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  • 特許-パイプの接続構造 図1
  • 特許-パイプの接続構造 図2
  • 特許-パイプの接続構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】パイプの接続構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/04 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
F16L37/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019215660
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021085478
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】川田 剛司
(72)【発明者】
【氏名】濱口 真伍
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-164026(JP,A)
【文献】特開2015-116906(JP,A)
【文献】特開平07-305793(JP,A)
【文献】特開2003-172491(JP,A)
【文献】特開平11-063680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部流路を有するメス側部材に設けられ、前記内部流路と連通して外部へ開口する差込穴に、Oリングを外装させたパイプの先端部を差し込んで接続するパイプの接続構造であって、
前記先端部の差込側前端にリング状の溝を形成して、前記溝内に前記Oリングを収容する一方、
前記差込穴の内径を、前記先端部の差込位置で前記Oリングが所定の締め代で圧接する奥側内径部と、前記奥側内径部より前記差込穴の開口側で前記奥側内径部よりも大径で且つ前記Oリングの外径よりも小径に形成され、前記差込位置で前記先端部における前記溝より後側の外周面が当接する開口側内径部とを含む2段径とすると共に、
前記奥側内径部と前記開口側内径部との間には、前記奥側内径部から前記開口側内径部へ行くに従って拡開する内テーパ部が形成され、
前記差込穴の開口には、前記開口側内径部から前記開口側へ行くに従って拡開する外テーパ部が形成されて、
前記先端部を前記差込穴に差し込む際、前記Oリングは、前記外テーパ部、前記開口側内径部、前記内テーパ部の順に当接することで徐々に縮径することを特徴とするパイプの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器等の流体制御機器において、パイプ(配管)を接続する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器等の流体制御機器においては、流体を熱交換器等の構成部間で受け渡しするために、パイプが接続される。このパイプの接続は、例えば特許文献1に開示されるように、メス側部材に設けた差込穴に、パイプの先端部を挿入することで行われる。パイプの先端部外周には、シール性を保つために、Oリング等のシール部材が外装されている。
パイプは、作業者による組み付けの際、差込穴に対して軸線が傾いた状態で差し込まれると、Oリングが差込穴との間に噛み込み、位置ズレや損傷を起こしてシール性を低下させるおそれがある。よって、パイプの先端部をOリングよりも前側へ長く突出させて差し込む際のガイドとし、差し込む際に傾きが生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-45456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、メス側部材が樹脂製であると、パイプを差し込む際に先端部に設けたガイドがメス側部材に接触して樹脂を削り、これがOリングに付着することで漏れが発生するおそれがあった。ガイドが接触しないように差込穴の内径を大きくすることも考えられるが、Oリングの締め代が小さくなってシール性の低下に繋がってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、パイプの先端部にガイドを設けなくてもシール部材の噛み込みを防止でき、シール性も担保できるパイプの接続構造を提供すること目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内部流路を有するメス側部材に設けられ、内部流路と連通して外部へ開口する差込穴に、Oリングを外装させたパイプの先端部を差し込んで接続するパイプの接続構造であって、
先端部の差込側前端にリング状の溝を形成して、溝内にOリングを収容する一方、
差込穴の内径を、先端部の差込位置でシール部材が所定の締め代で圧接する奥側内径部と、奥側内径部より差込穴の開口側で奥側内径部よりも大径で且つOリングの外径よりも小径に形成され、差込位置で先端部における溝より後側の外周面が当接する開口側内径部とを含む2段径とすると共に、
奥側内径部と開口側内径部との間には、奥側内径部から開口側内径部へ行くに従って拡開する内テーパ部が形成され、
差込穴の開口には、開口側内径部から開口側へ行くに従って拡開する外テーパ部が形成されて、
先端部を差込穴に差し込む際、Oリングは、外テーパ部、開口側内径部、内テーパ部の順に当接することで徐々に縮径することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メス側部材が樹脂製であっても、パイプを差し込む際に先端部がメス側部材に接触して樹脂を削ってしまうおそれが低減される。また、差込穴の内径を大きくしなくてもOリングの締め代が確保できる。よって、パイプの先端部にガイドを設けなくてもOリングの噛み込みを防止でき、シール性も担保することができる。
特に、奥側内径部と開口側内径部との間に、奥側内径部から開口側内径部へ行くに従って拡開する内テーパ部を形成しているので、差込穴を2段径としてもOリングは奥側内径部へスムーズに誘導され、噛み込みが生じない。
また、差込穴の開口に、開口側内径部から開口側へ行くに従って拡開する外テーパ部を設けているので、先端部を差し込む際にOリングが当接して開口側内径部に案内され、噛み込み防止に効果的となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】給湯器の二次熱交換器及び配管の一部を示す斜視図である。
図2】給水管と水側部材との接続部の断面説明図である(差込接続前)。
図3】給水管と水側部材との接続部の断面説明図である(差込接続後)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、流体制御機器の一例である給湯器における二次熱交換器及び配管の一部を示している。二次熱交換器1の側面に形成した入口2には、給水管3が接続されている。出口4には、図示しない一次熱交換器に接続される接続管5が接続されている。二次熱交換器1の下方には、外部の水道管と接続される水側部材6が設けられて、給水管3は、水側部材6に接続されている。水側部材6には、内部の流量を調整する水量制御弁7が設けられている。水側部材6における給水管3の上流側には、図示しない出湯管と接続されるバイパス管8が接続されている。水側部材6には、給水管3及びバイパス管8への水量を調整する水分配弁9が設けられている。
ここでは、給水管3と水側部材6との接続部、バイパス管8と水側部材6との接続部に、それぞれ本発明のパイプの接続構造が採用されている。
【0010】
図2は、代表例として給水管3と水側部材6との差込接続前の状態を示している。
まず、パイプとなる給水管3は、金属製で、先端部10の前端(給水管3では差込側を前方とする。)には、つぶし加工によってフランジ11が形成され、その後方には、軸方向に所定間隔をおいて、フランジ11よりも大径となる真鍮製の押さえリング12が外装されている。このフランジ11と押さえリング12との間に、リング状の溝13が形成されて、溝13内に、Oリング14が収容されている。
一方、メス側部材となる水側部材6には、給水管3の差込穴20が形成されている。差込穴20には、フランジ11及び押さえリング12の外径よりも大径の受け部21と、受け部21の奥側で受け部21よりも小径の流路部22とが形成されて、流路部22が水側部材6内の内部流路23と連通している。受け部21の開口には、外側へ行くに従って拡径する外テーパ部24が形成されている。
【0011】
そして、受け部21には、先端部10の差込位置でOリング14が所定の締め代(例えば20%)で圧接する奥側内径部25が形成されている。この奥側内径部25は、先端部10のフランジ11よりも僅かに大径で、押さえリング12の外径よりも僅かに小径となっている。
また、奥側内径部25の開口側には、奥側内径部25よりも大径の開口側内径部26が形成されている。この開口側内径部26は、先端部10の押さえリング12よりも僅かに大径となり、開口側が外テーパ部24と繋がっている。
さらに、奥側内径部25と開口側内径部26との間には、奥側内径部25から開口側へ行くに従って拡開する内テーパ部27が形成されている。
よって、受け部21の内径は、開口側に向けて、奥側内径部25と開口側内径部26との2段階に縮径することになる。
【0012】
この接続構造では、給水管3の先端部10を差込穴20に差し込む際、フランジ11に続いてOリング14が、外テーパ部24、開口側内径部26、内テーパ部27、奥側内径部25の順に圧縮されながら進入する。このとき、前端に位置する前後に短いフランジ11が、大径の開口側内径部26、小径の奥側内径部25の順に進入するので、受け部21の内面に接触して削りを生じさせるおそれは殆どなくなる。また、Oリング14も、外テーパ部24から開口側内径部26、内テーパ部27の順に当接することで徐々に縮径するので、受け部21との間で噛み込みが生じにくくなる。
そして、フランジ11及びOリング14が奥側内径部25内に達すると、図3に示すように、押さえリング12は開口側内径部26内に達し、Oリング14は、奥側内径部25に所定の締め代で圧接して先端部10と受け部21との間をシールする。こうして先端部10は、受け部21内にフランジ11と押さえリング12とが当接する差込位置で保持される。なお、Oリング14は、図3では変形していないが、実際には圧接によって横断面が楕円状となるように変形する。
【0013】
このように、上記形態の給水管3の接続構造では、先端部10の差込側前端にリング状の溝13を形成して、溝13内にOリング14(シール部材)を収容する一方、差込穴20の内径を、先端部10の差込位置でOリング14が所定の締め代で圧接する奥側内径部25と、奥側内径部25より差込穴20の開口側で奥側内径部25よりも大径に形成され、差込位置で先端部10における溝13より後側の外周面(押さえリング12)が当接する開口側内径部26とを含む2段径としている。
この構成により、水側部材6が樹脂製であっても、差し込む際に先端部10が水側部材6に接触して樹脂を削ってしまうおそれが低減される。また、差込穴20の内径を大きくしなくてもOリング14の締め代が確保できる。よって、給水管3の先端部10にガイドを設けなくてもOリング14の噛み込みを防止でき、シール性も担保することができる。
【0014】
特に、奥側内径部25と開口側内径部26との間には、奥側内径部25から開口側内径部26へ行くに従って拡開する内テーパ部27が形成されている。よって、差込穴20を2段径としてもOリング14は奥側内径部25へスムーズに誘導され、噛み込みが生じない。
また、差込穴20の開口には、開口側内径部26から開口側へ行くに従って拡開する外テーパ部24が形成されている。よって、先端部10を差し込む際にOリング14が当接して開口側内径部26に案内され、噛み込み防止に効果的となる。
【0015】
なお、先端部のフランジは、つぶし加工に限らない。別体のリングも使用できる。押さえリングも、別体のリングに限らず、つぶし加工によって形成することもできる。また、先端部の外周にリング状の溝を凹設してOリング等を収容してもよい。
シール部材としては、Oリングに限らないし、複数のシール部材を軸方向に併設してもよい。奥側内径部と開口側内径部との間も内テーパ部に限らず、差込穴の軸心と直交するリング状の立ち上がり面としてもよい。
そして、本発明のパイプの接続構造は、上記形態の給水管と水側部材との接続部や、バイパス管と水側部材との接続部に限らない。前述した二次熱交換器の入口と給水管との接続部、出口と接続管との接続部等に設けてもよい。上記形態では入口と出口とはプレス加工されているが、この場合も内径を2段径とすればよい。
また、給湯器に限らず、湯沸器や暖房熱源機、コンロやレンジ、オーブン、フライヤー等の厨房機器、浴室暖房乾燥機、といった各種の流体制御機器において本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1・・二次熱交換器、2・・入口、3・・給水管、4・・出口、6・・水側部材、10・・先端部、11・・フランジ、12・・押さえリング、13・・溝、14・・Oリング、20・・差込穴、21・・受け部、22・・流路部、23・・内部流路、24・・外テーパ部、25・・奥側内径部、26・・開口側内径部、27・内テーパ部。
図1
図2
図3