(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
E21D9/06 301Z
(21)【出願番号】P 2023500059
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2022100266
(87)【国際公開番号】W WO2023005517
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】202110847737.7
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522478721
【氏名又は名称】中交天和機械設備製造有限公司
【氏名又は名称原語表記】TIANHE MECHANICAL EQUIPMENT MANUFACTURING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 123, Yiyu Road Changshu, Jiangsu 215000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 路賽
(72)【発明者】
【氏名】徐 寅
(72)【発明者】
【氏名】肖 軍
(72)【発明者】
【氏名】姜 鵬
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-292769(JP,A)
【文献】特開平10-131664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部であって、
非円形のメイン駆動部構造体(1)、シールド体(2)及び摺動銅板(3)を含み、
メイン駆動部構造体(1)は重負荷溶接箱体であり、メイン駆動部の重要な積載構造部材として、当該箱体はカッターヘッドから伝達された逆推力及びアンチトルクをリアルタイムに受け、
シールド体(2)はメイン駆動部構造体(1)の形状と整合し、前記メイン駆動部構造体(1)の箱体外部は、形状が整合したシールド体(2)内に嵌め込まれ、シールド体(2)の内面に密接され、メイン駆動部構造体(1)の箱体が受けた負荷力をシールド体(2)に伝達し、
前記メイン駆動部構造体(1)の外部箱体の上端、下端は平面であり、両側は円弧面であり、前記シールド体(2)の内面の上端、下端は平面であり、内面の両側は円弧面であり、
摺動銅板(3)は、段階的に間隔を空けるように、メイン駆動部構造体(1)とシールド体(2)の間に設けられ、メイン駆動部の摺動精度を向上させることを特徴とする摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部。
【請求項2】
前記メイン駆動部構造体(1)の下端の平面には、メイン駆動部及びカッターヘッドの重力を受けるとともに、カッターヘッドが回転するように、メイン駆動部に伝達されたアンチトルクを受ける2ブロック摺動銅板一(3.1)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部。
【請求項3】
前記メイン駆動部構造体(1)の両側の円弧面には、メイン駆動部の摺動軸線が常にシールド体(2)の中心に位置するように制御する4ブロック摺動銅板二(3.2)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部。
【請求項4】
前記メイン駆動部構造体(1)の上端の平面には、カッターヘッドが回転するように、メイン駆動部に伝達されたアンチトルクを受ける2ブロック摺動銅板三(3.3)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールドマシンの技術分野に関して、具体的に、摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部に関している。
【背景技術】
【0002】
シールドマシンの掘進過程で、カッターヘッドが引っ掛けて、回動できない恐れがある。カッターヘッド伸縮摺動機能を有するシールドマシンであれば、この場合、カッターヘッドが繰り返して伸縮するとともに、順方向・逆方向に回転することで、シールドマシンのカッターヘッドの解放を実現する。現在、カッターヘッド伸縮摺動機能を有するシールドマシンに対して、国内外のシールドマシンメーカーは一般的に、円環状のメイン駆動部の外側に連続環の摺動軸受を配置することで、メイン駆動部に軸方向の摺動機能を具備させ、シールドマシンのカッターヘッドに伸縮摺動を実現させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
円環状のメイン駆動部がそれ自体の中心軸線に沿ってねじることを防止するために、
図1を参照して、このような通常の摺動形態のメイン駆動部は、メイン駆動部の後部に独立のねじれ防止リングを配置して、ねじれ防止リングに4組の回り止め油圧シリンダを装着する必要がある。当該回り止め油圧シリンダの台座はねじれ防止リングに剛性接続され、4組の回り止め油圧シリンダのピストンロッドの先端平面はシールドマシンのフロントシールドの内部平面に緊密に貼合され、メイン駆動部が受けた回転トルクをシールド体に伝達することで、カッターヘッドが回転するように土を掘削する時のアンチトルクを相殺する。このような通常の摺動及びねじれ防止形態のシールドマシンのメイン駆動部において、設計原理及び構造形態面で、ねじれ防止リングを配置しなければならないため、メイン駆動部構造がより複雑になって、メイン駆動部全体の重量を増やし、メイン駆動部の摺動抵抗力が大きくなる。
【0004】
上記通常の摺動形態のメイン駆動部には以下の欠陥が存在する。
1.メイン駆動部摺動装置の摺動精度及び積載能力を増やすために、メイン駆動部の外側に、連続的に環になる摺動軸受(特製銅スリーブ)を配置し、これによって、メイン駆動部摺動装置の製造コストを増やす。
2.ねじれ防止リングでの4組の高圧油圧シリンダによって、アンチトルクを伝達し、高圧油圧シリンダを採用することで、メイン駆動部回り止め装置の製造コストを増やす。そして、高圧油圧シリンダの製造品質が直接的に、メイン駆動部の回り止め効果に影響し、これによって、メイン駆動部回り止め装置の故障リスク箇所を増やす。
3.4組の回り止め油圧シリンダの動作圧力及びストローク制御は、メイン駆動部のねじれ防止のための確実なキーポイントであるが、実際応用において、油圧シリンダの内部漏れ、管路圧力解放などの状況のため、4組の回り止め油圧シリンダによって提供されたたアンチトルクの不足、又は頻繁な変動を招致する恐れがある。
4.シールドマシンのカッターヘッドの動作トルクの過渡変動が大きくなった場合、4組の回り止め油圧シリンダの動作圧力及び伸縮ストロークがカッターヘッドのトルクの変化にリアルタイムにマッチングして、即時に調整されにくくて、回り止め油圧シリンダの実際の制御レート及び制御精度が必然的に、カッターヘッドの動作トルクの変化に遅れて、これによって、メイン駆動部回り止め装置が、安定なねじれ防止の機能を実現できない。これに基づいて、上記問題を解决するために、本発明は、摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部を設計する。
【0005】
本発明は、摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部を提供することを目的とし、メイン駆動部は軸方向摺動機能を備え、そのメイン駆動部構造形態はそれ自体のねじれ防止機能を備える。当該新規形態のメイン駆動部構造は、カッターヘッド伸縮摺動機能を有するシールドマシンに適している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明は以下の技術的解決策を提供し、即ち、摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部であって、非円形のメイン駆動部構造体、シールド体及び摺動銅板を含み、メイン駆動部構造体は重負荷溶接箱体であり、メイン駆動部の重要な積載構造部材として、当該箱体はカッターヘッドから伝達された逆推力及びアンチトルクをリアルタイムに受け、シールド体はメイン駆動部構造体の形状と整合し、前記メイン駆動部構造体の箱体の外部は、形状が整合したシールド体内に嵌め込まれ、シールド体の内面に密接され、メイン駆動部構造体の箱体が受けた負荷力をシールド体に伝達し、摺動銅板は、段階的に間隔を空けるように、メイン駆動部構造体とシールド体との間に設けられ、メイン駆動部の摺動精度を向上させる。
【0007】
好ましくは、前記メイン駆動部構造体の外部箱体の上端、下端は平面であり、両側は円弧面である。
【0008】
好ましくは、前記シールド体の内面の上端、下端は平面であり、内面の両側は円弧面である。
【0009】
好ましくは、前記メイン駆動部構造体の下端の平面には、主に、メイン駆動部及びカッターヘッドの重力を受けるとともに、カッターヘッドが回転するように、メイン駆動部に伝達されたアンチトルクを受ける2ブロック摺動銅板一が設けられる。
【0010】
好ましくは、前記メイン駆動部構造体の両側の円弧面には、主に、メイン駆動部の摺動軸線が常にシールド体の中心に位置するように制御する4ブロック摺動銅板二が設けられる。
【0011】
好ましくは、前記メイン駆動部構造体の上端の平面には、主に、カッターヘッドが回転するように、メイン駆動部に伝達されたアンチトルクを受ける2ブロック摺動銅板三が設けられる。
【発明の効果】
【0012】
現在、シールドマシン業界において、一般的に採用した通常のシールドマシンのメイン駆動部の摺動及びねじれ防止構造に比べると、その利点は以下の通り、即ち、本発明は、通常のシールドマシンのメイン駆動部の回り止めの必要なねじれ防止リングを取り消すため、メイン駆動部の構造形態を簡略化し、メイン駆動部全体の重量を軽くして、メイン駆動部の摺動抵抗力をさらに減少させる。
【0013】
シールドマシンのメイン駆動部の摺動銅板の配置形態を最適化して、メイン駆動部の摺動銅板の単位面積当たりの有効積載力を高めるため、シールドマシンのメイン駆動部の摺動軸受の積載能力を低減させていないことを前提として、摺動銅板の全体的な装着量を効果的に減少させ、メイン駆動部摺動装置の製造コストをさらに低減させる。
【0014】
通常のシールドマシンのメイン駆動部の回り止めの必要な高圧油圧シリンダの使用を取り消すため、メイン駆動部回り止め装置の製造コストを低減させ、メイン駆動部回り止め装置の故障リスク箇所を減少させる。
【0015】
通常のシールドマシンのメイン駆動部の回り止め機能の必要な液圧制御を剛性機械制御に変換することで、シールドマシンのメイン駆動部のアンチトルク応答のリアルタイム性、安定性を実現して、シールドマシンのメイン駆動部のねじれ防止機能の確実性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施例の技術的解決策をより明らかに説明するために、以下、実施例の記載の必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の記載の図面は本発明のいくつかの実施例のみであり、当業者にとって、進歩性に値する労働をしないことを前提として、これらの図面に基づいて他の図面を取得してもよい。
【
図1】従来技術の通常の摺動形態のメイン駆動部構造模式図である。
【
図3】本発明のメイン駆動部の回り止め原理の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例の図面を結合して、本発明の実施例の技術的解決策を明らか且つ完全に記載し、明らかに、記載の実施例は全ての実施例ではなく、本発明の一部の実施例のみである。本発明の実施例に基づいて、当業者が進歩性に値する労働をしないことを前提として、取得した他の全ての実施例は何れも本発明の保護範囲に属している。
【0018】
図2、3を参照して、本発明は技術的解決策を提供し、即ち、摺動及び自己回り止め機能を有するシールドマシンのメイン駆動部であって、非円形のメイン駆動部構造体1、シールド体2及び摺動銅板3を含み、メイン駆動部構造体1は重負荷溶接箱体であり、メイン駆動部構造体1の外部箱体の上端、下端は平面、両側は円弧面であり、メイン駆動部の重要な積載構造部材として、当該箱体は、カッターヘッドから伝達された逆推力及びアンチトルクをリアルタイムに受け、シールド体2の内面の上端、下端は平面であり、内面の両側は円弧面であり、メイン駆動部構造体1の形状と整合し、メイン駆動部構造体1の箱体の外部は、形状が整合したシールド体2内に嵌め込まれ、シールド体2の内面に密接され、メイン駆動部構造体1の箱体が受けた負荷力をシールド体2に伝達し、摺動銅板3は、段階的に間隔を空けるように、メイン駆動部構造体1とシールド体2との間に設けられ、メイン駆動部構造体1とシールド体2との密接を確保して、メイン駆動部とシールド体2との間の摺動抵抗力を減少させ、メイン駆動部の摺動精度を向上させる。
【0019】
メイン駆動部構造体1の下端の平面には2ブロック摺動銅板一3.1が設けられ、メイン駆動部の摺動過程で、
メイン駆動部及びカッターヘッドの重力を受けるとともに、カッターヘッドが回転するように、メイン駆動部に伝達されたアンチトルクを受ける。メイン駆動部構造体1の両側の円弧面には、主に、メイン駆動部の摺動軸線が常にシールド体2の中心に位置するように制御する4ブロック摺動銅板二3.2が設けられる。
【0020】
メイン駆動部構造体1の上端の平面には、主に、カッターヘッドが回転するように、メイン駆動部に伝達されたアンチトルクを受ける2ブロック摺動銅板三3.3が設けられる。
【0021】
シールドマシンの動作過程で、カッターヘッドが回転するように土を掘削すると、必然的に、一定のアンチトルクを生成する。当該アンチトルクは直接的に、メイン駆動部に伝達され、メイン駆動部を中心軸周りに回転させる。このような、自己回り止め機能を有するメイン駆動部構造を採用すれば、カッターヘッドから伝達されたアンチトルクが直接的に、メイン駆動部の上端、下端の平面及びその摺動銅板3を介してシールド体2に伝達され、シールドマシンのメイン駆動部の自己回り止めを実現する。
【0022】
本発明の新型シールドマシンのメイン駆動部の摺動及びねじれ防止構造において、その摺動構造は主に、間隔を空けるようにメイン駆動部の外側に配置された摺動銅板3によって実現される。メイン駆動部の重量は主に、メイン駆動部の下端の平面に装着される摺動銅板3によって受けられ、他の部位に装着される摺動銅板3は主に、メイン駆動部の摺動軸線を位置決めして、メイン駆動部の摺動精度を向上させる。
【0023】
当該シールドマシンのメイン駆動部のねじれ防止構造は主に、メイン駆動部自体構造の非円形の特点によって、メイン駆動部が受けたアンチトルク回動が非円形の構造で制限され、メイン駆動部の自己回り止め機能を実現する。
【0024】
本発明のシールドマシンのメイン駆動部の外側には、間隔を空けていくつかの摺動銅板3が設けられればよく、これによって、摺動軸受の作用を発揮する。また、当該メイン駆動部自体構造は非円形であり、上端、下端の平面を備える。メイン駆動部がシールド体2内に装着された後、当該両端の平面は、フロントシールド内の対応する上、下という2つの平面に緊密に貼合され、自己ねじれ防止の機能を実現する。
【0025】
本発明のメイン駆動部の摺動及びねじれ防止構造を採用したシールドマシンにおいて、メイン駆動部構造形態は自己回り止め機能を備えるため、通常のシールドマシンのメイン駆動部の回り止めの必要なねじれ防止リングを取り消して、メイン駆動部の構造を簡略化し、メイン駆動部全体の重量を軽くして、メイン駆動部の摺動抵抗力を減少させる。
【0026】
本発明のメイン駆動部の摺動及びねじれ防止構造を採用したシールドマシンにおいて、メイン駆動部の摺動積載は主に、メイン駆動部の下平面に設けられる平面銅板3によって受けられ、通常のシールドマシンのメイン駆動部の摺動積載の必要な円環状銅板3に比べると、このようなメイン駆動部摺動構造は、摺動銅板3の積載接触を元の高副線接触から低副面接触に変換して、メイン駆動部の摺動銅板3の単位面積当たりの有効積載力を高めて、摺動銅板3の全体的な装着数を減少させ、メイン駆動部摺動装置の製造コストを低減させる。
【0027】
通常のシールドマシンのメイン駆動部回り止め構造に比べると、本発明のメイン駆動部の摺動及びねじれ防止構造を採用したシールドマシンにおいて、回り止め油圧シリンダの使用を取り消すため、メイン駆動部回り止め装置の製造コストを低減させ、メイン駆動部回り止め装置の故障リスク箇所を減少させる。
【0028】
本発明のメイン駆動部の摺動及びねじれ防止構造を採用したシールドマシンにおいて、メイン駆動部のねじれ防止機能は、メイン駆動部とフロントシールドとの剛性構造接触によって実現され、剛性構造接触はシールドマシンのカッターヘッドの動作際のアンチトルクをリアルタイム且つ安定に提供するため、メイン駆動部のねじれ防止を確実に実現できる。
【符号の説明】
【0029】
1 メイン駆動部構造体、
2 シールド体、
3 摺動銅板、
3.1 ブロック摺動銅板一、
3.2 ブロック摺動銅板二、
3.3 ブロック摺動銅板三