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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】外観検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240126BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240126BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20240126BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G06T7/00 610Z
G06T7/70 B
G01N21/84 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023115217
(22)【出願日】2023-07-13
【審査請求日】2023-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518232168
【氏名又は名称】ダイトロン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北田 啓順
(72)【発明者】
【氏名】立澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-044343(JP,A)
【文献】特開平11-183147(JP,A)
【文献】特許第7229439(JP,B1)
【文献】特開2017-096656(JP,A)
【文献】特開2010-243212(JP,A)
【文献】特開2009-115611(JP,A)
【文献】国際公開第2023/012966(WO,A1)
【文献】特開2005-331487(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115002450(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00
G06T 7/70
G03B 3/00-3/12
G02B 7/00-7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの底面を支持する支持面を有した支持部と、
前記ワークの側面を撮像して評価用画像を生成する側面撮像部と、
前記支持部を駆動させ、前記側面撮像部に対する前記ワークの向きを変化させる向き調整部と、
前記側面撮像部及び前記向き調整部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の異なるピント位置において前記側面撮像部に前記ワークの側面を撮像させて、複数の前記評価用画像を生成させる多焦点撮像処理と、
複数の前記評価用画像における対応する位置にそれぞれ設定されたつの異なる領域である第1評価領域第2評価領域、及び第3評価領域の合焦度をそれぞれ算出し、複数の前記評価用画像のうち、前記第1評価領域の合焦度が最も高い第1合焦画像前記第2評価領域の合焦度が最も高い第2合焦画像、及び前記第3評価領域の合焦度が最も高い第3合焦画像をそれぞれ選定する合焦画像選定処理と、
前記第1合焦画像を撮像した際の前記側面撮像部のピント位置である第1ピント位置と前記第2合焦画像を撮像した際の前記側面撮像部のピント位置である第2ピント位置との差に基づいて、前記側面撮像部に対する前記ワークの向きの補正値を算出し、当該補正値に基づいて、前記向き調整部に前記ワークの向きを補正させる補正処理と、を実行し、
前記第1評価領域と前記第2評価領域と前記第3評価領域とは、前記支持面に沿った方向に離間し、前記第1評価領域と前記第2評価領域との間に前記第3評価領域が設定されており、
前記制御部は、前記合焦画像選定処理において同一の前記評価用画像が前記第1合焦画像、前記第2合焦画像、及び前記第3合焦画像に選定されたこと、又は前記第1ピント位置と、前記第2ピント位置と、前記第3合焦画像を撮像した際の前記側面撮像部のピント位置である第3ピント位置との差が閾値よりも小さいことを必要条件として、前記補正処理を実行することなく、前記第1ピント位置、前記第2ピント位置、又は前記第3ピント位置に基づいて前記ワークの評価に使用する前記評価用画像を選定する外観検査装置。
【請求項2】
ワークの底面を支持する支持面を有した支持部と、
前記ワークの側面を撮像して評価用画像を生成する側面撮像部と、
前記支持部を駆動させ、前記側面撮像部に対する前記ワークの向きを変化させる向き調整部と、
前記側面撮像部及び前記向き調整部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の異なるピント位置において前記側面撮像部に前記ワークの側面を撮像させて、複数の前記評価用画像を生成させる多焦点撮像処理と、
複数の前記評価用画像における対応する位置にそれぞれ設定された2つの異なる領域である第1評価領域及び第2評価領域の合焦度をそれぞれ算出し、複数の前記評価用画像のうち、前記第1評価領域の合焦度が最も高い第1合焦画像、及び前記第2評価領域の合焦度が最も高い第2合焦画像をそれぞれ選定する合焦画像選定処理と、
前記第1合焦画像を撮像した際の前記側面撮像部のピント位置である第1ピント位置と前記第2合焦画像を撮像した際の前記側面撮像部のピント位置である第2ピント位置との差に基づいて、前記側面撮像部に対する前記ワークの向きの補正値を算出し、当該補正値に基づいて、前記向き調整部に前記ワークの向きを補正させる補正処理と、を実行し、
前記制御部は、前記補正処理を実行した後に再度の前記多焦点撮像処理及び前記合焦画像選定処理を実行し、再度の前記合焦画像選定処理で選定された前記第1合焦画像に係る前記第1ピント位置と、再度の前記合焦画像選定処理で選定された前記第2合焦画像に係る前記第2ピント位置との差が閾値よりも大きいことを必要条件として、当該第1合焦画像における前記第1評価領域の周辺領域である第1合焦領域と、当該第2合焦画像における前記第2評価領域の周辺領域である第2合焦領域とを共に前記ワークの評価に使用することを決定する外観検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ワークの評価に使用することを決定した、前記第1合焦画像における前記第1合焦領域と、前記第2合焦画像における前記第2合焦領域とに基づいて、前記ワークの側面を表現した結合画像を生成する請求項に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記向き調整部は、前記支持部を前記支持面と直交する軸線周りに回転させることが可能な請求項1~3のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記多焦点撮像処理において、前記制御部は、前記側面撮像部のピント位置を所定ピッチずつ変化させて前記ワークの側面の撮像を行わせる請求項1~3のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記合焦画像選定処理において、前記制御部は、前記評価用画像における前記ワークの側面の位置又は範囲に基づいて、前記第1評価領域又は前記第2評価領域を設定する請求項1~3のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項7】
前記合焦画像選定処理において、前記制御部は、前記評価用画像における前記ワークの側面の外縁を含む領域を前記第1評価領域又は前記第2評価領域に設定する請求項に記載の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外観検査のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーダイオード等の光学素子の外観検査工程においては、発光面を精細に撮像した画像に基づいて異常の評価を行うことが重要となる。光学素子においては、発光面の状態が光の照射特性に影響するためである。
【0003】
レーザーダイオードの共振器の構成法として、主に、共振器を半導体基板面と平行に構成し、へき開面から光を取り出す端面発光型、又は共振器を半導体基板面と垂直に構成した面発光型が用いられている。このうち、端面発光型のレーザーダイオードは、載置状態における側面が発光面となるため、外観検査においては、発光面である側面を精細に撮像することが求められる。
【0004】
半導体デバイスの外観検査工程は、分割後のチップの搬送中に実行されることが多い。分割後のチップは、コレット等を用いてダイシングシートからピックアップされ、検査台に載置される。その状態で、検査台周辺に設けられたカメラがチップを順次撮像する。カメラが生成した画像データに画像処理技術が適用されて、チップの異常が評価される。
【0005】
例えば、特許文献1には、テーブルに載置されたチップ素体の側面を撮像する外観検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-192030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
検査台に載置されたチップの側面を撮像する場合、カメラのレンズに対するチップの向きが重要となる。チップの側面全体にピントが合った精細な撮像画像を得るためには、カメラの光軸とチップの側面とが直交していることが望ましい。しかしながら、検査台にチップが載置される位置と向きは毎回異なるため、チップの側面がカメラのレンズに対して左右の一方に傾いた状態となりやすい。この傾きを補正するため、通常は、チップ上方に別途設けられたカメラによってチップを撮像し、得られた画像にエッジ認識等を適用して側面の傾きを検出する処理が実行される。しかしながら、チップの側面の損傷や半田の状態によっては、上方からの撮像により側面のエッジを精度よく認識できず、チップの傾きを十分に補正できないことがある。この傾きの大きさによっては、チップの側面のうち左右の一部の領域にしかピントを合わせることができず、精細な撮像画像を得ることが困難となる。
【0008】
例えば、テレセントリックレンズ等の被写界深度の広いレンズにおいては、チップの側面に多少の傾きがあっても上述した問題は発生し難いが、他の撮像条件との関係で被写界深度の浅いレンズを使用する場合、チップのわずかな傾きにおいても上述した問題が発生することがある。特許文献1に記載された発明は、チップ素体ごとに正確な向きの調整を行うものではないため、採用するレンズによっては上述した問題が発生すると考えられる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、精細な撮像画像に基づいてワークの異常を正確に評価することが可能な外観検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る外観検査装置は、ワークの底面を支持する支持面を有した支持部と、前記ワークの側面を撮像して評価用画像を生成する側面撮像部と、前記支持部を駆動させ、前記側面撮像部に対する前記ワークの向きを変化させる向き調整部と、前記側面撮像部及び前記向き調整部を制御する制御部と、を備えている。前記制御部は、複数の異なるピント位置において前記側面撮像部に前記ワークの側面を撮像させて、複数の前記評価用画像を生成させる多焦点撮像処理と、複数の前記評価用画像における対応する位置にそれぞれ設定されたつの異なる領域である第1評価領域第2評価領域、及び第3評価領域の合焦度をそれぞれ算出し、複数の前記評価用画像のうち、前記第1評価領域の合焦度が最も高い第1合焦画像前記第2評価領域の合焦度が最も高い第2合焦画像、及び前記第3評価領域の合焦度が最も高い第3合焦画像をそれぞれ選定する合焦画像選定処理と、前記第1合焦画像を撮像した際の前記側面撮像部のピント位置である第1ピント位置と前記第2合焦画像を撮像した際の前記側面撮像部のピント位置である第2ピント位置との差に基づいて、前記側面撮像部に対する前記ワークの向きの補正値を算出し、当該補正値に基づいて、前記向き調整部に前記ワークの向きを補正させる補正処理と、を実行する。また、前記第1評価領域と前記第2評価領域と前記第3評価領域とは、前記支持面に沿った方向に離間し、前記第1評価領域と前記第2評価領域との間に前記第3評価領域が設定されており、前記制御部は、前記合焦画像選定処理において同一の前記評価用画像が前記第1合焦画像、前記第2合焦画像、及び前記第3合焦画像に選定されたこと、又は前記第1ピント位置と、前記第2ピント位置と、前記第3合焦画像を撮像した際の前記側面撮像部のピント位置である第3ピント位置との差が閾値よりも小さいことを必要条件として、前記補正処理を実行することなく、前記第1ピント位置、前記第2ピント位置、又は前記第3ピント位置に基づいて前記ワークの評価に使用する前記評価用画像を選定する。
【0011】
上述した構成においては、複数の異なるピント位置において撮像された複数の評価用画像のうち、第1評価領域の合焦度が最も高い第1合焦画像を撮像した際の側面撮像部のピント位置である第1ピント位置と、第2評価領域の合焦度が最も高い第2合焦画像を撮像した際の側面撮像部のピント位置である第2ピント位置との差に基づいてワークの向きの補正値が算出されるため、側面撮像部に対するワークの向きを正確に補正することが可能となる。これにより、ワークの傾きが少ない状態で撮像された精細な撮像画像に基づいてワークの異常を正確に評価することが可能となる。
【0012】
なお、上記において、「底面」や「側面」等の表現は便宜的な物に過ぎず、「底面」が必ずしも水平方向に沿っており、「側面」が必ずしも鉛直方向に沿っていることを意味しない。支持部が設置される向きによって、ワークの「底面」又は「側面」の向きは変化することがある。また、上記において、「合焦度」とは、撮像時にピントが合った程度を示す値であり、その評価方法を限定するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、精細な撮像画像に基づいてワークの異常を正確に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る外観検査装置10のうち、チップ4の撮像を行う機構を示した図であって、(A)が正面図、(B)が平面図である。(B)において、上面撮像装置31は省略されている。
図2図2は、外観検査装置10における制御部50と各部との繋がりを示した機能ブロック図である。
図3図3は、チップ4の外観検査の流れを示したフローチャートである。
図4図4は、チップ4の外観検査の中で実行される多焦点撮像処理の流れを示したフローチャートである。
図5図5は、チップ4の外観検査の中で実行される合焦画像選定処理の流れを示したフローチャートである。
図6図6は、チップ4の外観検査の中で実行される補正処理の流れを示したフローチャートである。
図7図7は、チップ4の外観検査の中で実行される結合画像生成処理の流れを示したフローチャートである。
図8図8は、図1(B)におけるチップ4の側面5周辺を拡大した図である。
図9図9は、チップ4の側面5を撮像して生成された評価用画像Iを示した図である。
図10図10は、複数の評価用画像Iの中から選定された合焦画像IF1,IF2,IF3を示した図であって、(A)が第1合焦画像IF1、(B)が第2合焦画像IF2、(C)が第3合焦画像IF3である。
図11図11は、各合焦画像IF1,IF2,IF3の合焦領域EF1,EF2,EF3を切り取った領域画像IE1,IE2,IE3を示した図であって、(A)が第1領域画像IE1、(B)が第2領域画像IE2、(C)が第3領域画像IE3である。
図12図12は、各領域画像IE1,IE2,IE3から生成された結合画像ICを示した図である。
図13図13は、本発明の変形例において、評価用画像Iの中から選定された合焦画像IF1,IF2を示した図であって、(A)が第1合焦画像IF1、(B)が第2合焦画像IF2である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、外観検査装置10が設置された状態において、鉛直方向に沿って上下方向1が定義され、水平方向に沿って前後方向2及び左右方向3がそれぞれ定義されている。また、上下方向1と前後方向2と左右方向3とは、互いに直交している。
【0016】
[外観検査装置10の概要と全体構成]
図1,2に示される外観検査装置10は、検査台20(特許請求の範囲における「支持部」に相当。)に載置されたチップ4(特許請求の範囲における「ワーク」に相当。)を撮像し、生成された画像に基づいて、チップ4の異常を評価するものである。チップ4は光学素子であり、一般的には端面発光型のレーザーダイオードチップである。
【0017】
外観検査装置10は、チップ4が載置される検査台20(図1)、チップ4を撮像する撮像部30、撮像の際にチップ4と撮像部30との位置関係を調整する駆動部40(図2)、及び外観検査装置10の各部を制御する制御部50(図2)等を備えている。ただし、ここで挙げたものは本発明の課題の解決に必要な構成のみであり、外観検査装置10は、他にも種々の構成要素を有していてもよい。例えば、外観検査装置10は、載置されたチップ4をピックアップして搬送するコレット機構を備えていてもよい。あるいは、外観検査装置10は、ダイシング工程によりウェーハをチップ4に分割するダイシング装置と一体化されたものであってもよい。ただし、以下の説明では、ここで例示したような本発明の課題の解決に無関係の構成要素については省略する。外観検査装置10を構成する各構成要素について、以下でより詳細に説明する。
【0018】
[検査台20]
検査台20は、チップ4の撮像の際にチップ4が載置される台であり、チップ4を下方から支持するものである。検査台20は、チップ4が載置される上面(特許請求の範囲における「支持面」に相当。)が平坦面であり、上方から見て円形の略円柱形状である。図には示されないが、検査台20は、後述される駆動部40(図2)の検査台回転機構41(図2、特許請求の範囲における「向き調整部」に相当。)によって下方から支持されている。これにより、検査台20は、中心軸線CA(図1(A)、特許請求の範囲における「軸線」に相当。)を回転中心として、回転方向D1(図1(B))における時計回り又は反時計回りに選択的に回転可能とされている。
【0019】
[撮像部30]
撮像部30は、チップ4を撮像し、外観検査に用いる画像データを生成するものである。撮像部30は、上面撮像装置31及び側面撮像装置32(特許請求の範囲における「側面撮像部」に相当。)を備える。上面撮像装置31及び側面撮像装置32は、撮像素子としてのCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサーを内蔵した産業用カメラである。
【0020】
上面撮像装置31は、検査台20の上方に設けられている。上面撮像装置31のレンズは下方に向けられており、撮像時にはレンズがチップ4の上面と対向することで、上方からチップ4の上面を撮像する。
【0021】
側面撮像装置32は、チップ4の発光面を成す側面5を撮像するものである。側面撮像装置32は、検査台20に対して前後方向2の前方側に位置し、チップ4の側面5を横方向から撮像可能な位置に配置されている。側面撮像装置32のレンズは、チップ側(前後方向2の後方側)を向けられており、より正確には、側面撮像装置32の光軸OA(図1)が、検査台20の上面に沿うようにレンズの向きが決定されている。
【0022】
上面撮像装置31及び側面撮像装置32は、それぞれ後述される駆動部40(図2)のカメラ駆動機構43(図2)によって支持されている。これにより、上面撮像装置31及び側面撮像装置32は、上下方向1、前後方向2、及び左右方向3に沿って移動可能とされている。また、上面撮像装置31及び側面撮像装置32は、それぞれ後述される制御部50(図2)と電気的に接続されており、制御部50によってその撮像動作が制御されている。
【0023】
[駆動部40]
駆動部40(図2)は、検査台20を下方から支持する検査台回転機構41と、上面撮像装置31及び側面撮像装置32を支持するカメラ駆動機構43とからなる。検査台回転機構41は、制御部50の制御を受けて正方向又は逆方向に選択的に回転可能なモータ42を備えている。モータ42の回転駆動力は、ギア、プーリ、又はベルト等からなる不図示の駆動伝達機構を介して検査台20に伝達される。これにより、検査台20は、回転方向D1に沿って回転する。例えば、モータ42の正方向の回転駆動力を受けて、検査台20は時計回りに回転し、モータ42の逆方向の回転駆動力を受けて、検査台20は反時計回りに回転する。
【0024】
カメラ駆動機構43は、上面撮像装置31及び側面撮像装置32を一体的に支持している。カメラ駆動機構43は、制御部50の制御を受けて動作する複数のアクチュエータ44,45,46を備えている。上面撮像装置31及び側面撮像装置32は、アクチュエータ44,45,46の駆動力を受けて、上下方向1、前後方向2、及び左右方向3に沿って選択的に移動可能とされている。例えば、アクチュエータ44の駆動力を受けて、上面撮像装置31及び側面撮像装置32は上下方向1に沿って移動し、アクチュエータ45の駆動力を受けて、上面撮像装置31及び側面撮像装置32は前後方向2に沿って移動し、アクチュエータ46の駆動力を受けて、上面撮像装置31及び側面撮像装置32は左右方向3に沿って移動する。このとき、各方向への移動が同時に行われてもよい。なお、本実施形態は、上面撮像装置31と側面撮像装置32とが一体的に支持され、一体に移動するものであるが、上面撮像装置31を移動させるための機構と側面撮像装置32を移動させるための機構とが個別に設けられて、上面撮像装置31と側面撮像装置32とが異なる動きをするように構成されてもよい。
【0025】
また、図には示されないが、駆動部40は、検査台20の回転量を検出するロータリエンコーダや、上面撮像装置31又は側面撮像装置32の移動量を検出するリニアエンコーダ等を備えていてもよい。制御部50がこれらのエンコーダの信号を参照することで、駆動部40の回転量や上面撮像装置31及び側面撮像装置32の移動量をより高精度に制御することが可能となる。
【0026】
[制御部50]
制御部50(図2)は、外観検査装置10の全体動作を制御するコンピュータである。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51、メインメモリ52、補助記憶装置としてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)53、及びこれらの間でデータ伝送を行うための内部バス54等を最低限の構成として含んでいる。制御部50は、他にも入出力インターフェイスやネットワークインターフェイス等を備えているが、ここでは省略する。EEPROM53には、外観検査装置10の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されている。これらのプログラムが内部バス54を通じてメインメモリ52にロードされ、CPU51によって実行される。その結果生成された制御信号が、外部バス55を通じて外観検査装置10の各部にそれぞれ送信されて、外観検査装置10の全体動作が制御されている。
【0027】
EEPROM53には、駆動部40及び撮像部30の動作を制御するドライバプログラムが記憶されている。また、EEPROM53には、撮像部30が生成した画像データを処理するための画像処理プログラム、及びこれらの画像データに基づいてチップ4の異常を評価する評価プログラムが記憶されている。また、EEPROM53には、後述する多焦点撮像処理、合焦画像選定処理、補正処理、及び結合画像生成処理を実行するプログラム、及びこれらの各種プログラムをサブルーチンとしてロードして、チップ4の外観検査に係る全体シーケンスを実行するためのプログラムが記憶されている。
【0028】
[チップ4の外観検査の詳細]
以下、チップ4の外観検査の詳細を説明する。なお、以下で説明される外観検査装置10の各部の動作は、制御部50がEEPROM53に記憶された各種のプログラムを実行することで制御されている。
【0029】
外観検査工程において、まずは検査台20にチップ4が載置される。チップ4の製造の過程で外観検査が行われる場合、例えばダイシング工程等の前工程を終えたチップ4は、コレット機構等の搬送のための機構によって搬送され、その搬送の過程で検査台20に載置される。このとき、チップ4は、検査台20の上面のうち、中心軸線CAに近い位置に置かれることが望ましい。
【0030】
制御部50が実行する外観検査の処理の流れを示すフローチャートが図3に示されている。制御部50は、チップ4の撮像のために、上面撮像装置31及び側面撮像装置32とチップ4との位置関係を調整する(ステップS10)。まず、制御部50は、上面撮像装置31が生成する画像を参照し、上面撮像装置31がチップ4の上面全体を撮像可能な位置に来るように、上面撮像装置31を前後方向2及び左右方向3に移動させる。その状態で、制御部50は、エッジ認識などの画像処理アルゴリズムにより、上面撮像装置31が生成する画像から検査対象となるチップ4の側面5を検出する。制御部50は、検査台20を回転させ、チップ4の側面が側面撮像装置32側を向くようにチップ4の向きを調整する。続けて、制御部50は、側面撮像装置32が生成する画像を参照し、側面撮像装置32の光軸OAが側面5を通る位置まで側面撮像装置32を上下方向1に移動させる。これらの一連の動作は一度だけ実行されてもよいが、その全部又は一部の動作が繰り返し実行されて、上面撮像装置31及び側面撮像装置32とチップ4との位置関係がより高精度に調整されてもよい。
【0031】
上面撮像装置31及び側面撮像装置32とチップ4との位置関係の調整の後、上面撮像装置31によるチップ4の上面の撮像が行われる(ステップS20)。制御部50は、チップ4の上面にピントが合うように上面撮像装置31にピント調整を行わせ、チップ4の上面を撮像させる。上面撮像装置31が生成した撮像画像は、外部バス55を通じて制御部50に送信され、EEPROM53に記憶される。
【0032】
続けて、制御部50は、チップ4の側面5を撮像する多焦点撮像処理を実行する(ステップS30)。多焦点撮像処理は、側面撮像装置32のピント位置を規定のピッチずつ変化させながら、チップ4の側面5を複数回撮像する処理である。このピント位置とは、カメラのピントが合うための撮像対象面の位置であり、レンズの光軸に沿ったレンズとの距離によって規定される。
【0033】
多焦点撮像処理によって、側面撮像装置32がチップ4の側面5の撮像を行う際のピント位置の一例が図8に示されている。ここでは、合計10のピント位置P1~P10が採用されている。ピント位置P1~P10は、それぞれが側面撮像装置32の光軸OAと直交する平面を構成している。隣接するピント位置は所定のピッチずつ間隔が設けられており、いずれかのピント位置P1~P10の間にチップ4の側面5が位置するようにピント位置P1~P10が設定されている。
【0034】
例えば、図8に実線で示されるチップ4の側面5は、ピント位置P1~P10がそれぞれ成す平面に対して傾斜している。そして、チップ4の側面5の左端部はピント位置P5に最も近い位置にあり、右端部はピント位置P8に最も近い位置にある。これは、ピント位置P5において側面5を撮像した場合に側面5の左端部側に最もピントが合った撮像画像が得られ、ピント位置P8において側面5を撮像した場合に側面5の右端部側に最もピントが合った撮像画像が得られることを意味している。
【0035】
一方、図8に破線で示されるチップ4の側面5は、ピント位置P1~P10がそれぞれ成す平面と平行であり、ピント位置P6に最も近い位置にある。これは、ピント位置P6において側面5を撮像した場合に側面5の全域に最もピントが合った撮像画像が得られることを意味している。
【0036】
多焦点撮像処理を示すフローチャートが図4に示されている。制御部50は、側面撮像装置32の内部パラメタを変更し、ピント位置P1において撮像が行われるように設定を行う(ステップS31)。その状態で、制御部50は、側面撮像装置32にチップ4の側面5の撮像を行わせる(ステップS32)。側面撮像装置32が生成した評価用画像I(図9)は、外部バス55を通じて制御部50に送信され、EEPROM53に記憶される。
【0037】
制御部50は、全てのピント位置P1~P10における撮像が終了していない間は(ステップS33:NO)、側面撮像装置32のピント位置を1ピッチ分ずつ変化させ(ステップS34)、変更後の各ピント位置において、同様に側面撮像装置32にチップ4の側面5の撮像を行わせる(ステップS32)。制御部50は、全てのピント位置P1~P10における撮像が終了した場合(ステップS33:YES)、多焦点撮像処理を終了する。
【0038】
続けて、制御部50は、評価用画像Iの中から第1合焦画像、第2合焦画像、及び第3合焦画像を選定する合焦画像選定処理を実行する(ステップS40)。合焦画像選定処理を示すフローチャートが図5に示されている。EEPROM53には、多焦点撮像処理において、ピント位置P1~P10ごとの撮像によって側面撮像装置32が生成した複数の評価用画像Iが記憶されている。制御部50は、そのうちの一つの評価用画像Iに対してエッジ認識などの画像処理アルゴリズムを適用することで、チップ4の側面5の上下左右の4つの端縁をそれぞれ検出する。そして、検出した左右の端縁を含むその周囲に第1評価領域EI1(図9)及び第2評価領域EI2(図9)を設定する。ここでは、左側の端縁の周囲に設定された領域を第1評価領域EI1とし、右側の端縁の周囲に設定された領域を第2評価領域EI2とする。また、制御部50は、検出した上下のいずれかの端縁の周囲であって、左右の中央付近に第3評価領域EI3(図9)を設定する(ステップS41)。なお、本実施形態においては、チップ4の側面5の上側の端縁の周囲に第3評価領域EI3を設定したものとして説明を行う。
【0039】
制御部50は、当該評価用画像Iの第1評価領域EI1、第2評価領域EI2、及び第3評価領域EI3の合焦度をそれぞれ算出する。この合焦度は任意の方法で算出することができる。例えば、各評価領域EI1,EI2,EI3のコントラスト値を合焦度としてもよいし、空間周波数における高域成分の大きさを合焦度としてもよい。また、制御部50は、他の全ての評価用画像Iに対しても、当該評価用画像Iに設定した各評価領域EI1,EI2,EI3と同じサイズ及び座標位置の第1評価領域EI1、第2評価領域EI2、及び第3評価領域EI3を設定し、そのそれぞれについて合焦度を算出する(ステップS42)。
【0040】
制御部50は、全ての評価用画像Iの間で第1評価領域EI1の合焦度を比較し、第1評価領域EI1の合焦度が最も高い評価用画像Iを第1合焦画像IF1(図10(A))に選定する。同様に、制御部50は、全ての評価用画像Iの間で第2評価領域EI2の合焦度を比較し、第2評価領域EI2の合焦度が最も高い評価用画像Iを第2合焦画像IF2(図10(B))に選定する。同様に、制御部50は、全ての評価用画像Iの間で第3評価領域EI3の合焦度を比較し、第3評価領域EI3の合焦度が最も高い評価用画像Iを第3合焦画像IF3(図10(C))に選定する(ステップS43)。
【0041】
続けて、制御部50は、ピント位置P1~P10のうち、どのピント位置で撮像された評価用画像Iが第1合焦画像IF1、第2合焦画像、第3合焦画像IF3に選定されたかの情報に基づいて、側面撮像装置32に対するチップ4の傾きの度合いを判断する(ステップS50)。左右方向2におけるチップ4の側面5全体にピントが合った理想的な撮像画像を得るためには、図8に破線で示されるように、チップ4の側面5が、側面撮像装置32の光軸OAと直交していることが望ましい。この状態では、同一の評価用画像Iが第1合焦画像IF1、第2合焦画像IF2、及び第3合焦画像IF3に選定されることになる。例えば、図8に破線で示される状態においては、側面5がピント位置P6に最も近いため、ピント位置P6において撮像された評価用画像Iが第1合焦画像IF1、第2合焦画像IF2、及び第3合焦画像IF3に選定される。
【0042】
一方、図8に実線で示されるように、上述した理想的な状態からチップ4の側面5が傾いている場合、異なる評価用画像Iが第1合焦画像IF1、第2合焦画像IF2、及び第3合焦画像IF3に選定されることになる。例えば、図8に実線で示される状態においては、ピント位置P5において撮像された評価用画像Iが第1合焦画像IF1に選定され、ピント位置P8において撮像された評価用画像Iが第2合焦画像IF2に選定される。なぜなら、第1評価領域EI1が設定された側面5の左端がピント位置P5に最も近く、第2評価領域EI2が設定された側面5の右端がピント位置P8に最も近いためである。また、第3評価領域EI3が設定された側面5の中央がピント位置P6とピント位置P7の間に位置しているため、ピント位置P6又はピント位置P7において撮像された評価用画像Iが第3合焦画像IF3に選定される。
【0043】
つまり、チップ4の側面5が側面撮像装置32の光軸OAと直交する理想的な状態から、チップ4の左右の傾きが大きくなるほど、各合焦画像IF1,IF2,IF3が撮像された際のピント位置の差が大きくなる。以降、第1合焦画像IF1が撮像された際のピント位置を第1ピント位置と称し、第2合焦画像IF2が撮像された際のピント位置を第2ピント位置と称し、第3合焦画像IF3が撮像された際のピント位置を第3ピント位置と称する。
【0044】
制御部50は、このピント位置の差(何ピッチ分か)に基づいて、チップ4の傾きが許容範囲内であるか否かを判断する。この許容範囲については、ユーザが事前に適当な値を設定し、EEPROM53に記憶することができる。例えば、第1~第3ピント位置が一致する場合、つまり同一の評価用画像Iが、第1合焦画像IF1、第2合焦画像IF2、及び第3合焦画像IF3に選定された場合のみを許容するような設定がされていてもよい。あるいは隣接するピント位置間のピッチが小さく設定されている状況では、第1~第3ピント位置の間で、所定のピッチ数までの差を許容するような設定がされていてもよい。ここで、第1ピント位置と第2ピント位置との差の許容値が、特許請求の範囲における「閾値」に相当するものである。
【0045】
制御部50は、チップ4の傾きが許容範囲内でない場合であって(ステップS50:NO)、チップ4の向きの補正をまだ規定された上限回数実行していない場合(ステップS60:NO)、チップ4の向きを補正する補正処理を実行する(ステップS70)。
【0046】
補正処理を示すフローチャートが図6に示されている。制御部50は、第1~第3ピント位置の差に加えて、チップ4(検査台20)の向きの補正に必要な各種情報を取得する(ステップS71)。この情報の一例としては、例えば、チップ4の左右方向3の寸法や、検査台20の中心軸線CAとチップ4との位置関係等がある。これらの情報は、処理の過程で既に撮像されたチップ4の撮像画像から取得することができる。あるいは、使用するチップ4が事前に判明している場合、チップ4固有の情報については、ユーザによってEEPROM53に事前に記憶されていてもよい。制御部50は、これらの複数の情報に基づいて、チップ4(検査台20)の向きの補正値を算出する(ステップS72)。ここで算出される補正値とは、検査台20を、回転方向D1における時計回り又は反時計回りのどちらにどれだけ回転させるかに関する情報である。ただし、補正値の算出のためにこれら複数の情報が使用されることは必須ではなく、第1~第3ピント位置の差だけが用いられて、チップ4(検査台20)の向きの補正値が算出されてもよい。制御部50は、算出された補正値に基づいて、検査台回転機構41を制御し、検査台20を必要な向きに必要な角度だけ回転させた後(ステップS73)、補正処理を終了する。
【0047】
補正処理の実行の後、制御部50は、再度の多焦点撮像処理及び合焦画像選定処理を実行する(ステップS30,S40)。つまり、制御部50は、上述した方法と同様にして、側面撮像装置32に複数の評価用画像Iを再度撮像させ、その中から第1合焦画像IF1、第2合焦画像IF2、及び第3合焦画像IF3を再度選定する。続けて、制御部50は、第1~第3ピント位置の差から側面撮像装置32に対するチップ4の傾きの度合いを判断する(ステップS50)。チップ4の傾きが許容範囲内でない場合であって(ステップS50:NO)、チップ4の向きの補正をまだ上限回数実行していない場合(ステップS60:NO)、制御部50は、チップ4の向きを補正する補正処理を再度実行し(ステップS70)、以降、制御部50は、ステップS30からステップS70の処理を繰り返し実行する。
【0048】
一方、ステップS50の処理において、チップ4の傾きが許容範囲内であると判断された場合(ステップS50:YES)、制御部50は、第1~第3ピント位置に基づいて、チップ4の側面の評価に用いる評価用画像Iを選定する。
【0049】
例えば、図8に破線で示されるチップ4のように、第1合焦画像IF1、第2合焦画像IF2、及び第3合焦画像IF3が同じ画像となる場合、制御部50は、当該合焦画像をチップ4の側面の評価に用いることを決定する。一方、図8に実線で示されるチップ4のように、第1合焦画像IF1と第2合焦画像IF2と第3合焦画像IF3とが異なる画像となる場合、制御部50は、3つの合焦画像IF1,IF2,IF3のいずれかをチップ4の側面の評価に用いることを決定する。特に、側面5の中央付近の合焦度が高い画像である第3合焦画像IF3をチップ4の側面の評価に用いることが望ましい。例えば、図8に実線で示されるチップ4においては、ピント位置P6又はピント位置P7で撮像された評価用画像I(第3合焦画像IF3)をチップ4の側面の評価に用いることが望ましい。
【0050】
制御部50は、選定された評価用画像Iに基づいて、チップ4の側面の異常の評価を行う。同時に、制御部50は、ステップS20で生成されたチップ4の上面の撮像画像に基づいて、チップ4の上面の異常の評価を行う(ステップS90)。この異常の一例としては、チップ4に付着した異物やチップ4の欠け等がある。制御部50は、例えばルールベースや深層学習を用いた評価アルゴリズムにより、チップ4の異常を評価し、その評価結果をEEPROM53に記憶させる。この評価結果としては、チップ4が製品として許容可能なものであるか否かの判断のみでもよいし、より詳細な評価項目が作成されてもよい。
【0051】
また、制御部50は、チップ4の異常の評価結果を外部に出力してもよい。例えば、制御部50は、外観検査装置10に設けられた表示画面に評価結果を表示させてもよいし、通信ネットワークを介して外観検査装置10と接続されたコンピュータに評価結果を送信し、当該コンピュータの表示画面に評価結果を表示させてもよい。あるいは、製品として許容可能なチップ4と許容できないチップ4とが自動で分別される構成が採用されてもよい。制御部50は以上の処理を完了後、外観検査の処理を終了する。
【0052】
いずれかのステップS50の判定において、チップ4の傾きが許容範囲内であると判断された場合(ステップS50:YES)の処理は上述した通りである。一方、複数回のステップS50の判定において、一度もチップ4の傾きが許容範囲内であると判断されることなく、チップ4の向きの補正が上限回数に達した場合(ステップS60:YES)の処理を以下に説明する。このような状況は、例えば、チップ4の側面5に欠けがある場合等、側面5が平坦でない場合に起こりうる。
【0053】
チップ4の向きの補正が既に規定された上限回数に達している場合(ステップS60:YES)、制御部50は、チップ4の向きの補正をそれ以上行わずに、結合画像生成処理を実行する(ステップS80)。結合画像生成処理は、複数の評価用画像Iの中でそれぞれ合焦度が高い領域のみを使用して、異常の評価(ステップS90)に用いる結合画像IC(図12)を生成する処理である。
【0054】
結合画像生成処理を示すフローチャートが図7に示されている。制御部50は、第1合焦画像IF1における第1評価領域EI1の周辺に第1合焦領域EF1(図10(A))を設定し、第2合焦画像IF2における第2評価領域EI2の周辺に第2合焦領域EF2(図10(B))を設定し、第3合焦画像IF3における第3評価領域EI3の周辺に第3合焦領域EF3(図10(C))を設定する(ステップS81)。第1合焦領域EF1は、第1評価領域EI1をその一部に含む領域であって、チップ4の側面5のうち、左右方向3における左側の約3分の1程度をカバーする領域である。第2合焦領域EF2は、第2評価領域EI2をその一部に含む領域であって、チップ4の側面5のうち、左右方向3における右側の約3分の1程度をカバーする領域である。第3合焦領域EF3は、第3評価領域EI3をその一部に含む領域であって、チップ4の側面5のうち、左右方向3における中央の約3分の1程度をカバーする領域である。なお、第1合焦領域EF1と第2合焦領域EF2と第3合焦領域EF3とは、上下のサイズ及び上下の座標位置が一致するように設定される。また、第1合焦領域EF1の右端の領域と第3合焦領域EF3の左端の領域とは一部重複し、第2合焦領域EF2の左端の領域と第3合焦領域EF3の右端の領域とは一部重複している。
【0055】
第1合焦領域EF1、第2合焦領域EF2、及び第3合焦領域EF3の設定のため、制御部50は、各合焦画像IF1,IF2,IF3におけるチップ4の側面5の位置及び範囲を所定の画像処理アルゴリズムによって取得する。あるいは、チップ4のサイズが事前に判明している場合、制御部50は、第1~第3評価領域EI1,EI2,EI3をそれぞれ縦方向及び横方向に規定の画素分拡張した領域を第1~第3合焦領域EF1,EF2,EF3に設定してもよい。制御部50は、第1合焦画像IF1の第1合焦領域EF1を切り取って生成した画像を第1領域画像IE1(図11(A))としてメインメモリ52に記憶させ、第2合焦画像IF2の第2合焦領域EF2を切り取って生成した画像を第2領域画像IE2(図11(B))としてメインメモリ52に記憶させ、第3合焦画像IF3の第3合焦領域EF3を切り取って生成した画像を第3領域画像IE3(図11(C))としてメインメモリ52に記憶させる(ステップS82)。
【0056】
制御部50は、第1領域画像IE1、第2領域画像IE2、及び第3領域画像IE3を横方向に連結し、結合画像IC(図12)を生成する(ステップS83)。このときの3つの領域画像IE1,IE2,IE3の相対位置は、各評価用画像Iに設定した第1合焦領域EF1、第2合焦領域EF2、及び第3合焦領域EF3の相対位置と対応している。つまり、第1領域画像IE1が左端、第2領域画像IE2が右端、第3領域画像IE3が中央に位置するようにする。このように3つの領域画像IE1,IE2,IE3の相対位置を決定すると、第1領域画像IE1の右端の領域と第3領域画像IE3の左端の領域とが一部重複し、第2領域画像IE2の左端の領域と第3領域画像IE3の右端の領域とが一部重複する。この重複領域EOの画素の輝度値としては、重複する2つの領域画像IE1,IE2,IE3のうち、一方の画素の輝度値が使用されてもよい。あるいは、重複する2つの領域画像IE1,IE2,IE3の対応する画素の輝度値の平均値が使用されてもよい。制御部50は、生成された結合画像ICをEEPROM53に記憶させる。
【0057】
制御部50は、生成された結合画像ICに基づいて、チップ4の側面の異常の評価を行う。同時に、制御部50は、ステップS20で生成されたチップ4の上面の撮像画像に基づいて、チップ4の上面の異常の評価を行う(ステップS90)。これ以降の処理は上述した通りであるので省略する。
【0058】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係る外観検査装置10においては、第1~第3ピント位置の差に基づいてチップ4(検査台20)の向きの補正値が算出されるため(ステップS70)、側面撮像装置32に対するチップ4(検査台20)の向きを正確に補正することが可能となる。これにより、チップ4の傾きが少ない状態で撮像された精細な評価用画像Iに基づいてチップ4の異常を正確に評価することが可能となる。
【0059】
また、チップ4の傾きが許容範囲内でない場合は(ステップS50:NO)、チップ4(検査台20)の向きの補正が繰り返し実行されるため、一度の向きの補正ではチップ4の傾きが許容範囲内にならなかったとしても、その状態で撮像された評価用画像Iがチップ4の異常の評価に使用されてしまうことを防止することができる。
【0060】
また、チップ4の向きの補正が規定された上限回数に達した場合(ステップS60:YES)、制御部50は、チップ4の向きの補正をそれ以上行わずに、結合画像生成処理を実行するため、(ステップS80)、チップ4(検査台20)の向きの補正が際限なく実行されることを防止することができる。また、その場合においても、複数の評価用画像Iにおいてそれぞれ合焦度が高い合焦領域EF1,EF2,EF3から生成された結合画像ICに基づいて、チップ4の異常を正確に評価することが可能となる。
【0061】
また、各評価領域EI1,EI2,EI3は、チップ4の側面5の端縁を含むように設定されているため、仮にチップ4の側面5が、特徴のない均一な色合いの面であったとしても、合焦度の算出を正確に行うことが可能となる。
【0062】
[本実施形態の変形例]
上述した実施形態において、隣接するピント位置P1~P10は、所定のピッチずつ間隔が設けられたものであったが、このピッチはピント位置ごとに異なっていてもよい。例えば、チップ4の側面5が位置する可能性が高いピント位置の周辺ほど、ピッチが細かく設定されてもよい。
【0063】
また、上述した実施形態において、各評価領域EI1,EI2,EI3は、チップ4の側面5の端縁を含むように設定されたものであったが、チップ4の側面5に、合焦度の算出を正確に行うことが可能な特徴部分があれば、その特徴部分が各評価領域EI1,EI2,EI3に設定されてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態は、チップ4の傾きが許容範囲内でない場合は、チップ4の向きの補正が規定された上限回数に達するまでチップ4(検査台20)の向きの補正を繰り返し実行するものであったが、この補正は一度だけ実行されるものであってもよい。つまり、制御部50は、一度だけチップ4(検査台20)の向きの補正を実行し、それでもチップ4の傾きが許容範囲内でない場合、結合画像生成処理を実行してもよい。
【0065】
また、上述した実施形態は、結合画像生成処理において、各合焦画像IF1,IF2,IF3の合焦領域EF1,EF2,EF3から結合画像ICを生成するものであったが、制御部50は、結合画像生成処理を実行することなく、各合焦画像IF1,IF2,IF3の合焦領域EF1,EF2,EF3を参照することで、チップ4の側面5の異常を評価してもよい。
【0066】
また、上述した実施形態は、側面撮像装置32のピント位置をピント位置P1からピント位置P10に向けて順次変更し、各ピント位置においてチップ4の側面5の撮像を行うものであったが、各ピント位置における撮像順序はこれとは異なっていてもよく、例えば逆の順序であってもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、チップ4の一つの側面5のみが評価される例が示されたが、他の側面5に対しても、同様の処理が繰り返し実行されてもよい。
【0068】
また、上述した実施形態は、評価用画像Iに対して横方向に3つの評価領域EI1,EI2,EI3及び合焦領域EF1,EF2,EF3を設定するものであったが、評価領域EI1,EI2,EI3及び合焦領域EF1,EF2,EF3は、これより少なくてもよいし、多くてもよい。例えば、チップ4の側面5の横幅(左右方向3の寸法)や側面撮像装置32の被写界深度との関係で、チップ4の傾きの許容量が大きい状況では、評価領域及び合焦領域は、左右に2つのみが設定されてもよい。逆に、チップ4の傾きの許容量が小さい状況では、評価領域及び合焦領域は、4つ以上が設定されてもよい。
【0069】
例えば、評価用画像Iに2つの評価領域及び合焦領域のみが設定される場合、図13に示されるように、合焦画像選定処理(ステップS40)においては、第1評価領域EI1と第2評価領域EI2とが上述した実施形態と同様に設定されるが、第3評価領域は設定されない。そして、それぞれの評価領域EI1,EI2の合焦度が最も高い第1合焦画像IF1(図13(A))及び第2合焦画像IF2(図13(B))が選定される。チップ4の傾きの判定(ステップS50)は、第1ピント位置と第2ピント位置との差に基づいて行われる。結合画像生成処理(ステップS80)では、第1合焦領域EF1(図13(A))と第2合焦領域EF2(図13(B))とが、上述した実施形態のものよりも内側に広く設定され、評価用画像Iの中央あたりで一部重複している(ステップS81)。結合画像は、第1合焦画像IF1の第1合焦領域EF1と第2合焦領域IF2の第2合焦領域EF2とを左右に連結して生成される(ステップS82)。
【符号の説明】
【0070】
4 ・・・チップ(ワーク)
5 ・・・側面
10 ・・・外観検査装置
20 ・・・検査台(支持部)
CA ・・・中心軸線(軸線)
32 ・・・側面撮像装置(側面撮像部)
41 ・・・検査台回転機構(向き調整部)
50 ・・・制御部
I ・・・評価用画像
EI1・・・第1評価領域
EI2・・・第2評価領域
IF1・・・第1合焦画像
IF2・・・第2合焦画像
EF1・・・第1合焦領域
EF2・・・第2合焦領域
IC ・・・結合画像
P1~P10・・・ピント位置
【要約】
【課題】精細な撮像画像に基づいてワークの異常を正確に評価することが可能な外観検査装置の提供。
【解決手段】制御部50は、側面撮像装置32のピント位置を既定ピッチずつ変化させながら、検査台40に載置されたチップ4の側面5を撮像させて複数の評価用画像Iを生成させる。制御部50は、評価用画像Iに異なる評価領域EI1,EI2,EI3を設定し、複数の評価用画像Iから各評価領域EI1,EI2,EI3の合焦度が最も高い合焦画像IF1,IF2,IF3をそれぞれ選定する。制御部50は、各合焦画像IF1,IF2,IF3を撮像した際のピント位置の差に基づいて、側面撮像装置32に対するチップ4の向きの補正値を算出し、検査台回転機構41にチップ4の向きを補正させる。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13