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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ゴム輪受口
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/03 20060101AFI20240125BHJP
   F16L 21/04 20060101ALI20240125BHJP
   F16L 17/03 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16L21/03
F16L21/04
F16L17/03
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023115067
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2022084905の分割
【原出願日】2022-05-25
(65)【公開番号】P2023174621
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
(72)【発明者】
【氏名】安部 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】小森 俊祐
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202227(JP,A)
【文献】特開2020-029655(JP,A)
【文献】特開平09-222187(JP,A)
【文献】特開2003-042358(JP,A)
【文献】特開2008-208653(JP,A)
【文献】特開2020-060199(JP,A)
【文献】米国特許第03390890(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0049463(US,A1)
【文献】米国特許第05213339(US,A)
【文献】特開昭48-021815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/03
F16L 21/04
F16L 17/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物において排水立て管と排水横管との合流部分に設けられ、前記建物の床スラブに配管される管本体と前記管本体から側方に突出して前記床スラブの上面に沿って配管される枝管部とを備える管継手の前記枝管部に用いられるゴム輪受口であって、
他の配管部材の差口が挿入される受口本体、
前記受口本体の奥端から径方向内側に突出して前記差口が当該受口本体よりも奥側へ挿入されることを防止する突出部、
前記受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、
前記ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、前記ゴム輪本体の内周面から突出し、基端側から突出端側に向かって縮径する円錐台形の筒状に形成されるリップ部とを有するゴム輪、および
前記受口本体の内周面に前記ゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、
前記空間形成部が形成する前記逃げ空間は、前記受口本体に対して前記床スラブ側に傾くように斜め挿入された前記差口によって前記リップ部が挟み込まれることを回避するための当該リップ部の逃げ空間であり、
前記ゴム輪溝は、前記受口本体の管軸に平行な短円筒状の基壁部と、前記基壁部の管軸方向両端部から前記受口本体の径方向に延びる円環板状の側壁部とによって形成されており、
前記空間形成部の内周面は、前記受口本体の内周面よりも径方向外側に窪んでおり、
前記ゴム輪は、前記ゴム輪溝の側壁との間隙を埋めるための部材を用いることなく前記ゴム輪溝に収容されており、
前記受口本体と前記突出部が形成される管部分とは偏芯していない、ゴム輪受口。
【請求項2】
建物において排水立て管と排水横管との合流部分に設けられ、前記建物の床スラブに配管される管本体と前記管本体から側方に突出して前記床スラブの上面に沿って配管される枝管部とを備える管継手の前記枝管部に用いられるゴム輪受口であって、
他の配管部材の差口が挿入される受口本体、
前記受口本体の奥端から径方向内側に突出して前記差口が当該受口本体よりも奥側へ挿入されることを防止する突出部、
前記受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、
前記ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、前記ゴム輪本体の内周面から突出し、基端側から突出端側に向かって縮径する円錐台形の筒状に形成されるリップ部とを有するゴム輪、および
前記受口本体の内周面に前記ゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、
前記空間形成部が形成する前記逃げ空間は、前記受口本体に対して前記床スラブ側に傾くように斜め挿入された前記差口によって前記リップ部が挟み込まれることを回避するための当該リップ部の逃げ空間であり、
前記空間形成部は、当該空間形成部と前記ゴム輪溝とで2段の溝状となるように形成されており、
前記空間形成部の内周面は、前記受口本体の内周面よりも径方向外側に窪んでおり、
前記ゴム輪は、前記ゴム輪溝の側壁との間隙を埋めるための部材を用いることなく前記ゴム輪溝に収容されており、
前記受口本体と前記突出部が形成される管部分とは偏芯していない、ゴム輪受口。
【請求項3】
建物において排水立て管と排水横管との合流部分に設けられ、前記建物の床スラブに配管される管本体と前記管本体から側方に突出して前記床スラブの上面に沿って配管される枝管部とを備える管継手の前記枝管部に用いられるゴム輪受口であって、
他の配管部材の差口が挿入される受口本体、
前記受口本体の奥端から径方向内側に突出して前記差口が当該受口本体よりも奥側へ挿入されることを防止する突出部、
前記受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、
前記ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、前記ゴム輪本体の内周面から突出し、基端側から突出端側に向かって縮径する円錐台形の筒状に形成されるリップ部とを有するゴム輪、および
前記受口本体の内周面に前記ゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、
前記空間形成部が形成する前記逃げ空間は、前記受口本体に対して前記床スラブ側に傾くように斜め挿入された前記差口によって前記リップ部が挟み込まれることを回避するための当該リップ部の逃げ空間であり、
前記空間形成部が形成する前記逃げ空間の体積は、前記受口本体に斜め挿入された前記差口によって引き延ばされる前記リップ部の体積分以上の大きさに設定されており、
前記空間形成部の内周面は、前記受口本体の内周面よりも径方向外側に窪んでおり、
前記ゴム輪は、前記ゴム輪溝の側壁との間隙を埋めるための部材を用いることなく前記ゴム輪溝に収容されており、
前記受口本体と前記突出部が形成される管部分とは偏芯していない、ゴム輪受口。
【請求項4】
建物において排水立て管と排水横管との合流部分に設けられ、前記建物の床スラブに配管される管本体と前記管本体から側方に突出して前記床スラブの上面に沿って配管される枝管部とを備える管継手の前記枝管部に用いられるゴム輪受口であって、
他の配管部材の差口が挿入される受口本体、
前記受口本体の奥端から径方向内側に突出して前記差口が当該受口本体よりも奥側へ挿入されることを防止する突出部、
前記受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、
前記ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、前記ゴム輪本体の内周面から突出し、基端側から突出端側に向かって縮径する円錐台形の筒状に形成されるリップ部とを有するゴム輪、および
前記受口本体の内周面に前記ゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、
前記空間形成部が形成する前記逃げ空間は、前記受口本体に対して前記床スラブ側に傾くように斜め挿入された前記差口によって前記リップ部が挟み込まれることを回避するための当該リップ部の逃げ空間であり、
前記空間形成部の内周面は、前記受口本体の内周面よりも径方向外側に窪んでおり、
前記ゴム輪は、前記ゴム輪溝の側壁との間隙を埋めるための部材を用いることなく前記ゴム輪溝に収容されており、
前記受口本体と前記突出部が形成される管部分とは偏芯していない、ゴム輪受口。
【請求項5】
他の配管部材の差口が挿入される受口本体、
前記受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、
前記ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、前記ゴム輪本体の内周面から突出するリップ部とを有するゴム輪、および
前記受口本体の内周面に前記ゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、
前記空間形成部は、前記受口本体の周方向範囲の一部のみに形成される、ゴム輪受口。
【請求項6】
前記空間形成部は、前記受口本体の周方向範囲の底部のみに形成される、請求項5記載のゴム輪受口。
【請求項7】
前記差口は、前記空間形成部よりも奥側の前記受口本体に挿入され、
前記突出部は、前記空間形成部よりも奥側の前記受口本体のさらに奥側に形成されている、請求項1から4のいずれかに記載のゴム輪受口。
【請求項8】
前記突出部は、前記受口本体の周方向範囲の一部のみに形成される、請求項1から4のいずれかに記載のゴム輪受口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴム輪受口に関し、特にたとえば、リップ部を有するゴム輪がゴム輪溝に装着された、ゴム輪受口に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゴム輪受口の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の管の受け口構造(ゴム輪受口)では、受口(受口本体)の内周面にゴム輪収納溝(ゴム輪溝)が設けられる。このゴム輪収納溝には、ゴム輪と弾性リングとが収納される。ゴム輪は、差口の外径よりも若干小さい内径を有する断面く字形の環状体であって、内方に突出する突出部(リップ部)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-242955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴム輪受口には、他の配管部材の差口が挿入される。基本的には、ゴム輪受口に対して差口は真っ直ぐに挿入されるが、意図せず斜め挿入となってしまう場合がある。特に、床上、天井際および壁際などの建物の躯体近くにゴム輪受口が配置される場合に斜め挿入になり易い。ゴム輪受口に対して差口が斜め挿入されると、ゴム輪のリップ部に差口の先端が引っ掛かってリップ部が引き延ばされ、差口の先端とゴム輪溝の奥側壁部との間にリップ部が挟まる(図10参照)。この状態から差口を無理にねじ込むと、ゴム輪が損傷してしまう。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、ゴム輪受口を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、ゴム輪の破損を適切に防止できる、ゴム輪受口を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、建物において排水立て管と排水横管との合流部分に設けられ、建物の床スラブに配管される管本体と管本体から側方に突出して床スラブの上面に沿って配管される枝管部とを備える管継手の枝管部に用いられるゴム輪受口であって、他の配管部材の差口が挿入される受口本体、受口本体の奥端から径方向内側に突出して差口が当該受口本体よりも奥側へ挿入されることを防止する突出部、受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、ゴム輪本体の内周面から突出し、基端側から突出端側に向かって縮径する円錐台形の筒状に形成されるリップ部とを有するゴム輪、および受口本体の内周面にゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、空間形成部が形成する逃げ空間は、受口本体に対して床スラブ側に傾くように斜め挿入された差口によってリップ部が挟み込まれることを回避するための当該リップ部の逃げ空間であり、ゴム輪溝は、受口本体の管軸に平行な短円筒状の基壁部と、基壁部の管軸方向両端部から受口本体の径方向に延びる円環板状の側壁部とによって形成されており、空間形成部の内周面は、受口本体の内周面よりも径方向外側に窪んでおり、ゴム輪は、ゴム輪溝の側壁との間隙を埋めるための部材を用いることなくゴム輪溝に収容されており、受口本体と突出部が形成される管部分とは偏芯していない、ゴム輪受口である。
【0008】
第2の発明は、建物において排水立て管と排水横管との合流部分に設けられ、建物の床スラブに配管される管本体と管本体から側方に突出して床スラブの上面に沿って配管される枝管部とを備える管継手の枝管部に用いられるゴム輪受口であって、他の配管部材の差口が挿入される受口本体、受口本体の奥端から径方向内側に突出して差口が当該受口本体よりも奥側へ挿入されることを防止する突出部、受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、ゴム輪本体の内周面から突出し、基端側から突出端側に向かって縮径する円錐台形の筒状に形成されるリップ部とを有するゴム輪、および受口本体の内周面にゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、空間形成部が形成する逃げ空間は、受口本体に対して床スラブ側に傾くように斜め挿入された差口によってリップ部が挟み込まれることを回避するための当該リップ部の逃げ空間であり、空間形成部は、当該空間形成部とゴム輪溝とで2段の溝状となるように形成されており、空間形成部の内周面は、受口本体の内周面よりも径方向外側に窪んでおり、ゴム輪は、ゴム輪溝の側壁との間隙を埋めるための部材を用いることなくゴム輪溝に収容されており、受口本体と突出部が形成される管部分とは偏芯していない、ゴム輪受口である。
【0009】
第3の発明は、建物において排水立て管と排水横管との合流部分に設けられ、建物の床スラブに配管される管本体と管本体から側方に突出して床スラブの上面に沿って配管される枝管部とを備える管継手の枝管部に用いられるゴム輪受口であって、他の配管部材の差口が挿入される受口本体、受口本体の奥端から径方向内側に突出して差口が当該受口本体よりも奥側へ挿入されることを防止する突出部、受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、ゴム輪本体の内周面から突出し、基端側から突出端側に向かって縮径する円錐台形の筒状に形成されるリップ部とを有するゴム輪、および受口本体の内周面にゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、空間形成部が形成する逃げ空間は、受口本体に対して床スラブ側に傾くように斜め挿入された差口によってリップ部が挟み込まれることを回避するための当該リップ部の逃げ空間であり、空間形成部が形成する逃げ空間の体積は、受口本体に斜め挿入された差口によって引き延ばされるリップ部の体積分以上の大きさに設定されており、空間形成部の内周面は、受口本体の内周面よりも径方向外側に窪んでおり、ゴム輪は、ゴム輪溝の側壁との間隙を埋めるための部材を用いることなくゴム輪溝に収容されており、受口本体と突出部が形成される管部分とは偏芯していない、ゴム輪受口である。
【0010】
第4の発明は、建物において排水立て管と排水横管との合流部分に設けられ、建物の床スラブに配管される管本体と管本体から側方に突出して床スラブの上面に沿って配管される枝管部とを備える管継手の枝管部に用いられるゴム輪受口であって、他の配管部材の差口が挿入される受口本体、受口本体の奥端から径方向内側に突出して差口が当該受口本体よりも奥側へ挿入されることを防止する突出部、受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、ゴム輪本体の内周面から突出し、基端側から突出端側に向かって縮径する円錐台形の筒状に形成されるリップ部とを有するゴム輪、および受口本体の内周面にゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、空間形成部が形成する逃げ空間は、受口本体に対して床スラブ側に傾くように斜め挿入された差口によってリップ部が挟み込まれることを回避するための当該リップ部の逃げ空間であり、空間形成部の内周面は、受口本体の内周面よりも径方向外側に窪んでおり、ゴム輪は、ゴム輪溝の側壁との間隙を埋めるための部材を用いることなくゴム輪溝に収容されており、受口本体と突出部が形成される管部分とは偏芯していない、ゴム輪受口である。
【0011】
第1から第4の発明では、ゴム輪受口は、建物において排水立て管と排水横管との合流部分に設けられる管継手の枝管部に用いられる。この管継手は、建物の床スラブに配管される管本体と、管本体から側方に突出して床スラブの上面に沿って配管される枝管部とを備えるものである。ゴム輪受口は、他の配管部材の差口が挿入される受口本体を備える。受口本体の奥端には、径方向内側に突出して差口が当該受口本体よりも奥側へ挿入されることを防止する突出部が形成される。また、受口本体の内周面には、ゴム輪溝が形成され、このゴム輪溝には、ゴム輪が装着される。ゴム輪は、ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、ゴム輪本体の内周面から突出するリップ部とを有している。リップ部は、基端側から突出端側に向かって縮径する円錐台形の筒状に形成される。また、受口本体の内周面には、空間形成部が形成される。この空間形成部は、ゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する。また、空間形成部の内周面は、受口本体の内周面よりも径方向外側に窪んでいる。さらに、ゴム輪は、ゴム輪溝の側壁との間隙を埋めるための部材を用いることなく、ゴム輪溝に収容されており、受口本体と突出部が形成される管部分とは偏芯していない。このようなゴム輪受口では、仮に、差口が床スラブ側に傾くように斜め挿入されてゴム輪のリップ部が差口によって引き延ばされても、引き延ばされたリップ部は、空間形成部が形成する逃げ空間内に入り込む(逃げる)ことができるので、リップ部の挟み込みが回避される。
【0012】
さらに、第1の発明では、ゴム輪溝は、受口本体の管軸に平行な短円筒状の基壁部と、基壁部の管軸方向両端部から受口本体の径方向に延びる円環板状の側壁部とによって形成されている。第2の発明では、空間形成部とゴム輪溝とで2段の溝状となるように空間形成部が形成されている。第3の発明では、空間形成部が形成する逃げ空間の体積は、受口本体に斜め挿入された差口によって引き延ばされるリップ部の体積分以上の大きさに設定されている
【0013】
第1から第4の発明によれば、リップ部の逃げ空間を形成する空間形成部を有するので、差口が斜め挿入された際のリップ部の挟み込みを適切に回避することができる。したがって、ゴム輪の破損を適切に防止できる。
【0014】
第5の発明は、他の配管部材の差口が挿入される受口本体、受口本体の内周面に形成されるゴム輪溝、ゴム輪溝に収容されるゴム輪本体と、ゴム輪本体の内周面から突出するリップ部とを有するゴム輪、および受口本体の内周面にゴム輪溝の奥側壁部と連なって形成され、当該ゴム輪溝の内部空間と連通する逃げ空間を形成する空間形成部を備え、空間形成部は、受口本体の周方向範囲の一部に形成される。
【0015】
第5の発明によれば、ゴム輪の転びを防止しつつ、ゴム輪の破損を適切に防止できる。
【0016】
第6の発明は、第5の発明に従属し、空間形成部は、受口本体の周方向範囲の底部のみに形成される。
【0017】
第7の発明は、第1から第4のいずれかの発明に従属し、差口は、空間形成部よりも奥側の受口本体に挿入され、突出部は、空間形成部よりも奥側の受口本体のさらに奥側に形成されている。
【0018】
第8の発明は、第1から第5のいずれかの発明に従属し、ゴム輪本体およびリップ部は、ゴム輪溝内で収まるように圧縮される。
【0019】
第9の発明は、第1から第4のいずれかの発明に従属し、突出部は、受口本体の周方向範囲の一部のみに形成される。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、ゴム輪受口がリップ部の逃げ空間を形成する空間形成部を有するので、ゴム輪の破損を適切に防止できる。
【0021】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の一実施例であるゴム輪受口を示す断面図である。
図2】ゴム輪を外した状態のゴム輪受口を示す斜視図である。
図3】ゴム輪を外した状態のゴム輪受口を示す断面図である。
図4】ゴム輪受口が備える空間形成部の変形例を示す図である。
図5】ゴム輪受口が備える空間形成部の他の変形例を示す図である。
図6】ゴム輪受口が備えるゴム輪溝の変形例を示す図である。
図7】この発明の一実施例のゴム輪受口を備えるゴム輪受口継手のゴム輪受口周辺部分を示す図である。
図8図7のゴム輪受口に他の配管部材の差口を真っ直ぐに挿入した状態を示す図である。
図9図7のゴム輪受口に他の配管部材の差口が斜めに挿入される様子を示す図である。
図10】従来のゴム輪受口に他の配管部材の差口を斜めに挿入したときのゴム輪の挙動を模式的に示す図である。
図11図7のゴム輪受口に他の配管部材の差口を斜めに挿入したときのゴム輪の挙動を模式的に示す図である。
図12図7のゴム輪受口継手を施工するときの様子を示す図である。
図13】ゴム輪受口を備える配管部材の他の一例である排水集合管を施工するときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照して、この発明の一実施例であるゴム輪受口10は、配管部材の接続部に適用され、このゴム輪受口10に他の配管部材の差口が挿入されることによって、配管部材の接続部同士がゴム輪接合される。ゴム輪受口10は、管、継手および桝などの各種の配管部材の接続部に適用可能であり、特に、床上、天井際および壁際などの建物の躯体近くに受口部分が配置(配管)される配管部材に好適に用いられる。
【0024】
図1に示すように、ゴム輪受口10は、円筒状に形成される受口本体12を備える。受口本体12は、他の配管部材の差口が挿入される部分であって、硬質塩化ビニルおよびポリエチレン等の合成樹脂によって形成される。受口本体12の内径は、挿入される差口の外径よりも少し大きい大きさに設定される。
【0025】
受口本体12の先端部の内周面12aには、周方向に延びる環状のゴム輪溝14が形成される。この実施例では、受口本体12の先端部に形成した拡径部にゴム輪溝14が形成される。具体的には、ゴム輪溝14は、管軸に平行な短円筒状の基壁部20と、基壁部20の管軸方向両端部から径方向(管軸方向に対して垂直な方向)に延びる円環板状の側壁部(手前側壁部22および奥側壁部24)とによって形成される。ただし、手前側壁部22および奥側壁部24の一方または双方は、管軸側に向かうに従って互いに離れるように傾斜する傾斜壁であってもよい。
【0026】
ゴム輪溝14には、止水用のゴム輪16(シールリングとも言う。)が装着される。ゴム輪16は、ゴム輪本体30とゴム輪本体30の内周面から突出するリップ部32とを備え、SBR(スチレンブタジエンゴム)等のゴム材料によって形成される。ゴム輪本体30は、ゴム輪溝14内に収容されて基壁部20に密着する部分であり、短円筒状(リング状)に形成される。一方、リップ部32は、差口の外周面に密着する部分であり、その基端側(受口手前側)から突出端側(受口奥側)に向かって徐々に縮径する円錐台形の筒状に形成される。なお、ゴム輪溝14には、ゴム輪に16に加えて、ゴム輪16を押さえるための押え部材(図示せず)を装着することもできる。
【0027】
さらに、受口本体12の内周面12aには、空間形成部18が形成される。図1と共に図2および図3を参照して、空間形成部18は、ゴム輪溝14の内部空間14aと連通するリップ部32の逃げ空間18aを形成する部分であり、ゴム輪溝14の奥側壁部24の内側面と連なって形成される。この実施例では、受口本体12の内周面12aの奥側壁部24と連なる部分を面取りすることで、空間形成部18を形成している。この空間形成部18の内周面は、奥側壁部24の内側面と空間形成部18奥側の受口本体12の内周面12aとを滑らかに連結するR面状(曲面状)に形成される。
【0028】
また、空間形成部18は、受口本体12の12分の1周以上半周以下(中心角で30度以上180度以下)の周方向範囲に形成されることが好ましい。空間形成部18を形成する周方向範囲(周方向長さ)を大きくし過ぎると、ゴム輪16の転びが生じる可能性が出てくるからであり、空間形成部18を形成する周方向範囲を小さくし過ぎると、リップ部32の逃げ空間18aを適切に形成できないからである。この実施例では、受口本体12の3分の1周(120度)に亘る周方向範囲に空間形成部18が形成されている。ただし、空間形成部18は、受口本体12の全周に亘って設けることもできる。また、空間形成部18が形成する逃げ空間18aの体積は、受口本体12の先端およびゴム輪16の位置に基づいて算出される、ゴム輪受口10に斜め挿入された差口によって引き延ばされるリップ部32の体積分以上の大きさに設定される。
【0029】
なお、上述の実施例では、受口本体12の内周面12aを面取りすることで空間形成部18を形成したが、これに限定されない。たとえば、図4に示すように、空間形成部18は、受口本体12の管壁をR形状(曲壁状)とすることで形成することもできる。また、図5に示すように、空間形成部18とゴム輪溝14とで2段の溝状となるように空間形成部18を形成することもできる。さらに、上述の実施例では、受口本体12の先端部に形成した拡径部にゴム輪溝14を形成しているが、図6に示すように、ゴム輪溝14は、必ずしも受口本体12の拡径部に形成される必要はない。
【0030】
上述のようなゴム輪受口10は、配管部材の接続部に適用される。図7には、配管部材の一例であるゴム輪受口継手50の枝管部54にゴム輪受口10を適用した例を示す。図7に示すように、ゴム輪受口継手50は、建物において、排水立て管と排水横管との合流部分に設けられる管継手であって、縦管状の管本体52と管本体52から側方に突出する枝管部54とを備える。ゴム輪受口継手50の管本体52は、建物の床スラブ70に配管され、枝管部54(つまりゴム輪受口10)は、床スラブ70の上面に沿って配管される(図12参照)。このようなゴム輪受口継手50の枝管部54にゴム輪受口10を適用する場合、ゴム輪受口10の空間形成部18は、床スラブ70側(躯体側)の部分である受口本体12の底部(下半部)に形成される。
【0031】
図8に示すように、ゴム輪受口継手50のゴム輪受口10には、排水横管60(他の配管部材の一例)の端部に形成される差口62が挿入される。この際、ゴム輪受口10に対して差口62が真っ直ぐに挿入された場合には、差口62の先端がゴム輪16のリップ部32に引っ掛かることなく差口62がゴム輪16を通過する。そして、ゴム輪溝14の内周面と差口62の外周面との間でゴム輪16が圧縮されることで、この間の止水性が確保される。
【0032】
しかしながら、ゴム輪受口継手50のゴム輪受口10は、床スラブ70の上面に沿って配置されるため、ゴム輪受口10に対して差口62を挿入する際には、図9に示すように、差口62の先端側が下となる斜め挿入になり易い。
【0033】
ここで、図10に示すように、空間形成部のない従来のゴム輪受口100では、差口62が斜め挿入されると、ゴム輪104のリップ部106に差口62の先端が引っ掛かってリップ部106が引き延ばされ、差口62の先端とゴム輪溝102の奥側壁部との間にリップ部106が挟まってしまう。この状態で差口62を無理にねじ込むと、ゴム輪104が損傷してしまう。
【0034】
これに対して、図11に示すように、この実施例の空間形成部18を備えるゴム輪受口10では、差口62が斜め挿入されたときにリップ部32が引き延ばされても、引き延ばされたリップ部32は、空間形成部18が形成する逃げ空間18a内に入り込む(逃げる)ことができるので、リップ部32の挟み込みを適切に回避することができる。また、空間形成部18の内周面がR面状に形成されているので、差口62の先端がRに沿って移動するようになり、せん断の力が緩和される。したがって、リップ部32の挟み込みをより適切に回避することができる。
【0035】
続いて、図12を参照して、ゴム輪受口10を備える配管部材を用いた配管の施工方法について説明する。ここでは、枝管部54にゴム輪受口10を採用したゴム輪受口継手50の場合を例示して説明する。
【0036】
図12に示すように、排水配管を施工する際には、先ず、床スラブ70にゴム輪受口継手50(配管部材)の管本体52を配置すると共に、ゴム輪受口10の空間形成部18が床スラブ70側(建物の躯体側である下側)に位置するように、ゴム輪受口継手50を配管する。次に、ゴム輪受口10を間に挟んだ床スラブ70の反対側、つまり上側からゴム輪受口10に排水横管60(他の配管部材)の差口62を挿入して接続する。この際、仮にゴム輪受口10に差口62が斜め挿入されても、ゴム輪受口10に空間形成部18を有することから、リップ部32の挟み込みを適切に回避することができ、ゴム輪16の破損が適切に防止される。
【0037】
また、図13には、配管部材の他の一例である排水集合管80の枝管部82にゴム輪受口10を適用した場合の施工時の様子を示す。
【0038】
なお、ゴム輪受口継手50の枝管部54(排水集合管80の枝管部82の場合も同様)にゴム輪受口10を採用した場合には、ゴム輪受口10が床スラブ70上に配置されるので、ゴム輪受口継手50を配管する際に空間形成部18を下側に位置させているが、空間形成部18を配置する周方向位置は、ゴム輪受口10の配管態様に応じて変更される。たとえば、ゴム輪受口10が壁際に配管される場合には、空間形成部18が壁側(横側)に位置するように配管部材が配管され、差口はその壁と反対側からゴム輪受口10に挿入される。また、ゴム輪受口10が天井際に配管される場合には、空間形成部18が天井側(上側)に位置するように配管部材が配管され、差口は天井と反対側(下側)からゴム輪受口10に挿入される。
【0039】
以上のように、この実施例によれば、リップ部32の逃げ空間18aを形成する空間形成部18を有するので、差口62が斜め挿入された際のリップ部32の挟み込みを適切に回避することができる。したがって、ゴム輪16の破損を適切に防止できる。
【0040】
また、受口本体12の半周以下の周方向範囲に空間形成部18を形成したので、ゴム輪16の転びを適切に防止しつつ、リップ部32の挟み込みを回避してゴム輪16の破損を適切に防止できる。
【0041】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 …ゴム輪受口
12 …受口本体
14 …ゴム輪溝
16 …ゴム輪
18 …空間形成部
50 …ゴム輪受口継手(配管部材)
60 …排水横管(他の配管部材)
70 …床スラブ(建物の躯体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13