(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】歯科治療ユニット
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20240126BHJP
A61G 15/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61C19/00 D
A61G15/00 P
(21)【出願番号】P 2018189094
(22)【出願日】2018-10-04
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新谷 勇人
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-503053(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0326134(KR,Y1)
【文献】特開昭62-161357(JP,A)
【文献】特開2004-174164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0227292(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第03109721(DE,A1)
【文献】特開2010-273917(JP,A)
【文献】特開2003-235876(JP,A)
【文献】特開平07-213541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が着座する歯科治療用椅子と、処置者が使用する器具を保持するアシスタントホルダーと、前記歯科治療用椅子と前記アシスタントホルダーとを接続するアシスタントアームとを備えた歯科治療ユニットであって、
前記歯科治療用椅子が、コンターシートと
該コンターシートに対する起立角度を調整自在なバックレストとを有し、
前記アシスタントアームが、前記コンターシートの底部の後方に前端
を連結
した第1アームと、該第1アームの後端に一端
を連結
して前記アシスタントホルダーに他端
を連結
した第2アームとを有して前記歯科治療用椅子と共に昇降自在であり、
前記第1アームが、
前記バックレストを水平に倒した状態で前記バックレストの下方に位置して前記歯科治療用椅子の両側方に向けて回動自在であり、
前記第1アームの後端が、前記バックレストを水平に倒した状態で前記バックレストの下方に位置し、
前記第2アームが、
前記第1アームと接続して水平方向に延びる水平腕部と、前記アシスタントホルダーと接続して鉛直方向に延びる鉛直腕部と、前記水平腕部と前記鉛直腕部とを接続した屈曲腕部とを有して前記バックレストの下方に位置する第1アームに対して回動自在であり、
前記アシスタントホルダーが、前記歯科治療用椅子のバックレストを
水平に倒した状態で前記歯科治療用椅子の後方を移動自在であ
り、
前記歯科治療用椅子のバックレストを水平に倒した状態において、前記歯科治療用椅子と前記鉛直腕部および前記水平腕部との間に間隙が形成されていることを特徴とする歯科治療ユニット。
【請求項2】
前記第1アームと前記歯科治療用椅子との間に回動抵抗を付与する回動抵抗付与手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療ユニット。
【請求項3】
前記第2アームの回動範囲を制限する回動範囲規制手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の歯科治療ユニット。
【請求項4】
前記アシスタントホルダーに保持された器具と前記歯科治療用椅子と接続する接続部材を備え、
前記接続部材が、前記アシスタントアームの外部に配置されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載の歯科治療ユニット。
【請求項5】
前記歯科治療用椅子の側方にスピットンを備え、
前記スピットンが、前記アシスタントホルダーの可動範囲の外に配置されていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1つに記載の歯科治療ユニット。
【請求項6】
前記アシスタントアームの第2アームが、前記アシスタントホルダーの中心で前記アシスタントホルダーと連結していることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1つに記載の歯科治療ユニット。
【請求項7】
前記第2アームと前記アシスタントホルダーとの間の回動抵抗が、前記第1アームと前記第2アームとの間の回動抵抗より小さいことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1つに記載の歯科治療ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療用椅子と、アシスタントホルダーと、アシスタントアームとを備えた歯科治療ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者用椅子の側方のうちの一方側に設けられたアシスタントユニットに歯科衛生士や歯科助手といった治療補助者が使用する器具を具備した歯科ユニットが知られている(例えば、特許文献1)。
このアシスタントユニットの下端には、ハンガー支柱が回動自在に取り付けられている。
そして、このハンガー支柱の他端には、アシスタントが使用する器具を懸架するハンガー部が、ハンガー支柱に対して水平面内に回動自在に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている歯科ユニットでは、アシスタントユニットにハンガー部が取り付けられているため、患者が歯科ユニットにアプローチする際に、ハンガー部がアプローチの障害となってしまい、患者がアシスタントユニット側から患者用椅子にアプローチしにくくなっていた。
すなわち、従来の歯科ユニットでは、治療室における歯科ユニットの配置に制約が課されていた。
【0005】
また、歯科医師と治療補助者との二人で患者の治療にあたる際、治療補助者の背後付近にハンガー部が位置してしまうため、処置者(歯科医師や治療補助者)の立ち位置や動作範囲が限られていた。
【0006】
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、歯科治療用椅子のバックレストを水平に倒した状態であっても複数人で患者を治療する際に処置者の立ち位置や作業環境を十分に確保して処置者の作業性が向上し、しかも、治療室における配置の自由度が向上する歯科治療ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、患者が着座する歯科治療用椅子と、処置者が使用する器具を保持するアシスタントホルダーと、前記歯科治療用椅子と前記アシスタントホルダーとを接続するアシスタントアームとを備えた歯科治療ユニットであって、前記歯科治療用椅子が、コンターシートと該コンターシートに対する起立角度を調整自在なバックレストとを有し、前記アシスタントアームが、前記コンターシートの底部の後方に前端を連結した第1アームと、該第1アームの後端に一端を連結して前記アシスタントホルダーに他端を連結した第2アームとを有して前記歯科治療用椅子と共に昇降自在であり、前記第1アームが、前記バックレストを水平に倒した状態で前記バックレストの下方に位置して前記歯科治療用椅子の両側方に向けて回動自在であり、前記第1アームの後端が、前記バックレストを水平に倒した状態で前記バックレストの下方に位置し、前記第2アームが、前記第1アームと接続して水平方向に延びる水平腕部と、前記アシスタントホルダーと接続して鉛直方向に延びる鉛直腕部と、前記水平腕部と前記鉛直腕部とを接続した屈曲腕部とを有して前記バックレストの下方に位置する第1アームに対して回動自在であり、前記アシスタントホルダーが、前記歯科治療用椅子のバックレストを水平に倒した状態で前記歯科治療用椅子の後方を移動自在であり、前記歯科治療用椅子のバックレストを水平に倒した状態において、前記歯科治療用椅子と前記鉛直腕部および前記水平腕部との間に間隙が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1アームと前記歯科治療用椅子との間に回動抵抗を付与する回動抵抗付与手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記第2アームの回動範囲を制限する回動範囲規制手段を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれか1つの発明において、前記アシスタントホルダーに保持された器具と前記歯科治療用椅子と接続する接続部材を備え、前記接続部材が、前記アシスタントアームの外部に配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1~4のいずれか1つの発明において、前記歯科治療用椅子の側方にスピットンを備え、前記スピットンが、前記アシスタントホルダーの可動範囲の外に配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1~5のいずれか1つの発明において、前記アシスタントアームの第2アームが、前記アシスタントホルダーの中心で前記アシスタントホルダーと連結していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1~6のいずれか1つの発明において、前記第2アームと前記アシスタントホルダーとの間の回動抵抗が、前記第1アームと前記第2アームとの間の回動抵抗より小さいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、歯科治療用椅子のバックレストを水平に倒した状態であっても複数人で患者を治療する際に処置者の立ち位置や作業環境を十分に確保して処置者の作業性が向上し、しかも、治療室における配置の自由度が向上する歯科治療ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯科治療ユニットの斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る歯科治療ユニットの右側面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る歯科治療ユニットの平面図。
【
図4】本発明の一実施形態に係るアシスタントアーム周辺の拡大平面図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る第1アームと第2アームとの連結構造を示す斜視分解図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の歯科治療ユニットに係る好適な実施形態について説明する。
なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0018】
<1.歯科治療ユニットの概要>
まず、
図1乃至
図7を用いて本発明の一実施形態である歯科治療ユニット100について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る歯科治療ユニットの斜視図であり、
図2は本発明の一実施形態に係る歯科治療ユニットの右側面図であり、
図3は本発明の一実施形態に係る歯科治療ユニットの平面図であり、
図4は本発明の一実施形態に係るアシスタントアーム周辺の拡大平面図であり、
図5は
図2のV-V断面図であり、
図6は
図4のVI-VI断面図であり、
図7は本発明の一実施形態に係る第1アームと第2アームとの連結構造を示す斜視分解図である。
【0019】
図1に示すように歯科治療ユニット100は、床面に設置される下台110と、この下台110と連結され、患者が着座する歯科治療用椅子120と、歯科治療用椅子120の右側方に連結され、患者がうがい等をする際に必要な水を供給するスピットン130と、歯科治療用椅子120の左側方に連結され、患者の口腔内を照らす無影灯140と、処置者が使用する器具Tを保持するアシスタントホルダー150と、このアシスタントホルダー150と歯科治療用椅子120とを接続するアシスタントアーム160と、器具Tと歯科治療用椅子120とを接続する接続部材170とを備えている。
【0020】
<1.2.下台>
下台110には、床下の給排水管と接続されており、圧縮空気源を内蔵している。
また、この下台110は、歯科治療用椅子120に接続される昇降アーム111(
図2参照)および昇降アーム111を動かす駆動機構(図示せず)を備えている。
これにより、歯科治療用椅子120は、上下に昇降自在となっている。
【0021】
<1.3.歯科治療用椅子>
歯科治療用椅子120は、患者の臀部を支持するコンターシート121と、このコンターシート121に連結され患者の背中を支持するバックレスト122と、このバックレスト122に連結され患者の頭部を支持するヘッドレスト123とを有している。
【0022】
コンターシート121は水平方向に平坦なシートであり、その底部121aが下台110の昇降アーム111と接続されている。
【0023】
コンターシート121の底部121aの後方側の左右中央付近には、
図4に示すように、後述するアシスタントアーム160と接続されるアーム受け121bが設けられている。
このアーム受け121bの周側面の左側には第1位置規制ピン121b1が設けられており、アーム受け121bの周側面の右側には第2位置規制ピン121b2が設けられている。
【0024】
また、コンターシート121の底部121aの後方側にはアーム受け121bを隠蔽する後方カバー121cが設けられている。
そして、この後方カバー121cの背面側には、
図7に示すように、背面視で逆L字状の切り欠き121c1が形成されている。
【0025】
バックレスト122は、コンターシート121に対する起立角度が調整自在になっている。
また、バックレスト122の上部には、ヘッドレスト123を収容可能な凹部122aが形成されている。
【0026】
ヘッドレスト123は、バックレスト122に対する上下方向の位置が調整自在になっている。
【0027】
<1.4.スピットン>
スピットン130は、コンターシート121の底部121aと一端が接続されるスピットンアーム131と、このスピットンアーム131の他端が接続される共に内部に給排水機構を備えた給排水機構部132と、給排水機構部132の上部に設けられ患者がうがいした水を受けるスピットン本体133と、給排水機構部132の上部に設けられる吐水部134とを有している。
また、スピットン130は、
図2に示すように、下台110から距離Hだけ離間している。
【0028】
スピットンアーム131は、歯科治療用椅子120に対して回動する。
また、スピットンアーム131と歯科治療用椅子120との間には、スピットンアーム131の回動範囲を制限するスピットンアーム回動範囲規制手段(図示せず)が設けられている。
これにより、スピットンアーム131は、
図3に示すように、θaで示す範囲(スピットンアーム回動範囲)を回動自在になっている。
【0029】
さらに、スピットンアーム131と歯科治療用椅子120との間には、スピットンアーム回動抵抗付与手段(図示せず)が設けられている。
このスピットンアーム回動抵抗付与手段により、歯科治療用椅子120に対してスピットンアーム131を回動しにくくすることができる。
加えて、スピットンアーム131と歯科治療用椅子120との間には、スピットンアーム131の回動をロックするスピットンアーム回動ロック手段(図示せず)が設けられている。
このスピットンアーム回動ロック手段により、歯科治療用椅子120に対するスピットンアーム131の位置を所定位置に固定することができる。
【0030】
給排水機構部132は、歯科治療用椅子120から電源が供給されていると共に歯科治療用椅子120と給水管および排水管(共に図示せず)によって連結されている。
また、給排水機構部132の内部には、電磁弁等が設けられている。
この電磁弁は、前述の給水管および吐水部134と連結されており、吐水部134への吐水を制御している。
給排水機構部132の頂部には、患者がうがいのために使用するコップを載置するコップ受け皿132aが設けられている。
【0031】
このように構成された給排水機構部132は、スピットンアーム131に対して回動する。
また、給排水機構部132とスピットンアーム131との間には、給排水機構部132の回動範囲を制限するスピットン回動範囲規制手段(図示せず)が設けられている。
これにより、給排水機構部132は、
図3に示すように、θbで示す範囲(給排水機構部回動範囲)を回動自在になっている。
【0032】
さらに、給排水機構部132とスピットンアーム131との間には、スピットン回動抵抗付与手段(図示せず)が設けられている。
このスピットン回動抵抗付与手段により、スピットンアーム131に対して給排水機構部132を回動しにくくすることができる。
さらに、給排水機構部132とスピットンアーム131との間には、給排水機構部132の回動をロックするスピットン回動ロック手段(図示せず)が設けられている。
このスピットン回動ロック手段により、スピットンアーム131に対する給排水機構部132の位置を所定位置に固定することができる。
【0033】
<1.5.アシスタントホルダー>
アシスタントホルダー150は、
図3及び
図4に示すように、平面視で矩形状である。
アシスタントホルダー150は、口腔内を吸引するバキュームや、水や空気を噴出するシリンジといった器具Tを複数保持している。
また、アシスタントホルダー150は、スピットン130の給排水機構部132の電磁弁を開閉する吐水ボタン151を有している。
この吐水ボタン151を押すことで、吐水部134から吐水が開始される。
【0034】
アシスタントホルダー150は、アシスタントアーム160に対して回動自在となっている。
アシスタントホルダー150の回転中心Phは、アシスタントホルダー150の前後方向および左右方向の中心となっている。
なお、ここでいう「中心」とは、アシスタントホルダー150の前後方向および左右方向の概ね中心という程度の意味である。
【0035】
<1.6.接続部材>
接続部材170は、例えば電気配線やホースであり、一端が歯科治療用椅子120内の端子や継手に接続されている。
そして、この接続部材170は、アシスタントアーム160の内部を通って器具Tと接続されるのではなく、アシスタントアーム160から露出して器具Tと接続されている。
すなわち、接続部材170は、アシスタントアーム160の外部に配置されている。
【0036】
<2.アシスタントアーム>
アシスタントアーム160は、
図2に示すように、前端が歯科治療用椅子120に連結され、歯科治療用椅子120に対して回動する第1アーム161と、この第1アーム161に対して回動する第2アーム162とを有している。
【0037】
<2.1.第1アーム>
第1アーム161は、
図2および
図5等に示すように、水平方向に伸びる部材であり、
図6に示すように、前端側には第1回動軸161aが取り付けられている。
第1回動軸161aの下端側には雄ネジが形成されている。
さらに、第1アーム161の前端側の下面には、
図6等に示すように、ピン161bが設けられている。
【0038】
第1アーム161の後端側には、
図7に示すように、平面視円形の開口161cが形成されている。
第1アーム161の開口161cの外側には、さらに、平面視で円弧状の回動範囲規制溝161dが形成されている。
【0039】
さらに、
図6等に示すように、第1アーム161の後端側の下部には、器具Tと歯科治療用椅子120とを接続する接続部材170を保持するケーブルホルダー161eが設けられている。
【0040】
<2.2.第2アーム>
第2アーム162は、
図2に示すように、第1アーム161の後端に前端が連結されると共にアシスタントホルダー150に後端が連結されている。
そして、第2アーム162は、第1アーム161と接続される水平腕部162aと、アシスタントホルダー150と接続される鉛直腕部162bと、水平腕部162aと鉛直腕部162bとを滑らかに接続する屈曲腕部162cとを有している。
【0041】
水平腕部162aは、
図2に示すように水平方向に延びており、
図6に示すように、前端側には鉛直方向に伸びる第2回動軸162a1がボルトBによって固定されている。
【0042】
鉛直腕部162bは、
図2に示すように鉛直方向に延びている。
アシスタントホルダー150は、鉛直腕部162bに対して回動自在になっている。
【0043】
また、
図2に示すように、歯科治療用椅子120のバックレスト122を倒した状態において、水平腕部162aと歯科治療用椅子120との間には鉛直方向に間隙Dvが形成されている。
歯科治療用椅子120のバックレスト122を倒した状態において、鉛直腕部162bと歯科治療用椅子120との間には水平方向に間隙Dhが形成されている。
【0044】
<2.3.歯科治療用椅子と第1アームとの連結>
第1アーム161は、第1回動軸161aを介して、コンターシート121のアーム受け121bと連結されている。
これにより、第1アーム161はアーム受け121bに対して回動自在となり、第1アーム161は歯科治療用椅子120に対して回動する。
【0045】
第1回動軸161aは、雌ネジが形成された第1アーム締結ナットN1を第1回動軸161aに向かって螺入することで、第1回動軸161aがアーム受け121bから抜けなくなる。
そして、第1アーム締結ナットN1の締め付け具合を調整することで第1回動軸161aが回動しにくくなる。
すなわち、第1アーム締結ナットN1は、第1アーム161と歯科治療用椅子120との間に回動抵抗を付与する第1アーム161に回動抵抗を付与する第1アーム回動抵抗付与手段(回動抵抗付与手段)として機能する。
【0046】
また、第1アーム161のピン161bは、
図4に示すように、アーム受け121bの第1位置規制ピン121b1と第2位置規制ピン121b2との間で形成される範囲θ1を動く。
したがって、第1アーム161の回動範囲はθ1に限定され、第1アーム161は
図5に示すように切り欠き121c1内を回動自在となっている。
すなわち、第1アーム161は歯科治療用椅子120の左側および右側の両側方に向けて回動自在になっている。
【0047】
<2.4.第1アームと第2アームとの連結>
図6および
図7に示すように、第1アーム161と第2アーム162とを連結するには、第2回動軸162a1を第1アーム161の開口161cに挿入する。
そして、ボルトBを回動範囲規制溝161d、第2回動軸162a1の順に挿通する。
この状態でボルトBを水平腕部162aに螺合させ、最後に第2アーム締結ナットN2を第2回動軸162a1に向かって螺入させる。
第2回動軸162a1は、雌ネジが形成された第2アーム締結ナットN2を第2回動軸162a1に向かって螺入することで、第2回動軸162a1が第1アーム161から抜けなくなる。
これにより、第2アーム162は第1アーム161に対して回動自在となり、第2アーム162は第1アーム161に対して回動する。
【0048】
そして、第2アーム締結ナットN2の締め付け具合を調整することで第2回動軸162a1が回動しにくくなる。
すなわち、第2アーム締結ナットN2は、第1アーム161と第2アーム162との間に回動抵抗を付与する第2アーム回動抵抗付与手段として機能する。
【0049】
また、第2アーム162の回動範囲θ2は、
図3および
図7に示すように、回動範囲規制溝161dが形成されている範囲のみとなる。
すなわち、回動範囲規制溝161dは、第2アーム162の回動範囲を制限するに回動範囲規制手段として機能する。
【0050】
なお、第1アーム161と第2アーム162との間の回動抵抗(回動のしにくさ)は、第2アーム162とアシスタントホルダー150との間の回動抵抗より大きくなっている。
すなわち、第2アーム162とアシスタントホルダー150との間の回動抵抗は、第1アーム161と第2アーム162との間の回動抵抗より小さい。
【0051】
<2.5.アシスタントホルダーの可動範囲>
以上のように第1アーム161の回動範囲θ1、第2アーム162の回動範囲θ2が定められていることにより、アシスタントアーム160の可動範囲θAは、
図3に示すような範囲となり、歯科治療用椅子120の後背側で任意の位置を取ることがほぼ可能となっている。
加えて、前述のように、アシスタントホルダー150がアシスタントアーム160に対して360度回動自在であるため、アシスタントホルダー150は歯科治療用椅子120の後背側をほぼ移動自在となる。
【0052】
また、
図3に示すように、アシスタントホルダー150の可動範囲(すなわちアシスタントアーム160の可動範囲)とスピットン130の可動範囲θsとは重複しない。
すなわち、スピットン130は、アシスタントホルダー150の可動範囲の外に配置されている。
【0053】
<3.作用効果>
このように構成され動作する歯科治療ユニット100は、第1アーム161が、歯科治療用椅子120の両側方に向けて回動自在であり、第2アーム162が、第1アーム161に対して回動自在であることにより、アシスタントホルダー150が歯科治療用椅子120の後方を移動自在となるため、患者の導入位置に制約がなくなり、治療室における歯科治療ユニットの配置自由度を向上させることができる。
さらに、処置者が複数人で患者を治療する際に、処置者の立ち位置や作業環境を十分に確保可能となるため、処置者の作業性を向上させることができる。
【0054】
さらに、第1アーム161に回動抵抗を付与する回動抵抗付与手段である第1アーム締結ナットN1を備えていることにより、第1アーム161に回動抵抗付与されるため、例えば、第1アーム161に処置者の体が当たった程度であっても第1アーム161が回動しないようにすることができる。
【0055】
さらに、第2アーム162の回動範囲を制限する回動範囲規制手段である回動範囲規制溝161dを備えていることにより、第2アーム162が360度回動しなくなるため、例えば、第2アーム162が歯科治療用椅子120と接触することを防ぐことができる。
【0056】
さらに、歯科治療用椅子120のバックレスト122を水平に倒した状態において、歯科治療用椅子120と鉛直腕部162bおよび水平腕部162aとの間に間隙Dh、Dvが形成されていることにより、バックレスト122を倒した状態でアシスタントアーム160が回動させたとしても、アシスタントアーム160が歯科治療用椅子120と接触しないため、バックレスト122を水平に倒した状態であってもアシスタントホルダー150の位置を調整することが可能になり、より処置者の作業性を向上させることができる。
【0057】
さらに、接続部材170が、アシスタントアーム160の外部に配置されていることにより、アシスタントアーム160の内部に接続部材170を通す場合に比べてアシスタントアーム160を細くすることが可能になるため、アシスタントアーム160が軽くなり、アシスタントアーム160の慣性モーメントや歯科治療椅子にかかるアシスタントアーム160の鉛直方向に曲げモーメントを小さくすることができる。
【0058】
さらに、アシスタントホルダー150の可動範囲θAの外にスピットン130が配置されていることにより、アシスタントホルダー150がスピットン130に接触しないため、スピットン130の位置に関係なくアシスタントホルダー150の位置を調整可能になり、より処置者の作業性を向上させることができる。
【0059】
さらに、アシスタントアーム160の第2アーム162が、アシスタントホルダー150の中心でアシスタントホルダー150と連結していることにより、アシスタントホルダー150の端部でアシスタントアーム160と接続されている場合に比べて、アシスタントホルダー150とアシスタントアーム160との連結部分から最も遠い位置に収容されている器具Tの回転半径が小さくなるため、アシスタントホルダー150に収容されている器具Tを使用する処置者にとっての使い勝手を向上させることができる。
【0060】
さらに、第2アーム162とアシスタントホルダー150との間の回動抵抗が、第1アーム161と第2アーム162との間の回動抵抗より小さいことにより、処置者がアシスタントホルダー150を回転させた際に、第2アーム162まで一緒に回動してしまうことが抑制されるため、アシスタントホルダー150に収容された器具Tを使用する処置者の作業性をより向上させることができる。
【0061】
<変形例>
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。
【0062】
例えば、上記実施形態において、歯科治療ユニット100の右側方にスピットン130、左側方に無影灯140を連結されているが、歯科治療ユニット100の左側方にスピットン、右側方に無影灯を連結してもよいし、歯科治療ユニット100の同じ側にスピットンと無影灯とを連結してもよい。
【0063】
例えば、上記実施形態において、下台110が、圧縮空気源を内蔵しているが、圧縮空気源を歯科治療ユニット100の外部に設けてもよい。
この場合、下台110は、歯科治療ユニット100の外部に設けられた圧縮空気源と接続される。
【0064】
例えば、上記実施形態においては、アシスタントホルダーは器具を複数保持しているが、保持している器具の数は1つであってもよい。
【0065】
例えば、上記実施形態においては、スピットンは歯科治療用椅子と共に昇降自在であるが、床面に対して固定されるものであってもよい。
【0066】
例えば、上記実施形態においては、スピットンは給排水機構部ごと回動するものであるが、スピットン本体のみが回動するものであってもよい。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、無影灯は歯科治療用椅子に設けられているが、床面や天井に設けて歯科治療用椅子と別体にしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100 … 歯科治療ユニット
110 … 下台
111 … 昇降アーム
120 … 歯科治療用椅子
121 … コンターシート
121a … 底部
121b … アーム受け
121b1 … 第1位置規制ピン
121b2 … 第2位置規制ピン
121c … 後方カバー
121c1 … 切り欠き
122 … バックレスト
123 … ヘッドレスト
130 … スピットン
131 … スピットンアーム
132 … 給排水機構部
133 … スピットン本体
134 … 吐水部
140 … 無影灯
150 … アシスタントホルダー
151 … 吐水ボタン
160 … アシスタントアーム
161 … 第1アーム
161a … 第1回動軸
161b … ピン
161c … 開口
161d … 回動範囲規制溝(回動範囲規制手段)
161e … ケーブルホルダー
162 … 第2アーム
162a … 水平腕部
162a1 … 第2回動軸
162b … 鉛直腕部
162c … 屈曲腕部
170 … 接続部材
T … 器具
N1 … 第1アーム締結ナット(回動抵抗付与手段)
N2 … 第2アーム締結ナット
B … ボルト
Dh … 間隙
Dv … 間隙
Ph … アシスタントホルダーの回転中心
θ1 … 第1アームの回動範囲
θ2 … 第2アームの回動範囲
θA … アシスタントアームの可動範囲
θa … スピットンアーム回動範囲
θb … 給排水機構部回動範囲
θs … スピットンの回動範囲