1空燃比よりもリーンな空燃比である場合に比べて、低負荷時の液体燃料の量は多い。しかし、低負荷時の液体燃料の量は、高負荷時の液体燃料の量よりは少ない。また、吸気通路噴射弁から噴射されたガソリン燃料、アルコール燃料、またはガソリン・アルコール混合燃料である液体燃料が、吸気口から主燃焼室に導入されたとき、液体燃料の粒子は比較的大きく、液体燃料の粒子の慣性力は比較的大きい。上述したように、吸気弁のバルブヘッドに沿って拡散された液体燃料の粒子の流れが導入されやすいように第1吸気孔が形成され、且つ、第1吸気孔の後方に容積に対する内面の面積の比率を抑えるように副室が形成されていることにより、例えばアイドル時のような低負荷時に量が少なく、粒子が比較的大きく慣性力が比較的大きい液体燃料を、副室の内部空間の奥の方まで導入することができる。それにより、副室の混合気の着火性と複数の連通孔から噴射される火炎の噴射力を高めることができ、点火補助装置が設けられなくても低負荷時のエンジン性能を確保できる。なお、液体燃料が副室に導入されるとは、燃料が液体の状態で副室に導入されるという意味ではなく、本出願においてガソリン燃料、アルコール燃料、およびガソリン・アルコール混合燃料の総称である液体燃料が副室に導入されることを単に意味する。混合気の着火性が高いとは、混合気が点火(着火)されやすいことを意味する。
【0008】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記第1吸気孔を通って前記副室に導入された前記液体燃料が前記複数の連通孔から排出され難くなるように、前記プラグ軸方向に見たとき、および、前記第1吸気孔の中心軸線を含む平面と前記シリンダ孔の中心軸線の両方に直交する方向に見たときに、前記第1吸気孔の中心軸線が、前記複数の連通孔のうち前記第1吸気孔ではないいずれの連通孔の中心軸線とも一致しないように前記複数の連通孔が形成されている。
【0009】
この構成によると、プラグ軸方向に見たときに、第1吸気孔の中心軸線が、第1吸気孔ではないいずれの連通孔の中心軸線とも一致しない。また、第1吸気孔の中心軸線を含む平面とシリンダ孔の中心軸線の両方に直交する方向に見たとき、第1吸気孔の中心軸線が、第1吸気孔ではないいずれの連通孔の中心軸線とも一致しない。そのため、第1吸気孔を通って副室に導入された液体燃料が複数の連通孔から排出され難くなる。したがって、液体燃料を副室の内部空間の奥の方まで導入しやすい。その結果、副室の混合気の着火性と副室の複数の連通孔から噴射される火炎の噴射力をより高めることができる。よって、低負荷時のエンジン性能をより確実に確保できる。
【0010】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、前記複数の連通孔のいずれかである複数の吸気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、且つ、前記第1吸気孔を含み、前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、前記複数の吸気孔の数が前記複数の排気孔の数よりも少ない。
【0011】
この構成によると、吸気孔の数が排気孔の数よりも少ないため、吸気孔の数が排気孔の数と同じかそれより多い場合に比べて、複数の吸気孔の断面積の合計と複数の排気孔の断面積の合計をそれぞれ維持しつつ、吸気孔の径をより大きく、排気孔の径をより小さくできる。そのため、複数の連通孔から噴射される火炎の噴射力を維持しつつ、吸気通路に噴射された液体燃料を複数の吸気孔から副室に導入しやすい。その結果、低負荷時のエンジン性能をより確実に確保できる。液体燃料は複数の排気孔から副室に導入されてもよい。また、複数の吸気孔の断面積の合計と複数の排気孔の断面積の合計をそれぞれ維持しつつ、排気孔の径をより小さくできるため、排ガスが排気孔から副室に導入されることを抑制できる。なお、副室に導入される液体燃料が通る連通孔は、複数の連通孔のうち吸気孔に限らない。
【0012】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、前記第1吸気孔の最小径が前記複数の排気孔の最大径よりも大きい。
【0013】
この構成によると、第1吸気孔の最小径が複数の排気孔の最大径よりも大きいため、第1吸気孔の最小径が複数の排気孔の最大径と同じかそれより小さい場合に比べて、複数の連通孔から噴射される火炎の噴射力を維持しつつ、吸気通路に噴射された液体燃料を第1吸気孔から副室により導入しやすい。その結果、低負荷時のエンジン性能をより確実に確保できる。また、第1吸気孔の最小径が複数の排気孔の最大径よりも大きいため、排ガスが排気孔から副室に導入されることを抑制できる。なお、副室に導入される液体燃料が通る連通孔は、複数の連通孔のうち吸気孔に限らない。
【0014】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記連通孔の中心軸線と重なり、この連通孔から前記副室の内部空間を通らずに前記主燃焼室に向かって延びる半直線を、この連通孔の方向線と定義した場合、前記複数の連通孔のいずれかである複数の排気孔は、前記プラグ軸方向に見たときに、前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの排気口までの最短距離が前記副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における前記少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い前記方向線をそれぞれ有し、前記第1吸気孔は、前記主燃焼室に近いほど径が大きくなるように形成され、前記複数の排気孔は、前記主燃焼室に近いほど径が大きくなるように形成されていない。
【0015】
この構成によると、第1吸気孔は主燃焼室に近いほど径が大きくなるように形成されているため、主燃焼室に近いほど径が大きくなるように形成されていない場合に比べて、第1吸気孔から噴射される火炎の噴射力を維持しつつ、吸気通路に噴射された液体燃料を第1吸気孔から副室により導入しやすい。その結果、低負荷時のエンジン性能をより確実に確保できる。また、複数の排気孔は、主燃焼室に近いほど径が大きくなるように形成されていないため、主燃焼室に近いほど径が大きくなるように形成されている場合に比べて、排ガスが排気孔から副室に導入されることを抑制できる。なお、副室に導入される液体燃料が通る連通孔は、複数の連通孔のうち吸気孔に限らない。
【0016】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記複数の連通孔の各々の中心軸線に直交する断面の面積の合計が、5.7mm2以上7.6mm2以下である。
【0017】
この構成によると、アイドル時のような低負荷時においても複数の燃焼室から噴射される火炎の噴射力を確保しやすい。したがって、低負荷時のエンジン性能をより確実に確保できる。なお、複数の連通孔が、径が一定ではない連通孔を含む場合、複数の連通孔の各々の中心軸線に直交する断面の面積の合計が5.7mm2以上7.6mm2以下であるとは、複数の連通孔の各々の中心軸線に直交する断面の面積の最小値の合計、および、複数の連通孔の各々の中心軸線に直交する断面の面積の最大値の合計の少なくとも一方が、5.7mm2以上7.6mm2以下であることを意味する。なお、複数の連通孔の各々は径が一定でもよい。
【0018】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記第1吸気孔の最小径が1.0mm以上1.2mm以下であり、前記副室の容積が328mm3以上802mm3以下である。
【0019】
この構成によると、アイドル時のような低負荷時においても複数の燃焼室から噴射される火炎の噴射力を確保しやすい。したがって、低負荷時のエンジン性能をより確実に確保できる。
【0020】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記第1吸気孔の最小径が1.2mmよりも大きく1.4mm以下であり、前記副室の容積が328mm3以上1151mm3以下である。
【0021】
この構成によると、アイドル時のような低負荷時においても複数の燃焼室から噴射される火炎の噴射力を確保しやすい。したがって、低負荷時のエンジン性能をより確実に確保できる。
【0022】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記複数の連通孔が、前記主燃焼室の内部空間に突出する副室壁部に形成されている。前記副室壁部の外面を通らず前記副室の内部空間を通り前記プラグ軸方向に直交するいずれかの平面によって前記副室の内部空間を2つの空間に分けた場合に、前記2つの空間のうち前記主燃焼室に近い方の空間の体積が、前記2つの空間のうち前記主燃焼室から遠い方の空間の体積よりも小さくなるように前記副室は形成されている。
【0023】
この構成によると、副室壁部は主燃焼室の内部空間に突出しているものの、その突出量は小さい。したがって、副室壁部に形成される複数の連通孔は、主燃焼室の内面のうち副室壁部の外面ではない部分に近い。そのため、主燃焼室の内面に沿って流れる液体燃料の粒子を、第1吸気孔から副室に導入しやすい。
【0024】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記副室燃焼4ストロークエンジンはノックセンサを有さない。前記制御装置は、前記ノックセンサではない前記副室燃焼4ストロークエンジンの運転状態を検出する運転状態検出センサの出力に基づいて、予め定められた点火時期で前記副室の内部の混合気に点火するように前記副室スパークプラグを制御する。
【0025】
副室燃焼4ストロークエンジンは副室を有するため、副室が無い場合よりも、点火時期を徐々に進角させたときのノッキングの起こりやすさの急激な上昇を抑制できる。しかも、本発明は上述したように吸気通路内に噴射された液体燃料を副室内に導入しやすいため、ノッキングの起こりやすさの急激な上昇をより抑制できる。そのため、ノックセンサを用いることなくノッキングを回避しつつ点火時期をMBT(Minimum advance for Best Torque)と呼ばれる最適点火時期により近づけることができる。
【0026】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
スーパーチャージャーおよびターボチャージャーのどちらも有さない。
【0027】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記主燃焼室の内部に燃料を噴射する主燃焼室燃料噴射弁を有さない。
【0028】
本発明の一実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンは、以下の構成を有していてもよい。
前記副室燃焼4ストロークエンジンの圧縮比が11以上である。
【0029】
本発明および実施の形態において、低負荷領域とは、エンジンの負荷の最低から最高までの領域を2等分した場合の低い方の領域である。
【0030】
本発明および実施の形態において、排気上死点と吸気下死点との中間点よりも前に燃料噴射を終了するとは、1サイクル(4ストローク)において、クランク角が排気上死点と吸気下死点との中間点のクランク角に達するよりも前に燃料噴射を終了することを意味する。ここでの中間とは真ん中を意味する。
【0031】
本発明および実施の形態において、燃料と空気の混合比である空燃比は、第1空燃比、第2空燃比および第3空燃比で表現される。第1空燃比とは、燃焼後に三元触媒で処理できる空燃比である。第1空燃比は、理論空燃比(stoichiometric ratio)、または、理論空燃比を含む空燃比のウィンドウでもよい。第1空燃比は、理論空燃比の近傍の空燃比でもよい。第1空燃比は、理論空燃比の近傍の空燃比を含み理論空燃比を含まないウィンドウでもよい。第2空燃比は、第1空燃比よりもリッチな空燃比である。第1空燃比が、理論空燃比の近傍の空燃比であるか、もしくは、理論空燃比を含まないウィンドウである場合、第2空燃比は、理論空燃比よりもリッチでもあってもなくてもよい。第3空燃比とは、第1空燃比よりもリーンな空燃比である。本発明および実施の形態において、リッチとは、混合気の燃料が濃いことを意味する。リーンとは、混合気の燃料が薄いことを意味する。本発明および実施の形態において、燃焼後に三元触媒で処理できる空燃比とは、混合気の燃焼後に生じる排ガスを三元触媒で処理できるような混合気の空燃比である。制御装置は、低負荷領域の少なくとも一部において、吸気通路および主燃焼室で混合された混合気が理論空燃比または理論空燃比よりもリッチな空燃比となるように、吸気通路噴射弁を制御してもよい。本発明の副室燃焼4ストロークエンジンは、排気通路に配置された触媒を有する。本発明の副室燃焼4ストロークエンジンは、排気通路に配置された三元触媒を有してもよい。本発明の副室燃焼4ストロークエンジンは、排気通路に配置された三元触媒ではない触媒を有してもよい。本発明の副室燃焼4ストロークエンジンは、主燃焼室と触媒との間に配置され、排気通路を流れる排ガスの酸素濃度を検出する酸素センサを有する。
【0032】
本発明および実施の形態において、副室または主燃焼室における混合気の点火を補助する点火補助装置とは、例えば、マイクロ波放電を発生させる装置、誘電体バリア放電(無声放電)を発生させる装置、または、主燃焼室の混合気に点火するスパークプラグなどである。本発明および実施の形態において、副室燃焼4ストロークエンジンが点火補助装置を有さないとは、副室スパークプラグとは別体の点火補助装置が設けられないことだけでなく、副室スパークプラグが点火補助装置の機能を有さないことも含む。
【0033】
本発明および実施の形態において、副室が主燃焼室よりも容積が小さいとは、副室の容積が主燃焼室の最小の容積よりも小さいことを意味する。なお、主燃焼室の容積はピストンの移動に伴って変化する。副室の容積とは副室の内部空間の容積である。本発明および実施の形態において、副室の内部空間は、複数の連通孔の内部空間を含まない。本発明および実施の形態において、副室の内面とは、副室の内部空間を形成する面である。本発明および実施の形態において、副室スパークプラグは、副室の内面の一部を形成する。本発明および実施の形態において、副室スパークプラグを除き副室の内面に突起が形成されないとは、副室の内面に突起が形成されないか、もしくは、副室の内面に形成される突起が副室スパークプラグによる突起だけであることを意味する。
【0034】
本発明および実施の形態において、副室の内部空間のプラグ軸方向の長さとは、プラグ軸方向における副室の内部空間の一端と他端との間のプラグ軸方向の長さである。別の言い方をすると、副室の内部空間のプラグ軸方向の一端を通りプラグ軸方向に直交する平面と、副室の内部空間のプラグ軸方向の他端を通りプラグ軸方向に直交する平面との間の距離である。本発明および実施の形態において、副室の内部空間のプラグ軸方向に直交する1つの方向の長さの定義も上記と同様である。本発明および実施の形態において、副室の内部空間のプラグ軸方向に直交する方向の最大長さとは、プラグ軸方向に直交する複数の方向における副室の内部空間の長さのうち、最大の長さである。
【0035】
本発明および実施の形態において、シリンダ孔の中心軸線とは、シリンダ孔が存在する領域だけに存在する線分ではなく、無限に延びる直線である。
本発明および実施の形態において、副室スパークプラグの中心軸線とは、副室スパークプラグが存在する領域だけに存在する線分ではなく、無限に延びる直線である。副室スパークプラグの中心軸線は、シリンダ孔の中心軸線と平行であってもよく平行でなくてもよい。
【0036】
本発明および実施の形態において、吸気口は、吸気弁のバルブヘッドが接触する環状の部位のうち主燃焼室に近い方の端である。排気口は、排気弁のバルブヘッドが接触する環状の部位のうち主燃焼室に近い方の端である。本発明における少なくとも1つの吸気口の数は1つでも複数でもよい。
【0037】
本発明および実施の形態において、第1吸気孔の中心軸線とは、第1吸気孔(連通孔)が存在する領域だけに存在する線分ではなく、無限に延びる直線である。連通孔の中心軸の定義も同様である。
本発明および実施の形態において、「連通孔の中心軸線と重なり、連通孔から副室の内部空間を通らずに主燃焼室に向かって延びる半直線」は、連通孔の中心軸線のうち連通孔の内部に位置する部分を含まない。
本発明および実施の形態において、第1吸気孔の径とは、第1吸気孔(連通孔)の中心軸線に直交する断面における第1吸気孔(連通孔)の径である。連通孔である排気孔の径も同様の定義である。また、連通孔である吸気孔の径も同様の定義である。本発明および実施の形態において、複数の排気孔の最大径が互いに異なる場合、第1吸気孔の最小径が複数の排気孔の最大径よりも大きいとは、第1吸気孔の最小径が複数の排気孔のそれぞれの最大径のうちの最大値よりも大きいことを意味する。本発明および実施の形態において、吸気孔という名称は、吸気のための孔を意味するために使用されているのではない。吸気孔は、吸気口に近い連通孔であるため、吸気孔という名称が用いられている。本発明および実施の形態において、第1吸気孔は第1吸気口に近い連通孔である。本発明および実施の形態において、排気孔という名称は、排気のための孔を意味するために使用されているのではない。排気孔は、排気口に近い連通孔であるため、排気孔という名称が用いられている。
【0038】
本発明および実施の形態において、「排気孔が、プラグ軸方向に見たときに、副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における少なくとも1つの排気口までの最短距離が副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における少なくとも1つの吸気口までの最短距離よりも短い方向線を有する」とは、プラグ軸方向に見たときに、副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向におけるこの排気孔の方向線と少なくとも1つの排気口との最短距離が、副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向におけるこの排気孔の方向線と少なくとも1つの吸気口との最短距離よりも短いことを意味する。プラグ軸方向に見たときに排気孔の方向線が排気口を通る場合、プラグ軸方向に見たときの排気孔の方向線と排気口との最短距離はゼロである。本発明および実施の形態における「吸気孔がプラグ軸方向に見たときに、副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における少なくとも1つの吸気口までの最短距離が副室スパークプラグの中心軸線を中心とした周方向における少なくとも1つの排気口までの最短距離よりも短い方向線を有する」の定義も上記と同様である。
【0039】
本発明および実施の形態において、複数の連通孔は、主燃焼室の内部空間に突出する副室壁部に形成されてもよく、主燃焼室の内部空間に突出しない副室壁部に形成されてもよい。複数の連通孔が形成された副室壁部とは、主燃焼室の内部空間に晒された片面(外面)を有する壁部である。副室壁部が筒状の部分を有する場合、副室壁部は主燃焼室の内部空間に突出するように形成されている。副室壁部は、副室スパークプラグと別体でもよく、副室スパークプラグと分離不能に一体化されていてもよい。副室壁部が副室スパークプラグと別体であるとは、副室壁部を含む部材が副室スパークプラグから離れているか、もしくは、副室壁部を含む部材が副室スパークプラグと分離可能に接触していることを意味する。
【0040】
本発明および実施の形態において、副室燃焼4ストロークエンジンの圧縮比とは、主燃焼室の容積の最小値に対する最大値の比率である。
【0041】
本発明及び実施の形態において、副室燃焼4ストロークエンジンの運転状態を検出するエンジン運転状態検出センサとは、点火時期を決める際に影響を与える因子に関する状態を検出するセンサである。例えば、アクセル操作子の操作量、負荷、エンジン回転速度、吸気温度、吸気圧力、吸入空気量、大気圧、エンジン温度、油温、冷却水温、エンジン壁温、排ガス温度などを検出するセンサである。
【0042】
本発明および実施の形態において、ある構成要素の数を明確に特定していない場合(つまり、英語に翻訳された場合に単数形で表示される場合)、この構成要素の数は1つであってもよく複数であってもよい。本発明および実施の形態において、数が明確に特定されていない構成要素とは、例えば、主燃焼室、吸気通路、排気通路、スロットル弁、吸気通路噴射弁、副室、副室スパークプラグなどである。
本発明および実施の形態における副室燃焼4ストロークエンジンは、単一の主燃焼室を有してもよく、複数の主燃焼室を有してもよい。つまり、本発明および実施の形態における副室燃焼4ストロークエンジンは、単気筒エンジンユニットであってもよく、多気筒エンジンユニットであってもよい。副室および副室スパークプラグの数は、それぞれ、主燃焼室の数と同じである。吸気通路噴射弁の数は、主燃焼室の数と同じであってもよく、それより多くてもよい。スロットル弁の数は、主燃焼室の数と同じであってもよく、それより少なくてもよい。吸気通路は、2つ以上に分岐する形状でもよい。1つの主燃焼室に接続される吸気通路の数は1つである。分岐した形状の1つの吸気通路が複数の主燃焼室に接続されてもよい。排気通路は、2つ以上に分岐する形状でもよい。1つの主燃焼室に接続される排気通路の数は1つである。分岐した形状の1つの排気通路が複数の主燃焼室に接続されてもよい。
【0043】
本発明および実施の形態における副室燃焼4ストロークエンジンは、自動車より車両重量が軽量でありエンジンの軽量化および小型化が要求される鞍乗型車両に搭載することができる。鞍乗型車両とは、運転者が鞍にまたがるような状態で乗車する車両全般を指す。鞍乗型車両は、自動二輪車、スクーター、自動三輪車(motor tricycle)、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle / 全地形型車両)、スノーモービル、水上オートバイ(パーソナルウォータークラフト)などを含む。また、本発明および実施の形態における副室燃焼4ストロークエンジンは、エンジンの軽量化および小型化が要求される作業用車両に搭載することができる。なお、本発明および実施の形態における副室燃焼4ストロークエンジンンが自動車に搭載できることは言うまでもない。本発明および実施の形態における副室燃焼4ストロークエンジンを搭載する製品は、特定の製品に限定されない。本発明の一実施形態である副室燃焼4ストロークエンジンが製品に搭載された場合、シリンダ孔の中心軸線が鉛直に対して0度以上45度以下になるように搭載されてもよく、45度以上90度以下になるように搭載されてもよい。
【0044】
本発明および実施の形態において「含む(including)、有する(having)、構成する(comprising)およびこれらの派生語」は、列挙されたアイテム及びその等価物に加えて追加的アイテムをも包含することが意図されて用いられている。
【0045】
他に定義されない限り、本発明および実施の形態で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0046】
本発明および実施の形態において、「してもよい」という用語は非排他的なものである。「してもよい」は、「してもよいがこれに限定されるものではない」という意味である。本発明および実施の形態において、「してもよい」と記載された構成は、少なくとも本発明の構成により得られる上記効果を奏する。
【0047】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されたまたは図面に図示された構成要素の構成および配置の詳細に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、後述する実施形態以外の実施形態でも可能である。本発明は、後述する実施形態に様々な変更を加えた実施形態でも可能である。
【発明の効果】
【0048】
本発明の副室燃焼4ストロークエンジンによると、副室の混合気の着火性と複数の連通孔から噴射される火炎の噴射力を高めることができるため、点火補助装置が設けられなくても低負荷時のエンジン性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は、本発明の第1実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの一例の模式図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、本発明の第2実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの2つの例の模式図であり、
図2(c)および
図2(d)は、本発明の第3実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの2つの例の模式図であり、
図2(e)は、本発明の第4実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの一例の模式図である。
【
図3】
図3(a)および
図3(b)は、本発明の第5実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの一例の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の第6実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの一例の模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の第7実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの一例の部分的模式図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、本発明の第8実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの一例の部分的模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の第9実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの一例の模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の第10実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンの一例の模式図と、第10実施形態に関連する試験結果を示す本発明の実施例と比較例のグラフを含む。
【
図9】
図9は、本発明の第11実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンに関連する試験結果を示す、本発明の実施例と比較例のグラフである。
【
図10】
図10(a)および
図10(b)は、本発明の第12実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンに関連する試験結果を示す、本発明の実施例と比較例のグラフである。
【
図11】
図11は、本発明の第13実施形態の副室燃焼4ストロークエンジンに関連する試験結果を示す、本発明の実施例と比較例のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態である副室燃焼4ストロークエンジンの詳細について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、例示である。本発明は、以下に説明する実施の形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0051】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について、
図1(a)および
図1(b)を用いて説明する。
図1(a)および
図1(b)は、第1実施形態の一例を示す。第1実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1は、少なくとも1つの主燃焼室2を有する。主燃焼室2は、吸気通路5が接続される少なくとも1つの吸気口3および排気通路6が接続される少なくとも1つの排気口4を有する。主燃焼室2は、シリンダヘッド10と、シリンダ孔11と、ピストン12とによって形成される。つまり、シリンダ孔11は主燃焼室2を形成する。吸気通路5は、シリンダヘッド10の内部に形成された通路と、この通路に接続された通路を含む。排気通路6は、シリンダヘッド10の内部に形成された通路と、この通路に接続された通路を含む。副室燃焼4ストロークエンジン1は、少なくとも1つのスロットル弁7を有する。スロットル弁7は、吸気通路5を通過して主燃焼室2に吸入される空気の量を調整する。副室燃焼4ストロークエンジン1は、少なくとも1つの吸気通路噴射弁8を有する。吸気通路噴射弁8は、ガソリン燃料、アルコール燃料、またはガソリン・アルコール混合燃料である液体燃料を吸気通路5の内部に噴射する。副室燃焼4ストロークエンジン1は、少なくとも1つの副室20を有する。副室20の内部空間は、複数の連通孔21を介して主燃焼室2の内部空間と連通する。副室20の容積は、主燃焼室2の容積よりも小さく形成される。副室20の内部空間に、副室スパークプラグ23の一部が露出する。シリンダ孔11の中心軸線C11の位置と副室スパークプラグ23の中心軸線C23の位置との関係は、
図1(a)および
図1(b)に示す位置関係に限らない。なお、
図1(a)は、
図1(b)のA-A線の断面図である。副室スパークプラグ23の中心軸線C23と平行な方向を、プラグ軸方向DPとする。
図1(a)および
図1(b)において、プラグ軸方向DPはシリンダ孔11の中心軸線C11と平行であるが、プラグ軸方向DPはシリンダ孔11の中心軸線C11と平行でなくてもよい。副室燃焼4ストロークエンジン1は、少なくとも1つの吸気通路噴射弁8および少なくとも1つの副室スパークプラグ23を制御する制御装置70を有する。制御装置70は、スロットル弁7の開度が小さい低負荷領域の少なくとも一部において、排気上死点と吸気下死点との中間点よりも前に液体燃料の噴射が終了し、且つ、吸気通路5および主燃焼室2で混合された混合気が燃焼後に三元触媒で処理できる第1空燃比または第1空燃比よりもリッチな第2空燃比となるように、吸気通路噴射弁8を制御する。例えば、制御装置70は、低負荷領域の少なくとも一部において、吸気通路5および主燃焼室2で混合された混合気が燃焼後に三元触媒で処理できる第1空燃比となるように、吸気通路噴射弁8を制御してもよい。副室燃焼4ストロークエンジン1は、三元触媒を有してもよく有さなくてもよい。副室燃焼4ストロークエンジン1は、副室20に燃料を噴射する副室燃料噴射弁、および、副室20または主燃焼室2における混合気の点火を補助する点火補助装置のどちらも有さない。
【0052】
副室20は、副室20の容積に対する副室20の内面の面積の比率を抑えるように、以下の2つの特徴を有する。1つ目の特徴は、副室スパークプラグ23を除き副室20の内面に突起が形成されないことである。2つ目の特徴は、副室20の内部空間のプラグ軸方向DPの長さL1と副室20の内部空間のプラグ軸方向DPに直交する方向の最大長さL2のうち大きい方の長さが小さい方の長さの2倍より小さいことである。
図1(a)では長さL2が長さL1よりも大きいが、長さL1が長さL2よりも大きくてもよい。なお、副室20の内部空間の形状は、
図1(a)および
図1(b)に示す形状に限定されない。
【0053】
少なくとも1つの吸気口3は、第1吸気口3aを含む。
図1(b)は、主燃焼室2から第1吸気口3aおよび複数の連通孔21をプラグ軸方向DPに見たときの図である。
図1(b)は、主燃焼室2、第1吸気口3a、複数の連通孔21、副室20以外の要素の図示を省略している。
図1(b)に示すように、プラグ軸方向DPに見て、副室スパークプラグ23の中心軸線C23と第1吸気口3aの中心C3aとを結ぶ線分を、線分LSaと定義する。複数の連通孔21は、以下の2つの特徴を有する第1吸気孔21iaを含む。1つ目の特徴は、プラグ軸方向DPに見たときに、第1吸気孔21iaの中心軸線C21iaに対して線分LSaがなす角度θが、-17°<θ<17°を満たすことである(
図1(b)参照)。
図1(b)において、角度θの大きさ(絶対値)は0°よりも大きいが、角度θは0°でもよい。2つ目の特徴は、シリンダ孔11の中心軸線C11に平行で第1吸気孔21iaの中心軸線C21iaを含む平面で切断した断面において、第1吸気孔21iaの中心軸線C21iaが、第1吸気口3aを開閉する吸気弁13の開弁時に吸気弁13のバルブヘッド14と第1吸気口3aとの間を通ることである(
図1(a)参照)。
図1(a)は、副室燃焼4ストロークエンジン1をシリンダ孔11の中心軸線C11に平行で第1吸気孔21iaの中心軸線C21iaを含む平面で切断した断面図である。複数の連通孔21がこのような第1吸気孔21iaを有することにより、吸気通路5に噴射された液体燃料が第1吸気口3aから第1吸気孔21iaを通って副室20に導入されやすい。
図1において、連通孔21の数は5つであるが、連通孔21の数は5つより少なくても多くてもよい。第1実施形態における複数の連通孔21の数、位置、形状、およびサイズは、
図1に示すものに限らない。なお、
図1において、第1吸気孔21iaの中心軸線C21iaと副室スパークプラグ23の中心軸線C23との交点は、副室スパークプラグ23の中心軸線C23の電極部よりもプラグ軸方向DPにおいて主燃焼室2に近いが、この構成に限らない。
【0054】
吸気弁13のバルブヘッド14に沿って拡散された液体燃料の粒子の流れが導入されやすいように第1吸気孔21iaが形成され、且つ、第1吸気孔21iaの後方に容積に対する内面の面積の比率を抑えるように副室20が形成されていることにより、粒子が比較的大きく慣性力が比較的大きい液体燃料を、副室20の内部空間の奥の方まで導入することができる。それにより、副室20の混合気の着火性と複数の連通孔21から噴射される火炎の噴射力を高めることができ、点火補助装置が設けられなくても低負荷時のエンジン性能を確保できる。
【0055】
第1実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1の圧縮比は例えば11以上でもよい。第1実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1は、主燃焼室2の内部に燃料を噴射する主燃焼室燃料噴射弁を有さなくてよい。つまり、主燃焼室2および副室20の内部空間に導入される燃料は、吸気通路噴射弁8から噴射された燃料だけである。第1実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1は、スーパーチャージャーおよびターボチャージャーのどちらも有さなくてよい。つまり、副室燃焼4ストロークエンジン1は、自然吸気式でもよい。第1実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1は、主燃焼室2を迂回して排気通路6と吸気通路5を接続する外部排気再循環通路を含む外部排気再循環装置を有さなくてよい。
【0056】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について、
図2(a)および
図2(b)を用いて説明する。
図2(a)および
図2(b)は、第2実施形態の2つの例を示す。第2実施形態は、第1実施形態の構成を有する。第2実施形態において、主燃焼室2は、2つの吸気口3を有する。2つの吸気口3は、第1吸気口3aと第2吸気口3bである。主燃焼室2は、
図2(a)および
図2(b)に示すように2つの排気口4を有してもよい。図示は省略するが、主燃焼室2は、単一の排気口4を有してもよい。
図2(a)および
図2(b)は、主燃焼室2から2つの吸気口3、2つの排気口4、および複数の連通孔21をプラグ軸方向DPに見たときの図である。第2実施形態において、複数の連通孔21は、以下の2つの特徴を有する第2吸気孔21ibを含む。1つ目の特徴は、プラグ軸方向DPに見たときに、第2吸気孔21ibの中心軸線C21ibに対して線分LSbがなす角度θ2が、-17°<θ2<17°を満たすことである。線分LSbは、副室スパークプラグ23の中心軸線C23と第2吸気口3bの中心C3bとを結ぶ線分である。
図2(a)および
図2(b)において、角度θ2の大きさ(絶対値)は0°よりも大きいが、角度θ2は0°でもよい。2つ目の特徴は、図示は省略するが、シリンダ孔11の中心軸線C11に平行で第2吸気孔21ibの中心軸線C21ibを含む平面で切断した断面において、第2吸気孔21ibの中心軸線C21ibが、第2吸気口3bを開閉する吸気弁(図示省略)の開弁時に吸気弁のバルブヘッドと第2吸気口3bとの間を通ることである。つまり、第2実施形態における第2吸気口3bおよび第2吸気孔21ibは、本発明における第1吸気口および第1吸気孔と同じ特徴を有する。複数の連通孔21がこのような第2吸気孔21ibを有することにより、吸気通路5に噴射された液体燃料が第2吸気口3bから第2吸気孔21ibを通って副室20に導入されやすい。なお、
図2(a)における連通孔21の数は5つであり、
図2(b)における連通孔21の数は6つであるが、第2実施形態における複数の連通孔21の数、位置、形状、およびサイズは、
図2(a)および
図2(b)に示すものに限らない。
【0057】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について、
図2(c)および
図2(d)を用いて説明する。
図2(c)および
図2(d)は、第3実施形態の2つの例を示す。第3実施形態は、第1実施形態の構成を有する。第3実施形態において、主燃焼室2は、単一の吸気口3を有する。単一の吸気口3は第1吸気口3aである。主燃焼室2は、
図2(c)および
図2(d)に示すように単一の排気口4を有してもよい。図示は省略するが、主燃焼室2は、2つの排気口4を有してもよい。なお、
図2(c)における連通孔21の数は5つであり、
図2(d)における連通孔21の数は6つであるが、第3実施形態における複数の連通孔21の数、位置、形状、およびサイズは、
図2(c)および
図2(d)に示すものに限らない。
【0058】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について、
図2(e)を用いて説明する。
図2(e)は、第4実施形態の一例を示す。第4実施形態は、第1~第3実施形態の少なくとも1つの構成を有する。第4実施形態において、複数の連通孔21は、以下の2つの特徴を有する第3吸気孔21icを含む。1つ目の特徴は、プラグ軸方向DPに見たときに、第3吸気孔21icの中心軸線C21icに対して線分LSaがなす角度θ3が、-17°<θ3<17°を満たすことである。線分LSaは、副室スパークプラグ23の中心軸線C23と第1吸気口3aの中心C3bとを結ぶ線分である。2つ目の特徴は、図示は省略するが、シリンダ孔11の中心軸線C11に平行で第3吸気孔21icの中心軸線C21icを含む平面で切断した断面において、第3吸気孔21icの中心軸線C21icが、第1吸気口3aを開閉する吸気弁13の開弁時に吸気弁13のバルブヘッド14と第1吸気口3aとの間を通ることである。複数の連通孔21がこのような第3吸気孔21icを有することにより、吸気通路5に噴射された液体燃料が第1吸気口3aから第3吸気孔21icを通って副室20に導入されやすい。第4実施形態における第1吸気孔21iaおよび第3吸気孔21icは、それぞれ、本発明の第1吸気孔に相当する。第4実施形態における複数の連通孔21の数、位置、形状、およびサイズは、
図2(e)に示すものに限らない。
【0059】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について、
図3(a)および
図3(b)を用いて説明する。
図3(a)および
図3(b)は、第5実施形態の一例の例を示す。第5実施形態は、第1実施形態~第4実施形態の少なくとも1つの構成を有する。第5実施形態において、複数の連通孔21は、第1吸気孔21iaを通って副室20に導入された液体燃料が複数の連通孔21から排出され難くなるように、以下のように形成されている。プラグ軸方向DPに見たときに、第1吸気孔21iaの中心軸線C21iaが、複数の連通孔21のうち第1吸気孔21iaではないいずれの連通孔21の中心軸線C21とも一致しない(
図3(b)参照)。
図3(b)は、
図1(a)に、第1吸気孔21ia以外の連通孔21の中心軸線C21を加えた図である。さらに、第1吸気孔21iaの中心軸線C21iaを含む平面とシリンダ孔11の中心軸線C11の両方に直交する方向に見たときに、第1吸気孔21iaの中心軸線C21iaが、複数の連通孔21のうち第1吸気孔21iaではないいずれの連通孔21の中心軸線C21とも一致しない(
図3(a)参照)。
図3(a)は、
図1(a)に、第1吸気孔21ia以外の連通孔21の中心軸線C21を加えた図である。つまり、
図3(a)には、第1吸気孔21iaの中心軸線C21iaを含む平面とシリンダ孔11の中心軸線C11の両方に直交する方向に見たときの複数の連通孔21の中心軸線C21が表示されている。なお、第5実施形態における複数の連通孔21の数、位置、形状、およびサイズは、
図3(a)および
図3(b)に示すものに限らない。第5実施形態が第2実施形態の構成を有する場合、プラグ軸方向DPに見たとき、および、第2吸気孔21ibの中心軸線C21ibを含む平面とシリンダ孔11の中心軸線C11の両方に直交する方向に見たときに、第2吸気孔21ibの中心軸線C21ibが、複数の連通孔21のうち第2吸気孔21ibではないいずれの連通孔21の中心軸線C21とも一致しなくてもよい。
【0060】
<第6~第8実施形態>
本発明の第6~第8実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について、
図4、
図5、
図6(a)および
図6(b)を用いて説明する。
図4は、少なくとも1つの吸気口3、少なくとも1つの排気口4、および複数の連通孔21をプラグ軸方向DPに見たときの図である。
図5および
図6(a)は、複数の連通孔21をプラグ軸方向DPに見たときの図である。
図6(b)は、
図6(a)のB-B線の断面図である。第6実施形態は、第1実施形態~第5実施形態の少なくとも1つの構成を有する。第7実施形態は、第1実施形態~第5実施形態の少なくとも1つの構成を有する。第8実施形態は、第1実施形態~第5実施形態の少なくとも1つの構成を有する。まず、第6~第8実施形態の共通の定義について説明する。連通孔21の中心軸線と重なり、この連通孔21から副室20の内部空間を通らずに主燃焼室2に向かって延びる半直線を、この連通孔21の方向線H21と定義する(
図4参照)。プラグ軸方向DPに見たときの中心軸線C23を中心とした周方向における連通孔21の方向線H21と少なくとも1つの吸気口3との最短距離を、最短距離L3と定義する(
図4参照)。中心軸線C23を中心とした周方向における第1吸気孔21iaの方向線H21と少なくとも1つの吸気口3との最短距離L3はゼロである。プラグ軸方向DPに見たときの中心軸線C23を中心とした周方向における連通孔21の方向線H21と少なくとも1つの排気口4との最短距離を、最短距離L4と定義する(
図4参照)。複数の連通孔21のうち、最短距離L3が最短距離L4よりも短くなるような方向線H21を有する連通孔21を、吸気孔21iと定義する(
図4参照)。第1吸気孔21iaは吸気孔21iに該当する。第6~第8実施形態において、複数の連通孔21は、少なくとも1つの吸気孔21iaを含む。複数の連通孔21のうち、最短距離L4が最短距離L3よりも短くなるような方向線H21を有する連通孔21を、排気孔21eと定義する(
図4参照)。第6~第8実施形態において、複数の連通孔21は、複数の排気孔21eを含む。
図4における主燃焼室2は2つの吸気口3を有するが、主燃焼室2は単一の吸気口3を有してもよい。
図4における主燃焼室2は2つの排気口4を有するが、主燃焼室2は単一の排気口4を有してもよい。
【0061】
第6実施形態において、複数の連通孔21は、複数の排気孔21eの数よりも少ない数の複数の吸気孔21iを含む(例えば
図4参照)。第6実施形態が第2実施形態の構成を有する場合、複数の吸気孔21iは、第1吸気孔21iaと第2吸気孔21ibだけでもよく、3つ以上の吸気孔21iでもよい。
【0062】
第7実施形態において、第1吸気孔21iaの最小径は、複数の排気孔21eの最大径よりも大きい(例えば、
図5参照)。第7実施形態において、吸気孔21iの数は1つでもよく、複数でもよい。第7実施形態において、複数の吸気孔21iの最小径がいずれも、複数の排気孔21eの最大径よりも大きくてもよい。第7実施形態が第2実施形態の構成を有する場合、第2吸気孔21ibの最小径は、複数の排気孔21eの最大径よりも大きいことが好ましい。
【0063】
第8実施形態において、第1吸気孔21iaは、主燃焼室2に近いほど径が大きくなるように形成され、複数の排気孔21eは、主燃焼室2に近いほど径が大きくなるように形成されていない(例えば、
図6(a)および
図6(b)参照)。第8実施形態において、第1吸気孔21iaの最大径は、複数の排気孔21eの最大径よりも大きいことが好ましい。第8実施形態において、吸気孔21iの数は1つでもよく、複数でもよい。第8実施形態において、複数の吸気孔21iは全て、主燃焼室2に近いほど径が大きくなるように形成されてもよい。第8実施形態において、複数の吸気孔21iのうちの一部の吸気孔21iは、径が変化しないように形成されてもよい。第8実施形態が第2実施形態の構成を有する場合、第2吸気孔21ibは、主燃焼室2に近いほど径が大きくなるように形成されることが好ましい。
【0064】
第7実施形態および第8実施形態は、第6実施形態の構成を有してもよく、有さなくてもよい。第7実施形態および/または第8実施形態において、複数の連通孔21は、複数の排気孔21eの数と同じまたはそれより多い数の複数の吸気孔21iを含んでいてもよい。第6実施形態および第8実施形態は、第7実施形態の構成を有してもよく、有さなくてもよい。第6実施形態および/または第8実施形態において、第1吸気孔21iaの最小径は、複数の排気孔21eの少なくとも1つの排気孔21eの最大径と同じかそれよりも小さくてもよい。第6実施形態および第7実施形態は、第8実施形態の構成を有してもよく、有さなくてもよい。第6実施形態および/または第7実施形態において、第1吸気孔21iaは、主燃焼室2に近いほど径が大きくなるように形成されていなくてもよい。第6実施形態および/または第7実施形態において、複数の排気孔21eは、主燃焼室2に近いほど径が大きくなるように形成されてもよい。
【0065】
<第9実施形態>
本発明の第9実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について、
図7を用いて説明する。第9実施形態は、第1実施形態~第8実施形態の少なくとも1つの構成を有する。第9実施形態において、複数の連通孔21は、主燃焼室2の内部空間に突出する副室壁部22に形成されている。さらに、第9実施形態において、副室20は、副室20の容積に対して副室壁部22の突出量が小さくなるように形成されている。具体的には、副室壁部22の外面を通らず副室20の内部空間を通りプラグ軸方向DPに直交するいずれかの平面Sによって副室20の内部空間を2つの空間に分けた場合に、2つの空間のうち主燃焼室2に近い方の空間の体積が、2つの空間のうち主燃焼室2から遠い方の空間の体積よりも小さくなるように、副室20は形成されている。
図7に示す平面Sは、副室壁部22の外面を通らず副室20の内部空間を通りプラグ軸方向DPに直交する平面Sの一例にすぎない。なお、副室壁部22の外面とは、主燃焼室2に露出する面である。
副室壁部22の外面を通らず副室20の内部空間を通りプラグ軸方向DPに直交するいずれかの平面Sによって副室20の内部空間を2つの空間に分けた場合に、2つの空間のうち主燃焼室2に近い方の空間の体積が、2つの空間のうち主燃焼室2から遠い方の空間の体積よりも小さくなるように形成された副室20とは、以下のような副室20ではないことを意味する。その副室20とは、副室壁部22の外面を通らず副室20の内部空間を通りプラグ軸方向DPに直交する全ての平面について、以下の関係が成立するような副室20である。その関係とは、平面によって副室20の内部空間を2つの空間に分けた場合に、2つの空間のうち主燃焼室2に近い方の空間の体積が、2つの空間のうち主燃焼室2から遠い方の空間の体積と同じまたはそれよりも大きいという関係である。
【0066】
<第10実施形態>
本発明の第10実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について、
図8を用いて説明する。第10実施形態は、第1実施形態~第9実施形態の少なくとも1つの構成を有する。第10実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1はノックセンサを有さない。制御装置70は、ノックセンサではない副室燃焼4ストロークエンジン1の運転状態を検出する運転状態検出センサ71の出力に基づいて、予め定められた点火時期で副室20の内部の混合気に点火するように副室スパークプラグ23を制御する。
【0067】
ここで、
図8の中のグラフは、本発明者らが実験した結果の一部である。このグラフの横軸であるCA50とは、燃焼割合が50%となるクランク角である50%質量燃焼割合クランク角(50% mass fraction burned Crank Angle)を表す。このグラフは、実施例1~3および比較例1の4ストロークエンジンにおいてCA50を変化させた時のノックピーク標準偏差[KPa]を示す。比較例1のエンジンは副室を有さない。実施例1、2のエンジンは、副室スパークプラグの周囲に冷却ジャケットを有する。実施例3のエンジンは、副室スパークプラグの周囲に冷却ジャケットを有さない。実施例1のエンジンと、実施例2のエンジンは、副室スパークプラグの電極部の構成が異なる。実施例3のエンジンと、実施例1のエンジンは、副室スパークプラグの電極部の構成が同じである。実施例1~3および比較例1において、上記以外の試験条件は同じである。エンジンの運転領域は、高負荷領域で、中エンジン回転速度領域とした。高負荷領域とは、エンジンの負荷の最低から最高までの領域を2等分した場合の高い方の領域である。なお、ここでの中エンジン回転速度領域とは、エンジン回転速度の最低から最高までの領域を4等分した場合の中間の2つの領域の領域である。グラフを参照して分かるように、副室を有さない比較例1のエンジンは、点火時期を進角すると、ある時点で非常に急激にノックピーク標準偏差[KPa]が上昇する。一方、副室を有する実施例1~3のエンジンは、点火時期を進角しても、急激にノックピーク標準偏差[KPa]が上昇することはなく、穏やかに上昇する。本発明者らは、負荷およびエンジン回転速度の条件を変えて実験した結果、他の条件でも同様の傾向があることを見出した。
【0068】
<第11実施形態>
本発明の第11実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について説明する。第11実施形態は、第1実施形態~第10実施形態の少なくとも1つの構成を有する。第11実施形態において、複数の連通孔21の各々の中心軸線C21に直交する断面の面積の合計は、5.7mm2以上7.6mm2以下である。
【0069】
ここで、
図9のグラフは、本発明者らが実験した結果の一部である。以下の説明において、主燃焼室の内部空間と副室の内部空間を連通させる複数の連通孔の各々の中心軸線に直交する断面の面積の合計を、孔総面積と称する。
図9は、実施例4~7および比較例2~4の4ストロークエンジンにおいて、CA50を変化させた時のIMEP(Indicated meaneffective pressure:図示平均有効圧)の変動率であるIMEPcovを示す。CA50の意味は第10実施形態で説明した通りである。IMEPは、1サイクル当たりの仕事をエンジンが持つ行程容積で割った値である。IMEPcovの値が低いほど燃焼安定性が高いことを示す。実施例4~7および比較例2~4の試験条件は互いに同じである。比較例2のエンジンは、副室を有さない。比較例2のエンジンは、副室の有無以外の構成が実施例4~7および比較例3、4のエンジンと同じである。実施例4~7および比較例3、4のエンジンにおける孔総面積を以下の表1に示す。実施例4~7および比較例3、4のエンジンは、複数の連通孔以外の構成が互い同じである。
【0070】
【0071】
図9のグラフにおいて、孔総面積が5.7mm
2よりも小さい比較例3と、孔総面積が7.6mm
2よりも大きい比較例4は、副室を設けない比較例2よりも部分的に燃焼安定性が低くなっている。一方、孔総面積が5.7mm
2以上7.6mm
2以下である実施例4~7は、比較例2より燃焼安定性が高い。実施例4よりも孔総面積が大きく実施例7よりも孔総面積が小さい実施例5および実施例6は、実施例4および実施例7よりも燃焼安定性が高い。実施例4および実施例7の燃焼安定性は同程度である。そのため、
図9のグラフから、孔総面積は、5.7mm
2以上7.6mm
2以下が好ましいことがわかる。
【0072】
<第12実施形態>
本発明の第12実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について説明する。第12実施形態は、第1実施形態~第11実施形態の少なくとも1つの構成を有する。第12実施形態において、第1吸気孔21iaの最小径は1.0mm以上1.2mm以下であって、副室20の容積は、328mm3以上802mm3以下である。
【0073】
ここで、
図10(a)および
図10(b)のグラフは、本発明者らが実験した結果の一部である。
図10(a)は、実施例8、9および比較例5、6の4ストロークエンジンにおいて、CA50を変化させた時のIMEPcovを示す。実施例8、9および比較例5、6の試験条件は互いに同じである。比較例5のエンジンは、副室を有さない。比較例5のエンジンは、副室の有無以外の構成が実施例8、9および比較例6のエンジンと同じである。実施例8、9および比較例6のエンジンにおける副室の容積を以下の表2に示す。実施例8、9および比較例6のエンジンは、副室以外の構成が互い同じである。実施例8、9および比較例6のエンジンにおける第1吸気孔21iaの最小径は互いに同じであって、1.0mm以上1.2mm以下の値である。
図10(a)のグラフにおいて、副室の容積が802mm
3よりも大きい比較例6は、副室を設けない比較例5よりも燃焼安定性が低い。副室の容積が802mm
3である実施例9の燃焼安定性は、副室を設けない比較例5と同程度である。副室の容積が802mm
3よりも小さい実施例8は、実施例9および比較例5よりも燃焼安定性が高い。
【0074】
【0075】
図10(b)は、実施例10~12および比較例7の4ストロークエンジンにおいて、エンジン回転速度を変化させたときのIMEPcovを示す。実施例10~12および比較例7の試験条件は互いに同じである。比較例7のエンジンは、副室を有さない。実施例10~12のエンジンにおける副室の容積を以下の表3に示す。実施例10~12のエンジンは、副室以外の構成が互い同じである。なお、実施例10の副室の容積は、表3には329mm
3と記載されているが、厳密には328.7mm
3である。実施例10~12および比較例7のエンジンにおける第1吸気孔21iaの最小径は1.2mmである。一般的に、副室の容積を小さくすることは構造上の制約がある。実施例10の副室の容積の値である328.7mm
3は、構造上の制約から決まる副室の容積の最小値である。
図10(b)のグラフからわかるように、副室の容積を、構造上の制約から決まる副室の容積の最小値まで小さくしても、燃焼安定性はあまり変化しない。
【0076】
【0077】
図10(a)および
図10(b)のグラフから、第1吸気孔21iaの最小径が1.0mm以上1.2mm以下の場合、副室の容積は、328mm
3以上802mm
3以下が好ましいことが推定できる。
【0078】
<第13実施形態>
本発明の第13実施形態の副室燃焼4ストロークエンジン1について説明する。第13実施形態は、第1実施形態~第11実施形態の少なくとも1つの構成を有する。第13実施形態において、第1吸気孔21iaの最小径は1.2mmよりも大きく1.4mm以下であって、副室20の容積は、328mm3以上1151mm3以下である。
【0079】
ここで、
図11のグラフは、本発明者らが実験した結果の一部である。
図11は、実施例13~19および比較例8の4ストロークエンジンにおいて、CA50を変化させた時のIMEPcovを示す。実施例13~19および比較例8の試験条件は互いに同じである。比較例8のエンジンは、副室を有さない。比較例8のエンジンは、副室の有無以外の構成が実施例13~19のエンジンと同じである。実施例13~19のエンジンにおける副室の容積を以下の表4に示す。実施例13~19のエンジンは、副室以外の構成が互い同じである。実施例13~19のエンジンにおける第1吸気孔21iaの最小径は互いに同じであって、1.2mmよりも大きく1.4mm以下の値である。一般的に、副室の容積を大きくすることは構造上の制約がある。実施例19の副室の容積の値である1151mm
3は、構造上の制約から決まる副室の容積の最大値である。
図11のグラフにおいて、実施例13~19は、副室を設けない比較例8よりも燃焼安定性が高い。
【0080】
【0081】
試験結果は省略するが、第1吸気孔21iaの最小径が1.2mmより大きく1.4mm以下の値であっても、副室の容積が構造上の制約から決まる最小値である328.7mm
3であるエンジンの燃焼安定性は、副室を設けないエンジンの燃焼安定性よりも高い。そのため、
図11のグラフから、第1吸気孔21iaの最小径が1.2mmよりも大きく1.4mm以下の場合、副室の容積は、328mm
3以上1151mm
3以下が好ましいことが推定できる。
【0082】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、複数の連通孔は、主燃焼室の内部空間に突出しない副室壁部に形成されてもよい。本発明の副室燃焼4ストロークエンジンは、スーパーチャージャーまたはターボチャージャーを有してもよい。副室燃焼4ストロークエンジンは、主燃焼室の内部に燃料を噴射する主燃焼室燃料噴射弁を有してもよい。本発明の副室燃焼4ストロークエンジンの圧縮比が11より小さくてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1:副室燃焼4ストロークエンジン、2:主燃焼室、3:吸気口、4:排気口、3a:第1吸気口、5:吸気通路、6:排気通路、7:スロットル弁、8:吸気通路噴射弁、10:シリンダヘッド、11:シリンダ孔、13:吸気弁、14:バルブヘッド、20:副室、21:連通孔、21ia:第1吸気孔、21i:吸気孔、21e:排気孔、22:副室壁部、23:副室スパークプラグ、70:制御装置、71:運転状態検出センサ、C3a:第1吸気口の中心、C11:シリンダ孔の中心軸線、C21:連通孔の中心軸線、C21ia:第1吸気孔の中心軸線、C23:副室スパークプラグの中心軸線、DP:プラグ軸方向、H21:方向線、L1:副室の内部空間のプラグ軸方向の長さ、L2:副室の内部空間のプラグ軸方向に直交する方向の最大長さ、L3、L4:最短距離、LSa:線分、S:平面、θ:角度