(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】伸縮性回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240126BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/11 N
(21)【出願番号】P 2021509582
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013644
(87)【国際公開番号】W WO2020196745
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019061651
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】深尾 朋寛
(72)【発明者】
【氏名】澤田 知昭
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝寿
(72)【発明者】
【氏名】道上 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】高城 真
(72)【発明者】
【氏名】福島 奨
(72)【発明者】
【氏名】本田 大介
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118109(JP,A)
【文献】特表2015-517209(JP,A)
【文献】特表2016-521464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0052268(US,A1)
【文献】国際公開第2018/123732(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0192082(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0051005(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0299362(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性絶縁層と、配線とを備え、
前記配線は、その主要部を構成する金属配線部と、該金属配線部に付随的に配置された導電性伸縮部との組合せで構成されて
おり、
前記金属配線部は直線または曲線形状を有している、
伸縮性回路基板。
【請求項2】
前記配線がミアンダ配線である、請求項1に記載の伸縮性回路基板。
【請求項3】
さらにパッド部を備え、
前記配線と前記パッド部との接続部が、該接続部に付随的に配置された前記導電性伸縮部で構成されている、請求項1に記載の伸縮性回路基板。
【請求項4】
さらにパッド部を備え、
前記パッド部は、その主要部を構成する金属層と、該金属層に付随的に配置された前記導電性伸縮部で構成される、請求項1に記載の伸縮性回路基板。
【請求項5】
前記伸縮性絶縁層の両面に前記配線を備え、片面に形成された配線ともう一方の面に形成された配線との架橋が、前記導電性伸縮部で構成されている、請求項1~4のいずれかに記載の伸縮性回路基板。
【請求項6】
前記導電性伸縮部が導電ペーストまたは液体金属で形成されている、請求項1~5のいずれかに記載の伸縮性回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野、特にセンサ、ディスプレイ、ロボット用人工皮膚などの様々なインターフェースに用いられるデバイスや導電材料に対し、装着性や形状追従性の要求が高まっている。用途に応じて、曲面や凹凸面などに配置したり自由に変形させたりすることが可能な柔軟なデバイスが要求されつつある。
【0003】
そのような柔軟なデバイスに使用される伸縮性基板がすでに報告されつつあるが、伸縮性基板では基板の収縮によって配線が断線する恐れがある。
【0004】
そこで、配線の破断を防止するために、配線の形状を波形にすることや、伸縮性基板の伸縮量を部分的に制限する伸縮量制限部(ダミーパターン)を設けることが報告されている(特許文献1および2)。
【0005】
また、伸縮性基板と組み合わせるための、導電性組成物(ペースト)を使用した伸縮性配線もこれまでに報告されている(例えば、特許文献3~5)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1や2に記載されているような湾曲した配線は、曲げに対する耐性はある程度有するものの、10%を超える伸長では破断してしまうといった課題があった。
【0007】
また、上記特許文献3~5に示されるような伸縮性の導電性ペーストでは、バインダー樹脂を含むことから、導電性が十分ではなく、さらには大きく伸縮すると導電抵抗が大きくなったり導電不良を起こす恐れがある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、伸縮によって生じる配線の破断や、伸縮に伴う導電抵抗の上昇、導電不良の発生を抑制できる伸縮性回路基板を提供することを課題とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2010/086034号
【文献】特開2013-187308号公報
【文献】特開2015-178597号公報
【文献】国際公開第2016/114278号
【文献】特表2015-506061号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討した結果、下記構成の伸縮性回路基板によって上記課題を解消し得ることを見出し、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の一つの局面に関する伸縮性回路基板は、
伸縮性絶縁層と、配線とを備え、
前記配線は、その主要部を構成する金属配線部と、該金属配線部に付随的に配置された導電性伸縮部との組合せで構成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る伸縮性回路基板の構成を示す概略上面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る伸縮性回路基板における配線の形状を示す概略上面図である。
【
図3】
図3は、本発明の別の実施形態に係る伸縮性回路基板における配線の形状を示す概略上面図である。
【
図4】
図4は、本発明のさらに別の実施形態に係る伸縮性回路基板における配線とパッド部との接続部を示す概略上面図である。
【
図5】
図5は、本発明の伸縮性回路基板におけるパッド部の構成の一例を示す概略上面図である。
【
図6】
図6は、本発明のさらに別の実施形態に係る伸縮性回路基板の概略断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の伸縮性回路基板における導電性伸縮部の形態例を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の伸縮性回路基板における金属層と導電性伸縮部の形態例を示す概略裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、伸縮によって生じる配線の破断や、伸縮に伴う導電抵抗の上昇、導電不良の発生を抑制できる伸縮性回路基板を提供することが可能である。
【0014】
また、前記特性を有することから、IoTやフレキシブル表示装置以外にも、光学分野、電子分野、接着分野、医療分野など様々な技術分野にも適用できるため、本発明の伸縮性回路基板は、産業利用上非常に有利である。
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、後述の説明に登場する図面において、各符号は以下を示す:1 伸縮性絶縁層、2 導電性伸縮部、3 配線、4 パッド部、5 金属層、6 金属配線部。
【0016】
(伸縮性回路基板の基本構成)
まず、本実施形態の伸縮性回路基板の基本構成について説明する。本実施形態の伸縮性回路基板は、
図1にその一例を示すように、伸縮性絶縁層1と、配線3とを備える。そして、
図1に示すように、前記配線3は、その主要部を構成する金属配線部6と、該金属配線部6に付随的に配置された導電性伸縮部2との組合せで構成されている、具体的には、前記配線3の一部が導電性伸縮材料により構成される、前記導電性伸縮部2で構成されているか、前記配線3の一部が前記導電性伸縮部2で補強されているか、もしくはその両方であることを特徴とする。
【0017】
このような構成により、
図1に示す矢印の方向に基板を伸長させた場合であっても、前記配線3の一部が導電性伸縮部2で構成および/または補強されているため、伸長性に乏しい金属等で形成された配線が破断することなく、伸縮に伴う導電抵抗の上昇、導電不良の発生を抑制できると考えられる。
【0018】
図1では、波形状の配線の振幅の極大領域及び極小領域が導電性伸縮部2で構成されており、かつ、両端に示されているように、パッド部4の一部が波形状の導電性伸縮部2で構成されている。
【0019】
配線3の形状としては、波形状に限られるわけではなく、例えば、
図2に示すような直線配線3中に導電性伸縮部2で構成される架橋部があってもよい。または、
図3に示すようなミアンダ配線であってもよく、当該ミアンダ配線の振幅の極大領域及び極小領域が導電性伸縮部2で構成された架橋部であってもよい。好ましくは、基板を伸縮させる際に、配線上の破断が起こりそうな箇所、つまり伸長に弱い部分に、導電性伸縮部2からなる架橋部を設けることが望ましい。それにより、配線が直線である場合や導電性伸縮部が設けられていない場合等と比較して、導電性組成物が伸長するまでに回路基板の構造自体が伸長し、その構造自体の伸長が終わった段階で初めて導電性組成物が伸び始める。そのため、伸長率に対する抵抗の上昇が抑制されるという利点がある。
【0020】
また、
図7(A)の断面図では、金属配線部6が断線して、その間を導電性伸縮部2が埋めている形態となっているが、これは配線3の一部が前記導電性伸縮部2で構成されている形態を示す。しかし、本実施形態の回路基板では、上記形態に限られず、例えば、
図7(B)に示すように、金属配線部6が断線されておらず、導電性伸縮部2が配線3の一部を補強するように表面に形成されていてもよい。また、
図7(A)に示すように、金属配線部6が断線している場合にあっては、導電性伸縮部2が金属配線部6の表面において、当該断線幅より大きく広がっていてもよいし、広がっていなくても良い。
【0021】
図8は、配線3を裏から見た図であるが、
図8は、金属配線部6が断線されておらず、導電性伸縮部2が配線3の一部を補強するように表面に形成されている場合の平面図である。例えば金属配線部6の一部が
図8に示すように細くくびれており、その上にくびれ部の少なくとも一部が導電性伸縮部2で架橋されていることを示している。これにより前記伸縮性回路基板の面内の屈曲に対して配線上の破断(導通がなくなること)が抑制されるものである。このような形態も、基板の伸縮だけでなく、面内の屈曲に対しても、配線上の破断が起こりそうな箇所、つまり伸長に弱い部分に、導電性伸縮部2からなる架橋部を設けることの概念に包含される。
【0022】
(伸縮性回路基板の変形例)
次に、本実施形態の伸縮性回路基板の変形例を、図面を用いていくつか説明するが、本実施形態はこれらに限定されるわけではない。
【0023】
一つの実施形態における伸縮性回路基板では、上述したような基本構成に加えて、
図4に示すように、主要部を構成する金属層5で構成されるパッド部4をさらに備えていてもよい。その場合、伸縮性回路基板は、配線3(右側)とパッド部4(左側)を備えていることになる。このパッド部4と、配線3を構成する金属配線部6との接続部において、破断(及びそれによる導通不良)が起こる場合が多いため、
図4に示すように、前記金属配線部6と前記パッド部4との接続部が前記導電性伸縮部2で構成されているか、前記接続部が前記導電性伸縮部2で補強されているか、もしくはその両方であることが好ましい。その場合、前記配線3と前記パッド部4との接続部が、該接続部に付随的に配置された前記導電性伸縮部2で構成されていることになる。
【0024】
また、金属層5で構成されるパッド部4において、伸縮時に金属層に割れやヒビなどの障害が起こる場合も考えられる。そこで、
図5(パッド部4の拡大図)に示すように、前記パッド部4を構成している金属層5の一部が前記導電性伸縮部2で構成されているか、前記パッド部4を構成している金属層5の一部が前記導電性伸縮部2で補強されているか、もしくはその両方であってもよい。その場合、パッド部4は、その主要部を構成する金属層5と、該金属層5に付随的に配置された前記導電性伸縮部2で構成されていることになる。
【0025】
さらに、上述したような伸縮性回路基板において、配線3及びパッド部4は、前記伸縮性絶縁層1の片側だけでなく、両側に備えられていてもよい。その場合、
図6の断面図に示すように、伸縮性絶縁層1の片面に形成された配線3又はパッド部4ともう一方の面に形成された配線3又はパッド部4とが、前記導電性伸縮部2で架橋されていてもよい。それにより、伸縮時に架橋部が破断することなく、両面回路基板として用いることができるといった利点を得ることができる。なお、導電性伸縮部2は必ずしも、配線3を貫通している必要はなく、例えば、
図6のように、片側の配線3又はパッド部4では貫通して、反対側の配線3又はパッド部4では貫通していないという構成であってもよい。
【0026】
本実施形態の伸縮性回路基板の各構成(伸縮性絶縁層、金属配線部、金属層、導電性伸縮部)の材料については特に限定はされないが、例えば、以下に説明するような材料を用いることが可能である。
【0027】
(伸縮性絶縁層)
本実施形態における伸縮性絶縁層は、伸縮性を有する絶縁層であれば特に限定はない。
【0028】
本実施形態における絶縁層は、透明であってもなくてもよいが、より好ましくは全光透過率が70%以上の透明性を有することが好ましい。絶縁層の構成材料として後述するようなポリロタキサンを含む樹脂組成物やエポキシ樹脂組成物を用いる場合には、エポキシ樹脂やその硬化剤の選択によって前記透明性を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態の回路基板において、前記絶縁層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば、10μm~200μmの厚みであれば、ハンドリング性、光学特性、装着性の観点で好ましい。
【0030】
さらに、本実施形態の回路基板が備える絶縁層は、弾性変形可能で残留歪みが少なく、かつ応力緩和性を有する絶縁層であることが好ましい。具体的には、その硬化物において、弾性変形可能で残留歪みが少なく、かつ応力緩和性を有する樹脂組成物で構成されている絶縁層であることが好ましい。
【0031】
本実施形態において、弾性変形可能で残留歪みが少ないとは、より具体的には、塑性変形がなく、好ましくは残留歪みが3%以下であることをさす。また、応力緩和性を有するとは、力(例えば、引張力など)を加えられた時に、残留応力が小さくなるように加えられた応力を低減する性質を有するということである。
【0032】
なお、本実施形態では、便宜上、樹脂組成物の残留歪みおよび応力緩和性を、後述する伸張-復元試験により測定される応力緩和率Rおよび残留歪率αによって規定する。
【0033】
好ましくは、本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物において前記応力緩和率Rが20~95%、かつ前記残留歪率αが0~3%となる樹脂組成物である。より好ましくは、前記応力緩和率Rが30~60%、かつ前記残留歪αが0~1.5%となる樹脂組成物である。
【0034】
このような範囲の応力緩和率および残留歪率を示す樹脂組成物を用いた絶縁層であれば、伸縮性を備え、引張時の応力緩和性が高く、かつ、伸張後の復元性に優れるという特性を併せ持ち、破壊されにくいため信頼性に優れていると考えられる。
【0035】
〔伸張-復元試験〕
本実施形態で用いられる伸張-復元試験では、樹脂組成物の硬化物片(厚み:50μm、サンプル形状:ダンベル6号(測定部位幅:4mm、平行部分長さ:25mm))を用いて、ISO3384に準拠した引張-圧縮試験機(例えば、島津製作所製のオートグラフ(型式:AGS-X))を用いて、下記条件で伸張行程を行った後に復元行程を行い、下記算出方法によって応力緩和率R及び残留歪み率αを計算する。
【0036】
(伸張行程条件)
試験片をつかみ具に取り付けたときに発生するたわみを除去するために、たわみ補正を0.05N以下の力で行う。
試験速度:25mm/min、0~25%伸張まで
温度条件:23℃
伸張・保持条件:25%伸張で、保持時間5分
【0037】
(復元行程条件)
試験速度:0.1mm/min、引張力が0±0.05Nになるまで
温度条件:23℃
【0038】
応力緩和率算出方法:伸張行程終了時の引張力の測定を行い、これを初期引張力FA0とする。その後、上述の伸張・保持条件で歪量を保持し5分後に引張力を測定する。これをFA(t5)とする。応力緩和率Rは下記式によって計算する。
【0039】
【0040】
残留歪率算出方法:前記復元行程において、引張力が0±0.05Nとなった時点において、歪量の測定を行い、これを残留歪みαとする。
【0041】
さらに好ましい実施形態としては、前記伸張-復元試験において、最大伸張時(25%伸張時)に測定される応力値が最大応力値となる樹脂組成物であることが望ましい。それによって、材料の降伏現象が起こらず、より高い復元性を発現させることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の樹脂組成物は、前記伸張-復元試験において、伸張行程と復元行程とを、2回以上繰り返しても、上記各関係を満たす樹脂組成物であることが好ましい。それにより、より復元性に優れ、複数回の伸張によっても復元力を失わない樹脂組成物を得ることができる。そのような樹脂組成物であれば、例えば、フレキシブル表示装置などにおいて、屈曲耐性等にさらに優れると考えられる。
【0043】
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、さらに、以下の応力緩和性試験において、伸張行程終了と同時に測定を開始した場合に、伸張行程終了直後の引張力FB0と伸張行程終了後30分経過した時の引張力FB(t30)とが、以下の式:
0.1≦(FB(t30)/FB0)≦0.7
を満たす樹脂組成物であることが望ましい。
【0044】
このような特性を備える樹脂組成物を用いることにより、より応力緩和性に優れた樹絶縁層が得られるため非常に有用である。
【0045】
〔応力緩和性試験〕
樹脂組成物の硬化物片(厚み:50μm、サンプル形状:ダンベル6号(測定部位幅:4mm、平行部分長さ:25mm))を用いて、ISO3384に準拠した引張-圧縮試験機で、下記条件で伸張行程を行い、伸張終了時の引張力の測定を行い、これを初期引張力FB0とする。その後、30分後に引張力FB(t30)を測定する。
【0046】
(伸張行程条件)
試験片をつかみ具に取り付けたときに発生するたわみを除去するために、たわみ補正を行う。たわみ補正は、0.05N以下の力で行う。
試験速度:25mm/min、50%伸張まで
温度条件:23℃
伸張・保持条件:50%伸張で、保持時間30分
【0047】
なお、本実施形態で使用する樹脂組成物は、前記応力緩和性試験においても、伸張と保持とを、2回以上繰り返しても(すなわち、1回目試験終了後、任意の条件で元に復元させたサンプルで繰返し測定しても)上記各関係を満たすものであることが好ましい。
【0048】
本実施形態の絶縁層に使用する樹脂組成物は、上述のような特性を備えていれば、その組成について特に限定されるものではない。
【0049】
好ましくは、本実施形態の樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂およびその硬化剤を含む。さらに、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましく例示される。
【0050】
より具体的な実施形態の一つとして、例えば、ポリロタキサン(A)、熱硬化性樹脂(B)及び硬化剤(C)を含む樹脂組成物が挙げられる。以下に、各成分についてより具体的に説明する。
【0051】
ポリロタキサン(A)は、具体的には、例えば、特許第4482633号又は国際公開WO2015/052853号パンフレットに記載されているようなポリロタキサンが挙げられる。市販のものを使用してもよく、具体的には、アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製のセルムスーパーポリマーA1000等を使用することができる。
【0052】
次に、熱硬化性樹脂(B)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が特に制限なく挙げられるが、なかでもエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0053】
前記エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、状況に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記エポキシ樹脂として、より好ましくは、例えば、1つの分子中に2つ以上のエポキシ基を含み、かつ分子量が500以上であるエポキシ樹脂が好適に例示される。このようなエポキシ樹脂としては、市販のものを使用してもよく、例えば、JER1003(三菱化学製、分子量1300、2官能)、EXA-4816(DIC製、分子量824、2官能)、YP50(新日鉄住友金属化学製、分子量60000~80000、2官能)等が挙げられる。
【0055】
別のエポキシ樹脂の一例として、炭素数が2~3のアルキレンオキサイド変性された変性基を有し且つその変性基がエポキシ1mol分子中に4mol以上含まれること、2mol以上のエポキシ基を有すること、及びエポキシ当量が450eq/mol以上であるエポキシ樹脂である熱硬化性樹脂(B)と硬化剤(C)とを含むことによっても、その硬化物が、前記伸張性及び前記引張弾性率を有する樹脂組成物を得ることが可能である。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、プロピレンオキサイド付加型ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ADEKA製 EP4003S)、エチレンオキサイド付加型ヒドロキシフェニルフルオレン型エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル製 EG-280)等が挙げられる。
【0056】
ポリロタキサン(A)と熱硬化性樹脂(B)との、いずれか単独の成分と硬化剤(C)とを含む樹脂組成物としてもよいが、両方の成分((A)且つ(B))と硬化剤(C)とを含む樹脂組成物とすることが、その硬化物が、前記伸張性及び前記引張弾性率を有する樹脂組成物を得やすい点で好ましい。また、上述するようなエポキシ樹脂は1種類を単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。
【0057】
硬化剤(C)としては、熱硬化性樹脂(B)の硬化剤として働くものであれば、特に制限はない。特に、エポキシ樹脂の硬化剤として好ましく使用できるとしては、フェノール樹脂、アミン系化合物、酸無水物、イミダゾール系化合物、スルフィド樹脂、ジシアンジアミドなどが例として挙げられる。また、光・紫外線硬化剤、熱カチオン硬化剤なども使用できる。これらは、状況に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を含有してもよい。前記効果促進剤としては、例えば、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0058】
また、本実施形態の樹脂組成物が、ポリロタキサンを含む樹脂組成物である場合には、さらに架橋剤を添加してもよく、そのような架橋剤としては、前記ポリロタキサンの環状分子の少なくとも一部(ポリロタキサンの環状分子が有する少なくとも一つの反応基)と架橋する構造を作ることができるものであれば特に限定なく用いることができる。具体的には、例えば、イソシアネート、塩化シアヌル等が挙げられる。
【0059】
前記樹脂組成物中の各成分の割合は、本発明の効果を発揮し得る限り特に制限はないが、例えば(A)成分、(B)成分及び(C)成分を全て含む場合には、前記(A)~(C)成分の合計を100質量部として、ポリロタキサン(A)は10~80質量部、より好ましくは30~50質量部程度;熱硬化性樹脂(B)は10~89.9質量部、より好ましくは30~50質量部;硬化剤(C)は0.1~30質量部、より好ましくは0.1~20質量部程度である。なお、本実施形態の樹脂組成物が架橋剤としてイソシアネート樹脂を含む場合、イソシアネート樹脂はポリロタキサン(A)に対して、0~50質量部を添加することができ、さらには、10~40質量部添加することが好ましい。(B)成分及び(C)成分を含み、(A)成分を含まない場合には、樹脂組成物全量を100質量部として、熱硬化性樹脂(B)は50~99質量部、より好ましくは60~80質量部程度;硬化剤(C)は1~50質量部、より好ましくは1~40質量部程度である。
【0060】
さらに、本実施形態に係る前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤、例えば、硬化触媒(硬化促進剤)、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、着色剤等を必要に応じて含有してもよい。
【0061】
本実施形態の樹脂組成物の調製方法については、特に限定はなく、例えば、まずエポキシ樹脂、硬化剤、架橋剤、熱硬化性樹脂及び溶媒を均一になるように混合させて本実施形態の樹脂組成物を得ることができる。使用する溶媒に特に限定はなく、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン等を使用することができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、粘度を調整するための有機溶剤や、各種添加剤を配合してもよい。
【0062】
上述のようにして得られた樹脂組成物を加熱乾燥することによって、溶媒を蒸発させながら、硬化させ、絶縁層を得ることができる。
【0063】
樹脂組成物を加熱乾燥するための方法、装置、それらの条件については、従来と同様の各種手段、あるいはその改良された手段であってよい。具体的な加熱温度と時間は、使用する架橋剤や溶媒等によって適宜設定することができるが、例えば、50~200℃で60~180分間程度加熱乾燥することによって、前記樹脂組成物を硬化させることができる。
【0064】
このようにして得られた絶縁層(前記樹脂組成物等の硬化物である成形体)は、その一方の表面に配線(導電層)を安定的に形成するために表面処理をしてもよい。また、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、難燃剤、帯電防止剤など、その特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0065】
(金属配線部及び金属層)
本実施形態において、金属配線部及び金属層は、一般的な回路基板の配線やパッド部などを形成することに使用される各種金属箔や、金属インク、スパッタ等を特に限定なく使用することができる。
【0066】
金属箔としては、特に限定はなく、銅箔(メッキ)及びアルミニウム箔等が挙げられ、また、これらの金属箔はシランカップリング剤等で表面処理された金属箔であってもよい。
【0067】
このような金属箔を用いて配線やパッド部などを形成する場合は、上述した伸縮性絶縁層を一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層体を作製することができる。その後、金属箔をエッチング加工等して回路(配線)形成をすることによって、本実施形態の伸縮性絶縁層の表面に、回路として導体層(配線やパッドなど)を設けることができる。回路形成する方法としては、上記記載の方法以外に、例えば、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)やモディファイドセミアディティブ法(MSAP:Modified Semi Additive Process)による回路形成等が挙げられる。
【0068】
(導電性伸縮部)
本実施形態の導電性伸縮部としては、導電性と伸縮性を兼ね備えた部材であれば特に限定なく使用できるが、例えば、伸縮性を有する導電性組成物によって形成されていてもよく、例えば硬化物が伸縮性を有する樹脂組成物をバインダーとした導電ペーストを用いることができる。また、前記導電性伸縮部には、液体金属を用いることができる。
【0069】
本実施形態の導電性伸縮部は、Tgまたは軟化点が40℃以下であるか、あるいは、30℃での弾性率が1.0GPa未満であることをさらなる特徴として備える。
【0070】
導電性伸縮部のTgまたは軟化点が40℃を超える場合には、室温付近における弾性率が高くなるため常温における柔軟性が低下する。Tg又は軟化点の下限値について特に限定はなく、Tgまたは軟化点が低くなるほど室温における柔軟性や伸縮性は向上する。ただし、Tgまたは軟化点が-40℃を下回る場合にはタッキングのようなベタつきが発生しやすくなるため、導電性伸縮部のTgまたは軟化点は好ましくは-40℃以上であり、より好ましくは-30℃以上である。
【0071】
あるいは、30℃における弾性率が1.0GPa以上である場合には、伸縮時や変形時の内部応力が高くなり導電性伸縮部に導電性組成物を用いている場合、導電フィラーの破壊や導電フィラーと樹脂の界面での破壊が誘発されやすくなるため、伸縮時の導電性低下の原因となるおそれがある。30℃における弾性率の下限値についても特に限定はないが、形状の復元性という観点から、100kPa以上であることが好ましく、500kPa以上であることがより好ましい。
【0072】
以下に、本実施形態の伸縮性回路基板に使用できる、伸縮性のある導電性組成物の一例を具体的に示す。
【0073】
前記導電性組成物は、具体的には、伸縮性バインダーとなる樹脂(D)と、前記樹脂(D)と反応する硬化剤(E)と、導電性フィラー(F)とを含み、前記樹脂(D)は、官能基当量が400g/eq以上で10000g/eq以下である官能基を有し、且つ、前記樹脂(D)及び前記導電性組成物の硬化物は、そのガラス転移温度(Tg)又は軟化点が40℃以下、あるいは30℃での弾性率が1.0GPa未満であること、並びに、導電性フィラー(F)が、室温での固有体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下の導電物質からなる樹脂組成物等が挙げられる。また前記官能基としては、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、カルボニル基などが挙げられる。
【0074】
以下では、その各成分について説明する。
【0075】
樹脂(D)の分子構造の構成要素は、単一でもよいし、複数の種類を任意の割合で併用してもよい。樹脂(D)の分子構造が、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、及びニトリルのうちから選択される少なくとも1つを構成要素として含む分子構造であることが好ましい。具体例としては、エポキシ変性(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基変性(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基変性(メタ)アクリル酸エステル等が好ましく例示される。
【0076】
また、本実施形態において、樹脂(D)は重量平均分子量が5万以上であることが好ましい。それにより、本実施形態の導電性組成物を用いて導電パターンを印刷した場合等にニジミが発生しにくくなると考えられる。一方、重量平均分子量の上限値については特に限定はないが、分子量が300万を超える場合には粘度が高くなり取り扱い性が低下するおそれがあるため、樹脂(D)の重量平均分子量範囲として好ましくは5万以上300万以下、より好ましくは10万以上100万以下である。
【0077】
硬化剤(E)としては、上述したような樹脂(D)との反応性を有している限り、特に制限なく様々な硬化剤を用いることができる。硬化剤(E)の具体例としては、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、酸無水物系化合物、イソシアネート系化合物、メルカプト系化合物、オニウム塩、過酸化物等のラジカル発生剤、光酸発生剤等が挙げられる。
【0078】
導電性フィラー(F)は、室温での固有体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下である導電物質からなる。室温での固有体積抵抗率が1×10-4Ω・cmを超える材料を用いる場合、導電性組成物とした時に、その体積抵抗率は配合量にもよるが概ね1×10-3Ω・cm~1×10-2Ω・cmとなる。このため、回路にした場合、抵抗値が高くなり電力のロスが大きくなる。
【0079】
前記導電物質(室温での固有体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下である導電物質)としては、例えば、銀、銅、金等の金属元素から成る単体やこれらの元素を含む酸化物、窒化物、炭化物や合金といった化合物等が挙げられる。前記導電性組成物には、導電性フィラー(F)以外にも、導電性をより改善する目的で、導電性あるいは半導電性の導電助剤を加えることもできる。このような導電性あるいは半導電性の助剤としては、導電性高分子、イオン液体、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブや帯電防止剤に用いられる無機化合物等を用いることができ、1種類で使用しても2種類以上を同時に用いても構わない。
【0080】
導電性フィラー(F)は、その形状が扁平形状であることが好ましく、厚みと面内長手方向のアスペクト比が10以上であることが好ましい。前記アスペクト比が10以上である場合には、導電性フィラーの質量比に対する表面積が大きくなり導電性の効率が上がるだけでなく、樹脂成分との密着性もよくなり伸縮性が向上する効果もある。前記アスペクト比は1000以下であれば、より良好な導電性及び印刷性が確保できるという観点から、10以上1000以下であることが好ましく、20以上500以下であることがより好ましい。このようなアスペクト比を有する導電性フィラーの例としては、タップ法により測定したタップ密度で6.0g/cm3以下である導電性フィラーが挙げられる。さらに、タップ密度が2.0g/cm3以下である場合にはさらにアスペクト比が大きくなるためより好ましい。
【0081】
前記導電性組成物中の導電性フィラー(F)の配合割合については、前記導電性組成物全量に対し、導電性フィラー(F)の配合割合が質量比で40~95質量%であることが導電性、コスト、印刷性において好ましく、より好ましくは60~85質量%である。
【0082】
本実施形態の導電性フィラー(F)の粒子サイズに特に制限はないが、スクリーン印刷時の印刷性や配合物の混練において適度な粘度となるという観点から、レーザー光散乱方によって測定した平均粒径(体積累積50%における粒径;D50)が0.5μm以上、30μm以下であることが好ましく、1.5μm以上、20μm以下であることがより好ましい。
【0083】
さらに、本実施形態において導電性フィラー(F)は、表面をカップリング処理された導電性フィラーであることが好ましい。あるいは、本実施形態の樹脂組成物にカップリング剤を含有させてもよい。それにより、バインダー樹脂と導電性フィラーの密着性がより向上するという利点がある。
【0084】
導電性組成物に添加する、あるいは、導電性フィラーをカップリング処理するためのカップリング剤としては、フィラー表面に吸着またはフィラー表面と反応するものであれば特に制限なく用いることができ、具体的には、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミ系カップリング剤等が挙げられる。
【0085】
本実施形態においてカップリング剤を使用する場合、その添加量は、導電性組成物全体に対し、1質量%~20質量%程度とすることが好ましい。
【0086】
・配合比
前記導電性組成物中の各成分の割合は、本発明の効果を発揮し得る限り特に制限はなく、前記(F)樹脂:前記(G)硬化剤の配合割合は、樹脂と硬化剤の種類によって、当量比などを考慮して適宜決めることが可能である。
【0087】
前記導電性組成物には、上記成分以外にも、目的に応じて添加剤等を加えることができる。添加剤等については、例えばエラストマー、界面活性剤、分散剤、着色剤、芳香剤、可塑剤、pH調整剤、粘性調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤等が挙げられる。
【0088】
前記導電性組成物の調製方法については、前記導電性組成物を製造することができれば、特に限定されない。前記導電性組成物の調製方法としては、例えば、上述した樹脂成分と導電性フィラーと、必要に応じて硬化剤や分散剤等と、溶媒とを均一になるように混合・撹拌させて、前記導電性組成物を得る方法等が挙げられる。前記混合・攪拌の方法については特に限定はなく、自転-公転式ミキサーや3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。さらに真空脱泡を行ってもよい。
【0089】
本実施形態の液体金属は、例えばガリウム、インジウム、スズの常温で液体の合金等が用いられる。前記液体金属には、形状保持の観点から粘度調整のため無機フィラー等を添加してもよい。
【0090】
・導電性組成物または液体金属を使用した導電性伸縮部(架橋部)の形成
本実施形態の導電性組成物または液体金属を、上述したような伸縮性絶縁層、金属配線部または金属層上に塗布または印刷すること等によって、導電性組成物の塗膜を形成し、所望の箇所に導電性伸縮部(架橋部)を形成することができる。
【0091】
具体的には、以下のような工程によって前記伸縮性絶縁層、金属配線部または金属層上に架橋部などを形成することができる。すなわち、まず、本実施形態の導電性組成物または液体金属を前記伸縮性絶縁層、金属配線部または金属層上に塗布または印刷することで塗膜を形成し、乾燥により塗膜に含まれる揮発成分を除去する。その後の加熱や電子線、光照射といった硬化工程により、樹脂(D)と硬化剤(F)を硬化させる工程、並びに、カップリング剤と導電性フィラー(F)とを、及び、樹脂(D)と硬化剤(F)とを反応させる工程により、導電性伸縮部(架橋部)を形成することができる。前記硬化工程や反応工程における各条件は特に限定されず、樹脂、硬化剤、フィラー等の種類や所望の形態によって適宜設定すればよい。
【0092】
本実施形態の導電性組成物を塗布する工程は、特に限定されないが、例えば、アプリケーター、ワイヤーバー、コンマロール、グラビアロールなどのコーティング法やスクリーン、平板オフセット、フレキソ、インクジェット、スタンピング、ディスペンス、スキージなどを用いた印刷法を用いることができる。
【0093】
また、導電性伸縮部は、上述したように絶縁層内部に形成されていてもよく、その場合は、例えば、
図6に示すように、ドリルやレーザーで穴を開けて、当該穴に導電性組成物や液体金属を入れることができる。両面板の銅の外面から、反対側の銅の外面まで貫通した通路に導電性組成物を充填してもよいし、銅の外面から、反対側の銅の内面まで導電性組成物を充填してもよい。このようにすることによって、前記絶縁層内部に前記導電性伸縮部を形成することができる。
【0094】
本実施形態の伸縮性回路基板は、特に、柔軟かつ応力緩和性および復元性に優れ、伸縮性・屈曲性を兼ね備えているため、例えば、折り曲げ可能な電子ペーパー、有機ELディスプレイ、太陽電池、RFID、圧力センサ等に用いる電子材料として非常に好適である。そして、本実施形態の伸縮性回路基板は、伸縮によって生じる配線の破断や、伸縮に伴う導電抵抗の上昇、導電不良の発生を抑制できるため、産業利用上きわめて有用である。
【0095】
この出願は、2019年3月27日に出願された日本国特許出願特願2019-61651を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0096】
本発明を表現するために、前述において具体例や図面等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の伸縮性回路基板は、ウエラブルデバイス、パッチデバイスやフレキシブル表示装置等、光学分野、電子分野、接着分野、医療分野等の技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。