(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】コンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20240126BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/32 550
H01G2/10 R
H01G2/10 J
(21)【出願番号】P 2020540111
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2019026312
(87)【国際公開番号】W WO2020044778
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2018159713
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018159714
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018159715
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 康一
(72)【発明者】
【氏名】奥戸 崇史
(72)【発明者】
【氏名】井上 透
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 浩正
(72)【発明者】
【氏名】正岡 律夫
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157755(JP,A)
【文献】特開2005-277101(JP,A)
【文献】特開2011-054726(JP,A)
【文献】特開2014-179202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を封止する樹脂外装体と、前記樹脂外装体の表面の一部を被覆するガスバリアフィルムと、前記樹脂外装体の表面の残部を被覆する金属層と、を備える、
コンデンサ。
【請求項2】
前記ガスバリアフィルムが、基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成されたガスバリア層と、を有し、
前記ガスバリア層が、酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含む、
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
以下の工程A~Dを含む、コンデンサの製造方法。
工程A:成形用金型のキャビティにおいて、前記キャビティを包囲するように、前記成形用金型の内面の一部にガスバリアフィルムを密着させて配置し、前記成形用金型の内面の残部に金属層を密着させて配置し、前記ガスバリアフィルム及び前記金属層で包囲されるようにコンデンサ素子を配置する工程、
工程B:前記成形用金型のキャビティに液状の熱硬化性樹脂組成物を注入し、前記熱硬化性樹脂組成物を加熱して半硬化させて半硬化物を形成する工程、
工程C:前記成形用金型のキャビティから前記半硬化物を取り出す工程、及び
工程D:前記半硬化物を更に加熱して完全硬化させる工程。
【請求項4】
前記ガスバリアフィルムが、基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成されたガスバリア層と、を有し、
前記ガスバリア層が、酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含む、
請求項3に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記工程B及び前記工程Dにおける加熱温度を、前記ガスバリアフィルムの前記基材フィルムのガラス転移温度よりも低くする、
請求
項4に記載のコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にコンデンサ及びその製造方法に関し、より詳細にはコンデンサ素子が封止されたコンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フィルムコンデンサの製造方法を開示している。このフィルムコンデンサの製造方法では、まず、金属化フィルムを巻回して形成した巻回体の両端面にメタリコン電極を形成し、この電極部に外部端子を取り付けてコンデンサ素子を製造する。次に、このコンデンサ素子を、フィラーを含まない液状の熱硬化性樹脂に減圧状態で浸漬して、コンデンサ素子の外周を液状樹脂にて被覆し、液状樹脂を加熱硬化して樹脂層を形成する。その後、コンデンサ素子を外装ケースに収納し、外装ケースにフィラー含有樹脂を充填して硬化する。このように、外装ケースの開口部を樹脂封止することにより、フィルムコンデンサが製造される。
【0003】
特許文献1では、フィルムコンデンサの耐湿性の向上を図っているが、軽量化は配慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、軽量化を実現し、耐湿性を向上させることができるコンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
本開示の一態様に係るコンデンサは、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を封止する樹脂外装体と、前記樹脂外装体の表面の少なくとも一部を被覆するガスバリアフィルムと、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係るコンデンサの製造方法は、以下の工程A~Dを含む。
【0008】
工程A:成形用金型のキャビティにおいて、ガスバリアフィルムを前記成形用金型に密着させて配置し、コンデンサ素子を配置する工程、
工程B:前記成形用金型のキャビティに液状の熱硬化性樹脂組成物を注入し、前記熱硬化性樹脂組成物を加熱して半硬化させて半硬化物を形成する工程、
工程C:前記成形用金型のキャビティから前記半硬化物を取り出す工程、及び
工程D:前記半硬化物を更に加熱して完全硬化させる工程。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るコンデンサの斜視図である。
【
図2】
図2Aは、巻回型コンデンサ素子の製造方法の一工程図(斜視図)である。
図2Bは、上記巻回型コンデンサ素子の斜視図である。
【
図3】
図3Aは、積層型コンデンサ素子の製造方法の一工程図(斜視図)である。
図3Bは、積層型コンデンサ素子の製造方法の一工程図(断面図)である。
図3Cは、
図3Bに示す積層型コンデンサ素子の一部破断した斜視図である。
図3Dは、上記積層型コンデンサ素子の斜視図である。
【
図4】
図4A~
図4Dは、本開示の第1実施形態に係るコンデンサの製造方法の各工程の説明図である。
【
図5】
図5は、本開示の第2実施形態に係るコンデンサの斜視図である。
【
図6】
図6A~
図6Dは、本開示の第2実施形態に係るコンデンサの製造方法の各工程の説明図である。
【
図7】
図7は、本開示の第3実施形態に係るコンデンサの斜視図である。
【
図8】
図8A~
図8Dは、本開示の第3実施形態に係るコンデンサの製造方法の各工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係るコンデンサ1及びその製造方法について図面を参照して説明する。なお、一部の図面には、互いに直交するX軸(前後方向)、Y軸(左右方向)及びZ軸(上下方向)を図示している。これらの軸は、説明の都合上図示しただけであり、コンデンサ1などを使用する際の方向などを限定する趣旨ではない。
【0011】
(1)概要
図1に示すように、第1実施形態に係るコンデンサ1は、コンデンサ素子2と、樹脂外装体3と、ガスバリアフィルム4と、を備える。樹脂外装体3は、コンデンサ素子2を封止している。ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3の表面の一部を被覆している。
【0012】
コンデンサ1は、特許文献1に記載されているような外装ケースを備えていない。つまり、コンデンサ1は、いわゆるケースレス構造を採用している。そのため、コンデンサ1は、少なくとも従来の外装ケースに相当する分だけ、軽量化を実現することができる。
【0013】
またコンデンサ素子2は、樹脂外装体3で封止されている。そのため、コンデンサ1は、耐湿性が向上している。さらに樹脂外装体3の表面の一部はガスバリアフィルム4で被覆されている。ここで、ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3に比べて、厚さが薄くても、水蒸気などのガスを透過させにくい。そのため、例えば、
図4Dに示すように、ガスバリアフィルム4が被覆されていない箇所の樹脂外装体3の厚みT2に比べて、ガスバリアフィルム4が被覆されている箇所の樹脂外装体3の厚みT1を薄くすることができる(T1<T2)。このように薄くできる分だけ、更なる軽量化を実現することができる。
【0014】
したがって、第1実施形態に係るコンデンサ1によれば、軽量化を実現し、耐湿性を向上させることができる。
【0015】
(2)詳細
(2.1)構成
第1実施形態に係るコンデンサ1は、いわゆるケースレス構造を採用しており、特許文献1に記載されているような外装ケースを備えていない。つまり、コンデンサ1は、ケースレスコンデンサである。
図1に示すように、コンデンサ1は、コンデンサ素子2と、樹脂外装体3と、ガスバリアフィルム4と、を備える。コンデンサ素子2、樹脂外装体3、及びガスバリアフィルム4は一体化されている。
【0016】
<コンデンサ素子>
まずコンデンサ素子2について説明する。コンデンサ素子2は、プラスチックフィルムを誘電体として有する。コンデンサ素子2は、巻回型コンデンサ素子7(
図2B参照)でもよいし、積層型コンデンサ素子8(
図3D参照)でもよい。以下に、巻回型コンデンサ素子7及び積層型コンデンサ素子8の一例を示す。
【0017】
≪巻回型コンデンサ素子≫
巻回型コンデンサ素子7は、例えば、次のようにして製造することができる。まず第1金属化フィルム71及び第2金属化フィルム72を用意する(
図2A参照)。
【0018】
第1金属化フィルム71は、第1誘電体フィルム701と、第1導電層711とを有する。第1誘電体フィルム701は、長尺物である。第1誘電体フィルム701の片面に、第1マージン部721を除いて、第1導電層711が形成されている。第1マージン部721は、第1誘電体フィルム701が露出している部分であり、第1誘電体フィルム701の一方の長辺に沿って、第1導電層711よりも細い帯状に形成されている。
【0019】
第2金属化フィルム72は、第1金属化フィルム71と同様に形成されている。すなわち、第2金属化フィルム72は、第2誘電体フィルム702と、第2導電層712とを有する。第2誘電体フィルム702は、第1誘電体フィルム701と同じ幅を有する長尺物である。第2誘電体フィルム702の片面に、第2マージン部722を除いて、第2導電層712が形成されている。第2マージン部722は、第2誘電体フィルム702が露出している部分であり、第2誘電体フィルム702の一方の長辺に沿って、第2導電層712よりも細い帯状に形成されている。
【0020】
第1誘電体フィルム701及び第2誘電体フィルム702は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニルサルファイド又はポリスチレンなどで形成されている。第1導電層711及び第2導電層712は、蒸着法又はスパッタリング法などの方法で形成される。第1導電層711及び第2導電層712は、例えばアルミニウム、亜鉛及びマグネシウムなどで形成されている。
【0021】
次に
図2Aに示すように、第1金属化フィルム71及び第2金属化フィルム72の各々の2つの長辺を揃えて重ねる。このとき第1導電層711と第2導電層712との間に、第1誘電体フィルム701又は第2誘電体フィルム702を介在させる。さらに第1マージン部721が形成されている長辺と、第2マージン部722が形成されている長辺とを逆にする。このように第1金属化フィルム71及び第2金属化フィルム72を重ねた状態で巻き取ることによって、円柱状の巻回体73を得ることができる。次にこの巻回体73の側面を両側から押圧して、断面長円状の巻回体74に加工する(
図2B参照)。このように扁平化することで、省スペース化を図ることができる。
【0022】
次に、メタリコン(金属溶射法)により巻回体74の両端に第1外部電極21及び第2外部電極22を形成することによって、巻回型コンデンサ素子7を得ることができる。第1外部電極21は、第1導電層711(第1内部電極)に電気的に接続されている。第2外部電極22は、第2導電層712(第2内部電極)に電気的に接続されている。第1導電層711及び第2導電層712が一対の内部電極を構成している。第1外部電極21及び第2外部電極22は、例えば亜鉛などで形成されている。
【0023】
その後、
図2Bに示すように、第1外部電極21に第1バスバー91を電気的に接続し、第2外部電極22に第2バスバー92を電気的に接続する。この接続方法として、例えば半田溶接、抵抗溶接及び超音波溶接などが挙げられる。第1バスバー91及び第2バスバー92は、例えば銅又は銅合金などで板状に形成されている。
【0024】
≪積層型コンデンサ素子≫
一方、積層型コンデンサ素子8は、例えば、次のようにして製造することができる。まず第1金属化フィルム81及び第2金属化フィルム82を用意する(
図3A参照)。
【0025】
第1金属化フィルム81は、第1誘電体フィルム801と、第1導電層811とを有する。第1誘電体フィルム801は、矩形状である。第1誘電体フィルム801の片面に、第1マージン部821を除いて、第1導電層811が形成されている。第1マージン部821は、第1誘電体フィルム801の1つの辺に沿って、第1導電層811よりも細い帯状に形成されている。
【0026】
第2金属化フィルム82は、第1金属化フィルム81と同様に形成されている。すなわち、第2金属化フィルム82は、第2誘電体フィルム802と、第2導電層812とを有する。第2誘電体フィルム802は、第1誘電体フィルム801と同じ大きさの矩形状である。第2誘電体フィルム802の片面に、第2マージン部822を除いて、第2導電層812が形成されている。第2マージン部822は、第2誘電体フィルム802の1つの辺に沿って、第2導電層812よりも細い帯状に形成されている。
【0027】
第1誘電体フィルム801及び第2誘電体フィルム802は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニルサルファイド又はポリスチレンなどで形成されている。第1導電層811及び第2導電層812は、蒸着法又はスパッタリング法などの方法で形成される。第1導電層811及び第2導電層812は、例えばアルミニウム、亜鉛及びマグネシウムなどで形成されている。
【0028】
次に
図3A及び
図3Bに示すように、第1金属化フィルム81及び第2金属化フィルム82の四辺を揃えて交互に重ねる。このとき第1導電層811と第2導電層812との間に、第1誘電体フィルム801又は第2誘電体フィルム802を介在させる。さらに第1マージン部821が形成されている一辺と、第2マージン部822が形成されている一辺とを対向させる。
図3Aでは、第1マージン部821を後方(X軸の負の向き)に、第2マージン部822を前方(X軸の正の向き)に配置している。このように、複数の第1金属化フィルム81及び第2金属化フィルム82を積層して一体化することによって、
図3B及び
図3Cに示すような積層体83を得ることができる。この積層体83は、前面(X軸の正の向きに向いている面)及び後面(X軸の負の向きに向いている面)を除いて、保護フィルム84で被覆されている。保護フィルム84は、電気的絶縁性を有するフィルムである。
【0029】
次に、メタリコン(金属溶射法)により積層体83の前面及び後面にそれぞれ第1外部電極21及び第2外部電極22を形成することによって、積層型コンデンサ素子8を得ることができる(
図3D参照)。第1外部電極21は、第1導電層811(第1内部電極)に電気的に接続されている。第2外部電極22は、第2導電層812(第2内部電極)に電気的に接続されている。第1導電層811及び第2導電層812が一対の内部電極となる。第1外部電極21及び第2外部電極22は、例えば亜鉛などで形成されている。
【0030】
その後、
図3Dに示すように、第1外部電極21に第1バスバー91を電気的に接続し、第2外部電極22に第2バスバー92を電気的に接続する。この接続方法として、例えば半田溶接、抵抗溶接及び超音波溶接などが挙げられる。第1バスバー91及び第2バスバー92は、例えば銅又は銅合金などで板状に形成されている。
【0031】
<樹脂外装体>
次に樹脂外装体3について説明する。
図1に示すように、樹脂外装体3は、コンデンサ素子2を封止している。より詳細には、樹脂外装体3は、第1バスバー91及び第2バスバー92を除いて、コンデンサ素子2の全体を封止している。第1バスバー91及び第2バスバー92は、樹脂外装体3の表面から突出している。樹脂外装体3は、コンデンサ素子2を外気に触れさせないように隙間なく包んで、外部環境から保護している。このようにしてコンデンサ1の耐湿性を向上させることができる。すなわち、外部からの水蒸気などのガスの侵入を樹脂外装体3で防いで、コンデンサ素子2の劣化を抑制することができる。樹脂外装体3の形状は特に限定されない。
【0032】
樹脂外装体3は、熱硬化性樹脂組成物30の硬化物である。硬化物は、C-ステージの物質であり、不溶不融である。C-ステージは、熱硬化性樹脂組成物30の硬化反応の最終状態である。
【0033】
硬化反応前の常温(25℃)における熱硬化性樹脂組成物30は、液状であり、熱硬化性樹脂を含有する組成物である。熱硬化性樹脂は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの中ではエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、耐熱性、耐薬品性、強靭性、電気絶縁性及び接着性などの特性に優れている。
【0034】
熱硬化性樹脂組成物30は、無機充填材を含有してもよい。無機充填材は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素、マグネシア、ベーマイト、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及びタルクなどが挙げられる。これらの中では、機械強度の観点から、シリカが好ましい。無機充填材の含有量は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全質量に対して、90質量%以下である。なお、無機充填材の含有量は、成形時の流動性を確保する観点から、少ないほど好ましい。
【0035】
さらに熱硬化性樹脂組成物30は、必要に応じて、公知の硬化剤及び触媒などを含有してもよい。
【0036】
<ガスバリアフィルム>
次にガスバリアフィルム4について説明する。ガスバリアフィルム4は、ガスバリア性を有するフィルムである。ガスバリア性は、水蒸気などのガスを透過させにくいという性質である。好ましくは、ガスバリアフィルム4は、基材フィルム41と、ガスバリア層42と、を有する(
図4D参照)。ガスバリア層42は、基材フィルム41上に形成されている。主としてガスバリア層42がガスバリア性を有する。
【0037】
基材フィルム41は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(融点265℃、ガラス転移点80℃(TMA法))、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム(融点280℃、ガラス転移点100℃)、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム(ガラス転移点220℃)、ポリエーテルイミド(PEI)フィルム(ガラス転移点220℃)、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム(融点340℃、ガラス転移点140℃)のいずれかであることが好ましい。これらのフィルムは、耐熱性に優れている。したがって、後述の液状射出成形の際の加熱温度にも耐え得る。なお、上記の融点及びガラス転移点は、DSC法(昇温速度:10℃/min)によるデータである。
【0038】
ガスバリア層42は、ガスバリア性を有する。ガスバリア層42は、酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含む。ガスバリア層42は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、又はプラズマCVD法などにより形成可能である。
【0039】
図1に示すように、ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3の表面の一部を被覆している。ガスバリアフィルム4が基材フィルム41とガスバリア層42とを有する場合には、ガスバリア層42が樹脂外装体3に接着され、基材フィルム41が外部に面している(
図4D参照)。被覆面積は広いほど好ましいが、特に限定されない。このように被覆することで、コンデンサ1の更なる軽量化を実現することができる。その主な理由は、ガスバリアフィルム4が、樹脂外装体3に比べて、厚さが薄くても、水蒸気などのガスを透過させにくいからである。これに対して、樹脂外装体3は、ある程度の厚みを確保しなければ、水蒸気などのガスの透過を抑制することができない。
【0040】
上記の点について
図4Dを参照しながら説明すると、T2は、ガスバリアフィルム4が被覆されていない箇所の樹脂外装体3の厚みである。より詳細には、T2は、コンデンサ素子2と樹脂外装体3との界面から樹脂外装体3の外面までの距離である。このようにガスバリアフィルム4が被覆されていない箇所では、樹脂外装体3が剥き出しであり、水蒸気などのガスの透過を抑制可能な程度の厚みを、樹脂外装体3のみで確保する必要がある。
【0041】
一方、T1は、ガスバリアフィルム4が被覆されている箇所の樹脂外装体3の厚みである。より詳細には、T1は、コンデンサ素子2と樹脂外装体3との界面から樹脂外装体3とガスバリアフィルム4との界面までの距離である。このようにガスバリアフィルム4が被覆されている箇所では、ガスバリアフィルム4で水蒸気などのガスの透過を抑制可能なので、樹脂外装体3のみの厚みT1を上記のT2よりも薄くすることができる。
【0042】
上述のように、ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3に比べて、厚さが薄くても、水蒸気を透過させにくい。そのため、
図4Dに示すように、コンデンサ1において、ガスバリアフィルム4が被覆されていない箇所の樹脂外装体3の厚みT2に比べて、ガスバリアフィルム4が被覆されている箇所の樹脂外装体3の厚みT1を薄くすることができる(T1<T2)。したがって、このように薄くできる分だけ、更なる軽量化を実現することができる。
【0043】
以上から、ガスバリアフィルム4が全く使用されていないコンデンサ1と、ガスバリアフィルム4が一部でも使用されているコンデンサ1とを対比すると、両者の耐湿性が同じであっても、後者のコンデンサ1の方がより軽量化することが可能である。
【0044】
(2.2)製造方法
第1実施形態に係るコンデンサ1は、液状射出成形(LIM:Liquid Injection Molding)により製造することができる。液状射出成形は、液状材料を型内に射出して反応硬化させて成形品を得る成形法である。この成形法では、液状材料を用いるので低圧成形が可能で、低圧の計量ポンプ及び混合機などを採用することができる。液状射出成形は、第1実施形態に係るコンデンサ1のケースレス化に好適である。一般に半導体の樹脂封止にトランスファー成形法が使用されているが、トランスファー成形法に比べて、液状射出成形では、コンデンサ素子2に及ぼす機械的及び熱的損傷が小さい。低温(例えば100℃程度)でのトランスファー成形法が可能であるとしても、コンデンサ素子2に及ぼす機械的損傷については、液状射出成形の方が小さい。
【0045】
以下では、液状射出成形を使用してコンデンサ1を製造する方法について説明する。なお、この方法では、液状材料にコンデンサ素子2を埋め込んで成形しているので、インサート成形も使用している。
【0046】
図4Aに示すように、成形用金型6は、成形型として使用する射出成形用の金型である。成形用金型6は、第1型61と第2型62とから構成され、所望の温度に制御可能に形成されている。第1型61には第1凹部601が形成されている。第2型62には第2凹部602が形成されている。第1凹部601及び第2凹部602は、第1型61及び第2型62を閉じたときに、成形用金型6の内部にキャビティ60を形成する(
図4C参照)。成形用金型6には、キャビティ60に連通する樹脂注入路となるスプルー600が設けられている。スプルー600には、液状の熱硬化性樹脂組成物30を注入するための射出ノズル63が接続されている。射出ノズル63からスプルー600を通ってキャビティ60内に液状の熱硬化性樹脂組成物30を注入して射出成形を行う。
【0047】
第1実施形態に係るコンデンサ1の製造方法は、以下の工程A~Dを含む。各工程について順に説明する。
【0048】
<工程A>
工程Aでは、成形用金型6のキャビティ60において、ガスバリアフィルム4を成形用金型6に密着させて配置する。第1実施形態では、
図4Bに示すように、ガスバリアフィルム4を第1型61の第1凹部601の底面に密着させて配置している。ガスバリアフィルム4は、例えば真空引きによりキャビティ60の内面に密着させることができる。なお、後述の半硬化物31の離型操作を容易にするために、ガスバリアフィルム4を配置する前に、第1凹部601及び第2凹部602の内面に離型剤を塗布しておいてもよい。
【0049】
さらに工程Aでは、成形用金型6のキャビティ60において、コンデンサ素子2を配置する。第1実施形態では、第1型61と第2型62とを閉じたときにコンデンサ素子2がガスバリアフィルム4に接触しないように、ガスバリアフィルム4から離してコンデンサ素子2を配置している(
図4C)。このように配置するのは、ガスバリアフィルム4とコンデンサ素子2との間に熱硬化性樹脂組成物30を注入して介在させるためである。さらに、第1型61と第2型62とを閉じたときにコンデンサ素子2がキャビティ60の内面に接触しないように、コンデンサ素子2を配置している(
図4C)。そして、第1凹部601と第2凹部602とを対向させ、第1型61と第2型62とを閉じて、キャビティ60内にコンデンサ素子2を配置する。コンデンサ素子2のバスバー9は、第1型61及び第2型62を閉じたときに、第1型61と第2型62との接合部で挟持される。そのため、コンデンサ素子2は、キャビティ60内において浮いた状態で配置される。なお、第1実施形態では、ガスバリアフィルム4から離してコンデンサ素子2を配置しているが、ガスバリアフィルム4から離さずにコンデンサ素子2を配置してもよい。コンデンサ素子2の少なくとも一部がガスバリアフィルム4に接触してもよい。
【0050】
<工程B>
工程Bでは、成形用金型6のキャビティ60に液状の熱硬化性樹脂組成物30を注入する。具体的には、まずスプルー600に射出ノズル63を接続する。第1型61と第2型62との接合部を気密にシールする。キャビティ60内を真空ポンプなど(図示省略)により吸引する。例えば、キャビティ60内を10Torr(約1.33kPa)に減圧する。そして、射出ノズル63の先端部631から液状の熱硬化性樹脂組成物30をキャビティ60内に射出する。液状の熱硬化性樹脂組成物30は、溶剤を含有しなくてもよいし(無溶剤)、溶剤を含有してもよい。液状の熱硬化性樹脂組成物30は、A-ステージの物質である。A-ステージは、硬化反応の初期の状態である。射出ノズル63は、ノズル本管632内にプランジャ633を同心的に配設し、このプランジャ633を前進させることによって、液状の熱硬化性樹脂組成物30をキャビティ60内に断続的に射出できるようになっている。熱硬化性樹脂組成物30はもともと常温で液状であるため、注入のための圧力を低くすることができ、コンデンサ素子2の機械的損傷を抑制することができる。
【0051】
さらに工程Bでは、熱硬化性樹脂組成物30を加熱して半硬化させて半硬化物31を形成する。すなわち、液状の熱硬化性樹脂組成物30をキャビティ60内に充填し、成形用金型6を所定の温度で加熱することで、液状の熱硬化性樹脂組成物30の硬化反応を途中まで進行させて半硬化物31を形成する。
【0052】
半硬化物31は、B-ステージの物質である。B-ステージは、熱硬化性樹脂組成物30の硬化中間状態である。つまり、液状の熱硬化性樹脂組成物30は、加熱されると、A-ステージからB-ステージに移行して半硬化物31となる。半硬化物31は、更に加熱されると、B-ステージからC-ステージに移行して硬化物となる。
【0053】
工程Bでの加熱は、コンデンサ素子2が有する誘電体(例えばポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルム)を損傷させない程度の温度で行うことが好ましい。具体的には、工程Bでの加熱温度は、好ましくは90℃以上120℃以下、より好ましくは90℃以上100℃以下の範囲内である。加熱時間は、生産性を考慮すると、好ましくは3分以上25分以下、より好ましくは3分以上10分以下の範囲内である。さらにガスバリアフィルム4が基材フィルム41とガスバリア層42とを有する場合には、好ましくは、工程Bにおける加熱温度を、ガスバリアフィルム4の基材フィルム41のガラス転移温度よりも低くする。このように、加熱温度を調整すれば、工程Bにおける加熱時にガスバリアフィルム4が損傷することを抑制することができる。
【0054】
<工程C>
工程Cでは、成形用金型6のキャビティ60から半硬化物31を取り出す。すなわち、保圧及び冷却を適宜行った後、第1型61及び第2型62を開いて、半硬化物31を取り出す。半硬化物31が取り出された成形用金型6は、次の射出に供される。なお、半硬化物31を取り出す際に、スプルー600で硬化した部分が半硬化物31に付着してくるが、この部分は、工程C又は工程Dの後に、適宜、除去される。
【0055】
<工程D>
工程Dでは、半硬化物31を更に加熱して完全硬化させる。つまり、後硬化(アフターキュアー又はポストキュアーともいう)を行う。後硬化は、半硬化物31を離型後、追加工程として乾燥炉など他の形式の加熱室でふたたび加熱して十分に硬化させることである。例えば、複数の半硬化物31を一括して、加熱ステージ上で加熱したり、加熱オーブン中で加熱したりすることにより、後硬化を行うことができる。このように、後硬化では、複数の半硬化物を一括して処理することができる。成形用金型6から半硬化物31を離型後、後硬化を行うと、歪みを除去することができる等の利点がある。以上のようにして、
図1に示すようなコンデンサ1が得られる。
【0056】
工程Dでの加熱は、コンデンサ素子2が有する誘電体(例えばポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルム)を損傷させない程度の温度で行うことが好ましい。具体的には、工程Dでの加熱温度は、好ましくは90℃以上120℃以下、より好ましくは90℃以上100℃以下の範囲内である。後硬化の加熱時間は、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。さらにガスバリアフィルム4が基材フィルム41とガスバリア層42とを有する場合には、好ましくは、工程Dにおける加熱温度を、ガスバリアフィルム4の基材フィルム41のガラス転移温度よりも低くする。このように、加熱温度を調整すれば、工程Dにおける加熱時にガスバリアフィルム4が損傷することを抑制することができる。
【0057】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係るコンデンサ1及びその製造方法について図面を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0058】
(1)概要
図5に示すように、第2実施形態に係るコンデンサ1は、コンデンサ素子2と、樹脂外装体3と、ガスバリアフィルム4と、を備える。樹脂外装体3は、コンデンサ素子2を封止している。ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3の表面全体を被覆している。
【0059】
コンデンサ1は、特許文献1に記載されているような外装ケースを備えていない。つまり、コンデンサ1は、いわゆるケースレス構造を採用している。そのため、コンデンサ1は、少なくとも従来の外装ケースに相当する分だけ、軽量化を実現することができる。
【0060】
またコンデンサ素子2は、樹脂外装体3で封止されている。そのため、コンデンサ1は、耐湿性が向上している。さらに樹脂外装体3の表面全体はガスバリアフィルム4で被覆されている。ここで、ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3に比べて、厚さが薄くても、水蒸気などのガスを透過させにくい。そのため、ガスバリアフィルム4を使用しない場合に比べて、樹脂外装体3の厚みを薄くすることができる。このように薄くできる分だけ、更なる軽量化を実現することができる。
【0061】
したがって、第2実施形態に係るコンデンサ1によれば、軽量化を実現し、耐湿性を向上させることができる。
【0062】
(2)詳細
(2.1)構成
第2実施形態に係るコンデンサ1は、いわゆるケースレス構造を採用しており、特許文献1に記載されているような外装ケースを備えていない。つまり、コンデンサ1は、ケースレスコンデンサである。
図5に示すように、コンデンサ1は、コンデンサ素子2と、樹脂外装体3と、ガスバリアフィルム4と、を備える。コンデンサ素子2、樹脂外装体3、及びガスバリアフィルム4は一体化されている。
【0063】
<コンデンサ素子>
コンデンサ素子2は、第1実施形態と同様である。
【0064】
<樹脂外装体>
樹脂外装体3は、第1実施形態と同様である。
【0065】
<ガスバリアフィルム>
ガスバリアフィルム4の構成自体は、第1実施形態と同様である。第2実施形態では、
図5に示すように、ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3の表面全体を被覆している。さらにガスバリアフィルム4は、第1バスバー91及び第2バスバー92の各々の一部を被覆しているが、第1バスバー91及び第2バスバー92の各々の残部は外部に突出している。このように、ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3を外気に触れさせないように隙間なく包んでいる。ガスバリアフィルム4が基材フィルム41とガスバリア層42とを有する場合には、ガスバリア層42が樹脂外装体3に接着され、基材フィルム41が外部に面している(
図6D参照)。このように被覆することで、コンデンサ1の更なる軽量化を実現することができる。その主な理由は、ガスバリアフィルム4が、樹脂外装体3に比べて、厚さが薄くても、水蒸気などのガスを透過させにくいからである。これに対して、樹脂外装体3は、ある程度の厚みを確保しなければ、水蒸気などのガスの透過を抑制することができない。
【0066】
以上から、ガスバリアフィルム4が全く使用されていないコンデンサ1と、ガスバリアフィルム4が使用されているコンデンサ1とを対比すると、両者の耐湿性が同じであっても、後者のコンデンサ1の方がより軽量化することが可能である。
【0067】
(2.2)製造方法
第2実施形態に係るコンデンサ1の製造方法においては、工程Aが第1実施形態と相違し、工程B~Dが第1実施形態と同様である。以下、特に工程Aについて説明し、さらに工程Cについて補足する。
【0068】
<工程A>
工程Aでは、成形用金型6のキャビティ60において、キャビティ60を包囲するようにガスバリアフィルム4を成形用金型6に密着させて配置する。第2実施形態では、
図6Bに示すように、ガスバリアフィルム4を、第1型61の第1凹部601及び第2型62の第2凹部602の各々の少なくとも内面全体に密着させて配置している。このようにガスバリアフィルム4を配置しておくことで、第1型61と第2型62とを閉じたときに、ガスバリアフィルム4がキャビティ60を包囲するようになる(
図6C参照)。ガスバリアフィルム4は、例えば真空引きによりキャビティ60の内面に密着させることができる。なお、後述の半硬化物31の離型操作を容易にするために、ガスバリアフィルム4を配置する前に、第1凹部601及び第2凹部602の内面に離型剤を塗布しておいてもよい。
【0069】
さらに工程Aでは、成形用金型6のキャビティ60において、ガスバリアフィルム4で包囲されるようにコンデンサ素子2を配置する。第2実施形態では、第1型61と第2型62とを閉じたときにコンデンサ素子2がガスバリアフィルム4に接触しないように、ガスバリアフィルム4から離してコンデンサ素子2を配置している(
図6C参照)。このように配置するのは、ガスバリアフィルム4とコンデンサ素子2との間に熱硬化性樹脂組成物30を注入して介在させるためである。そして、第1凹部601と第2凹部602とを対向させ、第1型61と第2型62とを閉じて、キャビティ60内にコンデンサ素子2を配置する。コンデンサ素子2のバスバー9は、第1型61及び第2型62を閉じたときに、第1型61と第2型62との接合部で挟持される。そのため、コンデンサ素子2は、キャビティ60内において浮いた状態で配置される。なお、第2実施形態では、ガスバリアフィルム4から離してコンデンサ素子2を配置しているが、ガスバリアフィルム4から離さずにコンデンサ素子2を配置してもよい。コンデンサ素子2の少なくとも一部がガスバリアフィルム4に接触してもよい。
【0070】
<工程C>
半硬化物31を取り出す際に、スプルー600で硬化した部分が半硬化物31に付着してくるが、この部分は、工程C又は工程Dの後に、適宜、除去される。この除去などの理由で、樹脂外装体3の外面の一部が外部に露出した場合には、この露出した部分に公知の接着剤などを用いてガスバリアフィルム4を適宜接着して被覆すればよい。
【0071】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係るコンデンサ1及びその製造方法について図面を参照して説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0072】
(1)概要
図7に示すように、第3実施形態に係るコンデンサ1は、コンデンサ素子2と、樹脂外装体3と、ガスバリアフィルム4と、金属層5と、を備える。樹脂外装体3は、コンデンサ素子2を封止している。ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3の表面の一部を被覆している。金属層5は、樹脂外装体3の表面の残部を被覆している。
【0073】
コンデンサ1は、特許文献1に記載されているような外装ケースを備えていない。つまり、コンデンサ1は、いわゆるケースレス構造を採用している。そのため、コンデンサ1は、少なくとも従来の外装ケースに相当する分だけ、軽量化を実現することができる。
【0074】
またコンデンサ素子2は、樹脂外装体3で封止されている。そのため、コンデンサ1は、耐湿性が向上している。さらに樹脂外装体3の表面全体はガスバリアフィルム4及び金属層5で被覆されている。ここで、ガスバリアフィルム4及び金属層5は、樹脂外装体3に比べて、厚さが薄くても、水蒸気などのガスを透過させにくい。そのため、ガスバリアフィルム4及び金属層5を使用しない場合に比べて、樹脂外装体3の厚みを薄くすることができる。このように薄くできる分だけ、更なる軽量化を実現することができる。
【0075】
したがって、第3実施形態に係るコンデンサ1によれば、軽量化を実現し、耐湿性を向上させることができる。
【0076】
(2)詳細
(2.1)構成
第3実施形態に係るコンデンサ1は、いわゆるケースレス構造を採用しており、特許文献1に記載されているような外装ケースを備えていない。つまり、コンデンサ1は、ケースレスコンデンサである。
図7に示すように、コンデンサ1は、コンデンサ素子2と、樹脂外装体3と、ガスバリアフィルム4と、金属層5と、を備える。コンデンサ素子2、樹脂外装体3、ガスバリアフィルム4、及び金属層5は一体化されている。
【0077】
<コンデンサ素子>
コンデンサ素子2は、第1実施形態と同様である。
【0078】
<樹脂外装体>
樹脂外装体3は、第1実施形態と同様である。
【0079】
<ガスバリアフィルム>
ガスバリアフィルム4の構成自体は、第1実施形態と同様である。第3実施形態では、
図7に示すように、ガスバリアフィルム4は、樹脂外装体3の表面の一部を被覆している。ただし、第1バスバー91及び第2バスバー92の各々は、樹脂外装体3を被覆するガスバリアフィルム4を貫通して外部に突出している。ガスバリアフィルム4が基材フィルム41とガスバリア層42とを有する場合には、ガスバリア層42が樹脂外装体3に接着され、基材フィルム41が外部に面している(
図8D参照)。このように被覆することで、コンデンサ1の更なる軽量化を実現することができる。その主な理由は、ガスバリアフィルム4が、樹脂外装体3に比べて、厚さが薄くても、水蒸気などのガスを透過させにくいからである。これに対して、樹脂外装体3は、ある程度の厚みを確保しなければ、水蒸気などのガスの透過を抑制することができない。
【0080】
<金属層>
次に金属層5について説明する。金属層5は、水蒸気などのガスを透過させにくいという性質を有する。さらに金属層5は、樹脂外装体3及びガスバリアフィルム4に比べて高い熱伝導性を有する。金属層5は、金属板、めっき層、及び蒸着層などである。金属層5を形成する金属の具体例として、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、マグネシウム、銀、金、ニッケル、及び白金などが挙げられる。
【0081】
図7に示すように、金属層5は、樹脂外装体3の表面の残部を被覆している。このように被覆することで、コンデンサ1の更なる軽量化を実現することができる。その主な理由は、金属層5が、樹脂外装体3に比べて、厚さが薄くても、水蒸気などのガスを透過させにくいからである。これに対して、樹脂外装体3は、ある程度の厚みを確保しなければ、水蒸気などのガスの透過を抑制することができない。さらにコンデンサ素子2が高熱になって樹脂外装体3に熱がこもっても、樹脂外装体3に金属層5が被覆されていることで、放熱効果も得ることができる。なお、短絡防止の観点から、第1バスバー91及び第2バスバー92は、金属層5と接触していない。両者は、電気的に絶縁されている。
【0082】
ここで、「樹脂外装体3の表面の残部」とは、樹脂外装体3の表面全体から、ガスバリアフィルム4が被覆している樹脂外装体3の表面の一部を除いた残りの部分を意味する。つまり、樹脂外装体3の表面全体は、一部及び残部からなる。このように、ガスバリアフィルム4及び金属層5は、樹脂外装体3を外気に触れさせないように隙間なく包んでいる。
【0083】
以上から、ガスバリアフィルム4及び金属層5が全く使用されていないコンデンサ1と、ガスバリアフィルム4及び金属層5が使用されているコンデンサ1とを対比すると、両者の耐湿性が同じであっても、後者のコンデンサ1の方がより軽量化することが可能である。
【0084】
(2.2)製造方法
図8Aに示すように、成形用金型6は、成形型として使用する射出成形用の金型である。成形用金型6は、第1型61と第2型62とから構成され、所望の温度に制御可能に形成されている。第1型61には平坦面611が形成されている。第2型62には凹部602が形成されている。平坦面611及び凹部602は、第1型61及び第2型62を閉じたときに、成形用金型6の内部にキャビティ60を形成する(
図8C参照)。成形用金型6には、キャビティ60に連通する樹脂注入路となるスプルー600が設けられている。スプルー600には、液状の熱硬化性樹脂組成物30を注入するための射出ノズル63が接続されている。射出ノズル63からスプルー600を通ってキャビティ60内に液状の熱硬化性樹脂組成物30を注入して射出成形を行う。
【0085】
第3実施形態に係るコンデンサ1の製造方法においては、工程Aが第1実施形態と相違し、工程B~Dが第1実施形態と同様である。以下、特に工程Aについて説明し、さらに工程Cについて補足する。
【0086】
<工程A>
工程Aでは、成形用金型6のキャビティ60において、ガスバリアフィルム4及び金属層5を成形用金型6に密着させて配置する。第3実施形態では、
図8Bに示すように、ガスバリアフィルム4を第2型62の第2凹部602の少なくとも内面全体に密着させて配置している。さらに金属層5を第1型61の平坦面611に密着させて配置している。このようにガスバリアフィルム4及び金属層5を配置しておくことで、第1型61と第2型62とを閉じたときに、ガスバリアフィルム4及び金属層5がキャビティ60を包囲するようになる(
図8C参照)。ガスバリアフィルム4及び金属層5は、例えば真空引きによりキャビティ60の内面に密着させることができる。なお、後述の半硬化物31の離型操作を容易にするために、ガスバリアフィルム4及び金属層5を配置する前に、平坦面611及び凹部602の内面に離型剤を塗布しておいてもよい。
【0087】
さらに工程Aでは、成形用金型6のキャビティ60において、ガスバリアフィルム4及び金属層5で包囲されるようにコンデンサ素子2を配置する。第3実施形態では、第1型61と第2型62とを閉じたときにコンデンサ素子2がガスバリアフィルム4及び金属層5に接触しないように、ガスバリアフィルム4及び金属層5から離してコンデンサ素子2を配置している(
図8C)。このように配置するのは、ガスバリアフィルム4及び金属層5と、コンデンサ素子2との間に熱硬化性樹脂組成物30を注入して介在させるためである。そして、平坦面611と凹部602とを対向させ、第1型61と第2型62とを閉じて、キャビティ60内にコンデンサ素子2を配置する。コンデンサ素子2のバスバー9は、第1型61及び第2型62を閉じたときに、第1型61と第2型62との接合部で挟持される。そのため、コンデンサ素子2は、キャビティ60内において浮いた状態で配置される。なお、第3実施形態では、ガスバリアフィルム4及び金属層5から離してコンデンサ素子2を配置しているが、コンデンサ素子2の少なくとも一部がガスバリアフィルム4に接触してもよい。ただし、金属層5とコンデンサ素子2とは電気的に絶縁されている。
【0088】
<工程C>
半硬化物31を取り出す際に、スプルー600で硬化した部分が半硬化物31に付着してくるが、この部分は、工程C又は工程Dの後に、適宜、除去される。この除去などの理由で、樹脂外装体3の外面の一部が外部に露出した場合には、この露出した部分に公知の接着剤などを用いてガスバリアフィルム4を適宜接着して被覆すればよい。
【0089】
(変形例)
第1~3実施形態では、樹脂外装体3は、1つのコンデンサ素子2のみを封止しているが、2つ以上のコンデンサ素子2を封止していてもよい。
【0090】
第1~3実施形態では、2つのバスバー9は、樹脂外装体3から前方(X軸の正の向き)及び後方(X軸の負の向き)に突出しているが(
図1、
図5、及び
図7参照)、2つのバスバー9の突出方向は特に限定されない。
【0091】
成形用金型6は、多数個取り金型でもよい。すなわち、第1~3実施形態では、成形用金型6は、1つのキャビティ60のみを有しているが、2つ以上のキャビティ60を有していてもよい。この場合、一度に複数のコンデンサ1を製造することができる。
【0092】
第1~3実施形態では、スプルー600は、第1型61及び第2型62を閉じたときに形成されるが、第1型61又は第2型62のいずれかに設けられていればよい。
【0093】
第3実施形態では、金属層5として金属板を成形用金型6にセットしてコンデンサ1を製造するようにしているが、金属層5の形成は、半硬化物31の完全硬化後でもよい。すなわち、半硬化物31を完全硬化させた後に、ガスバリアフィルム4で被覆されずに樹脂外装体3が露出している部分に、金属層5として金属板を接着したり、めっき層又は蒸着層を形成したりするようにしてもよい。
【0094】
(態様)
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0095】
第1の態様に係るコンデンサ(1)は、コンデンサ素子(2)と、前記コンデンサ素子(2)を封止する樹脂外装体(3)と、前記樹脂外装体(3)の表面の少なくとも一部を被覆するガスバリアフィルム(4)と、を備える。
【0096】
この態様によれば、軽量化を実現し、耐湿性を向上させることができる。
【0097】
第2の態様に係るコンデンサ(1)では、第1の態様において、前記ガスバリアフィルム(4)が前記樹脂外装体(3)の表面全体を被覆する。
【0098】
この態様によれば、軽量化を実現し、耐湿性を向上させることができる。
【0099】
第3の態様に係るコンデンサ(1)は、第1の態様において、金属層(5)を更に備える。前記ガスバリアフィルム(4)が前記樹脂外装体(3)の表面の一部を被覆する。前記金属層(5)が前記樹脂外装体(3)の表面の残部を被覆する。
【0100】
この態様によれば、軽量化を実現し、耐湿性を向上させることができる。
【0101】
第4の態様に係るコンデンサ(1)は、第1~3のいずれかの態様において、前記ガスバリアフィルム(4)が、基材フィルム(41)と、前記基材フィルム(41)上に形成されたガスバリア層(42)と、を有する。前記ガスバリア層(42)が、酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含む。
【0102】
この態様によれば、コンデンサ(1)の耐湿性を更に向上させることができる。
【0103】
第5の態様に係るコンデンサ(1)の製造方法は、以下の工程A~Dを含む。
【0104】
工程A:成形用金型(6)のキャビティ(60)において、ガスバリアフィルム(4)を前記成形用金型(6)に密着させて配置し、コンデンサ素子(2)を配置する工程、
工程B:前記成形用金型(6)のキャビティ(60)に液状の熱硬化性樹脂組成物(30)を注入し、前記熱硬化性樹脂組成物(30)を加熱して半硬化させて半硬化物(31)を形成する工程、
工程C:前記成形用金型(6)のキャビティ(60)から前記半硬化物(31)を取り出す工程、及び
工程D:前記半硬化物(31)を更に加熱して完全硬化させる工程。
【0105】
この態様によれば、軽量で、耐湿性に優れたコンデンサ(1)を製造することができる。
【0106】
第6の態様に係るコンデンサ(1)の製造方法では、第5の態様において、前記工程Aが、成形用金型(6)のキャビティ(60)において、前記キャビティ(60)を包囲するようにガスバリアフィルム(4)を前記成形用金型(6)に密着させて配置し、前記ガスバリアフィルム(4)で包囲されるようにコンデンサ素子(2)を配置する工程である。
【0107】
この態様によれば、軽量で、耐湿性に優れたコンデンサ(1)を製造することができる。
【0108】
第7の態様に係るコンデンサ(1)の製造方法では、第5の態様において、前記工程Aが、成形用金型(6)のキャビティ(60)において、前記キャビティ(60)を包囲するように金属層(5)及びガスバリアフィルム(4)を前記成形用金型(6)に密着させて配置し、前記金属層(5)及び前記ガスバリアフィルム(4)で包囲されるようにコンデンサ素子(2)を配置する工程である。
【0109】
この態様によれば、軽量化を実現し、耐湿性を向上させることができる。
【0110】
第8の態様に係るコンデンサ(1)の製造方法では、第5~7のいずれかの態様において、前記ガスバリアフィルム(4)が、基材フィルム(41)と、前記基材フィルム(41)上に形成されたガスバリア層(42)と、を有する。前記ガスバリア層(42)が、酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含む。
【0111】
この態様によれば、ガスバリア層(42)で水分を吸着することで、耐湿性を更に向上させることができる。
【0112】
第9の態様に係るコンデンサ(1)の製造方法では、第5~8のいずれかの態様において、前記工程B及び前記工程Dにおける加熱温度を、前記ガスバリアフィルム(4)の前記基材フィルム(41)のガラス転移温度よりも低くする。
【0113】
この態様によれば、工程B及び工程Dにおける加熱時にガスバリアフィルム(4)が損傷することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 樹脂外装体
30 熱硬化性樹脂組成物
4 ガスバリアフィルム
41 基材フィルム
42 ガスバリア層
5 金属層
6 成形用金型
60 キャビティ