(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
B41J2/01
B41J2/01 107
B41J2/01 109
B41J2/01 213
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020030258
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日向 亮二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敬行
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英博
(72)【発明者】
【氏名】中川 亨
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109304872(CN,A)
【文献】特開2014-233962(JP,A)
【文献】特開2009-113395(JP,A)
【文献】特開2001-129985(JP,A)
【文献】特開2010-064479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの所定の印刷領域に液滴を吐出するインクジェット部と、
前記インクジェット部を前記ワークに対して主走査方向に相対的に移動させる主走査駆動機構と、
前記インクジェット部及び前記主走査駆動機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記インクジェット部には、所定のピッチで配置された複数のノズルを有するノズル列が、前記主走査方向に沿って複数列設けられており、
前記制御部は、
前記主走査方向の上流側のノズル列で液滴が吐出された位置に、下流側のノズル列を前記ワークに対して相対的に移動させ、該下流側のノズル列で液滴を吐出する第1動作と、
前記第1動作を、前記複数のノズル列について繰り返すことで、複数回に分けて液滴を吐出する第2動作と、
前記インクジェット部が前記印刷領域の端部に到達した場合に、該インクジェット部の前記ワークに対する相対的な移動を停止させる第3動作と、
前記第3動作の後、所定の回数に達するまで、前記複数のノズル列で液滴を吐出する第4動作とを行
い、
前記複数のノズル列は、前記主走査方向と交差する副走査方向にずれて配置され、
前記複数のノズル列のノズルは、前記主走査方向から見て、互いに重なり合わない位置に配置されており、
前記インクジェット部を前記ワークに対して前記副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動機構を備え、
前記制御部は、前記第4動作において、前記上流側のノズル列の前記副走査方向の位置が、下流側のノズル列の該副走査方向の位置と一致するように、前記副走査駆動機構の動作を制御する、印刷装置。
【請求項2】
請求項
1において、
前記複数のノズル列で吐出された液滴の吐出量のばらつきを計測する計測装置を備え、
前記制御部は、前記計測装置の計測結果に基づいて、前記インクジェット部の動作を制御する、印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記制御部は、
前記第4動作の後、前記印刷領域における前記副走査方向に余白部分がある場合に、前記印刷領域の前記主走査方向の端部に位置する前記インクジェット部を、前記印刷領域の前記余白部分の開始位置まで前記主走査方向及び前記副走査方向に相対的に移動させる動作と、
前記印刷領域の前記余白部分の開始位置において、移動前の前記主走査方向の上流側の前記ノズル列と、移動後の前記主走査方向の上流側の前記ノズル列と、の前記副走査方向のピッチを合わせる動作と、
前記第1動作から前記第4動作を繰り返すことで、前記主走査方向に沿って前記余白部分を印刷する動作と、
前記ワークにおける印刷済みの領域と、前記印刷領域における前記副走査方向の端部と、の間に余白部分がある場合に、前記複数のノズル列が前記副走査方向に並ぶように前記インクジェット部を回転させ、前記副走査方向に沿って前記余白部分を印刷する動作とを行う、印刷装置。
【請求項4】
ワークの所定の印刷領域に液滴を吐出するインクジェット部を、該ワークに対して主走査方向に相対的に移動させて印刷を行う印刷方法であって、
前記インクジェット部には、所定のピッチで配置された複数のノズルを有するノズル列が、前記主走査方向に沿って複数列設けられており、
前記複数のノズル列は、前記主走査方向と交差する副走査方向にずれて配置され、
前記複数のノズル列のノズルは、前記主走査方向から見て、互いに重なり合わない位置に配置されており、
前記主走査方向の上流側のノズル列で液滴が吐出された位置に、下流側のノズル列を前記ワークに対して相対的に移動させ、該下流側のノズル列で液滴を吐出する第1ステップと、
前記第1ステップを、前記複数のノズル列について繰り返すことで、複数回に分けて液滴を吐出する第2ステップと、
前記インクジェット部が前記印刷領域の端部に到達した場合に、該インクジェット部の前記ワークに対する相対的な移動を停止させる第3ステップと、
前記第3ステップの後、所定の回数に達するまで、前記複数のノズル列で液滴を吐出する第4ステップとを備え
、
前記第4ステップにおいて、前記上流側のノズル列の前記副走査方向の位置が、下流側のノズル列の該副走査方向の位置と一致するように、前記インクジェット部を前記ワークに対して前記副走査方向に相対的に移動させる、印刷方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第4ステップの後、前記印刷領域における前記副走査方向に余白部分がある場合に、前記印刷領域の前記主走査方向の端部に位置する前記インクジェット部を、前記印刷領域の前記余白部分の開始位置まで前記主走査方向及び前記副走査方向に相対的に移動させるステップと、
前記印刷領域の前記余白部分の開始位置において、移動前の前記主走査方向の上流側の前記ノズル列と、移動後の前記主走査方向の上流側の前記ノズル列と、の前記副走査方向のピッチを合わせるステップと、
前記第1ステップから前記第4ステップを繰り返すことで、前記主走査方向に沿って前記余白部分を印刷するステップと、
前記ワークにおける印刷済みの領域と、前記印刷領域における前記副走査方向の端部と、の間に余白部分がある場合に、前記複数のノズル列が前記副走査方向に並ぶように前記インクジェット部を回転させ、前記副走査方向に沿って前記余白部分を印刷するステップとを行う、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のノズル列毎に複数回に分けてインクを重ね塗りすることで、一つの画像に対するノズル列の特性バラツキの影響を平均化するようにしたインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発明では、ワークの形状によっては、記録ヘッドがワークに干渉してしまい、重ね塗りを行うことができないおそれがある。
【0005】
例えば、印刷面の一部が突出した段差部を有するワークにおいて、記録ヘッドをワークの印刷面に沿って段差部の手前まで移動させると、インクの重ね塗りを行う際に、記録ヘッドが段差部に干渉してしまう。
【0006】
そのため、実際には、記録ヘッドが段差部から離れた位置でインクの重ね塗りを終了させなければならず、ワークの印刷領域が狭くなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークの印刷領域の端部を精度良く印刷できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、ワークの所定の印刷領域に液滴を吐出するインクジェット部と、前記インクジェット部を前記ワークに対して主走査方向に相対的に移動させる主走査駆動機構と、前記インクジェット部及び前記主走査駆動機構の動作を制御する制御部と、を備え、前記インクジェット部には、所定のピッチで配置された複数のノズルを有するノズル列が、前記主走査方向に沿って複数列設けられており、前記制御部は、前記主走査方向の上流側のノズル列で液滴が吐出された位置に、下流側のノズル列を前記ワークに対して相対的に移動させ、該下流側のノズル列で液滴を吐出する第1動作と、前記第1動作を、前記複数のノズル列について繰り返すことで、複数回に分けて液滴を吐出する第2動作と、前記インクジェット部が前記印刷領域の端部に到達した場合に、該インクジェット部の前記ワークに対する相対的な移動を停止させる第3動作と、前記第3動作の後、所定の回数に達するまで、前記複数のノズル列で液滴を吐出する第4動作とを行う、印刷装置である。
【0009】
第1の発明では、第1動作において、主走査方向の上流側のノズル列で液滴が吐出された位置に、下流側のノズル列をワークに対して相対的に移動させて液滴を吐出する。第2動作において、複数のノズル列について第1動作を繰り返し、複数回に分けて液滴を吐出する。第3動作において、インクジェット部が印刷領域の端部に到達した場合に、インクジェット部のワークに対する相対的な移動を停止する。第3動作の後で、第4動作において、所定の回数に達するまで、複数のノズル列で液滴を吐出する。
【0010】
ここで、インクジェット部は、ワークの印刷領域の端部に到達するまでの間、複数のノズル列について複数回に分けて液滴を吐出することで、液滴の重ね塗りを行う。
【0011】
そして、インクジェット部は、ワークの印刷領域の端部に到達した場合に、ワークに対する相対的な移動を停止するとともに、所定の回数に達するまで、液滴の重ね塗りを行う。
【0012】
このように、インクジェット部を印刷領域の端部まで移動させた上で、所定の回数分の重ね塗りを行うことで、ワークの印刷領域の端部を精度良く印刷することができる。また、印刷領域の端部ギリギリの位置までインクジェット部を移動させることで、印刷領域を広く確保することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記複数のノズル列は、前記主走査方向と交差する副走査方向にずれて配置され、前記複数のノズル列のノズルは、前記主走査方向から見て、互いに重なり合わない位置に配置されている。
【0014】
第2の発明では、複数のノズル列を、副走査方向にずれて配置している。また、複数のノズル列のノズルを、主走査方向から見て、互いに重なり合わない位置に配置している。
【0015】
これにより、主走査方向に沿って印刷する際に、複数のノズル間のピッチが小さくなり、印刷解像度を高めることができる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、前記インクジェット部を前記ワークに対して前記副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動機構を備え、前記制御部は、前記第4動作において、前記上流側のノズル列の前記副走査方向の位置が、下流側のノズル列の該副走査方向の位置と一致するように、前記副走査駆動機構の動作を制御する。
【0017】
第3の発明では、第4動作において、上流側のノズル列の副走査方向の位置を、下流側のノズル列の副走査方向の位置と一致させるようにしている。
【0018】
これにより、ワークの印刷領域の端部において重ね塗りを行う際に、上流側のノズル列で塗られていない領域を、下流側のノズル列と同じ配置となるように副走査方向にずらしたノズル列で印刷することができる。
【0019】
第4の発明は、第1乃至3の発明のうち何れか1つにおいて、前記複数のノズル列で吐出された液滴の吐出量のばらつきを計測する計測装置を備え、前記制御部は、前記計測装置の計測結果に基づいて、前記インクジェット部の動作を制御する。
【0020】
第4の発明では、計測装置において、複数のノズル列で吐出された液滴の吐出量のばらつきが計測される。計測装置の計測結果に基づいて、インクジェット部の動作が制御される。
【0021】
例えば、複数のノズル列のうち、他のノズル列に比べて液滴の吐出量が少ないノズル列が検出された場合に、吐出量が少ないノズル列の吐出量を増やすように制御すればよい。これにより、複数のノズル列毎の吐出量のばらつきを抑えることができる。
【0022】
ここで、計測装置は、例えば、レーザ顕微鏡や白色干渉計、カメラなどで構成される。計測装置では、ノズルから吐出されて飛翔中の液滴をカメラで撮像して体積を計測する。または、着弾した液滴の外径、着弾した液滴の体積を、レーザ顕微鏡や白色干渉計で計測する。
【0023】
なお、計測装置による計測は、印刷装置の製品出荷時、定期的なメンテナンス時、インクの交換時などに行うようにすればよい。
【0024】
第5の発明は、ワークの所定の印刷領域に液滴を吐出するインクジェット部を、該ワークに対して主走査方向に相対的に移動させて印刷を行う印刷方法であって、前記インクジェット部には、所定のピッチで配置された複数のノズルを有するノズル列が、前記主走査方向に沿って複数列設けられており、前記主走査方向の上流側のノズル列で液滴が吐出された位置に、下流側のノズル列を前記ワークに対して相対的に移動させ、該下流側のノズル列で液滴を吐出する第1ステップと、前記第1ステップを、前記複数のノズル列について繰り返すことで、複数回に分けて液滴を吐出する第2ステップと、前記インクジェット部が前記印刷領域の端部に到達した場合に、該インクジェット部の前記ワークに対する相対的な移動を停止させる第3ステップと、前記第3ステップの後、所定の回数に達するまで、前記複数のノズル列で液滴を吐出する第4ステップとを備えている。
【0025】
第5の発明では、第1ステップにおいて、主走査方向の上流側のノズル列で液滴が吐出された位置に、下流側のノズル列をワークに対して相対的に移動させて液滴を吐出する。第2ステップにおいて、複数のノズル列について第1ステップを繰り返し、複数回に分けて液滴を吐出する。第3ステップにおいて、インクジェット部が印刷領域の端部に到達した場合に、インクジェット部のワークに対する相対的な移動を停止する。第3ステップの後で、第4ステップにおいて、所定の回数に達するまで、複数のノズル列で液滴を吐出する。
【0026】
このように、インクジェット部を印刷領域の端部まで移動させた上で、所定の回数分の重ね塗りを行うことで、ワークの印刷領域の端部を精度良く印刷することができる。また、印刷領域の端部ギリギリの位置までインクジェット部を移動させることで、印刷領域を広く確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ワークの印刷領域の端部を精度良く印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係る印刷装置の概略構成を示す正面図である。
【
図4】インクジェット部の構成を示す平面図である。
【
図5】インクジェット部の別の構成を示す平面図である。
【
図6】インクジェット部の別の構成を示す平面図である。
【
図7】印刷開始前のワークに対するインクジェット部の位置を示す側面図である。
【
図8】印刷開始前のワークに対するインクジェット部の位置を示す平面図である。
【
図9】第1ノズル列で液滴を吐出した位置に、第2ノズル列を移動させた状態を示す平面図である。
【
図10】第2ノズル列で液滴を吐出した位置に、第3ノズル列を移動させた状態を示す平面図である。
【
図11】第3ノズル列で液滴を吐出した位置に、第4ノズル列を移動させた状態を示す平面図である。
【
図12】第4ノズル列で液滴を吐出した位置で、重ね塗りが終了した状態を示す平面図である。
【
図13】印刷領域の端部にインクジェット部が到達したときの側面図である。
【
図14】印刷領域の端部にインクジェット部が到達したときの平面図である。
【
図15】第1ノズル列の副走査方向の位置を、第2ノズル列の副走査方向の位置に変更したときの平面図である。
【
図16】第1ノズル列の副走査方向の位置を、第3ノズル列の副走査方向の位置に変更したときの平面図である。
【
図17】第1ノズル列の副走査方向の位置を、第4ノズル列の副走査方向の位置に変更したときの平面図である。
【
図18】所定の印刷幅の印刷が終了した状態を示す平面図である。
【
図19】副走査方向に段差部を有するワークに対して印刷を行うときの手順を示す平面図である。
【
図20】主走査方向の印刷が終了した状態を示す平面図である。
【
図21】副走査方向の印刷領域の端部を印刷する手順を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1~
図3に示すように、印刷装置1は、ワーク50に対して液滴を吐出して所定の画像を印刷するものである。ワーク50は、例えば、樹脂成形品で構成されている。ワーク50は、平面部51と、段差部52とを有する。段差部52は、平面部51の一部が上方に湾曲状に突出することで形成されている。
【0031】
印刷装置1は、印刷ユニット10と、ワーク駆動ユニット30と、制御部15とを備えている。印刷装置1は、架台2と、架台2から立設した門型のガントリー3とを有する。架台2には、ワーク駆動ユニット30が設けられている。ガントリー3には、印刷ユニット10が設けられている。
【0032】
印刷装置1は、後述する計測装置18を備えている。計測装置18は、制御部15に接続されている。
【0033】
印刷装置1は、後述する計測装置18を備えている。計測装置18は、制御部15に接続されている。なお、計測装置18として、カメラ、レーザ顕微鏡、白色干渉計などをヘッドの横のX軸(印刷ユニット10)に乗せておいてもよい。または、印刷ユニット10とは別のX軸、例えば、
図1の裏面側に図示しないX軸を設けて乗せておいてもよい。
【0034】
〈印刷ユニット〉
印刷ユニット10は、ワーク50の印刷面よりも上方に配置されている。印刷ユニット10は、3軸の駆動機構と、インクジェット部20とを有する。3軸の駆動機構は、X軸直動機構11(主走査駆動機構)と、C’軸回転機構38と、Y’軸直動機構13(副走査駆動機構)とを有する。制御部15は、X軸直動機構11、C’軸回転機構38、Y’軸直動機構13、及びインクジェット部20の動作を制御する。
【0035】
X軸直動機構11は、ガントリー3に取り付けられている。C’軸回転機構38は、X軸直動機構11に取り付けられている。Y’軸直動機構13は、C’軸回転機構38に取り付けられている。インクジェット部20は、Y’軸直動機構13を介してX軸直動機構11に取り付けられている。
【0036】
C’軸回転機構38は、上下方向に延びるC’軸を中心にインクジェット部20のヘッド部25を水平方向に回転させる。Y’軸直動機構13は、インクジェット部20を副走査方向に移動させる。
【0037】
インクジェット部20は、X軸直動機構11によって、主走査方向(
図1で左右方向)に移動する。インクジェット部20は、主走査方向に移動しながらワーク50の所定の印刷領域に向かって液滴28を吐出することで、ワーク50の表面に画像を印刷する。
【0038】
このとき、ワーク駆動ユニット30によって、インクジェット部20に対してワーク50を相対移動させることで、主走査方向に直交する副走査方向(
図2で左右方向)にも画像を印刷することができる。
【0039】
図4に示すように、インクジェット部20は、ヘッド部25を有する。ヘッド部25には、印刷方向の上流側から順に、第1ノズル列21、第2ノズル列22、第3ノズル列23、及び第4ノズル列24が設けられている。
【0040】
第1ノズル列21~第4ノズル列24は、副走査方向に沿って1列に並ぶ複数のノズル26を有する。ここで、隣接するノズル26間のピッチPは、例えば、150~1200dpiに設定されている。
【0041】
第1ノズル列21~第4ノズル列24は、副走査方向にずれて配置されている。ここで、第1ノズル列21~第4ノズル列24のノズル26は、主走査方向から見て、互いに重なり合わない位置に配置されている。
【0042】
例えば、
図4に示す例では、第1ノズル列21の一番上のノズル26を基準とした場合、第2ノズル列22は、第1ノズル列21に対してP/2だけ下側にずれて配置されている。
【0043】
第3ノズル列23は、第1ノズル列21に対して、P/4ピッチ下側にずれて配置されている。
【0044】
第4ノズル列24は、第1ノズル列21に対して、P・(3/4)だけ下側にずれて配置されている。
【0045】
これにより、主走査方向から見たときの複数のノズル26間のピッチ(P/4)が、各ノズル列のピッチPよりも小さくなり、印刷解像度を高めることができる。
【0046】
インクジェット部20は、ピエゾ方式であり、制御部15から供給される駆動信号に応じて、ノズル26から鉛直下方に向かって、所定量の液滴28を吐出する。
【0047】
なお、
図4に示すインクジェット部20では、1つのヘッド部25が設けられているが、複数のヘッド部25が設けられていてもよい。
【0048】
例えば、
図5に示すように、インクジェット部20を、第1ノズル列21及び第2ノズル列22を有するヘッド部25と、第3ノズル列23及び第4ノズル列24を有するヘッド部25とを備えた構成としてもよい。この場合、2つのヘッド部25に対して、2つのY’軸直動機構13を設け、2つのヘッド部25を副走査方向に別々に移動可能とすればよい。
【0049】
また、
図6に示すように、インクジェット部20を、第1ノズル列21、第2ノズル列22、第3ノズル列23、第4ノズル列24をそれぞれ有する4つのヘッド部25を備えた構成としてもよい。この場合、4つのヘッド部25に対して4つのY’軸直動機構13を設け、4つのヘッド部25を副走査方向に別々に移動可能とすればよい。
【0050】
〈計測装置〉
図1に示すように、印刷装置1は、計測装置18を備えている。計測装置18は、第1ノズル列21~第4ノズル列24で吐出された液滴28の吐出量のばらつきを計測する。
【0051】
計測装置18は、例えば、レーザ顕微鏡や白色干渉計、カメラなどで構成される。計測装置18では、ノズル26から吐出されて飛翔中の液滴28をカメラで撮像して体積を計測する。または、着弾した液滴28の外径、着弾した液滴28の体積を、レーザ顕微鏡や白色干渉計で計測する。
【0052】
制御部15は、計測装置18の計測結果に基づいて、インクジェット部20の動作を制御する。例えば、第1ノズル列21~第4ノズル列24のうち、他のノズル列に比べて液滴28の吐出量が少ないノズル列が検出された場合に、吐出量が少ないノズル列の吐出量を増やすように駆動信号を制御すればよい。これにより、第1ノズル列21~第4ノズル列24の吐出量を均一にして、ばらつきを抑えることができる。
【0053】
なお、計測装置18による計測は、印刷装置1の製品出荷時、定期的なメンテナンス時、インクの交換時などに行うようにすればよい。
【0054】
〈ワーク駆動ユニット〉
図1~
図3に示すように、ワーク駆動ユニット30の先端には、固定治具40が取り付けられている。固定治具40には、ワーク50が固定されている。ワーク駆動ユニット30は、固定治具40に固定されたワーク50を、印刷ユニット10の下方に搬送する。
【0055】
ワーク駆動ユニット30は、5軸の駆動機構を有する。5軸の駆動機構のうち2軸は、Y軸直動機構31及びZ軸直動機構32である。5軸の駆動機構のうち3軸は、A軸回転機構35、B軸回転機構36、及びC軸回転機構37である。
【0056】
Y軸直動機構31は、架台2に載置されている。Y軸直動機構31は、ワーク50を副走査方向に移動させる。
【0057】
Z軸直動機構32は、Y軸直動機構31に取り付けられている。Z軸直動機構32は、ワーク50を上下方向に移動させる。
【0058】
A軸回転機構35は、Z軸直動機構32に取り付けられている。A軸回転機構35は、X方向に延びるA軸を中心にワーク50を旋回させる。
【0059】
B軸回転機構36は、上方が開口した箱状の保持体42を介してA軸回転機構35に取り付けられている。B軸回転機構36は、Y方向に延びるB軸を中心にワーク50を旋回させる。
【0060】
C軸回転機構37は、支持アーム41を介してB軸回転機構36に取り付けられている。C軸回転機構37には、固定治具40が取り付けられている。C軸回転機構37は、Z方向に延びるC軸を中心にワーク50を旋回させる。
【0061】
ワーク駆動ユニット30は、Y軸直動機構31、Z軸直動機構32、A軸回転機構35、B軸回転機構36、及びC軸回転機構37を動作させることで、インクジェット部20の下方にワーク50を移動させる。このとき、ワーク駆動ユニット30によって、ワーク50の位置及び姿勢が調整される。
【0062】
〈制御部〉
図1に示すように、制御部15は、例えば、パソコンやPLC(Programmable Logic Controller)で構成されている。制御部15は、印刷ユニット10及びワーク駆動ユニット30の動作を制御する。
【0063】
制御部15は、印刷ユニット10に対して、X軸直動機構11、Y’軸直動機構13、及びC’軸回転機構38を動作させるための制御や、ヘッド部25から液滴28を吐出させるための制御を行う。
【0064】
制御部15は、ワーク駆動ユニット30に対して、Y軸直動機構31、Z軸直動機構32、A軸回転機構35、B軸回転機構36、及びC軸回転機構37を動作させるための制御を行う。
【0065】
制御部15は、印刷ユニット10及びワーク駆動ユニット30の動作を制御することで、インクジェット部20のノズル26とワーク50の表面との距離が略一定となるように、ワーク50の姿勢と向きを調整する。
【0066】
〈ワークの印刷動作〉
以下、ワーク50の所定の印刷領域を印刷する動作について説明する。
図7及び
図8に示すように、インクジェット部20のヘッド部25をワーク50の印刷面に対向させる。
【0067】
図8では、ヘッド部25の第1ノズル列21を、ワーク50の平面部51の左端部に位置付けている。第1ノズル列21のノズル26は、ワーク50に対して液滴28を吐出する。
【0068】
図9に示すように、第1ノズル列21のノズル26で印刷された画像には、「1」と表示している。制御部15は、主走査方向の上流側のノズル列で液滴28が吐出された位置に、下流側のノズル列をワーク50に対して相対的に移動させ、下流側のノズル列で液滴28を吐出する第1動作を行う。
【0069】
具体的に、第1ノズル列21で液滴28が吐出された位置に、下流側のノズル列である第2ノズル列22をワーク50に対して相対的に移動させる。第2ノズル列22のノズル26は、ワーク50に対して液滴28を吐出する。
【0070】
図10に示すように、第2ノズル列22のノズル26で印刷された画像には、「2」と表示している。主走査方向の上流側のノズル列である第2ノズル列22で液滴28が吐出された位置に、下流側のノズル列である第3ノズル列23をワーク50に対して相対的に移動させる。第3ノズル列23のノズル26は、ワーク50に対して液滴28を吐出する。
【0071】
図11に示すように、第3ノズル列23のノズル26で印刷された画像には、「3」と表示している。主走査方向の上流側のノズル列である第3ノズル列23で液滴28が吐出された位置に、下流側のノズル列である第4ノズル列24をワーク50に対して相対的に移動させる。第4ノズル列24のノズル26は、ワーク50に対して液滴28を吐出する。
【0072】
図12に示すように、第4ノズル列24のノズル26で印刷された画像には、「4」と表示している。制御部15は、上述した第1動作を、複数のノズル列について繰り返すことで、複数回に分けて液滴28を吐出する第2動作を行う。これにより、ワーク50の左端部の1列において、重ね塗りが終了する。
【0073】
制御部15は、インクジェット部20がワーク50の印刷領域の右端部に到達するまでの間、第1動作及び第2動作を繰り返す。
【0074】
〈印刷領域の端部における印刷動作〉
図13及び
図14に示すように、ワーク50の右端部には、平面部51の一部が上方に湾曲状に突出した段差部52が設けられている。そのため、インクジェット部20をワーク50の平面部51に沿って相対的に移動させ続けると、段差部52に衝突することとなる。
【0075】
そこで、制御部15は、インクジェット部20が印刷領域の端部に到達した場合に、インクジェット部20のワーク50に対する相対的な移動を停止させる第3動作を行う。
【0076】
制御部15は、第3動作の後、所定の回数に達するまで、複数のノズル列で液滴28を吐出する第4動作を行う。
図14では、制御部15は、第1ノズル列21~第4ノズル列24のノズル26からワーク50に対して液滴28を吐出させる。
【0077】
図15に示すように、制御部15は、第4動作において、上流側のノズル列の副走査方向の位置が、下流側のノズル列の副走査方向の位置と一致するように、Y’軸直動機構13の動作を制御する。具体的に、制御部15は、第1ノズル列21の副走査方向の位置が、第2ノズル列22の副走査方向と一致するように、Y’軸直動機構13の動作を制御する。
【0078】
図15に示す例では、ワーク50において、第1ノズル列21及び第3ノズル列23のノズル26に対応する位置が余白部分である。一方、ワーク50において、第2ノズル列22及び第4ノズル列24のノズル26に対応する位置が印刷済みの部分である。制御部15は、第1ノズル列21及び第3ノズル列23からワーク50に対して液滴28を吐出させる。
【0079】
図16に示すように、制御部15は、第1ノズル列21の副走査方向の位置が、第3ノズル列23の副走査方向と一致するように、Y’軸直動機構13の動作を制御する。
【0080】
図16に示す例では、ワーク50において、第1ノズル列21及び第2ノズル列22のノズル26に対応する位置が余白部分である。一方、ワーク50において、第3ノズル列23及び第4ノズル列24のノズル26に対応する位置が印刷済みの部分である。制御部15は、第1ノズル列21及び第2ノズル列22からワーク50に対して液滴28を吐出させる。
【0081】
図17に示すように、制御部15は、第1ノズル列21の副走査方向の位置が、第4ノズル列24の副走査方向と一致するように、Y’軸直動機構13の動作を制御する。
【0082】
図17に示す例では、ワーク50において、第1ノズル列21のノズル26に対応する位置が余白部分である。一方、ワーク50において、第2ノズル列22、第3ノズル列23、及び第4ノズル列24のノズル26に対応する位置が印刷済みの部分である。制御部15は、第1ノズル列21からワーク50に対して液滴28を吐出させる。
【0083】
このように、インクジェット部20を印刷領域の端部まで移動させた上で、所定の回数分の重ね塗りを行うことで、ワーク50の印刷領域の端部を精度良く印刷することができる(
図18参照)。また、印刷領域の端部ギリギリの位置までインクジェット部20を移動させることで、印刷領域を広く確保することができる。
【0084】
また、ワーク50の印刷領域の端部において重ね塗りを行う際に、上流側のノズル列で塗られていない領域を、下流側のノズル列と同じ配置となるように副走査方向にずらしたノズル列で印刷することができる。
【0085】
〈副走査方向に段差部を有するワークの印刷動作〉
以下、主走査方向及び副走査方向の両方に段差部52を有するワーク50の所定の印刷領域を印刷する動作について説明する。
【0086】
図19に示すように、ワーク50の右端部及び下端部には、平面部51の一部が上方に湾曲状に突出した段差部52がそれぞれ設けられている。ワーク50の印刷領域の主走査方向の端部における印刷動作は、上述した動作と同じである。
【0087】
図19に示す例では、ワーク50における印刷済みの領域と、ワーク50の下端部の段差部52との間に余白があるため、余白部分についても印刷する必要がある。
【0088】
制御部15は、インクジェット部20を主走査方向及び副走査方向に相対的に移動させ、ワーク50の印刷領域の左端部に第1ノズル列21を対向させる。
【0089】
このとき、移動前の第1ノズル列21のノズル26と、印刷領域の左端部に移動させた後の第1ノズル列21のノズル26とのピッチがPとなるように、ヘッド部25の位置を設定する。
【0090】
具体的に、ヘッド部25を、ワーク50の下端部の段差部52の手前側ギリギリの位置まで移動させると、移動前の第1ノズル列21のノズル26と、移動後の第1ノズル列21のノズル26とのピッチがPとならない場合がある。
【0091】
この場合、ワーク50の余白部分を印刷する際に、印刷済みの部分と新たに印刷する部分との境界位置で、液滴28が重ね塗りされてしまい、境界位置の画像の濃淡にばらつきが生じ、画像品質が劣化するおそがある。
【0092】
これに対し、移動前の第1ノズル列21のノズル26と、移動後の第1ノズル列21とのピッチがPとなるように設定することで、高品質な画像を得ることができる。
【0093】
第1ノズル列21の副走査方向のピッチPを合わせた後、制御部15は、上述した第1動作から第4動作を繰り返すことで、余白部分を印刷する(
図20参照)。
【0094】
その後、
図21に示すように、制御部15は、ヘッド部25を90°回転させる。制御部15は、第1動作~第4動作を行うことで、ワーク50における印刷済みの領域と、ワーク50の下端部の段差部52との間の余白部分を印刷する。
【0095】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0096】
本実施形態では、ワーク50は、平面部51の一部が上方に突出した段差部52を有する構成とし、段差部52の手前側を印刷領域の端部に設定しているが、この形態に限定するものではない。
【0097】
例えば、湾曲状に窪んだ凹面を有するワーク50についても、同様の印刷を行うことができる。この場合、凹面の曲率が大きい部分で、インクジェット部20が凹面に干渉するおそれがある。そこで、凹面の曲率の大きい部分の手前側を印刷領域の端部に設定すればよい。
【0098】
また、平坦状のワーク50において、ワーク50の全面に印刷するのではなく、ワーク50の所定範囲にのみ印刷する場合についても、同様の印刷を行うことができる。この場合、ワーク50表面の所定範囲の端部を印刷領域の端部に設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明は、ワークの印刷領域の端部を精度良く印刷することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0100】
1 印刷装置
11 X軸直動機構(主走査駆動機構)
13 Y’軸直動機構(副走査駆動機構)
15 制御部
18 計測装置
20 インクジェット部
21 第1ノズル列
22 第2ノズル列
23 第3ノズル列
24 第4ノズル列
26 ノズル
28 液滴
50 ワーク