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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】錠剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240126BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20240126BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240126BHJP
   A23L 29/30 20160101ALN20240126BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A23L33/00
A61K9/22
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A23L29/30
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019110796
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2019216714
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2018113596
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】上西 伸卓
(72)【発明者】
【氏名】根岸 辰成
(72)【発明者】
【氏名】向西 直登
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-217566(JP,A)
【文献】国際公開第2007/074909(WO,A1)
【文献】特開2003-267889(JP,A)
【文献】特表2001-507359(JP,A)
【文献】特表2016-510021(JP,A)
【文献】特表2002-541090(JP,A)
【文献】特表平06-503312(JP,A)
【文献】特表平06-503310(JP,A)
【文献】特開平04-243838(JP,A)
【文献】特開昭56-092816(JP,A)
【文献】特開昭63-227519(JP,A)
【文献】特表2013-504615(JP,A)
【文献】特開平06-316517(JP,A)
【文献】特開2005-029557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、並びに(C)成分を含む錠芯を具備することを特徴とする徐放性錠剤。
(A)ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(B)ヒドロキシプロピルセルロース
(C)還元麦芽糖、澱粉及び麦芽糖
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放性に優れた錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康指向の高まりにより、健康の増進に有用な成分を錠剤形態のサプリメントとして服用することが広く行われている。この錠剤の中には、有用な成分を徐々に放出し、その効果を長期にわたり持続させることを目的とした徐放性の錠剤がある。
【0003】
この徐放性を付与する方法としては、錠芯をコーティングする方法や、錠芯に徐放剤を添加する方法(特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平06-104625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコーティングによる徐放化には、製造工程が増えるという問題点がある。また、錠芯への徐放剤添加による徐放化は、製造工程は増えない点で好ましいが、その徐放作用は必ずしも十分ではなく、さらに徐放作用の向上した錠剤が求められている。
【0006】
本発明の課題は、徐放性に優れた錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の成分の組合せを錠芯に含有させることにより、錠剤が優れた徐放性を示すことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]下記(A)成分、(B)成分並びに(C)成分を含む錠芯を具備することを特徴とする錠剤。
(A)ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(B)ヒドロキシプロピルセルロース
(C)セルロース、糖アルコール、澱粉、デキストリン及び麦芽糖の中から選ばれる少なくとも1種の成分
[2]錠芯が、(C)セルロース、糖アルコール、澱粉、デキストリン及び麦芽糖の中から選ばれる2種以上の成分を含むことを特徴とする[1]記載の錠剤。
[3]徐放用であることを特徴とする[1]又は[2]記載の錠剤。
[4]コーティング層を有するコーティング錠剤であって、該コーティング層が、(A)成分、(B)成分並びに(C)成分を含まないことを特徴とする[1]~[3]のいずれか記載の錠剤。
[5]錠芯が、(D)ビタミン、ポリフェノール、アミノ酸、ペプチド、乳酸菌、炭及び香料の中から選ばれる少なくとも1種の成分を含むことを特徴とする[1]~[4]のいずれか記載の錠剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の錠剤は、徐放性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の錠剤は、下記(A)成分、(B)成分並びに(C)成分を含む錠芯を具備することを特徴とする。
【0011】
(A)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)
(B)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
(C)セルロース、糖アルコール、澱粉、デキストリン及び麦芽糖の中から選ばれる少なくとも1種の成分
【0012】
錠芯が、(A)成分、(B)成分並びに(C)成分を含むことにより、優れた徐放性を有する錠剤とすることができる。すなわち、本発明の錠剤は、崩壊時間が長く、徐放目的とする成分がゆっくりと溶け出す特性(徐放性)を有することから、成分のもつ効果を長期にわたり維持することができる。例えば、ビタミン等の有用成分は一度に多く服用したとしても、所定量以上は体内に吸収することができず体外に排出されてしまうが、本発明の錠剤によれば、所望の成分がゆっくりと溶け出すため、所望の成分を長期にわたり持続的に吸収することができる。また、これにより、錠剤の服用回数の低減を図ることができる。さらに、特に副作用が問題となる医薬品分野では、血中の有効成分濃度の急激な上昇を抑えられることから、副作用を抑制することが可能となる。
【0013】
本発明の錠剤の崩壊時間としては、20分以上であることが好ましく、25分以上であることがより好ましく、30分以上であることがさらに好ましい。なお、崩壊時間とは、溶媒中の試料が崩壊するまでの時間を意味し、具体的には、第十五改正日本薬局方における項目「6.09」の「崩壊試験法」に記載の方法により測定されたものをいう。
【0014】
本発明の錠剤は、コーティング層を有するコーティング錠剤であってもよいし、コーティング層を有していない錠芯からなる裸錠であってもよい。すなわち、本発明において、錠芯とは、錠剤からコーティング層を除いた部分のことを意味する。コーティング層を有さない錠剤(裸錠)の場合は、錠芯だけで錠剤を構成する。なお、一般に、裸錠(素錠ともいう)とは、その表面にコーティング層が形成されていない錠剤をいう。(A)成分、(B)成分並びに(C)成分を錠芯に含む本発明の錠剤は、裸錠であっても十分な徐放性を発揮する。
【0015】
本発明の錠剤がコーティング錠剤の場合、コーティング層は、上記(A)成分、(B)成分並びに(C)成分を含む形態(3成分を含む形態)、(A)~(C)成分のうちの2成分を含む形態、(A)~(C)成分のうちの1成分を含む形態、(A)成分、(B)成分並びに(C)成分を含まない形態(3成分を含まない形態)のいずれの形態であってもよい。
【0016】
本発明の錠剤の錠芯に含まれる(A)成分のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び(B)成分のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、食品や医薬品の添加剤として用いられるセルロース誘導体であり、市販品を用いることができる。
【0017】
本発明の錠剤の錠芯に含まれる(C)成分は、セルロース、糖アルコール、澱粉、デキストリン及び麦芽糖の中から選ばれる成分であり、これらの成分のうちの少なくとも1種を含めばよいが、2種以上含むことが好ましく、3種類以上含むことがより好ましい。また、(C)成分としては、上記成分の中でも、セルロース、糖アルコール、澱粉、麦芽糖が好ましく、糖アルコール、澱粉、麦芽糖がより好ましい。これら成分の中から2種以上を含むことが好ましく、3種以上含むことがより好ましい。具体的には、糖アルコール、澱粉及び麦芽糖の組み合わせが特に好ましい。
【0018】
以下、(C)成分の各成分について説明する。各成分は、市販品を用いることができる。また、各成分は、それぞれ2種以上併用してもよい。
【0019】
セルロースとしては、植物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロース、微生物産生のセルロース、動物産生のセルロースを挙げることができ、粉末化、結晶化されていてもよい。(C)成分としてのセルロースには、セルロース誘導体を含まない。したがって、(C)成分としてのセルロースは、(A)成分のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び(B)成分のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)とは区別されるものである。
【0020】
糖アルコールとしては、例えばキシリトール、ソルビトール、マンニトール、還元麦芽糖、ラクチトール、オリゴ糖アルコール、エリスリトール、低糖化還元水飴、高糖化還元水飴、還元パラチノース等を挙げることができ、上記成分の中でも還元麦芽糖、還元パラチノースが好ましく、還元麦芽糖が特に好ましい。
【0021】
澱粉としては、コーンスターチ(とうもろこし由来澱粉)、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、米澱粉、小麦澱粉等を挙げることができ、アルファー化澱粉又は部分アルファー化澱粉であってもよい。澱粉としては、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉が好ましく、コーンスターチが特に好ましい。
【0022】
本発明におけるデキストリンとは、澱粉を酵素や酸を用いて加水分解して得られる澱粉の分解物をいい、上記澱粉の分解物を挙げることができる。澱粉に微量の酸を加えて加熱した後に酵素で加水分解して得られる難消化性デキストリンについても本発明においては、デキストリンに含まれる。デキストリンとしては、消化性デキストリンが特に好ましい。
【0023】
麦芽糖は、グルコース2分子がα1-4結合した還元性二糖であり、澱粉を酵素分解して得られるものである。
【0024】
本発明の錠剤の錠芯には、さらに、徐放目的の成分として、(D)ビタミン、ポリフェノール、アミノ酸、ペプチド、乳酸菌、炭及び香料の中から選ばれる少なくとも1種の成分を含むことが好ましく、2種以上の成分を含むことがより好ましく、3種類以上の成分を含むことがさらに好ましい。(D)成分としては、ビタミン、ポリフェノール、乳酸菌、香料が好ましく、香料が特に好ましい。なお、徐放目的の成分は、上記例示された(D)成分に限定されるものではない。
【0025】
以下、(D)成分の各成分について説明する。各成分は、市販品を用いることができる。また、各成分は、2種以上併用してもよい。
【0026】
ビタミンとしては、水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B12、B13、B15、B17、ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、PABA、ビタミンC、ビタミンP)、油溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)等のビタミンを挙げることができる。ビタミンとしては、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンEが好ましく、ビタミンB2、ビタミンEが特に好ましい。
【0027】
ポリフェノールとしては、カテコール、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、ガロカテキンガラート、エピガロカテキンガラート、タンニン酸(m-ガロイル没食子酸)、ハマメリタンニン(1,5-ジガロイルハマメロース)、アントシアニン、プロアントシアニジン、レスベラトロール、カフェー酸誘導体、没食子酸、ピロガロールタンニン、カテコールタンニン等を挙げることができる。ポリフェノールとしては、カテキン、アントシアニン、プロアントシアニジンが好ましく、プロアントシアニジンが特に好ましい。
【0028】
上記ポリフェノールとしては、合成したポリフェノール、ポリフェノールを含む植物の抽出物又は抽出残渣、ポリフェノールを含む植物の乾燥粉末などを用いることができる。植物由来のポリフェノールを用いる場合、植物の種類としては特に限定されないが、例えば、マツ科植物、ツバキ科植物、アカネ科植物、ブドウ科植物、ヒルガオ科植物などの植物を用いることができる。ポリフェノールを含む植物の抽出物を用いる場合、抽出方法としては、例えば、熱水抽出画分、アルコール、酢酸エチル、石油エーテルなどの有機溶媒による溶剤抽出画分、水蒸気蒸留画分、圧搾画分、油脂吸着画分、液化ガス抽出画分、超臨界抽出画分、または乾留画分などが挙げられる。また、植物の抽出物を用いる場合、松樹皮抽出物、茶抽出物、コーヒー抽出物が好ましく、松樹皮抽出物が特に好ましい。
【0029】
アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、チロシン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジンを挙げることができる。アミノ酸としては、アラニン、グリシン、チロシンが好ましく、アラニンが特に好ましい。
【0030】
ペプチドとしては、動物性タンパク質、植物性タンパク質の分解物を挙げることができる。動物性タンパク質としては、例えば、牛、豚、鶏などの畜肉類;魚類、卵などに由来するコラーゲン;エラスチン;コンドロイチン蛋白複合体のような糖タンパク質等を挙げることができる。植物性タンパク質としては、例えば、大豆、小麦、トウモロコシ、えんどう豆等を挙げることができる。ペプチドとしては、乳由来のペプチド、大豆由来のペプチド、コラーゲンペプチドが好ましく、コラーゲンペプチドが特に好ましい。
【0031】
乳酸菌としては、代謝産物として乳酸を産生するものであれば特に限定されず、ヒトなどの動物において従来経口摂取されているものが挙げられ、生菌であっても、死菌であってもよい。具体的に、Bifidobacterium属、Lactbacillus属、Enterococcus属、Leuconostoc属、Pediococcus属、Staphylococcus属、Tetragenococcus属、Bacillus属の菌を挙げることができる。乳酸菌としては、Lactbacillus属、Enterococcus属、Bacillus属の乳酸菌が好ましく、Lactbacillus属、Enterococcus属の乳酸菌が特に好ましい。
【0032】
Bifidobacterium属としては、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium mongolienseが挙げられる。Lactbacillus属としては、Lactbacillus brevis、Lactbacillus gasseri、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus delburvecki、Lactobacillus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus halivaticus、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacilus paracasei、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus sporogenes、Lactobacillus sakei、Lactobacillus fructivorans、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus fermentumが挙げられる。
【0033】
Enterococcus属としては、Enterococcus faecalis(Streptococcus faecalis と称されることもある)、Enterococcus faesium(Streptococcus faesiumと称されることもある)、Streptococcus thermophilus、Lactococcus lactis(Streptococcus lactisと称されることもある) が挙げられる。Leuconostoc属としては、Leuconostoc mesenteroides、Leuconostoc oenos が挙げられる。Pediococcus属としては、Pediococcus acidilactici、Pediococcus pentosaceusが挙げられる。Staphylococcus属としては、Staphylococcus carnosus、Staphylococcus xylosusが挙げられる。Tetragenococcus属としては、Tetragenococcus halophilusが挙げられる。Bacillus属としては、Bacillus coagulans、及びBacillus mesentericusが挙げられる。
【0034】
炭としては、食用のものであれば特に制限されるものではなく、木炭、竹炭、純炭等を挙げることができる。これらの炭は、例えば、樹木や竹、これらから抽出されたセルロース、合成されたセルロースを焼成して炭化し粉砕することにより、得ることができる。炭としては、木炭、竹炭が好ましく、竹炭が特に好ましい。
【0035】
香料としては、動植物から抽出、圧搾、蒸留などの物理的手段や酵素処理により得られる天然香料や、合成香料から適宜選択して使用できる。具体的に、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー、緑茶、烏龍茶、紅茶などの茶由来の香料、コーヒー由来の香料等の天然香料や、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液-液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料を挙げることができる。また、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-1-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料を挙げることができる。さらに、ミントフレーバー、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等を挙げることができる。香料としては、メントール香料、ミントの香りの香料が好ましく、ミントの香りの香料が特に好ましい。
【0036】
本発明の錠剤の錠芯における(A)~(C)成分の合計配合量としては、特に限定されないが、錠芯全体の30~100質量%であることが好ましく、50~99質量%であることがより好ましく、70~95質量%であることがさらに好ましい。
【0037】
また、(A)成分及び(B)成分の合計配合量は、特に限定されないが、(A)~(C)成分の合計に対して1~50質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
また、徐放性の効果の観点から、(A)成分であるヒドロキシプロピルメチルセルロースの配合量は、(B)成分のヒドロキシプロピルセルロースの配合量よりも多いことが好ましい。(B)成分1質量部に対して、(A)成分を1.6質量部以上含むことがより好ましく、2質量部以上含むことがさらに好ましく、3質量部以上含むことが特に好ましい。また、錠剤の製造性の観点から、(B)成分1質量部に対して、(A)成分を20質量部以下含むことが好ましく、15質量部以下含むことがより好ましく、10質量部以下含むことがさらに好ましい。
【0039】
(C)成分1質量部に対する(A)成分の配合量としては、特に限定されないが、徐放性及び製造性の観点から、0.01~1.5質量部であることが好ましく、0.05~1質量部であることがより好ましく、0.1~1質量部であることがさらに好ましく、0.15~0.5質量部であることが特に好ましい。
【0040】
(C)成分1質量部に対する(B)成分の配合量としては、特に限定されないが、徐放性及び製造性の観点から、0.001~0.3質量部であることが好ましく、0.005~0.2質量部であることがより好ましく、0.01~0.15質量部であることがさらに好ましく、0.03~0.12質量部であることが特に好ましい。
【0041】
本発明の錠剤の錠芯における(D)成分の配合量としては、特に限定されないが、錠芯全体の0.1~50質量%であることが好ましく、0.5~40質量%であることがより好ましく、1~30質量%であることがさらに好ましく、5~20質量%であることが特に好ましい。
【0042】
(A)成分1質量部に対する(D)成分の配合量としては、特に限定されないが、(D)成分をゆっくりと放出する観点から、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらに好ましく、0.5~2質量部であることが特に好ましい。
【0043】
本発明の錠剤は、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品や、一般的な食品、医薬品(医薬部外品を含む)、飼料等として用いることができる。
【0044】
本発明の錠剤は、上記のように優れた徐放性を有するものであり、徐放用錠剤として用いることが好ましい。従来の徐放用錠剤は医薬用として開発されたものがほとんどであるのに対して、本発明の徐放用錠剤は食品用として開発されたものであり、医薬品添加物を含まなくとも徐放性を十分に発揮するのが特徴である。そのため、本発明の徐放用錠剤は、機能性食品などのいわゆる健康食品や一般食品などの食品用として用いることが好適である。徐放用錠剤とは、徐放目的とする成分が徐々に放出される(ゆっくりと溶け出す)点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかに、成分が徐々に放出される(ゆっくりと溶け出す)旨を表示したものが本発明の範囲に含まれる。具体的に、徐放用錠剤としては、「持続型」、「ゆっくり放出」、「ゆっくり溶ける」「ゆっくり吸収」「持続的に吸収」等を表示したものを例示することができる。
【0045】
また、本発明の錠剤は、白色錠剤であってもよいが、濡れた際に外部に色が付着しにくい(色移りしにくい)ことから、有色錠剤であってもよい。すなわち、本発明の錠剤においては、着色した成分を、色移りを気にすることなく容易に配合することができる。
【0046】
本発明の錠剤の錠芯の製造方法としては、各成分を造粒した後に打錠する方法であってもよいが、製造工程を少なくする観点から、各成分を造粒せずに、各成分の混合粉末を打錠する方法(直接打錠法)が好ましい。打錠は、例えば、ロータリー式打錠機等の装置を用いて公知の方法で行うことができる。本発明においては、錠芯の成分として(A)~(C)成分を含むことから製造性が良く、直接打錠によっても徐放性錠剤を得ることができる。なお、錠芯の製造においては、上記(A)~(C)の成分の他、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤等を添加してもよい。
【0047】
滑沢剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。滑沢剤としては、徐放性の観点から、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが好ましく、ステアリン酸カルシウムが特に好ましい。
【0048】
流動化剤としては、特に限定されないが、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等を挙げることができる。流動化剤としては、徐放性の観点から、二酸化ケイ素が特に好ましい。
【0049】
上記のように、本発明の錠剤は、製造された錠芯をそのまま錠剤とすることができ、また、錠芯表面にコーティング層を設けてコーティング錠剤とすることができる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
<錠剤の製造>
下記表1に示す組成からなる粉体200mgを薬包紙にて秤量した。卓上錠剤成形機(HANDTAB-200/市橋精機株式会社製)を用いて、錠剤を成形した。直径:8mm、曲率半径:10mmの臼杵を用い、打圧が3kNになるまで、圧を加えて、錠剤を成形した。
【0051】
【表1】
【0052】
<錠剤の評価>
1.崩壊時間の評価
第十五改正日本薬局方における項目「6.09」の「崩壊試験法」に記載の方法に準じて崩壊時間の測定を行った。具体的には、以下のとおりである。
【0053】
まず、ガラス管を有する崩壊試験器の該ガラス管に、錠剤を入れた。なお、各ガラス管は、上下面が開口しており、ガラス管の下面には網目の開き1.8mm~2.2mmのステンレス網が取り付けられている。
錠剤を入れたガラス管を37±2℃の水中に入れ、崩壊試験器を作動させた。崩壊試験器中のガラス管を観察し、錠剤が崩壊しかかっている様子が確認されたらガラス管を引き上げ、錠剤の崩壊の様子を観察した。この作業を繰り返し、錠剤が完全に崩壊するまで観察した。崩壊試験器を作動させたときから、錠剤が崩壊したときまでの時間を測定し、該測定された時間を崩壊時間とした。なお、錠剤の残留物をガラス管内に全く認めないか、又は認めても明らかに原形をとどめない軟質の物質であるとき錠剤は崩壊したものとした。
その結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、実施例の錠剤は、崩壊時間が20分を超えており、徐放性に優れていることがわかる。これらの中でも、2種以上の(C)成分を含む実施例1、3、5、6、7の錠剤は、崩壊時間が30分を超えており、徐放性により優れていた。特に、(C)成分として、マルトース、デンプン及び還元麦芽糖を含む実施例7の錠剤は、崩壊時間が70分を超えており、特に優れた徐放性を有していた。
【0056】
2.溶出性の評価
リボフラビンは水溶性であり水に溶解すると黄色を示すため、リボフラビンを含む錠剤を水に投入後、溶液の着色度合いを評価することにより、リボフラビン(徐放目的の成分)が溶出した度合いを評価することができる。以下の手順により、徐放目的の成分(リボフラビン)の溶出性を評価した。
【0057】
[手順]
ビーカーに30mLの純水を入れ、錠剤2粒を投入した。その後、2分毎にかき混ぜた(3回転/3秒)。錠剤を投入してから10分経過後(かき混ぜた回数は合計5回)、錠剤を取り除き、純粋で2倍希釈した溶液の明度を以下の基準によって比較した。
その結果を表3に示す。
【0058】
[評価基準]
2 :比較例1よりも明らかに色が薄い
1 :比較例1よりも少し色が薄い
0 :比較例1と同程度
-1 :比較例1よりも少し色が濃い
-2 :比較例1よりも明らかに色が濃い
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示すように、実施例1~7の錠剤は、(C)成分を含まない比較例1に比べて、リボフラビンの溶出が遅く、徐放性に優れていることがわかる。
【0061】
3.色移りの評価
実施例及び比較例の錠剤は、リボフラビン(橙黄色)を含むため有色錠剤である。有色錠剤が濡れた際に外部に色が付着する度合い(色移り)について、以下の手順によって評価した。
その結果を表4に示す。
【0062】
[手順]
1000μLの純水を滴下したコットン(5.5cm×7cm)の上に錠剤1粒を乗せ、さらに1000μLの純水を滴下した。5分後に錠剤を裏返し、さらに1000μLの水を滴下した。さらに5分後、錠剤を取り除き、コットンの色(リボフビンの色がコットンに移るため、黄色を呈する)の濃さを比較した。
【0063】
[評価基準]
2 :比較例1よりも明らかに色が薄い
1 :比較例1よりも少し色が薄い
0 :比較例1と同程度
-1 :比較例1よりも少し色が濃い
-2 :比較例1よりも明らかに色が濃い
【0064】
【表4】
【0065】
表4に示すように、実施例1、3、4の錠剤は、(C)成分を含まない比較例1に比べて、色移りしにくいことがわかる。
【0066】
<処方例>
(A)、(B)並びに(C)の成分を含む下記処方により、直接打錠法によって錠剤を製造した。
【0067】
【表5】
【0068】
上記処方により製造した錠剤は、徐放性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の錠剤は、優れた徐放性を有し、サプリメント等に好適であることから、産業上有用である。