(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】真空ろ過機
(51)【国際特許分類】
B01D 33/048 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
B01D33/14
(21)【出願番号】P 2020193143
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】氏家 秀隆
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特公昭39-006558(JP,B1)
【文献】実開昭50-006860(JP,U)
【文献】実公昭44-000954(JP,Y1)
【文献】特開2001-224548(JP,A)
【文献】特開昭63-091112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04,35/08-37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に配設したドラム(3)を原液槽(2)に支架してドラム(3)の一部を浸漬させ、ドラム(3)に巻き掛けた無端状のフィルター(4)を介して、液分のみを吸引配管から排出してフィルター(4)に固着した固形分を回収する真空ろ過機において、
ドラム(3)の筒部(5)に開口する多数の吸引口(7)と、
弾性部材(14)と、弾性部材(14)を固定する支板(12)と、弾性部材(14)により吸引口(7)に付勢される押圧体(15)と、押圧体(15)を案内する柱体(16)で構成される吸引口開閉機構(13)と、を備え
、
押圧体(15)で吸引口(7)を閉塞している時に、押圧体(15)の頂部(15b)は筒部(5)から外側に向かって所定高さだけ突出しているとともに、
フィルター(4)がドラム(3)の筒部(5)に巻き回された時に、押圧体(15)の頂部(15b)が筒部(5)の表面まで押圧されてドラム(3)の内外が連通される
ことを特徴とする真空ろ過機。
【請求項2】
前記筒部(5)に沿って吸引口(7)から所定の距離に複数の円環状の支板(12)を備える
ことを特徴とする請求項
1に記載の真空ろ過機。
【請求項3】
前記筒部(5)に沿って吸引口(7)から所定の距離に複数の直線状の支板(12)を備える
ことを特徴とする請求項
1に記載の真空ろ過機。
【請求項4】
前記フィルター(4)の張力を調整する張力調整機構(23)を備える
ことを特徴とする請求項1~
3の何れか1項に記載の真空ろ過機。
【請求項5】
前記ドラム(3)の側板(6)に挿通したロータリージョイント(9)と、
ロータリージョイント(9)の内側に接続し、側板(6)に沿って下方近傍まで延設した吸引管(10)と、を備える
ことを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の真空ろ過機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムの筒部に設けた吸引口の改良に関し、特に、ろ過・脱水ゾーンのみ開放する吸引口開閉機構を有する真空ろ過機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、真空脱水機は引用文献1で開示されるように、原液槽にその一部を浸漬させたドラムを回転させながら外周面に巻き掛けているフィルターを通して液分のみをドラム内に配設した吸引管によりドラム外に排出するとともに、フィルターに固着した固形分を回収する構成である。
【0003】
また、引用文献2には一方から弾性体に付勢された状態で板に形成された貫通孔を閉止する可動部材に、他方から力を加えることで可動部材と貫通孔の間に間隙を生じさせ、その間隙から吸引する除塵装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-74607号公報
【文献】特許第3452859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、真空脱水機は先行文献1に開示されているように、ドラムの周部に形成した真空吸引室に連通する吸引管を介して吸引する。真空吸引室は周方向に等間隔に区画してあり、吸引管の一方はドラム内部でそれぞれの真空吸引室に連通し、他方は側方のロータリーバルブに接続されている。
【0006】
このような構成であるため、吸引配管のメンテナンス時にはドラム内部に作業員が入る必要があり、作業環境が悪く工数やコストが多く掛かっていた。また、ドラム内部に作業員が入れないような小型の真空ろ過機は、ドラム内部の吸引配管の設置ができないため、殆ど製品として市場に出回っていない。さらに、ろ過・脱水を行っていない区域(原液槽の直前)では真空吸引を行わないようにロータリーバルブを設けてあり、その点でもコストおよび手間が掛かっていた。
【0007】
また、先行文献2の除塵装置は人や車両が工場や店舗等に入るときに、その人や車両の靴底、車輪に付着した塵埃、粉塵等を吸引除去するマットであり、液体中に含まれる固形物を分離するための水処理、汚泥処理の産業に適用することに関しては記載も示唆もない。
【0008】
本発明は、ドラム表面の開口部に接続する吸引配管を設置することなく、フィルターの張力を利用して、ろ過・脱水ゾーンのみドラム表面に吸引口を開口する真空ろ過機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回転自在に配設したドラムを原液槽に支架してドラムの一部を浸漬させ、ドラムに巻き掛けた無端状のフィルターを介して、液分のみを吸引配管から排出してフィルターに固着した固形分を回収する真空ろ過機において、ドラムの筒部に開口する多数の吸引口と、弾性部材と、弾性部材を固定する支板と、弾性部材により吸引口に付勢される押圧体と、押圧体を案内する柱体で構成される吸引口開閉機構と、を備え、押圧体で吸引口を閉塞している時に、押圧体の頂部は筒部から外側に向かって所定高さだけ突出しているとともに、フィルターがドラムの筒部に巻き回された時に、押圧体の頂部が筒部の表面まで押圧されてドラムの内外が連通されるもので、ドラム表面の開口部に接続する吸引配管を設置していないので、吸引配管に係るメンテナンスが容易となるとともに、フィルターの張力で容易に揺動可能となる。
【0011】
筒部に沿って吸引口から所定の距離に複数の円環状、あるいは筒部に沿って吸引口から所定の距離に複数の直線状の支板を備えるもので、吸引口の配置や真空ろ過機の仕様に応じて適宜選択可能である。
【0012】
フィルターの張力を調整する張力調整機構を備えると、常時最適な張力に設定可能となる。
【0013】
ドラムの側板に挿通したロータリージョイントと、ロータリージョイントの内側に接続し、側板に沿って下方近傍まで延設した吸引管と、を備えると、ドラム内部にろ過された処理液をまとめて外部に排出可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の真空ろ過機は、ドラム表面の開口部に接続する吸引配管を設置していないので、組立・分解およびメンテナンスの際に作業員がドラム内部に入って作業を行う必要がない。したがって、作業環境が良く作業時間や費用の削減が可能となる。また、フィルターの張力を利用することで、ドラムの筒部にフィルターが接するろ過・脱水ゾーンのみ吸引口が開放するため、安定した固液分離処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明に係る真空ろ過機の側断面図である。
【
図4】この発明に係る真空ろ過機の他の実施例の吸引口開閉機構の配置図である。
【
図5】この発明に係る真空ろ過機の吸引口を閉塞した状態の吸引口開閉機構の要部詳細図である。
【
図6】同じく、吸引口を
開放した状態の吸引口開閉機構の要部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を図面に基づき詳述すると、
図1、
図2はそれぞれ真空ろ過機の側断面図と正面断面図である。
原液を満たした原液槽2と、原液槽2に下側を浸漬させて回転自在に支架している円筒体のドラム3と、ドラム3に掛け回した無端状のフィルター4で真空ろ過機1を構成している。
【0017】
ドラム3は円筒状の筒部5と側板6,6から構成してあり、筒部5は内外に連通する多数の吸引口7…を有する。側板6には原液槽2に回転自在に支持されたドラム軸8,8を接続してあり、一方のドラム軸8は図示しない駆動機に連結してドラム3を回転させる。他方のドラム軸8は中空に形成してあり、ロータリージョイント9を介して吸引管10をドラム3内部に挿通させている。
【0018】
ロータリージョイント9のドラム3内方には吸引管10の一端を接続してあり、吸引管10の他端をドラム3内部で側板6に沿って下方近傍まで延設させている。ロータリージョイント9のドラム3外方には排出管11を接続してあり、図示しない吸引源(真空ポンプ等)に接続している。ロータリージョイント9により、吸引管10および排出管11はドラム3の回転に左右されず、吸引管10は常時ドラム3下方に向かって固定された状態を維持している。
【0019】
図3は吸引口開閉機構の配置図であり、
図4は他の実施例の吸引口開閉機構の配置図である。
筒部5は内外に連通する多数の吸引口7…を有する。吸引口7は円状で筒部5の全周、全幅に亘ってほぼ均等に配されている。
【0020】
ドラム3内には筒部5に沿って吸引口7から所定の距離に複数の支板12…を備える。支板12は
図3のように、筒部5の周面に沿って複数の円環状の支板12を並列に構成してもよく、
図4のように筒部5の幅方向に直線状に構成してもよい。なお、支板12は公知の手段にてドラム内面に固定する。
【0021】
図5は吸引口を閉塞した状態の吸引口開閉機構の要部詳細図である。
吸引口開閉機構13は、弾性部材14と弾性部材14を固定する支板12と、弾性部材14により吸引口7に付勢される押圧体15と、押圧体15を筒部5方向へ案内する柱体16で構成される。
【0022】
吸引口7に対向した所定の距離に支板12を備え、各吸引口7に対応する弾性部材14を支板12に固定する。本実施例では、弾性部材14にコイルばねを用い、支板12に形成した凹部17にコイルばねの一部を挿通させて位置決めを行っている。
【0023】
弾性部材14の端部には押圧体15を付設し、ドラム3の筒部5方向へ付勢する。押圧体15は略円錐状に形成してあり、テーパ面15aが吸引口7に押圧することで開口を閉塞する。このとき、押圧体15の頂部15bは筒部5から外側に向かって所定高さだけ突出してあり、外側からの外圧によって内部方向に揺動可能である。なお、押圧体15は吸引口7を閉塞している状態で頂部15bが筒部5から突出可能な形状であれば、円錐状に限定しない。
【0024】
押圧体15の底面15cには柱体16が突設してあり、弾性部材14が押圧体15を付勢する方向を案内する。本実施例では、コイルばねの内径に近似する外径の柱体16を挿通することにより、押圧体15が傾斜することなく筒部5の吸引口7に押圧して確実に閉塞可能な構成としている。
【0025】
図6は吸引口を開放した状態の吸引口開閉機構の要部詳細図である。
ドラム3の筒部5の外方にフィルター4が巻き回されると、筒部5から突出している押圧体15の頂部15bにフィルター4が当接する。フィルター4の張力により押圧体15の頂部15bを筒部5の表面まで押圧する。このとき、押圧体15のテーパ面15aと吸引口7との間に間隙18が形成され、ドラム3の内外が連通される。
【0026】
フィルター4はドラム3と剥離ロール19と複数の案内ロール20…に掛け回して無端状に形成している。
【0027】
ドラム3には、原液槽2から液分を吸引しつつフィルター4に固形物を吸着させるろ過ゾーンと、フィルター4に吸着した固形物を大気下で自重による重力分離する脱水ゾーンでフィルター4を掛け回してあり、具体的には、原液槽2に供給した原液の水面近傍から頂上近傍まで掛け回す。ドラム3の直後には剥離ロール19を設けてあり、スクレーパ21を摺設させている。剥離ロール19からドラム3までの間には複数の案内ロール20・・・を設けてあり、洗浄液を噴射あるいは洗浄液に浸漬させる洗浄機構22を備えている。また、一部のロールにはフィルター4の張力を調整する張力調整機構23を備える。
【実施例】
【0028】
吸引源を駆動すると排出管11および吸引管10を介してドラム3内を吸引し、ドラム3内が負圧状態となる。原液槽2の入口からドラム3頂部近傍までフィルター4を掛け回してあり、この間にて吸引口7が解放され、ドラム3内部に向かって吸引作用が発生する。
【0029】
具体的には、原液槽2(ろ過ゾーン)では、原液槽2内の固液混合物がドラム3に吸い寄せられる。この時、フィルター4の通過面積より大きい固形分はフィルター4上に堆積していき、フィルター4の通過面積より小さい液分はフィルター4を透過して筒部5に形成する吸引口7と押圧体15の間隙18からドラム3内に吸引される。
【0030】
原液槽2の後段(脱水ゾーン)では、吸引口7と押圧体15の間隙18からの吸引力によりフィルター4上に堆積する固形物は、大気下で自重による重力分離を促進される。ろ過ゾーンと同様に、フィルター4の開口率より小さい液分はフィルター4を透過して筒部5に形成する間隙18からドラム3内に吸引される。
【0031】
ドラム3のフィルター4が掛け回されていないゾーンでは、押圧体15が吸引口7を閉塞してあり、外部からの空気流入を防止している。
【0032】
ドラム3内に吸引された処理液は、吸引管10とロータリージョイント9と排出管11で構成された吸引配管から連続的に外部に排出される。
【0033】
フィルター4に堆積した固形分は、剥離ロール19に摺設したスクレーパ21により掻き取られて回収される。さらに、剥離ロール19の後段にてフィルター4は洗浄機構22により固形分を洗浄して再生される。フィルター4は複数の案内ロール20…に掛け回して無端状に形成されてあり、連続的に原液槽2内の固液混合物を固液分離する。
【0034】
ドラム3と各ロール19,20に無端状に巻き回したフィルター4を周回させる真空ろ過機1において、ドラム3を回転駆動させる場合、一般的にドラム3の上流側のフィルター4張力は増大するが、ドラム3の下流側のフィルター4張力は減少する。脱水ゾーンで押圧体15をドラム3の筒部5まで押し下げる張力を確保するために、ドラム3下流側の剥離ロール19までの間に張力調整機構23を備えることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る真空ろ過機は、フィルターが接しているドラムの表面のみ吸引作用が発生する構成で、ドラム内部から表面への吸引配管が不要であり、従来のようにドラム内部から表面への吸引配管やロータリーバルブが不要である。
したがって、吸引配管の接続不良や空気漏洩等のリスクが低減し、メンテナンス効率がよいので、作業時間や費用の削減が可能となる。また、作業員が入るスペースがない小型機種の設計も可能となり、大型から小型までの全ての真空ろ過機に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 真空ろ過機
2 原液槽
3 ドラム
4 フィルター
5 筒部
6 側板
7 吸引口
9 ロータリージョイント
10 吸引管
12 支板
13 吸引口開閉機構
14 弾性部材
15 押圧体
15b 頂部
16 柱体
23 張力調整機構