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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】電解コンデンサモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20240126BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240126BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20240126BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20240126BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20240126BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20240126BHJP
   H01G 9/10 20060101ALI20240126BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H01G9/00 030
H01G9/15
H01G9/145
H01G4/38 A
H01G2/02 101E
H01G2/08 A
H01G9/10 D
H01G4/228 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020503445
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2019006440
(87)【国際公開番号】W WO2019167772
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2018035413
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長柄 久雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴行
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-145042(JP,U)
【文献】特開2012-104284(JP,A)
【文献】特開2004-335829(JP,A)
【文献】特開昭56-002622(JP,A)
【文献】特開平05-121280(JP,A)
【文献】特開2003-197159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/15
H01G 9/145
H01G 4/38
H01G 2/02
H01G 2/08
H01G 9/10
H01G 4/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサ素子と、
前記複数のコンデンサ素子のそれぞれと電気的に接続する電極リードと、
前記電極リードが貫通する封口部材と、
前記複数のコンデンサ素子をそれぞれ収容する複数の収容部を有する放熱部材と、を備え、
前記放熱部材は、金属で構成され、かつ第1面および前記第1面の反対側の第2面を有し、
前記複数の収容部のそれぞれは、前記第1面において開口した挿入口を有し、
前記封口部材は、前記挿入口を封口し、
前記電極リードは、前記挿入口から導出しており、
前記複数の収容部のそれぞれの内側壁における前記封口部材との接触領域のうち、前記第1面に近い領域には、前記挿入口の中心に向かって突出している1以上の突起が形成されており、
前記封口部材は、前記突起により押圧されて、前記接触領域の前記第1面に近い領域において固定されている、
電解コンデンサモジュール。
【請求項2】
前記封口部材は、弾性を有しており、
無負荷状態における前記封口部材の前記第1面に平行な面内での最大径は、前記挿入口の最大径より大きい、
請求項1に記載の電解コンデンサモジュール。
【請求項3】
前記複数の収容部のそれぞれの内側壁における前記封口部材との接触領域は、前記複数の収容部のそれぞれの前記第1面に平行な面内での断面の直径を、前記断面の位置を前記第2面から前記第1面に向かう方向に変化させるにつれて小さくする傾斜面を備える、
請求項1または2に記載の電解コンデンサモジュール。
【請求項4】
前記放熱部材の厚みは、前記複数の収容部のそれぞれの深さよりも大きく、
前記複数の収容部のそれぞれは、前記放熱部材の前記第1面に形成された窪みである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電解コンデンサモジュール。
【請求項5】
前記複数のコンデンサ素子の1つの前記電極リードと前記複数のコンデンサ素子の他の1つの前記電極リードとを電気的に接続するバスバーを備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電解コンデンサモジュール。
【請求項6】
前記複数のコンデンサ素子のそれぞれは、誘電体層を有する陽極体と、陰極体と、前記陽極体と前記陰極体との間に配置される電解質と、を備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電解コンデンサモジュール。
【請求項7】
前記電解質は導電性高分子を含む、
請求項6に記載の電解コンデンサモジュール。
【請求項8】
前記電解質は電解液を含む、
請求項6または7に記載の電解コンデンサモジュール。
【請求項9】
前記放熱部材の厚みは、前記複数の収容部のそれぞれの深さ以下であり、
前記複数の収容部のそれぞれは、前記放熱部材の前記第1面に形成された凹部である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電解コンデンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコンデンサ素子を備える電解コンデンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサに交流電圧を印加すると、電解コンデンサには交流の充放電電流(リプル電流)が流れる。電解コンデンサを構成するコンデンサ素子は、ESRといわれる内部抵抗を有しているため、リプル電流により発熱する。この熱により、コンデンサ素子は劣化し易く、長期間の使用が困難になる場合がある。そのため、様々な放熱対策がなされている。例えば、特許文献1には、複数の電解コンデンサ素子の間に熱伝導率の大きい充填剤を充填して、放熱する方法が教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-283071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のコンデンサ素子を備える電解コンデンサの放熱を、より効率的に行う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の電解コンデンサモジュールは、複数のコンデンサ素子と、電極リードと、封口部材と、放熱部材と、を備える。前記電極リードは、前記複数のコンデンサ素子のそれぞれと電気的に接続され前記封口部材を貫通する。放熱部材は前記複数のコンデンサ素子をそれぞれ収容する複数の収容部を有する。また、放熱部材は、第1面および前記第1面の反対側の第2面を有する。前記複数の収容部のそれぞれは、前記第1面において開口した挿入口を有する。前記封口部材は、前記挿入口を封口する。前記電極リードは、前記挿入口から導出している。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数のコンデンサ素子から生じる熱が外部に放熱され易くなるため、高寿命化が可能になるとともに、リプル電流を高く設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る電解コンデンサモジュールの一例を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る電解コンデンサモジュールの他の例を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る電解コンデンサモジュールの一部を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る放熱部材の一部を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る他の放熱部材の一部を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る電解コンデンサモジュールの他の例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る電解コンデンサモジュールは、複数のコンデンサ素子と、複数のコンデンサ素子のそれぞれと電気的に接続する電極リードと、電極リードが貫通する封口部材と、複数のコンデンサ素子をそれぞれ収容する複数の収容部を有する放熱部材と、を備える。放熱部材は、第1面および第1面の反対側の第2面を有している。複数の収容部のそれぞれは、第1面において開口した挿入口を有しており、複数のコンデンサ素子のそれぞれは挿入口から挿入される。封口部材は、挿入口を封口している。電極リードは、封口部材を貫通して、挿入口から導出している。
【0009】
複数のコンデンサ素子は、個別に外装ケースに収容されることなく、直接、放熱部材に設けられた収容部にそれぞれ収容される。外装ケースを備える場合、コンデンサ素子の内部に生じた熱は、外装ケースに移動した後、放熱部材に移動する。外装ケースと放熱部材との間には隙間が生じ易いため、熱は、主に放射あるいは気体の対流によって外装ケースから放熱部材へと移動する。そのため、放熱効率に劣る。本実施形態によれば、コンデンサ素子と放熱部材とは接触するため、コンデンサ素子の内部に生じた熱は、主に熱伝導により放熱部材へと移動する。よって、放熱効率が高い。また、本実施形態では、特許文献1のような充填剤を要しないため、生産性が高く、またコストも低減される。
【0010】
好ましい形態では、収容部の挿入口は、弾性を有する封口部材により封口される。無負荷状態における封口部材の第1面に平行な面での最大径は、挿入口の最大径より大きいことが好ましい。これにより、封口部材が挿入口から抜けにくくなって、コンデンサ素子の固定性が向上する。さらに、収容部にコンデンサ素子とともに電解液が収容される場合、電解液の漏洩が抑制される。
【0011】
収容部の内側壁における封口部材との接触領域は、1以上の突起を備えてもよい。あるいは、収容部の内側壁における封口部材との接触領域は、収容部の第1面に平行な面における断面の直径を、断面の位置を第2面から第1面に向かう方向に変化させるにつれて小さくする傾斜面を備えてもよい。これにより、封口部材は挿入口からより抜けにくくなる。
【0012】
他の好ましい形態では、放熱部材の厚みは収容部の深さよりも大きく、収容部は、放熱部材の第1面に形成された窪みである。この場合、収容部同士の間に放熱部材を構成する放熱材料が隙間なく介在するため、放熱効率はより高くなる。さらに、放熱部材の収容部同士の間に、例えば冷媒を通す冷媒流路等の冷却機構を形成することができる。また、放熱部材の第2面を掘削して、冷却フィンを形成することができる。
【0013】
挿入口から導出している複数の電極リード同士は、バスバーにより互いに電気的に接続されてもよい。この場合、コンデンサ素子同士の並列的な接続が容易になって、ESRが低減され易くなる。さらに、電解コンデンサモジュールと搭載される電子機器との接続を、バスバーを介して容易に行うことができる。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。図1および図2は、電解コンデンサモジュールを模式的に示す斜視図である。図3は、電解コンデンサモジュールの一部を模式的に示す断面図である。図4は、放熱部材の一部を模式的に示す断面図である。図5は、他の放熱部材の一部を模式的に示す断面図である。図6は、コンデンサ素子の構成を説明するための概略斜視図である。図7は、電解コンデンサモジュールの他の例を模式的に示す斜視図である。ただし、電解コンデンサモジュールおよびコンデンサ素子の構成はこれに限定されない。
【0015】
(放熱部材)
放熱部材は、コンデンサ素子内部で生じた熱を外部に放出する。さらに、放熱部材は、複数のコンデンサ素子をまとめて収容するケースとして機能する。
【0016】
放熱部材40は、第1面40Xおよびその反対側の第2面40Yを備えるとともに、複数のコンデンサ素子10をそれぞれ収容する複数の収容部41を有している。収容部41は、第1面40Xにおいて開口した挿入口411を有している。コンデンサ素子10は、挿入口411から挿入される。挿入口411は、封口部材30により封口される。
【0017】
放熱部材40の形状は特に限定されない。例えば、放熱部材40の厚みT40は、収容部41の深さT41より大きくてもよい。この場合、収容部41は、図1に示すように、放熱部材40の第1面40Xを、例えば掘削あるいはエンボス加工することにより形成された窪みである。また、収容部41は、例えば型枠等を用いて放熱部材40を成型する際に、第1面40Xとともに形成された窪みである。
【0018】
放熱部材40の厚みT40は、収容部41の深さT41以下であってもよい。この場合、収容部41は、図2に示すように、放熱部材40を例えばプレス加工することにより形成された凹部である。なかでも、放熱効率の観点から、放熱部材40の厚みT40は、収容部41の深さT41より大きく、収容部41は、第1面40Xに形成された窪みであることが好ましい。
【0019】
放熱部材40の厚みT40は、任意の3点における第1面40Xと第2面40Yとの間の最短距離の平均値である。収容部41の深さT41は、挿入口411から収容部41の底部413(図3参照)までの最大の距離である。底部413は平面であってもよいし、曲面部を含んでいてもよい。
【0020】
収容部41の数は特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。収容部41の数は、例えば5~20個であってもよい。収容部41の形状および大きさも特に限定されない。放熱効率の観点から、収容部41の大きさは、収容されるコンデンサ素子10の大きさと同程度であることが好ましい。同様の観点から、収容部41の形状は、収容されるコンデンサ素子10の形状と類似していることが好ましい。収容部41の内側壁412および/または底部413とコンデンサ素子10との接触面積が大きくなるためである。内側壁412および/または底部413とコンデンサ素子10とを、放熱性の接着剤により接着させてもよい。複数の収容部41の大きさおよび形状は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
収容部41の内側壁412における封口部材30との接触領域412Xは、図4に示すように、1以上の突起414を備えてもよい。突起414は、例えば挿入口411の中心に向かって突出しており、封口部材30は、突起414により押圧されて接触領域412Xに固定される。よって、封口部材30は挿入口411から抜けにくくなる。突起414の形状、配置および個数は、特に限定されない。突起414は、例えば接触領域412Xに3箇所以上、均等に配置されてもよい。
【0022】
収容部41の内側壁412における封口部材30との接触領域412Xは、図5に示すように、収容部41の第1面40Xと平行な面での断面の直径D41を、断面の位置を第2面40Yから第1面40Xに向かう方向に変化させるにつれて小さくする傾斜面412aを備えてもよい。封口部材30は、傾斜面412aにより押圧されて接触領域412Xに固定される。よって、封口部材30は挿入口411から抜けにくくなる。傾斜面412aと第1面40Xとの成す鋭角θは、特に限定されない。鋭角θは、例えば、60度以上90度未満である。接触領域412X(さらには内側壁412)は、図5に示すように、傾斜面412aのみにより形成されてもよい。
【0023】
放熱部材40の素材としては特に限定されず、樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂等)、金属(アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等)、セラミックス(酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等)などが挙げられる。樹脂のように熱伝導率が小さい素材を放熱部材に用いる場合、その素材に、例えば熱伝導性を有するフィラーを配合する。熱伝導フィラーとしては特に限定されず、銀、銅、グラファイト、炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化アルミニウム等が例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。放熱部材の熱伝導率は、例えば1W/m・K以上であり、2W/m・K以上であってもよい。
【0024】
(封口部材)
封口部材30は挿入口411を封口する。封口部材30は弾性体であってもよい。封口部材30の大きさおよび形状は特に限定されず、その封口部材30によって封口される挿入口411の大きさおよび形状に応じて適宜設定すればよい。
【0025】
無負荷状態における封口部材30の第1面40Xに平行な面での最大径D30図3参照)は、その封口部材30によって封口される挿入口411の最大径D411より大きいことが好ましい。このような最大径を有する封口部材30を収容部41に圧入することにより、封口部材30は挿入口411から抜けにくくなって、コンデンサ素子10の固定性が向上する。さらに、電解液がコンデンサ素子10とともに収容部41に収容される場合、電解液の漏洩が抑制される。最大径D411に対する最大径D30の割合は特に限定されない。D30/D411は、圧入のし易さおよびコンデンサ素子10の固定性の点で、1.1以上、1.5以下であってもよい。
【0026】
封口部材30の素材は特に限定されない。弾性を有する素材としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ハイパロン(商標)ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等のゴムが挙げられる。これらは、耐熱性が高い点で好ましい。
【0027】
(電極リード)
電極リード20は、コンデンサ素子10と電気的に接続している。電極リード20は、例えば、コンデンサ素子10の電極に接合されるリードタブ22と、リードタブ22と電気的に接続するとともに、封口部材30を貫通して、挿入口411から導出されるリード線21と、を備える(図6参照)。
【0028】
リードタブ22およびリード線21の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば特に限定されず、金属であっても非金属であってもよい。その形状も特に限定されず、平板状であってもよいし丸断面を有していてもよい。
【0029】
挿入口411から導出している複数の電極リード20同士は、バスバー50(図7参照)により互いに電気的に接続されてもよい。これにより、コンデンサ素子10同士は容易に並列に接続されて、ESRが低減され易くなる。このとき、同じ極性を有する電極リード20同士(例えば、電極リード20A同士あるいは電極リード20B同士)は、1つのバスバー50(バスバー50Aあるいはバスバー50B)で接続される。バスバー50と電極リード20とは、例えば、抵抗溶接、レーザー溶接、はんだ等により接合される。
【0030】
電解コンデンサモジュール100は、バスバー50を介して電子機器と接続することができる。電解コンデンサは、一般にはんだ等により電子機器に接続されるため、リフロー工程に供される。リフロー工程では、電解コンデンサの内圧が高まり易い。そのため、通常、電解コンデンサの外装ケースの開口端近傍を内側に絞り加工し、さらに開口端を封口部材にかしめるようにカール加工して、封口部材を外装ケースに固定している。本実施形態では、電解コンデンサを電子機器に接続するためのリフロー工程を要しないため、上記のような絞り加工やカール加工を行わなくても、封口部材を固定することが可能である。よって、生産性が向上し易い。
【0031】
バスバー50の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば特に限定されず、金属であっても非金属であってもよい。その形状も特に限定されず、電解コンデンサモジュール100の設置場所、電子機器の形状等に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
(コンデンサ素子)
コンデンサ素子10は、例えば図6に示すように、箔状の陽極11と箔状の陰極12とこれらの間に介在するセパレータ13とを備える。陽極11および陰極12は、セパレータ13を介在させながら捲回されて、捲回体を形成している。捲回体の最外周は、巻止めテープ14により固定される。陽極11には、リード線21Aを備えるリードタブ22Aが接続され、陰極12には、リード線21Bを備えるリードタブ22Bが接続される。コンデンサ素子10は、陽極11および陰極12をセパレータ13を介在させながら積層させた、積層型であってもよい。
【0033】
コンデンサ素子10は、弁作用金属を含む焼結体(多孔質体)を陽極体として備えていてもよい。焼結体を用いる場合、陽極側の電極リードの一端は、焼結体に埋め込まれる。電極リードの他端は、封口部材30を貫通して、挿入口411から導出される。このようなコンデンサ素子は、例えば、陽極体と、陽極体を覆う誘電体層と、誘電体層を覆う陰極部とを備える。陰極部は、例えば、誘電体層を覆う固体電解質層と、固体電解質層を覆う陰極引出層とを備える。
【0034】
(陽極)
陽極11は、陽極体と陽極体を覆う誘電体層とを備える(いずれも図示せず)。
陽極体は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む化合物などを含むことができる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンが好ましく使用される。陽極体の表面は、多孔質である。このような陽極体は、例えば、エッチングなどにより弁作用金属を含む基材(箔状または板状の基材など)の表面を粗面化することで得られる。
【0035】
誘電体層は、弁作用金属の酸化物(例えば酸化アルミニウム、酸化タンタル)を含む。誘電体層は、陽極体の多孔質な表面(孔の内壁面を含む)に沿って形成される。
【0036】
誘電体層は、例えば、陽極体の表面を、化成処理などにより陽極酸化することで形成される。陽極酸化は、公知の方法、例えば、化成処理などにより行うことができる。化成処理は、例えば、陽極体を化成液中に浸漬することにより、陽極体の表面に化成液を含浸させ、陽極体をアノードとして、化成液中に浸漬したカソードとの間に電圧を印加することにより行うことができる。
【0037】
(陰極)
陰極12は、陰極としての機能を有していればよく、特に限定されない。陰極12は、例えば陽極11と同様に、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む化合物などにより形成される。陰極12の形状は陽極11と同様であればよく、例えば、箔状または板状である。必要に応じて、陰極12の表面を粗面化してもよい。
【0038】
(セパレータ)
セパレータ13としては、セルロース繊維製の不織布、ガラス繊維製の不織布、ポリオレフィン製の微多孔膜、織布、不織布などが好ましく用いられる。
【0039】
(電解質)
電解質としては、電解液、導電性高分子、またはその両方を用いることができる。
電解液は、非水溶媒であってもよく、非水溶媒とこれに溶解させたイオン性物質(溶質、例えば、有機塩)との混合物であってもよい。非水溶媒は、有機溶媒でもよく、イオン性液体でもよい。非水溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、スルホラン、γ-ブチロラクトン、N-メチルアセトアミドなどを用いることができる。有機塩としては、例えば、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリニウムなどが挙げられる。
【0040】
導電性高分子としては、例えば、マンガン化合物、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体などを用いることができる。導電性高分子は、陽極11と陰極12との間に、固体電解質層として配置される。固体電解質層は、ドーパントを含んでもよい。より具体的には、固体電解質層は、導電性高分子としてポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、および、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸(PSS)を含むことができる。
【0041】
導電性高分子を含む固体電解質層は、例えば、原料モノマーを、陽極体に形成された誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより形成することができる。あるいは、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することにより形成することができる。
【0042】
捲回型のコンデンサ素子を備える電解コンデンサモジュールは、例えば、以下のようにして製造される。
第1に、コンデンサ素子10を準備する。
まず、表面が粗面化された陽極体(金属箔)に化成処理を施して、表面に誘電体層を形成する。これにより陽極11が得られる。
【0043】
得られた陽極11と陰極12(金属箔)とを、セパレータ13を介して捲回する。このとき、各電極には、リードタブ22Aまたは22Bの一方の端部がそれぞれ接続されており、リードタブ22Aおよび22Bを巻き込みながら、各電極は捲回される。リードタブ22Aおよび22Bの他方の端部には、リード線21Aおよび21Bがそれぞれ接続されている。最外層の陰極12の端部を巻止めテープ14で固定する。
【0044】
作成された捲回体に電解質(電解液および/または導電性高分子)を接触させる。捲回体に電解質を接触させる方法は特に限定されず、少なくとも陽極11と陰極12との間に電解質が配置されればよい。例えば、電解質を捲回体に滴下してもよいし、容器に収容された電解質に捲回体を浸漬させてもよい。捲回体と電解質との接触は、捲回体を放熱部材40に挿入した後に行われてもよい。電解液および導電性高分子の両方を用いる場合、導電性高分子により固体電解質層を形成した後、電解液を含浸させる。
以上の方法により、コンデンサ素子10が製造される。
【0045】
第2に、封口部材30および放熱部材40を準備する。放熱部材40の第1面40Xには、掘削により所望の大きさを有する複数の窪み(収容部41)を形成しておく。封口部材30の最大径D30は、その封口部材30によって封口される挿入口411の最大径D411より大きくする。
【0046】
第3に、封口部材30にリード線21A、21Bを貫通させて、コンデンサ素子10と封口部材30との連結体を作成する。
【0047】
第4に、得られた連結体を、リード線21Aおよび21Bが挿入口411から導出されるように、収容部41に圧入する。これにより、挿入口411の封口とコンデンサ素子10の収容とが完了する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。最後に、必要に応じて電極リード20A(リード線21A)および電極リード20B(リード線21B)に、バスバー50Aおよび50Bをそれぞれ接合する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る電解コンデンサモジュールは、放熱性に優れるため、様々な用途に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
100:電解コンデンサモジュール
10:コンデンサ素子
11:陽極
12:陰極
13:セパレータ
14:巻止めテープ
20、20A、20B:電極リード
21、21A、21B:リード線
22、22A、22B:リードタブ
30:封口部材
40:放熱部材
40X:第1面
40Y:第2面
41:収容部
411:挿入口
412:内側壁
412X:接触領域
412a:傾斜面
413:底部
50、50A、50B:バスバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7