(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】生産計画作成方法および生産計画作成装置ならびに生産方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240126BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/04 Z
(21)【出願番号】P 2018236854
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】相良 博喜
(72)【発明者】
【氏名】竹原 裕起
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-006777(JP,A)
【文献】特開2012-243024(JP,A)
【文献】特開2008-077665(JP,A)
【文献】特開平11-232339(JP,A)
【文献】特開平08-016401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
H05K 13/02 - 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備を備えた複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成方法であって、
生産する品種毎の生産量および生産納期を含む生産情報と、生産設備の情報を含む生産ラインの情報と、前記生産ラインの稼働時間とに基づいて、前記品種を複数の生産ロットに分割し、
分割制約に基づいて前記品種を複数の生産ロットサンプルに分割し、
前記生産ロットサンプルを前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、割り当てられた前記品種を生産する生産データサンプルを決定したライン計画サンプルを規定数以上作成し、
前記ライン計画サンプルが前記規定数より少ない場合に変更された前記分割制約に基づいて前記品種を前記複数の生産ロットサンプルに分割し、
複数の前記ライン計画サンプルのうち前記生産納期を満たすライン計画サンプルに基づいて、生産データを作成し、
複数の前記品種のうちの共通度の高い複数の品種を共通配置されるように前記生産ラインに割り当てる品種割り当て指針に基づいて、分割された複数の前記生産ロットを複数の前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、前記生産データに基づいて前記品種の製品を生産する生産計画を作成する、生産計画作成方法。
【請求項2】
前記ライン計画サンプルに基づいて、前記生産ラインにおいて前記品種を生産するのに要するサイクルタイムを算出し、
算出された前記サイクルタイムに基づいて、前記ライン計画サンプルにおける前記生産ロットサンプルの生産終了時刻を算出し、
算出された前記生産終了時刻が前記生産納期を満たすか否かを判定する、請求項1に記載の生産計画作成方法。
【請求項3】
前記分割制約における前記生産ロットサンプルの最小生産量は、前記生産設備が生産作業を行う対象であるワークを前記生産ラインに投入する投入装置に一度に搭載可能な最大量である、請求項1または2に記載の生産計画作成方法。
【請求項4】
前記生産設備は基板に半田を堆積させる印刷装置または半田が堆積された前記基板に部品を実装ヘッドで実装する部品実装装置である、請求項1から3のいずれかに記載の生産計画作成方法。
【請求項5】
生産設備を備えた複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成装置であって、
生産する品種毎の生産量および生産納期を含む生産オーダと、生産設備の情報を含む生産ラインの情報と、前記生産ラインの稼働時間とに基づいて、前記品種を複数の生産ロットに分割する生産ロット作成部と、
分割制約に基づいて前記品種を複数の生産ロットサンプルに分割する生産ロットサンプル作成部と、
前記生産ロットサンプルを前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、割り当てられた前記品種を生産する生産データサンプルを決定したライン計画サンプルを規定数以上作成するライン計画サンプル作成部と、
前記生産納期を満たすライン計画サンプルに基づいて、生産データを作成する生産データ作成部と、
複数の前記品種のうちの共通度の高い複数の品種を共通配置されるように前記生産ラインに割り当てる品種割り当て指針に基づいて、分割された複数の前記生産ロットを複数の前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、
前記生産データに基づいて前記品種の製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成部と、を備え、
前記ライン計画サンプルが前記規定数より少ない場合に変更された前記分割制約に基づいて前記品種を前記複数の生産ロットサンプルに分割する、
生産計画作成装置。
【請求項6】
前記ライン計画サンプルに基づいて、前記生産ラインにおいて前記品種を生産するのに要するサイクルタイムを算出するサイクルタイム算出部と、
算出した前記サイクルタイムに基づいて、前記ライン計画サンプルにおける前記生産ロットサンプルの生産終了時刻を算出する生産終了時刻算出部と、
算出された前記生産終了時刻が前記生産納期を満たすか否かを判定する判定処理部と、
をさらに備える、請求項5に記載の生産計画作成装置。
【請求項7】
前記分割制約における前記生産ロットサンプルの最小生産量は、前記生産設備が生産作業を行う対象であるワークを前記生産ラインに投入する投入装置に一度に搭載可能な最大量である、請求項5または6に記載の生産計画作成装置。
【請求項8】
前記生産設備は基板に半田を堆積させる印刷装置または半田が堆積された前記基板に部品を実装ヘッドで実装する部品実装装置である、請求項5から7のいずれかに記載の生産計画作成装置。
【請求項9】
生産設備を備えた複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産方法であって、
生産する品種毎の生産量および生産納期を含む生産情報と、生産設備の情報を含む生産ラインの情報と、前記生産ラインの稼働時間とに基づいて、分割制約と複数の前記品種のうちの共通度の高い複数の品種を共通配置されるように前記生産ラインに割り当てる品種割り当て指針と生産データとを作成し、
生産する品種毎の短期の生産量および短期の生産納期を含む生産オーダと、前記分割制約に基づいて、前記品種を複数の生産ロットに分割し、
分割制約に基づいて前記品種を複数の生産ロットサンプルに分割し、
前記生産ロットサンプルを前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、割り当てられた前記品種を生産する生産データサンプルを決定したライン計画サンプルを規定数以上作成し、
前記ライン計画サンプルが前記規定数より少ない場合に変更された前記分割制約に基づいて前記品種を前記複数の生産ロットサンプルに分割し、
複数の前記ライン計画サンプルのうち前記生産納期を満たすライン計画サンプルに基づいて、前記生産データを作成し、
前記品種割り当て指針に基づいて、分割された複数の前記生産ロットを複数の前記生産ラインのいずれかに割り当て、
前記生産データに基づいて、前記生産ラインによって前記製品を生産する、生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成方法および生産計画作成装置ならびに生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に部品を実装した実装基板などの製品を生産する生産ラインでは、複数の品種が所定の生産納期に所定の生産量を生産できるように生産計画が作成される。生産ラインで生産する品種を変更する際には、生産を停止して生産ラインが備える生産設備の構成を変更する段取り替えが必要な場合がある。生産計画を作成する際は、生産効率の低下を防止するため、段取り替えの回数が少なくなるように生産順序や生産設備の構成が決められる。
【0003】
ところで、製品寿命が長く、かつ、バリエーションが多彩な製品の中には、長期に生産する品種の総数は決まっているものの、需要の変動等により短期の生産計画を予測して作成するのが難しいものがある。特許文献1には、長期計画が立てやすい非受注製品のグループと長期計画が立てられない受注製品のグループを分けて生産計画を作成し、生産量の変動に応じて両グループ間で生産量を変更することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、需要の変動が大きな品種が多い場合、生産ラインにおける生産設備の構成を生産性は劣るが段取り替えの少ない多品種対応の構成にしたり、対応可能な品種を増やすために冗長な生産ラインを増設したりするなどすることにより、工場全体の生産効率が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、生産効率の高い生産計画を作成することができる生産計画作成方法および生産計画作成装置ならびに生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生産計画作成方法は、生生産設備を備えた複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成方法であって、生産する品種毎の生産量および生産納期を含む生産情報と、生産設備の情報を含む生産ラインの情報と、前記生産ラインの稼働時間とに基づいて、前記品種を複数の生産ロットに分割し、分割制約に基づいて前記品種を複数の生産ロットサンプルに分割し、前記生産ロットサンプルを前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、割り当てられた前記品種を生産する生産データサンプルを決定したライン計画サンプルを規定数以上作成し、前記ライン計画サンプルが前記規定数より少ない場合に変更された前記分割制約に基づいて前記品種を前記複数の生産ロットサンプルに分割し、複数の前記ライン計画サンプルのうち前記生産納期を満たすライン計画サンプルに基づいて、生産データを作成し、複数の前記品種のうちの共通度の高い複数の品種を共通配置されるように前記生産ラインに割り当てる品種割り当て指針に基づいて、分割された複数の前記生産ロットを複数の前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、前記生産データに基づいて前記品種の製品を生産する生産計画を作成する。
【0008】
本発明の生産計画作成装置は、生産設備を備えた複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成装置であって、生産する品種毎の生産量および生産納期を含む生産オーダと、生産設備の情報を含む生産ラインの情報と、前記生産ラインの稼働時間とに基づいて、前記品種を複数の生産ロットに分割する生産ロット作成部と、分割制約に基づいて前記品種を複数の生産ロットサンプルに分割する生産ロットサンプル作成部と、前記生産ロットサンプルを前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、割り当てられた前記品種を生産する生産データサンプルを決定したライン計画サンプルを規定数以上作成するライン計画サンプル作成部と、前記生産納期を満たすライン計画サンプルに基づいて、生産データを作成する生産データ作成部と、複数の前記品種のうちの共通度の高い複数の品種を共通配置されるように前記生産ラインに割り当てる品種割り当て指針に基づいて、分割された複数の前記生産ロットを複数の前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、前記生産データに基づいて前記品種の製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成部と、を備え、前記ライン計画サンプルが前記規定数より少ない場合に変更された前記分割制約に基づいて前記品種を前記複数の生産ロットサンプルに分割する。
【0009】
本発明の生産方法は、生産設備を備えた複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産方法であって、生産する品種毎の生産量および生産納期を含む生産情報と、生産設備の情報を含む生産ラインの情報と、前記生産ラインの稼働時間とに基づいて、分割制約と複数の前記品種のうちの共通度の高い複数の品種を共通配置されるように前記生産ラインに割り当てる品種割り当て指針と生産データとを作成し、生産する品種毎の短期の生産量および短期の生産納期を含む生産オーダと、前記分割制約に基づいて、前記品種を複数の生産ロットに分割し、分割制約に基づいて前記品種を複数の生産ロットサンプルに分割し、 前記生産ロットサンプルを前記生産ラインの稼働時間に割り当てて、割り当てられた前記品種を生産する生産データサンプルを決定したライン計画サンプルを規定数以上作成し、 前記ライン計画サンプルが前記規定数より少ない場合に変更された前記分割制約に基づいて前記品種を前記複数の生産ロットサンプルに分割し、複数の前記ライン計画サンプルのうち前記生産納期を満たすライン計画サンプルに基づいて、前記生産データを作成し、前記品種割り当て指針に基づいて、分割された複数の前記生産ロットを複数の前記生産ラインのいずれかに割り当て、前記生産データに基づいて、前記生産ラインによって前記製品を生産する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産効率の高い生産計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の部品実装システムが備える部品実装ラインの構成説明図
【
図3】本発明の一実施の形態の部品実装システムが備える部品実装装置の平面図
【
図4】本発明の一実施の形態の部品実装システムが備える部品実装装置の部分断面図
【
図5】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産計画作成装置)の構成を示すブロック図
【
図6】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産計画作成装置)で使用される長期生産情報の一例の説明図
【
図7】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産計画作成装置)で使用されるライン稼働時間情報の一例の説明図
【
図8】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産計画作成装置)において作成された暫定生産ロットの一例の説明図
【
図9】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産計画作成装置)において作成された(a)計画サンプルの一例の説明図(b)暫定ライン計画の一例の説明図
【
図10】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産計画作成装置)において作成された(a)計画サンプルの一例の説明図(b)ライン計画サンプルの一例の説明図
【
図11】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産計画作成装置)において作成されたライン計画サンプルと判定結果の一例の説明図
【
図12】本発明の一実施の形態の生産計画作成方法のフロー図
【
図13】本発明の一実施の形態の生産方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装ライン、部品実装装置などの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図3、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(
図3における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(
図3における上下方向)が示される。
図4では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(
図4における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向または直交方向である。
【0013】
まず
図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、フロアFLに配置された4本の部品実装ラインL1~L4を通信ネットワーク2によって接続し、管理コンピュータ3によって管理する構成となっている。各部品実装ラインL1~L4は、後述するようにスクリーン印刷装置、部品実装装置を含む複数の生産設備を連結して構成され、基板に部品を実装した実装基板(製品)を生産する機能を有している。なお、部品実装システム1が備える部品実装ラインL1~L4は4本である必要はなく、1本から3本及び5本以上でも良い。
【0014】
管理コンピュータ3には、各部品実装ラインL1~L4で生産する実装基板の品種に対応して、部品実装ラインL1~L4の各生産設備で使用される制御プログラムや設定情報などを含む生産データが記憶されている。各部品実装ラインL1~L4で生産する実装基板の品種を変更する段取り替えの際は、必要に応じて管理コンピュータ3から各生産設備に対して変更される品種に対応した生産データが送信される。
【0015】
次に
図2を参照して、部品実装ラインL1~L4の詳細な構成を説明する。部品実装ラインL1~L4は同様の構成をしており、以下、部品実装ラインL1について説明する。部品実装ラインL1は、基板搬送方向の上流側(紙面左側)から下流側(紙面右側)に向けて、基板供給装置M1、スクリーン印刷装置M2、部品実装装置M3~M6、リフロー装置M7、基板回収装置M8などの生産作業を実行する生産設備を直列に連結して構成されている。なお、部品実装ラインL1は通信ネットワーク2を介して接続される生産設備群であって、物理的に生産設備同士が連結されていなくてもよい。
【0016】
基板供給装置M1、スクリーン印刷装置M2、部品実装装置M3~M6、リフロー装置M7、基板回収装置M8は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。基板供給装置M1は、複数の基板を収納するラック等の収納部を備え、収納部から取り出した基板を下流側の装置に供給する基板供給作業を実行する。すなわち、基板供給装置M1は、生産設備が生産作業を行う対象であるワーク(基板)を生産ライン(部品実装ラインL1)に投入する投入装置である。
【0017】
スクリーン印刷装置M2は、印刷作業部に装着されたスクリーンマスクを介して上流側から搬入された基板に半田を印刷する半田印刷作業を実行する。段取り替えの際、スクリーン印刷装置M2では、スクリーンマスクの交換と印刷条件などを含む制御プログラムの変更が行われる。なお、部品実装ラインL1は、スクリーン印刷装置M2と並設して、もしくはスクリーン印刷装置M2の代わりにディスペンサを用いて半田を基板に塗布する半田塗布装置を備えてもよい。スクリーン印刷装置M2および半田塗布装置は、基板に半田を堆積させる印刷装置である。
【0018】
部品実装装置M3~M6は、半田が堆積された基板に部品を実装ヘッドで実装する部品実装作業を実行する。なお、部品実装ラインL1は、部品実装装置M3~M6が4台の構成に限定されることなく、部品実装装置M3~M6が1~3台であっても5台以上であってもよい。リフロー装置M7は、装置内に搬入された基板を基板加熱部によって加熱して、基板上の半田を融解させた後に硬化させ、基板の電極部と部品とを接合する基板加熱作業を実行する。段取り替えの際、リフロー装置M7では、加熱条件などを含む制御プログラムの変更が行われる。基板回収装置M8は、複数の基板を収納するラック等の収納部を備え、上流側の装置が搬出する基板を受け取って収納部に回収する基板回収作業を実行する。
【0019】
次に
図3、
図4を参照して、部品実装装置M3~M6の構成を説明する。部品実装装置M3~M6は同様の構成であり、ここでは部品実装装置M3について説明する。部品実装装置M3は、部品Pを基板Wに実装する機能を有している。
図3において、基台4の中央には、基板搬送機構5がX方向に設置されている。基板搬送機構5は、上流側から搬入された基板WをX方向へ搬送し、以下に説明する実装ヘッド11による実装作業位置に位置決めして保持する。また、基板搬送機構5は、部品実装作業が完了した基板Wを下流側に搬出する。基板搬送機構5の両側方には、部品供給部6が設置されている。
【0020】
部品供給部6には、それぞれ複数のテープフィーダ7がX方向に並列に装着された台車8が取り付けられている。テープフィーダ7は、部品Pを格納するポケットが形成されたキャリアテープを部品供給部6の外側から基板搬送機構5に向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、実装ヘッド11が部品Pをピックアップする部品取出し位置に部品Pを供給する。すなわち、テープフィーダ7は、部品Pを供給する部品供給装置である。なお、部品供給装置はテープフィーダ7の他、トレイに載置した部品Pを供給するトレイフィーダ、中空のスティックに整列保持した部品Pを供給するスティックフィーダなどを使用してもよい。
【0021】
図3において、基台4の上面におけるX方向の両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸テーブル9が配置されている。Y軸テーブル9には、同様にリニア機構を備えたビーム10がY方向に移動自在に結合されている。ビーム10には、実装ヘッド11がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド11は、複数(ここでは8つ)のノズルユニット11aを備えている。実装ヘッド11は、ノズルユニット11aの数などが異なる複数の種類が準備されている。
【0022】
図4において、各ノズルユニット11aの下端部には、部品Pを真空吸着して保持する吸着ノズル11bが装着されている。吸着ノズル11bは、吸着する部品Pのサイズや形状などに対応して、ノズルの形状などが異なる複数の種類が準備されている。
【0023】
図3において、Y軸テーブル9およびビーム10は、実装ヘッド11を水平方向(X方向、Y方向)に移動させる実装ヘッド移動機構12を構成する。実装ヘッド移動機構12および実装ヘッド11は、部品供給部6に装着されているテープフィーダ7の部品取出し位置から部品Pを吸着ノズル11bによって吸着してピックアップし、基板搬送機構5に保持された基板Wの実装位置に移送して実装する部品実装作業を実行する。
【0024】
実装ヘッド11がテープフィーダ7から部品Pを取り出して基板Wに実装するまでの時間は、台車8におけるテープフィーダ7の位置(生産設備の構成)に依存する。例えば、基板Wに実装される実装点数が多い部品Pを供給するテープフィーダ7を台車8の中心付近に配置することで、実装ヘッド11の移動距離を縮小して実装時間を短縮することができる。
【0025】
図3、
図4において、ビーム10には、ビーム10の下面側に位置して実装ヘッド11とともに一体的に移動するヘッドカメラ13が装着されている。実装ヘッド11が移動することにより、ヘッドカメラ13は基板搬送機構5の実装作業位置に位置決めされた基板Wの上方に移動して、基板Wに設けられた基板マーク(図示せず)を撮像して基板Wの位置を認識する。
【0026】
部品供給部6と基板搬送機構5との間には、部品認識カメラ14が設置されている。部品認識カメラ14は、部品供給部6から部品Pを取り出した実装ヘッド11が上方を移動する際に、吸着ノズル11bに保持された部品Pを撮像して保持位置などを認識する。実装ヘッド11による部品Pの基板Wへの部品実装作業では、ヘッドカメラ13による基板Wの認識結果と部品認識カメラ14による部品Pの認識結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
【0027】
図4において、台車8の前側には、部品Pを収納するキャリアテープ15が巻回されたリール16が保持されている。テープフィーダ7は、リール16に収納されているキャリアテープ15をテープ送り方向に搬送して実装ヘッド11による部品取り出し位置に部品Pを供給する。テープフィーダ7は、搬送するキャリアテープ15の幅に対応して幅などが異なる複数の種類が準備されている。
【0028】
部品実装ラインL1~L4において生産する実装基板の品種を変更する段取り替えの際は、スクリーン印刷装置M2のスクリーンマスク、部品実装装置M3~M6のテープフィーダ7、実装ヘッド11、吸着ノズル11b、リール16などを交換する内段取り作業が実行され、各生産設備の構成が変更される。また、部品実装装置M3~M6の制御プログラムが変更される。
【0029】
部品Pの共通度が高い品種(同じグループの品種)では、予め共通するテープフィーダ7やリール16を台車8に配置する共通配置が行われる。また、交換するテープフィーダ7やリール16の数が多い場合は、予め予備の台車8に次の品種の生産で使用するテープフィーダ7やリール16を配置しておき、部品実装装置M3~M6に装着されている台車8と交換する外段取り作業が実行される。
【0030】
次に
図5を参照して、管理コンピュータ3の構成について説明する。管理コンピュータ3は、処理部20、記憶装置である生産計画記憶部32、ライン情報記憶部33の他、入力部34、表示部35を備えている。処理部20はCPUなどのデータ処理装置であり、内部処理部として生産ロットサンプル作成部21、計画サンプル作成部22、サイクルタイム算出部23、段取り時間算出部24、生産終了時刻算出部25、判定処理部26、生産データ作成部27、生産オーダ取得部28、生産ロット作成部29、生産計画作成部30、ライン計画サンプル作成部31を備えている。
【0031】
入力部34は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部35は液晶パネルなどの表示装置であり、各記憶部が記憶する各種データを表示する他、入力部34による操作のための操作画面、生産計画表示画面、報知画面などの各種情報を表示する。なお、管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶装置の全てもしくは一部をサーバを介してクラウドに備えてもよい。
【0032】
図5において、生産計画記憶部32には、長期生産情報32a、品種情報32b、サンプル作成条件情報32c、計画サンプル情報32d、ライン計画サンプル情報32e、生産データ情報32f、生産オーダ情報32g、生産計画情報32hなどが記憶されている。ライン情報記憶部33には、ライン構成情報33a、ライン稼働時間情報33bなどが記憶されている。長期生産情報32aには、部品実装ラインL1~L4において生産する品種毎に、長期(例えば、1週間から数ヶ月間)に生産が予測される総生産量(生産枚数)、生産に着手可能な着手可能日時および長期の生産納期などが記憶されている。
【0033】
ここで
図6を参照して、長期生産情報32aの例について説明する。長期生産情報32aは、過去の実績、長期の受注予測、長期生産計画などに基づいて作成されてもよいし、受注した長期の総生産量に基づいてもよい。長期生産情報32aには、品種番号41、生産枚数42、着手可能日時43、生産納期44が含まれている。品種番号41は、部品実装ラインL1~L4において生産される実装基板の品種を特定する情報である。生産枚数42は、品種毎の長期の生産枚数(総生産量)である。着手可能日時43は、品種毎の生産に着手可能となる日時である。生産納期44は、実装基板の生産を完了しなければならない日時である。
【0034】
以下、品種番号41が「A」の品種を単に「品種A」などと称する。長期生産情報32aは、対象となる品種番号41の実装基板の生産完了通知や受注管理コンピュータ(図示省略)からの受注情報等により、随時または定期的に更新される。
【0035】
図5において、品種情報32bには、生産される実装基板の品種を特定する品種番号41毎に、基板Wに実装される部品Pの部品種、実装位置など部品実装作業に必要な情報が記憶されている。ライン構成情報33aには、各部品実装ラインL1~L4を構成する生産設備の種類、連結された順番などの生産ラインの構成に関する情報が記憶されている。すなわち、ライン構成情報33aは、生産設備の情報を含む生産ラインの情報が記憶されている。ライン稼働時間情報33bには、所定期間の各部品実装ラインL1~L4において実装基板の生産が可能な稼働時間を含む情報が記憶されている。すなわち、ライン稼働時間情報33bには、生産ラインの稼働時間が記憶されている。
【0036】
ここで
図7を参照して、ライン稼働時間情報33bの例について説明する。ここでは、5月1日2時から5月6日2時における部品実装ラインL1~L4のライン稼働時間情報33bが生産時刻に沿って表示されている。期間は、12時間毎の合計10の区間に区切られており、そのうち、3区間は実装基板が生産されない「休み」となっている。すなわち、各部品実装ラインL1~L4において実装基板の生産が可能な稼働時間は、ひとつの区間が12時間の7つの区間S1~S7である。
【0037】
なお、「休み」とは、生産ロットの生産が行われないことであり、各部品実装ラインL1~L4が非稼働であることの他に、メンテナンス、試作やテスト等の量産立ち上げも「休み」に含まれる。また、区間S1~S7の長さは12時間に限定されることはなく、例えば6時間であってもよい。また、この例では各部品実装ラインL1~L4の稼働時間が全て同じであるが、メンテナンスによる計画停止などで各部品実装ラインL1~L4によって稼働時間が異なる場合もある。
【0038】
図5において、サンプル作成条件情報32cには、生産ロットサンプルを生産ラインの稼働時間に割り当てた計画サンプルを作成するための条件が記憶されている。具体的には、サンプル作成条件情報32cは、品種A~Hを複数のロットに分割する際の分割制約、分割されたロットを生産ラインに割り当てる際の品種A~Hと生産ラインの対応情報を含む品種割り当て指針などが含まれるルールテーブルや学習用データセットである。ルールテーブルや学習用データセットは、計画サンプルの作成結果に応じて更新されてもよい。
【0039】
分割制約には、各品種A~Hの生産量を複数の生産ロットに分割する際の各生産ロットの最大生産量や最小生産量などが記憶されている。例えば、分割制約における生産ロットの最小生産量として、基板供給装置M1(生産設備が生産作業を行う対象であるワーク(基板W)を生産ライン(部品実装ラインL1~L4)に投入する投入装置)に一度に搭載可能な最大量(例えば、50枚)などが設定される。
【0040】
図5において、生産ロットサンプル作成部21は、長期生産情報32a、ライン構成情報33a、ライン稼働時間情報33b、サンプル作成条件情報32cに含まれる分割制約に基づいて、区間S1~S7毎の生産量を決定し、各品種A~Hの長期の総生産量(生産枚数42)を複数の生産ロットサンプルに分割する。
【0041】
ここで
図8を参照して、生産ロットサンプル作成部21によって作成された生産ロットサンプルの例について説明する。
図8は、
図6に示す長期生産情報32aに含まれる品種番号41が品種A~Hの生産枚数42(総生産量)を、
図7に示すライン稼働時間情報33bの稼働時間(合計28区分)に合わせて複数の生産ロットサンプルに分割した例である。生産ロットサンプル数45は作成された生産ロットサンプルの数、ロット最小枚数46は、生産ロットサンプルの最小生産量である。
【0042】
この例では、区間S1~S7毎の生産量は、100枚である。ロット最小枚数46は、生産枚数42が100枚以上の品種は100枚、100枚より少ない品種は50枚という分割制約に従って決められている。例えば、生産枚数42が100枚以上の品種A~Fはロット最小枚数46が100枚、生産枚数42が100枚より少ない品種G~Hはロット最小枚数46が50枚である。生産枚数42が1000枚の品種Aは、各生産ロットサンプルの生産枚数が100枚である10個の生産ロットサンプルA1~A10に分割されている(
図9(a)、
図10(a)も参照)。なお、ロット最小枚数46で分割すると、端数が存在する品種の生産枚数42は、例えば生産ロットサンプルの生産枚数が均等になるように枚数を調整する等の予め定められた条件で調整される。生産ロットサンプルの各生産時間は、過去の実績や予め設定された生産時間が各品種に設定されている。
【0043】
計画サンプル作成部22は、サンプル作成条件情報32cに含まれる品種割り当て指針とライン稼働時間情報33bに基づいて、生産ロットサンプル作成部21によって作成された複数の生産ロットサンプルを複数の生産ラインの稼働時間に割り当てた計画サンプルを複数作成する。作成された計画サンプルは、計画サンプル情報32dとして生産計画記憶部32に記憶される。
【0044】
ここで
図9(a)、
図10(a)を参照して、
図7に示す生産ラインの稼働時間(部品実装ラインL1~L4の区間S1~S7)に
図8に示す生産ロットサンプルを割り当てた計画サンプルの例について説明する。
図9(a)に示す計画サンプルX1は、生産ロットサンプルA1~A10を部品実装ラインL1の区間S1~S7、部品実装ラインL2の区間S1~S7に順に割り当てるというサンプル作成条件情報32cに記憶された品種割り当て指針に従って作成されている。すなわち、部品実装ラインL1の区間S1に生産ロットサンプルA1、部品実装ラインL1の区間S2に生産ロットサンプルA2の順に割り当てられている。
【0045】
図10(a)に示す計画サンプルX2は、生産ロットサンプルA1~A10を早い時間順に部品実装ラインL1~L4の区間S1~S7に順に割り当てるというサンプル作成条件情報32cに記憶された別の品種割り当て指針に従って作成されている。すなわち、部品実装ラインL1の区間S1に生産ロットサンプルA1、部品実装ラインL2の区間S1に生産ロットサンプルA2の順に割り当てられている。
【0046】
図5において、ライン計画サンプル作成部31は、内部処理部としてグループ作成部31a、生産順序変更部31b、生産データサンプル作成部31cを備えている。グループ作成部31aは、計画サンプル情報32d、品種情報32bに基づいて、計画サンプルとして各部品実装ラインL1~L4に割り当てられた品種A~H間の部品Pの共通度を算出し、共通度が高い複数の品種A~Hの生産で使用するテープフィーダ7、リール16を台車8に共通配置するグループとしてグルーピングする。
【0047】
ここで
図11を参照して、
図9(a)に示す計画サンプルX1、
図10(a)に示す計画サンプルX2に基づいて作成されたライン計画サンプルY1,Y2におけるグループの例について説明する。例えば、ライン計画サンプルY2の部品実装ラインL1に割り当てられている品種A~Eは、部品Pの共通度が高い品種A、品種B、品種Cがグループ[ABC]に、品種D、品種Eがグループ[DE]としてグルーピングされている。なお、ライン計画サンプルY1,Y2において[]がついていない品種は、共通度が低いなどの理由でグループ化できない品種である。
【0048】
図5において、生産順序変更部31bは、計画サンプルとして各部品実装ラインL1~L4に割り当てられた品種A~Hの生産納期や、他の品種A~Hとグループであるかなどの情報に基づいて、各部品実装ラインL1~L4における品種A~H(生産ロットサンプル)の生産順序を最適化(変更)する。
【0049】
生産データサンプル作成部31cは、ライン計画サンプルY1,Y2として各部品実装ラインL1~L4に割り当てられた品種A~Hの生産順序、品種情報32b、グループの情報、ライン構成情報33aに基づいて、部品実装ラインL1~L4の生産設備毎に生産ロットサンプルの品種A~Hを生産するための生産データサンプルを作成する。例えば、部品実装装置M3~M6の生産データサンプルには、実装ヘッド11や吸着ノズル11bの種類、テープフィーダ7やリール16の配置、制御プログラムなどが含まれる。
【0050】
このように、ライン計画サンプル作成部31は、複数の生産ライン(部品実装ラインL1~L4)のそれぞれで、計画サンプルX1,X2に基づいて生産ロットサンプルを生産ラインの稼働時間に割り当てて、割り当てられた品種A~Hを生産する生産データサンプルを決定したライン計画サンプルY1,Y2を作成する。作成されたライン計画サンプルY1,Y2は、ライン計画サンプル情報32eとして生産計画記憶部32に記憶される。
【0051】
図5において、サイクルタイム算出部23は、生産データサンプルと生産ロットサンプルの生産順序を含むライン計画サンプルY1,Y2に基づいて、生産ライン(部品実装ラインL1~L4)において品種A~Hを生産するのに要するサイクルタイムを生産ロットサンプル毎に算出する。サイクルタイム算出部23は、算出したサイクルタイムに基づいて、ライン計画サンプル情報32eに記憶されているライン計画サンプルY1,Y2を更新する。
【0052】
段取り時間算出部24は、ライン計画サンプルY1,Y2に含まれる生産ロットサンプル(品種A~H)の生産順序に基づいて、各部品実装ラインL1~L4(生産ライン)における生産設備の構成を次の品種A~H用に変更する内段取り作業と外段取り作業に要する段取り時間を算出する。段取り時間算出部24は、算出した段取り時間に基づいて、ライン計画サンプル情報32eに記憶されているライン計画サンプルY1,Y2を更新する。生産終了時刻算出部25は、サイクルタイム算出部23が算出したサイクルタイムと段取り時間算出部24が算出した段取り時間に基づいて、ライン計画サンプルY1,Y2における各生産ロットサンプルの生産終了時刻を算出する。
【0053】
ここで
図9(b)、
図10(b)を参照して、サイクルタイム、段取り時間が更新されたライン計画サンプルY1、ライン計画サンプルY2の例について説明する。なお、ライン計画サンプルY1,Y2は、計画サンプルX1,X2から生産ロットサンプルの生産順序は変更(修正)しない条件で作成されている。各生産ロットサンプルのサイクルタイムは、サイクルタイム算出部23によって算出されたサイクルタイムに更新されている。生産する品種A~Hが切り替わる際は、段取り時間算出部24が算出した段取り時間が加算されている。
【0054】
図9(b)、
図10(b)において、グループ外の品種A~Hに切り替わる外段取り作業が発生する際の段取り時間は、外段取り作業が発生しない場合より長い。例えば、ライン計画サンプルY1の部品実装ラインL3において、生産ロットサンプルC4から生産ロットサンプルD1に切り替わる際は、品種Cと品種Dは同じグループではないため(
図11参照)、外段取り作業が発生している。各生産ロットサンプルの右端の位置は、生産終了時刻算出部25によって算出された生産終了時刻である。なお、この例のライン計画サンプルY1,Y2は、先頭の生産ロットサンプルの品種A~Hに対応した段取り作業を実行する条件で作成されており、各部品実装ラインL1~L4で最初に段取り時間が加算されている。
【0055】
図5において、判定処理部26は、生産終了時刻算出部25によって算出された生産終了時刻が長期生産情報32aに含まれる長期の生産納期(生産納期44)を満たすか否かを生産ロットサンプル毎に判定する。
図9(b)に示すライン計画サンプルY1では、全ての生産ロットサンプルが長期の生産納期を満たしている。一方、
図10(b)に示すライン計画サンプルY2では、部品実装ラインL2の生産ロットサンプルF1が生産納期44を超過しており、判定処理部26によって長期の生産納期を満たさないと判定される。
【0056】
図11において、判定結果が「○」は、全ての生産ロットサンプルが長期の生産納期を満たすと判定されたライン計画サンプルを示している。判定結果が「×」は、長期の生産納期を満たさない生産ロットサンプルが少なくとも1つあると判定されたライン計画サンプルを示している。判定処理部26は、ライン計画サンプルY1,Y2の元になった計画サンプルX1,X2を作成した際に参照されたサンプル作成条件情報32cの学習用データセットに、判定結果を付加させる。これにより、サンプル作成条件情報32cが更新されて長期の生産納期を満たす分割制約、品種割り当て指針が作成される。
【0057】
ここでサンプル作成条件情報32cに含まれる品種割り当て指針の例について説明する。例えば、品種割り当て指針は、納期を満たすライン計画サンプル(
図11における判定結果が〇のライン計画サンプルなど)において各部品実装ラインL1~L4(生産ライン)に共通配置される品種A~Hの情報である。このようにすることで、今後同様の生産オーダを取得した場合に、生産計画の作成に適用できる。また、品種割り当て指針は、生産設備に備えられる特定の設備要素のみでしか生産ができない品種A~Hの情報でもよく、このような品種A~Hは、特定の生産設備を有する生産ラインに割り当てられる。
【0058】
図5において、生産データ作成部27は、長期の生産納期を満たすと判定されたライン計画サンプルに基づいて、できるだけ多くのライン計画サンプルが長期の生産納期を満たすように生産ライン(部品実装ラインL1~L4)で生産する品種A~Hとグループ(共通配置)を決定し、各生産ラインで各品種A~Hを生産する際に使用する生産データを生産装置毎に作成する。すなわち、長期の生産納期を満たす生産データが作成される。作成された生産データは、生産データ情報32fとして生産計画記憶部32に記憶される。
【0059】
なお、全ての生産ロットサンプルが長期の生産納期を満たしているライン計画サンプルは、生産計画として用いることができるため、暫定データとして、ライン計画サンプルを暫定ライン計画、生産ロットサンプルを暫定生産ロット、生産データサンプルを暫定生産データとして記憶してもよい。
【0060】
図5において、生産オーダ取得部28は、受注管理コンピュータなどから生産ライン(部品実装ラインL1~L4)において生産する品種毎の短期(例えば、1日から3日間)の生産量(生産枚数)およびその生産量の実装基板を生産する短期の生産納期を含む確定した生産オーダを取得する。ここで、短期とは、工程管理におけるに小日程と同義の意味である。取得された生産オーダは、生産オーダ情報32gとして生産計画記憶部32に記憶される。
【0061】
生産ロット作成部29は、生産オーダ情報32gに記憶された生産オーダ、ライン構成情報33aに記憶される生産設備の情報を含む生産ラインの情報、ライン稼働時間情報33bに記憶される生産ラインの稼働時間に基づいて作成されたサンプル作成条件情報32cに含まれる分割制約に基づいて、生産オーダに含まれる品種A~Hの生産量を複数の生産ロットに分割する。なお、生産ロット作成部29は、生産オーダに含まれる生産量が分割制約の最小生産量以下の場合は、その品種A~Hの生産量を分割することなく1つの生産ロットを作成する。
【0062】
生産計画作成部30は、サンプル作成条件情報32cに含まれる品種A~Hを生産ライン(部品実装ラインL1~L4)に割り当てる品種割り当て指針に基づいて、分割された複数の生産ロットを複数の生産ラインの稼働時間に割り当てて、生産データ情報32fとして記憶されている生産データに基づいて品種の製品を生産する生産計画を作成する。生産計画作成部30は、生産計画とともに生産ロットの切り替えに伴う段取り計画も作成し、生産計画は各生産ロットが生産納期を満たすように作成される。作成された生産計画は、生産計画情報32hとして生産計画記憶部32に記憶される。
【0063】
なお、生産計画作成部30は、長期生産情報32aがそのまま生産オーダになった場合や、暫定ライン計画を使用して生産オーダの品種A~Hが生産可能な場合は、その暫定ライン計画を生産計画として流用するようにしてもよい。
【0064】
生産ライン(部品実装ラインL1~L4)において生産計画に基づいて実装基板を生産する際は、段取り替えのタイミングで管理コンピュータ3から生産データ情報32fに含まれる生産データが、各生産設備に送信される。これにより、各生産ラインでは品種A~Hの生産に対応した生産データに基づいて実装基板(製品)が生産される。
【0065】
上記説明したように、本実施の形態の管理コンピュータ3は、生産する品種A~H毎の生産量および生産納期を含む生産オーダ(生産オーダ情報32g)と、生産設備の情報を含む生産ラインの情報(ライン構成情報33a)と、生産ラインの稼働時間(ライン稼働時間情報33b)に基づいて、品種A~Hを複数の生産ロットに分割する生産ロット作成部29と、品種割り当て指針(サンプル作成条件情報32c)に基づいて、分割された複数の生産ロットを複数の生産ラインの稼働時間に割り当てた生産計画を作成する生産計画作成部30と、を備え、複数の生産ラインにより複数の品種A~Hの製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成装置である。
【0066】
次に
図12のフローに沿って、管理コンピュータ3(生産計画作成装置)によって、生産設備を備えた複数の生産ライン(部品実装ラインL1~L4)により複数の品種の製品(実装基板)を生産する生産計画を作成する生産計画作成方法について説明する。まず、生産ロットサンプル作成部21は、長期生産情報32a、ライン構成情報33a、ライン稼働時間情報33bに基づいて、区間S1~S7毎の生産量を決定する(ST1:区間生産量決定工程)。次いで生産ロットサンプル作成部21は、サンプル作成条件情報32cに含まれる分割制約に基づいて、品種A~H毎の生産量(生産枚数42)を複数の生産ロットサンプルに分割する(ST2:生産ロットサンプル分割工程)。
【0067】
次いで計画サンプル作成部22は、サンプル作成条件情報32cに含まれる品種割り当て指針に基づいて、分割された複数の生産ロットサンプルを複数の生産ラインの稼働時間に割り当てて、割り当てられた品種A~Hを生産する生産データサンプルを決定した計画サンプルを少なくともひとつ作成する(ST3:計画サンプル作成工程)。なお、同一の品種A~Hの複数の生産ロットサンプルを同じ生産ラインに連続して割り当てる場合、複数の生産ロットサンプルを結合してひとつの生産ロットサンプルとしてもよい。
【0068】
図12において、次いで計画サンプルが規定数以上作成されたか否かが判定される(ST4)。計画サンプルが規定数より少ない場合(ST4においてNo)、区間生産量決定工程(ST1)に戻って、区間S1~S7毎の生産量、サンプル作成条件情報32cに含まれる分割制約、品種割り当て指針などを変更して、別の計画サンプルが作成される。なお、ST4における計画サンプルの規定数は、任意に設定されるものである。そのため、例えば、規定数を1とすることも可能である。また、規定数が大きければ大きいほど算出時間も増加するため、生産ライン数、品種数等に応じて、適宜設定される。
【0069】
規定数以上の計画サンプルが作成された場合(ST4においてYes)、ライン計画サンプル作成部31は、計画サンプルに基づいて、複数の生産ラインのそれぞれで、割り当てられた生産ロットサンプルの品種A~Hを生産する生産データサンプルと、生産ロットサンプルの生産順序を決定したライン計画サンプルを作成する(ST5:ライン計画サンプル作成工程)。
【0070】
次いでサイクルタイム算出部23は、ライン計画サンプルに基づいて、生産ラインにおいて品種A~Hを生産するのに要するサイクルタイムを生産ロットサンプル毎に算出する(ST6:サイクルタイム算出工程)。次いで生産終了時刻算出部25は、算出されたサイクルタイムに基づいて、ライン計画サンプルにおける生産ロットサンプルの生産終了時刻を算出する(ST7:生産終了時刻算出工程)。なお、生産終了時刻算出工程(ST7)において、段取り時間算出部24によって算出された段取り時間を加算して生産終了時刻を算出してもよい。
【0071】
図12において、次いで判定処理部26は、算出された生産終了時刻が長期の生産納期(生産納期44)を満たすか否かをライン計画サンプルにおける生産ロットサンプル毎に判定する(ST8:生産納期判定工程)。長期の生産納期を満たすライン計画サンプルがない場合(ST8においてNo)、当該ライン計画サンプルを破棄して(ST9:ライン計画サンプル破棄工程)、区間生産量決定工程(ST1)に戻って、区間S1~S7毎の生産量、分割制約、品種割り当て指針などを変更して、計画サンプルとライン計画サンプルが作成される。
【0072】
長期の生産納期を満たすライン計画サンプルがある場合(ST8においてYes)、生産データ作成部27は、複数のライン計画サンプルのうち生産納期を満たすライン計画サンプルに基づいて、生産データを作成する(ST10:生産データ作成工程)。また、全ての生産ロットサンプルが長期の生産納期を満たしているライン計画サンプルは、ライン計画サンプルを暫定ライン計画、生産ロットサンプルを暫定生産ロット、生産データサンプルを暫定生産データとして記憶される(ST11:暫定ライン計画決定工程)。
【0073】
このように、区間生産量決定工程(ST1)~暫定ライン計画決定工程(ST11)の一連の生産準備工程において、品種A~H毎の長期の生産量と生産納期に基づくサンプル作成条件情報32cに含まれる分割条件、品種割り当て指針、生産データが作成される。これによって、生産する品種A~H毎の長期生産情報32aに対応した生産計画を作成する準備が終了する。
【0074】
図12において、分割条件、品種割り当て指針、生産データが作成されると、次いで生産オーダ取得部28は、受注管理コンピュータなどから生産オーダを取得する(ST12:生産オーダ取得工程)。ここで言う生産オーダには、既に作成された生産計画の小日程の間における生産オーダの他に、受注管理コンピュータに緊急で入力された生産オーダも含まれる。
【0075】
次いで生産計画作成部30は、取得された生産オーダ、生産設備の情報を含む生産ラインの情報(ライン構成情報33a)と、生産ラインの稼働時間(ライン稼働時間情報33b)と、分割条件に基づいて、品種A~Hの生産量を複数の生産ロットに分割し、品種割り当て指針に基づいて、分割された複数の生産ロットを複数のラインの稼働時間に割り当てて、生産データに基づいて品種A~Hの製品を生産する生産計画を作成する(ST13:生産計画作成工程)。あるいは、暫定ライン計画を使用できる場合は、暫定ライン計画を生産計画とする。
【0076】
上記説明したように、本実施の形態の生産計画作成方法は、長期の生産量と生産納期に基づく生産準備工程(ST1~ST11)において、分割条件、品種割り当て指針、生産データ、あるいは暫定ライン計画を作成している。そして、短期の確定した生産量と生産納期を含む生産オーダを取得し(ST12)、分割条件、品種割り当て指針、あるいは暫定ライン計画に基づいて、生産計画を作成している(ST13)。これによって、生産納期を遅延する可能性が小さく、段取り作業が少なくて生産効率の高い生産計画を作成することができる。
【0077】
次に
図13のフローに沿って、生産設備を備えた複数の生産ライン(部品実装ラインL1~L4)により複数の品種A~Hの製品(実装基板)を生産する生産方法について説明する。前提として、
図12に示す生産計画作成方法のST1~ST11までを実施して、分割制約、品種割り当て指針、生産データが作成されているとする(ST21:生産準備工程)。
【0078】
図13において、まず、生産ロット単位で生産する品種A~H毎の短期の生産量および短期の生産納期を含む生産オーダが取得される(ST22:生産オーダ取得工程)。次いで取得した生産オーダと品種割り当て指針に基づいて、生産オーダの品種A~Hを複数の部品実装ラインL1~L4(生産ライン)のいずれかに割り当てる(ST23:生産ライン割り当て工程)。その際、必要に応じて生産オーダの品種A~Hを分割制約に基づいて複数の生産ロットに分割して、複数の部品実装ラインL1~L4に割り当てる。
【0079】
次いで段取り替え後など生産オーダの品種A~Hの生産を開始する前に、割り当てられた部品実装ラインL1~L4の生産設備に品種A~Hの生産に必要な生産データが記憶されていない場合は、生産設備は管理コンピュータ3の生産計画記憶部32から対応する生産データを取得する(ST24:生産データ取得工程)。また、必要に応じて、生産設備構成が変更される。次いで割り当てられた部品実装ラインL1~L4において生産オーダの品種A~Hの生産が実行される(ST25:生産実行工程)。
【0080】
対象の生産オーダの生産が完了すると、全ての生産が完了したかが判定される(ST26:生産完了判定工程)。全ての生産が完了していない場合は(ST26においてNo)、ST22に戻り、次の生産オーダが取得される。なお、次の生産オーダを取得するまで、生産ラインは非稼働状態となる。全ての生産が完了した場合は(ST26においてYes)、部品実装ラインL1~L4での実装基板の生産が終了する。
【0081】
このように、本実施の形態の生産方法は、日次などの短期の生産オーダに対応して生産効率の高い生産計画を作成し、この生産計画に従って製品を生産することで効率の良い生産ができる。
【0082】
上記説明したように、本実施の形態の生産計画作成方法は、生産する品種A~H毎の生産量および生産納期を含む生産オーダ(生産オーダ情報32g)と、生産設備の情報を含む生産ラインの情報(ライン構成情報33a)と、生産ラインの稼働時間(ライン稼働時間情報33b)に基づいて、品種A~Hを複数の生産ロットに分割し、品種割り当て指針とに基づいて、分割された複数の生産ロットを複数の生産ラインの稼働時間に割り当てて、割り当てられた前記生産ロットの生産データ(生産データ情報32f)に基づいて品種A~Hの製品を生産する生産計画を作成している(ST13)。これによって、生産効率の高い生産計画を作成することができる。
【0083】
なお、ST11で決定された暫定ライン計画において、生産納期を満たす複数の暫定ライン計画がある場合、複数の暫定ライン計画のそれぞれで生産計画を作成してもよいし、予め設定された制約条件に従って、ひとつの生産計画を選択させてもよい。予め設定された制約条件とは、「各暫定ロットの段取り総回数が最も少ない暫定ライン計画を選択する」、「複数の暫定ライン計画において、最も生産完了時刻が早い暫定計画ラインを選択する」等である。
【0084】
以上、本発明の一実施の形態を基に説明した。この実施の形態は、生産ラインで生産される製品の種類、組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば生産ラインは、生産物である電子機器を組み立てる組立生産ラインであっても、生産物である食品加工製品を製造する食品加工ラインであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の生産計画作成方法および生産計画作成装置ならびに生産方法は、生産効率の高い生産計画を作成することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0086】
3 管理コンピュータ(生産計画作成装置)
11 実装ヘッド
L1~L4 部品実装ライン(生産ライン)
M2 スクリーン印刷装置(印刷装置、生産設備)
M3~M6 部品実装装置(生産設備)
W 基板(ワーク)