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特許7426549反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/48 20230101AFI20240126BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20240126BHJP
   C01B 21/32 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C02F1/48 B
B01D53/04 110
C01B21/32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022178953
(22)【出願日】2022-11-08
(65)【公開番号】P2023118055
(43)【公開日】2023-08-24
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】17/670,170
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522437706
【氏名又は名称】皇甫大和
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】皇甫起萬
(72)【発明者】
【氏名】皇甫大和
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1572384(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0125784(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0082684(KR,A)
【文献】特開2004-65636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
B01D 53/04
C01B 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽に供給された水と空気からアーク放電により酸化窒素スチームを生成する生成部と、
前記生成部と連結されて、前記生成部において生成された酸化窒素スチームを吸着ろ過剤により高い純度に精製する精製部と、
前記精製部と連結されて、精製部において精製された前記酸化窒素スチームを水冷却器と空冷却器により液状の酸化窒素水に凝縮させる凝縮部と、
前記生成部と連結されて、反応槽の水が濁ると、設定された電源電流値を有するセンサーの感知信号に基づいて、前記反応槽の水を自動的に浄化処理する浄化部と、
を備えてなることを特徴とする、反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【請求項2】
反応槽に配備されたアーク放電用の電極棒は、ステンレス棒とチタン棒とが接続具により取り替え可能なように直線棒の形状に結合されてなる、請求項1に記載の反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【請求項3】
アーク放電用の電極棒は、電源AC220Vには2本、380Vには3本、460Vには4本ずつ反応槽に配備される、請求項1に記載の反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【請求項4】
酸化窒素生成部の反応槽は、水位調節器付き給水器と、空気を給気するエアーポンプとが配備されたものである、請求項1に記載の反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【請求項5】
精製部は、酸化窒素スチームを生成する反応槽と連結された精製室に、純度の高い酸化窒素スチームに精製する吸着ろ過剤が多段に積層されたものである、請求項1に記載の反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【請求項6】
凝縮部は、選択的に適用可能な水冷却器と空冷却器を備える、請求項1に記載の反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【請求項7】
浄化部は、反応槽の水の浄化に適するように設定された放電電源の電流値を感知するセンサーと、反応槽の排水を制御する電磁弁と、前記センサーの感知信号により前記電磁弁を制御して反応槽の水を浄化する電子制御器と、を備えてなる、請求項1に記載の反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【請求項8】
浄化部により反応槽の水を浄化するに際して、濁水と浄水が同時に入れ替えられて浄化(purify)処理される、請求項7に記載の反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【請求項9】
浄化部の電子制御器は、感知すべき電源の電流値を設定するボタンが配備されたものである、請求項7に記載の反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【請求項10】
電子制御器に配備されたボタンは、感知すべき電源の電流値に差をつけて電流値を設定するL段ボタンとH段ボタンが配備されたものである、請求項9に記載の反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システムに関するものであり、反応槽(reaction chamber)に供給された水と空気からアーク放電の超高熱と放電光の高熱により酸化窒素スチーム(nitric oxide steam)を生成する生成部と、前記生成部と連結されて、前記反応槽において生成された酸化窒素スチームを吸着ろ過剤により高い純度に精製する精製部と、前記精製部と連結されて、前記精製部により精製された前記酸化窒素スチームを液状の酸化窒素水に凝縮(condense)させる凝縮部と、前記生成部と連結されて、前記反応槽の水の濁りの度合いを放電電源の電流値により感知するセンサー(sensor)の感知信号に基づいて、前記反応槽の水が自動的に浄化処理される浄化部と、を備えてなることを特徴とする。
【0002】
本発明によれば、前記酸化窒素生成部により生成された酸化窒素スチームを精製及び凝縮の手順を経て酸化窒素水を生成する一方、外部から内部が覗き難い前記反応槽の水が浄化すべきレベルまで濁ってしまうと、設定された電流値の前記センサーによる感知信号に基づいて、酸化窒素スチームの生成の中断なしに自動的に反応槽の水が浄化(purify)処理されて、なお一層能率的かつ経済的に高純度の酸化窒素水を生成することができる。
【背景技術】
【0003】
一般に、酸化窒素(Nitric Oxide;NO)は、無色、無臭の気相の物質であり、実験室においては、銅(Cu)に比重1.2の硝酸を注入して得ることができる。このときの化学式は、3C+8H(NO)=3Cu(NO)+4HO+2NOである。酸化窒素は、空気または酸素(O)と接触されれば、赤褐色の亜硝酸(HNO)に変わり、再び分解されて酸化窒素(NO)または硝酸塩に分解される。水1ν%に約0.07ν%の酸化窒素が溶解され、酸化窒素は、活性が強いため、他の物質とも上手く作用する。
【0004】
また、人体の動脈内皮細胞において生理的に生成される酸化窒素は、細胞信号分子であって、血管の拡張により血流を増やして血圧の調節はもとより、血栓の生成を抑える強力な血管拡張物質であると言われている。
【0005】
酸化窒素が人体に及ぼす効果を最初に見出した人はルイ・イグナロ(Louis ignarro)博士の他に2名であり、この研究で1998年にノーベル生理医学賞を受賞して以来、酸化窒素への医学系の関心が高まり、これを受けて、最近には、新型コロナウイルス感染症(Covid 19)患者に対して酸素呼吸を適用した場合よりも酸化窒素呼吸を適用した場合の方の結果がさらに有効であるということが確認されており、その他の酸化窒素の研究に関する数多くのレポート(report)が次から次へと出されている。なお、酸化窒素は、優れた抗菌性と脱臭能を有しており、防役、医薬、医療、化粧品、飲料、農業、畜産業、水産業、微生物など多岐にわたる分野において酸化窒素の産業的な有効利用への取り組みが盛んに行われていると言われている。
【0006】
従来の酸化窒素の生成(produce)に関する先行技術としては、アーク放電(arc discharge)のプラズマ(plasma)領域において空気または酸素(O)と窒素(N)とを接触させて酸化窒素(NO)を生成する方式と、一定の空間容積を持った反応槽に供給された水と空気からアーク放電により酸化窒素を生成する方式、及び反応槽において精製された酸素と窒素ガスとをアーク放電により接触させて酸化窒素を生成する方式などが挙げられ、その他の種々の酸化窒素の生成技法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国登録特許第10-1572384号公報(2015年11月26日付け公告)
【文献】大韓民国登録特許第10-1540543号公報(2015年07月29日付け公告)
【文献】大韓民国登録特許第10-1689275号公報(2017年01月03日付け公告)
【文献】大韓民国登録特許第10-2229765号公報(2021年03月18日付け公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1、2、3は、反応槽において水と空気からアーク放電により酸化窒素水を生成する方式に関する文献であり、上記の特許文献4は、精製された酸素と窒素ガスとを反応槽においてアーク放電により結合して酸化窒素を生成する方式に関する文献である。
【0009】
一般に、反応槽に水と空気を供給してアーク放電により酸化窒素スチームを生成する方式においては、浄水を用いるという点で、外部からの内部の観察(observation)を行い難い前記反応槽の水の濁りについてほとんど関心を持たない。しかしながら、たとえ前記反応槽に供給される水が浄水であるとしても、地下水または上水道の水を用いているが故に、反応槽において酸化窒素スチームを生成するに際して、たとえ反応槽の水がスチームとして蒸発されたとしても、前記反応槽の水には蒸発されずに残留する各種の物質の微粒子が分散して累積されてしまう。時間が経つにつれて、前記不純物の濃度が上がることにつれて、反応槽の水が益々濁ってしまう。
【0010】
前記反応槽の水が濁ってしまうと、生成される酸化窒素スチームの純度に影響を与えるだけではなく、濁った水は、放電電源の電気抵抗値が大きくなるが故に、結局、酸化窒素スチームの生成に用いられるアーク放電用の電気代もまたさらに高騰してしまう結果、経済性に乏しいという不都合があった。
【0011】
また、前記反応槽の水を浄化処理するためには、酸化窒素スチームの生成を中断し、前記反応槽の濁った水をすべて排水した後、外部の清澄な浄水を給水して浄化するが故に、酸化窒素スチームの生成が中断されてしまい、かつ、再び稼働するまでに無駄に費やされる時間が長引く他、浄化にかかる人件費がさらに高騰してしまうという不都合があった。
【0012】
本発明は、上記の酸化窒素スチームの生成部により酸化窒素スチームを生成する一方、前記反応槽の水が浄化すべきレベルの濁度(degree of turbidity)に至ると、酸化窒素スチームの生成の中断なしに稼働し続けながら、自動的に反応槽の水を浄化処理するという問題の解決を発明の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、反応槽に供給される水と空気からアーク放電により超高純度の酸化窒素スチームを連続して生成することのできる「反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム」を提供するところにある。
【0014】
本発明の別の目的は、前記酸化窒素スチームを生成する反応槽の水の濁りの度合いを放電電源の設定された電流値により感知するセンサーの感知信号に基づいて、反応槽の水が自動的に浄化処理される「反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム」を提供するところにある。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、反応槽の水の浄化処理の最中にも酸化窒素スチームの生成の中断なしに、生成し続けることが可能であることから、酸化窒素スチーム/酸化窒素水をさらに能率よく生成することのできる「反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム」を提供するところにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、反応槽の浄化された水により超高純度の酸化窒素スチーム/酸化窒素水を経済的にかつ安価に生成することのできる「反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システム」を提供するところにある。
【0017】
本発明について詳しく説明すれば、下記の通りである。
【0018】
反応槽(reaction chamber)に供給された水と空気からアーク放電の超高熱と放電光の高熱により酸化窒素スチーム(nitric oxide steam)を生成する生成部と、前記生成部と連結されて、前記反応槽において生成された酸化窒素スチームを吸着ろ過剤により高い純度に精製する精製部と、前記精製部と連結されて、前記精製部により精製された前記酸化窒素スチームを液状の酸化窒素水に凝縮(condense)させる凝縮部と、前記生成部と連結されて、反応槽の水の濁りの度合いを知らせる放電電源の電流値を感知するセンサー(sensor)の感知信号に基づいて、前記反応槽の水が自動的に浄化処理される浄化部と、を備えてなる。
【0019】
以下、前記各部についてさらに詳しく後述する。
【0020】
前記生成部は、酸化窒素スチームを生成する反応槽と、前記反応槽に水を一定の水位になるように供給する給水器と、前記反応槽に空気を給気するエアーポンプ(air pump)と、前記反応槽に所定の間隔をあけて並ぶように配備された2相または3相のアーク放電(arc dischage)用の複数本の電極棒(electric rod)と、を備えてなる。
【0021】
前記精製部は、前記生成部と連結され、前記生成部の反応槽から流れ込む酸化窒素スチームに含まれている各種の不純物と微粒子などを吸着して取り除く吸着ろ過剤が多段に積層された精製室を備えてなる。
【0022】
前記凝縮部は、前記精製部と連結されて、前記精製部により精製された酸化窒素スチームの一部を液状の酸化窒素水に凝縮させる、選択的に用いられる水冷却器と空冷却器を備えてなる。
【0023】
また、前記凝縮部には、凝縮される酸化窒素水を貯留する貯留タンクが付設されている。
【0024】
前記浄化部は、前記生成部と連結されて、反応槽の水の排水用の電磁弁と、前記反応槽の水の濁度を知らせる放電電源の設定された電流値を感知するセンサーと、前記センサーの感知信号に基づいて前記電磁弁が制御されて、前記反応槽の水が浄化処理される電子制御器と、を備えてなる。
【0025】
前記浄化部の電子制御器には、感知すべき電流値を設定するボタンが配備されている。前記ボタンにより設定される電流値は、前記反応槽の水を浄化すべきレベルの濁度(dgree of turbidity)と対応する電流値に数値的に限定されるものではない。前記ボタンは、L段ボタンとH段ボタンであって、感知すべき電流値に差をつけて電流値を設定することができる。しかしながら、いかなるボタンを適用しても、浄化の作動と結果には差がない。
【0026】
また、前記酸化窒素生成部の反応槽に配備される電極棒のアーク放電には、規模に応じて、60Hz AC220V、2相、AC380V(R,S,T,3相)またはAC460Vなどの電源が選択的に用いられる。
【0027】
前記放電電源の電流は、電圧(V)と電流(I)及び負荷(R)の関係が、
I=V/R[A] [式1]
で表わされる定形波交流である。前記アーク放電電気の等価回路は、微示的には前記反応槽に配備された二本の電極棒の間の空間的な容量抵抗(C)を含むものの、巨視的には二本の電極棒の間の反応槽の水の抵抗(R)値を有する直列接続回路(serial connect circuit)である。
【0028】
したがって、前記[式1]から明らかなように、供給される電源の一定の電圧(V)において、前記反応槽の水の抵抗値(R)が変動することにつれて、電源の電流値(I)もまた関数比に変動するため、変動する電源電流値の感知により外部から内部が覗き難い前記反応槽の水の濁りの度合いを間接的に把握することができる。
【0029】
また、前記反応槽に供給される酸化窒素(NO)の生成に用いられる水としては、地下水または上水道の浄水が挙げられる。
【0030】
地下水または水道水には、元々、水源池または河川を介して流れ込んだ各種の細菌、昆虫の死体、甲殼類の骨粉、緑藻、微生物、浸食性遊離炭素、鉛、亜鉛、クロム、銅、鉄、ケイ酸、マンガン、酸化アルミニウム、砒素、硫酸イオン、その他の有機質と無機質の各種の微粒子が分散している。
【0031】
水道水には浄水処理及び殺菌処理が施されていて、これを飲んでも衛生的に人体に無害であるが、水質の面からみると、純粋な蒸留水とは異なる。一方、酸化窒素の生成に用いられる液状の水は、気相の酸素や水素に比べて分子の密度がさらに大きいため、原料に比べて生成歩留まり率がはるかに高く、かつ、精製された気相の酸素や水素を原料として用いることに比べて、水を原料として用いた方がさらに経済的に安価であるというメリットがある。
【0032】
本発明の作用効果について説明すれば、下記の通りである。
【0033】
前記反応槽には給水器により一定の水位になるように水が満たされ、前記反応槽に入れられた水には、初期の放電電流の誘導のために、最初に0.1~1重量%の電解質物質(NaCl)が添加される。また、前記浄化部の電流感知器のL段またはH段のボタンにより放電電源の感知すべき電流値を設定し、前記反応槽に入れられた水には、エアーポンプにより一定量の空気を注入する状態で電極棒に電源を供給してアーク放電を開始する。
【0034】
前記反応槽の水と空気は、アーク放電の超高熱と放電光の高熱により、水の分子(HO)、そして約20%の酸素及び約80Vの窒素%から醸成された空気の分子が酸素(O)、水素(H)、窒素(N)などの各元素(element)に熱分解され、分解された各元素は、互いに結合されて水(HO)をはじめとして酸化窒素(NO)、水酸基(OHラジカル)、HNO、NO、NO、NO、NO5、O、O、O、O、O、…オゾンなど様々な物質を生成する。
【0035】
これらの生成物は、反応槽の高温により生じる酸化窒素スチームとともに、反応槽の内部の圧力により前記酸化窒素の精製部の側に移動する。移動の過程において、温度が変わることにつれて、一部の気体は液体に凝縮されて自重により前記反応槽に流れ込み、前記酸化窒素スチームは前記精製部に流れ込む。
【0036】
前記精製部に流れ込む酸化窒素スチームに含まれている、得ようとする酸化窒素成分を除いた、不純物の各種の微粒子などは多段に積層された吸着ろ過剤により吸着されて取り除かれて超高純度の前記酸化窒素スチームに精製される。
【0037】
また、精製された前記酸化窒素スチームの一部は、スチームの状態で用途ごとに与えられ、酸化窒素スチームの残りの一部は、空冷却器及び水冷却器の兼用となっている凝縮部により液状の酸化窒素水に凝縮されて貯留タンクに貯留された後、酸化窒素液は容器に入れて出荷する。
【0038】
さらに、前記酸化窒素生成部により酸化窒素スチームを生成する工程が長時間にわたって行われると、反応槽の水には蒸発されずに残留する微粒子の累積により不純物の濃度が上がる。したがって、浄化すべきレベルまで水が濁ってしまうと、水の電気抵抗値が大きくなり、かつ、放電電源の電流値もまた上がる。このとき、前記浄化部の電子制御部に配備されたL段ボタンまたはL段ボタンにて設定した放電電源の電流値がセンサーにより感知され、前記センサーの感知信号に基づいて、前記電子制御部により前記電磁弁が制御されて前記反応槽の濁った水の排水と新しい浄水の流れ込みとが同時に行われて浄化(purify)処理される。
【0039】
前記反応槽の水が浄化されることにつれて、水の電気抵抗値が基本値に戻りながら、前記センサーの感知信号が消去されるため、前記浄化部による反応槽の水の浄化処理は終了される。
【0040】
また、前記反応槽の水の浄化処理に際して、前記反応槽の濁った水が排出される量に見合う分だけ浄水が同時に流れ込むので、前記反応槽には水が一定の水位に保たれ、したがって、酸化窒素スチームの生成の中断なしに、酸化窒素スチームを生成し続けながら、前記反応槽の水の浄化処理を行うことが可能である。
【0041】
このように、本発明によれば、従来の方式とは異なり、さらに能率的かつ経済的に高純度の酸化窒素スチーム/酸化窒素水を生成することができる。
【0042】
前記反応槽においてアーク放電により生成される亜硝酸(nitrus acid)(HNO)は、アゾ染料の製造に際してアミンをジアゾニウム化合物に転化させる上で役立つ。
【0043】
前記亜硝酸は、酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO)または硝酸(HNO)に分解される。前記亜硝酸は、酸化剤や還元剤として働くことができる。
【0044】
前記酸化窒素(NO)と水酸基(OH radical)は、酸化力(殺菌、消毒、分解能)がフッ素(F)の次に強力であり、オゾン(O)と塩素(Cl)よりも強力であるが、フッ素、オゾン、塩素のように人体に毒性があるか、あるいは、有害な物質ではない。前記酸化窒素(NO)と水酸基(OH radical)は、空気及び水中の汚染物質と直接的に関与して、すべての汚染物質が安全な水(HO)、二酸化炭素(CO)に還元されて人体に無害なものとなる。
【0045】
本発明により生成された酸化窒素水による抗菌試験は、下記の表1の通りである。
【0046】
【表1】
【0047】
・CFU:コロニー形成単位
・接種菌細菌の濃度(CFU/mU):大腸菌:17X10、緑膿菌:1.9
X10、黄色ブドウ球菌:1.1X10
・使用菌株:大腸菌ATCC 25922
緑膿菌ATCC 15442
黄色ブドウ球菌ATCC 6538
・飼料:液状原液
・依頼者からの提示要件:KCL-FIR-1002[ただし、飼料:液状原液]
【0048】
上記の試験成績から明らかなように、酸化窒素水は、殺菌力が99.9%であることが分かる。
【0049】
本発明の酸化窒素水の脱臭試験成績書は、下記の通りである。
【0050】
【表2】
【0051】
・検出限界:0.2μmol/mol
【0052】
【表3】
【0053】
・検出限界:0.2μmol/mol
【0054】
【表4】
【0055】
・検出限界:0.2μmol/mol
【0056】
【表5】
【0057】
・検出限界:0.2μmol/mol
【0058】
上記の表2~上記の表5の酸化窒素水の脱臭試験成績書から明らかなように、平均99%以上という強力な脱臭能を確認することができる。したがって、酸化窒素は、人体に無害な各種の脱臭剤に好適に用いられる。
【0059】
本発明により生成された酸化窒素スチーム(nitric oxide steam)及びこれを凝縮させた酸化窒素水(Nitric Oxide water)は、純度が非常に高く、しかも、品質に優れていることから、サウナ、温熱治療器、半身浴、足浴、座薫(韓国式よもぎ蒸しスチーム浴)、美容、医療機器、加湿器、乾燥機、浄水器、家庭用品、その他の各種の用途に提供可能である。
【発明の効果】
【0060】
本発明は、酸化窒素生成部により反応槽に供給される水と空気からアーク放電により酸化窒素スチームを生成することから、原料に比べて生成率がさらに高い酸化窒素水を生成することができる。
【0061】
また、精製部により前記反応槽において生成される酸化窒素スチームの気体の状態で多段に積層された吸着ろ過剤により精製することから、液状の精製に比べて精製効果が向上して超高純度の酸化窒素スチームを得ることができる。
【0062】
さらに、既に高純度に精製された酸化窒素スチームを凝縮部により液状に凝縮させることから、別途の精製手順なしに超高純度の酸化窒素水を得ることができる。
【0063】
さらにまた、反応槽の水の濁ってしまうと、放電電源の予め設定された電流値を感知したセンサーの感知信号に基づいて、反応槽の水を自動的に浄化処理することから、外部から内部が覗き難い前記反応槽の水を常に清浄状態に管理することができる。
【0064】
さらにまた、反応槽の水が浄化処理により常に清浄に保たれることから、生成される酸化窒素スチームの品質をさらに高めることができる。
【0065】
さらにまた、反応槽の水の浄化処理の最中にも、酸化窒素スチームの生成の中断なしに稼働し続けることができるので、さらに能率よく多量の酸化窒素水を生成することができる。
【0066】
これらに加えて、反応槽の水の浄化処理に別途の人手がかからないことから、浄化処理コストが節減され、反応槽の水の浄化に伴い、アーク放電の電気代を節減することができるなどの色々な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明の例示図である。
図2】本発明の反応槽の水の清浄状態を示す例示図である。
図3】本発明の反応槽の水の濁り状態を示す例示図である。
図4】本発明の反応槽の水の浄化された状態を示す例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明のシステムについて添付図面に基づいて詳しく説明すれば、下記の通りである。
【0069】
図1に示すように、本発明に係る反応槽の水の自動浄化手段を備える酸化窒素水の生成システムは、反応槽に供給された水と空気からアーク放電により酸化窒素スチームを生成する生成部100と、前記生成部と連結されて、前記反応槽において生成された酸化窒素スチームを高純度に精製する精製部200と、前記精製部と連結されて、前記精製部により精製された酸化窒素スチームを液状の酸化窒素水に凝縮する凝縮部300と、前記生成部と連結されて、前記反応槽の濁った水を浄化処理する浄化部200と、を備えてなる。
【0070】
前記酸化窒素スチームを生成する生成部100は、酸化窒素を生成する反応槽110と、前記反応槽110に水を一定の水位になるように供給しかつ保持する水位調節器121付き給水器120と、前記反応槽110に組み込まれた噴射ノズル131と給気管132を介して空気を給気するエアーポンプ130と、を備えていて、前記反応槽110に水と空気が供給され続ける。また、前記反応槽110には、ステンレス(stainless)棒141とチタン(Titanium)棒142とが接続具143により取り替え可能なように直線棒の形状に結合された複数本の電極棒140が、AC220Vの電源には2本、380Vの電源には3本、460Vの電源には4本ずつ一定の間隔をあけて並ぶように配置される。図1には、AC220V電源に2本の電極棒140が配置されているケースが示されている。
【0071】
前記各電極棒140の端子144に接続された電源導線L1,L2を介してAC220Vの電源を供給すると、前記反応槽110の水wには0.1~1重量%の電解質物質(NaCl)が添加されていて、初期に容易にアーク放電が起こる。したがって、前記電極棒140のアーク放電の超高熱(約1000℃以上)と放電光の高熱により前記反応槽110の水wと空気(air)の分子が分解されかつ結合される反応により酸化窒素スチームが生成される。
【0072】
前記反応槽110において生成された酸化窒素スチームは、前記精製部200により精製される。
【0073】
前記精製部200には、前記生成部100の反応槽110と導管D1により連結された一定のスペースの精製室210が備配され、前記精製室210に酸化窒素スチームに含まれる不純物を吸着して取り除く吸着ろ過剤220が多段に設けられている。したがって、前記酸化窒素生成部100の前記反応槽110において生成された酸化窒素スチームは、気体の状態で流出部151の導管d1を介して前記精製部200の精製室210に流れ込み、前記精製室210を通過する過程において、吸着ろ過剤220により前記酸化窒素以外の他の物質と成分、微粒子などはすべて吸着されて取り除かれて超高純度の酸化窒素スチームに精製される。
【0074】
前記精製された酸化窒素スチームの一部は、前記精製室210から導管d2,d3を介して外部へと与えられ、かつ、一部の酸化窒素スチームは、前記導管d3から分かれた導管d4を介して凝縮部300に流れ込んで液状に凝縮される。
【0075】
前記凝縮部300は、導管d5,d6により連結された水冷却器310と空冷却器320の兼用となっていて、どちらか一方の冷却器310,320を選択的に用いて、前記精製された酸化窒素スチームを液状に凝縮させることができる。
【0076】
前記凝縮部300において凝縮された酸化窒素水rqは、導管d7を介して一定の空間容積を持った貯留タンク500に貯留される。前記タンク500に貯留された酸化窒素水は、導管d8を介して容器に入れられて出荷される。
【0077】
前記酸化窒素生成部100において長時間にわたって酸化窒素スチームを生成し続ける間に、前記酸化窒素生成部100の前記反応槽110の水は、前記浄化部400により浄化処理される。
【0078】
前記浄化部400は、前記反応槽110の排水部150に連結された排水管p1,p2のうちのどちらか一方の排水管p2に連結された電磁弁410と、前記電極棒140の放電電源導線L1,L2を介して指定された電流値を感知するセンサー420と、前記センサー420の感知信号により前記電磁弁410を制御する電子制御器430と、を備えてなり、前記電子制御器430には、感知すべき電流値を指定するL段ボタンBLとH段ボタンBHが配備されている。前記2つのボタンが指定する感知すべき電流値の差は約1mAに設定してもよいが、これに何ら限定されるものではない。
【0079】
図2に示すように、前記浄化部400の電子制御器430に配備されたどちらか一方のボタンBL/BHにより感知すべき電流値を設定し、前記酸化窒素生成部100を稼働して酸化窒素スチームを生成する。このとき、前記反応槽110の水wは、給水された浄水のままであり、いまだに濁っていない。
【0080】
図3に示すように、前記酸化窒素生成部100の稼働時間が経つにつれて、前記反応槽110の水は残留した不純物の累積により益々濁っていく。外部から前記反応槽110の内部の状態を自ら覗き難いものの、前記反応槽110水が浄化すべきレベルまで濁ってしまうと、前記センサー420により予め設定された放電電源の電流値が感知される。
【0081】
前記センサー420の感知信号に基づいて、前記電子制御器430が前記電磁弁410を開き制御して、前記反応槽110の濁った水が前記電磁弁410を介して排水されるとともに、前記反応槽110の水の水位が下がることにつれて、前記給水器120により浄水が同時に給水されて、前記反応槽110の水は一定の水位を保ちながら浄化処理される。
【0082】
したがって、前記酸化窒素生成部100の稼働を中断することなく、前記反応槽110の水の浄化処理を施すことが可能である。
【0083】
図4に示すように、前記反応槽110水が浄化されることに伴い、前記センサー420により感知されていた電流値が消去されるため、前記電子制御器430の電子指示に従って前記電磁弁410は止水され、前記反応槽110の水の浄化処理は終了される。
【0084】
このように、前記反応槽110の水が浄化部400により自動的に浄化処理されるので、前記反応槽110の水は常に清浄に保たれることから、清浄な環境下で超高純度の酸化窒素水をさらに能率的かつ経済的に安価に生成することができる。
【符号の説明】
【0085】
100 生成部
110 反応槽
120 給水器
121 水調節器
130 エアーポンプ
131 噴射ノズル
132 給気管
140 電極棒
141 ステンレス棒
142 チタン棒
143 接続具
144 端子
150 排水部
151 流出部
200 精製部
210 精製室
220 吸着ろ過剤
300 凝縮部
310 水冷却器
320 空冷却器
400 浄化部
410 電磁弁
420 センサー
430 電子制御器
500 貯留タンク
BL BH ボタン
d 導管
p 排水パイプ
図1
図2
図3
図4