(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】医療用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/28 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
A61B17/28
(21)【出願番号】P 2023177520
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2023540656の分割
【原出願日】2022-11-11
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2021185276
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520039146
【氏名又は名称】大村 和弘
(73)【特許権者】
【識別番号】592146900
【氏名又は名称】永島医科器械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大村 和弘
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0088781(US,A1)
【文献】国際公開第2008/030893(WO,A2)
【文献】米国特許第3777538(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/24 - A61B 17/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するx軸、y軸およびz軸を設定したとき、
先端部と基端部とを有し、前記y軸方向に延在する長尺形状をなすシャフトと、
前記シャフトの前記先端部に設けられ、開閉可能な開閉部と、
前記シャフトの前記基端部に接続され、親指を掛ける第1の指掛け部と、小指および薬指の少なくとも一方を掛ける第2の指掛け部とを備える把持部と、
前記把持部に対し、前記x軸方向に延在する回動軸を中心として回動可能に設けられた操作部材と、前記操作部材および前記シャフトの前記基端部を連結する連結部と、を備え、該操作部材を回動操作することにより前記開閉部を開閉する操作部と、
前記操作部材に付与されたトルクを前記開閉部に伝達する力伝達部と、を備え、
前記連結部は、前記シャフトの前記基端部に接続され、前記z軸方向から見て前記シャフトと重なった位置に配置された第1の部分と、前記第1の部分の前記シャフトの反対側の端部に接続された第2の部分と、前記第2の部分から前記x軸方向に延在する第3の部分とを有し、
前記操作部材は、人差し指または中指を掛ける第3の指掛け部と、前記第3の部分に接続され、人差し指および中指のうち、前記第3の指掛け部に掛けられた指以外の指を当てる指当て部とを備え、前記指当て部に当てられた指は、前記x軸方向に支持されることを特徴とする医療用器具。
【請求項2】
前記指当て部は、前記操作部材の回動操作の開始から終了までの間、当てられた前記指の腹が接触できる領域に形成されている請求項1に記載の医療用器具。
【請求項3】
前記指当て部は、当てられた前記指を支持する指当て面を有する請求項1または2に記載の医療用器具。
【請求項4】
前記指当て面は、平面で構成され、その法線が前記x軸方向に延在している請求項3に記載の医療用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体に対して使用する医療用器具、例えば、生体組織の把持、圧迫(潰す場合も含む)等の作業(手技)を行う鉗子(例えば、特許文献1参照)、生体組織の切断等の作業を行う鋏等が知られている。
【0003】
従来の鉗子は、管状のシャフトと、シャフトの先端部に開閉可能に設けられたジョーと、シャフトの基端部に設けられ、ジョーの開閉操作を行う操作部と、シャフト内に設けられ、操作部からジョーに力を伝達する力伝達部を有している。この鉗子は、生体の体腔内に挿入して使用する器具である。
【0004】
操作部は、1対の把持部材を有している。また、把持部材は、指を挿入する孔を有する指掛け部を備えている。また、把持部材と把持部材とのいずれか一方または両方が、シャフトに対して、回動軸回りに回動可能に設けられている。
【0005】
鉗子を使用する際は、親指および人差し指をそれぞれ指掛け部に掛け、指掛け部同士を接近、離間させる操作を行って、把持部材を回動軸回りに回動させ、ジョーを開閉する。
【0006】
しかしながら、従来の鉗子では、回動軸に直交する方向(シャフトの中心軸の方向)に沿って並んでいる指掛け部に、2本の指を掛けて、ジョーの開閉操作を行うので、その開閉操作の際、ジョーが移動してしまい(ズレやブレが生じ)、作業に手間がかかるとともに、作業を適確に行うことができない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、容易かつ適確に作業を行うことができる医療用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の医療用器具は、互いに直交するx軸、y軸およびz軸を設定したとき、
先端部と基端部とを有し、前記y軸方向に延在する長尺形状をなすシャフトと、
前記シャフトの前記先端部に設けられ、開閉可能な開閉部と、
前記シャフトの前記基端部に接続され、親指を掛ける第1の指掛け部と、小指および薬指の少なくとも一方を掛ける第2の指掛け部とを備える把持部と、
前記把持部に対し、前記x軸方向に延在する回動軸を中心として回動可能に設けられた操作部材と、前記操作部材および前記シャフトの前記基端部を連結する連結部と、を備え、該操作部材を回動操作することにより前記開閉部を開閉する操作部と、
前記操作部材に付与されたトルクを前記開閉部に伝達する力伝達部と、を備え、
前記連結部は、前記シャフトの前記基端部に接続され、前記z軸方向から見て前記シャフトと重なった位置に配置された第1の部分と、前記第1の部分の前記シャフトの反対側の端部に接続された第2の部分と、前記第2の部分から前記x軸方向に延在する第3の部分とを有し、
前記操作部材は、人差し指または中指を掛ける第3の指掛け部と、前記第3の部分に接続され、人差し指および中指のうち、前記第3の指掛け部に掛けられた指以外の指を当てる指当て部とを備え、前記指当て部に当てられた指は、前記x軸方向に支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開閉部の開閉操作の際、開閉部のズレやブレを防止でき、開閉部を目的の位置に配置することができる。これにより、容易かつ適確に作業を行うことができる。
【0011】
特に、指当て部に人差し指を当てながら第3の指掛け部に掛けた中指で操作部材を回動操作するので、指当て部が無い従来品に比べ、操作時(鉗子による処置時)の器具のブレが防止され、より安定した開閉操作が可能となる。すなわち、より緻密で繊細な治療が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の医療用器具の第1実施形態を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す医療用器具を+y軸側から見た図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
【
図9】
図9は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の医療用器具の第2実施形態を示す連結部の断面図(
図1中xz平面で切断した断面図)である。
【
図11】
図11は、本発明の医療用器具の第3実施形態を示す連結部の断面図(
図1中xz平面で切断した断面図)である。
【
図12】
図12は、本発明の医療用器具の第4実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の医療用器具を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
本発明の医療用器具の第1実施形態について説明する。また、本実施形態では、医療用器具を鉗子に適用した場合について説明する。
【0014】
図1は、本発明の医療用器具の第1実施形態を示す側面図である。
図2は、
図1に示す医療用器具を+y軸側から見た図である。
図3は、
図1に示す医療用器具の部分断面図である。
図4は、
図1に示す医療用器具の部分断面図である。
図5は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
図6は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
図7は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
図8は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
図9は、
図1に示す医療用器具の使用例(使用方法)を説明するための図である。
【0015】
また、説明の都合上、
図1等には、互いに直交する3つの軸として、x軸、y軸およびz軸が図示されている。
【0016】
また、各軸を示す矢印の先端側を「+」、基端側を「-」とする。また、x軸に平行な方向を「x軸方向」、y軸に平行な方向を「y軸方向」、z軸に平行な方向を「z軸方向」と言う。また、+z軸方向側を「上」、-z軸方向側を「下」とも言う。また、z軸方向から見た場合を「平面視」と言う。
【0017】
また、本明細書において、「平行」とは、2つの線または面が、完全な平行である場合のみならず、±5°以内で傾斜している場合も含む。また、本明細書において、「直交」とは、2つの線または面が、完全な直交である場合、すなわち、2つの線または面のなす角が、90°である場合のみならず、85°以上90°未満の場合と、90°より大きく95°以下の場合も含む。
【0018】
図1に示す鉗子1は、生体に対して使用する医療用器具の1例であり、本実施形態では、生体の体腔内に挿入して使用する鉗子である。
【0019】
また、鉗子1を使用する部位は、特に限定されないが、本実施形態では、鉗子1は、鼻腔内で使用される鼻用鉗子である。
【0020】
また、本実施形態では、代表的に、右利き用の鉗子1について説明するが、左利き用の鉗子の場合は、例えば、右利き用の鉗子1と左右対称の構造にすればよい。
【0021】
図1~
図3に示すように、鉗子1(医療用器具)は、基端が閉塞した管状のシャフト2と、シャフト2の先端部21に開閉可能に設けられた開閉部3(ジョー)と、シャフト2の基端部22に接続された把持部4と、シャフト2の基端部22に回動可能に設けられ、開閉部3の開閉操作を行う操作部5と、操作部5から開閉部3に力を伝達する力伝達部6とを有している。本実施形態では、シャフト2の一部が力伝達部6を兼ねている。
【0022】
シャフト2は、長手形状(長尺状)をなし、y軸方向に延在している。すなわち、シャフト2は、y軸方向に延びる直線状をなしている。また、シャフト2の中心軸は、y軸と平行である。
【0023】
なお、シャフト2は、これに限らず、直線状をなす基端部を有していればよく、例えば、1箇所または複数の箇所で湾曲または屈曲していてもよい。
【0024】
また、シャフト2は、移動部2Aと固定部2Bとを有する。移動部2Aおよび固定部2Bは、それぞれ長尺状をなし、z軸方向に重なって配置されている。移動部2Aは、固定部2Bに対し、それらの長手方向、すなわち、y軸方向にスライド可能に構成されている。後述する開閉部3が、
図3に示すような開状態において、後述する操作部5を回動操作することにより、移動部2Aが固定部2Bに対し-y軸方向にスライドする。これにより開閉部3のジョー部材31がジョー部材32に対し接近するように回動し、
図4に示すように、開閉部3が閉状態となる。
【0025】
このように、本実施形態では、シャフト2の移動部2Aが、操作部5から開閉部3に力を伝達する力伝達部6として機能する。
【0026】
また、開閉部3は、ジョー部材31(第1のジョー部材)と、ジョー部材32(第2のジョー部材)とを有している。また、ジョー部材32は、シャフト2の先端部21に固定的に設けられている(接続されている)。また、ジョー部材31は、ジョー部材32の基端部に、回動軸J2回りに回動可能に設けられている。また、回動軸J2は、x軸と平行である。
【0027】
なお、ジョー部材31は、これに限らず、例えば、シャフト2に、回動軸J2回りに回動可能に設けられていてもよい。また、回動軸J2は、これに限らず、例えば、z軸と平行であってもよく、また、x軸(z軸)に対して傾斜していてもよい。
【0028】
また、開閉部3は、これに限らず、例えば、ジョー部材32のみが回動可能であってもよく、また、両方のジョー部材31、32が回動可能であってもよい。
【0029】
図1および
図2に示すように、把持部4は、第1の指掛け部41と、第2の指掛け部42とを有している。また、第1の指掛け部41および第2の指掛け部42は、それぞれ、シャフト2の基端部22に接続された分岐部を介して接続されている。
【0030】
また、第1の指掛け部41は、指(例えば、親指)を挿入する孔411を有している。また、孔411に臨む縁部は、環状をなしているが、これに限らず、その縁部は、切り欠かれていてもよい。また、第1の指掛け部41は、孔411が省略されていてもよい。
【0031】
また、第2の指掛け部42は、指(例えば、薬指、小指)を掛ける長尺状部421を有している。長尺状部421は、第1の指掛け部41の-z軸側に設けられている。長尺状部421は、複数の箇所で湾曲した長手形状をなしている。この長尺状部421は、指を挿入する孔を有していないが、これに限らず、例えば、指を挿入する孔を有していてもよい。この場合、長尺状部421の孔に臨む縁部は、環状をなしていてもよく、また、切り欠かれていてもよい。
【0032】
また、
図1に示すように、操作部5は、回動軸J1を中心として回動可能に設けられた操作部材51と、連結部52とを備える。回動軸J1は、シャフト2の長手方向と異なる方向、すなわち、x軸方向に沿って延在する。この操作部5を操作することにより、操作部材51に付与されたトルクを力伝達部6が開閉部3に伝達し、開閉部3の開状態とすることができる。また、トルクの付与を解除すると、
図3に示すバネ7の作用により、操作者の操作時に操作部材51が回動した方向と反対方向に操作部材51が回動し、開閉部3が閉状態となる。
【0033】
操作部材51は、指当て部53と、第3の指掛け部54と、を有する。指当て部53と第3の指掛け部54とは、シャフト2側からこの順で並んでいる。
【0034】
指当て部53は、指当て面531と、縁部532と、を有する。指当て面531は、人差し指を支持するyz平面と平行な面であり、操作者の人差し指があてられる部分である。
【0035】
縁部532は、指当て面531の-y軸側に位置し、指当て面531よりも+x軸方向に突出した部分である。この縁部532により、操作者の人差し指の位置決めがなされるとともに、操作中の人差し指がずれてしまうのを防止するストッパーとして機能する。
【0036】
図1および
図2に示すように、連結部52は、操作部材51およびシャフト2の基端部22を連結するものである。連結部52は、第1の部分521と、第2の部分522と、第3の部分523とを有する。第1の部分521と、第2の部分522と、第3の部分523とは、この順でシャフト2側から互いに接続されている。
【0037】
第1の部分521は、z軸方向から見てシャフト2と重なった位置に配置され、-z軸側に延在している部分である。
【0038】
第2の部分522は、第1の部分521の-z軸側の端部から-y軸方向に延在している部分である。
【0039】
第3の部分523は、第2の部分522の-y軸側の端部から+x軸側に延在している部分である。第3の部分523の+x軸側の端部には、指当て部53が接続されている。
【0040】
このような構成により、指当て部53は、シャフト2よりも+x軸側に位置している。これにより、操作者は、人差し指をシャフト2の位置まで曲げる必要が無く、作業中、自然な指の形を維持することができる。よって、本発明の効果をより安定的に得ることができる。
【0041】
このような鉗子1は、例えば、
図5に示すように、親指を第1の指掛け部41に掛け、薬指および小指を第2の指掛け部42に掛け、人差し指と中指とを操作部材51に掛けて操作がなされる。この場合、操作部材51の回動操作は、中指のみによってなされ、人差し指は、指当て部53によって支持されている。人差し指が支持された状態で、中指で回動操作を行うため、指当て部が無い従来品に比べ、操作時(鉗子による処置時)の器具のブレが防止され、より安定した開閉操作が可能となる。すなわち、より緻密で繊細な治療が可能となる。
【0042】
指当て面531の面積は、特に限定されず、例えば1cm2以上30cm2以下であるのが好ましく、2cm2以上20cm2以下であるのがより好ましい。これにより、操作者の人差し指をさらに安定的に操作することができ、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0043】
また、指当て面531の形状は、図示のような形状に限定されず、いかなる形状であってもよい。
【0044】
また、指当て面531は、本実施形態では平面であるが、本発明ではこれに限定されず、例えば、湾曲凹面や、湾曲凸面であってもよい。
また、指当て面531には、エンボス加工のような滑り止め加工が施されていてもよい。
【0045】
また、鉗子1の寸法としては、特に限定されず、用途等に応じて適宜設定される。
ここで、本実施形態では、鉗子1は、鼻用鉗子であり、シャフト2の長さは、80mm以上150mm以下であることが好ましく、100mm以上140mm以下であることがより好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、シャフト2の横断面形状は、四角形(図示の構成では、長方形)であり、その頂点を共有する2辺のうちの一方の辺(図示の構成では、x軸方向に延びる辺)の長さ(平均値)は、1.5mm以上4mm以下であることが好ましく、2mm以上3.5mm以下であることがより好ましい。
【0047】
また、他方の辺(図示の構成では、z軸方向に延びる辺)の長さ(平均値)は、2.5mm以上14mm以下であることが好ましく、3mm以上12mm以下であることがより好ましい。
【0048】
また、鉗子1の構成材料としては、特に限定されず、適宜設定される。例えば、ステンレス鋼等の金属材料、樹脂材料等が挙げられる。
【0049】
次に、鉗子1の使用例(使用方法)(手術方法)について、内視鏡下での副鼻腔の手術(内視鏡下副鼻腔手術)に鉗子1を用いる場合を例に挙げて説明する。なお、従来の鉗子に代えて鉗子1を用いること以外は、通常の手術と同様であるので、鉗子1の操作や動きを中心に説明し、その他の説明は簡単に行う。
【0050】
図示はしないが、内視鏡下副鼻腔手術は、電子内視鏡を鼻腔に挿入し、モニター(図示せず)に表示された内視鏡画像を見ながら行う。さらに、ナビゲーションシステムを用いてもよいことは、言うまでもない。
【0051】
まず、右の手指で鉗子1の把持部4を把持する。この際、
図5に示すように、第1の指掛け部41の孔411に親指を挿入し、第1の指掛け部41に親指を掛け、第2の指掛け部42に薬指および小指を掛ける。そして、操作部5に人差し指および中指を掛ける。より具体的には、操作部5の指当て部53に人差し指をあて、第3の指掛け部54に中指を掛ける。
【0052】
次に、鉗子1の操作部5を操作し、開閉部3を閉じる。すなわち、
図4に示すように、人差し指で、操作部5の第3の指掛け部54を+y軸方向に引っ張る。これにより、操作部5は、回動軸J1回りに
図4中の時計回りに回動し、操作部5と連結軸J3を介して連結された移動部2Aは、-y軸方向に移動する。よって、移動部2Aと連結軸J4を介して連結された開閉部3のジョー部材31は、連結軸J4回りおよび回動軸J2回りに
図4中の時計回りに回動し、開閉部3が閉じる。
【0053】
次に、鉗子1を開閉部3から鼻腔に挿入し、鉗子1を押し進め、開閉部3を病変部(患部)に到達させる。
【0054】
次に、操作部5を操作し、開閉部3を開く。すなわち、
図3に示すように、第3の指掛け部54を+y軸方向に引っ張っている中指の力を緩める。バネ7の付勢力で、移動部2Aが+y軸方向に付勢されているので、移動部2Aと連結軸J3を介して連結された操作部5は回動軸J1を中心に反時計回りに回動する。これにより、移動部2Aと連結軸J4を介して連結された開閉部3のジョー部材31は、連結軸J4回りおよび回動軸J2回りに
図3中の反時計回りに回動し、開閉部3が開く。
【0055】
次に、開閉部3のジョー部材31とジョー部材32との間に病変部が位置するように開閉部3を配置する。
【0056】
次に、前記と同様に、操作部5を操作し、開閉部3を閉じ、その開閉部3で病変部を挟んで圧迫し、病変部を潰して(破壊して)除去する。
【0057】
次に、開閉部3が閉じた状態で、鼻腔から鉗子1を抜去する。以降の説明は、省略する。
【0058】
以上説明したように、鉗子1によれば、操作部材51の回動操作は、中指のみによってなされ、人差し指は、指当て部53によって支持されている。人差し指が支持された状態で、中指で回動操作を行うため、指当て部が無い従来品に比べ、操作時(鉗子1による処置時)の器具のブレが防止され、より安定した開閉操作が可能となる。すなわち、より緻密で繊細な治療が可能となる。また、例えば座った状態でも手技を行うことができ、正確な手技が可能となる。
【0059】
次に、鉗子1の把持方法の別の例について説明する。
例えば、
図6に示すように、親指の付け根まで第1の指掛け部41の孔411に挿入して用いてもよい。このような把持方法によっても、安定して鉗子1を把持することができ、前記と同様の効果を発揮することができる。
【0060】
例えば、
図7に示すように、親指を第1の指掛け部41の孔411に挿入することなく、親指と人差し指の間の付け根で第1の指掛け部41を挟むようにして把持してもよい。その他の指の位置は、
図5に示す把持方法と同様である。このような把持方法によっても、安定して鉗子1を把持することができ、前記と同様の効果を発揮することができる。
【0061】
また、例えば、
図8に示すように、親指を第1の指掛け部41の孔411に挿入することなく、親指の先端がシャフトの基端部22に位置するように、すなわち、第1の指掛け部41を握るように把持部4を把持してもよい。このような把持方法によっても、安定して鉗子1を把持することができ、前記と同様の効果を発揮することができる。
【0062】
また、例えば、
図9に示すように、逆さにして鉗子1を把持してもよい。すなわち、42に親指を掛け、第3の指掛け部54に人差し指を掛け、指当て部53に中指を掛け、薬指および小指で第1の指掛け部41を握るように鉗子1を把持してもよい。このような把持方法によっても、安定して鉗子1を把持することができる。
【0063】
以上説明したように、本発明の鉗子1(医療用器具)は、先端部21と基端部22とを有し、長尺形状をなすシャフト2と、シャフト2の先端部21に設けられ、開閉可能な開閉部3と、シャフト2の基端部22に接続され、親指を掛ける第1の指掛け部41と、小指および薬指の少なくとも一方を掛ける第2の指掛け部42とを備える把持部4と、把持部4に対し、シャフト2の長手方向と異なる方向に延在する回動軸J1を中心として回動可能に設けられた操作部材51を備え、該操作部材51を回動操作することにより開閉部3を開閉する操作部5と、操作部材51に付与されたトルクを開閉部3に伝達する力伝達部6と、を有する。そして、操作部材51は、中指を掛ける第3の指掛け部54と、人差し指を当てる指当て部53とを備え、指当て部53に当てられた人差し指は、回動軸J1と平行な方向に支持される。このような鉗子1によれば、操作部材51の回動操作は、中指のみによってなされ、人差し指は、指当て部53によって支持されている。人差し指が支持された状態で、中指で回動操作を行うため、指当て部が無い従来品に比べ、操作時(鉗子1による処置時)の器具のブレが防止され、より安定した開閉操作が可能となる。すなわち、より緻密で繊細な治療が可能となる。また、例えば座った状態でも手技を行うことができ、正確な手技が可能となる。
【0064】
なお、本実施形態では、人差し指が指当て部53によって支持され、中指で回動操作を行う場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、第4実施形態で示すように、中指が指当て部55によって支持され、人差し指で回動操作を行う構成であってもよい。
【0065】
また、指当て部53は、操作部材51の回動操作の開始から終了までの間、人差し指の腹が接触できる領域に形成されている。これにより、指当て部53を必要以上に大きくする必要が無く、また、より安定的な回動操作を実現することができる。
【0066】
また、指当て部53は、人差し指を支持する指当て面531を有する。これにより、人差し指を効果的に支持することができる。よって、より安定的な回動操作を実現することができる。
【0067】
指当て面531は、その法線がシャフト2の延在方向と異なる方向に延在している。これにより、指当て面531が人差し指を効果的に支持することができる。よって、より安定的な回動操作を実現することができる。
【0068】
<第2実施形態>
図10は、本発明の医療用器具の第2実施形態を示す連結部の断面図(
図1中xz平面で切断した断面図)である。
【0069】
以下、第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0070】
第2実施形態は、操作部材の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0071】
図10(a)、(b)および(c)に示すように、本実施形態の鉗子1は、互いに長さが異なる第3の部分523を有する3つの操作部材51を有する。第3の部分523は、第2の部分522に対して着脱自在に構成されている。
【0072】
図10(a)に示す第3の部分523は、3つの中で最も長さが短い。
図10(b)に示す第3の部分523は、3つの中で2番目に長さが短い。
図10(c)に示す第3の部分523は、3つの中で最も長さが長い。
このような3つの操作部材51は、選択的に1つを装着して用いることができる。
【0073】
また、各第3の部分523は、ネジ100が挿入される凹部である雌ネジ部523aを有する。また、第2の部分522は、ネジ100が挿入される貫通孔522aを有する。
【0074】
ネジ100を、貫通孔522aおよび雌ネジ部523aに挿入、螺合させることにより、所望の長さの第3の部分523を有する操作部材51を得ることができる。これにより、操作者は、自分の手のサイズ、指の長さに合わせて、適正な位置に指当て面531が位置している鉗子1を得ることができる。
【0075】
<第3実施形態>
図11は、本発明の医療用器具の第3実施形態を示す連結部の断面図(
図1中xz平面で切断した断面図)である。
【0076】
以下、第3実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0077】
第3実施形態は、操作部材の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0078】
図11(a)、(b)に示すように、本実施形態の鉗子1は、指当て面531のx軸方向の位置を調整可能に構成されている。
【0079】
第2の部分522には、回転部材200が挿入される貫通孔522bが形成されている。また、貫通孔522bの周囲には、+x軸方向に筒状に突出した筒状部522cが形成されている。
【0080】
また、第3の部分523には、-x軸方向に筒状に突出した筒状部523bが形成されている。筒状部523bは、筒状部522cに挿入されている。筒状部523bの内周部は、回転部材200と螺合する雌ネジ部523aとなっている。
【0081】
回転部材200は、雄ネジ部200aを有する棒状をなし、その頭部200bが、第2の部分522の-x軸側に位置し、雄ネジ部200aが貫通孔522bに挿入されている。また、回転部材200の雄ネジ部200aは、筒状部522cの内周部の雌ネジ部523aと係合している。
【0082】
また、回転部材200は、リング状の支持部材300によって、回転可能、かつ、x軸方向への移動が規制された状態で指示されている。
【0083】
図11(a)に示す状態では、指当て面531のx軸方向の位置が最も-x軸側、すなわち、シャフト2に近い位置となっている。この状態から回転部材200を回転させることにより、指当て面531のx軸方向の位置が-x軸側、すなわち、シャフト2から遠ざかっていく。
【0084】
このように、本実施形態によれば、指当て面531のx軸方向の位置を連続的に調整可能である。よって、操作者は、自分の手のサイズ、指の長さに合わせて、さらに適正な位置に指当て面531が位置している鉗子1を得ることができる。
【0085】
<第4実施形態>
図12は、本発明の医療用器具の第4実施形態を示す側面図である。
以下、第4実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0086】
第4実施形態は、操作部材の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0087】
図12に示すように、操作部5は、指当て部55と、第3の指掛け部56と、を有する。また、指当て部55は、指あて面551を有する。第3の指掛け部56および指当て部55は、シャフト2側からこの順で並んで配置されている。
【0088】
本実施形態では、人差し指が第3の指掛け部56に掛けられ、中指が指あて部55に当てられる。この状態で人差し指で回動操作が行われ、中指が回動軸J1と平行な方向に支持される。
【0089】
このような本実施形態においても、前記実施形態と同様に、操作中の器具のブレが防止され、より安定した開閉操作が可能となる。すなわち、より緻密で繊細な治療が可能となる。また、例えば座った状態でも手技を行うことができ、正確な手技が可能となる。
【0090】
以上、本発明の医療用器具を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0091】
また、前記実施形態では、力伝達部は、リンク機構で構成されているが、本発明では、力伝達部は、これに限定されず、例えば、ワイヤーを有し、そのワイヤーで牽引する構成であってもよい。
【0092】
また、前記実施形態では、鉗子は、生体の体腔内に挿入して使用する鉗子であるが、本発明では、鉗子は、これに限定されず、生体の体腔内に挿入しないで使用する鉗子であってもよい。
【0093】
また、前記実施形態では、鉗子は、鼻用鉗子(鼻に用いる鉗子)であるが、本発明では、鉗子は、これに限定されず、他の部位に使用する鉗子であってもよい。他の部位としては、例えば、腹腔、尿道、膀胱、膣、頭蓋内、耳、眼等が挙げられる。
【0094】
また、各用途の鉗子の寸法としては、特に限定されないが、以下の寸法であることが好ましい。
【0095】
[腹腔]
シャフトの長さは、160mm以上450mm以下であることが好ましく、200mm以上350mm以下であることがより好ましい。また、シャフトの横断面形状が円形の場合、直径は、その長手方向に沿って一定であるのが好ましい。
【0096】
[頭蓋内]
シャフトの長さは、100mm以上170mm以下であることが好ましく、120mm以上160mm以下であることがより好ましい。
【0097】
[耳]
シャフトの長さは、45mm以上90mm以下であることが好ましく、50mm以上85mm以下であることがより好ましい。
【0098】
また、前記実施形態では、医療用器具を鉗子に適用した場合について説明したが、本発明では、医療用器具は、これに限定されず、この他、例えば、開閉部が刃を有する鋏等が挙げられる。
【0099】
また、シャフトと把持部とは、着脱可能に構成されていてもよい。この場合、長さ、太さ、形状のうちの少なくとも1つが異なる複数のシャフトを用意しておき、用途に応じてこれらを選択的に装着して用いてもよい。
【0100】
また、開閉部が有する一対のジョー部材は、シャフトに対して着脱自在に構成されていてもよい。この場合、長さ、太さ、形状、機能のうちの少なくとも1つが異なる複数のジョー部材を用意しておき、用途に応じてこれらを選択的に装着して用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の医療用器具は、先端部と基端部とを有し、長尺形状をなすシャフトと、前記シャフトの前記先端部に設けられ、開閉可能な開閉部と、前記シャフトの前記基端部に接続され、親指を掛ける第1の指掛け部と、小指および薬指の少なくとも一方を掛ける第2の指掛け部とを備える把持部と、前記把持部に対し、前記シャフトの長手方向と異なる方向に延在する回動軸を中心として回動可能に設けられた操作部材を備え、該操作部材を回動操作することにより前記開閉部を開閉する操作部と、前記操作部材に付与されたトルクを前記開閉部に伝達する力伝達部と、を有し、前記操作部材は、人差し指または中指を掛ける第3の指掛け部と、人差し指および中指のうち、前記第3の指掛け部に掛けられた指以外の指を当てる指当て部とを備え、前記指当て部に当てられた指は、前記回動軸と平行な方向に支持されることを特徴とする。これにより、容易かつ適確に作業を行うことができる医療用器具を提供することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 :鉗子
2 :シャフト
2A :移動部
2B :固定部
3 :開閉部
4 :把持部
5 :操作部
6 :力伝達部
7 :バネ
21 :先端部
22 :基端部
31 :ジョー部材
32 :ジョー部材
41 :第1の指掛け部
42 :第2の指掛け部
51 :操作部材
52 :連結部
53 :指当て部
54 :第3の指掛け部
55 :指当て部
56 :第3の指掛け部
100 :ネジ
200 :回転部材
200a :雄ネジ部
200b :頭部
300 :支持部材
411 :孔
421 :長尺状部
521 :第1の部分
522 :第2の部分
522a :貫通孔
522b :貫通孔
522c :筒状部
523 :第3の部分
523a :雌ネジ部
523b :筒状部
531 :指当て面
532 :縁部
551 :指あて面
J1 :回動軸
J2 :回動軸
J3 :連結軸
J4 :連結軸