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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
B25F5/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020041138
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021142584
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 直生
(72)【発明者】
【氏名】武藤 元治
(72)【発明者】
【氏名】百枝 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 孝太
(72)【発明者】
【氏名】岡本 景太
(72)【発明者】
【氏名】無類井 格
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-274195(JP,A)
【文献】特開2018-047530(JP,A)
【文献】特開2017-056537(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073107(WO,A1)
【文献】特開2019-076994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
電池を備える電池パックが電気的に接続される電池パック接続部と、
前記モータの出力によって工具を駆動する駆動部と、
前記モータ及び前記駆動部を収容するハウジングと、
前記電池パック接続部から前記モータへの電力供給路の少なくとも一部を構成する一対の電線が束ねられた結束部と、
前記モータの回転を制御するための操作を受け付けるトリガスイッチと、を備え、
前記一対の電線の一方は、
前記モータの駆動回路基板と前記トリガスイッチとの間を接続する第1電力線と、
前記電池パック接続部と前記トリガスイッチとの間を接続する第2電力線と、を含み、
前記結束部では、前記第1電力線と前記第2電力線との少なくとも一方が、前記一対の電線の他方と束ねられている、
電動工具。
【請求項2】
前記結束部では、前記第1電力線と前記第2電力線とのうち少なくとも前記第2電力線が、前記一対の電線の他方と束ねられている、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記第2電力線が前記一対の電線の他方と束ねられており、
前記結束部の少なくとも一部は、前記第2電力線の中点と、前記トリガスイッチと、の間において形成されている、
請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記第1電力線が前記一対の電線の他方と束ねられており、前記結束部の少なくとも一部は、前記第1電力線の中点と、前記トリガスイッチと、の間において形成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記結束部は、前記一対の電線間の閉曲面の面積を小さくするように前記一対の電線を束ねる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記結束部は、前記一対の電線をツイストすることで形成される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項7】
前記結束部は、一対の電線を物理的に束ねる結束部材を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項8】
制御信号を伝送する信号線は、前記一対の電線によって形成される閉曲面の外側に配置される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電動工具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電動工具に関し、より詳細には配線構造を有する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリを備えた電動工具が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の電動工具は、モータ部と、モータ部に電力を供給するバッテリと、モータ部を稼働させるトリガスイッチと、モータ部の回転を制御する基板と、基板及びモータ部に接続されるフラットケーブルと、ターミナルとトリガスイッチ部を接続する電源線を有する。電動工具は、フラットケーブルに穴部を設け、穴部に電源線を貫通させることによってフラットケーブルと電源線を交差させている。フラットケーブルは、フィルム状の絶縁体に複数本の導線が形成されたものであって、絶縁体に複数本の導線が形成されたものであって、絶縁体に電源線を貫通させるための穴部が形成され、導線は穴部を避けて形成されるようにした。
【0004】
特許文献1の電動工具は、バッテリをハンドル部の内部にまで収容する電動工具において、制御回路基板から他の基板への配線を効率よく行い、コンパクトな電動工具となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-157932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている電動工具において、高速スイッチングを行うと、電流の大きな電動工具ではノイズが発生し、十分な性能が発揮できない可能性があった。
【0007】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、ノイズに対する耐性の高い電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る電動工具は、モータと、電池パック接続部と、駆動部と、ハウジングと、結束部と、トリガスイッチと、を備える。前記電池パック接続部は、電池を備える電池パックが電気的に接続される。前記駆動部は、前記モータの出力によって工具を駆動する。前記ハウジングは、前記モータ及び前記駆動部を収容する。前記結束部では、前記電池パック接続部から前記モータへの電力供給路の少なくとも一部を構成する一対の電線が束ねられている。前記トリガスイッチは、前記モータの回転を制御するための操作を受け付ける。前記一対の電線の一方は、前記モータの駆動回路基板と前記トリガスイッチとの間を接続する第1電力線と、前記電池パック接続部と前記トリガスイッチとの間を接続する第2電力線と、を含む。前記結束部では、前記第1電力線と前記第2電力線との少なくとも一方が、前記一対の電線の他方と束ねられている
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、ノイズに対する耐性の高い電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る電動工具の内部を表す模式的な説明図である。
図2図2は、同上の電動工具の模式的な説明図である。
図3図3は、同上の電動工具のトリガスイッチ付近を拡大した模式的な説明図である。
図4図4は、比較例の電動工具の内部を表す模式的な説明図である。
図5図5は、実施形態1に係る電動工具のモータ性能線図である。
図6図6は、実施形態1の変形例に係る電動工具のトリガスイッチ付近を拡大した模式的な説明図である。
図7図7Aは、実施形態2に係る電動工具のツイストされた結束部と信号線の配置を示す模式的な説明図である。図7Bは、実施形態2の変形例に係る電動工具の模式的な説明図である。
図8図8は、実施形態3に係る電動工具の内部を示す模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する各実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、各実施形態及び変形例に限定されない。これらの実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
(実施形態1)
以下、本実施形態に係る電動工具について、図1図5を用いて説明する。
【0013】
本実施形態に係る電動工具1(図2参照)は、例えば、工場又は建築現場等で使用される工具である。ここでは一例として、電動工具1は、作業対象(ボルト又はねじ等の締結部材)を締め付けるために使用されるインパクトドライバであることを想定して説明する。ただし、電動工具1の種類は、特に限定されず、ドリルドライバ又はインパクトレンチ等でもよい。
【0014】
(1)概要
本実施形態1の電動工具1について、図2に基づいて説明する。図2では電動工具の内部の電力線の表示については省略している。電動工具1は、図2に示すように、モータ15(例えば3相交流式モータ)と、トリガスイッチ29と、制御部4と、駆動部30と、ハウジング9と、を備える。また、電動工具1は、トルク測定部26と、ビット回転測定部25と、モータ回転測定部27と、電源部32(電池パック)と、電池パック接続部47と、を更に備える。
【0015】
モータ15は、先端工具を駆動する駆動源である。モータ15は、永久磁石を有する回転子と、コイルを有する固定子と、を含んでいる。回転子は、回転動力を出力する出力軸16を含む。永久磁石とコイルとの電磁的相互作用により、回転子は、固定子に対して回転する。
【0016】
モータ15は、例えば、ブラシレスモータである。本実施形態のモータ15は、同期電動機であり、より詳細には、永久磁石同期電動機(PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor))である。
【0017】
トリガスイッチ29は、モータ15の回転を制御するための操作を受け付ける。
【0018】
制御部4は、トリガスイッチ29を引く操作の引込み量に応じて、モータ15を回転又は停止させ、また、モータ15の回転速度を制御する。この電動工具1では、先端工具がチャック23に取り付けられる。そしてトリガスイッチ29への操作によってモータ15の回転速度が制御されることで、先端工具の回転速度が制御される。
【0019】
駆動部30は、モータ15の出力によって工具を駆動する。駆動部30は、駆動力伝達機構18、駆動軸22、及びインパクト機構17を備える。
【0020】
駆動力伝達機構18は、モータ15によって駆動される。駆動力伝達機構18は、モータ15の回転動力を調整して所望のトルクを出力する。
【0021】
駆動軸22は、モータ15によって回転駆動される。駆動軸22は、駆動力伝達機構18と接続している。また、図2に示すように、駆動軸22は、インパクト機構17に接続している。駆動軸22は、駆動力伝達機構18から出力された回転動力をインパクト機構17に伝達する。
【0022】
インパクト機構17は、駆動力伝達機構18及び駆動軸22を介して受け取ったモータ15の回転動力をパルス状のトルクに変換してインパクト力を発生する。インパクト機構17は、ハンマ19と、アンビル20と、出力軸21と、ばね24と、を備えている。ハンマ19は、駆動軸22にカム機構を介して取り付けられている。アンビル20はハンマ19に結合されており、ハンマ19と一体に回転する。ばね24には駆動軸22が挿入されている。ばね24の一端は駆動力伝達機構18に接続され、ばね24の他端はハンマ19に接続されており、ばね24はハンマ19をアンビル20側に押している。アンビル20は、出力軸21と一体に形成されている。なお、アンビル20は、出力軸21とは別体に形成されて出力軸21に固定されていてもよい。
【0023】
出力軸21に規定の大きさ以上の負荷がかかっていないときには、カム機構により連結された駆動軸22とハンマ19とが一体に回転し、さらにハンマ19とアンビル20とが一体に回転するので、アンビル20と一体に形成された出力軸21が回転する。一方で、出力軸21に規定の大きさ以上の負荷がかかった時には、ハンマ19がカム機構による規制を受けながらばね24に抗して後退する(つまり、アンビル20から離れる)。そして、ハンマ19とアンビル20との結合が外れた時点で、ハンマ19は回転しながら前進してアンビル20に回転方向の打撃衝撃を与え、出力軸21を回転させる。
【0024】
電動工具1は、チャック23を備えているため、先端工具を用途に応じて交換可能であるが、先端工具が交換可能であることは必須ではない。例えば、電動工具1は、特定の先端工具のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0025】
先端工具(ビット)は、例えば、ドライバ、ソケット又はドリル等である。各種の先端工具のうち、用途に応じた先端工具が、チャック23に取り付けられる。
【0026】
トルク測定部26は、モータ15の動作トルクを測定する。トルク測定部26は、例えば、ねじり歪みの検出が可能な磁歪式歪センサである。磁歪式歪センサは、モータ15の出力軸16にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を、モータ15の非回転部分に設置したコイルで検出し、歪みに比例した電圧信号を出力する。
【0027】
ビット回転測定部25は、出力軸21の回転角を測定する。ここでは、出力軸21の回転角は、先端工具(ビット)の回転角に等しい。ビット回転測定部25としては、例えば、光電式エンコーダ又は磁気式エンコーダを採用することができる。
【0028】
モータ回転測定部27は、モータ15の回転角を測定する。モータ回転測定部27としては、例えば、光電式エンコーダ又は磁気式エンコーダを採用することができる。
【0029】
電源部32は、モータ15へ電力供給する1又は複数の電池320(例えば2次電池)を含んだ、いわゆる電池パックである。電源部32は、例えば、電動工具1の器体における把持部9bの下方に取り外し可能に装着される。1又は複数の電池320は、ニッケルカドミウム電池、リチウムイオン電池等である。
【0030】
ハウジング9は、図1に示すように、胴体部9aと、把持部9bと、電池収納部9cと、を有している。胴体部9aは、少なくともモータ15と、駆動部30と、を収容する。把持部9bは、ユーザが電動工具1を把持する部分である。電池収納部9cは、1又は複数の電池320を含む電源部32を収納する。電池収納部9cでは、電源部32が着脱可能に装着される。電池収納部9cでは、電池パック接続部47が設けられている。
【0031】
電池パック接続部47は、電源部32と電気的に接続されている。
【0032】
(2)構成
本実施形態に係る全体構成について、図1図5を参照しながら詳しく説明する。なお、以下では、電動工具1を利用して作業対象を締め付ける作業を行う者を単に「ユーザ」と呼ぶことがある。
【0033】
(2-1)電動工具
電動工具1は、モータ15と、トリガスイッチ29と、制御部4と、電池パック接続部47と、駆動部30と、ハウジング9と、結束部42と、を備えている。
【0034】
モータ15は、モータ15の駆動回路基板33と3相の電線61,62,63を介して接続されている。駆動回路基板33は、制御部4とモータ制御信号線52を介して接続されている。
【0035】
トリガスイッチ29は、モータ15の回転を制御するための操作を受け付ける。トリガスイッチ29を引く操作により、モータ15のオン及びオフが切り替えられる。また、トリガスイッチ29を引く操作の引込み量で、出力軸21の回転数(回転速度)、つまりモータ15の回転速度が調整可能である。上記引込み量が大きいほど、モータ15の回転速度が速くなる。
【0036】
トリガスイッチ29は、モータ15の駆動回路基板33と第1電力線43を介して電気的に接続されている。また、電池パック接続部47とトリガスイッチ29とは第2電力線44を介して電気的に接続されている。トリガスイッチ29には第1電力線43及び第2電力線44とは別に、トリガスイッチ29と制御部4とを接続するトリガスイッチ信号線51が設けられている。トリガスイッチ信号線51については後述する。
【0037】
制御部4は、トリガスイッチ29を引く操作の引込み量に応じて、モータ15を回転又は停止させ、また、モータ15の回転速度を制御する。
【0038】
制御部4は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、制御部4の少なくとも一部の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0039】
制御部4は、モータ15の駆動制御を行うように構成される。制御部4には、トリガスイッチ29を制御するトリガスイッチ信号線51とモータを制御するモータ制御信号線52とが接続されている。
【0040】
電池パック接続部47は、電池パックである電源部32に電気的に接続される。電池パック接続部47は、一対の電線41を介して駆動回路基板33に接続されている。一対の電線41は、正(プラス)の電力線48と負(マイナス)の電力線49とを含む。ここで、正の電力線48とは、電池パック接続部47を介して電源部32の正極に接続されている電力線である。負の電力線49とは電池パック接続部47を介して電源部32の負極に接続されている電力線である。電池パック接続部47は、正の電力線48を介して駆動回路基板33に接続され、かつ負の電力線49を介して駆動回路基板33に接続される。一対の電線41を介して電池パック接続部47と駆動回路基板33とが接続されることで、電源部32は電池パック接続部47を介してモータ15などに電力を供給する。
【0041】
(2-2)電動工具の内部構造
次に、電動工具1の電源部32とモータ15とを接続する内部配線について説明する。
【0042】
電動工具1は、図1に示すように、電池パック接続部47と、モータ15の駆動回路基板33と、電力供給路40と、結束部42と、信号線50と、を備える。
【0043】
電池パック接続部47は、電源部32と、電力供給路40と、を接続する。例えば、電池パックである電源部32は、取り外し可能に装着されるため、電池パック接続部47を設けることにより、安定して電池パック接続部47と、電力供給路40と、を接続することができる。
【0044】
モータ15の駆動回路基板33は、モータ15を駆動するための各種回路から構成されている。各種回路は、少なくともスイッチ回路、PWM(Pulse Width Modulation)制御回路(インバータ回路)及び演算処理回路を含む。スイッチ回路は、モータ15が有する各コイルに接続され、各コイルの電流の流れる方向及び通電の入り切りを制御する。このようなスイッチ回路の各スイッチ素子は、例えばパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistor)を用いて構成することができる。PWM制御回路は、PMW制御されたパルス繰り返し周波数で、スイッチ回路の各スイッチ素子の入り切り動作を繰り返す。演算処理回路は、通電切替タイミングと、回転速度指令と、を含む信号をPWM制御回路に伝達する。駆動回路は、駆動回路基板33上に構成される。
【0045】
電力供給路40は、電池パック接続部47と、モータ15との間で電力を供給するための経路である。電力供給路40は、一対の電線41を含んでいる。一対の電線41は、例えば、正の電力線48及び負の電力線49である。正の電力線48は、第1電力線43と第2電力線44とを含む。本実施形態では、電力供給路40は、トリガスイッチ29を、更に含んでいる。第1電力線43の一端は駆動回路基板33に接続され、第1電力線43の他端は、トリガスイッチ29に接続されている。第2電力線44の一端は電池パック接続部47に接続され、第2電力線44の他端は、トリガスイッチ29に接続されている。すなわち、トリガスイッチ29は、正の電力線48に接続され、駆動回路基板33と電池パック接続部47との間に配置される。
【0046】
結束部42は、一対の電線41のうちで互いに束ねられた部分を含む。結束部42では、電池パック接続部47からモータ15の駆動回路基板33への電力供給路40の少なくとも一部を構成する一対の電線41が束ねられている。本実施形態では、一対の電線41の一方は、第1電力線43と、第2電力線44と、を含む。結束部42は、第1電力線43と第2電力線44との少なくとも一方が、一対の電線41の他方と、束ねられている。なお、第1電力線43と第2電力線44とのうち少なくとも第2電力線44が他方の電力線49と、束ねられていればよい。なお、本実施形態では、第1電力線43と、第2電力線44との双方が、電力線49と束ねられているとして説明する。本実施形態では、一対の電線41の少なくとも一部をツイストすることにより、結束部42が形成されている。本実施形態の結束部42は、電線同士を束ねるということと、配線同士を近づけるということとを、追加部材を必要とせずに実現されている。また、従来の電動工具では一対の電線について結束部が設けられていないので、従来の電動工具の揺動に合わせて、電池パックの負極と接続された電力線(負の電力線)などが揺動していた。一方、本実施形態では一対の電線41の一部が束ねられた結束部42を設けることにより、束ねられた負の電力線49は、電動工具1の揺動に対しても、配線位置の揺動は抑制されている。
【0047】
本実施形態では、結束部42は、第1電力線43と負の電力線49とをツイストすることで結束部42(以下、“結束部42a”という)が形成され、第2電力線44と負の電力線49とをツイストすることで、結束部42(以下、“結束部42b”という)が形成されている。
【0048】
トリガスイッチ29とモータ15の駆動回路基板33との間の第1電力線43の中点をNとする。このとき、結束部42aの少なくとも一部は、中点Nに対してトリガスイッチ29の側に形成されている。さらに、第1電力線43のうちの結束部42aの配線方向に沿った長さの中点をPとすると、結束部42aの中点Pは第1電力線43の配線の長さの中点Nとトリガスイッチ29との間に位置することが好ましい。つまり、結束部42aは、モータ15の駆動回路基板33よりもトリガスイッチ29に近い位置に設けられる。ここで、配線方向とは、第1電力線43の配線に沿った方向である。
【0049】
トリガスイッチ29と電池パック接続部47との間の第2電力線44の中点をMとする。このとき、結束部42bの少なくとも一部は、中点Mに対してトリガスイッチ29の側に形成されている。さらに、第2電力線のうちの結束部42bの配線方向に沿った長さの中点をQとすると、結束部42bの中点Qは第2電力線44の配線の長さの中点Mとトリガスイッチ29との間に位置することが好ましい。つまり、結束部42bは、電池パック接続部47よりもトリガスイッチ29に近い位置に設けられる。
【0050】
要するに、本実施形態では、結束部42aと結束部42bとは、トリガスイッチ29を介して、配線上は、対向する位置関係に配置されている(図3参照)。言い換えると、正の電力線48に這わすように、負の電力線49をツイストして配置している。
【0051】
第1電力線43と、第2電力線44と、負の電力線49と、で囲まれる閉曲面は、結束部42においてツイストされているために、ツイストされていない場合に比べて、閉曲面の面積は小さくなっている。本実施形態では、一対の電線41を結束しない場合と比べて、一対の電線41の閉曲面の面積を小さくするように一対の電線41が束ねられている。
【0052】
次に、信号線50の接続について説明する。
【0053】
信号線50は、トリガスイッチ信号線51と、モータ制御信号線52と、を含んでいる。トリガスイッチ信号線51と、モータ制御信号線52とは、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC、Flexible Print Circuits)を用いたフラットケーブルで構成することができる。フラットケーブルの上端及び下端は、コネクタを用いて駆動回路基板33、トリガスイッチ29、及び制御部4と接続する。
【0054】
トリガスイッチ信号線51は、トリガスイッチ29と、制御部4と、を電気的に接続し、トリガスイッチ29の制御に係る信号を、電気信号として伝達している。また、モータ制御信号線52は、モータ15の駆動回路基板33と、制御部4と、を電気的に接続し、モータ15の制御に係る信号を、電気信号として伝達している。
【0055】
(3)比較例
比較例として、従来の電動工具1aの内部配線の模式図を図4に示す。
【0056】
従来の電動工具1aは、電池パック接続部47aと、モータ15aの駆動回路基板33aと、電力供給路40aと、信号線50aと、トリガスイッチ29aと、制御部4aと、を含んでいる。電力供給路40aは、一対の電線41aであり、一対の電線41aは、正の電力線48aと負の電力線49aと、を含んでいる。また、正の電力線48aは、モータ15aの駆動回路基板33aとトリガスイッチ29aとの間を接続する第3電力線43aと、電池パック接続部47aとトリガスイッチ29aとの間を接続する第4電力線44aと、を含んでいる。
【0057】
本比較例では、負の電力線49aは、電力損失を抑制するために負の電力線49aの長さを短くして、モータ15aの駆動回路基板33aから電池パック接続部47aに接続される。
【0058】
このとき、第3電力線43aと、第4電力線44aと、負の電力線49aと、で囲まれた閉曲面は、実施形態1で説明した結束部42を有する場合の閉曲面と比較して、面積が大きくなる(図1図4参照)。
【0059】
信号線50aは、トリガスイッチ信号線51aと、モータ制御信号線52aと、を含んでいる。トリガスイッチ信号線51aは、トリガスイッチ29aと、制御部4aと、を電気的に接続し、トリガスイッチ29の制御に係る信号を、電気信号として伝達している。また、モータ制御信号線52aは、モータ15aの駆動回路基板33aと、制御部4aと、を電気的に接続し、モータ15aの制御に係る信号を、電気信号として伝達している。
【0060】
信号線50aは、第3電力線43aと、第4電力線44aと、負の電力線49aと、で囲まれた閉曲面に信号線50aが交差する形で配線されている。
【0061】
(4)動作
本実施形態の電動工具1の動作について説明する。
【0062】
トリガスイッチ29が引かれて、制御部4からのモータ15の制御信号がオンになると、モータ15が起動する。このとき、モータ15の駆動回路基板33は高周波で電流を流したり、切ったりすることでモータ15の駆動を制御する。トリガスイッチ29やモータ15の駆動回路基板33のオンオフに応じて、電源部32から電池パック接続部47を介してトリガスイッチ29へ、トリガスイッチ29から駆動回路基板33へ、駆動回路基板33から負の電力線49を介して電池パック接続部47へ、と高電流がオンオフする。このため、電池パック接続部47からトリガスイッチ29及び駆動回路基板33を介して電池パック接続部47に至る閉曲面は、ループアンテナの働きをして、電力損失とノイズ発生の原因となる。例えば、電動工具1では、第1電力線43と、第2電力線44と、負の電力線49と、に囲まれた閉曲面によるノイズは、信号線50に重畳する可能性がある。
【0063】
一方、本実施形態の電動工具1は、内部の配線において、第1電力線43と負の電力線49とを結束した結束部42aと、第2電力線44と負の電力線49とを結束した結束部42bと、を有する。結束部42aと結束部42bを有することにより、第1電力線43と負の電力線49とで囲まれた閉曲面、及び第2電力線44と負の電力線49とで囲まれた閉曲面は、結束部42a及び結束部42bがない場合に比べて小さくできる。
【0064】
比較例で説明した内部配線では、負の電力線49aはできるだけ短くなるように配線されていた。このため、モータ15aの駆動回路基板33aが、例えば、15kHz~20kHz程度の高速スイッチングを行うと、第3電力線43aと、第4電力線44aと、負の電力線49aとで囲まれた閉曲面によるノイズが、本実施形態と比較すると無視できないほど大きくなっていた。つまり、第3電力線43aと、第4電力線44aと、負の電力線49aとで囲まれた閉曲面がループアンテナとなって、電力が飛んでしまい、ノイズ発生と電力損失との原因となっていた。
【0065】
本実施形態の電動工具1と比較例の電動工具1aについて、つまり、第1電力線43と第2電力線44とをツイストした場合とツイストしていない場合についての比較を図5のモータ性能線図で示す。図5は横軸を負荷トルク(Nm)とし、縦軸の第1軸をモータの効率(%)、縦軸の第2軸をモータの出力(W)としている。ここで、負荷トルクとは、モータが駆動しているときに常に必要なトルクのことである。図中の線aが第1電力線43と第2電力線44とをツイストした場合における負荷トルクとモータの出力との関係を表す出力曲線、図中の線bがツイストしていない場合における負荷トルクとモータの出力との関係を表す出力曲線である。ツイストしている場合とツイストしていない場合を比較すると、負荷トルクによっては50W近くの出力差が発生している。つまり、ツイストの有無により、数%程度の出力差が発生している。また、図中の線cが第1電力線43と第2電力線44とをツイストした場合における負荷トルクとモータの効率との関係を表す効率曲線、図中の線dがツイストしていない場合における負荷のトルクとモータの効率との関係を表す効率曲線であり、ツイストの有無によって、数%程度の効率差が発生している。負荷トルクが大きくなるほど、つまり高負荷になるほど、ツイストしている場合の方が、ツイストしていない場合よりも高効率になり、高出力になっている。これは、第1電力線43と、第2電力線44と、負の電力線49と、で囲まれた閉曲面のループアンテナが、比較例のループアンテナよりも小さくなったことに起因している。つまり、電力が電波として飛ばなくなったために、効率が上がり、出力が上がっている。電力が電波として飛ばなくなったことは、言い換えると、ノイズの発生を抑制していることを意味している。また、効率が上がったことは、余分な電力の消費を抑制しており、熱の発生を抑制していることを意味している。本実施形態では、結束部42a及び結束部42bは、結束しているために、ノイズを抑制し、効率が向上させることができる。理論的には、結束部42aと結束部42bとは共に効率を向上させる効果があるものの、分析によると、特に第2電力線44と負の電力線49とをツイストした効果により、効率が向上している。これは、電動工具1の内部構造において、第1電力線43と負の電力線49とは、ツイストしていなくても、第1電力線43と負の電力線49とは近くで沿った配置となっている。これに対して、第2電力線44と負の電力線49とは、ツイストしていない場合には、全く異なる方向に配置されている。このため、第2電力線44と負の電力線49とはツイストしていないとループアンテナから電力が飛んでしまうと考えられる。こうしたことから、結束部42において少なくとも第2電力線が束ねられることで、ノイズの低減に加えて、効率の向上を図ることができる。
【0066】
駆動回路基板33の周波数が上がるにつれて、ノイズは増加し、発熱は大きくなるが、結束部42を備えることでノイズを低減し、発熱を抑制することができる。ノイズを低減し、発熱を抑制できることは、駆動回路基板33の周波数を更に向上させる余地を生み出す。このため、電動工具1は、結束部42を備えることで、更なる高周波での駆動回路基板33の動作が可能である。駆動回路基板33の動作が高周波化することで、制御の効率が上がり、また、制御速度が上がる。例えば、駆動回路基板33が現在よりも高周波で駆動することで、効率が上がり、発熱を抑制することができる。
【0067】
(5)利点
以上説明したように、本実施形態1の電動工具1は、電池パック接続部47からモータ15の駆動回路基板への電力供給路40の少なくとも一部を構成する一対の電線が束ねられた結束部42を備えることで、ノイズの低減、効率の向上を図ることができる。特に、トリガスイッチ29の前後に結束部42を設けることにより、ノイズの低減と効率の向上を図ることができる。また、トリガスイッチ29と電池パック接続部47との間に結束部42bを設けることにより、結束部42bは効率の向上に寄与することができる。
【0068】
また、ツイストすることで、配線の揺動を抑制する利点がある。
【0069】
さらに、電池パック接続部47からモータ15への電力供給路の少なくとも一部を構成する一対の電線が束ねられたことにより、製造時等の組み立てにおいても生産効率を向上する利点がある。
【0070】
本実施形態1の電動工具1は、結束部42を備えることで、ノイズが低減し、モータの効率が上がるため、駆動回路基板33を高周波化することができる。
【0071】
(6)変形例
以下に、上記実施形態の変形例を列記する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0072】
本開示における電動工具1の制御部4は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御部4としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0073】
電動工具1は、トルク測定部26を備える構成としたが、この構成に限定されない。トルク測定部26は、電動工具1にとって必須の構成ではない。電動工具1は、トルク測定部26を有していなくてもよい。
【0074】
基本例では、第1電力線43及び負の電力線49、第2電力線44及び負の電力線49がそれぞれ結束し、結束部42aと、結束部42bと、を構成するとしたが、この構成に限定されない。結束部42aと結束部42bとの少なくとも一方が結束されていればよい。結束部42aのみを結束した場合には、ノイズを低減する効果があり、結束部42bのみを結束した場合には、ノイズ低減効果に加えて効率向上効果も得られる。
【0075】
基本例では、結束部42a及び結束部42bは、それぞれ一つの結束部として構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、結束部42aは、複数の結束部に分割されてもよい。例えば、結束部42aは、ツイストされた複数の部位から構成されていてもよい。同様に、結束部42bは、複数の結束部に分割されてもよい。例えば、結束部42bは、ツイストされた複数の部位から構成されていてもよい。
【0076】
基本例では、一対の電線41の一部をツイストすることで結束部42(結束部42a,42b)が形成される構成としたが、この構成に限定されない。結束部42は、一対の電線41を物理的に束ねる結束部材31を含んでもよい。例えば、結束部材31は、熱収縮チューブ45、結束バンド53、テープ、結束ケーブル、ハウジング9に設けられるクランプである。一対の電線41を熱収縮チューブ45で収縮させて結束することで、結束部42が形成される(図6参照)。一対の電線41のうち一部を結束バンド53で収縮させて結束することで、結束部42が形成される。また、一対の電線41をテープ、結束ケーブル等で巻き付けることで、結束部42が形成される。また、一対の電線41のうち一部をハウジング9のクランプ(図示せず)で固定することで、結束部42が形成される。さらに、熱溶着を用いて一対の電線41の一部を溶着させることで、結束部42が形成されてもよい。実施形態1と同様に、第1電力線43及び負の電力線49、第2電力線44及び負の電力線49、とをトリガスイッチ29を介して沿わせることで、ノイズを低減することができる。また、モータの効率も改善する。なお、図6に示すように、結束部42aと結束部42bとで異なる結束方法を用いてもよい。
【0077】
(実施形態2)
本実施形態2の電動工具1は、電池パック接続部47からモータ15への電力供給路40の少なくとも一部を構成する一対の電線41が束ねられた結束部42と、信号線50との位置関係に言及する点が実施形態1とは異なる。実施形態1では、結束部42を設けることにより、ノイズが低減し、効率が向上した。実施形態2では、結束部42と信号線50との配置により、信号線50に重畳されるノイズを低減する。
【0078】
本実施形態に係る全体構成について、図7Aを参照しながら詳しく説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
電動工具1の内部構造の模式図を、図7Aに示す。本実施形態2の電動工具1の内部構造は、トリガスイッチ29と、第1電力線43と、第2電力線44と、負の電力線49と、第1電力線43と第2電力線44と負の電力線49とに囲まれた閉曲面56と、トリガスイッチ信号線51と、モータ制御信号線52と、を備えている。
【0080】
本実施形態2の電動工具1は、第1電力線43と負の電力線49とをツイストにより結束した結束部42aと、及び第2電力線44と負の電力線49とをツイストにより結束した結束部42bと、を更に備えている。つまり、一対の電線41をツイストしている。結束部42aと結束部42bとでは、ツイストが存在しない場合と比較して、一対の電線41の間の閉曲面56の面積を小さくするように、一対の電線41が束ねられている。
【0081】
本実施形態2の閉曲面56は、ツイストされていない第1電力線43と負の電力線49との間隙、トリガスイッチ29と第1電力線43と第2電力線44と負の電力線49に囲まれた間隙、ツイストされていない第2電力線44と負の電力線との間隙に存在する。閉曲面56は、ループアンテナになって電波が飛びやすい状態にある。つまり、閉曲面56はノイズの影響を受けやすい状態にある。本実施形態2では、トリガスイッチ信号線51とモータ制御信号線52とを含む信号線50は、一対の電線41によって形成される閉曲面56の外側に配置されている(図7A参照)。閉曲面56の外側に信号線50が配置されることで、信号線50は、閉曲面56のノイズの影響を受けにくくなる。つまり、信号線50は、閉曲面56の外側に設置されるので、閉曲面56と信号線50とが閉曲面56内を通る場合に比べて、ノイズが信号線50に与える影響は抑制される。
【0082】
(実施形態2の変形例)
以下に、変形例について列記する。なお、以下に説明する変形例は、上記各実施形態と適宜組み合わせて適用可能である。
【0083】
実施形態2では、一対の電線41の一部をツイストすることで結束部42(結束部42a,42b)が形成される構成としたが、この構成に限定されない。本実施形態2の変形例に係る電動工具1bを図7Bに示す。本変形例の結束部は、実施形態1の変形例と同様に、一対の電線41を物理的に束ねる結束部材31を含んでもよい。本変形例の結束部材31は、熱収縮チューブ45、結束バンド53、テープ、結束ケーブル、ハウジング9に設けられるクランプである。一対の電線41を熱収縮チューブ45で収縮させて結束することで、結束部42が形成される(図7B参照)。一対の電線41のうち一部を結束バンド53で収縮させて結束することで、結束部42が形成される。また、一対の電線41をテープ、結束ケーブル等で巻き付けることで、結束部42が形成される。また、一対の電線のうち、一部をハウジング9のクランプ(図示せず)で固定することで、結束部42が形成される。さらに、熱溶着を用いて一対の電線41の一部を溶着させることで、結束部42が形成されてもよい。第1電力線43と第2電力線44と負の電力線49とで囲まれた閉曲面を閉曲面57とする。閉曲面57は、第1電力線43と負の電力線49とで囲まれた閉曲面、トリガスイッチ29と第1電力線43と第2電力線44と負の電力線49とで囲まれた閉曲面、結束バンド53と第2電力線44と負の電力線49とで囲まれた閉曲面、第2電力線44と負の電力線49とで囲まれた閉曲面と、を含んでいる。信号線50は、閉曲面57の外側に配置されることによって、閉曲面57内を通る場合と比べて、ノイズが信号線50に与える影響は抑制される。
【0084】
(実施形態3)
本実施形態3の電動工具1cの模式図を図8に示す。電動工具1cは、結束部64を有する。実施形態1や実施形態2のように電池パック接続部47とモータ15の駆動回路基板33との間に、結束部42を設けるのに加えて、駆動回路基板33とモータ15との間の電線に、結束部64を有している。つまり、結束部64が新たに設けられる点が実施形態1及び実施形態2とは異なる。
【0085】
本実施形態3では、モータ15は、永久磁石同期電動機であり、3相交流式モータである。電力供給路40は、モータ15の駆動回路基板33とモータ15との間を接続する複数の電線61,62,63を含む。図8に示すように、3相交流式モータの3相の電線61,62,63について、それぞれ電線61を第5電力線61、電線62を第6電力線62、電線63を第7電力線63とする。第5電力線61、第6電力線62、第7電力線63のうち、第5電力線61及び第6電力線62を一対の電線として、3本の電力線のうちの少なくとも2本、本実施形態では3本すべてをツイストにより結束している。また、本実施形態では3本すべてをまとめて捩じる方法でツイストしている。3本の電力線をすべてツイストにより結束した結束部64を設けることによって、ノイズを低減することができる。
【0086】
(実施形態3の変形例)
実施形態3では、3本すべてをまとめて捩じる方法でツイストしたが、この方法に限定されない。3本の電力線は、三つ編み状にツイストされてもよい。
【0087】
実施形態3では、第5電力線61、第6電力線62、第7電力線63のすべての電力線をツイストする構成としたが、この構成に限定されない。結束する電力線は3本のうちの2本でもよい。つまり、3本のうち、少なくとも2本が結束されていればよい。すなわち、結束部64では、第5電力線61、第6電力線62、第7電力線63のうち少なくとも一対の電力線が束ねられていればよい。
【0088】
実施形態3では、第5電力線61、第6電力線62、第7電力線63のすべての電力線をツイストする構成としたが、この構成に限定されない。実施形態1の変形例と同様に、一対の電線41を物理的に束ねる結束部材31を含んでいてもよい。例えば、結束部材31は、結束バンド53、熱収縮チューブ45、テープ、結束ケーブル、ハウジング9に設けられるクランプである。一対の電線41を熱収縮チューブ45で収縮させて結束することで、結束部42が形成される。一対の電線41のうち、一部を結束バンド53で収縮させて結束することで、結束部42が形成される。また、一対の電線41をテープ、結束ケーブル等で巻き付けることで、結束部42が形成される。また、一対の電線41のうち一部をハウジング9のクランプ(図示せず)で固定することで、結束部42が固定される。さらに、熱溶着を用いて一対の電線41の一部を溶着させることで、結束部42が形成されてもよい。
【0089】
実施形態3では、図8に示すように、電動工具1cでは、結束部64、結束部42a及び結束部42bが設けられる構成としたが、この構成に限定されない。結束部64のみが設けられてもよい。また、結束部64と結束部42aとが設けられてもよいし、結束部64と結束部42bとが設けられてもよい。
【0090】
(まとめ)
以上、説明したように、第1の態様に係る電動工具(1,1b,1c)は、モータ(15)と、電池パック接続部(47)と、駆動部(30)と、ハウジング(9)と結束部(42)と、を備える。電池パック接続部(47)は、電池を備える電池パックが電気的に接続される。駆動部(30)は、モータ(15)の出力によって工具を駆動する。ハウジング(9)は、モータ(15)及び駆動部(30)を収容する。結束部(42)は、電池パック接続部(47)からモータ(15)への電力供給路(40)の少なくとも一部を構成する一対の電線(例えば、電線41)が束ねられている。
【0091】
この構成によると、電力供給路(40)の少なくとも一部を構成する一対の電線を束ねられていることから、一対の電線からノイズの原因となる電波が飛びにくくなり、その結果として、ノイズに対する耐性の高い電動工具(1,1b,1c)を提供することができる。
【0092】
第2の態様に係る電動工具(1,1b,1c)では、第1の態様において、モータ(15)の回転を制御するための操作を受け付けるトリガスイッチ(29)を、更に備える。一対の電線の一方は、第1電力線(43)と、第2電力線(44)を含み、結束部(42)は、第1電力線(43)と第2電力線(44)との少なくとも一方について、一対の電線の他方(例えば、電線49)と束ねられている。第1電力線(43)は、モータ(15)の駆動回路基板(33)とトリガスイッチ(29)との間を接続する。第2電力線(44)は、電池パック接続部(47)とトリガスイッチ(29)との間を接続する。
【0093】
この構成によると、トリガスイッチ(29)を挟んで結束部(42)を設けていることで、一対の電線の広がりを抑制することができ、ノイズに対する耐性の高い電動工具(1,1b,1c)を提供することができる。
【0094】
第3の態様に係る電動工具(1,1b,1c)では、第2の態様において、結束部(42)は、第1電力線(43)と第2電力線(44)とのうち少なくとも第2電力線(44)について、一対の電線の他方と束ねられている。
【0095】
この構成によると、第2電力線(44)は、結束部(42)を設けない場合には一対の電線が離れた位置に配置されることが多く、ノイズが発生する原因となっていた。そこで、少なくとも第2電力線(44)について、一対の電線が束ねられた結束部(42)を設けることにより、ノイズが抑制されるとともに、モータ(15)の効率が向上する。
【0096】
第4の態様に係る電動工具(1,1b,1c)では、第2又は第3の態様において、第2電力線(44)が一対の電線の他方と束ねられている。結束部(42)の少なくとも一部は、第2電力線(44)の中点(N)と、トリガスイッチ(29)と、の間において形成されている。
【0097】
この構成によると、トリガスイッチ(29)と電池パック接続部(47)とを接続する第2電力線(44)において、結束部(42)はトリガスイッチ(29)に近い位置に設けられることにより、ノイズの発生を抑制する。
【0098】
第5の態様に係る電動工具(1,1b,1c)では、第2~第4のいずれかの態様において、第1電力線(43)が一対の電線の他方と束ねられている。結束部(42)の少なくとも一部は、第1電力線(43)の中点(M)と、トリガスイッチ(29)と、の間において形成されている。
【0099】
この構成によると、トリガスイッチ(29)とモータ(15)の駆動回路基板(33)とを接続する第1電力線(43)において、結束部(42)はトリガスイッチ(29)に近い位置に設けられることにより、ノイズの発生を抑制する。
【0100】
第6の態様に係る電動工具(1,1b,1c)では、第1~第5のいずれかの態様において、結束部(42)は、一対の電線間の閉曲面の面積を小さくするように一対の電線が束ねられている。
【0101】
この構成によると、一対の電線の間の閉曲面(56,57)の面積が小さくなることで、ループアンテナを形成する面積が小さくなるため、電波が飛ばなくなってノイズを低減でき、また電力の消費が抑制できることから効率が上がる。
【0102】
第7の態様に係る電動工具(1,1b,1c)では、第1~第6のいずれかの態様において、結束部(42)は、一対の電線をツイストすることにより形成される。
【0103】
この構成によると、一対の電線(41)が束ねられているということと、近づけるということとを追加部材を必要とせずに同時に実現可能であり、利便性が高い。
【0104】
第8の態様に係る電動工具(1,1b,1c)では、第1~第7のいずれかの態様において、結束部(42)は、一対の電線を物理的に束ねる結束部材(31)を含む。
【0105】
この構成によると、結束する方法はツイストに限らず、物理的に束ねる結束部材(31)を用いることにより、一対の電線を束ねることができる。このため、ノイズに対する耐性の高い電動工具(1,1b,1c)を提供することができる。
【0106】
第9の態様に係る電動工具(1,1b,1c)では、第1~第8のいずれかの態様において、制御信号を伝送する信号線(50)は、一対の電線によって形成される閉曲面(56,57)の外側に配置される。
【0107】
この構成によると、制御信号を伝送する信号線(50)は、閉曲面(56,57)と信号線(50)とは交差しない、つまり閉曲面(56,57)の中を通らないことで、信号線(50)は、閉曲面(56,57)が発生させるノイズの影響を受けにくくなる。
【0108】
第10の態様に係る電動工具(1,1b,1c)では、第1~第9のいずれかの態様において、電力供給路(40)は、モータ(15)の駆動回路基板(33)とモータ(15)との間を接続する複数の電線(第5電力線61,第6電力線62,第7電力線63)を含み、結束部(64)は、複数の電線(第5電力線61,第6電力線62,第7電力線63)のうち少なくとも一対の電線を含んで束ねられている。
【0109】
この構成によると、結束部(64)はノイズの影響を抑制し、ノイズに対する耐性の高い電動工具(1,1b,1c)を提供することができる。
【符号の説明】
【0110】
1,1b,1c 電動工具
15 モータ
29 トリガスイッチ
30 駆動部
40 電力供給路
41 電線
42,64 結束部
43 第1電力線
44 第2電力線
31 結束部材
47 電池パック接続部
9 ハウジング
61 電線(第5電力線)
62 電線(第6電力線)
63 電線(第7電力線)
M 第1電力線の中点
N 第2電力線の中点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8