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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】モビリティ見守り装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20240126BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240126BHJP
   G08B 13/00 20060101ALI20240126BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
G08B13/00 B
H04M11/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019196253
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021071767
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】508281354
【氏名又は名称】富士防災警備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】田代 亮介
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-061201(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/167350(JP,A1)
【文献】特開2004-320798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 25/04
G08B 21/02
G08B 13/00
H04M 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モビリティの位置情報を検知する位置検知部と、
前記モビリティの行動が日常の行動とは異なる非日常行動であるか否かを判別する行動判別部と、
前記非日常行動である場合、前記モビリティの操作者を支援する支援者が所有する情報端末に、前記モビリティの行動が前記非日常行動であることを報知する報知部とを備え、
前記行動判別部は、前記モビリティの位置が前記モビリティの操作者の住居から所定範囲以上離れている場合、前記モビリティの位置が前記モビリティの操作者の行動範囲外の経路に位置する場合、及び前記モビリティの速度が所定速度以上である場合から選択される少なくとも1つの場合に該当するとき、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると判別する、モビリティ見守り装置。
【請求項2】
前記操作者の住居の位置に関する住居位置情報と前記操作者が訪れる施設の位置に関する施設位置情報とに基づいて、前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて前記所定範囲を定める範囲画定部をさらに備え、
前記行動判別部は、前記モビリティの位置が前記範囲画定部によって定められた前記所定範囲よりも離れた位置にあるとき、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると判別する、請求項1に記載のモビリティ見守り装置。
【請求項3】
前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて前記モビリティの行動履歴を記憶する行動履歴記憶手段をさらに備え、
前記範囲画定部は、前記行動履歴に基づいて前記所定範囲を更新可能である、請求項2に記載のモビリティ見守り装置。
【請求項4】
前記操作者の住居の位置に関する住居位置情報と前記操作者が訪れる施設の位置に関する施設位置情報とに基づいて、前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて前記操作者の行動範囲にあたる行動経路を定める経路画定部をさらに備え、
前記行動判別部は、前記モビリティの位置が前記経路画定部によって定められた前記所定経路にはない位置にあるとき、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると判別する、請求項1から3のいずれか1項に記載のモビリティ見守り装置。
【請求項5】
前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて前記モビリティの行動履歴を記憶する行動履歴記憶手段をさらに備え、
前記経路画定部は、前記行動履歴に基づいて前記行動経路を更新可能である、請求項4に記載のモビリティ見守り装置。
【請求項6】
前記行動判別部は、前記モビリティの速度が前記モビリティについて法令で定められた法定速度を上回るとき、前記モビリティの速度が所定速度以上であると判別する、請求項1から5のいずれか1項に記載のモビリティ見守り装置。
【請求項7】
前記操作者への質問とその質問に対する正しい回答との組合せが、前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて予め格納された質問格納部と、
前記モビリティの行動が前記非日常行動であると前記行動判別部が判別する場合、前記モビリティに、前記モビリティを操作する操作者への質問として前記質問格納部に予め格納された前記質問を送信する質問送信部と、
前記質問に対する回答を受信する回答受信部とをさらに備え、
前記報知部は、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると前記行動判別部が判別し、かつ、前記回答受信部によって受信された回答が、前記モビリティを操作する操作者への質問の回答として前記質問格納部によって予め格納された前記正しい回答とは異なる場合、前記支援者が所有する前記情報端末に、前記モビリティの行動が前記非日常行動であることを報知する、請求項1から6のいずれか1項に記載のモビリティ見守り装置。
【請求項8】
前記モビリティの行動が前記非日常行動であると前記行動判別部が判別する場合に、前記モビリティを操作する操作信号を前記モビリティに送信し、前記モビリティの位置を路肩に移動させるモビリティ遠隔操作部をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載のモビリティ見守り装置。
【請求項9】
コンピュータに、
モビリティの位置情報を検知するステップと、
前記モビリティの行動が日常の行動とは異なる非日常行動であるか否かを判別するステップと、
前記非日常行動である場合、前記モビリティの操作者を支援する支援者が所有する情報端末に、前記モビリティの行動が前記非日常行動であることを報知するステップとを実行させ、
前記モビリティの行動が前記非日常行動であるか否かの判別は、前記モビリティの位置が前記モビリティの操作者の住居から所定範囲以上離れている場合、前記モビリティの位置が前記モビリティの操作者の行動範囲外の経路に位置する場合、及び前記モビリティの速度が所定速度以上である場合から選択される少なくとも1つの場合に該当するか否かによって行われる、モビリティ見守りプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モビリティ見守り装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会化に伴い、認知機能が低下した高齢者を見守りたいという要望が高まっている。それに伴い、こうした高齢者を見守る支援者の見守りにおける負担の軽減を望む傾向も強まっている。
【0003】
その中でも、高齢者の現在位置を測位する計測装置を高齢者に携帯させ、この計測装置を介して高齢者の所在地を確認する管理は、支援者の負担を軽減するものとして、近年ますます注目されている。このような計測装置を用いた管理によれば、行き先を告げずに外出した高齢者の所在地を支援者が特定できることから、支援者が高齢者の外出を常に見張る必要がなくなる。しかしながら、支援者による所在地の特定だけでは、その外出が近所の商店や集会所等へ向かう日常行動の一部なのか、認知機能の低下等による非日常行動なのかの判断に困難を伴う。支援者がこうした計測装置を用いた所在地の監視を継続的に行うことで日常行動と非日常行動とを判別することも可能だが、それでは支援者の負担が軽減されない。
【0004】
こうした高齢者の見守りを補助するシステムとして、携帯端末の所持者が所定の範囲外に出たことを察知して支援者に報知するシステム(特許文献1)や、所定の範囲内への対象者の滞在時間と範囲内の気温とから対象者の危険度を判定して支援者に報知するシステム(特許文献2)が開発されている。こうしたシステムでは、対象者に現在位置を計測する計測装置を所持させ、計測装置の現在位置と所定の範囲とを比較することにより、対象者が日常行動に含まれない非日常行動を行っている状態にあるかどうかを判定して支援者に報知し、対象者の保護を促す効果が期待できる。
【0005】
一方で、モビリティカー等のモビリティを利用する需要もまた、高まっている。こうしたモビリティを利用することで、歩行能力が低下した高齢者であっても、日常の移動を容易に行うことができる。一方で、高齢者がモビリティを利用する場合、高価な機器であるモビリティの盗難対策が、必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-099971号公報
【文献】特開2017-037385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、こうした従来の見守りシステムにおいては、モビリティを利用する高齢者の見守りに改善の余地がある。モビリティを利用することで、高齢者は歩行による疲労を感じることなく、より長時間移動できるようになり、行動範囲が広がり、見守り及び見守り支援の必要性が増す。しかし、前述した高齢者に計測装置を所持させる見守りシステムでは、高齢者が計測装置を置いて出かけた場合など、高齢者が計測装置を所持していない場合の見守りを支援できない。見守り装置がモビリティの位置情報を検知し、対象者の非日常行動を判別できれば、モビリティを利用する高齢者の見守りを、より確実に支援できる。また、モビリティの位置情報を検知する見守り装置が、モビリティが盗難された場合の行動を非日常行動だと判別できれば、見守り装置による盗難対策も可能となる。
【0008】
本発明は、このような考えに基いてなされたものであり、モビリティの位置情報を検知し、モビリティの行動が日常の行動とは異なる非日常行動であるか否かを判別して、モビリティの操作者を支援する支援者にモビリティの行動が非日常行動であることを報知することで、特に高齢者である操作者の見守り支援を容易に行うことを可能とするモビリティ見守り装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、モビリティの位置とモビリティの操作者の住居の位置、モビリティの位置とモビリティの操作者の行動範囲、及びモビリティの速度と所定速度とを比較することで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
第1の特徴に係る発明は、モビリティの位置情報を検知する位置検知部と、前記モビリティの行動が日常の行動とは異なる非日常行動であるか否かを判別する行動判別部と、前記非日常行動である場合、前記モビリティの操作者を支援する支援者が所有する情報端末に、前記モビリティの行動が前記非日常行動であることを報知する報知部とを備え、前記行動判別部は、前記モビリティの位置が前記モビリティの操作者の住居から所定範囲以上離れている場合、前記モビリティの位置が前記モビリティの操作者の行動範囲外の経路に位置する場合、及び前記モビリティの速度が所定速度以上である場合から選択される少なくとも1つの場合に該当するとき、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると判別する、モビリティ見守り装置である。
【0011】
第1の特徴に係る発明によれば、モビリティの位置情報を検知する位置検知部を備え、モビリティから送信される位置情報を用いてモビリティの行動状態を把握する。そのため、例えば、モビリティを利用する操作者(特に高齢者)が位置情報検知機能付き端末(例えば、GPS機能付き携帯端末)を自宅に置き忘れたまま外出した場合でも、見守り装置は、当該操作者の行動をより確実に検知できる。また、見守り装置は、モビリティの行動が日常の行動とは異なる非日常行動であるか否かを判別する行動判別部を備えるため、モビリティの操作者がモビリティを用いた日常行動に含まれない非日常行動を行っていることを判別できる。そして、モビリティ見守り装置は、モビリティの行動が非日常行動である場合、モビリティの操作者を支援する支援者が所有する情報端末に、モビリティの行動が非日常行動であることを報知する報知部を備えるため、行動判別部が判別した非日常行動を支援者に報知し、支援者に対して操作者への支援を促すことができる。
【0012】
一般に、操作者(特に高齢者)の日常行動の範囲は、操作者にとって慣れ親しんだ施設が多い等の理由により、操作者の住居を中心とする所定の範囲に含まれる。また、モビリティを用いた移動においては、モビリティの速度と航続距離によっても、モビリティを用いた日常行動の範囲が、操作者の住居を中心とする所定の範囲内に制限される。したがって、モビリティの位置が操作者の住居を中心とする所定の範囲に含まれなければ、モビリティが操作者の日常行動の範囲に含まれない、非日常行動を行っていると判別できる。
【0013】
日常行動においては、操作者は、遠回りをせず、操作者の行動範囲内の経路を通過して移動する。したがって、モビリティの位置がモビリティの操作者の行動範囲外の経路に位置するならば、モビリティが操作者の日常行動の範囲に含まれない、非日常行動を行っていると判別できる。
【0014】
本件特許出願時において、日本の道路交通法上において、モビリティは、車両ではなく歩行者扱いとされており、車道ではなく歩道を通行する。また、モビリティの最高速度は、6km/hを超えないことと規定されている。したがって、モビリティの速度が、法定速度や、モビリティの本来の性能で規定された速度で規定される所定速度以上である場合、モビリティが、盗難によって貨物自動車等に積まれ、法定速度やモビリティの最高速度を超えて移動している等の非日常行動を行っていると判別できる。
【0015】
よって、行動判別部が、モビリティの位置がモビリティの操作者の住居から所定範囲以上離れている場合、モビリティの位置がモビリティの操作者の行動範囲外の経路に位置する場合、及びモビリティの速度が所定速度以上である場合から選択される少なくとも1つの場合に該当するとき、モビリティの行動が非日常行動であると判別することで、これら非日常行動の判別をより適切に行える。したがって、より適切な非日常行動の判別に基づく、効果的なモビリティ見守りを行える。
【0016】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴の発明に係る発明であって、前記操作者の住居の位置に関する住居位置情報と前記操作者が訪れる施設の位置に関する施設位置情報とに基づいて、前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて前記所定範囲を定める範囲画定部をさらに備え、前記行動判別部は、前記モビリティの位置が前記範囲画定部によって定められた前記所定範囲よりも離れた位置にあるとき、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると判別する、モビリティ見守り装置である。
【0017】
第2の特徴に係る発明によれば、操作者の住居の位置に関する住居位置情報と操作者が訪れる施設の位置に関する施設位置情報とに基づいて、モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて所定範囲を定める範囲画定部を備えることによって、操作者のそれぞれの日常行動の範囲をより適切に設定できる。例えば、操作者の住居の周辺と、操作者が訪れる施設それぞれの周辺とを、操作者の日常行動に含まれる所定範囲として定めることができる。また、この範囲画定部は、モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて所定範囲を定めるため、複数の操作者に対する見守り支援を、より効果的に行える。
【0018】
そして、行動判別部が、モビリティの位置が範囲画定部によって定められた所定範囲よりも離れた位置にあるとき、モビリティの行動が非日常行動であると判別することで、範囲画定部が定めた操作者それぞれの日常行動の範囲を用いた、非日常行動の判別を行える。支援者は、操作者それぞれの日常行動の範囲を個別に把握し、記憶することなく、本発明のモビリティ見守り装置の報知によって、操作者それぞれの非日常行動を知ることができる。すなわち、より支援者の負担が小さい、効果的なモビリティ見守りが可能となる。
【0019】
第3の特徴に係る発明は、第2の特徴の発明に係る発明であって、前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて前記モビリティの行動履歴を記憶する行動履歴記憶手段をさらに備え、前記範囲画定部は、前記行動履歴に基づいて前記所定範囲を更新可能である、モビリティ見守り装置である。
【0020】
第3の特徴に係る発明によれば、モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについてモビリティの行動履歴を記憶する行動履歴記憶手段を備えるため、操作者の日常行動が含まれるモビリティの行動履歴を記憶できる。さらに、範囲画定部が、この行動履歴に基づいて所定範囲を更新可能であるため、操作者の日常行動の変化を、所定範囲に反映できる。例えば、操作者が、新規に開店した商店に立ち寄るようになった、というような日常行動の変化を反映できる。すなわち、操作者の日常行動の変化をも含めた日常行動の範囲の更新を行って、より適切に非日常行動の判定を行える。よって、より適切な非日常行動の判別に基づいた報知が行われ、さらに効果的なモビリティ見守りを行える。
【0021】
第4の特徴に係る発明は、第1から第3のいずれかの特徴に係る発明であって、前記操作者の住居の位置に関する住居位置情報と前記操作者が訪れる施設の位置に関する施設位置情報とに基づいて、前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて前記操作者の行動範囲にあたる行動経路を定める経路画定部をさらに備え、前記行動判別部は、前記モビリティの位置が前記経路画定部によって定められた前記所定経路にはない位置にあるとき、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると判別する、モビリティ見守り装置である。
【0022】
第4の特徴に係る発明によれば、操作者の住居の位置に関する住居位置情報と操作者が訪れる施設の位置に関する施設位置情報とに基づいて、モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて操作者の行動範囲にあたる行動経路を定める経路画定部を備えるため、操作者の住居やその周辺と、操作者が訪れる施設とその周辺に加えて、それらを結ぶ経路についても、日常行動における操作者の行動範囲として、定めることができる。そして、行動判別部は、モビリティの位置が経路画定部によって定められた所定経路にはない位置にあるとき、すなわち、モビリティの位置が日常行動における操作者の行動範囲にないとき、モビリティの行動が非日常行動であると判別する。これによって、移動経路をも考慮したより詳細な行動範囲を定め、より適切に非日常行動の判定を行える。よって、より適切な非日常行動の判別に基づいた報知が行われ、さらに効果的なモビリティ見守りを行える。
【0023】
第5の特徴に係る発明は、第4の特徴に係る発明であって、前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて前記モビリティの行動履歴を記憶する行動履歴記憶手段をさらに備え、前記経路画定部は、前記行動履歴に基づいて前記行動経路を更新可能である、モビリティ見守り装置である。
【0024】
第5の特徴に係る発明によれば、モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについてモビリティの行動履歴を記憶する行動履歴記憶手段を備えるため、操作者の日常行動が含まれるモビリティの行動履歴を記憶できる。さらに、経路画定部が、この行動履歴に基づいて行動経路を更新可能であるため、操作者の日常行動の変化を、行動経路に反映できる。例えば、操作者が、以前とは異なる近道を通って施設に向かうようになった、というような変化を反映できる。すなわち、操作者の日常行動の変化をも含めた日常行動の範囲の更新を行って、より適切に非日常行動の判定を行える。よって、より適切な非日常行動の判別に基づいた報知が行われ、さらに効果的なモビリティ見守りを行える。
【0025】
第6の特徴に係る発明は、第1から第5のいずれかの特徴に係る発明であって、前記行動判別部は、前記モビリティの速度が前記モビリティについて法令で定められた法定速度を上回るとき、前記モビリティの速度が所定速度以上であると判別する、モビリティ見守り装置である。
【0026】
第6の特徴に係る発明によれば、行動判別部は、モビリティについて法令で定められた法定速度を用いて、モビリティの非日常行動を判別できる。例えば、モビリティが歩行者扱いであるシニアカーである場合、最高速度が時速6kmを超えないことという法令で定められた制限がある。よって、シニアカーであるモビリティが時速6kmを超える速度で移動しているならば、盗難にあって貨物自動車等に載せられ運ばれている、下り坂でブレーキが利かず最高速度以上で移動している、等の、非日常行動を行っていると判別できる。したがって、盗難や異常運転等を判別する、より適切な非日常行動の判定を行える。よって、より適切な非日常行動の判別に基づいた報知が行われ、さらに効果的なモビリティ見守りを行える。
【0027】
第7の特徴に係る発明は、第1から第6のいずれかの特徴に係る発明であって、前記操作者への質問とその質問に対する正しい回答との組合せが、前記モビリティを操作する複数の操作者のそれぞれについて予め格納された質問格納部と、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると前記行動判別部が判別する場合、前記モビリティに、前記モビリティを操作する操作者への質問として前記質問格納部に予め格納された前記質問を送信する質問送信部と、前記質問に対する回答を受信する回答受信部とをさらに備え、前記報知部は、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると前記行動判別部が判別し、かつ、前記回答受信部によって受信された回答が、前記モビリティを操作する操作者への質問の回答として前記質問格納部によって予め格納された前記正しい回答とは異なる場合、前記支援者が所有する前記情報端末に、前記モビリティの行動が前記非日常行動であることを報知する、モビリティ見守り装置である。
【0028】
非日常行動が報知された場合、報知された支援者が行う支援行動には、モビリティの操作者の状態を確認することが含まれる。この確認において、支援者は、モビリティの操作者が健康な状態であるか、あるいは、予め定められた操作者本人であるかを判別できることが望ましい。そこで、支援者が、操作者であれば正しい回答を行える質問を行い、回答が正しいか否かによってこの判別を行うやり方があるが、支援者が複数の操作者についてこれらの質問と正しい回答とを把握及び記憶することには困難が伴う。ところで、操作者が健康な状態であり、かつ、予め定められた操作者本人であれば、現在位置が所定の行動範囲に含まれていなかったとしても、即座の対応を要する危険な状態ではない。このような場合に非日常行動の報知が行われなければ、支援者は操作者の健康状態等を確認する質問に煩わされることなく、より重要な非日常行動の報知への対応に専念できる。よって、より効果的なモビリティ見守りを行える。
【0029】
第7の特徴に係る発明によれば、操作者への質問とその質問に対する正しい回答との組合せが、質問格納部に予め格納され、行動判別部が非日常行動を判別する場合に、その質問を操作者に送信し、操作者の回答を回答受信部が受信し、操作者の回答が正しい回答と異なる場合に非日常行動であることを支援者に報知する。モビリティの操作者が健康な状態であり、かつ、予め定められた操作者本人である場合、すなわち、操作者に危険がないと判断できる場合であれば、現在位置から非日常行動であると判別された場合であっても、支援者に非日常行動であることが報知されない。よって、支援者は不要不急の報知に悩まされることなく、操作者の健康状態が悪い、あるいは、操作者本人でない者がモビリティを操作している、等の重要な非日常行動の報知の対応に専念できる。よって、より効果的なモビリティ見守りを行える。
【0030】
第8の特徴に係る発明は、第1から第7のいずれかの特徴に係る発明であって、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると前記行動判別部が判別する場合に、前記モビリティを操作する操作信号を前記モビリティに送信し、前記モビリティの位置を路肩に移動させるモビリティ遠隔操作部をさらに備える、モビリティ見守り装置である。
【0031】
第8の特徴に係る発明によれば、モビリティの行動が非日常行動であると行動判別部が判別する場合に、モビリティを操作する操作信号をモビリティに送信し、モビリティの位置を路肩に移動させるモビリティ遠隔操作部があるため、健康状態の悪化等によって操作者がモビリティを正常に操作できない状態であっても、モビリティの位置を路肩に移動させ、操作者の安全を守れる。また、モビリティの近くに支援者がいない場合であっても、モビリティ遠隔操作部があるため、支援者の到着を待たずに、モビリティの位置を路肩に移動させ、速やかに操作者の安全を守れる。よって、より効果的なモビリティ見守りを行える。
【0032】
第9の特徴に係る発明は、第1から第8のいずれかの特徴に係る発明であって、前記モビリティ見守り装置は、複数の操作端末を含んで構成されており、前記位置検知部は、前記操作端末の数を超える数のモビリティの位置情報を検知しており、前記モビリティの行動が前記非日常行動であると前記行動判別部が判別する場合に、前記複数の操作端末の中から、空きの操作端末を検索する端末検索部をさらに備え、前記報知部は、前記空きの操作端末から前記支援者が所有する情報端末に、前記モビリティの行動が前記非日常行動であることを報知する、モビリティ見守り装置である。
【0033】
複数の操作者を、それより少数の複数の支援者によって見守り支援する場合、支援者それぞれに複数の操作者を割り当て、担当させる方法がある。しかし、この方法では、支援者が担当する操作者の支援を行っている最中に同じ支援者が担当する別の操作者が操作するモビリティから非日常行動が報知された場合、支援者がこれら二人の操作者を同時に支援することが難しい。複数の支援者たちを管理する管理者が、支援者たちに担当する操作者を割り当てる方法もあるが、この方法では、操作者と支援者の人数が多い場合に、支援可能な支援者を探して担当を割り当てる管理者の負担が著しく増大し、支援者が割り当てられるまでの時間も長くなる。
【0034】
第9の特徴に係る発明によれば、モビリティ見守り装置が複数の操作端末を含んで構成され、複数の操作端末の中から空きの操作端末を検索する端末検索部があり、報知部が空きの操作端末から支援者が所有する情報端末にモビリティの行動が非日常行動であることを報知するため、あるモビリティの非日常行動への支援中に別のモビリティの非日常行動が判別されても、空きの操作端末を所有する支援者に非日常行動であることの報知が行われるため、この空きの操作端末を所有する支援者が、ただちに操作者に対する支援を行える。しかも、この方法では、複数の支援者たちを管理する管理者が、支援者たちに担当する操作者を割り当てる作業に煩わされることがない。したがって、操作者と支援者の人数が多い場合であっても、速やかに操作者を担当する支援者が決定され、支援を行える。よって、より効果的なモビリティ見守りを行える。
【0035】
第10の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明のカテゴリ違いである。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、モビリティの位置情報を検知し、モビリティの行動が日常の行動とは異なる非日常行動であるか否かを判別して、モビリティの操作者を支援する支援者にモビリティの行動が非日常行動であることを報知することで、特に高齢者である操作者の見守り支援を容易に行うことを可能とするモビリティ見守り装置及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本実施形態における見守りシステム1の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態における見守りシステム1を構成する各構成要素に関するハードウェア構成及びソフトウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態における見守りシステム1を使用したモビリティ見守りの流れを示すフローチャートである。
図4図4は、見守り装置2がモビリティ3の位置検知を行う処理の一例を示す概念図である。
図5図5は、本実施形態における住居テーブル121の一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態における行動範囲テーブル122の一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態における質問テーブル123の一例を示す図である。
図8図8は、質問送信部114によるモビリティ3へ質問を送信する処理の一例を示す概念図である。
図9図9は、表示部21における非日常行動の報知と、報知を受けたオペレータ50による支援の流れの一例を示す概念図である。
図10図10は、変形例5(遠隔操作による支援)において、見守り装置2を用いてモビリティ3を遠隔操作する流れを示す概念図である。
図11図11は、変形例7(生体情報を用いた非日常行動の判別)において、操作者40の生体情報を利用した非日常行動の判別を行い、この非日常行動を報知されたオペレータ50が支援を行う流れの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0039】
<見守りシステム1>
図1は、本実施形態における見守りシステム1の概略構成を示す模式図である。見守りシステム1は、見守り装置2と、1つ又は複数のモビリティ3A,3B,3C,・・・とを含んで構成される。見守り装置2は、サーバ10と、1つ又は複数の情報端末20A,20B,・・・とを備える。また、見守り装置2と、1つ又は複数のモビリティ3A,3B,3C,・・・とは、ネットワーク4を介して接続されている。
【0040】
以下では、1つ又は複数のモビリティ3A,3B,3C,・・・を総称してモビリティ3ともいう。また、1つ又は複数の情報端末20A,20B,・・・を総称して情報端末20ともいう。
【0041】
モビリティ3とは、一人乗りの小型電動車両をいい、シニアカー(高齢者向けに作られた三輪又は四輪の一人乗り電動車両)、電動車椅子、セグウェイ(登録商標)としても知られている電動立ち乗り二輪車等が挙げられる。モビリティ3は、日本の道路交通法では車両ではなく歩行者扱いとなり、車道ではなく歩道を通行する。モビリティ3は、歩道を通行するため、最高速度は低く抑えられており、例えば、シニアカーや、電動車椅子にあっては、最高速度は6km/h以下に抑えられている。
【0042】
図2は、本実施形態における見守りシステム1を構成する各構成要素に関するハードウェア構成及びソフトウェア構成を示すブロック図である。以下では、図2を参照しながら、見守り装置2及びモビリティ3の詳細構成について説明する。
【0043】
〔見守り装置2〕
見守り装置2は、サーバ10と、見守り装置2の管理会社に属するオペレータが利用する複数の情報端末20と、少なくとも見守り装置2とモビリティ3とをネットワーク4を介して接続する通信部30と、を含んで構成される。
【0044】
[サーバ10]
サーバ10は、サーバ10の動作を制御する制御部11と、制御部11のマイクロコンピューターで実行される制御プログラム等が記憶される記憶部12と、を含んで構成される。
【0045】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備える。
【0046】
制御部11は、所定のプログラムを読み込み、必要に応じて記憶部12及び/又は通信部30と協働することで、見守り装置2におけるソフトウェア構成の要素である位置検知部111、行動判別部112、報知部113、質問送信部114、回答受信部115等を実現する。
【0047】
記憶部12は、データやファイルが記憶される装置であって、ハードディスクや半導体メモリ、記録媒体、メモリカード等による、データのストレージ部を有する。記憶部12には、制御部11のマイクロコンピューターで実行される制御プログラム等が記憶されている。
【0048】
記憶部12には、操作者の住居を列挙した住居テーブル121、操作者の行動範囲を列挙した行動範囲テーブル122、操作者に行う質問と回答との組を列挙した質問テーブル123等が記憶されている。
【0049】
[情報端末20]
情報端末20の数は特に限定されるものではなく、1つであってもよいし、複数であってもよいが、あるオペレータが操作者の支援を担当する間に、同じオペレータが担当する別の操作者の支援も必要になったときに、他のオペレータに支援の分散を図ることができるようにする観点で、情報端末20の数は、多ければ多いほど好ましい。
【0050】
他方で、運用コストを含めた効率を考慮すると、情報端末20の数は、少ない方が好ましく、例えば、支援の対象となるモビリティ3の数よりも少ないことが好ましい。
【0051】
情報端末20は、表示部21と入力部22とを有し、その種類は、特に限定されない。情報端末20として、例えば、ディスプレイ装置、マウス、及びキーボードが接続された端末型ワークステーション、タッチパネル式のタブレット端末、等が挙げられる。
【0052】
表示部21の種類は、特に限定されない。表示部21として、例えば、モニタ、タッチパネル等を含む構成が挙げられる。表示部21は、音声データを再生するスピーカーを含むことが好ましい。表示部21がスピーカーを含むことにより、後述する操作者からの回答の送信を、高齢者にとって馴染み深い、操作者の口頭による返答という形で行い、その音声を受信して再生することができる。また、表示部21のスピーカーを介した、オペレータと操作者との通話も行える。
【0053】
入力部22の種類は、特に限定されない。入力部22として、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル等を含む構成が挙げられる。また、入力部22は、音声を音声データに変換するマイク装置を含むことが好ましい。入力部22がマイク装置を含むことにより、後述する質問の送信を、高齢者にとって馴染み深い、オペレータによる発声という形で行うことができる。また、入力部22のマイク装置を介した、オペレータと操作者との通話も行える。
【0054】
[通信部30]
通信部30は、モビリティ3その他の機器と通信可能にするためのデバイス、例えばイーサネット(登録商標)規格に対応したネットワークカード、携帯電話ネットワークに対応した無線装置等を有する。
【0055】
〔モビリティ3〕
本実施形態におけるモビリティ3は、モビリティ3の動作を制御する制御部31と、制御部31のマイクロコンピューターで実行される制御プログラム等が記憶される記憶部32と、見守り装置2その他の機器と通信を行う通信部33と、各種表示を行う表示部34と、操作者からの入力を受け付ける入力部35と、モビリティ3の現在位置を測位する測位部36と、モビリティ3の駆動、操舵、制動等を行い、モビリティ3を移動させる移動部37と、を含んで構成される。
【0056】
モビリティ3の制御部31及び記憶部32のハードウェア構成は、見守り装置2の制御部11及び記憶部12のハードウェア構成とそれぞれ同様である。
【0057】
通信部33は、見守り装置2その他の機器と通信可能にするためのデバイス、例えば携帯電話ネットワークに対応した無線装置、Wi-Fiスポットとの接続に対応した無線装置等を有する。中でも携帯電話ネットワークに対応した無線装置を用いれば、モビリティ3の周辺に利用可能なWi-Fiスポットが無い環境であっても見守り装置2との通信を行うことができ、好ましい。
【0058】
表示部34の種類は、特に限定されず、情報端末20の表示部21のハードウェア構成と同様にできる。中でもタッチパネルを用いれば、モビリティ3の操作者から近い限られた領域内で表示部34と入力部35とを同時に実現できるため、好ましい。また、表示部34は、音声データを再生するスピーカーを含むことが好ましい。表示部34がスピーカーを含むことにより、後述する質問の送信を、高齢者にとって馴染み深い、オペレータの口頭による読み上げという形で行い、その音声を受信して再生することができる。また、表示部34のスピーカーを介した、オペレータと操作者との通話も行える。
【0059】
入力部35の種類は、特に限定されず、情報端末20の入力部22のハードウェア構成と同様にできる。中でもタッチパネルを用いれば、モビリティ3の操作者から近い限られた領域内で表示部34と入力部35とを同時に実現できるため、好ましい。また、入力部35は、音声を音声データに変換するマイク装置を含むことが好ましい。入力部35がマイク装置を含むことにより、後述する回答の送信を、高齢者にとって馴染み深い、操作者の口頭による返答という形で行うことができる。また、入力部35のマイク装置を介した、オペレータと操作者との通話も行える。
【0060】
測位部36の種類は特に限定されない。測位部36として、例えば、GPS衛星からの信号を受信して測位するGPS受信機を用いた測位システムや、携帯電話の基地局からの情報を用いて測位するシステム等が挙げられる。
【0061】
移動部37の種類は特に限定されない。移動部37として、例えば、シニアカーが挙げられる。必須の態様ではないが、移動部37は、オペレータによる遠隔操作が可能であることが好ましい。移動部37が遠隔操作可能であることにより、オペレータによるモビリティ3の移動支援等を行うことができる。
【0062】
<見守り装置2を用いたモビリティ見守りの手順>
図3は、見守り装置2を使用したモビリティ3のモビリティ見守りを行う手順を示すフローチャートの一例である。以下では、図3を参照しながら、見守り装置2の好ましいソフトウェア構成についてより詳しく説明する。
【0063】
〔ステップS11:位置検知〕
まず、制御部11は、モビリティ3の位置を検知する(ステップS11)。位置検知部111がモビリティ3の位置を検知する手段として、例えば、モビリティ3に現在位置を見守り装置2へ送信するよう指令し、送信された現在位置を見守り装置2が受信する方法、モビリティ3が一定間隔で現在位置を見守り装置2へ送信し、送信された現在位置を見守り装置2が受信する方法、等がある。
【0064】
さらに、制御部11は、モビリティ3の移動速度を検知する。移動速度を検知する手段として、受信した現在位置と現在時刻とモビリティ3の操作者とを紐づけた組を現在位置の履歴として記憶部12に記憶し、履歴を用いてモビリティ3の移動速度を求める方法、モビリティ3に移動速度を送信するよう指令する方法、等がある。
【0065】
図4は、ステップS11における、見守り装置2が操作者40によって操作されるモビリティ3の位置検知を行う処理の一例を示す概念図である。図4を用いて位置検知を行う処理を説明する。モビリティ3は、GPS衛星からの信号を受信する等してモビリティ3の現在位置を測位し、移動速度を求め、測位した現在位置と求められた移動速度とを見守り装置2に送信する。そして、見守り装置2の制御部11は、現在位置を受信し、モビリティ3の現在位置と移動速度とを検知する(ステップS11)。必須の態様ではないが、図4に示すように、見守り装置2は、受信した現在位置を、受信した現在位置周辺の地図に重ねて表示部21に表示することもできる。現在位置と地図とを重ねて表示することにより、オペレータ50は、操作者40が操作するモビリティ3の位置を随時把握できる。
【0066】
〔ステップS12:操作者の住居から現在位置までの間を示す指標値が所定値以上であるかの判別〕
図3に戻る。続いて、制御部11は、操作者の住居から現在位置までの間を示す指標値が予め定められた所定値以上であるか否かを判別する。指標値が所定値以上であれば、制御部11は、処理をステップS15に進む。指標値が所定値以上でなければ、制御部11は、処理をステップS13に進む。
【0067】
指標値の種類は、特に限定されるものではない。例えば、操作者の住居から現在位置までの直線距離であってもよいし、操作者の住居を出発してから現在位置まで移動するのに要した移動時間であってもよいし、これらの両方であってもよい。
【0068】
また、所定値は、見守り装置2の管理会社と操作者(あるいは操作者を支援する支援者)との間で打ち合わせ等を通じて事前に取り決めた値であってもよいし、操作者の行動履歴から見守り装置2によって自動更新された更新値であってもよい。操作者の日常行動の変化を的確に把握できる点では、所定値として、操作者の行動履歴から見守り装置2によって自動更新された更新値を採用することが好ましい。
【0069】
以下、指標値が「操作者の住居から現在位置までの直線距離」である場合について、より詳しく説明する。制御部11は、記憶部12に記憶された住居テーブル121から、モビリティ3を操作する操作者の住居に関する位置情報を読み出す。そして、制御部11は、この位置情報と、ステップS11で検知した現在位置とを比較し、操作者の住居から現在位置までの直線距離が予め定められた所定値以上であるか否かを判別する。
【0070】
図5は、本実施形態における住居テーブル121の一例を示す図である。図5を用いて住居テーブル121の好ましい態様の一例について説明する。住居テーブル121には、操作者を識別するID(見出し「ID」が示す列)と、操作者の名前(見出し「操作者」が示す列)と、操作者の住居の住所(見出し「住居」が示す列)と、この住所に対応する位置情報(見出し「位置」が示す列)とが紐付けられて記憶されている。
【0071】
ID1には、ID1に対応する操作者「山田太郎」の住居が「東京都千代田区○○町一丁目△-△」にあり、その位置情報が「N35.69,E139.76」で示される緯度及び経度を有することがそれぞれ記憶されている。これにより、制御部11が操作者「山田太郎」の住居に関する位置情報を読み出し、この位置情報と、ステップS11で検知した現在位置とを比較することで、操作者の住居から現在位置までの直線距離が予め定められた所定値以上であるか否かを判別できる。そして、当該直線距離が所定値以上でなければ、制御部11の行動判別部112は、モビリティ3の現在位置が操作者の住居から一定範囲内である、日常行動の行動を行っていると判別できる。
【0072】
これら住所及び位置情報は例示のものであり、番地等を省いたより簡易な住所を記憶することも可能であれば、位置情報の緯度及び経度の有効桁数を増やしてより詳細な位置情報を記憶することも可能である。また、住所が町名番地等だけでなく、高層住宅等にある住居の高層住宅名、フロア数及び部屋番号等を含めて記憶することも可能である。より簡易な住所を記憶することで、オペレータが必要以上に操作者の個人情報に触れることを避けられる。また、緯度及び経度の有効桁数を増やすことで、より精度の高い所定範囲との比較が可能になる。住所が高層住宅等にある住居の高層住宅名、フロア数及び部屋番号等を含めて記憶することで、操作者の住居が高層住宅の一室等であっても、オペレータは、操作者を住居へ送迎する等の支援を行える。
【0073】
操作者を識別するIDと操作者の名前とが紐付けられていることにより、表示部21に操作者の名前を表示できる。これにより、オペレータが操作者の名前を識別でき、また、住居テーブル121に記憶された操作者の住居及び位置情報を変更する際のIDの検索も容易となる。IDと操作者の住居の住所が紐付けられていることにより、表示部21に操作者40の住居の住所を表示できる。これにより、オペレータは、操作者を住居へ送る等の支援活動を容易に行える。IDと操作者の住居の位置情報とが紐付けられていることにより、行動判別部112は、受信した現在位置と位置情報との比較を行える。
【0074】
また、指標値が「操作者の住居を出発してから現在位置まで移動するのに要した移動時間」である場合、制御部11は、モビリティ3に設けられたタイマ(図示せず)から読み出された操作者の住居を出発した出発時刻と、モビリティ3が現在位置にあるときの現在時刻とを比較し、操作者の住居から現在位置まで移動するのに要した移動時間が予め定められた所定値以上であるか否かを判別すればよい。
【0075】
一般に、操作者(特に高齢者)の日常行動の範囲は、操作者にとって慣れ親しんだ施設が多い等の理由により、操作者の住居を中心とする所定の範囲に含まれる。また、モビリティを用いた移動においては、モビリティの速度と航続距離によっても、モビリティを用いた日常行動の範囲が、操作者の住居を中心とする所定の範囲内に制限される。したがって、指標値が所定値以上であれば、モビリティの位置が操作者の住居を中心とする所定の範囲に含まれず、モビリティが操作者の日常行動の範囲に含まれない、非日常行動を行っていると判別できる。
【0076】
〔ステップS13:操作者による日常の行動範囲外の経路上であるかの判別〕
図3に戻る。制御部11は、記憶部12に記憶された行動範囲テーブル122から、モビリティ3の操作者に対応する行動範囲及びその位置情報を読み出す(ステップS13)。そして、この位置情報と、ステップS11で検知した現在位置とを比較し、モビリティ3の現在位置が操作者による日常の行動範囲外の経路上にあるか否かを判別する。モビリティ3の現在位置が操作者による日常の行動範囲外の経路上であれば、制御部11は、処理をステップS15に進む。モビリティ3の現在位置が操作者による日常の所定範囲以上でなければ、制御部11は、処理をステップS14に進む。
【0077】
図6は、本実施形態における行動範囲テーブル122の一例を示す図である。図6を用いて行動範囲テーブル122の好ましい態様の一例について説明する。行動範囲テーブル122には、操作者を識別するID(見出し「ID」が示す列)と、操作者の名前(見出し「操作者」が示す列)とが紐付けられて記憶されている。さらに、行動範囲テーブル122には、操作者の日常行動の行動範囲の説明(見出し「行動範囲1」「行動範囲2」が示す列)と、この行動範囲に対応する位置情報(見出し「位置1」「位置2」が示す列)との組が、1つまたは複数、前述のIDと紐付けられて記憶されている。
【0078】
ID1には、ID1に対応する操作者「山田太郎」が行動範囲1として「○○郵便局」を持ち、その位置情報が「N35.69,E139.76」で示される緯度及び経度を有すること、及び、行動範囲2として「○○コンビニ」を持ち、その位置情報が「N35.68,E139.76」で示される緯度及び経度を有することがそれぞれ記憶されている。これにより、例えば、行動判別部112は、操作者「山田太郎」が操作するモビリティ3の現在位置が「○○郵便局」や「○○コンビニ」周辺であったり、操作者の住居から、「○○郵便局」や「○○コンビニ」等までの間をルート検索したときの検索結果の経路上にあれば、モビリティ3の現在位置が操作者の日常行動の行動範囲に含まれる、日常行動の行動を行っていると判別できる。
【0079】
なお、これら行動範囲の説明及び位置情報は例示のものであり、行動範囲である施設等の正式名称などのより詳細な説明を記憶することも可能であれば、位置情報の緯度及び経度の有効桁数を増やしてより詳細な位置情報を記憶することも可能である。施設等の正式名称等を含むより詳細な説明を記憶することで、オペレータが施設等に連絡する際の連絡先の検索等が容易となる。緯度及び経度の有効桁数を増やすことで、より精度の高い現在位置との比較が可能になる。
【0080】
操作者を識別するIDと操作者の名前とが紐付けられていることにより、表示部21に操作者の名前を表示できる。これにより、オペレータが操作者の名前を識別でき、また、行動範囲テーブル122に記憶された操作者の行動範囲及び位置情報を変更する際のIDの検索も容易となる。IDと操作者の行動範囲の説明とが紐付けられていることにより、表示部21に操作者の行動範囲の説明を表示できる。これにより、オペレータは、行動範囲に相当する施設等への連絡を含む支援活動を容易に行える。IDと操作者の行動範囲の位置情報とが紐付けられていることにより、行動判別部112は、受信した現在位置と行動範囲の位置情報との比較を行える。
【0081】
日常行動においては、操作者は、遠回りをせず、操作者の行動範囲内の経路を通過して移動する。したがって、受信した現在位置と行動範囲の位置情報との比較により、モビリティの位置がモビリティの操作者の行動範囲外の経路に位置すると判別したならば、モビリティが操作者の日常行動の範囲に含まれない、非日常行動を行っていると判別できる。
【0082】
〔ステップS14:モビリティ3の移動速度が所定速度以上であるか判別〕
図3に戻る。制御部11は、ステップS11で検知したモビリティ3の移動速度と、予め定められた所定速度と比較する(ステップS14)。モビリティ3の移動速度が所定速度以上であれば、制御部11は、モビリティ3の見守りに関する一連の処理を終了し、処理をステップS11に進む。モビリティ3の移動速度が所定速度以上でなければ、制御部11は、処理をステップS15に進む。
【0083】
必須の態様ではないが、この所定速度として、モビリティ3について法令で定められた法定速度を用いることも好ましい。例えば、モビリティ3が歩行者扱いであるシニアカーである場合、最高速度が時速6kmを超えないことという法令で定められた制限がある。よって、シニアカーであるモビリティ3が時速6kmを超える速度で移動しているならば、モビリティ3が盗難にあって貨物自動車等に載せられ運ばれている、モビリティ3が下り坂でブレーキが利かず最高速度以上で移動する異常運転の状態にある、等の、非日常行動を行っていると判別できる。したがって、モビリティ3の盗難や異常運転等を判別する、より適切な非日常行動の判定を行える。よって、より適切な非日常行動の判別に基づいた報知が行われ、さらに効果的なモビリティ見守りを行える。
【0084】
ステップS12~S14において、行動判別部112は、モビリティの位置がモビリティの操作者の住居から所定範囲以上離れている場合、モビリティの位置がモビリティの操作者の行動範囲外の経路に位置する場合、及びモビリティの速度が所定速度以上である場合から選択される少なくとも1つの場合に該当するとき、モビリティの行動が非日常行動であると判別する。これにより、これら非日常行動の判別をより適切に行える。したがって、より適切な非日常行動の判別に基づく、効果的なモビリティ見守りを行える。
【0085】
〔ステップS15:質問読み込み〕
次に、制御部11は、記憶部12と協働して質問送信部114を実行し、記憶部12に記憶された質問テーブル123からモビリティ3の操作者に対応する質問と回答との組を読み込む(ステップS15)。
【0086】
図7は、本実施形態における質問テーブル123の一例を示す図である。図7を用いて質問テーブル123の好ましい態様の一例について説明する。質問テーブル123には、操作者を識別するID(見出し「ID」が示す列)と、操作者の名前(見出し「操作者」が示す列)とが紐付けられて記憶されている。さらに、質問テーブル123には、操作者に対する質問(見出し「質問1」「質問2」が示す列)と、これらの質問それぞれに対応する回答(見出し「回答1」「回答2」が示す列)との組が、1つまたは複数、前述のIDと紐付けられて記憶されている。
【0087】
ID1には、ID1に対応する操作者「山田太郎」への質問1として「孫の名は?」という質問があり、それに対する回答が「つばさ」であること、質問2として「愛犬の名は?」という質問があり、それに対する回答が「ポチ」であることがそれぞれ記憶されている。また、ID2には、ID2に対応する操作者「田中花子」への質問1として「出身地は?」という質問があり、それに対する回答が「浦和」であること、質問2として「好きな色は?」という質問があり、それに対する回答が「赤」であることがそれぞれ記憶されている。このように、本発明の質問テーブル123は、質問と回答との組を1つまたは複数記憶するよう構成されており、さらに、質問内容を任意に設定可能である。これによって、誰に対しても名前と生年月日とを尋ねるような画一的な質問を記憶するだけでなく、例示のように操作者に適するよう柔軟に定められた質問と回答との組とを記憶することが可能であり、しかも、質問と回答との組を予め定められた数だけ記憶するのではなく、必要に応じて質問と回答との組の数を任意に増減することも可能である。
【0088】
〔ステップS16:質問の送信〕
図3に戻る。制御部11は、記憶部12及び通信部30と協働して質問送信部114を実行し、ステップS21で読み込んだ質問から選ばれた任意の1つまたは複数の質問を、モビリティ3へと送信する(ステップS16)。質問を送信する方法は問わない。質問を送信する方法として、例えば、質問のテキストを表示部34に表示するようモビリティ3に指令する方法であっても良いし、見守り装置2の表示部21に質問と回答との組を表示し、オペレータが質問を読み上げ、その音声データをモビリティ3に送信して表示部34で再生する方法であっても良い。あるいは、それらの組み合わせであっても良い。
【0089】
図8は、質問の送信を、見守り装置2の情報端末20の表示部21に質問と回答との組を表示し、オペレータ50が質問を読み上げ、その音声を入力部22に含まれるマイク装置を用いて音声データに変換し、モビリティ3に送信する方法で行う場合の、質問送信部114の動作を示す概念図である。図8を用いて、質問送信部114の動作の一例を説明する。
【0090】
表示部21に、モビリティ3から送信された操作者40の映像と、オペレータ50に質問の送信を促す「操作者様の確認を行ってください。」というメッセージとが表示され、その下に質問1として「孫の名は?」という質問と、それに対する回答1として「つばさ」という回答が表示されている。さらに、質問2として「愛犬の名は?」という質問と、それに対する回答2として「ポチ」という回答が表示されている。表示部21の表示を受けて、オペレータ50は、「操作者様のお孫様のお名前をお答えいただけますか?」との質問を発声し、その音声が入力部22に含まれるマイク装置によって音声データに変換され、モビリティ3へ送信され、モビリティ3の表示部34が備えるスピーカーによって再生される。
【0091】
このように、見守り装置2の情報端末20の表示部21に質問と回答との組を表示し、オペレータ50が質問を読み上げ、その音声を入力部22に含まれるマイク装置を用いて音声データに変換し、モビリティ3に送信することにより、操作者40(特に高齢者)は、表示部34に表示された文字等を読むことなく、送信された質問を理解できる。操作者40が老眼を患っている高齢者等であっても、この方法による質問の送信であれば、操作者40は質問を容易に理解できる。
【0092】
〔ステップS17:回答の受信〕
図3に戻る。モビリティ3から回答が送信されると、制御部11は、記憶部12及び通信部30と協働して回答受信部115を実行し、操作者40によって入力された回答を受信する(ステップS17)。
【0093】
回答を受信する方法として、例えば、表示部34のタッチパネルに、質問に対応する回答のフレーズと、ランダムに選択された回答と異なるフレーズとが並べて表示され、操作者40がタッチパネルに触れて選択したフレーズを見守り装置2に送信し、見守り装置2が送信されたフレーズを受信する方法、操作者40によって発話された回答が入力部35を介して音声データに変換されて見守り装置2に送信され、見守り装置2が送信された音声データを受信する方法、等がある。
【0094】
操作者40がタッチパネルに触れて選択したフレーズを受信する方法であれば、騒音がある場所であっても、操作者40は騒音に邪魔されることなく回答を入力できる。操作者40が発話した回答を音声データとして受信する方法であれば、発話という操作者40(特に高齢者)にとって馴染み深い方法で、操作者40は回答を入力できる。
【0095】
〔ステップS18:正しい回答か判断〕
ステップS17で回答が受信されると、制御部11は、受信した回答が正しい回答であるか否かを判断する(ステップS18)。受信した回答が正しい回答である場合、制御部11は、モビリティ3の見守りに関する一連の処理を終了し、処理をステップS11に進む。受信した回答が正しい回答でない場合、制御部11は、処理をステップS19に進む。これにより、操作者40が質問に正しい回答を返せる健康状態であるか否か、操作者40が予め定められた操作者本人であるか、等を判断できる。必須の態様ではないが、正しい回答であるか否かの判断が困難である場合、制御部11は、ステップS15へ進み、質問と回答との組を選び直して正しい回答であるか否かの判断を続けることも可能である(図示せず)。質問と回答との組を選び直して正しい回答であるか否かの判断を続けることで、より適切に操作者40の健康状態等を判断できる。
【0096】
受信した質問が正しい回答であるか否かを回答受信部115が判断する方法は問わない。受信した質問が正しい回答であるか否かを回答受信部115が判断する方法として、例えば、回答として受信したフレーズと、ステップS16で送信された質問に対応する回答のフレーズとをデータとして比較し、これらフレーズが一致するか否かを判断する方法、回答として受信したフレーズを、表示部21を用いて表示あるいは再生し、オペレータ50が正しい回答であるか否かを判断し、入力部22を介してオペレータ50による判断の結果を入力する方法、等がある。
【0097】
フレーズをデータとして比較し、これらフレーズが一致するか否かを判断する方法であれば、正しい回答であるか否かを迅速かつ自動的に判断できる。オペレータ50が正しい回答であるか否かを判断し、結果を入力する方法であれば、操作者40による回答の入力が不明瞭な発声である場合等の判断が難しい場合であっても、オペレータ50が操作者に聞き返すなどのより柔軟な対応による適切な判断を行える。
【0098】
〔ステップS19:報知〕
ステップS18で正しい回答でないと判断されると、制御部11は、記憶部12と協働して報知部113を実行し、支援者60が所有する情報端末に、操作者40が非日常行動を行っていることを報知する(ステップS19)。制御部11は、ステップS19の処理を行うと、モビリティ3の見守りに関する一連の処理を終了し、処理をステップS11に進む。
【0099】
<見守りシステム1の使用例>
続いて、本実施形態における見守りシステム1の使用例を説明する。
【0100】
まず、見守り装置2の管理会社に属する見守り装置2の管理者は、モビリティ3が利用中になったとき、見守り装置2とモビリティ3とが接続されるよう、見守り装置2とモビリティ3とのシステム構成を行う。このシステム構成は、例えば、管理者が、見守り装置2の記憶部12にモビリティ3を示すIPv6アドレスを登録し、さらに、モビリティ3の記憶部32に見守り装置2を示すIPv6アドレスを登録し、モビリティ3が利用中になったときに、互いにインターネットを介した通信を行えるよう構成すること等によって行われる。
【0101】
続いて、管理者は、システム構成を完了したモビリティ3を操作者40に渡し、操作者40がモビリティ3を操作可能であるよう設定する。この設定は、例えば、管理者がモビリティ3のキーを操作者40に渡すこと、管理者がモビリティ3の起動パスワードを操作者40に通知すること、等によって行われる。この設定は、モビリティ3と操作者40とを対応付けて、見守り装置2に記憶することを含む。
【0102】
操作者40は、モビリティ3を起動し、モビリティ3を操作する。モビリティ3の起動を受けて、通信部33は、モビリティ3と見守り装置2とを接続するよう見守り装置2に要請する。接続の要請を受けた見守り装置2は、モビリティ3と見守り装置2とを接続する。
【0103】
操作者40は、モビリティ3を用いて操作者の住居の周辺や、操作者の日常行動の行動範囲内を移動する日常行動を行う。モビリティ3の行動が、日常行動に含まれる限り、見守り装置2はモビリティ3の非日常行動を判別せず、従って、支援者60への報知も行われない。
【0104】
モビリティ3の現在位置が操作者40の行動範囲外の経路にある等の非日常行動を行うと、見守り装置2は、非日常行動を判別する。モビリティ3に質問が送信され、操作者40は質問に対して回答して見守り装置2に送信する。見守り装置2は送信された回答を受信し、正しい回答であるか否かを判断する。正しい回答でなければ、見守り装置2は、支援者60が所有する情報端末に、モビリティ3の非日常行動を報知する。
【0105】
図9は、モビリティ3が、モビリティ3の非日常行動を支援者60に報知し、支援者60とオペレータ50が操作者40を支援する流れの一例を示す概念図である。図9を用いて、モビリティ3の非日常行動を報知した場合のオペレータ50による支援の流れの一例を説明する。
【0106】
まず、表示部21に、モビリティ3の非日常行動を示すメッセージ「○○さんに非日常行動!」が表示される。表示を受けてオペレータ50は、情報端末20を介してモビリティ3に通話を発信する。そして、モビリティ3の操作者40は、表示部34及び入力部35を介してオペレータ50とビデオ通話を行う。このビデオ通話により、オペレータ50は、操作者40に健康状態を尋ねて適切な処置を助言する、操作者40を操作者40の住居まで道案内する、操作者40に最寄りの避難場所を紹介する、等の支援を行う。そして、オペレータ50は、操作者40の見守りを行う親族等の支援者60に、操作者40に非日常行動があったことを報知する。必要に応じ、支援者60はオペレータ50を通じて、最寄りの消防署や見守り装置2の管理会社のスタッフ等の援助者70に連絡し、援助者70に操作者40の救護を要請する等の支援を行うこともできる。
【0107】
本実施形態における非日常行動の判別は、見守り装置2によって検知されたモビリティ3の現在位置と移動速度とを利用して行われる。そのため、例えば、モビリティ3を利用する操作者40(特に高齢者)が位置情報検知機能付き端末(例えば、GPS機能付き携帯端末)を自宅に置き忘れたまま外出した場合でも、見守り装置2は、操作者40の行動をより確実に検知できる。また、見守り装置2は、モビリティ3の行動が日常の行動とは異なる非日常行動であるか否かを判別する行動判別部112を備えるため、モビリティ3の操作者40がモビリティ3を用いた日常行動に含まれない非日常行動を行っていることを判別できる。そして、モビリティ見守り装置2は、モビリティ3の行動が非日常行動である場合、モビリティ3の操作者40を支援する支援者60に、モビリティ3の行動が非日常行動であることを報知する報知部113を備えるため、行動判別部112が判別した非日常行動を支援者60に報知する。そして、前述の通り、操作者40は、支援者60と、オペレータ50による各種の支援を受けられる。
【0108】
<変形例>
以下、本実施形態に記載の発明における種々の変形例を例示する。
【0109】
〔変形例1〕 施設位置情報による範囲の画定
制御部11は、複数の操作者のそれぞれについて、住居テーブル121に記憶された操作者の住居位置と、行動範囲テーブル122に記憶された操作者が訪れる施設等に対応する行動範囲の位置情報に基づいて、操作者のそれぞれについて所定範囲を定める範囲画定部を備え、さらに、行動判別部112が、モビリティ3の位置がこの所定範囲よりも離れた位置にあるときに非日常行動だと判別するよう構成することもできる。
【0110】
所定範囲を定める範囲画定は、例えば、住居位置または行動範囲の施設等の位置から、所定の時間内にモビリティ3が到達可能な範囲を算出して所定範囲として定めるよう行える。制御部11が範囲画定部を備えることにより、操作者のそれぞれの日常行動の範囲をより適切に設定できる。例えば、操作者の住居の周辺と、操作者が訪れる施設それぞれの周辺とを、操作者の日常行動に含まれる所定範囲として定めることができる。また、この範囲画定部は、モビリティ3を操作する複数の操作者のそれぞれについて所定範囲を定めるため、複数の操作者に対する見守り支援を、より効果的に行える。
【0111】
そして、行動判別部112が、モビリティ3の位置が範囲画定部によって定められた所定範囲よりも離れた位置にあるとき、モビリティ3の行動が非日常行動であると判別することで、範囲画定部が定めた操作者40それぞれの日常行動の範囲を用いた、非日常行動の判別を行える。オペレータは、操作者それぞれの日常行動の範囲を個別に把握し、記憶することなく、本発明のモビリティ見守り装置2の報知によって、操作者それぞれの非日常行動を知ることができる。すなわち、よりオペレータの負担が小さい、効果的なモビリティ見守りが可能となる。
【0112】
〔変形例2〕 行動履歴による範囲の更新
変形例1の見守り装置2は、記憶部12が複数の操作者のそれぞれについてモビリティ3の行動履歴を記憶する行動履歴テーブルを備え、範囲画定部が、この行動履歴に基づいて所定範囲を更新可能であるよう構成することもできる。
【0113】
行動履歴テーブルを備えることにより、操作者の日常行動が含まれるモビリティ3の行動履歴を記憶できる。さらに、範囲画定部が、この行動履歴に基づいて所定範囲を更新可能であるため、操作者の日常行動の変化を、所定範囲に反映できる。例えば、操作者が、新規に開店した商店に立ち寄るようになった、というような日常行動の変化を反映できる。すなわち、操作者の日常行動の変化をも含めた日常行動の範囲の更新を行って、より適切に非日常行動の判定を行える。よって、より適切な非日常行動の判別に基づいた報知が行われ、さらに効果的なモビリティ見守りを行える。
【0114】
〔変形例3〕 住居位置と施設位置を用いた行動経路の画定
【0115】
住居テーブル121に記憶された住居位置情報と行動範囲テーブル122に記憶された施設位置情報等の行動範囲とに基づいて、モビリティ3を操作する複数の操作者のそれぞれについて操作者の行動範囲にあたる行動経路を定める経路画定部をさらに備え、さらに、行動判別部112が、モビリティ3の位置がこの経路画定部によって定められた所定経路にはない位置にあるとき、モビリティ3の行動が非日常行動であると判別するよう構成することもできる。
【0116】
経路画定部を備えることにより、操作者の住居やその周辺と、操作者が訪れる行動範囲の施設等とその周辺に加えて、それら住居及び行動範囲を結ぶ経路についても、日常行動における操作者の行動範囲として、定めることができる。そして、行動判別部112は、モビリティ3の位置が経路画定部によって定められた所定経路にはない位置にあるとき、すなわち、モビリティ3の位置が日常行動における操作者の行動範囲にないとき、モビリティ3の行動が非日常行動であると判別する。これによって、移動経路をも考慮したより詳細な行動範囲を定め、より適切に非日常行動の判定を行える。よって、より適切な非日常行動の判別に基づいた報知が行われ、さらに効果的なモビリティ見守りを行える。
【0117】
〔変形例4〕 行動履歴による行動経路の更新
変形例3の見守り装置2は、記憶部12が複数の操作者のそれぞれについてモビリティ3の行動履歴を記憶する行動履歴テーブルを備え、経路画定部が、この行動履歴に基づいて行動経路を更新可能であるよう構成することもできる。
【0118】
行動履歴テーブルを備えることにより、操作者の日常行動が含まれるモビリティ3の行動履歴を記憶できる。さらに、経路画定部が、この行動履歴に基づいて行動経路を更新可能であるため、操作者の日常行動の変化を、行動経路に反映できる。例えば、操作者が、住居から、以前とは異なる近道を通って行動範囲の施設に向かうようになった、というような変化を反映できる。すなわち、操作者の日常行動の変化をも含めた日常行動の範囲の更新を行って、より適切に非日常行動の判定を行える。よって、より適切な非日常行動の判別に基づいた報知が行われ、さらに効果的なモビリティ見守りを行える。
【0119】
〔変形例5〕 遠隔操作による支援
モビリティ3の行動が非日常行動であると行動判別部112が判別する場合に、モビリティ3を操作する操作信号をモビリティ3に送信し、モビリティ3の位置を路肩に移動させるモビリティ遠隔操作部116をさらに備えるよう構成することもできる。
【0120】
図10は、モビリティ遠隔操作部116によりモビリティ3を遠隔操作する流れを示す概念図である。オペレータ50(図示せず)は、情報端末20の表示部21に表示された非日常行動の報知を受け、入力部22及びモビリティ遠隔操作部116を介してモビリティ3に遠隔操作指示を送信し、モビリティ3を路肩に避難させる支援を行う。必須の態様ではないが、図10に示すように、モビリティ3を遠隔操作する際に、モビリティ3は、警笛を鳴らして遠隔操作中であることを示すことが好ましい。警笛を鳴らして遠隔操作中であることを示すことで、周辺の第三者は、道を開けるなどのモビリティ3の路肩への移動の支援を行える。
【0121】
必須の態様ではないが、モビリティ3がモビリティ3の周辺状況を収集可能なセンサ部を備え、センサ部が収集したモビリティ3の周辺状況を見守り装置2に送信可能であることが好ましい。モビリティ3がセンサ部を備え、モビリティ3の周辺状況を見守り装置2に送信可能であることにより、表示部21にモビリティ3の周辺状況を表示することができる。オペレータ50は、表示されたモビリティ3の周辺状況を用いた、より適切な遠隔操作を行うことができる。センサ部は、例えば、モビリティ3の周囲を撮影するカメラ装置を含む。
【0122】
必須の態様ではないが、モビリティ3が路肩を識別してモビリティ3を路肩へ移動可能な自動操縦装置を備え、遠隔操作指示を受けてモビリティ3を路肩に移動させることも好ましい。モビリティ3が自動操縦装置を備えることにより、オペレータ50は、遠隔操作指示を送る簡易な操作のみで、モビリティ3を安全な路肩に移動させるができる。
【0123】
モビリティ遠隔操作部116があるため、操作者40が健康状態の悪化等によってモビリティ3を正常に操作できない状態であっても、モビリティ3の位置を路肩に移動させ、操作者40の安全を守れる。また、モビリティ3の近くに見守り装置2の管理会社のスタッフや支援者60がいない場合であっても、モビリティ遠隔操作部116があるため、スタッフ等の到着を待たずに、モビリティ3の位置を路肩に移動させ、速やかに操作者40の安全を守れる。よって、より効果的なモビリティ見守りを行える。
【0124】
〔変形例6〕 複数の操作端末を用いた支援
見守り装置2は、複数の操作端末を含んで構成されており、位置検知部111は、情報端末20の数を超える数のモビリティ3の位置情報を検知しており、モビリティ3の行動が非日常行動であると行動判別部112が判別する場合に、これら複数の操作端末の中から、空きの操作端末を検索する端末検索部をさらに備え、報知部113は、空きの操作端末からオペレータ50が所有する操作端末に、モビリティ3の行動が非日常行動であることを報知するよう構成することもできる。
【0125】
複数の操作者を、それより少数の複数のオペレータによって見守り支援する場合、オペレータそれぞれに複数の操作者を割り当て、担当させる方法がある。例えば、ID1SとID2Sの2人のオペレータと、ID1~20の20人の操作者とがいる場合に、ID1SのオペレータはID1~10の操作者を担当し、ID2SのオペレータはID11~20の操作者を担当する、というような割り当て方である。しかし、この方法では、あるオペレータが担当する操作者の支援を行っている最中に同じオペレータが担当する別の操作者が操作するモビリティ3から非日常行動が報知された場合、すでに操作者を支援中のオペレータが新たに報知されたモビリティ3の操作者を支援することが難しい。複数のオペレータを管理する管理者が、報知に応じて支援を行っていないオペレータを報知されたモビリティ3の操作者の担当として割り当てる方法もあるが、この方法では、操作者とオペレータの人数が多い場合に、支援可能なオペレータを探して担当を割り当てる管理者の負担が著しく増大し、オペレータが割り当てられるまでの時間も長くなる。
【0126】
見守り装置2が複数の操作端末を含んで構成され、複数の操作端末の中から空きの操作端末を検索する端末検索部があり、報知部113が空きの操作端末からオペレータ50が所有する操作端末にモビリティ3の行動が非日常行動であることを報知することにより、あるモビリティ3の非日常行動への支援中に別のモビリティ3の非日常行動が判別されても、空きの操作端末を所有するオペレータ50に非日常行動であることの報知が行われるため、この空きの操作端末を所有するオペレータ50が、ただちに操作者に対する支援を行える。しかも、この方法では、複数のオペレータたちを管理する管理者が、操作者を担当するオペレータを割り当てる作業に煩わされることがない。したがって、操作者とオペレータの人数が多い場合であっても、速やかに操作者を担当するオペレータが決定され、支援を行える。よって、より効果的なモビリティ見守りを行える。
【0127】
〔変形例7〕 生体情報を用いた非日常行動の判別
モビリティ3が操作者の血圧、脈拍、呼吸数等の生体情報を収集する生体センサ部を備えて収集した生体情報を見守り装置2に送信し、見守り装置2が送信された生体情報を受信し、行動判別部112が、受信した生体情報が予め定められた所定の数値範囲外である場合に非日常行動だと判別するよう構成することもできる。生体センサ部を備えることにより、操作者(特に高齢者)の健康状態の悪化をいち早く判別し、非日常行動として報知し、支援者60及びオペレータ50が適切な支援を行うことができる。
【0128】
図11は、操作者40の生体情報を利用した非日常行動の判別を行い、この非日常行動を報知されたオペレータ50が支援を行う流れの一例を示す概念図である。モビリティ3が備える生体センサ部は、(A)モビリティ3を操作中の操作者40の生体情報を収集し、見守り装置2に送信する。行動判別部112は、受信した生体情報が予め定められた所定の数値範囲外であることから非日常行動だと判別し、表示部21に生体情報を表示する。そして、報知部113が、オペレータ50に非日常行動を報知する。非日常行動を報知されたオペレータ50は、表示部21及び入力部22を介してモビリティ3に通話を発信する。そして、操作者40は、表示部34及び入力部35を介してオペレータ50とビデオ通話を行う。このビデオ通話により、オペレータ50は、操作者40に、表示された生体情報に基づく操作者40の健康状態等を伝えてモビリティ3の操作を中止するよう助言する、等の支援を行う。(B)運転を中止するよう助言された操作者40は、モビリティ3の操作を中止するため、血圧が正常範囲外になって意識が朦朧とする等のモビリティの操作に適さない状態でモビリティの操作を続け、重大な事故に遭うことを避けられる。
【0129】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したものに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0130】
また、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0131】

2 見守り装置
10 サーバ
11 制御部
111 位置検知部
112 行動判別部
113 報知部
114 質問送信部
115 回答受信部
116 モビリティ遠隔操作部
12 記憶部
121 住居テーブル
122 行動範囲テーブル
123 質問テーブル
20 情報端末
21 表示部
22 入力部
30 通信部
3 モビリティ
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
34 表示部
35 入力部
36 測位部
37 移動部
40 操作者
50 オペレータ
60 支援者
70 援助者

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11