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特許7426560メッキ用パターン版及び配線基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】メッキ用パターン版及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/20 20060101AFI20240126BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240126BHJP
   C23C 18/32 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H05K3/20 B
H05K3/18 J
C23C18/32
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020565613
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046283
(87)【国際公開番号】W WO2020144960
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2019002739
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】二連木 隆佳
(72)【発明者】
【氏名】井口 秀郎
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-127409(JP,A)
【文献】特開2007-266324(JP,A)
【文献】特開2005-183512(JP,A)
【文献】特開平02-159789(JP,A)
【文献】特許第4798439(JP,B2)
【文献】特開平11-274694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/20
H05K 3/18
C23C 18/32
C25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキによって形成された転写パターンを基板に転写するためのメッキ用パターン版であって、
基材と、
前記基材に設けられた複数の転写部と、
を備え、
前記複数の転写部のぞれぞれは、前記転写パターンがメッキにより形成されるように構成された転写面を有し、
前記複数の転写部は互いに電気的に独立するように前記基材に配置されている、メッキ用パターン版。
【請求項2】
前記基材は透光性である、請求項1に記載のメッキ用パターン版。
【請求項3】
前記複数の転写部の前記転写面は鉄とニッケルとを含有する、請求項1または2に記載のメッキ用パターン版。
【請求項4】
前記複数の転写部は電気メッキにより形成されている、請求項3に記載のメッキ用パターン版。
【請求項5】
前記複数の転写部は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率となる合金から形成されている、請求項3または4に記載のメッキ用パターン版。
【請求項6】
前記複数の転写部において、前記鉄と前記ニッケルとの合計に対する前記鉄の比率が20%以上である、請求項5に記載のメッキ用パターン版。
【請求項7】
前記複数の転写部の厚みは0.1μm以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載のメッキ用パターン版。
【請求項8】
前記複数の転写部のそれぞれは、
前記転写面を有して鉄とニッケルとを含有する第一の金属層と、
前記第一の金属層を支持する1つ以上の層よりなる第二の金属層と、
を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のメッキ用パターン版。
【請求項9】
平面視において前記複数の転写部以外の領域に配置された樹脂部をさらに備え、
前記樹脂部はフッ素を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のメッキ用パターン版。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のメッキ用パターン版を準備するステップと、
前記メッキ用パターン版の前記複数の転写部の前記転写面にメッキによって前記転写パターンを形成するステップと、
前記転写パターンを前記基板に転写するステップと、
を含む、配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記転写パターンを形成する前記ステップは、前記メッキ用パターン版の前記複数の転写部の前記転写面に無電解メッキによって前記転写パターンを形成するステップを含む、請求項10に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記転写パターンに無電解メッキによって導電パターンを形成するステップをさらに含む、請求項10または11に記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】
前記転写パターンを形成する前記ステップの前に、前記メッキ用パターン版の前記複数の転写部の前記転写面に離型処理を施すステップをさらに含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項14】
前記配線基板は、タッチパネル用の配線基板である、請求項10から13のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項15】
メッキによって形成された転写パターンを基板に転写するためのメッキ用パターン版であって、
透光性の基材と、
前記基材に設けられた転写部と、
平面視において前記転写部以外の領域に配置された樹脂部と、
を備え、
前記樹脂部は光硬化性樹脂により形成されており、
前記転写部は、前記転写パターンがメッキにより形成されるように構成された転写面を有する、メッキ用パターン版。
【請求項16】
前記転写部の前記転写面は鉄とニッケルとを含有する、請求項15に記載のメッキ用パターン版。
【請求項17】
前記転写部は電気メッキにより形成されている、請求項15または16に記載のメッキ用パターン版。
【請求項18】
前記転写部は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率となる合金から形成されている、請求項15から17のいずれか一項に記載のメッキ用パターン版。
【請求項19】
前記転写部において、前記鉄と前記ニッケルとの合計に対する前記鉄の比率が20%以上である、請求項18に記載のメッキ用パターン版。
【請求項20】
前記転写部の厚みは0.1μm以上である、請求項15から19のいずれか一項に記載のメッキ用パターン版。
【請求項21】
前記転写部は、
前記転写面を有して鉄とニッケルとを含有する第一の金属層と、
前記第一の金属層を支持する1つ以上の層よりなる第二の金属層と、
を有する、請求項15から20のいずれか一項に記載のメッキ用パターン版。
【請求項22】
前記樹脂部はフッ素を含む、請求項15から21のいずれか一項に記載のメッキ用パターン版。
【請求項23】
請求項15から22のいずれか一項に記載のメッキ用パターン版を準備するステップと、
前記メッキ用パターン版の前記転写部の前記転写面にメッキによって前記転写パターンを形成するステップと、
前記転写パターンを前記基板に転写するステップと、
を含む、配線基板の製造方法。
【請求項24】
前記転写パターンを形成する前記ステップは、前記メッキ用パターン版の前記転写部の前記転写面に無電解メッキによって前記転写パターンを形成するステップを含む、請求項23に記載の配線基板の製造方法。
【請求項25】
前記転写パターンに無電解メッキによって導電パターンを形成するステップをさらに含む、請求項23または24に記載の配線基板の製造方法。
【請求項26】
前記転写パターンを形成する前記ステップの前に、前記メッキ用パターン版の前記転写部の前記転写面に離型処理を施すステップをさらに含む、請求項23から25のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項27】
前記配線基板は、タッチパネル用の配線基板である、請求項23から26のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メッキ用パターン版及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば導体層パターン付き基板を製造する際には、基板に電解メッキを施すことにより導電パターンを形成する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4798439号公報
【発明の概要】
【0004】
メッキ用パターン版は、メッキによって形成された転写パターンを基板に転写するように構成されている。このメッキ用パターン版は、基材と、基材に設けられた複数の転写部とを備える。複数の転写部のぞれぞれは、転写パターンがメッキにより形成されるように構成された転写面を有する。複数の転写部は互いに電気的に独立するように基材に配置されている。
【0005】
このメッキ用パターン版は、細線化された導電パターンの品質の安定化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施の形態1に係るタッチパネルの平面図である。
図2図2は、実施の形態1に係るメッキ用パターン版の平面図である。
図3図3は、実施の形態1に係るメッキ用パターン版の部分断面図である。
図4図4は、実施の形態1に係るメッキ用パターン版の製造方法を示す図である。
図5図5は、実施の形態1に係る配線基板の製造方法を示す図である。
図6A図6Aは、実施の形態1に係るメッキ用パターン版の実施例1~7と比較例との各条件及び評価結果を示す表を示す図である。
図6B図6Bは、実施の形態1に係る他のメッキ用パターン版の部分断面図である。
図7図7は、実施の形態2に係るメッキ用パターン版の部分断面図である。
図8図8は、実施の形態2に係るメッキ用パターン版の製造方法を示す図である。
図9図9は、実施の形態2に係る配線基板の製造方法を示す図である。
図10図10は、実施の形態2に係る配線基板の他の製造方法を示す図である。
図11図11は、実施の形態3に係るメッキ用パターン版の部分断面図である。
図12図12は、実施の形態3に係るメッキ用パターン版の製造方法を示す図である。
図13図13は、実施の形態4に係るメッキ用パターン版の部分断面図である。
図14図14は、実施の形態4に係るメッキ用パターン版の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の一態様に係るメッキ用パターン版について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0008】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0009】
(実施の形態1)
[1-1 タッチパネル]
図1は、実施の形態1に係るタッチパネル300の概略構成を示す平面図である。図1では、タッチパネル300の一辺に平行な方向をX軸方向とし、X軸方向に直交してタッチパネル300の他の辺に平行な方向をY軸方向としている。
【0010】
図1に示すように、タッチパネル300は、静電容量式のタッチパネルであり、配線基板301を有している。配線基板301は、基板302と、基板302の一方の主面に配置された導電パターン310と、基板302の他方の主面に配置された導電パターン320とを備えている。
【0011】
導電パターン310は、互いに平行に配置された複数の電極311と、複数の電極311のそれぞれから引き出された複数の引き出し配線312とを備えている。具体的には、複数の電極311のそれぞれは、X軸方向に沿って長尺であり、Y軸方向に沿って配列されている。各電極311と、当該電極311に対応する引き出し配線312とは、他の電極311と他の引き出し配線312から電気的に独立するように基板302上に設けられている。つまり、一組の電極311と、引き出し配線312とは、他の組の電極311と引き出し配線312とに対して電気的に独立している。複数の引き出し配線312は、基板302における一端部に設けられたフレキシブル配線基板330に電気的に接続されている。
【0012】
導電パターン320は、互いに平行に配置された複数の電極321と、複数の電極321のそれぞれから引き出された複数の引き出し配線322とを備えている。具体的には、複数の電極321のそれぞれは、Y軸方向に沿って長尺であり、X軸方向に沿って配列されている。複数の電極321は、電極311と直交する方向に配置されている。各電極321と、当該電極321に対応する引き出し配線322とは、他の電極321と他の引き出し配線322から電気的に独立するように基板302上に設けられている。つまり、一組の電極321と、引き出し配線322とは、他の組の電極321と引き出し配線322とに対して電気的に独立している。複数の引き出し配線322は、基板302における一端部に設けられたフレキシブル配線基板330に電気的に接続されている。
【0013】
実施の形態1では、一枚の基板302の一方の主面に導電パターン310が形成され、他方の主面に導電パターン320が形成されたタッチパネル300を例示したが、二枚の基板の一方の基板の主面に導電パターン310が形成され、他方の基板の主面に導電パターン320が形成されたタッチパネルであってもよい。また、基板302の一方の主面に導電パターン310が形成され、導電パターン310上に絶縁層を介して、導電パターン320が形成されたタッチパネルであってもよい。
【0014】
[1-2 メッキ用パターン版]
導電パターン310はメッキ用パターン版により形成される。次に、メッキ用パターン版について説明する。導電パターン320を形成するためのメッキ用パターン版は、導電パターン310を形成するためのメッキ用パターン版と基本的な構造が同様であるので、その説明を省略する。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る導電パターン310を形成するためのメッキ用パターン版10の概略構成を示す平面図である。タッチパネル300の製造時においては、メッキ用パターン版10は、基板302の一方の主面に重ねられる。図2では、基板302にメッキ用パターン版10が展開された状態を図示している。このため、図2では、X軸方向の向きが図1とは逆である。
【0016】
図2に示すように、メッキ用パターン版10は、基材20と、複数の転写部30と、樹脂部40とを有している。
【0017】
基材20は、互いに反対側の主面20a、20bを有する平板形状を有する。基材20の一方の主面20aに複数の転写部30が配置されている。複数の転写部30のそれぞれは、導電パターン310をなす複数組の電極311及び引き出し配線312の各組に対応した形状を有する。複数の転写部30は、基材20の主面20aに互いに電気的に独立するように配置されている。換言すると、複数の転写部30は、基材20の主面20a内において互いに電気的に接触していない。実施の形態1では、複数の転写部30は、互いに物理的にも接触しておらず、島状に配置されている。樹脂部40は、平面視において転写部30以外の領域に配置されるように基材20に重ねられている。
【0018】
以降、メッキ用パターン版10についてより詳細に説明する。図3は、実施の形態1に係るメッキ用パターン版10の部分的な概略構成を示す部分断面図である。具体的には、図3は、図2に示すメッキ用パターン版10の線III-IIIにおける断面を示す。
【0019】
図3に示すように、メッキ用パターン版10は、基材20と、下地金属31と、樹脂部40とを備えている。基材20は、層21と、層22とを備えている。層21は、パターン版を構成する材料を支える支持基材であり、例えば、金属板、ガラス板、フィルムなどから形成されている、さらに支持基材は透光性を有することが好ましく、その場合、ガラス板、透光性フィルムなどが用いられる。層22は、層21の主面21aに下地金属31を固定するために積層されており、下地金属31を固定できるものであればなんでもよいが絶縁性を有していることが好ましく、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂などから形成されている。また層22はさらに透光性を有していることが好ましい。基材20の主面20aを構成する層22の主面22aには、下地金属31の一部が埋設されている。
【0020】
下地金属31は、転写部30と、転写部30の下部の両端縁から側方に突出した一対の突出部32とを有している。転写部30の天面は転写面33であり、樹脂部40から露出している。この転写部30の転写面33には、無電解メッキによって転写パターンが形成される。つまり、下地金属31において、転写部30のみが転写パターンの形成に寄与する。実施の形態1では、転写部30の厚みt1は1μm以上であることが好ましい。これにより、転写パターンに対する剥離性を高めることができる。ただし、めっきで金属を析出させる転写面33の機能は、0.1μm以上の転写部30の厚みで十分に発現するので、転写部30の厚みt1は0.1μm以上であってもよい。
【0021】
また、下地金属31をなす材料は、無電解メッキによって転写パターンが形成可能な金属であれば如何様でもよいが、パターン状に下地金属31を形成するためにはメッキ形成が可能な金属であることが好ましい。下地金属31をなす材料としては、例えば、鉄とニッケルとの合金などが挙げられる。実施の形態1では、下地金属31は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率となる合金により形成されている。下地金属31を形成する合金は、20%以下の不純物を含有していてもよい。下地金属31は、鉄とニッケルとの合計が95%以上の含有率となる合金により形成されていることがより好ましい。この場合、下地金属31を形成する合金は、5%以下の不純物を含有していてもよい。
【0022】
樹脂部40は、転写部30の転写面33を露出させるように、基材20の層22上に積層されている。樹脂部40の表面40aは、転写部30の転写面33よりも高い位置に配置されている。つまり、転写部30の転写面33は、樹脂部40の表面40aに対して凹んでいる。転写面33が樹脂部40の表面40aに対して凹んでいることで、転写パターンを析出させる際の線幅の広がりを抑制することができ、より低抵抗で細い配線を形成することが可能となる。樹脂部40は、離型性を有する光硬化性樹脂により形成されている。具体的には、樹脂部40は、フッ素を含んだ光硬化性樹脂により形成されている。
【0023】
[1-3 メッキ用パターン版の製造方法]
次に、実施の形態1に係るメッキ用パターン版10の製造方法について説明する。図4は、実施の形態1に係るメッキ用パターン版10の製造方法の流れを示す説明図である。
【0024】
まず、図4に示すように、フォトリソグラフィ工程では、電鋳用基板400に感光性物質を含んだパターニング材料401を積層する。積層後に、転写部30の形状に対応した開口部402が形成されるように、パターニング材料401にフォトリソグラフィを実行する。ここで、電鋳用基板400は、電解メッキができる程度の導電性を有する金属から形成されている。具体的には、銅、ステンレス鋼、ニッケルなどで電鋳用基板400を形成してもよい。さらに、ガラスや樹脂基板上にITO、銅、ニッケル、クロムなどの導電性の薄膜が形成されたものを電鋳用基板400としてもよい。また、パターニング材料401は、フォトリソグラフィなどのパターニング加工が可能な材料であればよい。具体的には、繰り返し使用が可能なポリイミドなどが挙げられる。
【0025】
次いで、電解メッキ工程では、電鋳用基板400及びパターニング材料401に電解メッキを施すことで、開口部402に下地金属31を形成する。
【0026】
次いで、転写工程では、基材20に下地金属31を転写する。具体的には、下地金属31の突出部32が、層22の主面22aすなわち基材20の主面20aに対して面一となるように、下地金属31が層22に転写される。これにより、基材20の層22に下地金属31の一部が埋設されるとともに、転写部30の一部が層22から突出する。
【0027】
次いで、樹脂部形成工程では、層22及び下地金属31を覆うように、樹脂部40となる光硬化性樹脂410を基材20に塗布する。
【0028】
次いで、照射工程では、基材20を通して下地金属31に向けて光(例えば紫外光:UV光)を照射する。これにより、光硬化性樹脂410の一部が硬化する。また、下地金属31は光を遮る。光硬化性樹脂410における下地金属31の突出部32に重なる部分412では、その外方から光が進入する程度の厚さが確保されているので、部分412はその光により硬化することとなる。結果的に、光硬化性樹脂410における転写部30に重なる領域411では、硬化させるほどの光が到達しないために、領域411は硬化せずに未硬化となる。
【0029】
次いで、除去工程では、光硬化性樹脂410を溶剤で洗浄することで、光硬化性樹脂410の未硬化の領域411を除去する。これにより、光硬化性樹脂410の残存した部分が樹脂部40となる。これで、メッキ用パターン版10が製造される。
【0030】
[1-4 配線基板の製造方法]
次に、実施の形態1に係るメッキ用パターン版10を用いた配線基板の製造方法について説明する。図5は、実施の形態1に係る配線基板301の製造方法の流れを示す説明図である。
【0031】
図5に示すように、離型処理工程では、転写部30の転写面33に離型処理を施す。ここで、離型処理とは、転写面33に対する転写パターンの離型性を高める処理のことである。具体的には、離型処理としては、転写面33に例えばチアゾール系の離型剤を塗布することで離型層34を形成する。なお、離型処理は、離型剤を塗布するだけでなく、転写面33を改質することで離型性を高める処理であってもよい。
【0032】
次いで、第一無電解メッキ工程では、ニッケルを含むメッキ液中に、離型層34を有するメッキ用パターン版10を浸漬して、無電解メッキを行うことで、離型層34上に転写パターン36を形成する。ただし、無電解メッキではなく、電解メッキを行うことで、離型層34上に転写パターン36を形成してもよく、この場合は第一無電解メッキ工程はメッキ工程となる。これにより、転写部30の転写面33の上方に転写パターン36が形成される。すなわち、転写部30の転写面33に離型層34を介して転写パターン36が形成される。転写パターン36は、ニッケルを含む薄膜層である無電解ニッケル膜となる。なお、無電解メッキ時にメッキ液に還元剤としてジメチルアミンボランを含有させておくことで、転写パターン36がニッケルとボロンとを含んだ薄膜層である無電解ニッケル膜となる。また、無電解メッキ時にメッキ液に還元剤として次亜リン酸塩を含有させておけば、転写パターン36がニッケルとリンとを含んだ薄膜層である無電解ニッケル膜となる。これらの無電解ニッケル膜を転写面33に析出させるためには、下地金属31が無電解メッキ液に対してメッキ活性である必要がある。具体的には下地金属31に還元剤を酸化する触媒作用が必要であり、本開示ではそのメッキ析出作用と剥離性の両立に必要な下地金属31の好ましい形態を見出したため後述の実施例にて説明する。
【0033】
次いで、第二無電解メッキ工程では、例えば銅を含むメッキ液中に、転写パターン36を有するメッキ用パターン版10を浸漬して、無電解メッキを行うことで、転写パターン36上に導電パターン37を形成する。導電パターン37の材料は、無電解メッキで形成可能な、導電性を有した金属であれば銅以外でもよい。銅以外の導電パターン37の材料としては、例えば金、銀などが挙げられる。銅、金、銀は、比較的導電性が高い金属のため導電パターン37の材料として好ましい。
【0034】
次いで、第一黒化処理工程では、導電パターン37上に黒化層38を形成する。黒化層38は、例えば、パラジウムの置換メッキにより形成されてもよいし、導電パターン37の表層をエッチング処理などによって凹凸にすることで形成されてもよい。なお、導電パターン37自体が黒い場合には、黒化層38は不要である。
【0035】
次いで、転写工程では、離型層34、転写パターン36、導電パターン37及び黒化層38を有するメッキ用パターン版10に、配線基板301となる基板302を圧着する。ここで、基板302は、平板状の基材351と、基材351の一方の主面351aに積層された転写樹脂層352とを備えている。基材351は、樹脂、ガラス、金属などにより形成されている。転写樹脂層352は、転写された導電パターン37を固定する性質を有する材料から形成されている。具体的には、転写樹脂層352は、エポキシなどの熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、ヒートシール材料などから形成されている。なお、製造のしやすさの観点から、転写樹脂層352は光硬化性樹脂から形成されているとよい。
【0036】
転写工程で、基板302がメッキ用パターン版10に圧着されると、転写樹脂層352内に黒化層38及び導電パターン37が埋設される。
【0037】
次いで、離型工程では、メッキ用パターン版10から基板302を剥がす。これにより、基板302には、黒化層38、導電パターン37及び転写パターン36が一体化して固定されることになる。この離型時においては、転写パターン36は下地金属31の転写面33から剥離可能に形成されている。このため、転写パターン36を転写面33から均等に剥がすことができる。さらに、メッキ用パターン版10に離型層34が形成されているので、転写パターン36を転写面33からより均等に剥がすことができる。つまり、転写面33に転写パターン36が部分的に残存することが抑制されている。また、樹脂部40は、フッ素を含んでいるので、樹脂部40を均等に基板302から剥がすことができる。
【0038】
次いで、第二黒化処理工程では、転写パターン36上に黒化層39を形成する。黒化層39は、例えば、パラジウムの置換メッキにより形成されてもよいし、転写パターン36の表層をエッチング処理などによって凹凸にすることで形成されてもよい。なお、転写パターン36自体が黒い場合には、黒化層39は不要である。以上の工程によって配線基板301が製造される。
【0039】
[1-5 実施例]
次に、実施の形態に係る下地金属31と転写金属(転写パターン36)の剥離性に関して説明する。ここで、転写金属とは、転写パターン36に相当するパターン化されていないベタ膜である。パターン状の下地金属31上にパターンメッキを析出させるためには無電解ニッケルメッキを用いることが有用である。一方で、無電解ニッケル膜を析出させるためには、下地金属31が無電解メッキ液に対してメッキ活性である必要がある。具体的には下地金属31に還元剤を酸化する触媒作用が必要である。また、同時に析出したメッキ膜が剥離可能であることが必要である。以下にそのメッキ析出作用と剥離性の両立に必要な下地金属31の好ましい形態、具体的には、実施例1~7と、比較例とについて説明する。図6Aは、実施例1~7と比較例との各条件及び評価結果を示す表である。なお、実施例1~7ではハルセル板上にFe-Ni電解メッキ膜を所定の比率で析出させたものを下地金属31として用いた。また、比較例ではSUS304のステンレス箔を下地金属31として用いた。
【0040】
実施例1に係る下地金属31は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率であり、鉄のニッケルに対する比率が20/80である合金から形成されている。実施例1に係る下地金属31に離型層34を形成せずに、ニッケル及びリンを含んだメッキ液で第一無電解メッキ工程を施した。これにより、転写金属はニッケルとリンと含んだ薄膜層となる。このときのメッキ液の温度は70℃である。これにより形成された転写金属の析出状態を評価した。図6Aにおいて、析出状態の評価として、「NG」は無電解Ni膜が均一な膜として析出しないレベルを示し、「G」は無電解Ni膜が均一な膜として析出したレベルを示す。
【0041】
また、転写金属の形成後に、転写工程、離型工程を実行し、転写金属の離型性を評価した。離型性の評価として、「NG」は、離型工程後の転写金属が基板302に部分的にも転写されていない状態を示す。また、「F」は、離型工程後の転写金属が基板302に不均一ながらも全体的に転写されている状態を示す。「G」は、離型工程後の転写金属が基板302に全体的に概ね均一に転写されている状態を示す。「VG」は、離型工程後の転写金属が基板302に全体的に均一に転写されている状態を示す。なお、析出状態が「NG」である場合、転写金属はそもそも析出しないため、離型性評価は「NG」で示す。
【0042】
実施例2に係る下地金属31は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率であり、鉄のニッケルに対する比率が20/80である合金から形成されている。実施例2に係る下地金属31に離型層34を形成し、その後、ニッケル及びリンを含んだメッキ液で第一無電解メッキ工程を施した。これにより、転写金属はニッケルとリンと含んだ薄膜層となる。このときのメッキ液の温度は80℃である。実施例2の評価結果は、析出状態が「G」で示すレベルであり、離型性が「G」で示すレベルである。
【0043】
実施例3に係る下地金属31は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率であり、鉄のニッケルに対する比率が40/60である合金から形成されている。実施例3に係る下地金属31に離型層34を形成し、その後、ニッケル及びリンを含んだメッキ液で第一無電解メッキ工程を施した。これにより、転写金属はニッケルとリンと含んだ薄膜層となる。このときのメッキ液の温度は80℃である。実施例3の評価結果は、析出状態が「G」で示すレベルであり、離型性が「VG」で示すレベルである。
【0044】
実施例4に係る下地金属31は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率であり、鉄のニッケルに対する比率が60/40である合金から形成されている。実施例4に係る下地金属31に離型層34を形成せずに、ニッケル及びリンを含んだメッキ液で第一無電解メッキ工程を施した。これにより、転写金属はニッケルとリンと含んだ薄膜層となる。このときのメッキ液の温度は80℃である。実施例4の評価結果は、析出状態が「G」で示すレベルであり、離型性が「VG」で示すレベルである。
【0045】
実施例5に係る下地金属31は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率であり、鉄のニッケルに対する比率が60/40である合金から形成されている。実施例5に係る下地金属31に離型層34を形成し、その後、ニッケル及びリンを含んだメッキ液で第一無電解メッキ工程を施した。これにより、転写金属はニッケルとリンと含んだ薄膜層となる。このときのメッキ液の温度は80℃である。実施例5の評価結果は、析出状態が「G」で示すレベルであり、離型性が「VG」で示すレベルである。
【0046】
実施例6に係る下地金属31は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率であり、鉄のニッケルに対する比率が60/40である合金から形成されている。実施例6に係る下地金属31に離型層34を形成せずに、ニッケル及びボロンを含んだメッキ液で第一無電解メッキ工程を施した。これにより、転写金属はニッケルとボロンと含んだ薄膜層となる。このときのメッキ液の温度は75℃である。実施例6の評価結果は、析出状態が「G」で示すレベルであり、離型性が「VG」で示すレベルである。
【0047】
実施例7に係る下地金属31は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率であり、鉄のニッケルに対する比率が20/80である合金から形成されている。実施例7に係るメッキ用パターン版10に離型層34を形成し、その後、ニッケル及びボロンを含んだメッキ液で第一無電解メッキ工程を施した。これにより、転写金属はニッケルとボロンと含んだ薄膜層となる。このときのメッキ液の温度は75℃である。実施例7の評価結果は、析出状態が「G」で示すレベルであり、離型性が「G」で示すレベルである。
【0048】
比較例は、下地金属31がステンレス鋼から形成されている点で各実施例とは異なっている。比較例に係る下地金属31に離型層34を形成せずに、ニッケル及びリンを含んだメッキ液で第一無電解メッキ工程を施した。このときのメッキ液の温度は70℃である。比較例の評価結果は、析出状態が「NG」で示すレベルであり、離型性が「NG」で示すレベルである。
【0049】
このように、実施例1~7においては、転写金属にニッケルが含まれるが、剥離可能な転写金属が析出していない。Fe-Ni合金等の下地金属31上に薄い酸化被膜が形成されることで、無電解Ni膜の密着性が落ちている。しかし、Fe-Ni合金の還元剤に対する高い触媒作用のために、自己酸化還元作用による無電解Ni膜が析出される。結果として析出した無電解Ni膜はあまり下地金属31に密着しておらず、剥離しやすくなっていると考えられる。SUSの場合は表面に酸化被膜がつきすぎているか、Fe-Ni合金に比較し、メッキに不活性な金属を多く含むため触媒作用が低く、結果としてNi-Pメッキ膜が析出しづらいと考えられる。特に、下地金属31で鉄が20%以上の含有率であれば、離型層34がなくとも一定の離型性を発揮することがわかる。
【0050】
[1-6 効果など]
以上のように、実施の形態1に係るメッキ用パターン版10は、メッキによって形成された転写パターン36を、配線基板301となる基板302に転写するためのメッキ用パターン版10であって、基材20と、基材20に設けられた複数の転写部30であって、形成された転写パターン36を転写するための複数の転写部30と、を備え、複数の転写部30は、互いに電気的に独立するように基材20に配置されている。
【0051】
これによれば、基材20に、複数の転写部30が互いに電気的に独立するように配置されているので、メッキ用パターン版10の製造時に断線や短絡等の欠陥が発生した場合でも、導通検査等の電気的な検査によってその欠陥の箇所を容易に発見することが可能となる。一方で複数の転写部30が互いに電気的に接続されている場合、転写部30の断線や短絡の評価ができず、メッキ用パターン版10の欠陥を検知するのが困難となる。
【0052】
また、メッキ用パターン版10は、メッキによって形成された転写パターン36を、配線基板301となる基板302に転写するためのメッキ用パターン版10であって、透光性の基材20に、複数の転写部30が配置されている。
【0053】
これによれば、透光性の基材20に、複数の転写部30が配置されているので、メッキ用パターン版10の製造時に基材20を通して光を照射すると、複数の転写部30自体が光を遮ることとなる。
【0054】
例えば、基材20における複数の転写部30の側に転写部30を覆うように光反応性樹脂(光硬化性樹脂410)が積層されている場合には、各転写部30自体が光を遮るために、各転写部30上の光硬化性樹脂410は反応しない。これにより、未硬化の光硬化性樹脂410をその後の工程で除去しやすくすることができる。したがって、各転写部30における転写に寄与する転写面33を光硬化性樹脂410から確実に露出させることができる。露出した各転写面33には、無電解メッキによって転写パターン36が形成され、さらにその上に導電パターン37が形成される。各転写面33が確実に露出されていれば、転写パターン36及び導電パターン37を精度良く形成することができるので、細線化された導電パターン37であっても、品質を安定化することが可能である。
【0055】
実施の形態1に係るメッキ用パターン版10は、メッキによって形成された転写パターン36を、配線基板301となる基板302に転写するためのメッキ用パターン版10であって、透光性の基材20と、基材20に設けられた転写部30であって、形成された転写パターン36を転写するための転写部30を有する。
【0056】
これによれば、透光性の基材20に転写部30が設けられているので、メッキ用パターン版10の製造時に基材20を通して光を照射すると、転写部30自体が光を遮ることとなる。例えば、基材20における転写部30側に当該転写部30を覆うように光反応性樹脂(光硬化性樹脂410)が積層されている場合には、転写部30自体が光を遮るために、転写部30上の光硬化性樹脂410は反応しない。これにより、未硬化の光硬化性樹脂410をその後の工程で除去しやすくすることができる。したがって、転写部30における転写に寄与する転写面33を光硬化性樹脂410から確実に露出させることができる。露出した転写面33には、無電解メッキによって転写パターン36が形成され、さらにその上に導電パターン37が形成される。転写面33が確実に露出されていれば、転写パターン36及び導電パターン37を精度良く形成することができるので、細線化された導電パターン37であっても、品質を安定化することが可能である。
【0057】
導電パターンの細線化が望まれているが、単に電解メッキで導電パターンを形成するには、品質にばらつきが生じてしまうのが実状である。
【0058】
実施の形態1におけるメッキ用パターン版10を用いることにより、前述のように、細線化された導電パターン37の品質を安定化することが可能である。
【0059】
転写部30は、鉄とニッケルとの合金から形成されている。
【0060】
これによれば、転写部30上に無電解メッキで形成された転写パターン36に対する剥離性を高めることができる。したがって、転写パターン36を転写部30から均一に剥がすことができるので、転写パターン36の品質を高めることができる。これにより、その後に転写パターン36上に形成される、細線化された導電パターン37の品質を安定化することが可能である。
【0061】
また、転写部30は、電気メッキにより形成されている。
【0062】
これによれば、電気メッキにより形成された転写部30であっても、転写部30上にメッキで形成された転写パターン36に対する離型性を高めることができる。
【0063】
また、転写部30は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率となる合金から形成されている。
【0064】
これによれば、転写部30上に無電解メッキで形成された転写パターン36に対する剥離性をより高めることができる。
【0065】
また、転写部30は、鉄とニッケルとの合計の含有量に対して、鉄の比率が20%以上となる合金から形成されている。
【0066】
これによれば、転写部30において、転写部30上にメッキで形成された転写パターン36に対する剥離性をより高めることができる。
【0067】
また、転写部は、厚みが1μm以上である。ただし、前述のように、転写部30の厚みは0.1μm以上であってもよい。
【0068】
これによれば、転写部30上に無電解メッキで形成された転写パターン36に対する剥離性をより高めることができる。
【0069】
また、メッキ用パターン版10は、平面視において転写部30以外の領域に配置された樹脂部40を備え、樹脂部40はフッ素を含む。
【0070】
これによれば、転写パターン36の転写時に、樹脂部40に重なる基板302との剥離性を高めることができる。これにより、転写後における転写パターン36の品質を維持することができる。
【0071】
また、実施の形態1に係る配線基板301の製造方法は、メッキ用パターン版10の転写部30に、無電解メッキによって転写パターン36を形成する第一無電解メッキ工程と、転写パターン36を基板302に転写する転写工程と、転写パターン36に無電解メッキによって導電パターン37を形成する第二無電解メッキ工程とを含む。
【0072】
これによれば、上述したように、転写面33が確実に露出されたメッキ用パターン版10の転写部30に、メッキによって転写パターン36が形成されるので、細線化された転写パターン36を精度良く形成することができる。また、転写パターン36に、無電解メッキによって導電パターン37が形成されるので、導電パターン37の精度も高めることができる。したがって、細線化された導電パターン37であっても、品質を安定化することが可能である。
【0073】
また、第一無電解メッキ工程前に、転写部30に離型処理を施す離型処理工程を含む。
【0074】
これによれば、離型層34によって転写パターン36を転写部30から確実に剥離させることができる。したがって、転写パターン36を転写部30から均一に剥がすことができ、転写パターン36の品質をより高めることができる。
【0075】
また、配線基板301は、タッチパネル用の配線基板である。
【0076】
これによれば、タッチパネル用の配線基板であっても、細線化された導電パターン37の品質を安定化することができる。
【0077】
図6Bは、実施の形態1に係る他のメッキ用パターン版10Fの部分断面図である。図6Bにおいて、図3に示すメッキ用パターン版10と同じ部分には同じ参照番号を付す。メッキ用パターン版10Fは図2から図5に示すメッキ用パターン版10の転写部30の代わりに転写部90を備える。転写部の厚みが1μm以上である場合には、積層された複数の金属層で転写部を形成することができる。図6Bに示すメッキ用パターン版10Fの転写部90は、金属層91と、金属層91に積層されて金属層91を支持する金属層92とを有する。金属層91は転写面33を有して、鉄とニッケルとを含有する。金属層92は1つ以上の層よりなり、メッキ用パターン版10Fでは、金属層92は、互いに積層された2つの層921、922よりなる。例えば、転写部30の厚さが3μmである場合、金属層91は転写面33を構成する鉄とニッケルの合金により形成されて0.2μmの厚みを有し、金属層92はニッケルにより形成されて2.8μmの厚みを有する。
【0078】
(実施の形態2)
[2-1 メッキ用パターン版]
図7は、実施の形態2に係るメッキ用パターン版10Aの部分的な概略構成を示す部分断面図である。具体的には、図7は、図3に対応する図である。なお、以降の説明において、実施の形態1と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0079】
図7に示すように、メッキ用パターン版10Aは、基材20と、下地金属31と、無機膜50とを備えている。無機膜50は、下地金属31の転写面33を露出させるように、下地金属31の転写部30の側面と、一対の突出部32の上面と、基材20の上面(主面20a)とを覆っている。無機膜50は、導電性を有していない無機材料によって形成されている。無機膜50としては、例えばDLC(Diamond Like Carbon)膜、スパッタ膜等が挙げられる。
【0080】
[2-2 メッキ用パターン版の製造方法]
次に、実施の形態2に係るメッキ用パターン版10Aの製造方法について説明する。図8は、実施の形態2に係るメッキ用パターン版10Aの製造方法の流れを示す説明図である。
【0081】
図8に示すように、フォトリソグラフィ工程では、電鋳用基板400に、感光性物質を含んだパターニング材料401を積層する。積層後に、転写部30の形状に対応した開口部402が形成されるように、パターニング材料401にフォトリソグラフィを実行する。ここで、電鋳用基板400は、電解メッキができる程度の導電性を有する金属から形成されている。具体的には、銅、ステンレス鋼、ニッケルなどである。また、パターニング材料401は、フォトリソグラフィなどのパターニング加工が可能な材料であればよい。具体的には、繰り返し使用が可能なポリイミドなどが挙げられる。
【0082】
次いで、電解メッキ工程では、電鋳用基板400及びパターニング材料401に電解メッキを施すことで、開口部402に下地金属31を形成する。
【0083】
次いで、転写工程では、基材20に下地金属31を転写する。具体的には、下地金属31の突出部32が、層22の主面22aすなわち基材の主面20aに対して面一となるように、下地金属31が層22に転写される。これにより、基材20の層22に下地金属31の一部が埋設されるとともに、転写部30の一部が層22から突出する。
【0084】
次いで、ポジレジスト塗布工程では、層22及び下地金属31を覆うように、ポジレジスト59を基材20に塗布する。ポジレジスト59は、ポジ型感光材料であり、リフトオフ性を有していれば好ましい。
【0085】
次いで、照射工程では、基材20を通して下地金属31に向けて光(例えば紫外光:UV光)を照射する。この際、下地金属31が光を遮るため、ポジレジスト59の光を受ける部分では溶解性が増大する。つまり、ポジレジスト59における転写部30に重ならない領域591では、溶解性が高まり、転写部30に重なる部分592は未反応となる。
【0086】
次いで、現像工程では、ポジレジスト59における溶解性が高まった領域591を現像液によって除去する。これにより、転写部30上にのみ未反応のポジレジスト59の部分592が残存する。
【0087】
次いで、無機膜形成工程では、基材20の上面、下地金属31の側面及びポジレジスト59の露出する上面に無機膜50を形成する。
【0088】
次いで、除去工程では、ポジレジスト59を剥離または研磨することで除去して、転写部30の転写面33を露出させる。これで、メッキ用パターン版10Aが製造される。実施の形態2に係るメッキ用パターン版10Aにおいても、実施の形態1に係るメッキ用パターン版10と同等の作用効果を得ることができる。
【0089】
[2-3 配線基板の製造方法1]
次に、実施の形態2に係るメッキ用パターン版10Aを用いた配線基板の製造方法1について説明する。図9は、実施の形態2に係る配線基板301の製造方法1の流れを示す説明図である。
【0090】
図9に示すように、離型処理工程では、転写部30の転写面33に離型処理を施し、転写面33に離型層34を形成する。
【0091】
次いで、第一無電解メッキ工程では、ニッケルを含むメッキ液中に、離型層34を有するメッキ用パターン版10Aを浸漬して、無電解メッキを行うことで、離型層34上に転写パターン36を形成する。ただし、無電解メッキではなく、電解メッキを行うことで、離型層34上に転写パターン36を形成してもよく、この場合は第一無電解メッキ工程はメッキ工程となる。これにより、転写部30の転写面33の上方に転写パターン36が形成される。すなわち、転写部30の転写面33に離型層34を介して転写パターン36が形成される。
【0092】
次いで、第二無電解メッキ工程では、例えば銅を含むメッキ液中に、転写パターン36を有するメッキ用パターン版10Aを浸漬して、無電解メッキを行うことで、転写パターン36上に導電パターン37を形成する。
【0093】
次いで、第一黒化処理工程では、導電パターン37上に黒化層38を形成する。
【0094】
次いで、転写工程では、離型層34、転写パターン36、導電パターン37及び黒化層38を有するメッキ用パターン版10Aに配線基板301となる基板302を圧着する。転写工程で、基板302がメッキ用パターン版10Aに圧着されると、転写樹脂層352内に黒化層38及び導電パターン37が埋設される。
【0095】
次いで、離型工程では、メッキ用パターン版10Aから基板302を剥がす。これにより、基板302には、黒化層38、導電パターン37及び転写パターン36が一体化して固定されることになる。この離型時においては、転写パターン36がニッケルを含む薄膜層であるので、転写パターン36単体で高い離型性を有している。このため、転写パターン36を転写面33から均等に剥がすことができる。さらに、メッキ用パターン版10Aに離型層34が形成されているので、転写パターン36を転写面33からより均等に剥がすことができる。つまり、転写面33に転写パターン36が部分的に残存することが抑制されている。
【0096】
次いで、第二黒化処理工程では、転写パターン36上に黒化層39を形成する。以上の工程によって配線基板301が製造される。この実施の形態2に係る配線基板の製造方法1においても、実施の形態1の配線基板の製造方法と同等の作用効果を得ることができる。
【0097】
[2-4 配線基板の製造方法2]
次に、実施の形態2に係るメッキ用パターン版10Aを用いた配線基板の他の製造方法2について説明する。図10は、実施の形態2に係る配線基板301の製造方法2の流れを示す説明図である。
【0098】
図10に示すように、離型処理工程では、転写部30の転写面33に離型処理を施し、転写面33に離型層34を形成する。
【0099】
次いで、第一無電解メッキ工程では、ニッケルを含むメッキ液中に、離型層34を有するメッキ用パターン版10Aを浸漬して、無電解メッキを行うことで、離型層34上に転写パターン36を形成する。ただし、無電解メッキではなく、電解メッキを行うことで、離型層34上に転写パターン36を形成してもよく、この場合は第一無電解メッキ工程はメッキ工程となる。これにより、転写部30の転写面33の上方に転写パターン36aが形成される。すなわち、転写部30の転写面33に離型層34を介して転写パターン36aが形成される。
【0100】
次いで、第一黒化処理工程では、転写パターン36a上に黒化層38aを形成する。
【0101】
次いで、転写工程では、離型層34、転写パターン36a及び黒化層38aを有するメッキ用パターン版10Aに、配線基板301となる基板302を圧着する。転写工程で、基板302がメッキ用パターン版10Aに圧着されると、転写樹脂層352内に黒化層38a及び転写パターン36aが埋設される。
【0102】
次いで、離型工程では、メッキ用パターン版10Aから基板302を剥がす。これにより、基板302には、黒化層38a及び転写パターン36aが一体化することになる。この離型時においては、転写パターン36aがニッケルを含む薄膜層であるので、転写パターン36a単体で高い離型性を有している。このため、転写パターン36aを転写面33から均等に剥がすことができる。さらに、メッキ用パターン版10Aに離型層34が形成されているので、転写パターン36aを転写面33からより均等に剥がすことができる。つまり、転写面33に転写パターン36aが部分的に残存することが抑制されている。
【0103】
次いで、第二無電解メッキ工程では、例えば銅を含むメッキ液中に、転写パターン36aを有する基板302を浸漬して、無電解メッキを行うことで、転写パターン36a上に導電パターン37aを形成する。このように、第二無電解メッキ工程は、転写工程の後に行われてもよい。
【0104】
次いで、第二黒化処理工程では、導電パターン37a上に黒化層39aを形成する。以上の工程によって配線基板301Aが製造される。この実施の形態2に係る配線基板の製造方法2においても、実施の形態1に係る配線基板の製造方法と同等の作用効果を得ることができる。
【0105】
(実施の形態3)
[3-1 メッキ用パターン版]
図11は、実施の形態3に係るメッキ用パターン版10Bの部分的な概略構成を示す部分断面図である。具体的には、図11は、図3に対応する図である。なお、以降の説明において、実施の形態1と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0106】
図11に示すように、メッキ用パターン版10Bは、基材20と、下地金属31bと、導電膜47bと、樹脂部40bとを備えている。
【0107】
下地金属31bは、実施の形態1、2とは異なり、突出部32を有しておらず、全体として転写部30bとなっている。下地金属31bと、基材20の層22との間には、導電膜47bが介在している。導電膜47bは、下地金属31bの下面及び側面の全体を覆っている。また、下地金属31bすなわち転写部30bの転写面33bは露出している。導電膜47bは、電解メッキができる程度の導電性を有する金属から形成されていればよい。例えば、導電膜47bを形成する金属としては、銅、ステンレス鋼、ニッケルなどが挙げられる。導電膜47bと、層22との間に、導電膜47bと層22とを密着する密着層を介在させてもよい。
【0108】
樹脂部40bは、転写部30bの転写面33bを露出させるように、基材20の層22上に積層されている。樹脂部40bの表面40baは、転写部30bの転写面33bよりも高い位置に配置されている。つまり、転写部30bの転写面33bは、樹脂部40bの表面40baに対して凹んでいる。
【0109】
[3-2 メッキ用パターン版の製造方法]
次に、実施の形態3に係るメッキ用パターン版10Bの製造方法について説明する。図12は、実施の形態3に係るメッキ用パターン版10Bの製造方法の流れを示す説明図である。
【0110】
図12に示すように、インプリント工程では、下地金属31bが埋設される凹部221を、基材20の層22に刻印することで形成する。
【0111】
次いで、成膜工程では、基材20の層22に、スパッタリングまたは無電解メッキを施すことで、導電膜47bを成膜する。これにより、層22の上面及び凹部221の内面が導電膜47bによって覆われる。
【0112】
次いで、電解メッキ工程では、導電膜47bを有する基材20に電解メッキを施すことで、層22に、下地金属31bとなる金属層331bを積層する。
【0113】
次いで、研磨工程では、基材20の層22が露出するように、金属層331b及び導電膜47bを研磨する。これにより、金属層331bが下地金属31bとなる。
【0114】
次いで、樹脂部形成工程では、層22及び下地金属31bを覆うように、樹脂部40bとなる光硬化性樹脂410bを基材20に塗布する。
【0115】
次いで、照射工程では、基材20を通して下地金属31bに向けて光(例えば紫外光:UV光)を照射する。これにより、光硬化性樹脂410bの一部が硬化する。また、下地金属31bは光を遮る。光硬化性樹脂410bにおける下地金属31bに重なる領域411bでは、光硬化性樹脂410bを硬化させるほどの光が到達しないために、領域411bは未硬化となる。
【0116】
次いで、除去工程では、光硬化性樹脂410bを溶剤で洗浄することで、光硬化性樹脂410bの未硬化の領域411bを除去する。これにより、光硬化性樹脂410bの残存した部分が樹脂部40bとなる。これで、メッキ用パターン版10Bが製造される。実施の形態3に係るメッキ用パターン版10Bにおいても、実施の形態1に係るメッキ用パターン版10と同等の作用効果を得ることができる。
【0117】
無電解めっきで転写パターンを析出させる転写面33bの機能は転写部30bの転写面33bを含む部分の厚みが0.1μm以上の場合に十分である。したがって、転写部30bの厚みは好ましくは0.1μm以上である。
【0118】
(実施の形態4)
[4-1 メッキ用パターン版]
図13は、実施の形態4に係るメッキ用パターン版10Cの部分的な概略構成を示す部分断面図である。具体的には、図13は、図3に対応する図である。なお、以降の説明において、実施の形態1と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0119】
図13に示すように、メッキ用パターン版10Cは、基材20cと、下地金属31cと、導電膜47cと、樹脂部40cとを備えている。
【0120】
基材20cは、透光性を有した板材であり、例えば、ガラス、透光性樹脂などから形成されている。基材20cの一方の主面20ca上に樹脂部40cが積層されている。
【0121】
下地金属31cは、実施の形態1、2とは異なり、突出部32を有しておらず、全体として転写部30cとなっている。下地金属31cと、樹脂部40cとの間には、導電膜47cが介在している。導電膜47cは、下地金属31cの下面及び側面の全体を覆っている。また、下地金属31cの転写面33cは露出している。導電膜47cは、電解メッキができる程度の導電性を有する金属から形成されていればよい。例えば、導電膜47cを形成する金属としては、銅、ステンレス鋼、ニッケルなどが挙げられる。導電膜47cと、樹脂部40cとの間に、当該導電膜47cと樹脂部40cを密着する密着層を介在させてもよい。
【0122】
樹脂部40cは、転写部30cの転写面33cを露出させるように、基材20c上に積層されている。樹脂部40cの表面40caは、転写部30cの転写面33cと面一となるように配置されている。
【0123】
[4-2 メッキ用パターン版の製造方法]
次に、実施の形態4に係るメッキ用パターン版10Cの製造方法について説明する。図14は、実施の形態4に係るメッキ用パターン版10Cの製造方法の流れを示す説明図である。
【0124】
図14に示すように、インプリント工程では、基材20cの一方の主面20caに積層された樹脂部40cに、下地金属31cが埋設される凹部401cを刻印することで形成する。
【0125】
次いで、成膜工程では、樹脂部40cに、スパッタリングまたは無電解メッキを施すことで、導電膜47cを成膜する。これにより、樹脂部40cの上面(表面40ca)及び凹部401cの内面401caが導電膜47cによって覆われるように、樹脂部40cの上面(表面40ca)及び凹部401cの内面401ca上に導電膜47cが形成される。
【0126】
次いで、電解メッキ工程では、導電膜47c、樹脂部40cを有する基材20cに電解メッキを施すことで、下地金属31cとなる金属層331cを導電膜47cに積層する。
【0127】
次いで、研磨工程では、樹脂部40cが露出するように、金属層331c及び導電膜47cを研磨する。これにより、金属層331cが下地金属31cとなる。これで、メッキ用パターン版10Cが製造される。実施の形態4に係るメッキ用パターン版10Cにおいても、実施の形態1に係るメッキ用パターン版10と同等の作用効果を得ることができる。
【0128】
[その他]
以上、本開示に係るメッキ用パターン版及び配線基板の製造方法について、上記各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記の各実施の形態に限定されるものではない。
【0129】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態及び各変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0130】
本開示の一態様に係るメッキ用パターン版は、メッキによって形成された転写パターンを、配線基板となる基板に転写するためのメッキ用パターン版であって、基材と、基材に設けられた複数の転写部であって、形成された転写パターンを転写するための複数の転写部と、を備え、複数の転写部は、互いに電気的に独立するように基材に配置されている。
【0131】
これによれば、基材20に、複数の転写部30が互いに電気的に独立するように配置されているので、メッキ用パターン版10の製造時に断線や短絡が発生した場合でも、電気的な検査によって欠陥の箇所を容易に発見することが可能となる。一方で複数の転写部30が互いに電気的に接続されている場合、転写部の断線や短絡の評価ができず、メッキ用パターン版10の欠陥を検知するのが困難となる。
【0132】
また、メッキ用パターン版は透光性の基材と複数の転写部を有する。
【0133】
これによれば、メッキ用パターン版の製造時に基材側から光を照射すると、複数の転写部自体が光を遮ることとなる。例えば、基材における複数の転写部側に各転写部を覆うように光反応性樹脂が積層されている場合には、各転写部自体が光を遮るために、各転写部上の光反応性樹脂は反応しない。これにより、未反応の光反応性樹脂をその後の工程で除去しやすくすることができる。したがって、各転写部における転写に寄与する転写面を確実に露出させることができる。露出した各転写面には、メッキによって転写パターンが形成され、さらにその上に導電パターンが形成される。各転写面が確実に露出されていれば、転写パターン及び導電パターンを精度良く形成することができるので、細線化された導電パターンであっても、品質を安定化することが可能である。
【0134】
本開示の一態様に係るメッキ用パターン版は、メッキによって形成された転写パターンを、配線基板となる基板に転写するためのメッキ用パターン版であって、透光性の基材と、基材に設けられた転写部であって、形成された転写パターンを転写するための転写部を有する。
【0135】
これによれば、透光性の基材に転写部が設けられているので、メッキ用パターン版の製造時に基材側から光を照射すると、転写部自体が光を遮ることとなる。例えば、基材における転写部側に当該転写部を覆うように光反応性樹脂が積層されている場合には、転写部自体が光を遮るために、転写部上の光反応性樹脂は反応しない。これにより、未反応の光反応性樹脂をその後の工程で除去しやすくすることができる。したがって、転写部における転写に寄与する転写面を確実に露出させることができる。露出した転写面には、メッキによって転写パターンが形成され、さらにその上に導電パターンが形成される。転写面が確実に露出されていれば、転写パターン及び導電パターンを精度良く形成することができるので、細線化された導電パターンであっても、品質を安定化することが可能である。
【0136】
また、転写部は、鉄とニッケルとの合金から形成されている。
【0137】
これによれば、転写部上にメッキで形成された転写パターンに対する剥離性を高めることができる。したがって、転写パターンを転写部から均一に剥がすことができるので、転写パターンの品質を高めることができる。これにより、その後に転写パターン上に形成される、細線化された導電パターンの品質を安定化することが可能である。
【0138】
また、転写部は、電気メッキにより形成されている。
【0139】
これによれば、当該転写部上にメッキで形成された転写パターンに対する離型性を高めることができる。
【0140】
また、転写部は、鉄とニッケルとの合計が80%以上の含有率となる合金から形成されている。
【0141】
これによれば、転写部上にメッキで形成された転写パターンに対する剥離性をより高めることができる。
【0142】
また、転写部は、鉄とニッケルとの合計の含有量に対して、鉄の比率が20%以上である。
【0143】
これによれば、転写部上にメッキで形成された転写パターンに対する剥離性をより高めることができる。
【0144】
また、転写部は、厚みが0.1μm以上である。
【0145】
これによれば、転写部上にメッキで形成された転写パターンに対する剥離性をより高めることができる。
【0146】
また、メッキ用パターン版は、平面視において転写部以外の領域に配置された樹脂部を備え、樹脂部はフッ素を含む。
【0147】
これによれば、転写パターンの転写時に、樹脂部に重なる部材との剥離性を高めることができる。これにより、転写後における転写パターンの品質を維持することができる。
【0148】
また、本開示の一態様に係る配線基板の製造方法は、上記メッキ用パターン版の転写部に、メッキによって転写パターンを形成するメッキ工程と、転写パターンを基板に転写する転写工程とを含む。
【0149】
これによれば、上述したように、転写面が確実に露出されたメッキ用パターン版の転写部に、メッキによって転写パターンが形成されるので、細線化された転写パターンを精度良く形成することができる。また、この転写パターンには、導電パターンを形成されると、導電パターンの精度も高めることができる。したがって、細線化された導電パターンであっても、品質を安定化することが可能である。
【0150】
また、配線基板の製造方法は、メッキ工程前に、転写部に離型処理を施す離型処理工程を含む。
【0151】
これによれば、離型層によって転写パターンを転写部から確実に剥離させることができる。したがって、転写パターンを転写部から均一に剥がすことができ、転写パターンの品質をより高めることができる。
【0152】
また、配線基板は、タッチパネル用の配線基板である。
【0153】
これによれば、配線基板がタッチパネル用の配線基板の細線化された導電パターンの品質を安定化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本開示は、例えばタッチパネルなどに用いられる配線基板の製造時において有用である。
【符号の説明】
【0155】
10,10A,10B,10C,10F メッキ用パターン版
20,20c 基材
21 層
22 層
30,30b,30c 転写部
31,31b,31c 下地金属
32 突出部
33,33b,33c 転写面
34 離型層
36,36a 転写パターン
37,37a 導電パターン
38,38a,39,39a 黒化層
40,40b,40c 樹脂部
47b,47c 導電膜
50 無機膜
59 ポジレジスト
221 凹部
300 タッチパネル
301,301A 配線基板
302 基板
310 導電パターン
311 電極
312 引き出し配線
320 導電パターン
321 電極
322 引き出し配線
330 フレキシブル配線基板
331b,331c 金属層
351 基材
352 転写樹脂層
400 電鋳用基板
401 パターニング材料
401c 凹部
402 開口部
410,410b 光硬化性樹脂
411,411b 領域
591 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14