(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】モールドモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/08 20060101AFI20240126BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20240126BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H02K5/08 A
H02K3/34 Z
H02K3/46 B
(21)【出願番号】P 2020519575
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2019018312
(87)【国際公開番号】W WO2019220956
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018095231
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】南部 靖生
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 康一
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-261935(JP,A)
【文献】実開昭56-171555(JP,U)
【文献】特開平05-300699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/08
H02K 3/34
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延伸する回転軸と、永久磁石を保持して前記回転軸に固定されるロータコアと、を有するロータと、
複数の突極が周方向に並ぶステータコアと、前記ステータコアの突極ごとにインシュレータを介して巻回された複数のコイルと、を有し、
前記ロータに対向して配置されるステータと、
前記ロータを回転自在に支持する軸受と、
前記ステータをモールド樹脂で覆うモールド樹脂部と、
前記モールド樹脂部の外側表面に設けられ、円筒状の円筒部と、前記円筒部の底面を成す底面部と、を含む金属部材と、
前記モールド樹脂部と前記金属部材との間に位置し、少なくとも一部の面が、前記周方向に並ぶ前記複数のコイルに対向する部位に配置される絶縁材と、
を備え、
前記絶縁材は、前記底面部に穴を有したカップ形状を成し、前記金属部材の内側表面と前記モールド樹脂部の外側表面との間に挟まれ、前記モールド樹脂部よりも高い電気的絶縁性を有する、
モールドモータ。
【請求項2】
前記複数のコイルの各々は、前記ステータコアから前記軸方向の両側に突出したコイルエンドを含み、前記円筒部は、前記モールド樹脂部の外周表面において、少なくとも前記両側に突出したコイルエンドに対向する部位に位置する、請求項1に記載のモールドモータ。
【請求項3】
前記複数のコイルの各々は、前記ステータコアから前記軸方向の両側に突出したコイルエンドを含み、前記円筒部は、前記モールド樹脂部の外周表面において、少なくとも前記両側に突出したコイルエンドの一方に対向する部位に位置する、請求項1に記載のモールドモータ。
【請求項4】
円筒状の内側金属部材をさらに備え、
前記内側金属部材は、前記モールド樹脂部の内部であって、少なくとも前記両側に突出し
たコイルエンドの他方に対向する部位に位置する、請求項3に記載のモールドモータ。
【請求項5】
前記金属部材と前記内側金属部材とは、前記軸方向に沿って重なり部分を含むとともに、前記軸方向と交差する方向において互いに離間して配置されている、請求項4に記載のモールドモータ。
【請求項6】
前記内側金属部材は、前記モールド樹脂部の内部に設けられ、前記軸方向の両側に突出した前記コイルエンドのうちの一方のコイルエンドを前記周方向に亘って囲むように、前記一方のコイルエンドに対向する大径部と、
前記大径部よりも小さい内径であり、前記ステータコアの外周表面を前記周方向に亘って囲むように、前記ステータコアに対向する小径部と、を有する、請求項4に記載のモールドモータ。
【請求項7】
前記金属部材は前記モールド樹脂部の外周表面に装着され、
前記金属部材は、前記軸方向の両側に突出した前記コイルエンドのうちの他方のコイルエンドを少なくとも前記周方向に亘って囲むように、前記モールド樹脂の外表面に装着される、請求項6に記載のモールドモータ。
【請求項8】
前記絶縁材は、中心に穴が開いた円盤状を成し、
前記絶縁材は、前記底面部の内側表面と、前記モールド樹脂部の外側表面との間に挟まれるように配置される、請求項1に記載のモールドモータ。
【請求項9】
前記絶縁材は、帯状を成し、
前記絶縁材は、前記円筒部の内側表面と、前記モールド樹脂部の外側表面との間に挟まれるように配置される、請求項1に記載のモールドモータ。
【請求項10】
前記絶縁材は、切込みを有し、
前記モールド樹脂部は、前記切込みに一致するように突起する突起部を有する、請求項1に記載のモールドモータ。
【請求項11】
前記絶縁材は、切込みを有し、
前記モールド樹脂部は、前記切込みに一致するように突起する突起部を有する、請求項8に記載のモールドモータ。
【請求項12】
前記絶縁材は、切込みを有し、
前記モールド樹脂部は、前記切込みに一致するように突起する突起部を有する、請求項9に記載のモールドモータ
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータをモールド樹脂で覆ったモールドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの低騒音、低振動化のために、ステータをモールド樹脂で覆った構造のモータであるモールドモータが知られている。このようなモールドモータは、近年のモータの高出力化等に伴い、ステータコアに巻回されたコイルの発熱が大きくなっている。これにより、モールド樹脂が熱劣化するという問題が生じている。
【0003】
このようなモールド樹脂の熱劣化を防止するために、特許文献1には、モールド樹脂に、高い熱伝導率を有する充填剤を含有させたエポキシ樹脂を用いることが開示されている。これにより、モールド樹脂の放熱性が高まり、熱劣化を防止することができる。
【0004】
また、モールドモータにおける電気的絶縁性の向上を図る技術が提案されている。例えば、特許文献2には、樹脂でモールド成型する場合に生じたボイド(空洞)が電気的絶縁性に影響するため、ボイドの発生を抑制して、絶縁耐力を高めたモータが開示されている。また、特許文献3には、周囲を取り巻く絶縁樹脂の厚みに関して、絶縁耐圧を満足する構成としたモータのステータが開示されている。しかしながら、何らかの原因で、ステータコアに巻回されたコイルに過大な電流が流れて、コイルが発熱して高温になった場合、コイルの導線の外周表面を絶縁する絶縁体が溶けて、コイルの導線どうしが短絡するおそれがある。もし、導線どうしが短絡して火花が発生すると、コイルとステータコアとの間に設けられた絶縁樹脂等が熱せられて生じたガスに、火花が引火するおそれがある。さらに、コイルの発熱によりモールド樹脂が熱劣化して、モールド樹脂にひび割れ等が生じていると、引火した火花が、モールド樹脂のひび割れた箇所から、モータ外部に洩れ出るおそれがある。
【0005】
また、電気的絶縁性を確保するため、特許文献2または特許文献3のように、樹脂が充填されない空間またはボイドの発生に対し、構造的な変更により改善する手法では、電気的絶縁性が確保できたとしても、その変更内容が強度または電気的特性に影響し、強度または電気的特性の劣化を招くおそれがある。さらに、特許文献2または特許文献3では、射出成型時に注入するときの樹脂または空気の流れを構造変更により制御する手法であるため、製造工程にも影響し、容易には導入できないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-143368号公報
【文献】特開2005-176482号公報
【文献】特開2005-143206号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、電気的絶縁性を確保しながら、モータ外形の寸法増加を抑えるとともに、万一、ステータコアに巻回されたコイルに過大な電流が流れた場合でも、モータ外部に火が洩れ出ることを防止できるモールドモータを提供することにある。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のモールドモータは、ロータと、ロータに対向して配置されるステータと、ロータを回転自在に支持する軸受と、ステータをモールド樹脂で覆うモールド樹脂部と、モールド樹脂部の外側表面に装着される金属部材と、モールド樹脂部と金属部材との間に位置する絶縁材と、を備える。
【0009】
ロータは、軸方向に延伸する回転軸と、永久磁石を保持して回転軸に固定されるロータコアと、を有する。ステータは、複数の突極が周方向に並ぶステータコアと、ステータコアの突極ごとにインシュレータを介して巻回された複数のコイルと、を有する。
【0010】
金属部材は、円筒状の円筒部と、円筒部の底面を成す底面部と、を含む。絶縁材は、絶縁材の少なくとも一部の面が、周方向に並ぶ複数のコイルに対向する部位に配置される。
【0011】
本発明によれば、電気的絶縁性を確保しながら、モータ外形の寸法増加を抑えるとともに、万一、ステータコアに巻回されたコイルに過大な電流が流れた場合でも、モータ外部に火が洩れ出ることを防止できるモールドモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1におけるモータの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1におけるモータの半断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1における他のモータの分解斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施の形態1におけるモータのコイル組立、金属外カバーおよび絶縁フィルムの配置関係を示す要部断面図である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aに示すモータと比較する比較例を示す、モールドモータの要部断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態1におけるモータのコイル組立、金属外カバーおよび絶縁フィルムの分解斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態2におけるモータの半断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態2におけるモータのコイル組立、金属内カバー、金属外カバーおよび絶縁フィルムの配置関係を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の変形例1におけるモータのステータと、絶縁フィルムと、金属外カバーとを示す分解斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の変形例2におけるモータのステータと、絶縁フィルムと、金属外カバーとを示す分解斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の変形例3におけるモータのステータと、絶縁フィルムと、金属外カバーとを示す分解斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の変形例3における他のモータのステータと、絶縁フィルムと、金属外カバーとを示す分解斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の変形例4におけるモータのステータと、絶縁フィルムと、金属外カバーとを示す分解斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明の変形例5におけるモータのステータと、絶縁フィルムと、金属外カバーとを示す分解斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明の変形例6におけるモータの半断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の変形例6におけるモータのコイル組立、金属外カバーおよび絶縁フィルムの配置関係を示す要部断面図である。
【
図21】
図21は、本発明の変形例6におけるモータのコイル組立、金属外カバーおよび絶縁フィルムの他の配置関係を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を説明する前に、本発明を想到するに至った経緯を説明する。
【0014】
ステータコアに巻回されたコイルに過大な電流が流れたとき、モータ外部に火が洩れ出ることを防止する対策(不燃対策)として、本願の発明者等は、ステータコアから軸方向に突出したコイルエンドに着目した。
【0015】
すなわち、ステータコアに巻回されたコイルは、ステータコアから軸方向に突出したコイルエンド以外は、ステータコアに囲まれている。そのため、引火した火がモータ外部に洩れ出るおそれはほとんどない。一方、コイルエンドは、ステータコアからはみ出しているため、モールド樹脂と接触している。そのため、コイルエンドと接触したモールド樹脂の近傍に、ひび割れ等が生じていると、引火した火が、モールド樹脂のひび割れた箇所から、モータ外部に洩れ出るおそれがある。
【0016】
そこで、本願の発明者等は、不燃対策として、モールド樹脂の外表面において、コイルエンドに対向する部位に、金属部材を設けることによって、モールド樹脂のひび割れた箇所から洩れ出る火を、金属部材で遮断できることに気づいた。
【0017】
ところで、モールド樹脂の外表面に、金属部材を設けると、金属部材とコイルとの間で耐え得ることが可能な最大電圧、すなわち絶縁耐圧が問題となる。絶縁耐圧は、電気用品安全法で定められている。一方、本発明のようなモールドモータの小型化を図ろうとする場合、モールド樹脂の薄肉化が考えられるが、上述のような絶縁耐圧を確保する必要がある。
【0018】
特に、モールドモータを形成する手法としては、一般的には、金型内にステータなどを固定し、溶かしたモールド樹脂を金型内に充填して成型する手法がある。この場合、溶融したモールド樹脂を金型内に流し込むときに気泡が発生し、完成した固形のモールド樹脂内に、いわゆるボイドと呼ばれる微小空間として残ることがある。そして、ボイドまたは樹脂の充填が不十分な空間が、絶縁破壊電圧を下げるように作用し、電気的絶縁性に影響することが知られている。
【0019】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、電気的絶縁性を確保しながら、モータ外形の寸法増加を抑えるとともに、万一、ステータコアに巻回されたコイルに過大な電流が流れた場合でも、モータ外部に火が洩れ出ることを防止できるモールドモータを提供するものである。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0021】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるモータ(以下、適宜、モールドモータとも呼ぶ)100の分解斜視図である。
図2は、同モータ100の半断面図である。
図3は、
図2における3-3線矢視平面断面図である。
【0023】
図1から
図3に示すように、モータ100は、ロータ20と、ステータ10と、軸受30と、モールド樹脂部19と、金属部材である金属外カバー31と、絶縁材である絶縁フィルム32と、を備える。
【0024】
ロータ20は、軸方向Xに延伸する回転軸21と、ロータコア23と、を有する。ロータコア23は、永久磁石(以下、適宜、磁石とも呼ぶ)24を保持して、回転軸21に固定される。
【0025】
ステータ10は、複数の突極であるトゥース(複数であることを示すためにティースとも呼ぶ)11tが周方向Zに並ぶステータコア11と、ステータコア11の突極であるトゥース11tごとにインシュレータ13を介して巻回された複数のコイル12と、を有する。ステータ10は、ロータ20に対向して配置される。
【0026】
軸受30は、ロータ20を回転自在に支持する。モータ100では、一対の軸受30を用いている。なお、片持ちの軸受を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0027】
モールド樹脂部19は、ステータ10をモールド樹脂で覆っている。
【0028】
金属部材である金属外カバー31は、モールド樹脂部19の外側表面に装着される。金属外カバー31は、円筒状の円筒部31cと、円筒部31cの底面を成す底面部31aと、を含んでいる。
【0029】
絶縁材である絶縁フィルム32は、モールド樹脂部19と金属部材である金属外カバー31との間に位置する。絶縁フィルム32は、少なくとも一部の面が、周方向Zに並ぶ複数のコイル12に対向する部位に配置される。
【0030】
特に、顕著な作用効果を奏する構成は、以下のとおりである。
【0031】
本実施の形態におけるモータ100において、複数のコイル12の各々は、ステータコア11から軸方向Xの両側に突出したコイルエンド12aを含む。金属部材である金属外カバー31が含む円筒部31cは、モールド樹脂部19の外周表面において、少なくとも両側のコイルエンド12aに対向する部位に位置している。
【0032】
絶縁材である絶縁フィルム32は、底面部に穴が開いたカップ形状を成している。絶縁フィルム32は、金属外カバー31の内側表面と、モールド樹脂部19の外側表面との間に挟まれるように配置されている。
【0033】
図面を用いて、さらに詳細に説明する。
【0034】
図1に示すように、モータ100は、永久磁石を含むロータ20を備える。モータ100は、ステータ10においてコイル組立をモールド樹脂で覆ったブラシレスモータである。本実施の形態では、ブラシレスモータの一例として、モータ100を挙げて説明する。
図2で示すように、回転軸21が延伸するXで示した方向を軸方向とする。この軸方向Xに直交する面において、
図3に示すように、回転軸21の中心のXから広がるYの方向を径方向、中心のXを周回するZの方向を周方向として説明する。
【0035】
本実施の形態では、コイルに過大な電流が流れるなどの不具合に起因して、モータ100の本体から外部に火または煙が洩れ出ることを防止するため、不燃対策としての金属部材をモールド樹脂に対して設けている。具体的には、金属部材として、金属製の金属外カバー31を用いている。金属外カバー31は、カップ形状をなしている。
【0036】
図1および
図2に示すように、モータ100は、コイル12と金属外カバー31との間の絶縁耐圧を確保するため、モールド樹脂部19の外側表面と金属外カバー31の内側表面との間に、絶縁材である絶縁フィルム32を挟む。
【0037】
モータ100の全体構成について説明する。
図1に示すように、モータ100は、モールド樹脂であるモールド樹脂部19に覆われたステータ10と、ロータ20と、一対の軸受30である軸受30A、30Bと、金属部材である金属外カバー31と、絶縁材である絶縁フィルム32とを備えている。さらに、モータ100は、回路基板34と、第1のブラケット35と、を備えている。
【0038】
図2に示すように、ステータ10は、ステータコア11、コイル12およびインシュレータ13を含むコイル組立14を備えている。コイル組立14は、絶縁材料からなるインシュレータ13を介しながら、ステータコア11が有する突極に、コイル12を巻回して組み立てられている。
【0039】
ステータコア11は、例えば複数枚の薄い鉄板を軸方向Xに積層して構成される。
図3に示すように、ステータコア11は、リング状のヨーク11yと、ヨーク11yの内周面から径方向Y内側に向かって延出する突極としての複数のティース11tとを有する。複数のティース11tは、開口部であるスロット11sを互いの間に形成しながら、それぞれが周方向Zに等間隔に配置される。本実施の形態では、複数のティース11tを用いて、スロット数を12スロットとした例を示している。なお、以下の説明において、ティース(teeth:toothの複数形)あるいはトゥース(tooth)という用語の使い分けを行っている。具体的には、ステータコア11の中心方向に突出する複数の突極は、ティースと記し、複数の突極のうちの一つの突極については、トゥースと記す。
【0040】
各トゥース11tの延出した先端箇所には、延出するトゥース中間部11taよりも幅広となるように、周方向Zに広がるトゥース先端部11tbが形成されている。トゥース先端部11tbの内周面が、ロータ20の外周表面に対向する磁極面である。このような構成のステータコア11に対し、スロット11sの開口スペースに巻線12wを通しながら、それぞれのトゥース11tにその巻線12wを巻回することでコイル12が形成される。コイル12間は、コイル12どうしを連絡する渡り線によって接続されている。また、所定のコイル12の線端末が、インシュレータ13に取り付けたピン(図示せず)に接続されている。ここで、ピンは、電気接続端子用としての金属製の電気接続部材である。ピンの先端が、駆動用の端子として、端子キャップから突出している。トゥース11tごとのコイル12が、例えば、互いに電気的に120度位相が異なるU相、V相およびW相とする3相の交流で通電駆動される。
【0041】
さらに、
図2に示すように、ステータ10は、ステータ10の本体部から突出するように配置した第2のブラケット15を備えている。ステータ10は、コイル組立14、第2のブラケット15および端子キャップ36を所定の位置に配置し、一部の露出箇所を除き、これら部材を樹脂材料により覆うようにモールド樹脂で一体成型される。ここで、樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、熱伝導性に優れたエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。
【0042】
このようにして、これら部材をモールド樹脂で一体化したモールド樹脂部19を含むステータ10が構成される。このように構成されたステータ10は、実質的に円筒状の形状を成す。その円筒面には、配線ホルダ18を装着するための配線孔なども形成されている。上記露出箇所として、各トゥース11tの内周面および端子キャップ36の端子面が、モールド樹脂部19から露出している。さらに、ステータ10が有する円形両面のうち、一方の面は開口しており、その開口に蓋をするように第1のブラケット35が装着され、他方の面は閉じており、上述のように第2のブラケット15が突出するように配置されている。なお、ステータ10の構成については、以下で詳細に説明する。
【0043】
図1から
図3に示すように、ステータ10の内側には、径方向Yに所定の間隔をあけて、ロータ20が挿入されている。すなわち、モータ100は、ステータ10の内側にロータ20を配置したインナロータ型のモータである。モータ100は、ステータ10の内周面とロータ20の外周面とがわずかな空隙120を介して径方向Yに対面している。以下、インナロータ型であるモータ100の例を挙げて説明する。
【0044】
ロータ20は、一対の軸受30によって回転自在に保持された回転軸21を中心として、永久磁石24を保持するロータコア23を備えている。ここで、一対の軸受30は、
図2に示すように、複数の小径のボール30bを有したボールベアリングである。すなわち、各軸受30は、環状の外輪30oとそれよりも小さい環状の内輪30iとの間に、これらボール30bが挿入された構成である。一対の軸受30のうちの一方の軸受30Aの外輪30oが第1のブラケット35により、他方の軸受30Bの外輪30oが第2のブラケット15により固定されている。そして、軸受30A、30Bの各々の内輪30iに回転軸21が固定されている。
【0045】
ロータコア23は、例えば複数枚の薄い鉄板を軸方向Xに積層して構成され、回転軸21に固定されている。磁石24は、永久磁石であり、ロータコア23の内部に配設されている。
【0046】
図3に示すように、ロータコア23には、軸方向Xに貫通する複数の磁石挿入孔23cが、周方向Zに等間隔で形成されている。各磁石挿入孔23cには、磁石24が1つずつ挿入されている。本実施の形態では、ロータコア23の内部に磁石24を内包したIPM(Interior Permanent Magnet:内部磁石埋込)型のモータ100を示している。また、磁石24のS極とN極との磁極が周方向Zに交互となるように10個の磁石24を配置し、磁極数を10極とした例が示されている。すなわち、本実施の形態では、モータ100が10極、12スロットのブラシレスモータである例を挙げている。なお、本実施の形態では、インナロータ型のモータ100を挙げて説明するが、
図4に示すように、ロータコア23の外周表面に磁石24を保持するロータ50を有した表面磁石型(Surface Permanent Magnet Motor Type:SPM型)のモータ101であってもよい。
図4は、本発明の実施の形態1における他のモータの分解斜視図である。
【0047】
以上のように、ロータ20は、
図1に示すような円柱形状を成すロータコア23と、ロータコア23内に保持された複数の磁石24と、ロータコア23の中央を貫通する回転軸21とによって構成されている。
【0048】
回転軸21は、軸受30A、30Bによって回転自在に支持される。軸受30A、30Bが、ステータ10の軸方向X両側にそれぞれ配置される金属製の第1のブラケット35、第2のブラケット15を介して、固定されている。
【0049】
図1および
図2に示すように、第1のブラケット35は、実質的な円盤形状を成しており、ステータ10の開口側に装着可能なように構成されている。さらに、第1のブラケット35の中央部には、円筒状に窪む保持部35aが形成されており、保持部35aに軸受30Aが保持される。すなわち、ステータ10に対して、軸受30Aを保持部35aに挿入した第1のブラケット35を装着することで、回転軸21の一方側が回転自在に支持される。また、
図2に示すように、保持部35aの中央に開口35bが形成されており、回転軸21が開口35bを貫いて外側方向に突出している。回転軸21の突出した箇所が、負荷などを接続するための出力軸21pとなる。なお、以下、軸方向Xにおいて、出力軸21pが配置される側を出力軸側、その反対側を反出力軸側と呼び、説明する。
【0050】
第2のブラケット15は、第1のブラケット35よりも径が小さく、円盤および円筒を組み合わせた形状を成している。上述したモールド成型により、第2のブラケット15は、ステータ10のモールド樹脂部19に固定されている。第2のブラケット15の中央部にも、円筒状に窪む保持部15aが形成されており、保持部15aに軸受30Bが保持される。すなわち、軸受30Bを保持部15aに挿入することで、回転軸21の他方側が、ステータ10に対して回転自在に支持される。
【0051】
また、金属製の金属外カバー31が、絶縁フィルム32を挟みながら、ステータ10の第2のブラケット15の配置側、すなわち反出力軸側に装着される。
図1に示すように、金属外カバー31は、中心に開口部31hを有した中空のカップ形状を成している。絶縁フィルム32も、中心に開口部32hを有する中空のカップ形状とし、軸方向Xの長さを金属外カバー31よりも短くした例を示している。ステータ10に含まれる第2のブラケット15が、金属外カバー31の開口部31hおよび絶縁フィルム32の開口部32hを貫くように、金属外カバー31がステータ10に装着される。なお、金属外カバー31、および絶縁フィルム32の詳細な構成についても、さらに以下で説明する。
【0052】
また、本実施の形態では、モータ100が、回路基板34を、ステータ10の開口側に内蔵するような構成を示している。回路基板34は、実質的に円盤状の形状を成しており、中央部に回転軸21を通すための開口34bが形成されている。回路基板34には、駆動回路などの電子部品34aが実装されており、電源電圧または制御信号を印加する接続線なども接続されている。外部と接続するための接続線39が、配線孔に装着された配線ホルダ18を介して外部に引き出されている。
【0053】
図2に示すように、ステータ10のモールド樹脂部19内部から、コイル12の線端末を引き出すため、ステータ10の開口側の内側スペースにおいて、モールド樹脂部19と一体化した端子キャップ36が配置されている。端子キャップ36は、絶縁樹脂からなるとともに、ピンなどの電気接続端子を配列するための配列板部を含む部材である。電気接続端子にコイル12の線端末などが接続されている。本実施の形態では、ステータ10の内側スペースにおいて、例えばピンの露出した箇所を用いて、回路基板34との電気的な接続を行うとともに、この端子キャップ36によって、回路基板34を保持している。
【0054】
以上、モータ100は、次のような手順にて構成される。
【0055】
まず、ステータ10は、コイル組立14、第2のブラケット15および端子キャップ36を、金型内の所定の位置に配置して、樹脂によりモールド一体成型することで、構成される。軸受30A、30Bは、ロータ20の回転軸21の両側に装着される。第1のブラケット35の開口35bから出力軸21pが突出するように、ステータ10には、軸受30A、30Bを装着した状態のロータ20が挿入される。
【0056】
次に、第2のブラケット15の保持部15aには、軸受30Bが圧入される。
【0057】
次に、回路基板34が、ステータ10の開口側において、端子キャップ36に装着される。回路基板34と接続された接続線39は、配線ホルダ18を介して外部に引き出される。第1のブラケット35の保持部35aには、軸受30Aが圧入されるとともに、蓋をするように、第1のブラケット35は、ステータ10の開口側に装着される。
【0058】
最後に、金属外カバー31および絶縁フィルム32が、ステータ10の第2のブラケット15側に装着される。このようにして、
図2に示すようなモータ100が完成する。
【0059】
以上のように構成されたモータ100に対して、接続線39を介して電源電圧または制御信号などを供給することにより、回路基板34に実装された駆動回路によってコイル12が通電駆動される。コイル12が通電されると、コイル12に駆動電流が流れ、ステータコア11から磁界が発生する。そして、ステータコア11からの交番磁界とロータ20が有する磁石24からの磁界とにより、それら磁界の極性に応じて吸引力および反発力が生じ、これらの力によって回転軸21を中心にロータ20が周方向Zに回転する。
【0060】
以上のように構成されたモータ100において、金属外カバー31および絶縁フィルム32を装着したステータ10の詳細な構成について説明する。
【0061】
図5Aは、本発明の実施の形態1におけるモータのコイル組立14、金属外カバー31および絶縁フィルム32の配置関係を示す要部断面図である。
図5Bは、
図5Aに示すモータと比較する比較例を示す、モータ1100の要部断面図である。
図6は、本発明の実施の形態1におけるモータのコイル組立14、金属外カバー31および絶縁フィルム32の分解斜視図である。
図6では、コイル組立14の構成を示すため、モールド樹脂部19を省いているが、実際には、上述したように、コイル組立14の外側がモールド樹脂部19で覆われる。
【0062】
図5Aに示すように、インシュレータ13は、ステータコア11に装着される底面部13aと、外周側の壁を成す外周壁部13bと、内周側の壁を成す内周壁部13cと、を有する。
【0063】
本実施の形態では、1つのトゥース11tに対して、その一対の端面に1つずつインシュレータ13が装着される構成としている。すなわち、インシュレータ13は、ステータコア11に形成された突極の軸方向Xの両側に配置される。このように、コイル組立14は、複数のインシュレータ13を含む構成である。インシュレータ13の底面部13aは、軸方向Xに直交する面で形成される。底面部13aに形成されたこの面が、ステータコア11の軸方向Xにおける端面に密着して装着される。外周壁部13bおよび内周壁部13cは、軸方向Xに沿った壁面で形成される。外周壁部13bは、コイル12が形成される箇所の外周側に立設した壁を成し、コイル位置を規制する。
図5Aに示すように、内周壁部13cは、外周壁部13bよりも径方向Y内側に位置し、コイル12が形成される箇所の内周側に立設した壁を成し、コイル位置を規制する。
【0064】
インシュレータ13の底面部13aは、トゥース11tの軸方向Xの端に位置する両面それぞれに装着される。装着された一対のインシュレータ13を介して、巻線12wが巻回される。このような作業を行うことで、ステータコア11に対して1つのコイル12が形成される。各トゥース11tに対して同様のコイル12が形成され、所定の結線パターンに従ってコイル12どうしを電気接続することで、
図6に示すようなコイル組立14が完成する。
【0065】
図6に示すコイル組立14において、コイル12は、ステータコア11から軸方向Xの両側に対してはみ出るコイルエンド12aを有する。コイル12におけるコイルエンド12a以外の部分は、
図3に示すように、ステータコア11のスロット11s内に収められている。
図5Aに示すように、コイル12どうしを電気接続するため、各トゥース11t間に渡って、コイル12どうしを連絡する渡り線12bが、インシュレータ13の外周壁部13bの外周などに配設されている。
【0066】
コイル組立14を備えたモータにおいて、万一、コイル12に流れる過大電流を防止するような安全保護機能が正常に動作しないと、コイル12に過大な電流が流れることになる。すると、コイル12または渡り線12bが発熱して極めて高温となる。その結果、コイル12での巻線12wどうしが短絡するようなレアショートが発生したり、レアショートによる火花が生じたりする。さらには、生じた火花がインシュレータ13等から生じたガスに引火して発火するおそれもある。特に、上述のようなコイルエンド12aおよび渡り線12bは、ステータコア11からはみ出ているため、このような不具合が生じる可能性が高くなる。
【0067】
そこで、本実施の形態では、
図5Aに示すように、コイル組立14の外側に、不燃対策としての金属部材である金属外カバー31を配置している。具体的には、金属外カバー31は、コイル組立14の外側を覆うモールド樹脂部19のさらに外部に設けられる。
図1および
図6に示すように、金属外カバー31は、実質的なカップ形状を成す金属製の筒である。本実施の形態では、金属外カバー31が、絶縁フィルム32を挟み、ステータ10の底を塞ぎ、ステータ10外周の外側を取り巻くように、配置されている。
【0068】
図5A、
図6に示すように、金属外カバー31は、ステータ10が有するモールド樹脂部19の外側表面に対して装着される。金属外カバー31は、反出力軸側においてステータ10の外側に装着される。
【0069】
金属外カバー31は、底面部31aと、曲面部31bと、円筒部31cとで構成される。金属外カバー31は、中空のカップ形状を成している。金属外カバー31が有する底面部31aは、円盤形状を成すとともに、中心に開口部31hを有する。曲面部31bは、底面部31aから曲面状に実質的に直角に曲がっている。円筒部31cは、曲面部31bから先端まで円筒状に伸び、円筒部31cの先端側が開口している。円筒部31cをステータ10の外周に嵌め込むことが可能となるように、円筒部31cの内径をステータ10の外径とほぼ等しくしている。
【0070】
本実施の形態において、
図2に示すように、金属外カバー31の軸方向Xの寸法は、金属外カバー31をステータ10に装着したとき、円筒部31cの先端が、出力軸側のコイルエンド12aよりもさらに先まで伸びる程度の高さとしている。言い換えれば、金属外カバー31の取り付け位置は、金属外カバー31をステータ10に装着したとき、円筒部31cと、反出力軸側のコイルエンド12aおよび出力軸側のコイルエンド12aの双方とが、径方向Yにおいて、モールド樹脂部19を介して完全に対向する程度の位置としている。
【0071】
このように、
図5Aに示すように、円筒部31cが、ステータコア11の外周から径方向Yに所定の間隔Waをあけて、
図3に示すステータコア11の外周の外側を取り巻くように、金属外カバー31がコイル組立14に対して配置される。このようなコイル組立14に対する配置関係で、金属外カバー31は、ステータ10に装着される。よって、金属外カバー31は、インシュレータ13、双方のコイルエンド12aおよび渡り線12bを取り囲むとともにそれら部材を覆うことになる。
【0072】
言い換えれば、モータ100は、金属部材である金属外カバー31を備える。金属外カバー31は、軸方向Xの両側に突出したコイルエンド12a双方を少なくとも周方向Zに亘って囲むように、モールド樹脂の外表面に装着されている。
【0073】
双方のコイルエンド12a、インシュレータ13および渡り線12bは、不燃対策としての金属外カバー31に覆われている。このため、上述のような不具合、例えばレアショートなどで出火し、インシュレータ13または渡り線12bより径方向Yの外周側に火が延焼しようとしても、金属外カバー31により、その火または煙が遮断され、モータ100の外部に火または煙が出ることを防止できる。
【0074】
以上のような構成に基づき金属外カバー31をステータ10の外側に装着した場合、
図5Aに示すように、金属外カバー31がコイル12に近接して配置されることになる。また、モータの安全性を図るため、上述したように、コイルと金属部材との間で耐え得ることが可能な最大電圧、すなわち絶縁耐圧が、電気用品安全法等で定められている。上述のとおり、モールド成型により形成されたモールド樹脂は、ボイドを含んだり、樹脂が充填されない空間が生じたりするため、絶縁耐圧が低下するおそれがある。
【0075】
そこで、本実施の形態では、コイル12と金属外カバー31との間の電気的絶縁性を確保するため、コイル12と金属外カバー31との間に、モールド樹脂部19のモールド樹脂に加えて、絶縁フィルム32を配置する構成としている。具体的には、この絶縁フィルム32は、モールド樹脂部19の外側表面と金属外カバー31の内側表面との間に挟まれるように、配置される。
【0076】
絶縁フィルム32は、薄い膜状に形成された絶縁シートである。絶縁フィルム32の材料は特に限定されないが、例えば、シンジオタクチックポリスチレン(Syndiotactic Polystyrene,SPS)等のポリスチレン樹脂、またはポリブチレンテレフタレート(Polybutyleneterephthalate,PBT)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate,PET)等のポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0077】
図5Aおよび
図5Bに示すように、コイル12と金属外カバー31が含む底面部31aとの間隔Wbが同じ場合、モータ100は、以下の効果を得ることができる。すなわち、
図5Aに示す、モータ100は、コイル12と底面部31aとの間に、モールド樹脂部19と絶縁フィルム32とが配置されている。一方、
図5Bに示す、比較例におけるモータ1100は、モールド樹脂部19のみが配置されている。絶縁フィルム32は、特性上、モールド樹脂部19を成すモールド樹脂よりも高い電気的絶縁性を有する。
【0078】
つまり、モータ1100は、コイル12と底面部31aとの間に、ボイドが生じ得るモールド樹脂部19のみの一層構造である。一方、モータ100は、コイル12と底面部31aとの間に、モールド樹脂部19と、高い絶縁性を有する絶縁フィルム32との二層構造である。よって、モータ100とモータ1100とを比較した場合、絶縁フィルム32を有するモータ100は、モータ1100よりも絶縁破壊電圧がより一層高くなる。
【0079】
言い換えると、同じ絶縁破壊電圧を確保しようとする場合、
図5Bに示すモールド樹脂部19のみの構造に比べて、
図5Aに示すモールド樹脂部19と絶縁フィルム32とを配置する方が、間隔Wbをより小さく、すなわち、より薄くすることができる。このように、本実施の形態では、コイル12と金属外カバー31が含む底面部31aとの間に、モールド樹脂部19に加えて、絶縁破壊電圧を高める絶縁フィルム32を配置した構成としている。
【0080】
図6に示すように、絶縁フィルム32は、底面部32aと、曲面部32bと、円筒部32cとで構成される。絶縁フィルム32は、中空のカップ形状を成している。絶縁フィルム32が有する底面部32aは、円盤形状を成す。絶縁フィルム32は、中心に開口部32hを有する。曲面部32bは、底面部32aから曲面状に実質的に直角に曲がっている。円筒部32cは、曲面部32bから先端まで円筒状に伸び、円筒部32cの先端側が開口している。
【0081】
円筒部32cをステータ10の外周に嵌め込むことが可能となるように、円筒部32cの内径をステータ10の外径とほぼ等しくしている。
【0082】
図5Aに示すように、モールド樹脂部19の外表面には、絶縁フィルム32が取り付けられる部分において、深さtsの段差部19sが形成されている。段差部19sの深さtsは、絶縁フィルム32の厚みとほぼ等しい。絶縁フィルム32の円筒部32c側の先端は、軸方向Xに位置する段差部19sの端部と接するように取り付けられる。絶縁フィルム32の開口部32h側の先端は、径方向Yに位置する段差部19sの端部と接するように取り付けられる。つまり、モールド樹脂部19の外表面において、深さtsの段差部19sに対してほぼ同じ厚みを有する絶縁フィルム32を嵌め合わせるように取り付けることで、絶縁フィルム32を含むステータ10の外表面が一様な面となる。よって、モールド樹脂部19には、絶縁フィルム32を挟みながら、金属外カバー31が密着して取り付けられる。
【0083】
段差部19sを設けることにより、モールド樹脂部19に対して容易に絶縁フィルム32の装着ができるとともに、絶縁フィルム32の位置ずれを防止できる。
【0084】
従って、本実施の形態によれば、ステータ10をモールド樹脂で覆ったモータ100において、十分な電気的絶縁性を確保しつつ、ステータコア11に巻回されたコイル12に過大な電流が流れた場合でも、モータ外部に火が洩れ出ることを防止することができる。
【0085】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態のモータ100は、不燃対策としての金属外カバー31を備えている。ステータ10の外周には、この金属外カバー31が上述のように嵌め込まれている。これにより、金属外カバー31が、インシュレータ13、コイルエンド12aおよび渡り線12bを覆うように配置される。このため、金属外カバー31により、モータ100内部で生じた火および煙に対する遮断が可能となる。
【0086】
そして、本実施の形態では、トゥース11tの内周面のみ露出状態としながら、インシュレータ13およびコイルエンド12a全体をモールド樹脂部19で覆った構成としている。このため、上記の防火対策を施しながら、ステータ10におけるコイル組立14の保持強度も十分に確保している。
【0087】
さらに、本実施の形態では、モールド樹脂部19と金属外カバー31との間に絶縁フィルム32を配置する構成としている。これにより、絶縁フィルム32をコイル12と金属外カバー31との間に挟むのみで絶縁特性を高めることができる。よって、構造的な変更なども必要なく、容易に実現することができる。さらに、薄膜である絶縁フィルム32を挟むことで、電気的絶縁性が改善される。よって、電気的絶縁性を確保しながら、モールド樹脂部19の厚みを薄くすることも可能となる。このように、本実施の形態では、十分な電気的絶縁性を保持しながら、モールド樹脂部19の厚みを薄くし、モータの小型化をも図っている。
【0088】
このように、ステータ10をモールド樹脂部19で覆ったモータ100において、電気的絶縁性を確保しつつ、ステータコア11に巻回されたコイル12に過大な電流が流れた場合でも、モータ外部に火が洩れ出ることを防止することができる。
【0089】
以上のように、本実施の形態のモールドモータは、ロータ20と、ロータ20に対向して配置されるステータ10と、ロータ20を回転自在に支持する軸受30と、ステータ10をモールド樹脂で覆うモールド樹脂部19と、モールド樹脂部19の外側表面に装着される金属外カバー31に相当する金属部材と、モールド樹脂部19と金属部材との間に位置する絶縁フィルム32に相当する絶縁材と、を備える。ロータ20は、軸方向Xに延伸する回転軸21と、永久磁石24を保持して回転軸21に固定されるロータコア23と、を有する。ステータ10は、複数のトゥース11tに相当する複数の突極が周方向に並ぶステータコア11と、ステータコア11の突極ごとにインシュレータ13を介して巻回された複数のコイル12と、を有する。金属部材は、円筒状の円筒部31cと、円筒部31cの底面を成す底面部31aと、を含む。絶縁材は、絶縁材の少なくとも一部の面が、周方向に並ぶ複数のコイル12に対向する部位に配置される。
【0090】
これにより、電気的絶縁性を確保しながら、モータ外形の寸法増加を抑えるとともに、万一、ステータコアに巻回されたコイルに過大な電流が流れた場合でも、モータ外部に火が洩れ出ることを防止できるモールドモータを提供することができる。
【0091】
また、複数のコイル12の各々は、ステータコア11から軸方向Xの両側に突出したコイルエンド12aを含み、円筒部31cは、モールド樹脂部19の外周表面において、少なくとも両側に突出したコイルエンド12aに対向する部位に位置してもよい。
【0092】
また、絶縁フィルム32に相当する絶縁材は、底面部に穴が開いたカップ形状を成し、絶縁材は、金属外カバー31に相当する金属部材の内側表面と、モールド樹脂部19の外側表面との間に挟まれるように配置されてもよい。
【0093】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2におけるモータ102の半断面図である。
図8は、
図7における8-8線矢視平面断面図である。
図9は、本発明の実施の形態2におけるモータのコイル組立14、金属内カバー43、金属外カバー41および絶縁フィルム32の配置関係を示す断面図である。
【0094】
図7から
図9に示すように、本実施の形態におけるモータ102は、実施の形態1におけるモータ100と同様のモータである。モータ102は、モータ100との比較において、金属外カバー41に加えて、モールド樹脂であるモールド樹脂部19の内部に、内側金属部材としての金属内カバー43を備えている。すなわち、
図7に示すように、モータ102は、コイル組立14に金属内カバー43を装着し、これら部材を一体化したモールド樹脂部19を含むステータ40を備えている。金属外カバー41は、実施の形態1における金属外カバー31と同様、カップ形状をなしている。金属外カバー41は、実施の形態1における金属外カバー31に比べて、軸方向Xの長さを短くしている。なお、その他の構成および動作は、実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と同一の構成要素については同じ符号を付すとともに、同様の箇所については、実施の形態1の説明を援用する。
【0095】
ここで、コイル組立14を備えたモータにおいて、万一、コイル12に流れる過大電流を防止するような安全保護機能が正常に動作しないと、コイル12に過大な電流が流れることになる。すると、コイル12または渡り線12bが発熱して極めて高温となる。その結果、コイル12での巻線どうしが短絡するようなレアショートが発生したり、レアショートによる火花が生じたりする。さらには、生じた火花がインシュレータ13等から生じたガスに引火して発火するおそれもある。特に、上述のようなコイルエンド12aおよび渡り線12bは、ステータコア11からはみ出ているため、このような不具合が生じる可能性が高くなる。
【0096】
そこで、実施の形態1と同様に、
図9に示すように、コイル組立14の外側に、不燃対策としての金属部材である金属外カバー41を配置している。さらに、不燃対策としての金属部材である金属内カバー43を配置している。内側金属部材である金属内カバー43を備えるコイル組立14は、モールド樹脂の内部に設けられる。
【0097】
具体的には、
図7から
図9に示すように、モータ102において、複数のコイル12の各々は、ステータコア11から軸方向Xの両側に突出したコイルエンド12aを含む。金属部材である金属外カバー41が含む円筒部41cは、モールド樹脂部19の外周表面において、少なくともコイルエンド12a(12aB)の一方に対向する部位に位置している。
【0098】
モータ102は、円筒状の内側金属部材である金属内カバー43をさらに備える。金属内カバー43は、モールド樹脂部19の内部であって、少なくともコイルエンド12a(12aT)の他方に対向する部位に位置している。
【0099】
モータ102において、金属部材である金属外カバー41と内側金属部材である金属内カバー43とは、軸方向Xに沿って、重なり部分41eを含んでいる。金属外カバー41と金属内カバー43とは、軸方向Xと交差する方向、すなわち、径方向Yにおいて、互いに離間して配置されている。
【0100】
内側金属部材である金属内カバー43は、モールド樹脂であるモールド樹脂部19の内部に設けられる。金属内カバー43は、大径部43bと、小径部43aとを有する。
【0101】
大径部43bは、軸方向Xの両側に突出したコイルエンド12aのうちの一方のコイルエンド12aTを周方向Zに亘って囲むように、一方のコイルエンド12aTに対向している。
【0102】
小径部43aは、大径部43bよりも小さい内径である。小径部43aは、ステータコア11の外周表面を周方向Zに亘って囲むように、ステータコア11に対向している。
【0103】
金属部材である金属外カバー41は、モールド樹脂部19の外周表面に装着される。
【0104】
金属外カバー41は、軸方向Xの両側に突出したコイルエンド12aのうちの他方のコイルエンド12aTを少なくとも周方向Zに亘って囲むように、モールド樹脂であるモールド樹脂部19の外表面に装着されている。
【0105】
図面を用いて、さらに詳細に説明する。
【0106】
図7および
図8に示すように、金属内カバー43は、実質的な円筒形状を成す両側が開口した金属製の筒である。本実施の形態では、金属内カバー43が、コイル組立14の外周から径方向Yに所定の間隔をあけて、その外周よりも外側を取り巻くように、配置されている。
【0107】
図9に示すように、金属内カバー43は、小径部43aと、小径部43aよりも径の大きい大径部43bとを有している。
【0108】
大径部43bは、軸方向Xの両側に突出したコイルエンドのうちの一方のコイルエンド12aを周方向Zに亘って囲むように、一方のコイルエンド12aに対向している。小径部43aは、ステータコア11の外周表面を周方向Zに亘って囲むように、ステータコア11に対向している。
【0109】
小径部43aをステータコア11の外周に嵌め込むことが可能となるように、小径部43aの内径をステータコア11の外径とほぼ等しくしている。具体的には、
図8に示すように、ステータコア11の外周表面に複数の突起11pが周方向Zに等間隔で形成されている。金属内カバー43が有する小径部43aの内径の大きさとしては、突起11pそれぞれの先端に対して、小径部43aの内周面が接する程度の大きさとしている。
【0110】
図9に示すように、小径部43aの軸方向Xの寸法も、ステータコア11の軸方向Xの寸法とほぼ等しくしている。これにより、ステータコア11に形成された各突起11pの先端と金属内カバー43が有する小径部43aの内周面とが接合するように、コイル組立14に金属内カバー43が嵌め込まれる。よって、コイル組立14に金属内カバー43が簡易的に仮固定される。
図8に示すように、仮固定された状態で、各突起11pが配置される箇所を除き、ステータコア11の外周表面と小径部43aの内周面との間には、僅かなスペース121が存在する。モールド成型時において、スペース121にも樹脂が充填される。
【0111】
図9に示すように、大径部43bの軸方向Xの寸法は、コイルエンド12aの軸方向Xの寸法よりも大きい。大径部43bを、金属内カバー43において小径部43aの軸方向Xの一方側のみに設けている。金属内カバー43をコイル組立14に取り付けることで、金属内カバー43が有する大径部43bが、軸方向Xの一方側のコイルエンド12aおよび渡り線12bを取り囲むように配置される。
【0112】
なお、
図9では、この金属内カバー43の配置をより明確にするため、インシュレータ13、コイルエンド12aおよび渡り線12bなどを次のようにも区別して示している。
図9での軸方向Xにおいて、ステータコア11に対する一方側に、インシュレータ13B、コイルエンド12aBおよび渡り線12bBが配置される。同様に、軸方向Xにおいて、その反対の他方側に、インシュレータ13T、コイルエンド12aTおよび渡り線12bTが配置される。
【0113】
すなわち、
図9に示すように、金属内カバー43は、その大径部43bが、インシュレータ13T、コイルエンド12aTおよび渡り線12bTを取り囲むように配置される。一方、インシュレータ13B、コイルエンド12aBおよび渡り線12bBは、金属内カバー43に取り囲まれていない。
【0114】
このように、コイルエンド12aT、インシュレータ13Tの外周壁部13bおよび渡り線12bTよりも外周側に、不燃対策である金属内カバー43の大径部43bが配置される。このため、上述のようなレアショートなどによる不具合によりコイル12から出火して、インシュレータ13Tおよび渡り線12bTより径方向Yの外周側に火が延焼しようとしても、金属内カバー43が有する大径部43bにより、その火および煙が遮断される。よって、モータ102の外部に火および煙が出ることを防止できる。
【0115】
図7に示すように、モータ102は、ステータ40内に金属内カバー43を配置した防火対策に加えて、実施の形態1と同様に、不燃対策として、金属外カバー41を備えた構成としている。さらに、モータ102は、絶縁耐圧を確保するため、モールド樹脂部19の外側表面と金属外カバー41の内側表面との間に、絶縁フィルム32を挟む構成としている。
【0116】
図9に示すように、金属外カバー41も、実施の形態1と同様であり、底面部41aと、曲面部41bと、円筒部41cとで構成される。金属外カバー41は、中空のカップ形状を成している。金属外カバー41が有する底面部41aは、円盤形状を成すとともに、中心に開口部41hを有する。曲面部41bは、底面部41aから曲面状に実質的に直角に曲がっている。円筒部41cは、曲面部41bから先端まで円筒状に伸び、円筒部41cの先端側が開口している。円筒部41cをステータ40の外周に嵌め込むことが可能となるように、円筒部41cの内径をステータ40の外径とほぼ等しくしている。
【0117】
図7および
図9に示すように、金属外カバー41は、ステータ40が有するモールド樹脂部19の外側表面に対して装着される。金属外カバー41は、反出力軸側においてステータ40の外側に装着される。このように装着されることで、金属外カバー41は、軸方向Xにおいて、ステータコア11に対し、金属内カバー43の大径部43bとは反対側となる位置に配置される。すなわち、出力軸側のコイルエンド12aTなどに対しては、金属内カバー43の大径部43bを配置するとともに、反出力軸側のコイルエンド12aBなどに対しては、金属外カバー41を配置する。これにより、それぞれの不燃対策を実現している。大径部43bで出力軸側の不燃対策を行っているため、金属外カバー41の軸方向Xの長さについては、反出力軸側のコイルエンド12aBを取り囲む程度、すなわち、円筒部41cと金属内カバー43との軸方向Xにおける重なり部分41eが生じる程度の寸法としている。言い換えれば、金属外カバー41の取り付け位置は、金属外カバー41をステータ40に装着したとき、円筒部41cとステータコア11との軸方向Xでの重なり部分41eが生じる程度の位置としている。具体例として、
図9では、重なり部分41eが寸法Wdとなる例を示している。このように、金属外カバー41の軸方向Xの長さは、コイルエンド12aBの軸方向Xの寸法よりも長く、かつ、実施の形態1の金属外カバー31に比べて短くしている。
【0118】
以上説明したように、本実施の形態のモータ102は、不燃対策としての金属内カバー43と金属外カバー41とを備えている。
【0119】
金属内カバー43がステータコア11の側面に装着された状態でモールド成型されると、これら部材を一体化したモールド樹脂部19を含むステータ40が構成される。ステータ40において、出力軸側では、金属内カバー43の大径部43bが、インシュレータ13T、コイルエンド12aTおよび渡り線12bTを取り囲むように配置される。このため、出力軸側においては、金属内カバー43の大径部43bにより、モータ102内部で生じた火および煙に対する遮断が可能となる。
【0120】
さらに、本実施の形態では、ステータ40の外周には、金属外カバー41が上述のように嵌め込まれている。これにより、反出力軸側では、金属外カバー41が、インシュレータ13B、コイルエンド12aBおよび渡り線12bBを覆うように配置される。このため、反出力軸側においては、金属外カバー41により、モータ102内部で生じた火および煙に対する遮断が可能となる。
【0121】
そして、本実施の形態では、トゥース11tの内周面のみ露出状態としながら、金属内カバー43全体とともにインシュレータ13およびコイルエンド12a全体もモールド樹脂部19で覆った構成としている。このため、上記の防火対策を施しながら、ステータ40におけるコイル組立14の保持強度も十分に確保している。
【0122】
さらに、本実施の形態でも、モールド樹脂部19と金属外カバー41との間に、絶縁材である絶縁フィルム32を配置する構成としている。これにより、絶縁フィルム32をコイル12と金属外カバー41との間に挟むのみで、容易に絶縁特性を高めることができる。さらに、薄膜である絶縁フィルム32を挟むことで、電気的絶縁性を確保しながら、モールド樹脂部19の厚みを薄くできる。このため、十分な電気的絶縁性を保持しながら、モールド樹脂部19の厚みを薄くし、モータの小型化も図ることができる。
【0123】
このように、ステータ40をモールド樹脂部19で覆ったモータ102において、電気的絶縁性を確保しつつ、ステータコア11に巻回されたコイル12に過大な電流が流れた場合でも、モータ外部に火が洩れ出ることを防止することができる。
【0124】
また、複数のコイル12の各々は、ステータコア11から軸方向Xの両側に突出したコイルエンド12aを含み、円筒部41cは、モールド樹脂部19の外周表面において、少なくとも両側に突出したコイルエンド12aの一方に対向する部位に位置してもよい。
【0125】
また、本実施の形態のモールドモータは、円筒状の金属内カバー43に相当する内側金属部材をさらに備え、内側金属部材は、モールド樹脂部19の内部であって、少なくとも両側に突出したコイルエンド12aの他方に対向する部位に位置してもよい。
【0126】
また、金属外カバー41に相当する金属部材と金属内カバー43に相当する内側金属部材とは、軸方向Xに沿って重なり部分41eを含むとともに、軸方向Xと交差する方向において互いに離間して配置されてもよい。
【0127】
また、金属内カバー43に相当する内側金属部材は、モールド樹脂部19の内部に設けられ、軸方向Xの両側に突出したコイルエンド12aのうちの一方のコイルエンド12aTを周方向Zに亘って囲むように、一方のコイルエンド12aTに対向する大径部43bと、大径部43bよりも小さい内径であり、ステータコア11の外周表面を周方向Zに亘って囲むように、ステータコア11に対向する小径部43aと、を有してもよい。
【0128】
また、金属外カバー41に相当する金属部材はモールド樹脂部19の外周表面に装着され、金属部材は、軸方向Xの両側に突出したコイルエンド12aのうちの他方のコイルエンド12aTを少なくとも周方向Zに亘って囲むように、モールド樹脂の外表面に装着されてもよい。
【0129】
以下、その他の変形例について説明する。なお、後述する変形例は、特徴となる要部を中心に説明する。
【0130】
(変形例1)
図10は、本発明の変形例1におけるモータのステータ10aと、絶縁フィルム302と、金属外カバー31とを示す分解斜視図である。
図10では、本変形例1のモータにおける、モールド樹脂部19で覆われたステータ10aと、開口部302hを有する絶縁フィルム302と、金属外カバー31とを示している。他の構成については、実施の形態1および2と同様である。
【0131】
図10に示すように、変形例1におけるモータにおいて、絶縁材である絶縁フィルム302は、中心に穴が開いた円盤状を成している。
【0132】
絶縁フィルム302は、金属部材である金属外カバー31が含む底面部31aの内側表面と、モールド樹脂部19の外側表面との間に挟まれるように配置されている。
【0133】
図面を用いて、さらに詳細に説明する。
【0134】
実施の形態1および2では、例えば、
図1で示したように、カップ形状の絶縁フィルム32の例を挙げて説明した。しかし、変形例1の
図10に示すように、絶縁材は、中心に穴が開いた円盤状の絶縁フィルム302を用いることができる。つまり、絶縁フィルム302は、平面の中心に、穴である開口部302hが形成された円板である。
【0135】
さらに、
図10に示すように、ステータ10aと絶縁フィルム302とが接する部分において、ステータ10aの軸方向X側の端面には、段差部109sが形成されている。段差部109sの深さと絶縁フィルム302との厚みがほぼ等しければ、絶縁フィルム302が取り付けられたステータ10aの外表面は一様になる。本構成とすれば、ステータ10aと金属外カバー31が含む底面部31aとは、絶縁フィルム302を挟んでも、密着して接することができる。
【0136】
以上のように、本変形例においては、絶縁フィルム302に相当する絶縁材は、中心に穴が開いた円盤状を成し、絶縁材は、底面部31aの内側表面と、モールド樹脂部19の外側表面との間に挟まれるように配置されてもよい。
【0137】
(変形例2)
図11は、本発明の変形例2におけるモータのステータ10bと、絶縁フィルム312と、金属外カバー31とを示す分解斜視図である。
図11では、本変形例2のモータにおける、モールド樹脂部119で覆われたステータ10bと、開口部312hを有する絶縁フィルム312と、金属外カバー31とを示している。他の構成については、実施の形態1および2と同様である。
【0138】
図11に示すように、変形例2におけるモータにおいて、絶縁材である絶縁フィルム312は、帯状を成している。
【0139】
絶縁フィルム312は、金属部材である金属外カバー31が含む円筒部31cの内側表面と、モールド樹脂部19の外側表面との間に挟まれるように配置されている。
【0140】
図面を用いて、さらに詳細に説明する。
【0141】
実施の形態1および2では、例えば、
図1で示したように、カップ形状の絶縁フィルム32の例を挙げて説明した。しかし、変形例2の
図11に示すように、絶縁材は、帯状の絶縁フィルム312を用いることができる。具体的には、絶縁材は、帯状の絶縁フィルム312を環状に形成したものでもよい。
【0142】
さらに、
図11に示すように、ステータ10bと絶縁フィルム312とが接する部分において、ステータ10bの径方向Y側の側面には、段差部119sが形成されている。段差部119sの深さと絶縁フィルム312との厚みがほぼ等しければ、絶縁フィルム312が取り付けられたステータ10bの外表面は一様になる。本構成とすれば、ステータ10bと金属外カバー31が含む円筒部31cとは、絶縁フィルム312を挟んでも、密着して接することができる。
【0143】
変形例1および2の説明から明らかなように、絶縁フィルム302、312の形状としては特に限定されない。要するに、絶縁フィルム302、312は、ステータ10a、10b内のコイル12と金属外カバー31との間であって、コイル12が金属外カバー31に近接し、絶縁耐圧を確保する必要のある位置に配置されればよい。
【0144】
以上のように、本変形例においては、絶縁フィルム312に相当する絶縁材は、帯状を成し、絶縁材は、円筒部31cの内側表面と、モールド樹脂部19の外側表面との間に挟まれるように配置されてもよい。
【0145】
(変形例3)
図12は、本発明の変形例3におけるモータのステータ10cと、絶縁フィルム322と、金属外カバー31とを示す分解斜視図である。
図12では、本変形例3のモータにおける、モールド樹脂部129で覆われたステータ10cと、開口部322hを有する絶縁フィルム322と、金属外カバー31とを示している。
【0146】
図12に示すように、変形例3におけるモータにおいて、絶縁材である絶縁フィルム322は、切込み313を有する。モールド樹脂部129は、切込み313に一致するように突起する、突起部113を有する。
【0147】
図面を用いて、さらに詳細に説明する。
【0148】
変形例3では、カップ形状の絶縁フィルム322が含む円筒部322cに、フィルムを切り込んだ、1つの切込み313を設けている。モールド樹脂部129に、切込み313が嵌め合わされる線状の突起部113を設けている。他の構成については、実施の形態1および2と同様である。
【0149】
図12に示すように、例えば、
図1で示した絶縁フィルム32またはステータ10のモールド樹脂部19に対して、このような変更を加えてもよい。このようにして得られた変形例3のモータでは、切込み313と突起部113とを加える変更により、絶縁フィルム322の装着が容易になり、かつ、絶縁フィルム322のずれ防止を図ることができる。よって、変形例3の構成とすれば、モータ外部に火が洩れ出ることを防止し、電気的絶縁性を確保できるとともに、作業性の向上も図ったモータを得ることができる。
【0150】
さらに、
図12に示したステータ10cに対して、変形例2と同様に、段差部119sを設けてもよい。具体例を
図13に示す。
【0151】
図13は、本発明の変形例3における他のモータのステータ10dと、絶縁フィルム322と、金属外カバー31とを示す分解斜視図である。
図13に示すように、変形例3における他のモータにおいて、モールド樹脂部139は、段差部119sを有する。段差部119sは、モールド樹脂部139と金属部材である金属外カバー31とが対向する部分において、絶縁材である絶縁フィルム322を収納している。
【0152】
図面を用いて、さらに詳細に説明する。
【0153】
図13では、変形例3の他のモータにおける、モールド樹脂部139で覆われたステータ10dと、開口部322hを有する絶縁フィルム322と、金属外カバー31とを示している。他のモータのステータ10dでは、モールド樹脂部139において、段差部119sに突起部113を設けている。
【0154】
図13に示す他のモータにおいては、
図12に示した変形例3の作用効果に加え、つぎの効果を得ることができる。ステータ10dと絶縁フィルム322とが接する部分において、ステータ10dの径方向Y側の側面には、段差部119sが形成されている。段差部119sの深さと絶縁フィルム322との厚みがほぼ等しければ、絶縁フィルム322が取り付けられたステータ10dの外表面は一様になる。本構成とすれば、ステータ10dと金属外カバー31が含む円筒部31cとは、絶縁フィルム322を挟んでも、密着して接することができる。
【0155】
なお、形成される、切込み313および突起部113の数は、複数でもよい。
【0156】
以上のように、本変形例においては、絶縁フィルム322に相当する絶縁材は、切込み313を有し、モールド樹脂部129は、切込み313に一致するように突起する突起部113を有してもよい。
【0157】
また、モールド樹脂部139は、モールド樹脂部139と金属外カバー31に相当する金属部材とが対向する部分において、絶縁フィルム322に相当する絶縁材を収納する段差部を有してもよい。
【0158】
(変形例4)
図14は、本発明の変形例4におけるモータのステータ10eと、絶縁フィルム332と、金属外カバー31とを示す分解斜視図である。
図14では、変形例4のモータにおける、モールド樹脂部149で覆われたステータ10eと、開口部332hを有する絶縁フィルム332と、金属外カバー31とを示している。変形例4では、中心に穴が開いた円盤状の絶縁フィルム332の外周に、絶縁フィルム332を矩形に切り込んだ、1つの切込み323が設けられている。モールド樹脂部149において、軸方向X側の端面に形成された段差部219sには、切込み323に対応した矩形の突起部123が設けられている。他の構成については、実施の形態1および2、あるいは、変形例1と同様である。
【0159】
図14に示すように、変形例1で説明した円盤状の絶縁フィルム302、または、
図1で示したステータ10のモールド樹脂部19に対して、このような変更を加えてもよい。このようにして得られた変形例4のモータでは、切込み323と突起部123とを加えることにより、絶縁フィルム332の装着が容易になり、かつ、絶縁フィルム332のずれ防止を図ることができる。よって、変形例4のような構成とすれば、モータ外部に火が洩れ出ることを防止し、電気的絶縁性を確保できるとともに、作業性の向上も図ったモータを得ることができる。
【0160】
なお、変形例4の特徴である、切込み323および突起部123の形状は、上述した矩形に限らない。例えば、切込み323および突起部123の形状は、三角形、台形、あるいは、半円形、十字形など、他の形状でも同様の作用効果を得ることができる。
【0161】
また、形成される、切込み323および突起部123の数は、複数でもよい。
【0162】
(変形例5)
図15は、本発明の変形例5におけるモータのステータ10fと、絶縁フィルム342と、金属外カバー31とを示す分解斜視図である。
図15では、変形例5のモータにおける、モールド樹脂部159で覆われたステータ10fと、開口部342hを有する絶縁フィルム342と、金属外カバー31とを示している。変形例5では、円盤状の絶縁フィルム342には、表裏に貫通する、3つの孔部333が設けられている。モールド樹脂部159において、軸方向X側の端面に形成された段差部319sには、孔部333に対応して突起する3つの突起部133が設けられている。他の構成については、実施の形態1および2、あるいは、変形例1と同様である。
【0163】
図15に示すように、例えば、変形例1で説明した円盤状の絶縁フィルム302、および、
図1で示したステータ10のモールド樹脂部19に対して、このような変更を加えてもよい。このようにして得られた変形例5のモータでは、孔部333と突起部133とを加える変更により、絶縁フィルム342の装着が容易になり、かつ、絶縁フィルム342のずれ防止を図ることができる。よって、変形例5のような構成とすれば、モータ外部に火が洩れ出ることを防止し、電気的絶縁性を確保できるとともに、作業性の向上も図ったモータを得ることができる。
【0164】
なお、変形例5の特徴である、孔部333および突起部133の形状は、特に限定されるものではない。例えば、孔部333および突起部133の形状は、円筒状、三角柱および四角柱などに代表される多角形柱、あるいは、断面が半円形や十字形など、他の形状の筒形状または錘状でも同様の作用効果を得ることができる。
【0165】
また、形成される、孔部333および突起部133の数は、他の数でもよい。
【0166】
(変形例6)
図16は、本発明の変形例6におけるモータ103の半断面図である。
図16では、変形例6のモータ103の全体概要を示している。詳細は、要部を拡大した
図17、
図21を用いて説明する。
図18は、
図16に示すモータ103と比較する比較例を示す、モータ1100の半断面図である。
【0167】
図17は、本発明の変形例6のモータ103のコイル組立14、金属外カバー41および絶縁フィルム32の配置関係を示す要部断面図である。
図21は、本発明の変形例6のモータ103のコイル組立14、金属外カバー41および絶縁フィルム352の他の配置関係を示す要部断面図である。
【0168】
図16および
図17に示すように、変形例6におけるモータ103において、モールド樹脂部169は、段差部419sを有する。段差部419sは、モールド樹脂部169と金属部材である金属外カバー41とが対向する部分において、絶縁材である絶縁フィルム32および金属外カバー41を収納する。
【0169】
金属部材である金属外カバー41の外側表面とモールド樹脂部169の外側表面とは、同一面上に位置している。
【0170】
図面を用いて、さらに詳細に説明する。
【0171】
図17では、変形例6のモータ103における、モールド樹脂部169で覆われたステータ40aと、開口部32hを有する絶縁フィルム32と、金属外カバー41とを示している。
【0172】
変形例6では、モールド樹脂部169に形成される段差部419sが、複数段で形成されている。具体的には、段差部419sは、ステータ40aの中心から軸方向X、あるいは、径方向Yに向かって順次位置する、第1段部419saと、第2段部419sbとで形成される。第1段部419saの深さは、絶縁フィルム32の厚みtsとほぼ同じである。第2段部419sbの深さは、金属外カバー41の厚みts1とほぼ同じである。
【0173】
言い換えれば、モールド樹脂部169には、金属外カバー41と絶縁フィルム32とを合わせた厚みと同等の深さを有する段差部419sが形成される。
【0174】
変形例6のモータ103では、軸方向Xにおいて、金属外カバー41が含む円筒部41cの長さが、絶縁フィルム32が含む円筒部32cの長さよりも長い。よって、モータ103では、直接、モールド樹脂部169と金属外カバー41とが接する。したがって、モールド樹脂部169に金属外カバー41が圧入されることにより、金属外カバー41は、モールド樹脂部169に、しっかりと固定される。
【0175】
他の構成については、実施の形態1および2と同様である。
【0176】
本構成とすれば、モータ103は、軸方向X、あるいは、径方向Yにおいて、金属部材である金属外カバー41の外側表面と、モールド樹脂部169の外側表面とが同一面上に位置することとなる。
【0177】
つまり、モータ103において、モールド樹脂部169は、モールド樹脂部169と絶縁フィルム32、および、モールド樹脂部169と金属外カバー41とが向い合う部分に段差部419sを有する。段差部419sは、絶縁フィルム32と金属外カバー41とを合わせた分の深さ(ts+ts1)を有する。
【0178】
よって、モータ103が備えるステータ40aは、径方向Yにおいて、モールド樹脂部169のみから成る部分の寸法Wa1と、モールド樹脂部169に絶縁フィルム32および金属外カバー41が取り付けられた部分の寸法Wa2とが同じとなる。あるいは、モータ103が備えるステータ40aは、軸方向Xにおいて、モールド樹脂部169のみから成る部分の寸法Wb1と、モールド樹脂部169に絶縁フィルム32および金属外カバー41が取り付けられた部分の寸法Wb2とが同じとなる。
【0179】
しかも、モータ103は、絶縁フィルム32を備えているため、用途に応じた絶縁耐圧を確保することができる。モータ103は、金属外カバー41を備えているため、何らかの要因により、モータ103内に火花などが生じたとしても、モータ外部に火が洩れ出ることを防止できる。
【0180】
ここで、本変形例6の比較例として、従来、電気機器等に組み込まれていたモータ1100を
図18に示す。
【0181】
図18に示すように、モータ1100は、軸方向Xの本体長さがWx、径方向Yの長さがWyである。
【0182】
一方、
図16に示すように、本変形例6として説明した変更を加えたモータ103は、薄膜である絶縁フィルム32を挟むことで、電気的絶縁性が改善される。よって、モータ103は、電気的絶縁性を確保しながら、モールド樹脂部19の厚みを薄くすることも可能となる。つまり、本変形例6のモータ103は、十分な電気的絶縁性を保持しながら、モールド樹脂部19の厚みを薄くし、モータの小型化も図っている。従って、モータ103は、軸方向Xの本体長さがWx、径方向Yの長さがWyで作成できる。
【0183】
言い換えれば、本変形例6におけるモータ103は、従来、電気機器等に組み込まれていたモータと同等の外形寸法で作成することができる。
【0184】
この結果、モータ103を用いれば、従来のモータ1100が組み込まれていた電気機器側に変更を加えることなく、実施の形態1、2等の作用効果に加え、電気機器の防火性能を向上することができる。
【0185】
(実施例)
絶縁フィルム32として、PETフィルムを用いた場合について、図面とともに説明する。
【0186】
図19は、
図17に示すモータ103の要部拡大図である。
図20は、
図19に示すモータ103と比較する比較例を示す、モータ1101の要部拡大図である。
【0187】
図20に示す比較例について説明する。
図20に示すように、モータ1101は、従来、モールド樹脂で覆われたモータに対して、本願の発明者が、いわゆる不燃対策として金属外カバー41を施したものである。
【0188】
具体的には、渡り線12bとモータの外側表面との間の距離であるモールド樹脂部1169の厚さ寸法Wa3は、2.5mmである。なお、モールド樹脂部1169の厚さは、渡り線12bからの絶縁距離を確保する上で重要な指標となる。具体的には、渡り線12bから金属外カバー41までの沿面距離において、所定の絶縁距離を確保するため、モールド樹脂部1169には、所定の厚みが求められる。モータ1101には、モータの外側表面に厚さts1=0.5mmの金属外カバー41が取り付けられている。よって、モータ1101において、渡り線12bから金属外カバー41の外側表面までの寸法Wa4は、3.0mmとなる。
【0189】
言い換えれば、従来のモータに対して本願の発明者が当初実施した不燃対策を施したモータは、径方向Yにおいて、外形寸法が金属外カバー41の厚み分、すなわち、1.0mm(0.5mm×2方向分)増えることになる。
【0190】
一方、
図19に示すように、変形例6で説明したモータ103には、絶縁フィルム32として、厚さts=0.25mmのPETフィルムを用いている。例えば、PETフィルムには、テイジン(Teijin,登録商標)テトロン(Tetoron,登録商標)UFを用いることができる。このテイジンテトロンUFは、難燃グレードの海外規格UL94のVTM-0を満たしているため、本願発明の主たる目的である不燃対策の観点からも好ましい。
【0191】
絶縁フィルム32を用いた場合、モータ103は、以下のように構成することができる。すなわち、渡り線12bから絶縁フィルム32までのモールド樹脂部169の厚さ寸法Wa5は、1.75mmである。モータ103の外側表面に取り付けられる金属外カバー41の厚さts1は、0.5mmである。よって、モータ103において、渡り線12bから金属外カバー41の外側表面までの寸法Wa6は、2.5mmとなる。つまり、モータ103の外径寸法は、上述した比較例のモータ1101において、金属外カバー41を除く、モールド樹脂部1169で外殻が成型された状態と同じ外径寸法となる。
【0192】
このような構成にて、双方のモータ103、1101について、海外規格であるEN60335-1に従い、絶縁耐圧試験を行った。その結果、双方のモータ103、1101は、AC1500V-1minの印加を行う絶縁耐圧試験を満たすことが確認できた。
【0193】
変形例6は、
図21に示すように、絶縁フィルム352と金属外カバー41とが接する部分の寸法が同じ寸法となるよう、形成してもよい。具体的には、段差部429sは、ステータ40aの中心から軸方向X、あるいは、径方向Yに向かって順次位置する、第1段部429saと、第2段部419sbとで形成される。第1段部429saの深さは、絶縁フィルム352の厚みtsとほぼ同じである。第2段部419sbの深さは、金属外カバー41の厚みts1とほぼ同じである。一方、
図17に示した変形例と異なり、絶縁フィルム352の長さは、金属外カバー41とほぼ同じである。
【0194】
本構成とすれば、モールド樹脂部179に形成される段差部429sは、1段で作成できる。よって、ステータ40aを成型するにあたり、金型にモールド樹脂を充填する工程などにおいて、作業性を向上できる。
【0195】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施の形態によれば、電気的絶縁性を確保しながら、モータ外形の寸法増加を抑える。また、万一、ステータコアに巻回されたコイルに過大な電流が流れた場合でも、モータ外部に火が洩れ出ることを防止できるモールドモータを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明は、ステータがモールド樹脂で覆われている、いわゆるモールドモータに対して、広範囲で利用することができる。
【0197】
本発明は、新たに該モールドモータが組み込まれる電気機器はいうまでもなく、既に市場で使用されている電気機器であっても、組み込まれているモールドモータの置換えが容易にできるため、広範囲で利用できる。
【符号の説明】
【0198】
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f,40,40a ステータ
11 ステータコア
11s スロット
11t トゥース(ティース、突極)
11p 突起
11y ヨーク
11ta トゥース中間部
11tb トゥース先端部
12 コイル
12a,12aB,12aT コイルエンド
12b,12bB,12bT 渡り線
12w 巻線
13,13B,13T インシュレータ
13a 底面部
13b 外周壁部
13c 内周壁部
14 コイル組立
15 第2のブラケット
15a,35a 保持部
18 配線ホルダ
19,119,129,139,149,159,169,179,1169 モールド樹脂部
19s,109s,119s,219s,319s,419s,429s 段差部
20,50 ロータ
21 回転軸
21p 出力軸
23 ロータコア
23c 磁石挿入孔
24 磁石(永久磁石)
30,30A,30B 軸受
30b ボール
30i 内輪
30o 外輪
31,41 金属外カバー(金属部材)
31a,32a,41a 底面部
31b,32b,41b 曲面部
31c,32c,41c,322c 円筒部
31h,32h,41h,302h,312h,322h,332h,342h 開口部
32,302,312,322,332,342,352 絶縁フィルム(絶縁材)
34 回路基板
34a 電子部品
34b,35b 開口
35 第1のブラケット
36 端子キャップ
39 接続線
41e 重なり部分
43 金属内カバー(内側金属部材)
43a 小径部
43b 大径部
100,101,102,103,1100,1101 モータ(モールドモータ)
113,123,133 突起部
120 空隙
121 スペース
313,323 切込み
333 孔部
419sa,429sa 第1段部
419sb 第2段部