(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ステアリングの操向部材
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20240125BHJP
B62D 1/28 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B62D1/04
B62D1/28
(21)【出願番号】P 2023110716
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】712006400
【氏名又は名称】丸山 徹
(72)【発明者】
【氏名】丸山徹
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-169840(JP,A)
【文献】特開2006-306341(JP,A)
【文献】特許第7019851(JP,B1)
【文献】特開2023-068402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトと転向軸とが直結しているのではない乗り物、又はそのような乗り物のリモートコントローラーあるいはシミュレータにおいて、運転者がステアリングシャフトを回転させるために、ステアリングシャフトの先端に固定される操向部材1であって、前記ステアリングシャフトの先端に固定されているハブ2と、車両の直進状態で水平直線状、逆U字状、逆V字状、U字状、V字状、M字状、あるいはW字状などに見えるように前記ハブ2から左右対称に固定されているスポーク3と、前記スポーク3の両端夫々に固定接続されたグリップ4とを備え、前記グリップ4は、車両の直進状態で上からでも下からでも横からでも容易に、手のひらで包み込む様にグリップしながら
手首のスナップの力を利用する安定して効果的に力を使いながらの運転ができる大きさの球状であることを特徴とする操向部材1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ステアリングシャフトと転向軸とが直結しているのではない乗り物、又はそのような乗り物のリモートコントローラー、シミュレータにおいて、運転者がステアリングシャフトを回転させるために、ステアリングシャフトの先端に固定される操向部材に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
乗り物の構造は常に技術の革新が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステアリングをグリップしたままの状態で、より素早く繊細で且つ大胆なコントロールができる、スマートなステアリングの構築。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の操向部材1を有するステアリングを構築する。
ステアリングシャフトと転向軸とが直結しているのではない乗り物、又はそのような乗り物のリモートコントローラーあるいはシミュレータにおいて、運転者がステアリングシャフトを回転させるために、ステアリングシャフトの先端に固定される操向部材1であって、前記ステアリングシャフトの先端に固定されているハブ2と、車両の直進状態で水平直線状(
図1)、逆U字状(
図2)、逆V字状(
図3)、U字状、V字状、M字状(
図4)、あるいはW字状(
図5)などに見えるように前記ハブ2から左右対象に固定されているスポーク3と、前記スポーク3の左右の両端にグリップ4(メイングリップ)とを備え、前記グリップ4は、車両の直進状態で(
図6)上からでも下からでも横からでも容易に、手のひらで包み込む様にグリップしながら運転できる程度の大きさの球状であることを特徴とする操向部材1。
操向部材1は、従来の自動車のステアリングホイールに該当する働きがあるが、しかしその形状はホイール形態ではないので、名前を「操向部材」とした。
スポーク3という名前は、従来のステアリングのスポークがハブに設置している構造と見た目が似ているのでこの名前にしたが、一般的なスポークの働きとしてのリムを支える機能がある訳でもなく、操向部材としての仮称である。
【発明の効果】
【0006】
===従来のステアリングホイールとの比較 その1===
ホイール式やヨーク式などの従来のステアリングの場合、グリップする時はステアリングホイールの外側からステアリングホイールへ向けて広げた手のひらでグリップする訳なので、手のひらの向きはステアリングホイールの中へ向かっている。なので、手首のスナップの力の方向も、同様にステアリングホイールの円の中へ向かっている。(
図7)
そのため、ステアリングホイールを回転させるにはステアリングホイールをグリップしながら上方向へ回転9か下方向へ回転10させる事が必要になる訳だけれど、手のひらは上方向や下方向への回転方向のどちらへも向いていないので、手首のスナップの力を利用してステアリングを回転させる事には弱い。
この点、本発明のグリップはあらゆる方向へ凸状の部分がある球状である訳なので、つまりは上方向へも下方向へも凸状となっていて、直進状態で下方向へ向けて広げた手のひらで、グリップの上から上方向へ凸状の部分をグリップして下方向へ回転10、又、上方向へ向けて広げた手のひらでグリップの下から下方向へ凸状の部分をグリップして上方向へ回転9させるこれらの時は、手のひらの向いている方向と回転させる方向とは同じなので、手首のスナップの力を加えて回転させる事が可能になり、より確実に安定したステアリングコントロールができる。(
図8)
なお、横からグリップしているだけでも、手のひらで包み込んだグリップの形が球状なので上下方向への動きに十分に対応できるであろう。
又、上からのグリップから下からのグリップへ変更するのも瞬時に対応可能であろう。すなわち、下へ回そうと思った瞬間に手のひらは下を向くであろう。
そして本発明は手首のスナップの力を利用したステアリングコントロールが可能となるので、F1カーや戦車など、安定して確実で緊急なステアリング操作が必要な車両に特に向いている。
【0007】
===従来のステアリングホイールとの比較 その2
新時代のステアリングコントロール方法===
従来のステアリングのコントロールの基本は、グリップした場所から引力の力も利用して下へ腕を下しながら回すのを基本としているようだ。ネットの中でもグリップをするのは10時10分の位置にする、という方法がもっとも多いし、大方の人もそのような方法をとっているようだ。
この方法で下方向へ回す場合とは、実は左折する時には左手を、右折の時は右手をメインで使うという場合となる。
確かに、左折をする時に10時の位置の左手8は動かせる距離も大きく、腕の重さも利用してかなり楽に回しやすいが、しかし右手は腕がクロスしてしまうのでそれ程容易に強く大きくは動かせない。
しかし実は、この時、あらかじめ右手でステアリングホイールの下の方をグリップしておくと、かなり快適にコーナリングができる。
すなわち、カーブが近づいて来たら
図7に示す様に、あらかじめ左手8はステアリングホイールの上の方へ、右手7はステアリングホイールの下の方へグリップ位置を移動しておくと、両手で安定したコーナリングが可能となる。
そしてこの状態で、左手8は上から下方向へ回転10、右手7は下から上方向へ回転9させるのが最も力を効果的に使って左折コーナリングする方法となる。
これは実際にやってみるとすぐ直感的に理解できるであろう。
本発明で左折する場合にこれを応用し、
図8に示す様に左手8はグリップ4の上からグリップして下方向へ回転10、右手7はグリップ4の下からグリップして上方向へ回転9させる事で、安定して効果的に力を使いながらのコーナリングが可能となる。
この様なグリップの変更作業は、本発明のグリップは球状なので、同じところをグリップしたまま大きな動きをする必要もなく、ほとんど無意識のうちに素早く自然にコントロール可能となる。
すなわち、本発明ならば、あらかじめ手の持ち替えをせず、同じ場所をグリップしたままでも安定して効果的に力を使いながらのコーナリング方法、新時代のステアリングコントロール方法に対応できる。
【0008】
===従来のステアリングホイールとの比較 その3===
従来のステアリングだと、ある程度以上回すと手の持ち替えをする必要があるが、グリップ4は球状なので運転手側方向にも凸状の部分があるので、そこに手のひらを押し付けたままコントロールすれば、手の持ち替えをせずに一回転以上回す事もできる。
【0009】
===ローグリップの勧め===
ステアリングホイールの下の部分をグリップするローグリップには特別なメリットがある。
図9において、左折する時、右手のグリップ位置を従来のグリップ位置11から左へ回転させて、回転停止位置12まで回した時の、従来の回転範囲をAとする。
続いて、ステアリングホイールのハブ中心14よりも下側のローグリップ位置15から同じ回転停止位置12まで回した時の回転範囲をBとすると、A<Bとなり、手の持ち替えをしないで回せるローグリップの回転範囲Bは、従来の回転範囲Aよりはるかに大きくなる。
この様に、ローグリップ方法は、ステアリングホイールをグリップしたまま手の持ち替えをしないで、素早く大きな回転範囲をコントロールするのに適している。
本発明でのローグリップ実施例を
図2、
図3に示した。
【0010】
以下先行技術と比較して説明する。
特許文献1 特願2021-037878との比較。
この文献のグリップは車両の直進状態で、上方へ凸状となる部分は無く、下方に凸となるように涙滴状に形成されていて、車両の直進状態で、手のひらでグリップの上からグリップする事はできず、グリップの下からグリップする構造となっている。
この点、本発明のグリップはあらゆる方向へ凸状となっている球状なので、車両の直進状態で上方へも凸状の部分がある訳で、
図6の上図に示すように、たとえ文献例と同様な逆U字状のスポーク操向部材であっても、広げた手のひらで車両の直進状態でグリップの上から凸状のグリップ部分をグリップできる構造となっているので、本発明と文献例とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両の直進状態で、スポーク3がハブ2に水平直線状に固定されている実施例1の正面図
【
図2】車両の直進状態で、スポーク3がハブ2に逆U字状に固定されている実施例1の正面図
【
図3】車両の直進状態で、スポーク3がハブ2に逆V字状に固定されている実施例1の正面図
【
図4】車両の直進状態で、スポーク3がハブ2にM字状に固定されている実施例1の正面図
【
図5】車両の直進状態で、スポーク3がハブ2にW字状に固定されている実施例1の正面図
【
図6】車両の直進状態の時にグリップ4を上から(図上)横から(図中)下から(図下)右手でグリップ
【
図9】ローグリップの勧めにおける、左折する時の右手のグリップ位置に関する説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、様々な実施形態を提示する。
【実施例1】
【0013】
==詳細な技術分野==
本発明はステアリングシャフトと転向軸とが直結しているのではない、自動車やキャタピラー車などの乗り物に関する発明である。
自動車やキャタピラー車ではステアリングシャフトの回転で操向車輪やキャタピラーの操向方向を変えるためには様々な機構が存在しているので、ステアリングシャフトと転向軸とは直結していない。
しかし、自転車、3輪車、オートバイなどの様に、ステアリングシャフトと操向車輪の操向方向を変える転向軸とが直結していて、すなわちステアリングシャフトがそのまま転向軸となっていて、ステアリングシャフトと転向軸の間に操向方向を変えるための特別な機構は存在せず、ステアリングシャフトの回転がそのままステアリングシャフトに直結されている転向軸の方向を変えるこれらの乗り物は、本発明には含まない。
又、スポーク3は車両の直進状態で横方向へ伸びた構造であり、ヨーク式にグリップ可能な縦方向へ伸びた部分は無いので、本発明は航空機などのヨーク式ステアリングとは異なる。
【0014】
==詳細な実施例==
ステアリングシャフトと転向軸とが直結しているのではない乗り物、又はそのような乗り物のリモートコントローラーあるいはシミュレータにおいて、運転者がステアリングシャフトを回転させるために、ステアリングシャフトの先端に固定される操向部材1の、車両が直進状態の時の代表正面図を、
図1、
図2、
図3、
図4、
図5に示した。
先ず、ステアリングシャフトの先端には、ハブ2が固定されている。
左右それぞれのスポーク3は、車両の直進状態で水平直線状(
図1)、逆U字状(
図2、ヨーク状は含まない)、逆V字状(
図3)、U字状(ヨーク状は含まない)、V字状、M字状(
図4)、あるいはW字状(
図5)などに見えるように前記ハブ2から左右対称に固定されている。
【0015】
スポーク3の両端には、球状に形成されているグリップ4(メイングリップ)を備えている。
球状のグリップ4は常時使用するメイングリップであり、その他のグリップできる部分があるとしたら、それはサブグリップ、サブグリップ部、とする。
球状とはあらゆる方向へ球面の凸状となっている部分があるという意味だが、本発明も同様で、グリップ4には、車両の直進状態で、上方向へも、横方向へも、下方向へも又、運転手側方向19(
図15、
図16、
図17)へも凸状の部分があるので、上からでも(
図6上)横からでも(
図6中)下からでも(
図6下)グリップ4へ向けて広げた手のひらで容易にグリップしながら運転可能である。
又、運転手側方向19へ凸状の部分をグリップするのは運転姿勢からしてやり難いけれど、手のひらを押し付ける使い方は可能である。
しかし、グリップ4とスポーク3の接合部分には継ぎ目があり、グリップ4の他の表面部分と同じ様な球面ではないが、この接合部分の継ぎ目にフィレットを設置して、この接合部分を滑らかな表面にできる。
グリップ4は、手のひらで包み込むことができる程度の大きさである。
ハブ2から左右に伸びたスポーク3は、最初から左右を一体化構成しておき、その中央部をハブ2に固定しても良い。
【0016】
グリップ4は、球状を基本としているが、
図1の例を
図10の様に、車両の直進状態で横方向から押しつぶしたりして少し歪ませた球状の例だとしても、車両の直進状態で、上方向へも、横方向へも、及び下方向へもグリップ可能な顕著な球状の膨らみがあり、又、完全な球状の場合と同じように車両の直進状態でほぼ上下対象である。
しかし、押しつぶし過ぎると、上下方向へは鋭い凸状になり、手のひらでグリップしづらくなるので、上下方向へも楽にグリップ可能なほどの、ある程度はなだらかな球面をキープする事が必要であり、上下方向にそのような球面が無いものは本発明とは異なる。
又、車両の直進状態で上下方向からや、前後方向などから押しつぶして歪ませた場合も同様に、上下横方向へのなだらかな球面をキープしているかの考察が必要である。
【0017】
スポーク3をパイプ状にするなどでサブグリップ部とする使い方も可能ではある。
スポーク3に適度なカーブ、或いは小さなアタッチメントを付けるなどで新たなサブグリップを設けても良い。
しかし、新たなスポークを加えてのグリップの追加や、ヨーク式グリップなどの様に、スポーク3に大きなカーブを設置して新たなグリップ部を設置するのは本発明とは異なる。
ハブ2やスポーク3の形や大きさを変えたり、ハブ2とスポーク3を一体化したりして、計器類、スイッチ類、他の操向部材などを設置しても良い。
【0018】
メインのグリップ部が例えば棒状やパイプ状、円錐の一分部状、など球状とは異なる形状が多く含まれていて、たまたま角を落とすために尖端を丸く加工したりして断面が球状になっているとか、あるいは、グリップ部の先端に球状の形態があったとしてもそれはサブグリップ部であったりとか、例えば、
図11の様に、グリップ部21はパイプ状の部分であり、その先にグリップは可能ではあろう球状風のストッパー22を備えてはいて、しかし、そのストッパー22の構造は明らかに上下対象ではない例などは、本発明とは異なる。
【実施例2】
【0019】
ハブ2を拡大したハブ相当部2や変形したスポーク3などに、ディスプレイ16、スイッチ類17、インジケーター18など、様々な計器類を備えた操向部材1を
図12、
図13に示した
【実施例3】
【0020】
顕著な球状の膨らみのあるグリップ部を備え、スポーク3との継ぎ目に大きめのフィレットを設置し、スポーク3の一部を細くしたサブグリップ部23を設置し、あらかじめスポーク3とグリップ4とを一体化しておいて、その中央部分をハブ2に接続した例を、
図14に示した。
【実施例4】
【0021】
実施例1
図1のグリップ4を運転手側方向19へ迫り出す構造にした例の上面図を
図15に示した。
迫り出した部分に手を押し付けてコントロールし易くなるので、グリップしたまま一回転以上回す事がやり易くなる。
この例では取り付け位置を少し迫り出す事で対応したが、そうはせずに、多少の球形が歪むが、新たな迫り出す部分を追加しても良い。
【実施例5】
【0022】
車両の直進状態で上から見て逆U字状に見えるように、実施例1
図1のスポーク3にカーブをつけ、グリップ4が運転手側方向19に迫り出るように構成した上面図を
図16に示した。こうする事で運転手側からグリップし易くなる。
実施例2の
図12の様に、計器などをハブ相当部2に多く設置した場合も同様にスポーク3にカーブを付けて
図17のように構成すると、スイッチ類などを操作しやすくなる。
【符号の説明】
【0023】
1 操向部材
2 ハブ、ハブ相当部材
3 スポーク
4 グリップ、メイングリップ
5 ハブ中心
6 水平線
7 右手
8 左手
9 上方向へ回転
10 下方向へ回転
11 従来のグリップ位置
12 回転停止位置
13 ステアリングホイール
14 ハブ中心
15 ローグリップ位置
16 ディスプレイ
17 スイッチ類
18 インジケーター
19 運転手側方向
20 ステアリングシャフト
21 グリップ部
22 ストッパー
23 サブグリップ、サブグリップ部
A 従来の回転範囲
B ローグリップの回転範囲
【要約】 (修正有)
【課題】素早く繊細で且つ大胆なコントロールができるステアリングを提供する。
【解決手段】ステアリングシャフトと転向軸とが直結しているのではない乗り物、又はそのような乗り物のリモートコントローラーあるいはシミュレータにおいて、運転者がステアリングシャフトを回転させるために、ステアリングシャフトの先端に固定される操向部材1であって、前記ステアリングシャフトの先端に固定されているハブ2と、車両の直進状態で水平直線状、逆U字状、逆V字状、U字状、V字状、M字状、あるいはW字状などに見えるように前記ハブ2から左右対称に固定されているスポーク3と、前記スポーク3の両端にグリップ4とを備え、前記グリップ4は、車両の直進状態で上からでも下からでも横からでも容易に、手のひらで包み込む様にグリップしながら運転できる程度の大きさの球状であることを特徴とする操向部材1。
【選択図】
図1