(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】伸縮性回路基板、及び、それを用いたパッチデバイス
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/02 J
(21)【出願番号】P 2019539710
(86)(22)【出願日】2018-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2018032672
(87)【国際公開番号】W WO2019045108
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-20
(32)【優先日】2017-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝寿
(72)【発明者】
【氏名】澤田 知昭
(72)【発明者】
【氏名】深尾 朋寛
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】岩田 淳
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-143763(JP,A)
【文献】特開2017-112312(JP,A)
【文献】特開2017-152687(JP,A)
【文献】国際公開第2016/108888(WO,A1)
【文献】特開2017-034038(JP,A)
【文献】特開2017-037988(JP,A)
【文献】特開2012-028051(JP,A)
【文献】特開2010-238755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性基材、伸縮性配線及び前記伸縮性基材と接しているランド部を有し、
前記ランド部は、その周縁に前記伸縮性配線が接続された接続部を有し、前記接続部は前記伸縮性配線と重なる部分を有し、かつ、前記接続部における前記ランド部の幅は、前記伸縮性配線の幅よりも狭く、
前記伸縮性基材及び前記伸縮性配線における、25℃室温における引っ張り弾性率が0.5MPa~0.5GPaである、
伸縮性回路基板。
【請求項2】
前記ランド部は、パターニングされた金属箔、または、金属粒子を含む導電性インクの印刷物で構成されている、請求項1に記載の伸縮性回路基板。
【請求項3】
前記伸縮性基材が、熱硬化性樹脂組成物で構成され
ており、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1または2に記載の伸縮性回路基板。
【請求項4】
前記伸縮性基材が、軟化点または融点が140℃以上である熱可塑性樹脂組成物で構成される、請求項1または2に記載の伸縮性回路基板。
【請求項5】
前記伸縮性配線はバインダー樹脂及び導電性粒子を有する、請求項1~4のいずれかに記載の伸縮性回路基板。
【請求項6】
前記伸縮性基材に積層される第二絶縁層をさらに有する、請求項1~5のいずれかに記載の伸縮性回路基板。
【請求項7】
前記伸縮性配線と異なる層位置に、第二導電層をさらに有する、請求項1~6のいずれかに記載の伸縮性回路基板。
【請求項8】
前記第二導電層が、前記伸縮性配線と層間接続されている、請求項7に記載の伸縮性回路基板。
【請求項9】
電子部品が実装されている、請求項1~8のいずれかに記載の伸縮性回路基板。
【請求項10】
保護層を有する、請求項6~9のいずれかに記載の伸縮性回路基板。
【請求項11】
補強層を有する、請求項9又は10に記載の伸縮性回路基板。
【請求項12】
前記補強層が、樹脂組成物である請求項11に記載の伸縮性回路基板。
【請求項13】
前記補強層が、樹脂シートである請求項11に記載の伸縮性回路基板。
【請求項14】
請求項9~13のいずれかに記載の伸縮性回路基板を用いたパッチデバイスであって、前記電子部品が、外部システムと通信する機能と、センサ機能とを少なくとも有する、パッチデバイス。
【請求項15】
請求項14に記載のパッチデバイスであって、外部システムからの指示によって駆動するシステムを有する、パッチデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性回路基板、及び、それを用いたパッチデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野、特にセンサ、ディスプレイ、ロボット用人工皮膚などの様々な用途において、装着性や形状追従性の要求が高まっており、曲面や凹凸面などに配置したり自由に変形させたりすることが可能な柔軟ないわゆるパッチデバイスが要求されている。このような要求に対して、伸縮性を有する電子デバイスに関する研究がなされており、次世代を担うストレッチャブルエレクトロニクス技術として非常に期待されている。
【0003】
しかし、電子デバイスを自由自在に変形させるためには、電子回路基板に伸縮性が必要なだけでなく、実装される電子部品にかかる変形応力に対しても耐性が必要である。そこで、これまでにも電子回路にかかる応力集中を緩和し伸縮時の配線部の断線を防止する手段が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、伸縮性を有する材料からなる基材と、前記基材よりもヤング率の大きい材料からなるアイランドとを具備し、前記アイランドが、前記基材の一方の主面に露出した状態で、前記基材に埋め込まれていることを特徴とする伸縮性基板であって、この伸縮性基板上に、素子及び/又は配線が形成された電子部品が報告されている。
【0005】
また、特許文献2には、伸縮性を有するシート状の伸縮性基材と、前記伸縮性基材の主面の少なくとも一方側に形成された伸縮性の配線部と、前記配線部と接続された外部端子と、を備える伸縮性配線基板であって、補強領域と伸縮領域とを所定の構成で有することによって、部分的な応力集中を緩和し、配線部の断線を防止できる伸縮性配線基板が報告されている。
【0006】
一方で、電子部品と基材との接続には、ハンダによる接合が非常に有効であることは公知である。しかしハンダを用いるためには実装に必要な高い温度域に耐えうる耐熱性が必要となる。
【0007】
さらに、基材に接続された電子部品が脱落する等の不具合を防止するために、ハンダを介した電子部品と基材との密着性も重要である。
【0008】
そのため、上記のような伸縮性回路基板には、電子部品への応力集中を緩和するために様々な樹脂材料を用いられている。しかしながら、樹脂材料の検討だけでは、例えば、密着性、耐熱性や耐薬品性等の耐久性を、上記応力集中の緩和と共に向上させることが困難な場合がある。よって、従来の伸縮性配線基板では、ハンダ接続に必要な耐熱性などを十分に有していない材料を使用しなければならない場合もある。
【0009】
さらに材料の制限によって、回路基板全体としての設計が非常に複雑となるため、結果として生産のコスト増大につながる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-34038公報
【文献】特開2014-162124公報
【発明の概要】
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、既存の設備を用いて生産できる電子部品を、既存のハンダで実装することができ、密着性、耐熱性等に優れた伸縮性回路基板を提供することを目的とする。
【0012】
すなわち、本発明の一局面に関する伸縮性回路基板は、伸縮性基材、伸縮性配線、及び、前記伸縮性基材と接しているランド部を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る、伸縮性回路基板の示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の伸縮性回路基板における伸縮性配線とランド部の接続部のいくつか形態を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る、電子部品を実装した伸縮性回路基板の概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の伸縮性回路基板のランド部における接続部のいくつかの実施形態を示す、概略上面図である。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施形態に係る伸縮性回路基板を示す、概略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明のさらなる実施形態に係る伸縮性回路基板を示す、概略断面図である。
【
図7】
図7は、本発明のさらなる別の実施形態に係る伸縮性回路基板を示す、概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これまで、伸縮性回路基板における実装方法において、プロセス性の汎用性を高める手段としてハンダ実装をしたという報告例はほとんどない。これは、伸縮性回路基板において、伸縮性基材で発生する伸縮時の応力集中を、回路に用いる材料の組み合わせで緩和しようと試みているためであると考えられる。そのため、回路基板への部品実装にはハンダ実装以外の、例えば、導電性粘着剤や接着剤を用いた手段などの様々な実装方法が提案されている。
【0015】
そこで、本発明者等は、鋭意検討した結果、電子部品をハンダを介して接続するためのランド、伸縮性基材、伸縮性配線を用いることで伸縮性及び生産性に優れ、かつ電子部品を既存のハンダで実装することが可能な伸縮性基板が提供できることを見出した。ハンダ実装ができれば、接続信頼性に優れた実装性を備え、リペア性、セルフアライメント性に優れるために高い生産性と優れた接続信頼性が得られること、並びに、既存の設備利用が可能であるがゆえに投資コストの極小化ができると考え、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0016】
つまり、本発明の一局面に関する伸縮性回路基板は、伸縮性基材、伸縮性配線及び前記伸縮性基材と接しているランド部を有することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、電子部品等をハンダを介して接続するための前記ランド部を設けられた伸縮性回路基板であり、伸縮性基材とランド部との密着性を利用することによって優れた実装性と、優れた伸張性とを両立された、柔軟かつしなやかな伸縮性回路基板を提供することができると考えられる。また、該回路基板を用いることによって、任意の曲面への追従や大きな変形に対応可能な電子デバイス(パッチデバイス)等を提供することができる。
【0018】
また、高い伸縮性と実装性や密着性を両立するという特徴を有することから、光学分野、電子分野、接着分野、医療分野など様々な技術分野にも既存の設備適用できるため、産業利用上非常に有利である。
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面などを用いて具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0020】
本実施形態に係る伸縮性回路基板(以下、本明細書中において単に「回路基板」とも言う)は、主にエレクトロニクス用部材に用いられる伸縮性回路基板であり、
図1に示すように、伸縮性基材1、伸縮性配線3、及び、前記伸縮性基材1と接しているランド部2を有することを特徴とする。
【0021】
本実施形態に係る回路基板は、伸縮性に優れ、かつ実装性・密着性に優れる回路基板である。このように伸縮性基材上に、少なくとも一部において基材と直接接しているランド部と伸縮性配線とを形成することで、伸縮性と実装性・密着性に優れるという特性を有し、柔軟かつしなやかなで耐久性のある回路基板を提供することができると考えられる。
【0022】
本実施形態において、実装性に優れるとは、既存のハンダ等で、リフロー炉やハンダゴテを用いて電子部品と回路基板の接合が可能であることをさす。
【0023】
本実施形態における伸縮性基材および伸縮性配線は伸縮性を有するが、ここで「伸縮性を有する」とは弾性変形可能であることをさし、より具体的には、10%程度以上の伸張性を有し且つ25℃室温に置ける引っ張り弾性率が0.5MPa~0.5GPaであることをさす。
【0024】
本実施形態の回路基板は、10%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは50%、さらに好ましくは100%以上の伸張性を有し、25℃室温における引張弾性率が0.5MPa~0.5GPa、好ましくは1MPa~300MPa、より好ましくは2MPa~200MPa、さらに好ましくは5MPa~100MPaである構造体である。上記範囲の伸長性及び室温における引張弾性率を有する回路基板であれば、任意の形へ変形時の追従性が高いために衣服などに優れた追従性を有し、かつ破壊されにくく、伸縮性に優れた回路基板を得ることが出来ると考えられる。
【0025】
一方、回路基板の伸縮性について、特に上限を設ける必要はないが、必要以上に伸張した場合、熱可塑樹脂においては塑性変形が発生し、もとの形状を損なうという観点から、500%を超えないことが好ましい。
【0026】
本実施形態で使用し得る伸縮性基材(以下、本明細書中において単に「基材」とも言う)としては伸縮性の樹脂基材が挙げられ、10%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは50%、さらに好ましくは100%以上の伸張性を有し、25℃室温における引張弾性率が0.5MPa~0.5GPa、好ましくは1MPa~300MPa、より好ましくは2MPa~100MPa、さらに好ましくは2MPa~30MPaである。一方、基材の伸縮性について、特に上限を設ける必要はないが、必要以上に伸張した場合、もとの形状を損なうという観点から、500%を超えないことが好ましい。
【0027】
本実施形態の伸縮性基材は、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物で構成される。上記硬化性樹脂組成物は、その熱分解温度(Td5)が140℃以上であることが好ましい。上記硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物が好ましく、既存のハンダ等で、リフロー炉やハンダゴテを用いて電子部品と回路基板とを接合する場合の温度にも十分な耐熱性を有するものであれば良い。また上記熱可塑性樹脂としては、その軟化点または融点が140℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上であることが望ましい。それにより、ハンダ実装における加熱温度に対して、確実に耐えることができると考えられる。
【0028】
本実施形態の伸縮性基材に使用し得る、上記硬化性樹脂組成物をとしては、例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素ゴムが挙げられ、また、熱可塑性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、各種ゴム、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが挙げられる。本実施形態で使用し得る伸縮性基材に用いる場合には、ハンダ実装温度に対する耐熱性の観点から特に、硬化性樹脂組成物を用いることが好ましく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂を用いることが好ましく、エポキシ樹脂を用いることがさらに好ましい。
【0029】
本実施形態で使用し得る伸縮性基材に用いることのできる樹脂組成物としては、例えば、(A)ポリロタキサン、(B)熱硬化性樹脂及び(C)硬化剤を含む樹脂組成物(例えば、国際公開WO2015/052853号パンフレット等に記載の樹脂組成物)が挙げられる。
【0030】
基材との接着や耐熱性に優れる点、充填材を組み合わせることにより例えば、低熱膨張、弾性率制御、熱導電性、光反射性、など機能を付与できるという観点から、熱硬化性樹脂を使用することが好ましく、より具体的には、アルキレンオキサイド変性または炭素数が2~5000の2価の有機基を含むことを特徴とするエポキシ樹脂、ポリロタキサン樹脂、イソシアネート樹脂、ポリオール樹脂、水添スチレン系エラストマー樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂などの樹脂があげられる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上組み合わせても良い。さらに、前記樹脂基材には、本発明の効果を阻害しない範囲で各種添加剤を含まれていてもよい。
【0031】
本実施形態のランド部には、ハンダを介して電子部品が実装されるため、ランド部の回路基板上における密着性(安定性)が重要となる。この点において、ランド部は配線よりも基材との密着性が高いため、基材とランド部が接する部分を有することにより、密着性(安定性)が良好となる。すなわち、本発明の実施形態においては、電子部品が実装されている、上述の伸縮性回路基板も包含される。
【0032】
本実施形態のランド部は、少なくともその一部が前記伸縮性基材に接している限り、特に限定はされないが、通常は、ハンダに対する濡れ性が良好で、且つ良好な導体である素材で構成されており、特に銅箔等の金属箔で構成されていることが好ましい。ハンダと基材は直接接合しないが、このランド部を介することにより、ハンダを基材の上に設けることができる。
【0033】
本実施形態の回路基板におけるランド部の形状やランド部の占有率などは、上記を満たす回路基板であれば特に限定はない。電子部品を実装する目的であれば、ランド部の面積は電子部品の電極となる部分の面積に対して10%~1000%の比率が好ましく、接続安定性と伸縮性配線への接続目的も加味すれば50%~500%の比率がより好ましい。ランド部の形状は、例えば、
図1に示すような形状であっても、
図2(B)に示すような形状であってもよい。
【0034】
本実施形態のランド部は、例えば、パターニングされた金属箔、または印刷された金属粒子を含む導電性インクで構成されていてもよい。より具体的には、ランド部を形成するために、例えば、樹脂付き銅箔を用いてフォトリソグラフィー法にて形成してもよい。樹脂付き銅箔の作成方法は特に限定されないが、銅箔に伸縮性基材となる樹脂層をワニス塗布などにより形成するまたは、伸縮性基材と銅箔を加熱圧着などにより加熱成形により貼り合わせるまたは、伸縮性基材となる基材面と、前記銅箔との間に接着層を設けて貼り合わせによって行っても良い。このような接着層の厚み、材料は特に限定されないが例えば、硬化性樹脂や、粘着性の高い樹脂を用いることが出来る。好ましくは、上記接着層の厚みは0.1μm~100μm、さらに好ましくは0.5μm~50μm、であり、材料として好ましくはアクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの硬化性樹脂を用いることが好ましい。ランド部を形成するその他の方法としては、銀や銅等の金属粒子を含む導電性インク(ナノインク)を印刷し、光や熱による焼結で金属層を形成する方法、ハンダ実装可能な導電性インクまたはペーストを印刷する方法、金属等を蒸着により金属層を形成する方法、電解や無電解メッキにより金属層を形成する方法などがあげられる。
【0035】
次に、本実施形態の伸縮性配線(以下、本明細書中において単に「配線」とも言う)に使用できる配線材料の種類としては、伸縮性基材のしなやかさが損なわれない範囲で特に限定はされないが、5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは50%、最も好ましくは100%以上の伸張性を有し、25℃室温における引張弾性率が0.5MPa~0.5GPa、好ましくは1MPa~300MPa、より好ましくは1MPa~100MPa、さらに好ましくは1MPa~10MPaである。一方、配線の伸縮性について、特に上限を設ける必要はないが、必要以上に伸張した場合、もとの形状を損なうという観点から、500%を超えないことが好ましい。
【0036】
本実施形態の伸縮性配線は、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物で構成される。上記硬化性樹脂組成物、好ましくは熱硬化性樹脂組成物としては、既存のハンダ等で、リフロー炉やハンダゴテを用いて電子部品と回路基板とを接合する場合の温度にも十分な耐熱性を有するものであれば良い。また上記熱可塑性樹脂としては、その軟化点または融点が140℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上であることが望ましい。それにより、ハンダ実装における加熱温度に対して、確実に耐えることができると考えられる。
【0037】
本実施形態の伸縮性配線に使用し得る、前述の硬化性樹脂組成物をまたは熱可塑性樹脂組成物をからなり、前記硬化性樹脂組成物の場合には熱分解温度(Td5)が140℃以上であり、前記熱可塑性樹脂組成物の場合には軟化点、融点は、いずれも140℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上であるあることが望ましい。それにより、ハンダ実装における加熱温度に対して、確実に耐えることができると考えられる。
【0038】
本実施形態の伸縮性基材に使用し得る、上記硬化性樹脂組成物としては、例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素ゴムが挙げられ、また、熱可塑性樹脂組成物としては、例えばウレタン樹脂、各種ゴム、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが挙げられる。本実施形態で使用し得る伸縮性基材に用いる場合には、ハンダ実装温度に対する耐熱性の観点から特に、熱硬化性樹脂組成物を用いることが好ましく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂がより好ましく、エポキシ樹脂を用いることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態の伸縮性配線に使用できる配線材料の材料としては、例えば、バインダー樹脂と導電性粒子を有する導電性樹脂組成物等が挙げられる。それにより、良好な導電性と伸縮性を両立された伸縮性配線が得られるという利点がある。
【0040】
本実施形態で使用し得る伸縮性配線に用いることのできる導電性樹脂組成物の具体例としては、例えば、分子構造が、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、及びアクリロニトリルから選択される少なくとも1つを構成要素として含む樹脂(A)、硬化剤(B)及びが扁平形状であり、且つ、厚みと面内長手方向のアスペクト比が10以上である導電性フィラー(C)を含む導電性樹脂組成物(例えば、特開2018-35286等に記載の導電性樹脂組成物)が挙げられる。
【0041】
上記導電性粒子のより具体的な例としては、銀、銀被覆銅(銅の表面の一部を銀が被覆する構成を含む)、銅、金、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、導電性高分子、錫、ビスマス、インジウム、ガリウム等やこれら金属の合金で構成される粒子が挙げられる。好ましくは、伸縮性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、スチレンブタジエン共重合樹脂と、銀粉、銀フレーク、などを組み合わせた銀ペーストや銀インク等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の伸縮性配線の形成方法も特に限定はされないが、例えば、印刷法などによって形成することができる。具体的には、上述したようなバインダー樹脂と導電性粒子を含む導電性ペーストや液状の金属を、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの印刷法によって、前記基材上に印刷塗布して所望のパターンを有する配線を形成することができる。
【0043】
本実施形態の回路基板において、ランド部、伸縮性基材、伸縮性配線の各層の厚みは特に限定されないが、伸縮性と強度のバランスを保つため例えば、ランド部の厚みは1~50μm、伸縮性配線の厚みは1μm~50μm、伸縮性基材の厚みは10μm~500μm程度とすることが好ましい。
【0044】
また、ランド部、伸縮性基材、伸縮性配線のそれぞれの幅の特に限定されず、伸縮性と強度のバランスを保つため例えば、ランド部の幅は10~1000μm、伸縮性配線の幅は20~2000μm、伸縮性基材の幅は0.5~2cm程度とすることが好ましい。
【0045】
本実施形態の回路基板は、
図1に示す通り、ランド部2が伸縮性基材1と接している部分4を有しているが、このようにランド部2の少なくとも一部が伸縮性基材1と接している限り、その形態は特に限定されない。例えば、
図2(A)に示すように、ランド部1の裏面全体が伸縮性基材1の表面と接していてもよいし、
図2(C)に示すようにランド部2が伸縮性基材1に埋められていてもよい。上記伸縮性基材と上記ランド部とが接している部分4を有することによって、上記伸張率を有する伸縮性基材を用いた伸縮性回路基板においても、上記伸縮性基材と上記ランド部とが優れた密着性を示し、本実施形態の伸縮性基材の伸長及び復元に対して、伸縮性基材上に実装された電子部品等の回路基板が高い追従性を示すことが可能となる。本実施形態の回路基板に複数あるランド部において、上記伸縮性基材と上記ランド部とが接している部分4を有するランド部と、前記部分4を有さないランド部が混在する伸縮性回路基板であっても良い。前記部分4を有さないランド部とは、例えば、伸縮性配線上に位置しており、伸縮性基材とは接していないランド部である。
【0046】
また、
図1に示すように、ランド部2はその周縁に伸縮性配線3が接続された接続部5を有することが好ましい。これにより、ランド部の伸縮性基材上の安定性がより向上すると考えられる。本実施形態でいう接続部とは、ランド部2と伸縮性配線3とを電気的に接続する部分であり、様々な態様をとることができる。本明細書では便宜上「接続部」と称しているが、独立した構成要素でなくてもよく、上述のようにランド部2の一部であってもよいし、伸縮性配線3の一部であってもよい。接続部5の形態は特に限定はなく、
図2(A)のようにランド部2の側面が伸縮性配線3の側面と接続していてもよいし、
図2(B)に示すようにランド部2の上面が伸縮性配線3の下面と接続していてもよいし、
図2(C)に示すように、ランド部2の上に伸縮性配線3が設けられることによって接続部5を形成していてもよい。
【0047】
好ましくは、ランド部2の上面及び/又は側面において、伸縮性配線3との接続部5を有していることが好ましい。それにより、ランド部2の伸縮性基材1上の安定性がさらに向上すると考えられる。
【0048】
さらには、
図5に示すように、ランド部2が2つ以上の伸縮性配線3との接続部5を有し、かつ、ランド部2の一部が伸縮性配線3の上に接続されていてもよい。
【0049】
このような接続部5の形成方法は特に限定はなく、例えば、リソグラフィーやディスペンサー印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、シンタリングといった方法によるランドの形成及び伸縮配線の印刷をすることによって形成できる。
【0050】
また、
図4(A)を用いて、接続部5を詳細に説明する。本実施形態における接続部5は、ランド部2と伸縮性配線3の重なっている部分のことを意味する。このような接続部5があることによって、伸縮時あるいは基材の変形時においても安定的な電気的接続が可能となる。
【0051】
このランド部の端部(周縁)は、前記伸縮性配線とより大きな表面積をもって接触することが好ましく、例えば、接続部におけるランド部の幅は前記伸縮性配線3の幅よりも狭くなっていることが好ましい。それにより、前記接続部におけるランド部の端部と前記伸縮性配線との接触面積を大きくすることが出来、電気的接続の信頼性を向上させることが出来るという利点がある。
図4(B)に示すように、接続部5におけるランド部2の幅が配線3の幅より狭くなっていれば、ランド部2の幅が配線3の幅よりも大きくなっていても、上記効果を得ることが可能である。
【0052】
また、本実施形態の回路基板においては、前記伸縮性基材に積層される第二絶縁層をさらに有していてもよい。前記伸縮性基材を第一絶縁層とした場合、第二絶縁層は第一絶縁層と同じ構成あってもよいし、異なる構成であってもよい。さらに、本実施形態の回路基板においては、前記伸縮性配線と異なる層位置に、第二導電層をさらに有していてもよい。前記伸縮性配線を第一導電層とした場合、第二導電層は第一導電層と同じ構成あってもよいし、異なる構成であってもよい。すなわち、本実施形態の回路基板は、基板の表裏両面に配線が設けられていてもよく、あるいは、複数層の回路が積層された回路基板であってもよい。それにより、回路設計における制約条件を大幅に緩和出来、また回路部材の小型化が可能になるという利点がある。また、前記第二導電層が、前記伸縮性配線と層間接続されていてもよい。導電層間の接続手段(導通手段)は特に限定はなく、公知の手段、例えば、メッキ、導電性ペースト等を用いて接続することが可能である。
【0053】
本実施形態における、電子部品が実装された回路基板は、例えば、
図3(A)に示すように、パッド部8が設けられている電子部品9を、伸縮性基板1の上に設けられた伸縮性配線3と接続しているランド部2の上に設けられたハンダ部7の上に実装することで得られる。ここで、ハンダ部の実装方法は、公知の手段を用いることができ、例えば、メタルマスクやフレキソによるハンダ印刷、リフロー炉等による加熱や超音波等による局所的に加熱することによって形成できる。
【0054】
あるいは、
図3(A)の形態に限定されず、
図3(B)に示すような形態で、ランド部2、ハンダ部7、パッド部8を設け、その上に電子部品9を実装することもできる。
【0055】
本実施形態で使用できる電子部品としては特に限定はなく、例えば、トランジスタ、信号発信素子、発光素子、太陽発電素子、ダイオード、スイッチング素子、コンデンサー、コイル、液晶、ブルートゥース(登録商標)などの無線モジュール、加速度センサや湿度センサ、温度センサといった各種センサ、RFID等に使われるチップ部品などが挙げられる。
【0056】
本実施形態の回路基板において、さらに外部からの接触や摺動による保護、絶縁や防水といった目的で、回路の一部または全体を樹脂などの被覆体により保護することが回路基板の信頼性向上の観点で好ましい。
【0057】
具体的には、回路基板は保護層を有する。当該保護層は、例えば、
図6に示すように、電子部品9や配線3等を保護するための樹脂組成物を最表面に設けられる保護層10であってもよい。
【0058】
このような保護層を有することにより、回路表面の水分や摩擦からの保護、回路基材の補強が可能となるという利点がある。
【0059】
さらに、本実施形態の回路基板は、補強層を有していてもよい。具体的には、
図6に示すようにシート状の樹脂を用いて、基材1の裏面に補強層11を設けてもよい。つまり、補強層11は樹脂シートであってもよい。あるいは、
図7に示すように、ポッティング用に使用される樹脂組成物等を用いて補強層11を設け、電子部品9と配線3との接合部を補強することもできる。つまり、補強層11は樹脂組成物で構成されていてもよい。このような補強層を有することにより、部品脱落等をより確実に防ぐことができる。
【0060】
このような前記保護層に使われる樹脂組成物は、10%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは50%、さらに好ましくは100%以上の伸張性を有し、25℃室温における引張弾性率が0.5MPa~0.5GPa、好ましくは1MPa~300MPa、より好ましくは10MPa~100MPa、さらに好ましくは10MPa~50MPaである。本実施形態の保護層に使用し得る樹脂組成物としては、回路表面の水分や摩擦からの保護、回路基材の補強を可能とする目的の観点から硬化性樹脂組成物、好ましくは熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂を用いることができ、例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素ゴムが挙げられ、また、熱可塑性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、各種ゴム、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが挙げられる。本実施形態で使用し得る保護層に用いる場合には、特に、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
また、前記補強層に使われる樹脂組成物は、10%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは50%、さらに好ましくは100%以上の伸張性を有し、25℃室温における引張弾性率が10MPa~8GPa、好ましくは100MPa~6GPa、より好ましくは500MPa~6GPa、さらに好ましくは500MPa~2GPaである。さらに、本実施形態の補強層に使用し得る樹脂組成物としては、電子部品9と配線3との接合部の補強や、部品脱落等をより確実に防ぐ目的の観点から硬化性樹脂組成物、好ましくは熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂を用いることができ、上記硬化性樹脂組成物としては、例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素ゴムが挙げられ、また、熱可塑性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、各種ゴム、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂が挙げられる。本実施形態で使用し得る補強層に用いる場合には、補強の観点から特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂用いることが好ましい。
【0062】
保護層や補強層を形成する手段としては、スプレー塗布による方法や、シート状に加工した保護層または補強層をラミネーターにて貼り合わせる方法や、液状樹脂をダイコートやインクジェットやディスペンサー、静電噴霧、蒸着等によって塗布する手段があげられる。これらの手法は従来の手法でも良いし、改良された手法を用いてもよい。
【0063】
保護層10や補強層11などは、実装した電子部品またはその周辺や、回路全体に設けることで、部品接合部や回路そのものを保護したり、補強したりすることができる。また、
図6のように回路表層を保護層10で覆うことで、外界からの耐摩耗性や防水性なども向上し、部品脱落等を防ぐことも可能とする。すなわち、本発明の伸縮性回路基板において、前記絶縁層のうち少なくとも1つが最表面にある保護層であることが好ましい。
【0064】
(製造方法)
本実施形態の伸縮性回路基板を製造する方法は特に限定はされないが、例えば、以下のような方法で製造することができる。
【0065】
まず、伸縮性の樹脂付き銅箔をリソグラフィーでパターニングし銅箔のランドを伸縮性基材上に形成する。そしてパターニグされたランド付き伸縮性基材上にスクリーン印刷で伸縮性の銀配線を形成することによって、伸縮性基材の上に、ランド部と伸縮性配線を形成することができる。
【0066】
より具体的には、例えば、以下の製法によって製造することができる。
【0067】
・製造例1
<伸縮性配線部とランドの形成>
銅箔(JTC-LP 18μm、三井金属製)のマット面へ銀ペースト(PE803、デュポン社製)をスクリーンで印刷し、100℃で30分加熱乾燥させ、銅箔上に回路を形成した。さらに、樹脂(SILPOT184、東レダウコーニング社製)を銀ペーストの印刷面にバーコーターで塗布し、100℃で30分媒硬化させ、銅箔上に配線及び伸縮性基材を形成したフィルムを得た。
【0068】
その後、樹脂を塗布した面の反対の面にドライフィルムレジストをラミネートし、フォトリソグラフィーにて現像、銅箔エッチングにより銅箔ランドが形成された回路基板を得た。
【0069】
<部品実装>
得られた回路基板の銅箔ランド部にクリームハンダをメタルマスクで印刷し、電子部品(チップ抵抗:1608、5025サイズ)を実装した。実装は180℃に設定したホットプレート上にて行った。
【0070】
(製造例2)
<伸縮性基材上へランドを形成>
まず、伸縮性基材用の樹脂を以下のようにして作成した。ポリロタキサン:(アドバンス・ソフトマテリアルズ社製「A1000」)100質量部、エポキシ樹脂(三菱化学製「JER1003」)75質量部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成製「2E4MZ」、2エチル4メチルイミダゾール)1.1質量部、及び、架橋剤:(イソシアネート、DIC製「DN950」)45質量部を、固形分濃度が40質量%となるように、溶剤(メチルエチルケトン)に添加して、各成分を均一に混合し(300rpm、30分間)、樹脂組成物を調製した。
【0071】
次に、銅箔(3ECVLP 18μm、三井金属製)のマット面へ前記樹脂組成物をバーコーターにて塗布。100℃で10分溶媒を乾燥させ、その後170℃で1時間かけて樹脂を硬化させ樹脂付き銅箔を得た。樹脂層の厚みは50μmであった。銅箔面にドライフィルムレジストをラミネートし、フォトリソグラフィーにて銅箔ランドが形成された樹脂フィルムを得た。
【0072】
<回路の形成>
伸縮性配線(銀ペースト)を、以下のようにして調製した。樹脂としてエポキシ変性アクリル酸エステル樹脂「PMS-14-2」(ナガセケムテックス製、エポキシ当量:1852g/eq、分子量:100万、Tg:-35℃)10.0質量部、硬化剤としてアミン系化合物:2官能ポリエーテルアミン「D2000」(三菱化学ファイン製)2.7質量部と、イミダゾール系硬化促進剤:2エチル4メチルイミダゾール「2E4MZ」(四国化成製)0.1質量部、導電性フィラーとして銀粉「Ag-XF-301」(比表面積2.0m2/g、タップ密度0.56g/cm3、福田金属箔粉工業社製)50.0質量部、界面活性剤として、ポリエステル変性シリコン系表面調整剤:「BYK-370」(ビックケミー・ジャパン製)0.5質量部、分散剤としてブロックコポリマー型湿潤分散剤「DISPERBYK-2155」(ビックケミージャパン製)、0.2質量部、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM-403」(信越シリコーン製)0.2質量部を溶剤(シクロヘキサノン、2.0質量部)に添加して、自転-公転式ミキサー(THINKY社「ARV-310」、2000rpm-3分)で撹拌することによって各成分を均一に混合し、導電性樹脂組成物を調製した。
【0073】
そして、ランド部分に一部重なるように前記銀ペーストをスクリーンで印刷し、100℃のオーブンで10分乾燥させ、その後150℃のオーブンにて1時間硬化させ、伸縮性回路基板を得た。
【0074】
<部品実装>
製造例1と同様の方法で部品を実装した。
【0075】
(製造例3)
<伸縮性基材上へランドを形成>
銅箔(3ECVLP 18μm、三井金属製)のマット面へ樹脂フィルム(#3412、BEMIS社製)を真空ラミネーター(到達真空度0.1hPa、設定温度120℃、加圧力0.2Mpa、加圧時間30分)でラミネートし樹脂付き銅箔を得た。
【0076】
銅箔面にドライフィルムレジストをラミネートし、フォトリソグラフィー銅箔ランドが形成された樹脂フィルムを得た。
【0077】
<回路の形成>
ランド部分に一部重なるように銀ペースト(SSP1409、東洋紡社製)をスクリーンで印刷し、100℃のオーブンで10分乾燥させ、その後150℃のオーブンにて1時間硬化させ、伸縮性回路基板を得た。
【0078】
<部品実装>
製造例1と同様の方法で部品を実装した。
【0079】
(製造例4)
<伸縮性基材上へランドを形成>
片面離型処理されたペットフィルムの離型面に樹脂(製造例2と同様)をバーコーターで塗布し、100℃で10分溶媒を乾燥させ、その後170℃で1時間かけて樹脂を硬化させ樹脂付きペットフィルムを得た。その後、銀ペースト(CA-8590B、大研化学社製)でランド形状のスクリーン版で印刷し、100℃で10分乾燥後、150℃で1時間硬化させランドを形成した。
【0080】
<回路の形成>
ランド部分に一部重なるように銀ペースト(製造例2と同様)をスクリーンで印刷し、100℃のオーブンで10分乾燥させ、その後150℃のオーブンにて1時間硬化させ、伸縮性回路基板を得た。
【0081】
<部品実装>
製造例1と同様の方法で部品を実装した。
【0082】
(製造例5)
製造例1と同様の方法で、実装済みの伸縮性回路基板を得た。その後、表面から液状樹脂(1B51NSLU、CHASE 社製)をスプレーでコーティングし被覆体を形成、さらに基板裏側とポリエステル素材の布をフィルム(SHM107、シーダム社製)を介して、170℃程度に設定したアイロンでラミネートした。
【0083】
(用途)
本実施形態の伸縮性回路基板は、高い伸縮性と実装性や密着性を両立するという特徴を有することから、光学分野、電子分野、接着分野、医療分野など様々な技術分野にも既存の設備適用できるため、産業利用上非常に有利である。
【0084】
特に、十分な伸縮性を維持しつつハンダ実装可能な回路基板であるため、例えば、パッチデバイス、折り曲げ可能な電子ペーパー、有機ELディスプレイ、ウェアラブル機器等に用いる回路基板として非常に好適である。
【0085】
特に医療、スポーツなどバイタルセンシングをするため等の用途に用いるため、洋服などに付着させるパッチデバイスとして有用である。
【0086】
その場合、本実施形態の回路基板における電子部品は、外部システムと通信する機能と、センサ機能とを少なくとも有していることが好ましい。それにより、デバイス本体を意識することなく外部システムによりデバイスの稼働状況を確認することが出来るといった利点がある。あるいは、外部システムからの指示によって駆動するシステムを有していることも好ましい。それにより、外部システムより遠隔操作にてデバイス動作を命令駆動させることが出来るといった利点がある。さらには、上述の機能を全て有している電子部品を備えたデバイスであってもよい。
【0087】
この出願は、2017年9月4日に出願された米国仮出願62/553967を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0088】
本発明を表現するために、前述において図面や具体例等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、電子材料やそれを用いた各種デバイスに関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。