IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソワテクの特許一覧

特許7426551原子種の注入により弱化させた基板の分割を検出するための方法
<>
  • 特許-原子種の注入により弱化させた基板の分割を検出するための方法 図1
  • 特許-原子種の注入により弱化させた基板の分割を検出するための方法 図2
  • 特許-原子種の注入により弱化させた基板の分割を検出するための方法 図3
  • 特許-原子種の注入により弱化させた基板の分割を検出するための方法 図4
  • 特許-原子種の注入により弱化させた基板の分割を検出するための方法 図5
  • 特許-原子種の注入により弱化させた基板の分割を検出するための方法 図6
  • 特許-原子種の注入により弱化させた基板の分割を検出するための方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】原子種の注入により弱化させた基板の分割を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240126BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L27/12 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020551816
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 FR2019050659
(87)【国際公開番号】W WO2019186037
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】1852683
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500361216
【氏名又は名称】ソワテク
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ、リュトール
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク、マーゼン
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ、ランドリュー
(72)【発明者】
【氏名】オレク、コノンチュク
(72)【発明者】
【氏名】ナディア、ベン、モハメド
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-294754(JP,A)
【文献】特開2009-283582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/12
H01L 21/66
H01L 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱化ゾーンを備えた基板に適用される熱処理をモニタリングするための方法であって、前記弱化ゾーンは前記基板を当該弱化ゾーンに沿って分割することを目的として原子種の注入により形成される方法において、
分割されるべき前記基板(S)のバッチは加熱チャンバ(11)に配置され、
前記加熱チャンバ(11)の内部または近傍において音を記録する工程と、
前記記録する工程において、前記弱化ゾーンに沿った分割中に前記基板が発した音を検出する工程と、
を備え
基板を伝播する分割波の速度が、音の強さのピークに対応する最大周波数から特定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記記録する工程は、前記加熱チャンバ(11)の内部に配置されたマイクロホン(3)を用いて実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記記録する工程は、前記加熱チャンバ(11)を収容する焼鈍炉(1)の外壁に配置されたマイクロホン(3)を用いて実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記記録する工程は、前記加熱チャンバ(11)へのアクセスを可能とする焼鈍炉(1)の熱遮蔽物(13)とドア(12)との間に配置されたマイクロホン(3)を用いて実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記記録する工程は、前記加熱チャンバ(11)の内部に開口する管(30)に配置されたマイクロホン(3)を用いて実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱チャンバ(11)の内部または近傍における音の記録から、前記基板の破損を検出する工程を更に備える、
請求項1乃至5の一項に記載の方法。
【請求項7】
互いに距離を置いて配置された2つのマイクロホン(3)によって、前記加熱チャンバ(11)の内部または近傍において音を記録する工程と、
前記マイクロホンそれぞれの記録において検出された、基板の分割の音同士の間の時間的推移に基づいて、分割が発生した基板のバッチ内での位置を特定する工程と、
を備える請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロホン(3)は、前記加熱チャンバ(11)の対向する領域に配置される、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
各基板が分割したことが検出されると、前記熱処理は停止される、
請求項7または8の一項に記載の方法。
【請求項10】
所定の時間後、分割したことが検出された基板の枚数が基板の枚数より少なくなり、分割した基板を手動で分離することを目的として前記バッチが搬出される、
請求項7または8の一項に記載の方法。
【請求項11】
分割中の基板の振動周波数が、前記基板の分割により生成される音の最大周波数から特定され、前記基板の分割速度が、前記振動周波数から特定される、
請求項1乃至10の一項に記載の方法。
【請求項12】
基板の分割中に放出されるエネルギーが、前記分割により生成される音の強さから特定される、
請求項1乃至11の一項に記載の方法。
【請求項13】
各基板は、少なくとも1つの半導体材料を含む、
請求項1乃至12の一項に記載の方法。
【請求項14】
弱化ゾーンをそれぞれが備えた基板のバッチを熱処理するための装置であって、前記弱化ゾーンは前記基板を当該弱化ゾーンに沿って分割することを目的として原子種の注入により形成される装置において、
前記バッチ全体を同時に受容するように構成された加熱チャンバ(11)を備えた焼鈍炉(1)と、
前記加熱チャンバの内部または近傍において音を記録するように構成された少なくとも1つのマイクロホン(3)と、
前記マイクロホンにより作成された音声の記録において、基板が前記弱化ゾーンに沿って分割したときに発した音を検出するように構成された処理システム(4)と、
を備え
分割中の基板の振動周波数が、前記基板の分割により生成される音の最大周波数から特定され、前記基板の分割速度が、前記振動周波数から特定されるように構成されている装置。
【請求項15】
前記マイクロホン(3)は、前記加熱チャンバ(11)の内部に開口する管(30)に配置される、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
互いに距離を置いて配置された少なくとも2つのマイクロホン(3)を備える、
請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記処理システム(4)は、前記マイクロホンそれぞれの記録において検出された、基板の分割の音同士の間の時間的推移に基づいて、分割が発生した基板のバッチ内での位置を特定するように構成される、
請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記炉を制御するためのシステムであって、バッチの全ての基板が分割したことが検出されると、前記熱処理を停止するように構成されたシステムを更に備える、
請求項14乃至17の一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子種の注入により事前に弱化させた基板の分割を検出すること、および、この検出を、前記分割を生じさせるために前記基板に適用される熱処理のモニタリングへ適用することに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートカット(商標)プロセスによって、ドナー基板と呼ばれる第1基板からレシーバー基板と呼ばれる第2基板に層を転写することができる。
【0003】
この目的のために、本プロセスは、ドナー基板に原子種を注入して、転写される層の厚さに対応する深さに位置する弱化ゾーンをその内部に形成するステップを備えている。前記原子種は、典型的には水素および/またはヘリウムである。弱化ゾーンにおいて、注入された種が、ドナー基板の主表面に平行な面に存在するキャビティの形態を取る「マイクロクラック」と呼ばれる欠陥を形成する。
【0004】
次に、ドナー基板は、レシーバー基板に接合される。
【0005】
次に、ドナー基板とレシーバー基板との接合から生じたウェハを、マイクロクラックの発生を可能とするために十分な高い温度に昇温させる熱分割工程が実施される。この目的のために、ウェハは、温度制御された焼鈍炉に載置される。焼鈍により、ドナー基板が弱化ゾーンに沿って分割するまで、キャビティ内の圧力が上昇する。弱化ゾーンの一領域において分割が開始すると、分割はほぼ瞬時に前記ゾーンに沿って伝播する。ほぼ瞬時とは、分割が発生するのにかかる時間が、直径300mmの基板で約100μsであることを意味する。
【0006】
分割後、ウェハの2つの部分が、分割面の両側で互いに接触したままとなる。
【0007】
ウェハの2つの部分を分離することを目的として、ウェハは焼鈍炉から搬出される。分離は、例えば、2つの部分の間にブレードを挿入することにより達成される。
【0008】
一般に、このプロセスは、複数のバッチにおいて実施される。各バッチは、焼鈍炉内に一緒に載置される複数のウェハを含む。
【0009】
分割の検出は、層転写プロセスの重要なパラメータである。
【0010】
具体的には、過度に多い熱量によりウェハが損傷することを回避するとともに焼鈍炉の効率性を最適化するために、バッチの全てのウェハが分割したら、焼鈍を停止して焼鈍の熱量を最小にするようにすることが一般的である。
【0011】
更に、意図した熱量が適用されたとしても、任意のバッチの1つ以上のウェハが分割しない可能性がある。このような状況は、一般に自動化されている分離ステップの実現を阻み、分離機の動作が阻害され得る。したがって、問題のある製造バッチを手動で処理すべく隔離して残りのプロセスが阻まれないようにするために、ウェハが分割されなかったどうかを検出できることが望ましい。
【0012】
この目的のために、文書FR2902926号は、焼鈍炉内でウェハを保持するホルダに圧電センサを装備することを提案している。分割中にウェハ内で生じた振動は、圧電センサに伝達され、電気信号に変換されて焼鈍炉のコントローラに記録される。この信号を処理することにより、分割を特徴付けるピークを検出することができる。
【0013】
しかしながら、このような圧電センサの使用により、多くの問題が生じる。
【0014】
まず、センサが分割を検出可能になるように、ウェハとセンサとの間に機械的連結部を設けることが必須である。しかし、使用する機器の種類によっては、このような機械的連結部を確保することが困難な場合がある。具体的には、特定の炉においては、基板を収容するカセットが炉の壁に直接接触して配置されるため、分割により発生する振動だけでなく、その周囲環境に関連する衝撃により発生する振動も伝達されやすくなる。したがって、このような構成は、圧電センサに適したホルダを有していないため、分割の検出には不利である。更に、一般に、センサをカセットまたは基板と接触する炉自体に直接配置することはできない。なぜならば、センサが耐え得る温度や、センサが基板に発生させやすい汚染について制限があるからである。
【0015】
更に、ウェハが分割中に破損または損傷する場合がある。これにより、分離が阻まれやすい。分割が生じない場合と同様に、問題のあるバッチを手動で処理するために、バッチを隔離する必要がある。しかしながら、圧電センサは、このような事象の検出には適していない。具体的には、基板の破損により引き起こされる衝撃は、破片のサイズやそれらがどのようにホルダに落下するかによって異なるが、これらはランダムな要因である。
【0016】
最後に、分割後の基板の特性(特にその粗さ)は、分割中に放出される機械的エネルギーに大きく依存することがわかっている。したがって、この量が評価できれば有利であろう。
【0017】
しかしながら、圧電センサがもたらす信号では、分割・エネルギーや継続時間等の分割特性を簡単に特定することができない。
【0018】
現時点では、このエネルギーは、分割表面の特性をエネルギーと相関させるように試みることで、非常に間接的に特定されている。しかしながら、このような特定は、基板に依存するとともに、必ずしも制御できるわけではない、または既知ではない多くのパラメータに依存するため、実行には時間がかかる。
【0019】
分割中に放出されるエネルギーを推定するより直接的な方法は、前述のような圧電センサを使用して分割が発生する時間を測定することである。放出されるエネルギーは、ウェハが受ける熱量にのみ依存すると仮定されている。但し、この仮定は、第1の近似にのみ当てはまる。具体的には、ウェハ同士は、同時に分割する可能性があるが、そうでありながらも開始メカニズムが異なるため、異なる量のエネルギーを放出する。
【発明の概要】
【0020】
本発明の1つの目的は、上述の問題を改善し、基板の分割が発生する時間を正確に検出することを可能にする方法であって、この目的のために焼鈍炉に存在するバッチの各基板に実施される方法を提供することである。
【0021】
本方法は、バッチの基板が分割しなかったかどうか、または分割中に基板が破損したかどうかを検出可能としなければならない。
【0022】
この目的のために本発明は、弱化ゾーンを備えた基板に適用される熱処理をモニタリングするための方法であって、前記弱化ゾーンは前記基板を当該弱化ゾーンに沿って分割することを目的として原子種の注入により形成される方法において、前記基板は加熱チャンバに配置され、前記加熱チャンバの内部または近傍において音を記録する工程と、前記記録する工程において、前記弱化ゾーンに沿った分割中に前記基板が発した音を検出する工程と、を備えたことを特徴とする方法を提供する。
【0023】
「加熱チャンバの近傍」とは、分割中に発せられた音が記録され得るようにチャンバに十分近接したゾーンを意味する。前記ゾーンのサイズおよび位置は、炉の環境に依存し得るが、当業者であれば、事前に実施される数回の音声の記録に基づいて、意図された位置での音声の記録が十分に良好な品質であって、その記録において破砕の音が検出され得ることを確認することができる。
【0024】
この音声の記録の利点は、基板がその分割中に発する音が非常に特異的であり、焼鈍炉の周囲環境における他の事象の最中に作成された音と混同することがあり得ない点である。
【0025】
更に、分割が発生した時間を単純に特定することとは別に、記録した音は、分割に特徴的な量、例えば、放出されるエネルギー、分割速度、破損の発生等を特定することを可能にする分析(例えば、周波数スペクトル、継続時間、強さ等)に役立つ。
【0026】
第1実施形態によれば、前記記録する工程は、前記加熱チャンバの内部に配置されたマイクロホンを用いて実施される。
【0027】
第2実施形態によれば、前記記録する工程は、前記加熱チャンバを収容する焼鈍炉の外壁に配置されたマイクロホンを用いて実施される。
【0028】
第3実施形態によれば、前記記録する工程は、前記加熱チャンバへのアクセスを可能とする焼鈍炉の熱遮蔽物とドアとの間に配置されたマイクロホンを用いて実施される。
【0029】
第4実施形態によれば、前記記録する工程は、前記加熱チャンバの内部に開口する管に配置されたマイクロホンを用いて実施される。
【0030】
有利には、前記方法は、前記加熱チャンバの内部または近傍における音の前記記録から、前記基板の破損を検出する工程を更に備える。
【0031】
本方法の一適用例において、分割されるべき基板のバッチが前記加熱チャンバに搬入され、前記方法は、音声を記録する工程において、各基板がその分割中に発した音を検出する工程を備える。
【0032】
一実施態様によれば、本方法は、互いに距離を置いて配置された2つのマイクロホンによって、前記加熱チャンバの内部または近傍において音を記録する工程と、前記マイクロホンそれぞれの記録において検出された、基板の分割の音同士の間の時間的推移に基づいて、分割が発生した基板をバッチ内に配置する工程と、を備える。
【0033】
好適には、前記マイクロホンは、前記加熱チャンバの対向する領域に配置される。
【0034】
有利には、バッチの各基板が分割したことが検出されると、前記熱処理は停止される。
【0035】
所定の時間後、分割したことが検出された基板の枚数が基板の枚数より少ない場合、分割した基板を手動で分離することを目的として前記バッチが搬出される。
【0036】
有利には、分割中の基板の振動周波数が、前記基板の分割により生成される音の最大周波数から特定され、前記基板の分割速度が、前記振動周波数から特定される。
【0037】
更に、基板の分割中に放出されるエネルギーが、前記分割により生成される音の強度から特定される。
【0038】
また、基板を伝播する分割波の速度が、音の強さのピークに対応する最大周波数から特定されることが可能である。
【0039】
好適には、各基板は、少なくとも1つの半導体材料を含む。
【0040】
本発明の別の主題は、分割すべき基板のバッチを熱処理するための装置に関する。
【0041】
前記装置は、前記バッチ全体を同時に受容するように意図された加熱チャンバを備えた焼鈍炉と、前記加熱チャンバの内部または近傍において音を記録するように構成された少なくとも1つのマイクロホンと、前記マイクロホンにより作成された音の記録において、基板が分割したときに発した音を検出するように構成された処理システムと、を備える。
【0042】
一実施形態によれば、前記マイクロホンは、前記加熱チャンバの内部に開口する管に配置される。
【0043】
特に有利には、前記装置は、互いに距離を置いて配置された少なくとも2つのマイクロホンを備える。
【0044】
一実施態様によれば、前記処理システムは、前記マイクロホンそれぞれの記録において検出された、基板の分割の音同士の間の時間的推移に基づいて、分割が発生した基板をバッチ内に配置するように構成される。
【0045】
有利には、前記装置は、前記炉を制御するためのシステムであって、バッチの全ての基板が分割したことが検出されると、前記熱処理を停止するように構成されたシステムを更に備える。
【0046】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照してなされる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】シリコーン基板の分割の音響特性を示す図。
図2】第1実施形態による、マイクロホンが焼鈍炉の内部に設置された概略図。
図3】第2実施形態による、マイクロホンが焼鈍炉の外壁に設置された概略図。
図4】第3実施形態による、マイクロホンが焼鈍炉のドアと熱遮蔽物との間に設置された概略図。
図5】第4実施形態による、マイクロホンが焼鈍炉の内部と流体接続した管に設置された概略図。
図6】第5実施形態による、2つのマイクロホンが焼鈍炉内の2つの対向する場所に設置された概略図。
図7】分割中に発した振動の周波数(Hz)と分割速度(m/s)の関係を示す較正曲線の図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、基板、特に半導体基板の分割であって、原子種を注入することにより事前に形成された弱化ゾーンに沿った分割が特定の音響特性を有し、この音響特性が、前記基板が配置された熱処理炉の内部または近傍において音声を記録されたものとして検出され得るという事実に基づいている。基板は、単独であっても、別の基板に接合されていてもよい。後者は、前記基板の層をスマートカット(商標)プロセスによって別の基板に転写することが望まれる場合に特に適用される。
【0049】
図1は、シリコーン基板の分割の音響特性、すなわち、基板の分割に続いて炉内で検出された、時間を関数とする音声の強さを示す。時間軸の単位は秒である。この特性は、音の強さの突然の増加と、その後の1乃至2秒間に亘る指数関数的な急激な減少の形態を取る。
【0050】
このような特性は、分割に特有のものであり、焼鈍炉内またはその近傍で発生しやすい他の事象の特性と混同することはあり得ない。
【0051】
この特性は、数十kHzの周波数を感知する任意のマイクロホンであって、選択的にその意図された場所に応じて高温での動作に適したマイクロホンにより取得され得る。
【0052】
分割の検出は、以下で詳述するように、定性的(基板の分割の有無)、更にまたは定量的である分割プロセスについての少なくとも1つの情報を提供する。
【0053】
したがって、本件発明者らは、音声の記録が基板の分割の検出に適さないという文書FR2902926号の教示に反し、基板に接触している圧電センサの信号からよりも多くの情報を音声スペクトルから抽出できることを対照的に実証した。
【0054】
特に、驚くべきことに、分割はほぼ瞬間的(約100μs)であるが、分割によって生じる音の継続時間は、約1乃至2秒とずっと長い。この作用は、マイクロクラック内で発生した圧力と基板周囲のガス圧力との間の差の影響の下において、分割面の両側で誘導された基板の振動により説明されると思われる。
【0055】
音声スペクトルは、比較的複雑である(複数の周波数からなる)が、分割を特徴付ける特性を有している。この特性は、信号を処理することで検出され得る。
【0056】
図2乃至6は、本発明の種々の実施形態を示す。
【0057】
これらの図面のそれぞれにおいて、炉の構造は同一であるため一度しか説明しない。特定の参照符号が複数の図面で使用されている場合、これは、参照されている要素が同一であるか、同じ機能を果たすことを意味する。図面の明確性を期して、種々の要素は必ずしも一定の比率で示されていない。
【0058】
炉1は、水平方向軸に沿って延びる管状の全体形状を有している。炉の内壁10は、分割されるべき基板Sが載置される加熱チャンバ11を規定している。一般に、熱処理は、単一の基板に対してではなく、複数の基板のバッチに対して実施される。この目的のために、基板は、炉内において隣接して配置された1つ以上のカセット2内で、縦向きに配置されている。カセットは、管の一端部に位置するドア12を経由して導入される。ドア12は、熱遮蔽物13によって加熱チャンバ11から断熱されている。通常、ドアの反対側の管の端部は、行き止まりになっている。加熱チャンバを分割に望ましい温度に昇温させるために、加熱要素14が炉の壁の周囲に配置されている。例えば、一般に、シリコーン基板を分割させるために適用される温度は、約100乃至500℃、好適には300乃至500℃である。
【0059】
当然ながら、当業者は、以下になされる教示を他の任意のタイプの炉に適合させ得るであろう。
【0060】
丸で囲んだ星印は、基板で発生した分割と、それから生じる音の伝播を象徴的に示す。
【0061】
マイクロホンの位置がどこであっても、マイクロホンはリアルタイムで記録されたデータを、信号を処理する適切なソフトウェアパッケージを実行することで記録を処理することが可能なコンピュータ(図6において参照符号4で示す)を備えた制御ステーションに送信する。データは、任意の適切なプロトコルを使用して、有線または無線で送信され得る。
【0062】
有利には、前記制御ステーションは、データ処理の結果に応じて、炉を停止させるように、または警告を発して炉のモニタリングを任務とするオペレータの注意を喚起するように構成されている。
【0063】
図2は、マイクロホン3が加熱チャンバ11に直接配置されている第1実施形態を示す。本適用例では、高温に適したマイクロホン、すなわち、300℃、更にまたは850℃の高温に耐えるマイクロホンが選択されている。このようなタイプのマイクロホンは、市販されている。したがって、マイクロホンは基板に可能な限り近接しているとともに、炉の外部で発生するノイズの影響を受けにくくなっている。
【0064】
有利には、マイクロホンは、ドア12の反対側の壁に配置される。
【0065】
図3は、マイクロホン3が、例えばドア12の反対側の炉の外壁に配置された第2実施形態を示す。音声検出の実効性は下がるが、基板の分割を検出するには十分である。更に、この変形実施例によれば、高温に適したマイクロホンの必要をなくすことができる。
【0066】
図4は、マイクロホン3が、炉のドア12と熱遮蔽物13との間に配置された第3実施形態を示す。第1実施形態に対して、マイクロホンは低い温度にさらされるが、上述した温度に適したものを選択する必要が当然ある。
【0067】
図5は、マイクロホン3用の特定の取付部を備えた第5実施形態を示す。この取付部は、マイクロホン3のサイズに実質的に対応する小径の管30、例えば約1乃至5mmの直径を有する管30を備えている。管の長さは、典型的には約1乃至10cmである。前記管30は、炉の壁、例えばドア12の反対側の壁に穿孔された穴を介して加熱チャンバ11に開口している。したがって、マイクロホンが炉の雰囲気に接触した場合であっても、管に沿って熱が放散することにより、たとえマイクロホンが高温に特に適していなくてもその動作に適合した温度が十分に保証される。
【0068】
図6は、2つのマイクロホン3が、炉内においてそれぞれ管の一端部の近傍に配置された第5実施形態を示す。各マイクロホンは、加熱チャンバ11において生成された音を記録する。各マイクロホンにより送信される記録の処理中に、任意の事象の音響特性の時間的推移によって、分割が発生した基板のバッチ内での位置を推定することができる。したがって、分割した基板を特定することができる。
【0069】
当然ながら、上述の種々の実施形態を組み合わせてもよい。
【0070】
基板の分割の検出の利用は、様々な形態を取り得る。
【0071】
まず、分割したことが検出された基板の枚数をカウントし、この枚数を炉内に存在する基板の枚数と比較することにより、各基板が実際に分割したかどうかを確認することができる。この場合、分割したことが検出された基板の枚数が基板の枚数に達したら、その後の熱処理は無意味であるため、熱処理を停止することが有利であろう。したがって、サイクル時間を最適化するともに、基板に適用される熱量を最小として消費電力を削減することができる。
【0072】
これに対して、熱処理の所定の継続時間後に、分割したことが検出された基板の枚数が基板の枚数より少ない場合、1つ以上の基板が分割していないと推定することができる。このような場合、このバッチを自動分離機に送らないことが好適である。なぜならば、分割していない基板の存在により、分離機が望ましくないタイミングで停止してしまうかもしれないからである。したがって、この問題のあるバッチは、分割した基板を手動で分離することを目的として搬出される。
【0073】
基板の破損は、必ずしも特定の特性をもたらすとは限らない。具体的には、破損に際して作成される音は、基板の破片がどのように落下するか、または実際に基板がどのように破損するかに関連し得るため、可変特性を有するかもしれない。しかしながら、基板の分割によって作成される音が十分に識別される限りにおいて、チャンバ内で作成される別の音が、破損に関連していてもよい。この場合、破損した基板が自動分離機の動作を阻むことがないよう、バッチを炉から取り出してこれを手動で処理することが有利である。有利には、分割される基板の新たなバッチが導入される前に、炉の内部が洗浄される。
【0074】
更に、上述の定性的利用とは別に、本件発明者らは、ピーク強度に対応する最大音声周波数と、基板を伝播する分割波の速度との相関関係を実証した。この相関関係を図7に概略的に示す。図7は、発せられた振動の周波数(Hz)と、分割波の速度(m/s)との関係を示す。所与のタイプの基板および決定された注入条件について事前に構成されたこのような曲線により、各基板の音声の記録から、対応する分割の速度を特定することができる。その後、バッチの分割特性の均一性を検証することができる。
【0075】
更に、分割中に放出されるエネルギーは、検出された音の最大の強さに正比例する。したがって、音の最大の強さの相対的な変動、およびそれを同一基板で検出された平均値と比較することにより、分割の品質の指標である、分割中に放出されたエネルギーを推定することができる。
【0076】
参考文献
FR2902926
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7