(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240125BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240125BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240125BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240125BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/38
C08K3/22
C08K9/06
C08K5/5415
(21)【出願番号】P 2023552095
(86)(22)【出願日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2023024488
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022147188
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237422
【氏名又は名称】富士高分子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】片石 拓海
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-006980(JP,A)
【文献】国際公開第2021/187609(WO,A1)
【文献】特開2011-144234(JP,A)
【文献】特許第7015424(JP,B2)
【文献】特許第7047199(JP,B2)
【文献】国際公開第2022/158029(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサンと熱伝導性フィラーを含む熱伝導性組成物であって、
A成分として、25℃における動粘度が100~3,000mm
2/sの付加反応硬化型の前記オルガノポリシロキサン100質量部と、
B成分として、球状凝集窒化ホウ素粒子を
65~120質量部と、
C成分として、中心粒径D50が0.1~1μmの不定形アルミナ粒子であり、一部または全部がR
aSi(OR')
4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、
aは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されている不定形アルミナ粒子を
150~240質量部含み、
前記B成分と前記C成分は前記熱伝導性フィラーであり、
前記球状凝集窒化ホウ素粒子は、
中心粒径D50が10μm以上30μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)と、
中心粒径D50が球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)の2倍以上であり、かつ中心粒径D50が30μmを超え100μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)と、を含み、
球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)の配合量と球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)の配合量の比(B2/B1)が1.00~3.00であ
り、
前記アルコキシシラン化合物は、オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシランおよびドデシルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種のアルコキシシラン化合物である、熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性組成物は、粘度調整剤として、さらにR
aSi(OR')
4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、
aは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物を、A成分100質量部当たり0.1~10質量部含
み、
前記アルコキシシラン化合物は、オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシランおよびドデシルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種のアルコキシシラン化合物である、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記A成分は、25℃における動粘度が400mm
2/s以上のオルガノポリシロキサンと、25℃における動粘度が400mm
2/s未満のオルガノポリシロキサンの混合物である請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性組成物の硬化後の熱伝導率は、3.5W/mK以上10.0W/m・K以下である請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
前記熱伝導性組成物の比重は2.2以下である請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物がシート状に成形され硬化された熱伝導性シート。
【請求項7】
前記熱伝導性シートの熱伝導率は、3.0W/mK以上10.0W/m・K以下である請求項6に記載の熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品又は電子部品等の発熱体と放熱体の間に介在させるのに好適な熱伝導性組成物及びそれを用いて成形された熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCPU等の半導体の性能向上はめざましく、それに伴い発熱量も膨大になっている。そのため発熱する電気部品又は電子部品には放熱体が取り付けられ、例えば半導体などの発熱体と放熱体との密着性を改善する為に熱伝導性グリースが使われている。機器の小型化、高性能化、高集積化に伴い熱伝導性グリースには高熱伝導性とともに、発熱体と放熱体の間からグリースが垂れ落ち難いという性質(「耐落下性」と呼ばれる。)が求められている。
特許文献1には、熱伝導性充填剤と、分子内に硬化性官能基を一つ有するポリシロキサンを少なくとも1種含むポリオルガノシロキサン樹脂と、アルコキシシリル基及び直鎖状シロキサン構造を有するシロキサン化合物とを含む組成物が提案されている。特許文献2には、液状シリコーンと熱伝導性充填剤と疎水性球状シリカ微粒子を含み、放熱性を向上した熱伝導性シリコーン組成物が提案されている。特許文献3には、特定粒子径の窒化アルミニウムとアルミナを含む熱伝導性のシリコーン組成物が提案されている。特許文献4及び5には、特定粒子径の窒化ホウ素とアルミナを含む熱伝導性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104714号公報
【文献】特開2016‐044213号公報
【文献】特開2021-195499号公報
【文献】特表2021-518464号公報
【文献】特表2021-518466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献の熱伝導性組成物は、粘度が高くなりやすく、組成物を混練りしてコンパウンドとする際に、強いせん断力が発生し、そのせん断力によりサイズの大きい凝集粒子が砕けてしまうという問題があった。また、凝集粒子が砕けないように粒子径の小さい凝集粒子を使用すると、熱伝導パスが形成されにくく、熱伝導率が低くなってしまう問題があった。
【0005】
本発明は前記従来の問題を解決するため、組成物(構成成分の混合物)を混練りしてコンパウンドとする際の粘度が低く、混練りの作業性もよく、かつ比較的粒子径の大きい凝集粒子による良好な熱伝導パスを形成しやすくし、熱伝導率を高くできる、熱伝導性組成物及びそれを用いて成形された熱伝導性シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一態様において、
オルガノポリシロキサンと熱伝導性フィラーを含む熱伝導性組成物であって、
A成分として、25℃における動粘度が100~3,000mm2/sの付加反応硬化型の前記オルガノポリシロキサン100質量部と、
B成分として、球状凝集窒化ホウ素粒子を60~150質量部と、
C成分として、中心粒径D50が0.1~1μmの不定形アルミナ粒子であり、一部または全部がRaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されている不定形アルミナ粒子を120~240質量部含み、
前記B成分と前記C成分は前記熱伝導性フィラーであり、
前記球状凝集窒化ホウ素粒子は、
中心粒径D50が10μm以上30μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)と、
中心粒径D50が球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)の2倍以上であり、かつ中心粒径D50が30μmを超え100μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)と、を含み、
球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)の配合量と球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)の配合量の比(B2/B1)が1.00~3.00である、熱伝導性組成物に関する。
【0007】
本発明は、一態様において、本発明の熱伝導性組成物がシート状に成形され硬化された熱伝導性シートに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、オルガノポリシロキサンと熱伝導性フィラーを含む熱伝導性組成物であって、A成分として、25℃における動粘度が100~3,000mm2/sの付加反応硬化型の前記オルガノポリシロキサン100質量部と、B成分として、球状凝集窒化ホウ素粒子を60~150質量部と、C成分として、中心粒径D50が0.1~1μmの不定形アルミナ粒子であり、一部または全部がRaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されている不定形アルミナ粒子を120~240質量部含む。前記B成分と前記C成分は前記熱伝導性フィラーである。前記球状凝集窒化ホウ素粒子は、中心粒径D50が10μm以上30μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)と、中心粒径D50が球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)の2倍以上であり、かつ中心粒径D50が30μmを超え100μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)と、を含む。球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)の配合量と球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)の配合量の比(B2/B1)が1.00~3.00である。
そのため、構成成分の混合物を混練りしてコンパウンドとする際の粘度が低く、そのため混練の作業性もよく、かつ比較的粒子径の大きい凝集粒子によって熱伝導パスを形成しやすく、熱伝導性シートの熱伝導率を高くできる、熱伝導性組成物を提供できる。
また、本発明の熱伝導性組成物を用いれば、熱伝導性の高い熱伝導性シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A-Bは本発明の一実施例における試料の熱伝導率の測定方法を示す説明図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施形態における熱伝導性シートの使用方法を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱伝導性組成物は、オルガノポリシロキサンと熱伝導性フィラー(「熱伝導性粒子」とも呼ばれる。)を含む熱伝導性組成物であり、下記A成分、B成分、及びC成分を含む。
A成分:動粘度が100~3,000mm2/sの付加反応硬化型オルガノポリシロキサン
B成分:球状凝集窒化ホウ素粒子(熱伝導性フィラー)
C成分:中心粒径D50が0.1~1μmの不定形アルミナ粒子であり、一部または全部がRaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されている不定形アルミナ粒子(熱伝導性フィラー)
前記付加反応硬化型オルガノポリシロキサンの動粘度は、100~3,000mm2/sである。前記動粘度は25℃における動粘度である。好ましい25℃における動粘度は150~2,000mm2/sであり、より好ましくは150~1,500mm2/sであり、さらに好ましくは150~1,000mm2/sであり、さらにより好ましくは150~800mm2/sである。付加反応硬化型オルガノポリシロキサンは、一般的にはA液とB液の2液混合型であり、一方の液には白金系触媒が混合され、他方の液には架橋剤が混合されている。市販品も多く販売されている。付加反応硬化型オルガノポリシロキサンが、2液混合型である場合、A液の25℃における動粘度およびB液の25℃における動粘度はともに100~3,000mm2/sであり、A液およびB液の好ましい動粘度の範囲も上記と同じである。
【0011】
本発明の熱伝導性組成物は、B成分である球状凝集窒化ホウ素粒子を、A成分100質量部に対して60~150質量部含む。B成分は、熱伝導性フィラーである。本発明の熱伝導性組成物におけるB成分の含有量は、A成分100質量部に対して、好ましくは65~140質量部であり、より好ましくは70~130質量部であり、さらに好ましくは75~120質量部である。
前記球状凝集窒化ホウ素粒子は、中心粒径D50が10μm以上30μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)と、中心粒径D50がB1の2倍以上であり、かつ中心粒径D50が30μmを超え100μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)とからなる。球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)の配合量と球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)の配合量の比(B2/B1)は、1.00~3.00である。前記配合量の比(B2/B1)は、好ましくは1.20~2.80であり、より好ましくは1.40~2.60であり、さらに好ましくは1.60~2.40である。
球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)としては、例えば、Momentive社製、商品名"PTX25"が、球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)としては、例えば、Momentive社製、商品名"PTX60"が使用できる。"PTX25"および"PTX60"のカタログは、インターネットURL:https://www.tomo-e.co.jp/upload/newsJA/29SVF8R-newsJA_content-012.pdfより入手可能である。
【0012】
前記C成分は、中心粒径D50が0.1~1μmの不定形アルミナ粒子であり、前記不定形アルミナ粒子は、その一部または全部がRaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されている。C成分は、熱伝導性フィラーである。本発明の熱伝導性組成物は、C成分を、A成分100質量部に対して120~240質量部含む。本発明の熱伝導性組成物におけるC成分の含有量は、A成分100質量部に対して、130~230質量部が好ましく、より好ましくは140~225質量部であり、さらに好ましくは150~220質量部である。
前記C成分の不定形アルミナ粒子としては、例えば、住友化学社製、商品名"AKP-30"が使用できる。"AKP-30"のカタログはインターネットURL:https://www.sumitomo-chem.co.jp/products/files/docs/a06008.pdfより入手できる。
【0013】
本発明の熱伝導性組成物は、中心粒径の異なる熱伝導性フィラーを含む。そのため、相対的に中心粒径が大きい大粒子の間に相対的に中心粒径が小さい小粒子が存在することで、熱伝導性フィラーが最密充填に近い状態で充填し、熱伝導性組成物の熱伝導性を高くできる。
熱伝導性フィラーの粒子径の測定はレーザー回折光散乱法により行い、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)を中心粒径D50として測定する。この測定器としては、例えば堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950S2がある。
【0014】
熱伝導性組成物は、粘度調整剤として、さらにRaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物を0.1~10質量部含むのが好ましい。これにより、組成物(構成成分の混合物)を混練りしてコンパウンドとする際の粘度を下げることができる。
【0015】
熱伝導性フィラーは、RaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面前処理されているのが好ましい。これにより、組成物の粘度を下げることができる。とくに、中心粒径D50が0.1~1μmの不定形アルミナ粒子は表面前処理されているのが好ましい。
アルコキシシラン化合物は、例えばオクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物がある。前記アルコキシシラン化合物は、一種又は二種以上混合して使用することができる。表面処理剤として、アルコキシシラン化合物と片末端シラノールシロキサンを併用してもよい。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。表面処理されていると、熱伝導性フィラーは、マトリックス樹脂との混合性が良好となる。
アルコキシシラン化合物は予め熱伝導性フィラーと混合され、熱伝導性フィラーはアルコキシシラン化合物により前処理しておくのが好ましい。熱伝導性フィラー100質量部に対し、アルコキシシラン化合物は0.01~10質量部添加するのが好ましい。熱伝導性フィラーをアルコキシシラン化合物によって表面処理することで、熱伝導性フィラーがマトリックス樹脂に充填されやすくなる効果がある。
【0016】
前記A成分は、動粘度が400mm2/s以上のオルガノポリシロキサンと、動粘度が400mm2/s未満のオルガノポリシロキサンの混合物が好ましい。これにより、組成物(構成成分の混合物)を混練りしてコンパウンドとする際の粘度が低く、混練の作業性も良好となる。
【0017】
前記熱伝導性組成物の硬化物の熱伝導率は、3.0W/mK以上10.0W/m・K以下が好ましく、3.5W/mK以上10.0W/m・K以下がより好ましく、さらに好ましくは3.5W/m・K以上9.5W/m・K以下であり、さらにより好ましくは4.0W/m・K以上9.0W/m・K以下である。このような熱伝導性組成物は熱界面材料:TIM(Thermal Interface Material)として好適である。
【0018】
前記熱伝導性組成物の比重は2.2以下が好ましい。比重が低いことはパソコン、携帯電話などの電子機器にとって有用である。
【0019】
本発明の熱伝導性組成物には、必要に応じて前記A~C成分や粘度調整剤以外の成分を配合することができる。例えばベンガラ、酸化チタン、酸化セリウムなどの耐熱向上剤、難燃剤、難燃助剤などを添加してもよい。着色、調色の目的で有機或いは無機粒子顔料を添加しても良い。熱伝導性フィラーの表面処理などの目的で添加する材料として、アルコキシ基含有シリコーンを添加しても良い。
【0020】
本発明は、一態様において、本発明の熱伝導性組成物をシート状に成形し、次いで硬化することにより得られる熱伝導性シートである。また、本発明は、一態様において、本発明の熱伝導性組成物をシート状に成形し、次いで硬化すること、を含む熱伝導性シートの製造方法である。本発明の熱伝導性組成物は、シート成形され、硬化されると、熱界面材料(TIM(Thermal Interface Material))として好適である。シート成形の方法は、圧延成形法でもよいし、プレス成形法(型締法)でもよい。硬化はシート成形後にされる。シート成形は、コンパウンド状の熱伝導性組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み圧延することで行うのが好ましく、硬化は、80~150℃で10~120分間加熱することで行うのが好ましい。熱伝導性シート(硬化物)の熱伝導率は、3.0W/mK以上10.0W/m・K以下が好ましく、3.5W/mK以上10.0W/m・K以下がより好ましく、さらに好ましくは3.5W/m・K以上9.5W/m・K以下であり、さらにより好ましくは4.0W/m・K以上9.0W/m・K以下である。
【0021】
また、本発明は、一態様において、発熱体と放熱体の間に本発明の熱伝導性シートを介在させる本発明の熱伝導性シートの使用に関する。発熱体としては、例えば、半導体素子等の電子部品、または電気部品が、放熱体としては、例えば、ヒートスプレッダやヒートシンク等が挙げられる。
以下図面を用いて熱伝導性シートの使用方法について説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図2は本発明の一実施形態における熱伝導性シートを放熱構造体10に組み込んだ模式的断面図である。熱伝導性シート11bは、半導体素子等の電子部品13の発する熱を放熱するものであり、ヒートスプレッダ12の電子部品13と対峙する主面に固定され、電子部品13とヒートスプレッダ12との間に挟持される。また、熱伝導性シート11aは、ヒートスプレッダ12とヒートシンク15との間に挟持される。そして、熱伝導性シート11a,11bは、ヒートスプレッダ12とともに、電子部品13の熱を放熱する放熱部材を構成する。ヒートスプレッダ12は、例えば、電子部品13と対峙する主面を有する方形板状体と、方形板状体の主面の外周に沿って立設された側壁とを有する。ヒートスプレッダ12は、側壁に囲まれた方形板状体の主面上に熱伝導シート11bが配置され、また当該主面の反対面に熱伝導シート11aを介してヒートシンク15が設けられる。電子部品13は、例えば、BGA等の半導体素子であり、配線基板14へ実装されている。
【実施例】
【0022】
以下実施例を用いて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。各種パラメーターについては下記の方法で測定した。
【0023】
<熱伝導率>
熱伝導性組成物の熱伝導率は、ホットディスク(ISO/CD 22007-2準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置1は
図1Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ2を2個の試料3a,3bで挟み、センサ2に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ2の温度上昇値から熱特性を解析する。センサ2は先端4が直径7mmであり、
図1Bに示すように、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極5と抵抗値用電極(温度測定用電極)6が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出する。試料3a,3bには熱伝導性シート(硬化物)を用いた。
【数1】
<動粘度>
本願において、動粘度は、実施例のカタログ値も含めて、ウベローデ粘度計により測定した25℃における動粘度である。
<熱伝導性組成物(コンパウンド)作製時の作業性>
表1の組成となるように、オルガノポリシロキサンと熱伝導性フィラーに、その他添加物を加え、これらを混練機(ハイビスミックス2P-1型、PRIMIX(株)製)を用いて混合することにより、熱伝導性組成物(コンパウンド)を作製する。この際の作業性を下記の評価で判断した。
A:回転速度25rpmで撹拌を行った際に、撹拌開始からコンパウンド化して撹拌終了とするまでに要する時間が30分以内。短い時間で撹拌を終えることができるため、凝集粒子が砕けにくい。
B:回転速度25rpmで撹拌を行った際に、撹拌開始からコンパウンド化して撹拌終了とするまでに要する時間が31分以上。長時間の撹拌が必要となり、凝集粒子が砕けやすい。組成物(構成成分の混合物)を混練りしてコンパウンドとする際の粘度が高く、長時間の混練りが必要になるため凝集粒子が砕けやすく、熱伝導率が低くなる。
C:回転速度25rpmで撹拌を行った際に、組成物(構成成分の混合物)が、熱伝導性シート(シリコーンゲルシート)が容易に成形可能なコンパウンドにならない。
【0024】
(実施例1~3)
1.原料成分(A成分)
(1)25℃における動粘度が450mm2/sの付加反応硬化型オルガノポリシロキサンA液(ダウ・東レ社製商品名"CF5036A")と、25℃における動粘度が350mm2/sの付加反応硬化型オルガノポリシロキサンB液(ダウ・東レ社製商品名"CF5036B")を使用した。
(2)熱伝導性フィラー(B及びC成分)
・B1:球状凝集窒化ホウ素粒子(D50=25μm、Momentive社製、商品名"PTX25")
・B2:球状凝集窒化ホウ素粒子(D50=60μm、Momentive社製、商品名"PTX60")
・C:不定形アルミナ粒子(D50=0.3μm、アルミナ粒子(住友化学社製、商品名"AKP-30")100gに対してオクチルトリメトキシシラン2.4gを吸着させたもの)を使用した。
(3)粘度調整剤
・デシルトリメトキシシランを使用した。
2.混合方法
上記オルガノポリシロキサンA液とオルガノポリシロキサンB液と熱伝導性フィラーと粘度調整剤を混合し、熱伝導性組成物(コンパウンド)とした。
このコンパウンドをポリエステル(PET)フィルムで挟み、ロールに通して圧延してシート成形し、その後、100℃で310分加熱し、シリコーン硬化シート(熱伝導性シート)を得た。得られたシリコーン硬化シートの厚さは2mmであった。
【0025】
(比較例1~5)
各成分について表1に示す添加量とした以外は実施例1と同様に、熱伝導性組成物(コンパウンド)および熱伝導性シートを作製した。
実施例1~3、比較例1~5の熱伝導性組成物の組成と評価結果を次の表1にまとめて示す。
【0026】
【0027】
以上の結果から、下記のことが分かった。
(1)実施例1~3では、コンパウンドの作製の際に、粘度が低く、混練の作業性もよく、熱伝導率も高かった。
(2)これに対して比較例1では、C成分の不定形アルミナ粒子(D50=0.3μm,表面処理品)の添加量が少なく、組成物の粘度が高くなってしまい、熱伝導性シリコーンゲルシートを成形できなかった。
(3)比較例2では、B1とB2の合計量(B1+B2)は実施例1と同量の99g配合されているが、B2/B1の値が高すぎるため、コンパウンドの作製の際の作業性が悪く熱伝導率も実施例1よりも低かった。この結果は、粘度が高いと混練時に組成物にかかるせん断力が強力になるため、凝集粒子が砕けてしまったことに起因するものと推測される。
(4)比較例3では、B1とB2の合計量(B1+B2)は実施例1と同量の99g配合されているが、B2/B1の値が低すぎ、熱伝導率が実施例1よりも低かった。これは大粒子による熱伝導パスが形成されにくいためと推測される。
(5)比較例4では、B1を配合しなかったため、コンパウンド調整中の組成物の粘度が高くなりすぎてしまい、熱伝導性シート(シリコーンゲルシート)を成形できなかった。
(6)比較例5では、B2を配合しなかったため、熱伝導率が低かった。これは大粒子による熱伝導パスが形成されにくいためと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の熱伝導性組成物は、電気・電子部品等の発熱体と放熱体の間に介在させる熱伝導材料(Thermal Interface Material)として好適である。
【符号の説明】
【0029】
1 熱伝導率測定装置
2 センサ
3a,3b 試料
4 センサの先端
5 印加電流用電極
6 抵抗値用電極(温度測定用電極)
10 放熱構造体
11a,11b 熱伝導性シート
12 ヒートスプレッダ
13 電子部品
14 配線基板
15 ヒートシンク
【要約】
本発明の熱伝導性組成物は、A成分として、25℃における動粘度が100~3,000mm2/sの付加反応硬化型オルガノポリシロキサン100質量部と、B成分として、球状凝集窒化ホウ素粒子を60~150質量部と、C成分として、中心粒径D50が0.1~1μmの不定形アルミナ粒子であり、一部または全部がRaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物又はその部分加水分解物で表面処理されている不定形アルミナ粒子を120~240質量部含む。前記球状凝集窒化ホウ素粒子は、中心粒径D50が10μm以上30μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B1)と、中心粒径D50がB1の2倍以上であり、かつ中心粒径D50が30μmを超え100μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B2)と、を含む。