(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】入力装置及び入力システム
(51)【国際特許分類】
H01H 36/00 20060101AFI20240126BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20240126BHJP
H01H 13/64 20060101ALI20240126BHJP
H01H 89/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H01H36/00 K
H01H36/00 J
G06F3/02 F
H01H36/00 Y
H01H13/64
H01H89/00
H01H36/00 D
(21)【出願番号】P 2021532714
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2020021552
(87)【国際公開番号】W WO2021010037
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019132224
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】山林 正明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勇太
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中江 竜
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-123430(JP,A)
【文献】特開2017-088105(JP,A)
【文献】特開2004-045243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
H01H 36/00 - 36/02
H01H 89/00 - 89/10
G06F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作体で操作される入力装置であって、
前記操作体で操作されるように構成された検知面と、
第1固定電極と、
前記第1固定電極の上面と対向する下面を有して前記第1固定電極と容量結合し、前記検知面に対する前記操作体による押圧に応じて前記第1固定電極に接近するように変位する可動電極と、
前記入力装置の外部に接続されるように構成されており、前記第1固定電極と前記可動電極との間の容量の変化を含む第1電気信号を前記入力装置の外部に出力するよう構成された第1端子と、
前記入力装置の外部に接続されるように構成されており、前記操作体と前記可動電極との間の容量変化を含む第2電気信号を前記可動電極から前記入力装置の外部に出力するよう構成された第2端子と、
前記可動電極の前記下面に対向する上面を有する第2固定電極と、
容量を介さずに前記可動電極と
前記第2固定電極と前記第2端子とを電気的に接続する直結電路と、
前記可動電極の前記下面に対向する上面を有して前記可動電極に容量結合する第3固定電極と、
前記入力装置の外部に接続されるように構成されており、前記第3固定電極と前記可動電極との間の容量の変化を含む第3電気信号を前記入力装置の外部に出力するよう構成された第3端子と、
を備えた入力装置。
【請求項2】
前記可動電極と前記第1固定電極との間に介在する絶縁部材を更に備え、
前記絶縁部材は切欠部を有し、
前記直結電路は、前記切欠部を通して前記可動電極を前記第2固定電極と電気的に接続している、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記第1固定電極の前記上面のうちの前記可動電極の前記下面に対向する領域の面積は、
前記第2固定電極の前記上面のうちの前記可動電極の前記下面に対向する領域の面積と前記第3固定電極の前記上面のうちの前記可動電極の前記下面に対向する領域の面積との和に実質的に等しい、請求項
1または
2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記第1固定電極の前記上面のうちの前記可動電極の前記下面と対向する領域の面積は、前記第2固定電極の前記上面のうちの前記可動電極の前記下面に対向する領域の面積と前記第3固定電極の前記上面のうちの前記可動電極の前記下面に対向する領域の面積との和と異なる、請求項
1または
2に記載の入力装置。
【請求項5】
前記操作体との間で容量を形成する1つ以上の補助固定電極と、
前記入力装置の外部に接続されるように構成されており、前記1つ以上の補助固定電極と前記操作体との間の容量の変化をそれぞれ含む1つ以上の補助電気信号を前記入力装置の外部に出力するよう構成された1つ以上の補助端子と、
をさらに備えた、請求項1~
4の何れか1項に記載の入力装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の入力装置と、
前記入力装置の前記第1端子と前記第2端子と前記1つ以上の補助端子とに接続された検出回路と、
を備えた入力システム。
【請求項7】
前記検出回路は、前記第1電気信号と前記第2電気信号と前記1つ以上の補助電気信号のうち前記第2電気信号と前記1つ以上の補助電気信号とのみに基づいて前記検知面に前記操作体が近接又は接触したか否かを検出するように構成されている、請求項
6に記載の入力システム。
【請求項8】
前記検出回路は、前記第1電気信号と前記第2電気信号と前記1つ以上の補助電気信号とのうち前記1つ以上の補助電気信号のみに基づいて前記検知面に前記操作体が近接又は接触したか否かを検出する、請求項
6に記載の入力システム。
【請求項9】
前記検出回路は、
前記第1電気信号に基づいて前記検知面に対する前記操作体による押圧を検出する感圧検出処理を実行し、
前記第2電気信号に基づいて前記検知面に対する前記操作体の近接又は接触を検出する近接検出処理を実行し、
前記感圧検出処理と前記近接検出処理とを切り替える、
ように構成されている、請求項
6に記載の入力システム。
【請求項10】
前記検出回路は、前記感圧検出処理と前記近接検出処理とを時分割で繰り返して実行するように構成されている、請求項
9に記載の入力システム。
【請求項11】
前記検出回路は、前記近接検出処理によって前記検知面に対する前記操作体の近接又は接触を検出すると、前記近接検出処理を実行する処理時間を減少させ、前記感圧検出処理を実行する処理時間を長くする、請求項
10に記載の入力システム。
【請求項12】
前記検出回路は、前記近接検出処理によって前記検知面に対する前記操作体の近接又は接触を検出すると、前記近接検出処理を実行する処理時間を削減時間だけ減少させ、前記感圧検出処理を実行する処理時間を前記削減時間だけ長くする、請求項
11に記載の入力システム。
【請求項13】
前記検出回路は、前記近接検出処理によって前記検知面に対する前記操作体の近接又は接
触を検出すると、前記感圧検出処理を実行しかつ前記近接検出処理を実行しない、請求項
10に記載の入力システム。
【請求項14】
操作体で操作される入力装置と、前記入力装置に接続された検出回路と、を備えた入力システムであって、
前記入力装置は、
前記操作体で操作されるように構成された検知面と、
第1固定電極と、
前記第1固定電極の上面と対向する下面を有して前記第1固定電極と容量結合し、前記検知面に対する前記操作体による押圧に応じて前記第1固定電極に接近するように変位する可動電極と、
前記入力装置の外部に接続されるように構成されており、前記第1固定電極と前記可動電極との間の容量の変化を含む第1電気信号を前記入力装置の外部に出力するよう構成された第1端子と、
前記入力装置の外部に接続されるように構成されており、前記操作体と前記可動電極との間の容量変化を含む第2電気信号を前記可動電極から前記入力装置の外部に出力するよう構成された第2端子と、
容量を介さずに前記可動電極と前記第2端子とを電気的に接続する直結電路と、
を備え、
前記検出回路は、
前記入力装置の前記第1端子と前記第2端子とに接続され、
前記第1電気信号に基づいて前記検知面に対する前記操作体による押圧を検出する感圧検出処理を実行し、
前記第2電気信号に基づいて前記検知面に対する前記操作体の近接又は接触を検出する近接検出処理を実行し、
前記感圧検出処理と前記近接検出処理とを切り替える、
ように構成されている、入力システム。
【請求項15】
前記入力装置は、
前記操作体との間で容量を形成する1つ以上の補助固定電極と、
前記入力装置の外部に接続されるように構成されており、前記1つ以上の補助固定電極と前記操作体との間の容量の変化をそれぞれ含む1つ以上の補助電気信号を前記入力装置の外部に出力するよう構成された1つ以上の補助端子と、
をさらに備えた、請求項14に記載の入力システム。
【請求項16】
前記検出回路は、
前記1つ以上の補助端子に接続され、
前記第1電気信号と前記第2電気信号と前記1つ以上の補助電気信号のうち前記第2電気信号と前記1つ以上の補助電気信号とのみに基づいて前記検知面に前記操作体が近接又は接触したか否かを検出するように構成されている、
請求項15に記載の入力システム。
【請求項17】
前記検出回路は、
前記1つ以上の補助端子に接続され、
前記第1電気信号と前記第2電気信号と前記1つ以上の補助電気信号とのうち前記1つ以上の補助電気信号のみに基づいて前記検知面に前記操作体が近接又は接触したか否かを検出する、
請求項15に記載の入力システム。
【請求項18】
前記検出回路は、前記感圧検出処理と前記近接検出処理とを時分割で繰り返して実行する
ように構成されている、請求項14に記載の入力システム。
【請求項19】
前記検出回路は、前記近接検出処理によって前記検知面に対する前記操作体の近接又は接触を検出すると、前記近接検出処理を実行する処理時間を減少させ、前記感圧検出処理を実行する処理時間を長くする、請求項18に記載の入力システム。
【請求項20】
前記検出回路は、前記近接検出処理によって前記検知面に対する前記操作体の近接又は接触を検出すると、前記近接検出処理を実行する処理時間を削減時間だけ減少させ、前記感圧検出処理を実行する処理時間を前記削減時間だけ長くする、請求項19に記載の入力システム。
【請求項21】
前記検出回路は、前記近接検出処理によって前記検知面に対する前記操作体の近接又は接触を検出すると、前記感圧検出処理を実行しかつ前記近接検出処理を実行しない、請求項18に記載の入力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種電子機器への入力に用いる入力装置と、この入力装置を備える入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、圧力センサを備える従来の入力装置を開示する。この入力装置は、弾性体と、弾性体の内部に配置された圧力センサとを備える。入力者は、操作体である指で弾性体を押圧して弾性変形させる。入力装置は、弾性体の弾性変形を圧力センサで検出し、その検知結果を電気信号として出力する。
【0003】
圧力センサの内部に可動電極と固定電極とが設けられている場合がある。可動電極と固定電極との間には静電容量が形成されている。指による押圧に応じて可動電極が変位すると、この静電容量は変化する。固定電極からは静電容量の変化を含む電気信号が出力される。圧力センサは、固定電極から出力される電気信号に基づいて、指による押圧を感知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
入力装置は、操作体で操作されるように構成された検知面と、固定電極と、可動電極と、入力装置の外部に接続されるように構成された第1端子と第2端子と、容量を介さずに可動電極と第2端子とを電気的に接続する直結電路とを備える。可動電極は。固定電極の上面と対向する下面を有して固定電極と容量結合し、検知面に対する操作体による押圧に応じて固定電極に接近するように変位する。第1端子は、固定電極と可動電極との間の容量の変化を含む電気信号を入力装置の外部に出力するよう構成されている。第2端子は、操作体と可動電極との間の容量変化を含む電気信号を可動電極から入力装置の外部に出力するよう構成されている。
【0006】
この入力装置は、操作体の近接又は接触の検知感度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は一実施形態に係る入力装置の斜視図である。
【
図2】
図2は一実施形態に係る入力システムの概略ブロック構成図である。
【
図3】
図3は一実施形態に係る入力装置の分解斜視図である。
【
図4】
図4は一実施形態に係る入力装置の固定電極の平面図である。
【
図5】
図5は
図1に示す入力装置のA1-A1線に沿った模式的な断面図である。
【
図6】
図6は
図1に示す入力装置のA2-A2線に沿った模式的な断面図である。
【
図7A】
図7Aは
図1に示す入力装置のA3-A3線に沿った模式的な断面図である。
【
図7B】
図7Bは
図1に示す入力装置のA3-A3線に沿った模式的な断面図である。
【
図8A】
図8Aは一実施形態に係る入力システムの近接検出処理の動作を示す模式図である。
【
図8B】
図8Bは一実施形態に係る入力システムの近接検出処理の別の動作を示す模式図である。
【
図9A】
図9Aは一実施形態に係る入力システムの感圧検出処理の動作を示す模式図である。
【
図9B】
図9Bは一実施形態に係る入力システムの感圧検出処理の別の動作を示す模式図である。
【
図9C】
図9Cは一実施形態に係る入力システムの感圧検出処理の更に別の動作を示す模式図である。
【
図10A】
図10Aは一実施形態に係る入力装置に対する操作体の操作状態を示す模式図である。
【
図10B】
図10Bは一実施形態に係る入力装置に対する操作体の他の操作状態を示す模式図である。
【
図10C】
図10Cは一実施形態に係る入力装置に対する操作体のさらに他の操作状態を示す模式図である。
【
図10D】
図10Dは一実施形態に係る入力装置に対する操作体のさらに他の操作状態を示す模式図である。
【
図11】
図11は一実施形態に係る変形例1の入力装置の固定電極の平面図である。
【
図12A】
図12Aは一実施形態に係る変形例2の入力装置の固定電極の平面図である。
【
図12B】
図12Bは一実施形態に係る変形例2の入力装置の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0009】
(1)全体構成
以下、本実施形態に係る入力装置1及び入力システム100の全体構成について説明する。
図1は入力装置1の斜視図である。
図2は入力システム100の概略ブロック構成図である。
【0010】
入力システム100は、
図1及び
図2に示すように、入力装置1と、検出回路9とを備えている。
【0011】
入力システム100は、各種の電子機器に適用され得る。入力システム100は、操作体U1による操作の入力を受け付け、操作体U1の操作状態を判定し、その判定結果を外部(例えば入力システム100が適用された電子機器内の回路モジュール)に出力可能である。ここで、操作体U1による操作の入力は、例えば、入力装置1の検知面S0に対する操作体U1による押圧、及び、検知面S0に対する操作体U1の近接及び接触によって行われる。
【0012】
なお、近接とは、検知面S0に非接触で近づくことであり、接触とは、検知面S0を弾性変形させないように検知面S0に軽く接することであり、押圧とは、検知面S0を弾性変形させるように押し込むことである。
【0013】
図1では入力装置1の検知面S0は上方向Duを向いているが、実際の検知面S0の向きはこれに限らない。操作体U1は、一例として、人の指先(生体の一部)であることを想定するが、特に限定されない。操作体U1は、生体の一部及び当該一部を覆う物(例えば手袋)を含んでもよい。操作体U1は、生体が保持する物(例えばペン型の操作部材)を含んでもよい。入力装置1は、操作体U1から、直接押圧又は接触を受けるだけに限定されず、検知面S0の上方に配置される操作板を介して押圧又は接触を受けてもよい。
【0014】
入力装置1は、操作体U1による操作の入力を受け付け、その入力された操作に応じた電気信号を入力装置1の外部、例えば検出回路9に出力可能である。入力装置1は、電子機器の筐体に保持されてもよい。
【0015】
検出回路9は、入力装置1から出力された電気信号に基づいて、入力装置1に入力された操作体U1による操作の操作状態を判定し、その判定結果を入力システム100の外部、例えば電子機器内の回路モジュールに出力可能である。検出回路9は、電子機器の筐体内に収容されてもよい。
【0016】
(2)入力装置
図3は入力装置1の分解斜視図である。入力装置1は、
図3に示すように、感圧部2と、1つ以上の検知部5と、ハウジング10と、押し部材13とを備えている。ここでは、検知部5の数は、一例として、2つである。
【0017】
(2.1)ハウジング
入力装置1のハウジング10は、
図1及び
図3に示すように、感圧部2と2つの検知部5と押し部材13とを収容する外郭を構成する。ハウジング10はカバー11とボディ12とを備えている。ボディ12は、例えば扁平な四角形状(例えば方形状)を有する箱形状を有する。ボディ12の上面120には開口121p、122pが設けられている。カバー11は、例えば四角形状(例えば方形状)のフィルムである。カバー11は、ボディ12の上面120の開口121p、122pを覆うようにして、ボディ12の上面120に取り付けられる。
【0018】
カバー11及びボディ12は、電気絶縁性を有している。カバー11及びボディ12は、例えば、電気絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。特に、カバー11は、可撓性を有している。これにより、操作体U1(
図1参照)が、ハウジング10内に収容された感圧部2を、カバー11を介して押圧することが可能である。
【0019】
カバー11の下面には感圧部2及び2つの検知部5が設けられており、反対側の上面が入力装置1の検知面S0となる。以下では、入力装置1の検知面S0のうち、感圧部2に対応して感圧部2の上方に位置する領域を検知面S1と呼び、2つの検知部5に対応して検知部5の上方にそれぞれ位置する2つの領域を検知面S2と呼ぶ。
図3では、検知面S1、S2を仮想的に一点鎖線で示す。
【0020】
検知面S0は、例えば略矩形状を有する。検知面S0は、感圧部2から離れる上方向Duに僅かに膨らむ凸面である。検知面S1は、例えば略正方形状の領域である。検知面S1は、検知面S0において長手方向の中央に位置する。検知面S1は、検知面S1の中央部において、円形状を有する平坦な領域を有している。押し部材13は、カバー11の下面における検知面S1の中央部で安定的に位置決めされる。2つの検知面S2は例えば略矩形状を有する領域である。2つの検知面S2は、検知面S0の長手方向において検知面S1の両横に位置する。
【0021】
ボディ12の上面120には、開口121pで開口する収容凹部121と、開口122pでそれぞれ開口する2つの収容凹部122とが設けられている。収容凹部121は、感圧部2を収容する。2つの収容凹部122のそれぞれは、2つの検知部5の対応する1つを収容する。
【0022】
収容凹部121及び2つの収容凹部122は、ハウジング10の長手方向に沿って、収容凹部122と収容凹部121と収容凹部122の順で並んでいる。言い換えると、検知部5は、ハウジング10内で感圧部2の上方すなわち押圧面30の上方から見たときに、感圧部2と並んで配置されている。さらに言い換えると、2つの検知部5は、感圧部2の上方から見たときに、感圧部2を間に挟むように感圧部2の両横に並んで配置されている。
【0023】
2つの収容凹部122は互いに同じ深さである。収容凹部121は、2つの収容凹部122よりも深い。ボディ12は、5つの開口部K1~K5を有する。開口部K1~K3はボディ12の側面12aに設けられている。開口部K4、K5はボディ12の側面12aの反対側の側面12bに設けられている。側面12a、12bは、ボディ12の長手方向に平行な一対の側面である。開口部K1~K5からは固定電極50、71、72、73の端子51、711、721、731がボディ12の内部から外部に引き出される。
【0024】
(2.2)感圧部
感圧部2は、
図1及び
図3に示すように、入力装置1の検知面S0の検知面S1に対する操作体U1の押圧を感知する。感圧部2は、
図3に示すように、クリック部3と圧力センサ4と直結電路TD1を有している。圧力センサ4は静電容量式のセンサである。圧力センサ4は、可動電極6と固定電極7との間に形成される静電容量の変化を含むアナログの電気信号を出力するように構成されている。圧力センサ4は、クリック部3の押圧面30とは反対側(
図3ではクリック部3の下方)に配置されている。具体的には、圧力センサ4は、可動電極6と弾性体14と絶縁部材15と固定電極7を有している。絶縁部材15はシート形状を有する。可動電極6と弾性体14と絶縁部材15と固定電極7とは、この順で、クリック部3から離れる方向に並んでいる。すなわち、可動電極6が、圧力センサ4の構成要素のうちクリック部3に最も近い位置にある。
【0025】
図4は固定電極7の平面図である。
図5は
図1に示す入力装置1のA1-A1線に沿った模式的な断面図である。
可動電極6は、入力装置1の検知面S0に対する操作体U1による下方向Ddの押圧によって、固定電極7に対して相対的に下方向Dd(上下方向D1、変位方向)に可動可能(変位可能)である。本実施形態では、可動電極6は、可動電極6の上方向Du(下方向Dd)の厚さ方向、すなわちハウジング10の厚さ方向に可動である。すなわち、上下方向D1は、可動電極6の厚さ方向である。なお、可動電極6は、上記の押圧によって、弾性体14の弾性力に抗して固定電極7に向かって下方向Ddに移動し、上記の押圧が解除されると、弾性体14の弾性力によってクリック部3に向かって上方向Duに変位して元の位置に戻る。
【0026】
可動電極6は、導電性を有する部材、例えば金属の板材によって形成されており、矩形の板形状を有する。可動電極6の中央部には上下方向D1である厚み方向に貫通する孔部61が設けられている。孔部61は、可動電極6の上方から見て、略円形状を有して開口している。
【0027】
固定電極7は、導電性を有する部材、例えば金よりなり、全体として略矩形状の平板形状を有する。ただし、本実施形態の固定電極7は、3つの分割部すなわち固定電極71、72、73に分割されている。すなわち、固定電極71、72、73は、弾性体14と絶縁部材15とを介して可動電極6と対向する。固定電極71、72、73は略同一平面上に並んでいる。固定電極7(71、72、73)はボディ12の収容凹部121の底面に固定される。
【0028】
なお、固定電極7は、2つの分割部すなわち固定電極71、74に分割され、さらに、固定電極74が2つの分割部すなわち固定電極72、73に分割されていると見なすことができる(
図4参照)。換言すれば、固定電極7は2つの分割部である固定電極71、74を含み、さらに、自体が分割部である固定電極74は分割部である固定電極72、73で構成されていると見なすことができる。
【0029】
固定電極71は略矩形板形状を有する。固定電極71は、本体部712と、出力部である端子711とを有している。本体部712は、略矩形板形状を有する。本体部712の固定電極72と対向する縁部の中央に半円形状の切欠部712cを有している。端子711は、可動電極6と固定電極71との間の容量変化を含むアナログの電気信号SG1を入力装置1の外部に出力する出力部である。端子711は、本体部712の上記の縁部とは反対側の縁部に設けられており、概ね固定電極72から離れる方向に本体部712から突出している。
【0030】
固定電極71は、ボディ12の収容凹部121内に配置される。より詳細には、本体部712は、収容凹部121の底面に配置されており、概ね本体部712の表面のうちの上面のみが収容凹部121の底面から露出する。端子711は、ボディ12の側面12aに形成された開口部K2からボディ12の外部に突き出ている。
【0031】
固定電極71、72は、例えば、ハウジング10の長手方向と厚み方向(上下方向D1)とに直交する幅方向に並んでいる。この並び方向は、感圧部2と検知部5とが並ぶ方向とハウジング10の厚み方向とに直交する。
【0032】
固定電極72は略矩形板形状を有する。固定電極72は、本体部723と舌部722と端子721(出力部)とを有している。ハウジング10の長手方向での本体部723の長さは、ハウジング10の長手方向での固定電極71の本体部712の長さよりも短い。本体部723の固定電極71と対向する縁部に半円形状の切欠部723cが設けられている。本体部723の切欠部723cは、固定電極71の本体部712の切欠部712cと対向して、切欠部712c、723cは全体として実質的に円形状を有する。端子721は、可動電極6と固定電極72との間の容量変化を含むアナログの電気信号SG2を入力装置1の外部に出力する出力部である。端子721は、本体部723の切欠部723cが設けられている縁部とは反対側の縁部に設けられており、概ね固定電極71から離れる方向に本体部723から突出している。
【0033】
舌部722は固定電極72の切欠部723cで
本体部723に接続されており、上面視で固定電極71に向かって突出している。舌部722は略円板形状を有するである。可動電極6の厚み方向(上下方向D1)における舌部722の位置は、固定電極72の矩形の本体部723の位置と異なる。すなわち、上下方向D1に直角の方向から見て、舌部722の位置は固定電極72の本体部723の位置と上下方向D1にずれている。具体的には、舌部722は、本体部723の縁部から僅かにクリック部3に近づく方向に屈曲して、さらに本体部723の上面と平行となるように延びている。舌部722の表面が概ね可動電極6の孔部61内に位置するように舌部722が配置される(
図4参照)。舌部722には、クリック部3の後述するドーム体31の頂部311が絶縁部材15を介して接触する(
図3参照)。
【0034】
固定電極72は収容凹部121の底面に配置される。より詳細には、本体部723と舌部722とは、収容凹部121の底面に配置されており、本体部723と舌部722の表面のうち上面のみが収容凹部121の底面から露出する。端子721は、ボディ12の側面12bに形成された開口部K4からボディ12の外部に突き出ている。
【0035】
固定電極73は略矩形の板形状を有する。固定電極73は本体部732と端子731とを有している。本体部732は略矩形の板形状を有する。ハウジング10の長手方向での本体部732の長さは、固定電極71の本体部712の同方向の長さよりも短い。ハウジング10の長手方向と厚さ方向(上下方向D1)とに直角の幅方向における本体部732の幅は、固定電極72の本体部723の同方向の幅と略同じ長さである。端子731は、可動電極6と操作体U1との間の容量変化を含むアナログの電気信号SG3を入力装置1の外部に出力する出力部である。端子731は、概ね固定電極71から離れる方向に本体部732から突出している。
【0036】
固定電極73は収容凹部121の底面に配置される。より詳細には、本体部732は収容凹部121の底面に配置されており、本体部732の表面のうち概ね上面のみが収容凹部121の底面から露出する。端子731は、ボディ12の側面12bに形成された開口部K5からボディ12の外部に突き出ている。
【0037】
本実施形態では、
図4に示すように、固定電極72、73の本体部723、732の平面形状を合わせた形状は、固定電極72、73のそれぞれと固定電極71の間に位置して厚み方向(上下方向D1)と長手方向とに広がる仮想的な平面PLについて、全体として固定電極71の本体部712の平面形状と面対称である。
【0038】
弾性体14は、
図3に示すように、例えば矩形のシート形状を有する。弾性体14は導電性を有している。弾性体14は、例えば、導電性を有したゴムシートである。弾性体14の中央部には、厚み方向に貫通する孔部140が設けられている。孔部140は、弾性体14の上面141から見て、略円形状を有して開口している。弾性体14の外形は、可動電極6の外形と概ね等しい。弾性体14の厚みは、可動電極6の厚みと概ね等しい。孔部140の径寸法は、可動電極6の孔部61の径寸法と略同じである。弾性体14の上面141は、可動電極6の下面と、概ね面接触するように配置されている。
【0039】
絶縁部材15は、
図3に示すように、例えば矩形状のシート形状を有する絶縁体(誘電体)である。絶縁部材15の外形は、可動電極6の外形と概ね等しい。絶縁部材15には切欠部151が設けられている。切欠部151は、絶縁部材の矩形状の4つの角部のうちの1つ角部に設けられている。切欠部151は、固定電極73の本体部732に対応する領域すなわち本体部732の上方に設けられている。切欠部151の形状は、固定電極73の本体部732の形状と略同形状、例えば略矩形状である。本実施形態では、絶縁部材15の厚みは、可動電極6の厚みよりも薄い。
【0040】
また、絶縁部材15は、中央部15aと本体部15bとに分離されている。中央部15aは、固定電極7の舌部722に重なり、例えば円形状を有する。中央部15aが本体部15bと分離されていることで、中央部15aは舌部722の上面の形状に沿って配置し易くなる。なお、本実施形態では、絶縁部材15は、中央部15aを有するが、中央部15aを有していなくてもよい。
【0041】
絶縁部材15は、可動電極6と固定電極7との間に配置されている。絶縁部材15は、収容凹部121の底面から露出する固定電極の71の本体部712と、固定電極72の本体部723と舌部722との上面を覆うように配置されている。また、絶縁部材15は、収容凹部121の底面から露出する固定電極73の本体部732の上面を切欠部151から露出するように配置されている。これにより、絶縁部材15の切欠部151を通して弾性体14が固定電極73と電気的に接触する。この結果、弾性体14を介して可動電極6と固定電極73とが静電容量を介さずに電気的に接触する。
【0042】
なお、弾性体14が固定電極73とより確実に電気的に接触させるために、弾性体14の固定電極73と接触する部分に、固定電極73に向かって突出した突出部が設けられていてもよい。また、固定電極73の弾性体14と接触する部分に、弾性体14に向かって突出した突出部が設けられていてもよい。弾性体14と固定電極73との間に絶縁部材15の厚み分の間隔があっても、上記の突出部によって弾性体14と固定電極73とが確実に電気的に接触できる。
【0043】
クリック部3は、
図3に示すように、上面である押圧面30を有し、押圧面30へ押圧を与える操作体U1にクリック感を作用させるように構成されている。クリック部3は弾性的に変形する。具体的には、クリック部3は、ドーム形の板形状を有してかつ押圧面30である上面を有するドーム体31を有している。ドーム体31は、弾性を有する材料(例えば金属板)により形成されている。ドーム体31は、いわゆるメタルドームである。
【0044】
クリック部3の押圧面30は凸面である。操作体U1による押圧P1が押圧面30に与えられると、クリック部3が弾性変形をし、これによって、クリック感が発生する。より詳細には、この弾性変形によって、ドーム体31の中央部が反転して凸状態から凹状態となる(座屈)。このように、クリック部3は、押圧面30に押圧が与えられると、押圧面30が凹むように弾性変形してクリック感を操作体U1に作用させる。
【0045】
ドーム体31は、
図3に示すように、周縁部310と、頂部311とを有している。ドーム体31は、圧力センサ4の可動電極6の上面に配置されている。
【0046】
ドーム体31への操作体U1からの押圧に応じて、ドーム体31の周縁部310は可動電極6を固定電極7に向かって押し込む。言い換えると、可動電極6は、ドーム体31を介して上記押圧を受けて、弾性体14と絶縁部材15とを押し込みながら、固定電極7に近づく下方向Ddに可動である。また、頂部311は、操作体U1からの押圧に応じてドーム体31が座屈した時に、可動電極6の孔部61を通り、固定電極7の舌部722に近づいて絶縁部材15における舌部722上の部分に接触して舌部722を下方向Ddに押圧する。すなわち、頂部311は絶縁部材15を介して舌部722を押圧する。
【0047】
押し部材13は、クリック部3の弾性変形を起こしやすくするための部材である。押し部材13は、
図3に示すように、円盤形状を有する。また、押し部材13の外形形状は、クリック部3の外形形状よりも小さい。押し部材13は、ドーム体31の頂部311とカバー11との間に配置されている(
図5参照)。押し部材13は、カバー11又はクリック部3に固定されている。押し部材13は、カバー11に固定されると望ましい。押し部材13は、電気絶縁性を有している。
【0048】
直結電路TD1は、静電容量を介さずに可動電極6と端子731とを電気的に接続し、静電容量を介さずに可動電極6と検出回路9とを電気的に接続する。直結電路TD1は、可動電極6からのアナログの電気信号SG3を検出回路9に出力する。直結電路TD1は固定電極73の特に本体部732と端子731と弾性体14とを含む。
【0049】
図6は
図1に示す入力装置1のA2-A2線における断面図である。
図6に示すように、感圧部2では、入力装置1の検知面S0に対して操作体U1による操作が入力されているか否かに依らず、導電性を有する弾性体14を介して可動電極6は固定電極73と常時電気的に接触している。可動電極6の電位の変化を含む電気信号SG3が、可動電極6から直結電路TD1(弾性体14と固定電極73)を常時通じて、固定電極73の端子731から入力装置1の外部に出力され得る。検知面S0に対して操作体U1が近接、接触又は押圧したとき、操作体U1及び可動電極6は、それらの間にコンデンサを形成して容量結合する。検知面S0に対して操作体U1が近接、接触又は押圧している間は、可動電極6の電位の変化を含む電気信号SG3は、上記のコンデンサの静電容量の変化を含む。このため、端子731からは、上記のコンデンサの静電容量の変化を含む電気信号SG3が入力装置1の外部に出力され得る。
【0050】
図7Aは、入力装置1の検知面S0に対して操作体U1による押圧が与えられていない状態、すなわちドーム体31の中央部が座屈する前の状態における、
図1に示す入力装置1のA3-A3線における断面図である。この状態では、可動電極6と固定電極71とによってコンデンサC1が構成され、可動電極6と固定電極72とによってコンデンサC2が構成される。コンデンサC1、C2は、導電性のドーム体31を介して互いに直列に接続されている。
【0051】
操作体U1が検知面S0の検知面S1に接触してクリック部3が押し込まれることで弾性体14が圧縮され、当該圧縮により可動電極6と固定電極7との間の距離と及び可動電極6と固定電極7が互いに対向する部分の対向面積が変化する。したがって、コンデンサC1、C2の合成の静電容量が変化する。そして、その静電容量の変化を含む電気信号SG12が、端子711、721を介して入力装置1の外部に出力され得る。なお、
図7Aでは、端子711が接地されて接地点となり、コンデンサC1、C2に蓄電された静電電荷が上記の接地点へ流れている。なお、
図7Aでは、コンデンサC2の一方の電極に接続されるダイオードは、コンデンサC1、C2に蓄積された静電電荷が上記の接地点へのみ流れることを視覚的に示しており、実際に存在するものではない。
【0052】
図7Bは、入力装置1の検知面S0に対して操作体U1による押圧が与えられた状態すなわちドーム体31の中央部が座屈した後の状態における、
図1に示す入力装置1のA3-A3線における断面図である。この状態では、ドーム体31の中央部が、絶縁部材15の中央部15aを介して固定電極7の舌部722に接触することで(以下、接点のオンと呼ぶこともある)、ドーム体31と舌部722とによってコンデンサC3が構成され得る。コンデンサC2はコンデンサC3と並列に接続されている。したがって、接点のオンの時以降では、更なる追荷重によるコンデンサC1~C3の合成の静電容量の変化を含むアナログの電気信号SG12が端子711、721を介して入力装置1の外部に出力され得る。
【0053】
操作体U1による押圧P1が押圧面30に与えられると、前述のように、
図7Bに示すようにクリック部3が弾性変形して、これにより発生したクリック感を操作体U1に作用させる。
【0054】
本実施形態では、
図4に示すように、固定電極71の本体部712の上面全体が可動電極6と対向する対向領域である。また、固定電極72の本体部723の上面全体が可動電極6と対向する対向領域である。また、固定電極73において、本体部732の上面全体が可動電極6と対向する対向領域である。なお、
図4では、可動電極6は
二点鎖線で示されている。本実施形態では、固定電極71の上記の対向領域の面積は、固定電極72の上記の対向領域の面積と固定電極73の上記の対向領域の面積との和に実質的に等しい。この構成により、感圧域において感圧部2の感度が優れた入力装置1を提供できる。感圧域とは、操作体U1によりクリック部3が押し込まれる押込量が取り得る範囲であって、押込によってクリック部3が凸状から凹状に反転するまでの押込量の範囲である。
【0055】
(2.3)検知部
2つの検知部5(5L、5R)は、入力装置1の検知面S0の検知面S2に対する操作体U1の近接及び接触を検知する(
図1参照)。2つの検知部5は、静電容量式のセンサである。各検知部5は、
図3に示すように、感圧部2の上面から見たときに、感圧部2の互いに反対側の両横に配置されている。すなわち、2つの検知部5は、可動電極6の可動方向である上下方向D1に交差する方向において感圧部2の両横に配置されており、実施の形態では、上下方向D1に直角の方向において感圧部2の両横に配置されている。本実施形態では、上下方向D1に交差する方向とは、例えば、ハウジング10の長手方向である。2つの検知部5は感圧部2に隣接して配置されている。ここでは、2つの検知部5は、互いに同じ構成を有しているが、互いに同じ構造を有しなくてもよい。
【0056】
検知部5は、
図3に示すように、補助固定電極50を有する。すなわち、検知部5Lは補助固定電極50Lを有し、検知部5Rは補助固定電極50Rを有する。各検知部5は、単一の補助固定電極50を有し、補助固定電極50と操作体U1との間に形成される静電容量の変化を検知する自己容量式のセンサである。補助固定電極50(50L、50R)はボディ12の収容凹部122にそれぞれ固定されている。
【0057】
補助固定電極50(50L、50R)は、導電性を有する部材(例えば金属)よりなり矩形の平板形状を有する。補助固定電極50は本体部52と補助端子51とをさらに有している。すなわち、補助固定電極50Lは本体部52Lと補助端子51Lとをさらに有し、補助固定電極50Rは本体部52Rと補助端子51Rとをさらに有している。本体部52(52L、52R)は、ハウジング10の長手方向と厚さ方向に直交する幅方向に細長い略矩形の板形状を有する。補助端子51(51L、51R)は、補助固定電極50(50L、50R)と操作体U1との間の容量変化を含むアナログの補助電気信号SG0(SG0L、SG0R)を入力装置1の外部に出力する出力部である。補助端子51(51L、51R)は、本体部52(52L、52R)の長手方向すなわちハウジングの幅方向の一方の縁部からそれぞれ突出している。具体的には、補助端子51(51L、51R)は、カバー11から離れる方向に本体部52(52L、52R)からそれぞれ突出し、更に本体部52(52L、52R)の長手方向において本体部52(52L、52R)から離れる方向に本体部52(52L、52R)からそれぞれ延び出ている。
【0058】
各検知部5すなわち補助固定電極50(50L、50R)は、ボディ12における対応する収容凹部122に収容されている。より詳細には、本体部52(52L、52R)は、収容凹部122の底面に配置されており、本体部52(52L、52R)の表面のうち概ね上面のみがボディ12の上面120(
図3参照)から露出する。本体部52(52L、52R)の上面は、上面120と概ね面一である。補助端子51L、51Rは、ボディ12の側面12aに形成された開口部K1、K3からそれぞれボディ12の外部に突き出ている。
【0059】
カバー11の各検知面S2は、対応する補助固定電極50の本体部52の上面と概ね同形状を有し、カバー11の上面から見て本体部52の上面と重なる。操作体U1がカバー11の検知面S2に近接又は接触することで、補助固定電極50と操作体U1とによって構成されるコンデンサC4(
図5参照)の静電容量の変化を含む補助電気信号SG0が補助端子51を介して出力され得る。なお、
図5では、コンデンサC4が接続される接地点が操作体U1を表す。また、
図5では、コンデンサC4の一方の電極に接続されるダイオードは、コンデンサC4に蓄積された静電電荷が接地点に向かってのみ流れることを視覚的に図示したものであり、実際に存在するものではない。
【0060】
(2.4)検出回路
検出回路9は、
図2に示すように、入力装置1と電気的に接続されている。
【0061】
検出回路9は、感圧部2の圧力センサ4の端子711、721から出力される電気信号SG1、SG2をそれぞれ個別に取得する。また、検出回路9は、圧力センサ4の端子731から出力される電気信号SG3を取得する。また、検出回路9は、2つの検知部5L、5Rの補助端子51L、51Rから出力される補助電気信号SG0L、SG0Rをそれぞれ個別に取得する。検出回路9は、取得した電気信号に基づいて、近接検出処理及び/又は感圧検出処理を行う。近接検出処理とは、入力装置1の検知面S0に対して操作体U1が接近又は接触したか否かを検出する処理である。感圧検出処理とは、検知面S0に対して操作体U1が押圧されたか否かを検出する処理である。また、検出回路9は、近接検出処理及び感圧検出処理の結果に基づいて、検知面S0に入力された操作体U1による操作の操作状態を判定し、その判定結果を入力システム100の外部、例えば入力システム100が適用された電子機器内の回路モジュールに出力する。
【0062】
以下では、端子711、721、731、51L、51Rから出力される電気信号SG1、SG2、SG3、SG0L、SG0Rを、固定電極71、72、73、50L、50Rから出力される電気信号SG1、SG2、SG3、SG0L、SG0Rと記載する場合がある。
【0063】
検出回路9は複数の検出モードを有し、複数の検出モードのうちの1つの検出モードを選択し、選択した検出モードに基づいて近接検出処理及び感圧検出処理を切り替える。検出回路9は、
図2に示すように、近接検出回路91と、感圧検出回路92と、制御部93と、判定部94とを備えている。
【0064】
近接検出回路91は、制御部93の制御に基づいて近接検出処理を実行する。感圧検出回路92は、制御部93の制御に基づいて感圧検出処理を実行する。制御部93は、複数の検出モードのうちの1つの検出モードを選択し、選択した検出モードに基づいて、近接検出回路91及び感圧検出回路92の何れか一方又は両方を選択して、選択した回路に処理を実行させる。本実施形態では、制御部93は、検出回路9において感圧検出処理と近接検出処理とを切り替える切替機能を有する。
【0065】
複数の検出モードは、FarモードとNearモードとTouchモードとを含む。Farモード及びNearモードは近接検出処理の一例であり、Touchモードは感圧検出処理の一例である。
【0066】
まず、
近接検出処理を
以下に説明する。
図8Aと
図8Bは入力システム100の近接検出処理での動作を示す模式断面図である。
【0067】
Farモードは、遠方からの検知面S0への操作体U1の近接又は接触を検出するモードである。このモードは近接検出回路91により実行される。このモードでは、近接検出回路91は、検知部5の補助固定電極50と感圧部2の可動電極6との両方を用いて近接検出処理を実行する。より詳細には、
図8Aに示すように、近接検出回路91は、制御部93の制御に基づいて、固定電極50L、50R、73からの電気信号SG0L、SG0R、SG3を個別に取得する。そして、近接検出回路91は、取得したこれらの電気信号を個別に処理して、固定電極50L、50R、73に対して操作体U1が近接又は接触したか否かを検出する。このモードでは、検知部5の補助固定電極50と感圧部2の可動電極6との両方を用いて近接検出処理を実行するため、遠方からの検知面S0への操作体U1の近接又は接触を感度よく
検出できる。このモードでは、固定電極50L、50R、71~73からの電気信号SG0L、SG0R、SG1~SG3のうち固定電極50L、50R、73からの電気信号SG0L、SG0R、SG3のみを用い、固定電極71、72からの電気信号SG1、SG2を用いずに近接検出処理を実行している。
【0068】
Nearモードは、操作体U1が近接する方向を検出するモードである。このモードは近接検出回路91により実行される。このモードでは、近接検出回路91は、検知部5と感圧部2のうちの検知部5だけを用いて感圧部2を用いずに近接検出処理を実行する。より詳細には、
図8Bに示すように、近接検出回路91は、制御部93の制御に基づいて、補助固定電極50L、50Rからの補助電気信号SG0L、SG0Rを個別に取得する。そして、近接検出回路91は、取得したこれらの電気信号を個別に処理して、補助固定電極50L、50Rに対して操作体U1が近接又は接触したか否かを検出する。このモードでは、近接検出回路91は、端子721からの電路を開放(遮断)する。これにより、固定電極50L、7間の浮遊容量と固定電極50R、7間の標遊容量を抑制できるため、検知部5L、5Rの検知感度を向上できる。この結果、操作体U1が補助固定電極50Lの側の方向と補助固定電極50Rの側からの方向のうちのいずれの方向から検知面S1に近接したのかを感度よく検出できる。
図8Bに示す例では、操作体U1が補助固定電極50Rの側から近接している状態を示す。このモードでは、固定電極50L、50R、71~73からの電気信号SG0L、SG0R、SG1~SG3のうち、補助固定電極50L、50Rからの補助電気信号SG0L、SG0Rのみを用いて、固定電極71~73からの電気信号SG1~SG3を用いずに近接検出回路91は近接検出処理を実行している。
【0069】
入力システム100の感圧検出処理を
以下に説明する。
図9Aから
図9Cは入力システム100の感圧検出処理の動作を示す模式断面図である。
【0070】
Touchモードは感圧検出処理を実行するモードである。このモードは感圧検出回路92により実行される。このモードでは、感圧検出回路92は感圧部2の固定電極71、72からの電気信号SG1、SG2に基づいて感圧検知処理を実行する。
【0071】
Touchモードは、Touchモード#1、Touchモード#2及びTouchモード#3を含む。
【0072】
Touchモード#1では、
図9Aに示すように、感圧検出回路92は、端子731を常時接地すると共に、端子711、721を互いに電気的に接続する。感圧検出回路92は、上記の互いに電気的に接続された端子711、721から取得する電気信号SG1、SG2
に基づいて感圧検出処理を実行する。
【0073】
上記のように、端子711、721が互いに電気的に接続されることで、可動電極6と固定電極71とによって形成されるコンデンサC1と、可動電極6と固定電極72とによって形成されるコンデンサC2とが互いに並列に接続される。これにより、感圧検出処理での感圧部2の感度を向上できる。この結果、可動電極6に対して操作体U1が押圧したか否かを感度よく検出できる。また、端子731からの電路が常時接地されているので、可動電極6に対して操作体U1が押圧したか否かをより感度よく検出できる。
【0074】
Touchモード#2は、Touchモード#1と比べて、端子711、721が互いに接続されておらず、固定電極71、72からの電気信号SG1、SG2が個別に(すなわち互いに独立して)処理される点が異なる。より詳細には、
図9Bに示すように、感圧検出回路92は、端子731を常時接地する。また、感圧検出回路92は、各端子711、721からの電気信号SG1、SG2を交互に用いて、固定電極71、72に交互に感圧検出処理を実行する。例えば、感圧検出回路92は、端子711からの電気信号SG1を用いて感圧検出処理を実行するときは、端子721からの電路を接地する。他方、端子721からの電気信号SG2を用いて感圧検出処理を実行するときは、端子711からの電路を接地する。
図9Bは、感圧検出回路92が、端子721からの電気信号SG2を用いて感圧検出処理を実行し、かつ端子711からの電路を接地する状態を示している。このモードでは、端子731が常時接地されるため、可動電極6に対して操作体U1が押圧したかを感度よく検出できる。
【0075】
Touchモード#3は、Touchモード#2と比べて、固定電極71、72からの電気信号SG1、SG2を互いに独立して共に処理する点が異なる。より詳細には、
図9Cに示すように、感圧検出回路92は、端子731を常時接地する。また、感圧検出回路92は、端子711、721からの電気信号SG1、SG2を互いに独立に併行して取得し、固定電極71、72それぞれでの感圧検出処理を併行して実行する。このモードでも、端子731が常時接地されるため、可動電極6に対して操作体U1が押圧したかを感度よく検出できる。
【0076】
検出回路9は、近接検出処理と感圧検出処理とを時分割処理で実行する。換言すれば、制御部93は、近接検出回路91及び感圧検出回路92を時分割処理で処理を実行させる。例えば、制御部93は、周期的に繰り返される検出期間の1秒間のうち、0.5秒間だけ近接検出回路91に近接検出処理を実行させて感圧検出回路92に感圧検出処理を実行させず、その後、0.5秒間だけ感圧検出回路92に感圧検出処理を実行さて近接検出回路91に近接検出処理を実行させない。
【0077】
また、検出回路9は、近接検出処理によって検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出すると、時分割処理において、近接検出処理の処理期間を減少させ、その減少分、感圧検出処理の処理期間を長くする。換言すると、近接検出回路91が検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出した場合は、制御部93は、時分割処理において、近接検出回路91による近接検出処理の処理期間を削減時間だけ減少させる。そして、制御部93は、時分割処理において、減少した削減時間だけ感圧検出回路92による感圧検出処理の処理期間を長くする。例えば、制御部93は、周期的に繰り返される検出期間の1秒間のうち、0.1秒間だけ近接検出回路91に近接検出処理を実行させて感圧検出回路92に感圧検出処理を実行させず、0.9秒間だけ感圧検出回路92に感圧検出処理を実行させて近接検出回路91に近接検出処理を実行させない。
【0078】
このようにするのは、検知面S0に対して操作体U1が近接又は接触すると、これ以降は、検知面S0に対して操作体U1が押圧する可能性が高くなるため、時分割処理を、感圧検出処理重視に変更するためのである。これにより、操作体U1の操作状態に応じて、近接検出処理及び感圧検出処理を効果的に実行できる。
【0079】
なお、本実施形態では、上記のように、検出回路9は、近接検出処理によって検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出した場合、時分割処理において、近接検出処理の処理期間を減少させ、その減少分、感圧検出処理の処理期間を長くする。ただし、検出回路9は、近接検出処理によって検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出した場合、時分割処理を止めて、近接検出処理及び感圧検出処理のうち感圧検出処理のみを実行して近接検出処理を実行しなくてもよい。換言すると、近接検出回路91が検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出した場合は、制御部93は、時分割処理を止めて、近接検出回路91及び感圧検出回路92のうち感圧検出回路92のみを制御して感圧検出処理を実行させて近接検出回路91に近接検出処理を実行させなくてもよい。
【0080】
判定部94は、近接検出回路91及び感圧検出回路92の各々の検出結果の組み合わせから、操作体U1の様々な操作状態(操作入力)を判定する。上記の検出結果は、例えば、感圧部2へのタッチ、プッシュ、及びクリック、並びに、各検知部5へのタッチを含み得る。感圧部2へのプッシュは、タッチよりも荷重が大きく(静電容量の変化が大きく)、かつ、接点がオンに達しておらずクリック感を発生する状態に達していないことを意味する。ここで、上記の操作状態は、感圧部2に対する操作体U1の移動の方向を含む。
【0081】
図10Aから
図10Dは入力装置1に対する操作体U1の操作状態を示す模式図である。
図10Aから
図10Dでは、操作板T1が入力装置1の感圧部2と検知部5の上方に位置する。操作板T1の下面には感圧部2に向かって突出する突起T10が設けられている。上記の操作状態は、以下に説明する第1操作過程と第2操作過程のうち少なくとも一方の過程に関する状態を含む。第1操作過程は、操作体U1が検知面S0に近づき検知面S0に押圧(タッチ、プッシュ、又はクリック)が与えられるまでの操作過程である。第2操作過程は、検知面S0に押圧が与えられた後に操作体U1が検知面S0から離れるまでの操作過程である。具体的には、操作状態は、以下の7つの操作状態を含む。なお、以下の説明では、操作板T1を用いる場合があるが、操作板T1を用いなくてもよい。
【0082】
第1操作状態は、
図10Aに示すように、操作体U1が、例えば操作板T1を介して、2つの検知部5(5L、5R)にほぼ同時にタッチし、かつ突起T10を介して感圧部2をクリックする一連の操作状態である。なお、突起T10により検知面S1に押圧が与えられる。
【0083】
第2操作状態は、
図10Bに示すように、操作体U1が、例えば操作板T1を介して、検知部5と感圧部2のうち左側の検知部5Lに先にタッチしてから突起T10を介して感圧部2をクリックし、さらに操作体U1が突起T10を中心に弧を描くように右側に移動して右側の検知部5Rにタッチする一連の操作状態である。なお、操作体U1が弧を描くように移動することに伴って、操作板T1も、突起T10を中心として弧を描くように僅かに回転する。
【0084】
第3操作状態は、第2操作状態とは逆に、操作体U1が、例えば操作板T1を介して、右側の検知部5Rから左側の検知部5Lに弧を描くようにタッチする一連の操作状態である。
【0085】
第4操作状態は、
図10Cに示すように、操作体U1が、例えば操作板T1を介して、左側の検知部5Lから、感圧部2及び右側の検知部5Rへ、操作板T1の上面を略スライド移動する一連の操作状態である。要するに、操作体U1が、感圧部2に対してクリック操作を行わずに、タッチ(又はプッシュ)移動するのみの操作状態である。
【0086】
第5操作状態は、第4操作状態とは逆に、操作体U1が、例えば操作板T1を介して、右側の検知部5Rから左側の検知部5Lに操作板T1の上面を略スライド移動する一連の操作状態である。
【0087】
このように、判定部94は、感圧部2に対する操作の種別(タッチ、プッシュ、クリック)の判定だけでなく、操作体U1が感圧部2に近づいた方向(図示例では右、左、上)と、その後、操作体U1が離れた方向とを判定し、すなわち操作の方向性(操作の順番)も判定する。
【0088】
第6操作状態は、
図10Dに示すように、操作体U1が、左側の検知部5Lの
真上方から斜め下方に感圧部2へ向かい、操作板T1と突起T10とを介して感圧部2をクリックし、さらに斜め上方に移動して右側の検知部5Rの真上方に向かう一連の操作状態(ホバー操作)である。要するに、操作体U1が略V字形状の軌跡を移動する操作状態である。
【0089】
第7操作状態は、第6操作状態とは逆に、操作体U1が右側の検知部5Rの真上方から斜め下方に感圧部2へ向かい、操作板T1と突起T10とを介して感圧部2をクリックし、斜め上方に移動して左側の検知部5の真上方に向かう一連の操作状態である。
【0090】
第6及び第7操作状態では、判定部94は、検知部5L、5Rのうちのタッチされた検知部ではなく、どちらの検知部5の側から近づき、又はどちらの検知部5の側へ遠ざかるかを判定する。
【0091】
第8操作状態は、操作体U1が、左側に傾斜した状態で、左側の検知部5Lと感圧部2との上方に位置して検知部5Rの上方には位置しない操作状態である。第9操作状態は、第8操作状態とは逆に、操作体U1が、右側に傾斜した状態で、右側の検知部5Rと感圧部2との上方に位置して検知部5Lの上方には位置しない操作状態である。要するに、第8及び第9操作状態に関して、判定部94は、操作体U1が、左右どちらの検知部5に偏った状態で感圧部2に押圧を与えたかを判定する。
【0092】
なお、検知面S0に対する操作体U1の近接、接触及び押圧も、操作状態の一種である。
【0093】
(3)変形例
上記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0094】
(3.1)変形例1
図11は実施形態に係る変形例1の入力装置1の固定電極7の平面図である。本変形例は、基本例と比べて、固定電極7の固定電極71A、72A、73Aの形状が異なる。より詳細には、
図11に示すように、本変形例では、固定電極71Aの本体部712が略J字形の板形状を有する。固定電極71Aの端子711は、基本例と同じ構造である。固定電極72Aの舌部722と端子721は、基本例と同じ構造である。固定電極72Aの本体部723は、固定電極71AのJ字形状の部位で占められていない空間に、固定電極71Aと接触することなく収まるように形成されている。固定電極73Aは、基本例と同じ構造である。固定電極73Aは、固定電極
71Aの本体部
712のJ字形状の先端であって、固定電極72Aの横の空いた空間に配置されている。
【0095】
本変形例でも、基本例と同様に、固定電極7は2つの固定電極71A、74Aを含み、固定電極74Aは固定電極72A、73Aで構成されていると見なすことができる。
【0096】
本変形例では、
図11に示すように、固定電極71Aにおいて、本体部712の上面全体が上下方向D1で可動電極6と対向する対向領域となる。また、固定電極72Aにおいて、本体部723の上面全体が上下方向D1で可動電極6と対向する対向領域と
なる。また、固定電極73Aにおいて、本体部732の上面全体が上下方向D1で可動電極6と対向する対向領域となる。なお、
図11では、可動電極6は、点線で図示されている。本変形例では、固定電極71Aの上記の対向領域の面積は、固定電極72Aの上記の対向領域の面積と固定電極73Aの上記の対向領域の面積との和と不均等であり等しくない。このように「不均等」である場合は、
感圧域において感圧部2の感度が優れた入力装置1を提供できる。
感圧域とは、操作体U1によるクリック部3の押込量が取り得る範囲であって、クリック部3が凹状に反転して更に押し込まれる範囲である。
【0097】
(3.2)変形例2
図12Aは実施形態に係る変形例2の入力装置1の固定電極7の平面図である。本変形例は、基本例と比べて、固定電極7が2つの固定電極72B、73Bで構成される点が異なる。本変形例の固定電極72Bは、基本例の固定電極71、72を1つに合わせて得られる電極に相当する。より詳細には、
図12Aに示すように、本変形例では、固定電極72Bの本体部723は略矩形の板形状を有する。固定電極72Bの本体部723の角部には略矩形状の切欠部722kが設けられている。固定電極72Bの端子721は、基本例と同じ構造である。固定電極73Bの本体部732は、切欠部722kと接触することなく収まるように、略矩形状を有する。固定電極73Bの端子731は、基本例と同じ構造である。
【0098】
図12Bは変形例2の入力装置1の動作を示す模式図である。本変形例におけるTouchモードでは、
図12Bに示すように、感圧検出回路92は、端子731を常時接地すると共に、端子721からの電気信号SG2に基づいて、感圧検出処理を実行する。
【0099】
本変形例では、固定電極72Bが基本例の固定電極71、72を1つに合わせて得られる電極に相当する。このため、本変形例では、基本例の固定電極71、72間の隙間に対応する隙間が設けられていない。したがって、本変形例の固定電極71Bの面積は、基本例の固定電極71、72の各々の面積の和よりも大きい。この結果、基本例の場合と比べて、感圧検出処理での感圧部2の感度を向上できる。
【0100】
(3.3)その他の変形例
基本例において、弾性体14は導電性を有するが、代わりに、電気絶縁性を有していてもよい。この場合、弾性体14は、好ましくは、誘電性エラストマのように、比較的高い誘電率を有する材料よりなる。弾性体14が絶縁性を有する場合には、入力装置1は絶縁部材15を有していなくてもよい。
【0101】
基本例では、弾性体14と固定電極7との間に絶縁部材15が配置されている。この場合、固定電極7に対する絶縁部材15の積層工程(ラミネーション)が容易となる。しかし、この限りではなく、例えば、弾性体14と絶縁部材15とが入れ替わって、絶縁部材15と固定電極7との間に弾性体14が配置されてもよい。この場合、固定電極7を基準にした弾性体14の成形が容易となる。
【0102】
基本例では、絶縁部材15は、ボディ12とは別体で、シート状の1つの部材であり、弾性体14と固定電極7という他の2部材の間に配置される。しかし、絶縁部材15は、ボディ12と一体となって形成されてもよい。具体的には、弾性体14と対向するボディ12の上壁が、固定電極7の表面を完全に覆うように成形された薄膜状の壁であり、その薄膜状の壁が、絶縁部材として機能してもよい。
【0103】
基本例では、検知部5の数は、2つであり、2つの検知部5が、感圧部2の左右の両側に配置されている。しかし、検知部5の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0104】
基本例では、入力装置1上に操作板T1が配置され、入力装置1に対する操作入力は、操作板T1越しに行われる。しかし、操作板T1は、配置されてなくてもよく、入力装置1に対する操作入力は、カバー11に直接的に行われてもよい。
【0105】
前述の従来の入力装置の圧力センサで操作体の近接又は接触を検知しようとすると、上記の静電容量が検知の感度を低下させる。このため、圧力センサで指の近接又は接触の検知感度を向上させることが難しい。
【0106】
対して、実施形態に係る入力装置は前述のように操作体U1である指の近接又は接触の検知感度を向上させることができる。
【0107】
実施の形態において、「上面」「下面」「上方向」「下方向」等の方向を示す用語は入力装置1の構成部材の相対的な位置関係でのみ決まる相対的な方向を示し、鉛直方向等の絶対的な方向を示すものではない。
【0108】
(4)まとめ
操作体U1で操作される入力装置1は、操作体U1で操作されるように構成された検知面S0と、固定電極71と、可動電極6と、入力装置1の外部に接続されるように構成された端子711、731と、直結電路TD1とを備える。可動電極6は、固定電極71の上面と対向する下面を有して固定電極71と容量結合し、検知面S0に対する操作体U1による押圧に応じて固定電極71に接近するように変位する。端子711は、固定電極71と可動電極6との間の容量の変化を含む電気信号SG1を入力装置1の外部に出力するよう構成されている。端子731は、操作体U1と可動電極6との間の容量変化を含む電気信号SG3を可動電極6から入力装置1の外部に出力するよう構成されている。直結電路TD1は容量を介さずに可動電極6と端子731とを電気的に接続する。
【0109】
この構成によれば、直結電路TD1により可動電極6からの電気信号SG3を、容量の影響を受けずに検出回路9に出力できる。これにより、検出回路9において、可動電極6からの電気信号SG3を用いて、検知面S0に対する操作体U1の近接及び接触を感度よく検出できる。すなわち、可動電極6を用いて、検知面S0に対する操作体U1の近接及び接触も感度よく検出できる。
【0110】
直結電路TD1は可動電極6の下面に対向する上面を有する固定電極73を有していてもよい。
【0111】
この構成によれば、固定電極73を利用して直結電路TD1を構成できる。
【0112】
入力装置1は、可動電極6と固定電極との間に介在する絶縁部材15を更に備えていてもよい。絶縁部材15は切欠部151を有する。直結電路TD1は、切欠部151を通して可動電極6を固定電極73と電気的に接続している。
【0113】
この構成によれば、絶縁部材15によって可動電極6と固定電極72との間の絶縁を確保しつつ、直結電路TD1による可動電極6と固定電極73との電気的な接続を確保できる。
【0114】
入力装置1は、固定電極72と、入力装置1の外部に接続されるように構成された端子721とをさらに備えていてもよい。固定電極72は、可動電極6の下面に対向する上面を有して可動電極6に容量結合する。端子721は、固定電極72と可動電極6との間の容量の変化を含む電気信号SG2を入力装置1の外部に出力するよう構成されている。固定電極71の上面のうちの可動電極6の下面に対向する領域の面積は、固定電極73の上面のうちの可動電極6の下面に対向する領域の面積と固定電極72の上面のうちの可動電極6の下面に対向する領域の面積との和に実質的に等しい。
【0115】
固定電極71の上面のうちの可動電極6の下面と対向する領域の面積は、固定電極73の上面のうちの可動電極6の下面に対向する領域の面積と固定電極72の上面のうちの可動電極6の下面に対向する領域の面積との和と異なっていてもよい。
【0116】
入力装置1は、操作体U1との間で容量を形成する1つ以上の補助固定電極50と、入力装置1の外部に接続されるように構成された1つ以上の補助端子51とをさらに備えていてもよい。1つ以上の補助端子51は、1つ以上の補助固定電極50と操作体U1との間の容量の変化をそれぞれ含む1つ以上の補助電気信号SG0を入力装置1の外部に出力するよう構成されている。
【0117】
この構成によれば、検出回路9において、補助固定電極50からの補助電気信号SG0を用いて、検知面S0に対する操作体U1の近接及び接触を感度よく検出できる。すなわち、可動電極6及び補助固定電極50を用いて、上記の近接及び接触を検出できるため、検知面S0の実質的な検知範囲を広げることができる。
【0118】
入力システム100は、入力装置1と検出回路9とを備える。検出回路9は、入力装置1の端子711と端子731と1つ以上の補助端子51とに接続されている。
【0119】
検出回路9は、電気信号SG1と電気信号SG3と1つ以上の補助電気信号SG0のうち電気信号SG3と1つ以上の補助電気信号SG0とのみに基づいて検知面S0に操作体U1が近接又は接触したか否かを検出するように構成されていてもよい。
【0120】
この構成によれば、可動電極6及び補助固定電極50、すなわち電極全体を用いて、検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出できる。特にこの場合は、遠方からの操作体U1の近接を高感度で検出できる。
【0121】
検出回路9は、電気信号SG1と電気信号SG3と1つ以上の補助電気信号SG0とのうち1つ以上の補助電気信号SG0のみに基づいて検知面S0に操作体U1が近接又は接触したか否かを検出してもよい。
【0122】
この構成によれば、補助固定電極50を用いて、検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出できる。特にこの場合は、操作体U1が検知面S0に近接した方向を効果的に識別できる。
【0123】
検出回路9は、電気信号SG1に基づいて検知面S0に対する操作体U1による押圧を検出する感圧検出処理を実行し、電気信号SG3に基づいて検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出する近接検出処理を実行し、感圧検出処理と近接検出処理とを切り替えるように構成されていてもよい。
【0124】
検出回路9は、感圧検出処理と近接検出処理とを時分割で繰り返して実行するように構成されていてもよい。
【0125】
検出回路9は、近接検出処理によって検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出すると、近接検出処理を実行する処理時間を減少させ、感圧検出処理を実行する処理時間を長くしてもよい。
【0126】
この構成によれば、近接検出処理によって検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触が検出された後は、感圧検出処理を重点的に実行できる。
【0127】
検出回路9は、近接検出処理によって検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出すると、近接検出処理を実行する処理時間を削減時間だけ減少させ、感圧検出処理を実行する処理時間を削減時間だけ長くしてもよい。
【0128】
検出回路9は、近接検出処理によって検知面S0に対する操作体U1の近接又は接触を検出すると、感圧検出処理を実行しかつ近接検出処理を実行しないように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 入力装置
6 可動電極
9 検出回路
15 絶縁部材
50 補助固定電極
51 補助端子
71,71A 固定電極(第1固定電極)
72,72A,72B 固定電極(第3固定電極)
73,73A,73B 固定電極(第2固定電極)
711 端子(第1端子)
721 端子(第3端子)
731 端子(第2端子)
100 入力システム
S0 検知面
SG1 電気信号(第1電気信号)
SG2 電気信号(第3電気信号)
SG3 電気信号(第2電気信号)
SG0,SG0L,SG0R 補助電気信号
TD1 直結電路
U1 操作体