(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】断熱シートおよびその製造方法、ならびに電子機器および電池ユニット
(51)【国際特許分類】
D06M 11/79 20060101AFI20240126BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20240126BHJP
C01B 33/16 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
D06M11/79
F16L59/02
C01B33/16
(21)【出願番号】P 2019099912
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】及川 一摩
(72)【発明者】
【氏名】和田 享
(72)【発明者】
【氏名】坂口 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】久保 隆志
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 崇
(72)【発明者】
【氏名】酒谷 茂昭
(72)【発明者】
【氏名】光明寺 大道
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159438(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0222116(US,A1)
【文献】特許第7065412(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第106747266(CN,A)
【文献】特開2020-128607(JP,A)
【文献】特開2020-060291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M10/00-11/84、16/00-16/00、19/00-23/18、
F16L59/00-59/22、
C01B33/00-33/193、
H01M10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ガラス組成物に炭酸エステルを加えて作製した塩基性ゾルを、不織布繊維に含浸させ、ヒドロゲル-不織布繊維の複合体を生成する複合体生成工程と、
前記複合体に含まれる液体を、前記液体の臨界温度未満および臨界圧力未満で乾燥することによって除去する乾燥工程と、を含み、
前記複合体生成工程における、水ガラス組成物中のSiO
2濃度が、14重量%以上22重量%以下である、断熱シートの製造方法。
【請求項2】
前記複合体生成工程における、前記炭酸エステルの添加量が、前記水ガラス組成物100重量部に対して、1~10重量部である、請求項1記載の断熱シートの製造方法。
【請求項3】
前記塩基性ゾルは、pH10以上である、請求項1または2記載の断熱シートの製造方法。
【請求項4】
前記不織布繊維が無機繊維である、請求項1~3のいずれか1項に記載の断熱シートの製造方法。
【請求項5】
前記炭酸エステルが、水に可溶であり、かつpH10以上の塩基性条件下で容易に加水分解して炭酸イオンとジオールとを生成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の断熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱シートおよびその製造方法、ならびにこれを用いた電子機器および電子ユニットに関する。特に、高い強度の断熱シートおよびその製造方法、ならびに電子機器および電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車載・産業機器分野において、狭小空間における発熱部品からの熱流制御や、製品の安全性、類焼防止性を担保するため、圧縮特性に優れた高性能な断熱シートが要求されている。こうした断熱シートは、例えば、リチウムイオン電池モジュールのセル間セパレータへの適用が期待される。
【0003】
リチウムイオン電池の安全規格では、耐類焼試験を行うこととなっている。耐類焼試験は、電池モジュール内のひとつのセルが熱暴走した際、隣接セルを含めた他セルへの熱連鎖による発火や破裂が生じるか否かを試験する方法である。隣接セルへの熱暴走を食い止めるため、熱絶縁性に優れた材料をセル間に挟む安全設計の考え方がある。理論上は、熱伝導率が高い材料でも、厚みを厚くすることで、ある程度、熱連鎖や類焼を防止することは可能である。
【0004】
しかしながら、電池モジュールは、機器内に設置するため、敷設する空間が限られており、寸法制限がある。したがって、モジュールの高容量化と共に、耐類焼化や小型化も両立させなければならない、といった難しさがある。
【0005】
これらを両立させるため、セル間セパレータには、薄くて高い断熱性を有する材料が望まれる。また、電池の充放電サイクルの過程で活物質が劣化、膨張してセルが膨らむことを想定すると、断熱シートが潰れにくい特性を併せ持つことも望まれる。電池モジュール初期組付時には、セル間セパレータである断熱シートにかかる荷重は1MPa以下と比較的小さい。
【0006】
一方で、電池が膨張すると断熱シートに最大5MPa程度もの荷重がかかることもあり得る。そのため、圧縮特性を考慮した断熱シートの材料設計が重要である。
【0007】
熱伝導率が小さい物質として、シリカエアロゲルが知られている。シリカエアロゲルは、数10nmオーダーのシリカ粒子が点接触で繋がったネットワーク構造からなり、その平均細孔径が空気の平均自由工程68nm以下である。つまり、静止空気の熱伝導率よりも低い。したがってシリカエアロゲルは優れた断熱材として注目されている。一方で、圧縮、曲げ、せん断などの各種変形モードに対する強度が極めて低い点が実用上のひとつの課題とされていた。
【0008】
発明者らは、シリカエアロゲルと不織布繊維とを複合化して取扱性を改善した、薄くて均質なシート状断熱材を考案している(特許文献1)。この薄型断熱シートは、取扱性に優れ、曲げには比較的強い。
【0009】
一方、エアロゲルを利用した高強度の断熱材として、疎水性のエアロゲル粒子と、セメント、石膏、石灰などの無機バインダーと、界面活性剤と、繊維などと、を含むスラリーを容器の中で成型、乾燥させた自立性硬質複合材も考案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6064149号公報
【文献】特許第5934400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の断熱シートを電池セルなどに挟み込んで使う場合、特に高荷重下においてはエアロゲルが圧縮されて潰れてしまい、低荷重時と比較して断熱効果が大きく低下してしまうことがあった。
よって、本開示の課題は、高荷重下においても使用できる断熱シートおよびその製造方法、ならびにこれを用いた電子機器および電池ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、水ガラス組成物に炭酸エステルを加えて作製した塩基性ゾルを、不織布繊維に含浸させ、ヒドロゲル-不織布繊維の複合体を生成する複合体生成工程と、上記複合体の中に含まれる液体を、上記液体の臨界温度未満および臨界圧力未満で乾燥することによって除去する乾燥工程と、を含む断熱シートの製造方法を用いる。
また、エアロゲルと不織布繊維とを含み、0.30~5.0MPaにおける圧縮歪が40%以下である断熱シートを用いる。
【0013】
さらに、発熱を伴う電子部品と筐体との間に、上記断熱シートを配置した電子機器を用いる。また、電池間に、上記断熱シートを配置した電池ユニットを用いる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の断熱シートは、5MPaにおける圧縮率が40%以下と潰れにくく、なおかつ5MPaで圧縮した時の熱抵抗が0.01m2K/W以上である。したがって、高温圧縮環境下においても効果的な熱伝達遅延効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態の炭酸エステルによる水ガラスのゲル化機構を説明する化学式の図
【
図2】実施の形態の断熱シートの製造方法のフロー図
【
図3】実施の形態の水ガラス組成物中のSiO
2濃度と断熱シートの圧縮率との関係を示す図
【
図4】実施の形態の水ガラス組成物中のSiO
2濃度と断熱シートの熱抵抗との関係を示す図
【
図5】実施の形態の水ガラス組成物中のSiO
2濃度と断熱シートの熱伝導率との関係を示す図
【
図6】実施の形態の水ガラス組成物中のSiO
2濃度と断熱シートのかさ密度との関係を示す図
【
図7】実施の形態の断熱シートの応用例としての電子機器の断面図
【
図8】実施の形態の断熱シートの応用例としての電池ユニットの断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本開示について、好ましい実施の形態を挙げて説明する。
<断熱シートの設計コンセプト>
シリカエアロゲルと不織布繊維とからなるエアロゲル複合断熱シートは、これまでいくつか知られている。その多くは取扱性が改善されつつある。しかし、これらは、5MPaの圧縮に耐えられる強度と、圧縮時における0.01m2K/W以上といった高い熱抵抗値とを持ち合わせていなかった。
【0017】
これに対し、本実施の形態の断熱シートは、高密度エアロゲルと不織布繊維との少なくとも2成分からなる断熱シートであり、その強度が高い。これは、連続する不織布繊維体の空隙に、緻密に隙間無く複合化された“高密度エアロゲル”によるものである。
【0018】
一般に、シリカエアロゲルとは、低密度シリカ多孔体のことを指し、そのかさ密度は、およそ0.3g/cm3未満である。その合成には、通常、アルコキシシランや水ガラスなどの低濃度シリカ原料と、鉱酸、塩基、有機酸などのゲル化剤と、が用いられる。従来、水ガラスをシリカ原料とする場合、エアロゲル合成際のシリカ濃度は6重量%以下という制約があった。なぜならば、ゲル化剤として鉱酸、塩基、有機酸などを加えると、珪酸ナトリウムの加水分解と脱水縮合とが急激に進行する。つまり、シリカ濃度が7重量%以上であると、反応速度が速すぎて不均一核生成を誘起し、均一なゲルを得ることができないためである。
【0019】
したがって、既存のシリカエアロゲルの合成方法では、シリカ濃度を高めることができず、高密度エアロゲルを得ること、さらにはエアロゲルの高密度化によってエアロゲルの強度を高めることもできなかった。これに対し、本実施の形態では、後述の方法で作製するため、エアロゲルを高密度化することが可能であり、高密度エアロゲルと不織布繊維とを含む断熱シートとすることができる。そして、当該製造方法によれば、以下の物性を有する断熱シートを得ることができる。
【0020】
<断熱シートの圧縮率>
5MPaで加圧したときの本実施の形態の断熱シートの圧縮率は、40%以下であり、30%以下であることがさらに好ましい。当該圧縮率は、卓上形精密万能試験機(例えば、オートグラフAGS-X(SHIMADZU製))により測定される値である。
【0021】
<断熱シートの熱抵抗>
5MPaで加圧したときの本実施の形態の断熱シートの熱抵抗は、0.010m2K/W以上であることが好ましく、0.015m2K/W以上であることがさらに好ましい。当該熱抵抗は、0.30MPa~5MPaで加圧したときの断熱シートの厚みを下記の熱伝導率で割ることで求められる値である。
【0022】
<断熱シートの熱伝導率>
本実施の形態の断熱シートの熱伝導率は、圧縮率の大きさにもより一概にはいえないが、100mW/mK以下であればよい。当該熱伝導率は、熱流計により測定される値である。
【0023】
<断熱シートのかさ密度>
本実施の形態の断熱シートのかさ密度は0.3g/cm3~0.6g/cm3であることが好ましい。
【0024】
<高密度エアロゲルの細孔特性>
本実施の形態の断熱シートを構成する高密度エアロゲルの比表面積は、300m2/g~600m2/gであることが好ましい。さらに、細孔容積は、1.5ml/g未満であることが好ましい。また、高密度エアロゲルの平均細孔径は10~70nmであることが好ましい。高密度エアロゲルの細孔特性は、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置により測定される値である。
【0025】
<断熱シートの厚さ>
本実施の形態の断熱シートの厚さは、0.03mm~3.0mmの範囲内にあることが好ましく、0.05mm~1.5mmの範囲内にあることがより好ましい。断熱シートの厚みが、0.03mmよりも薄い場合には厚さ方向の断熱効果が低下することがある。断熱シートが、真空に近いレベルの非常に低い熱伝導率を実現しなければ、その一方の面から他方の面への厚さ方向の伝熱を低減できない。また特に、断熱シートの厚みが、0.05mm以上厚いと、厚さ方向の断熱効果が確保できる。一方、断熱シートが、1.5mmよりも厚い場合、車載・産業機器への組み込みが難しいことがある。特に、車載分野では、3.0mmより厚くなると、機器への組み込みは一層難しくなる。
【0026】
<断熱シートにおける高密度エアロゲルの含有率(充填率)>
本実施の形態の断熱シートの重量に占める高密度エアロゲルの割合は、不織布繊維の目付け、かさ密度、厚みによって最適な範囲が異なるため、一概にはいえない。しかし、断熱シートの重量に占める高密度エアロゲルの割合は、少なくとも50重量%以上あればよい。割合が、50重量%未満の場合、熱抵抗が小さくなると同時に、断熱シートの強度を維持することができなくなる。又、割合が80重量%以下であればよい。割合が80重量%より高い場合、熱抵抗は上がるものの、柔軟性が不足し、繰り返しの使用により、高密度エアロゲルの脱落が起こる可能性がある。
【0027】
<断熱シートの原料>
以下、本実施の形態の断熱シートを得るための不織布繊維や、高密度エアロゲルの原料種等について説明する。
【0028】
(不織布について)
不織布繊維の目付
本実施の形態の断熱シートの製造に用いられる不織布繊維の目付けとしては、高密度エアロゲルの支持体として必要最低限の剛性を維持するため、5~200g/m2が好ましい。目付けは単位面積あたりの繊維の重量である。
【0029】
<不織布繊維のかさ密度>
不織布繊維のかさ密度は、実施の形態の断熱シートにおける高密度エアロゲルの含有率を高めて、より熱伝導率を低減させるという観点から、100~500kg/m3の範囲が好ましい。連続体として機械的強度が伴った不織布繊維を形成するためには、かさ密度は少なくとも100kg/m3あることが好ましい。また、不織布繊維のかさ密度が500kg/m3より大きい場合、不織布繊維中の空間体積が少なくなるため、充填することができる高密度エアロゲルが相対的に減り、熱抵抗値が小さくなりやすい。
【0030】
<不織布繊維の材質>
実施の形態の断熱シートの製造に用いられる不織布繊維の材質は、無機繊維系のグラスウール、グラスペーパー、ロックウール;樹脂系のポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);天然系の羊毛やセルロースなどを利用することができる。これらの中でも特に、無機繊維であることが好ましい。
【0031】
(高密度エアロゲル合成のための原料種、およびゲル化剤について)
<高密度エアロゲルの原料種>
高密度エアロゲルの原料には、アルコキシシラン、水ガラスなどの汎用的なシリカ原料が用いられる。本実施の形態では、シリカ濃度が所望の範囲となるように、シリカ原料に水を加え、シリカ原料を水に分散もしくは溶解させた、分散液あるいは溶液を使用する。
高密度エアロゲルにおける多孔質構造の緻密化や高密度化には、Naイオンが影響を与えていると考えられる。そこで、シリカ原料には、上記の中でもNaイオンを含む水ガラスが好適に用いられる。つまり、水ガラスを水に分散もしくは溶解させた水ガラス組成物が好適に用いられる。原料分散液あるいは溶液(特に水ガラス組成物)におけるシリカ濃度は、高密度のエアロゲルを合成するため高いほうが好ましく、14~22重量%であることが特に好ましい。
【0032】
<ゲル化剤およびその反応機構>
本実施の形態では、上記原料種をゲル化させるためのゲル化剤として、炭酸エステルを用いる。炭酸エステルは、一般に酸性環境下では変化し難いが、塩基性条件下では炭酸とアルコールに加水分解することが知られている。本実施の形態では、この加水分解により生成した炭酸をゲル化に利用している。
【0033】
発明者らは、シリカ濃度が8重量%以上である高濃度シリカ組成物(特に水ガラス組成物)を均一にゲル化した、新たなエアロゲルを合成するため、ゲル化剤の探索検討を鋭意進めた。その結果、炭酸エステル類が高濃度水ガラス原料を均一にゲル化させ、高密度エアロゲルの合成に好適であることを見出した。
【0034】
炭酸エステルによる水ガラスのゲル化機構について、炭酸エチレンを例に、
図1の化学反応式で説明する。
【0035】
第1ステップとして、pH10以上の塩基性である珪酸ナトリウム101の水溶液(水ガラス組成物)に炭酸エステルの一種である炭酸エチレン103を加え溶解させる。これにより、原料(水ガラス組成物)中のヒドロキシルイオン102が炭酸エチレン103のカルボニル炭素を求核的に攻撃し、炭酸エチレン103の加水分解が進行する。その結果、炭酸イオン(CO3
2-)104とエチレングリコール105と、が系中で生成する。
【0036】
第2ステップでは、珪酸ナトリウム101と炭酸イオン104とが反応して、珪酸の脱水縮合反応が進行する。このとき、炭酸ナトリウム107が副生する。シロキサン結合からなるネットワーク構造が発達すると、水ガラス組成物の流動性は消失しゲル化する。このようにしてヒドロゲル106が得られる。炭酸ナトリウム107の多くは、ヒドロゲル106中に残存する。
【0037】
以上のように、炭酸エステルをゲル化剤に用いた場合は、2段階で反応が進行するため、珪酸ナトリウム101の加水分解と脱水縮合反応の反応速度の制御が可能であり、均一なゲル化が達成できることが特徴である。
【0038】
炭酸エステルの具体例には、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸エチルメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどがある。いずれの炭酸エステルでも高濃度シリカ原料(水ガラス組成物)を均一にゲル化させることが可能であるが、炭酸エステルのアルキル鎖が長くなると疎水性が強くなり水に溶けにくくなる。したがって、炭酸エステルの水への溶解性と加水分解反応速度の観点から、水に対して比較的容易に溶解する、炭酸ジメチル、炭酸エチレンが好ましく用いられる。
【0039】
また、炭酸エステルの添加量を、シリカ原料(水ガラス組成物)の総量100重量部に対して、1.0~10.0重量部の炭酸エステルとすると、均一なゲルを作製することができる。
【0040】
なお、炭酸エステルは、水に溶解もしくは分散させた状態で、水ガラス組成物と混合してもよい。炭酸エステルのより好ましい添加量は、水ガラス組成物中のシリカ濃度やゲル化剤濃度によりゲル化時間が異なるが、生産性(後述の不織布への塩基性ゾルの含浸速度など)やゲル化剤コストの関係から、水ガラス組成物の総量100重量部に対して、3.0~6.0重量部であることがより好ましい。なお、炭酸エステルは、溶媒でなく、ゲル化剤である。
【0041】
<断熱シートの製造方法>
本実施の形態の断熱シートの製造方法の概略を
図2に示す。基本的な合成手順としては、(a)~(c)の3ステップから構成される。但し、ステップ(b)は必ずしも必要ではない。
【0042】
(a)複合体生成工程:
水ガラス組成物に炭酸エステルを混合して作製した塩基性ゾルを、不織布繊維に含浸させ、ゲル化させる。そして、塩基性ゾルを含浸させた不織布繊維をフィルムで挟んだ状態で2軸ロールなどを用いて厚み規制を行い、ヒドロゲル-不織布繊維の複合体を生成する。このとき、必要に応じてヒドロゲル-不織布繊維の複合体を水洗してもよいし、水洗しなくともよい。
【0043】
(b)置換工程:
5つのパターンがある。
<1>ステップ(a)で生成したヒドロゲル-不織布繊維の複合体を、塩酸に浸漬する。一定時間後、複合体を、シリル化剤に浸漬させて、恒温槽に入れて一定時間放置する。複合体から塩酸が排出され、2液分離する(上層にシロキサン、下層に塩酸水)。複合体を取り出し、次の乾燥工程をする。シリル化剤で、複合体中の水を除去する。
<2>ステップ(a)で生成したヒドロゲル-不織布繊維の複合体を、そのまま乾燥させる。この場合、置換工程をしないことを意味する。
【0044】
<3>ステップ(a)で生成したヒドロゲル-不織布繊維の複合体内部の水をアルコールやアセトンなどの表面張力の小さな両親媒性溶媒を用いて置換してから乾燥させる。
<4>ステップ(a)で生成したヒドロゲル-不織布繊維の複合体を一度塩酸水溶液に浸漬させた後、水洗処理し、そのまま乾燥させる。
<5>ステップ(a)で生成したヒドロゲル-不織布繊維の複合体を一度塩酸水溶液に浸漬させた後、
複合体内部の水をアルコールやアセトンなどの表面張力の小さな両親媒性溶媒を用いて置換してから乾燥させるがある。
【0045】
5つのパターンいずれでもよい。ただし、以下の場合がある。
【0046】
パターン2,3では、ヒドロゲルの液性がアルカリ性のため、加熱乾燥時に自己溶解・溶出が起こり、シリカの2次粒子接合部(ネック)が太くなる骨太化が起こり、熱伝導率が上昇する場合がある。
【0047】
パターン4,5では、ヒドロゲルの液性が酸~中性のため、加熱乾燥時の自己溶解を抑制し、熱伝導率の上昇を抑制することができることから、パターン2,3よりパターン4,5のほうが好ましい。
【0048】
パターン1は、工程が多く、時間も必要である。
(c)乾燥工程:
ステップ(b)で得られたヒドロゲル-不織布繊維の複合体中に含まれる液体を、当該液体の臨界温度および当該液体の臨界圧力未満で乾燥することによって除去する。
なお、ステップ(a)において、水ガラス組成物にゲル化剤として炭酸エステルを添加すると、珪酸の脱水縮合と供に、炭酸ナトリウムが生成し、当該炭酸ナトリウムがゲル中に取り込まれて非常に塩基性の強いヒドロゲルが得られることがある。そして、ステップ (b)において、このようなヒドロゲルを塩酸に浸漬させると、塩酸と炭酸ナトリウムの中和反応が起こり、急激に炭酸ガスが発生する。グラスペーパーのように、繊維同士の絡み合いが少ない不織布繊維を使用する場合は、この炭酸ガスの発生により、繊維シート内に気泡が多く発生することがある。そこで、塩酸に浸漬させる(ステップ(b))前に、水洗を行って、ヒドロゲル中の炭酸ナトリウムを除去しておいてもよい。
以下、本実施の形態を実施例に基づいて説明する。但し、本実施の形態は、下記実施例に限定されるものではない。すべての反応は、大気下で行われた。
【0049】
<評価>
実施例では、ゲル化剤として炭酸エチレンを用い、水ガラス組成物中のシリカ濃度を変えて断熱シートを作製した。そして、得られた断熱シートのかさ密度、熱伝導率、圧縮率、および熱抵抗値をそれぞれ以下の方法で評価した。
かさ密度は、得られた断熱シートの体積および重量から求めた。断熱シートの熱伝導率測定には、熱流計HFM436Lamda(NETZCH製)を用いた。断熱シートの圧縮率の測定には、卓上形精密万能試験機オートグラフAGS-X(SHIMADZU製)を 用いた。
【0050】
断熱シートの熱抵抗値は、加圧力5MPaのときの圧縮率から求めた断熱シートの厚みを熱伝導率で割ることで算出した。
各実施例、比較例の詳細の条件は以下で説明する。また、結果を、表1に示す。
各評価の合格基準は、以下のようにした。
【0051】
【0052】
WG;水ガラス,ECaq.;炭酸エチレン水溶液,GP;ガラスペーパー
(1)かさ密度評価
断熱シートのかさ密度は0.3g/cm3以上0.6g/cm3以下を合格とした。断熱シートのかさ密度が0.3g/cm3未満であると、断熱シートに加重をかけたときに潰れやすい。かさ密度が0.6g/cm3より大きいと、加重に対して潰れにくくなるが、熱伝導率が高くまた熱抵抗が小さくなる。このため、圧縮時に断熱シートに熱連鎖が起きやすくなる。
【0053】
(2)熱伝導率評価
断熱シートの熱伝導率は、100mW/mK以下を合格とした。断熱シートの熱伝導率が100mW/mKより高いと、熱抵抗が小さくなるため、圧縮時に熱連鎖が起きやすくなる。
【0054】
(3)圧縮率評価
5.0MPaにおける断熱シートの圧縮率は、40%以下を合格とした。高負荷時においても、効果的に熱連鎖を抑制するためには、断熱シートが圧縮にある程度耐えて、固体の伝熱成分の増加を抑制する必要がある。5.0MPaにおける断熱シートの圧縮率が、40%より高いと従来の断熱シートに対する優位性が損なわれる。
【0055】
(4)熱抵抗値評価
5.0MPaで圧縮した時の断熱シートの熱抵抗値が0.01m2K/W以上である場合を合格とした。熱抵抗値を評価する際、実際に荷重を加え、熱伝導率を測定すればよい。しかし、特に荷重が高い場合、圧縮により潰れ、圧縮時における熱伝導率を測定することは難しい。そこで、圧縮率から求めた断熱シートの厚みと、熱流計HFMで測定した熱伝導率との実測値から熱抵抗値を算出して比較評価した。5.0MPaにおける熱抵抗値が0.01m2K/W未満では、圧縮時において、熱連鎖が起きやすくなる。
【0056】
(5)総合評価
全てを満足する条件を総合評価として合格とした。
【0057】
<実施例1>:(b)置換工程の<1>
水ガラス原料を蒸留水で希釈して調製した水ガラス組成物100重量部(20.5g)(シリカ濃度14重量%)に、炭酸エチレン(白色結晶)の水溶液を6 重量部(炭酸エチレンの量:1.23g)添加してよく攪拌、溶解させて塩基性ゾル(以下、「ゾル溶液」とも称する)を調製した。
【0058】
次いで、ゾル溶液を不織布繊維(材質;グラスペーパー,厚み0.63mm、目付100g/m2、寸法12cm角)に注ぐことで、ゾル溶液を不織布繊維に均一に含浸させた。ゾル溶液を含浸させた不織布をPPフィルム(厚み50um×2枚) に挟み、室温23℃で3分放置してゾルをゲル化させた。ゲル化を確認後、ギャップを1.00mm(フィルム厚込み)に設定した2 軸ロールにフィルムごと含浸不織布を通して、不織布から余分なゲルを絞りだして厚み1.00mm狙いで規制した。
【0059】
次に、フィルムを剥がしてゲルシートを塩酸6規定に浸漬後、常温23℃で10分放置してゲルシートの中に塩酸を取り込ませた。次いで、ゲルシートを、シリル化剤であるオクタメチルトリシロキサンと2-プロパノール(IPA)との混合液に浸漬させて、55℃の恒温槽に入れて2時間反応させた。トリメチルシロキサン結合が形成され始めると、ゲルシートから塩酸水が排出され、2液分離した状態となった(上層にシロキサン、下層に塩酸水、2-プロパノール)。ゲルシートを150℃設定の恒温槽に移して大気雰囲気下2 時間乾燥させることで断熱シートを得た。
【0060】
この断熱シートの熱伝導率、圧縮特性を評価した結果、圧縮率は35.8%、熱抵抗値は0.02m2K/Wであり、総合評価として合格であった。
【0061】
<実施例2>:(b)置換工程の<1>
水ガラス組成物中のシリカ濃度を20重量%、また炭酸エチレン水溶液の添加量を3重量部に変更した以外は、実施例1と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は21.3%、熱抵抗値は0.015m2K/Wであり、総合評価として合格であった。
【0062】
<実施例3>:(b)置換工程の<1>
炭酸エチレン水溶液の添加量を6重量部、グラスペーパーを厚み1.08mm、目付170g/m2、寸法12cm角に変更した以外は、実施例2と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は5.4%、熱抵抗値は0.022m2K/Wであり、総合評価として合格であった。
【0063】
<実施例4>:(b)置換工程の<2>
疎水化処理を行わない、すなわち、フィルムを剥がした後、そのまま乾燥させたこと以外は、実施例3と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は7.2%、熱抵抗値は0.012m2K/Wであり、総合評価として合格であった。
【0064】
<実施例5>:(c)置換工程の<3>
疎水化処理を行わない、すなわち、フィルムを剥がした後、シート中の水を2-プロパノール(IPA)で置換(23℃、10分、200ml×2回)、そのまま乾燥させたこと以外は、実施例3と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は6.1%、熱抵抗値は0.016m2K/Wであり、総合評価として合格であった。
【0065】
<実施例6>::(b)置換工程の<4>
疎水化処理を行わない、すなわち、6規定塩酸に浸漬した後、シート中の塩酸を蒸留水で置換(23℃、10分、200ml×2回)、そのまま乾燥させたこと以外は、実施例3と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は8.6%、熱抵抗値は0.017m2K/Wであり、総合評価として合格であった。
【0066】
<実施例7>:(b)置換工程の<5>
疎水化処理を行わない、すなわち、6規定塩酸に浸漬した後、シート中の塩酸を蒸留水で置換(23℃、10分,200ml×2回)、さらにシート中の水を2-プロパノール(IPA)で置換(23℃、10分、200ml×1回)後、そのまま乾燥させたこと以外は、実施例3と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は7.9%、熱抵抗値は0.017m2K/Wであり、総合評価として合格であった。
【0067】
<比較例1>
水ガラス組成物中のシリカ濃度を6重量%に変更した以外は、実施例1と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は72.5%、熱抵抗値は0.013m2K/Wであり、総合評価として不合格であった。
【0068】
<比較例2>
水ガラス組成物中のシリカ濃度を8重量%に変更した以外は、実施例1と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は67.3%、熱抵抗値は0.015m2K/Wであり、総合評価として不合格であった。
【0069】
<比較例3>
水ガラス組成物中のシリカ濃度を10重量%に変更した以外は、実施例1と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は63.8%、熱抵抗値は0.015m2K/Wであり、総合評価として不合格であった。
【0070】
<比較例4>
水ガラス組成物中のシリカ濃度を12重量%に変更した以外は、実施例1と同様のプロセス条件にてシートを作製した。この断熱シートを評価した結果、圧縮率は52.4%、熱抵抗値は0.016m2K/Wであり、総合評価として不合格であった。
【0071】
<各項目ごとの評価>
断熱シートの圧縮率
5MPaで加圧したときの実施の形態の断熱シートの圧縮率は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
図3は、各実施例および比較例で作製した断熱シートを5MPaで加圧した時の圧縮率と、水ガラス組成物中のシリカ濃度との関係を示すグラフである。圧縮率が40%より大きいと圧縮時における熱連鎖を抑制することが難しい。圧縮率が40%以下であれば、圧縮時における熱連鎖を効果的に抑制することができる。
【0072】
断熱シートの熱抵抗
5MPaで加圧したときの本実施の形態の断熱シートの熱抵抗は、0.010m
2K/W以上であることが好ましく、0.015m
2K/W以上であることがさらに好ましい。
図4は、各実施例および比較例で作製した断熱シートを5MPaで加圧したときの熱抵抗と、水ガラス組成物中のシリカ濃度との関係を示すグラフである。熱抵抗が0.010m
2K/W未満の場合、圧縮時における熱連鎖を抑制することが難しい。熱抵抗が0.015m
2K/W以上であれば、圧縮時における熱連鎖を効果的に抑制することができる。
【0073】
断熱シートの熱伝導率
本実施の形態の断熱シートの熱伝導率は、圧縮率の大きさにもより一概にはいえないが、100mW/mK以下であればよい。
図5は、各実施例および比較例で作製した断熱シートの熱伝導率と、水ガラス組成物中のシリカ濃度との関係を示すグラフである。熱伝導率が100mK/Wより大きい場合、圧縮時における熱連鎖を抑制することが難しい。
【0074】
断熱シートのかさ密度
本実施の形態の断熱シートのかさ密度は0.3~0.6g/cm
3であることが好ましい。
図6は、各実施例および比較例で作製した断熱シートについて、横軸に断熱シート作製時の水ガラス組成物中のシリカ濃度、縦軸に得られた断熱シートのかさ密度をプロットしたものである。
【0075】
図6より、炭酸エチレンを用いた場合、シリカ濃度の増加と共に、断熱シートのかさ密度は増加する傾向にある。かさ密度0.3g/cm
3未満の場合、高い荷重を加えると潰れやすくなる。そのため、圧縮率が大きく、熱抵抗が小さくなってしまう。また、かさ密度が0.6g/cm
3より大きい場合、シリカ一次粒子の著しい粗大化やエアロゲル自体の収縮が起きるため、無負荷時においても期待する熱抵抗値が得られない。
【0076】
<結果のまとめ>
上述したように、実施例1~7では、シリカ濃度14~20重量%の水ガラス組成物と炭酸エチレンとを用いて断熱シートを作製した。その結果、5.0MPaにおける圧縮率はいずれも40%以下と小さく、また熱抵抗値はいずれも0.01m2K/W以上であった。実施例4~7に示すように、疎水化処理をしなくても、圧縮率と熱抵抗を満足した。一方、比較例1~4では、シリカ濃度6~12重量%の水ガラス組成物と炭酸エチレンとを用いて断熱シートを作製した。その結果、5.0MPaにおける圧縮率はいずれも40%より大きかった。
【0077】
以上の結果より、シリカ濃度14~20重量%の水ガラス組成物と炭酸エステルとを用いて合成される高密度エアロゲル-不織布繊維からなる断熱シートは、高強度断熱シートとして優れており、高負荷条件でも熱連鎖を抑制するのに効果的であることが判明した。
【0078】
<その他>
断熱シートは、エアロゲルと不織布繊維とを主成分として含み、他の化合物を主成分として含まない。エアロゲルと不織布繊維との合計が、断熱シート全体の重量の90重量%以上である。
【0079】
一般に、シリカエアロゲルとは、低密度シリカ多孔体のことを指し、そのかさ密度は、およそ0.3g/cm3未満である。こうした低密度シリカ多孔体を得るには、乾燥時の不可逆的収縮を防ぐために、通常ステップ(a)の後工程において、疎水(撥水)化処理を行うのが普通である。しかしながら、本発明の製造方法では、シリカ濃度を14~22重量%と通常よりも高くし乾燥時の毛細管力に耐えうる強度を付与しているため、疎水(撥水)化処理を行わなくても所望の断熱シートを得ることができる。
【0080】
図7に、実施の形態の断熱シートの応用例1を示す。
図7は、発熱を伴う電子部品12と筐体11とを有する電子機器の構成を概略的に示す図である。実施の形態の断熱シート10は当該電子機器において、発熱を伴う電子部品12と筐体11との間に、配置できる。実施の形態の断熱シート10は、電子部品12の熱を筐体11へ伝達しない。尚、電子部品12は、基板13上に実装されている。また、断熱シート10は、表面を覆うカバーで被覆されてもよい。断熱シート10は、熱伝導性材料、たとえば、グラファイトシートで積層されてもよい。
【0081】
図8に、実施の形態の断熱シートの応用例2を示す。
図8は、自動車等に用いる、複数の電池を有する電池ユニットの図である。このような電池ユニットにおいて、電池15間に、上記の実施の形態のいずれかの断熱シート10を配置すれば、電池15間の断熱だけでなく、類焼防止もでき、好ましい。電池15は自動車用に限定されない。電池15は、各種移動体の電池、自宅蓄電装置の電池でもよい。断熱シート10は、他のシートなどと複合化されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本実施の形態の圧縮強度を向上させた、高密度エアロゲルと不織布繊維の少なくとも2成分からなる断熱シートは、電子機器、車載機器、産業機器内の狭いスペースにおいても十分に断熱効果を発揮し得ることから広く利用される。情報機器、携帯機器、ディスプレイ、電装品など、熱に関わる全ての製品へ応用される。
【符号の説明】
【0083】
10 断熱シート
11 筐体
12 電子部品
13 基板
15 電池
101 珪酸ナトリウム
102 ヒドロキシルイオン
103 炭酸エチレン
104 炭酸イオン
105 エチレングリコール
106 ヒドロゲル
107 炭酸ナトリウム