(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】砥石及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B24D 18/00 20060101AFI20240126BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B24D18/00
H01L21/304 622F
H01L21/304 631
H01L21/304 601B
(21)【出願番号】P 2019221063
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】398046921
【氏名又は名称】株式会社ナノテム
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 篤
(72)【発明者】
【氏名】大橋 恭介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大地
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大和
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-190194(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069847(WO,A1)
【文献】実開昭63-169260(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0042495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 18/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転し、被加工物を加工する砥石であって、
前記砥石が前記回転軸を中心に回転する際に前記被加工物に接触することにより前記被加工物を加工する第1面、第2面及び第3面を備え、
前記第1面は、前記回転軸に沿う方向に延び、前記回転軸の周囲を囲む側周面であり、
前記第2面は、
前記回転軸が延びる方向において前記第1面から離れた位置にあり、前記回転軸が延びる方向から見て前記側周面の内側に位置し、前記回転軸に交わ
る端面であり、
前記第3面は、
前記第2面の前記回転軸から遠い外周端部と前記第1面の前記第2面に近い端部とを繋ぐ前記回転軸に沿う方向に対して傾斜する傾斜面であ
り、
前記砥石は、
前記第1面に設けられ、前記第1面に交わる方向に延びる複数の第1柱部と、
前記第2面に設けられ、前記第2面に交わる方向に延びる複数の第2柱部と、
前記第3面に設けられ、前記第3面に交わる方向に延びる複数の第3柱部と、を備え、
前記第1柱部、前記第2柱部及び前記第3柱部のそれぞれは、
前記砥石のうち前記第1柱部、前記第2柱部及び前記第3柱部のみに設けられ、前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の砥粒と、
前記複数の砥粒を結合する結合材と、を備える、
砥石。
【請求項2】
前記第1柱部、前記第2柱部及び前記第3柱部は、それぞれ、筒状に形成される、
請求項
1に記載の砥石。
【請求項3】
前記砥石は、
前記回転軸及び前記第1面に沿って延びる矩形波板状をなす2つの第1波板部と、
前記回転軸及び前記第2面に沿って延びる矩形波板状をなす2つの第2波板部と、
前記回転軸及び前記第3面に沿って延びる矩形波板状をなす2つの第3波板部と、を備え、
前記2つの第1波板部は、それぞれ、第1矩形波部を有し、前記砥石の周方向において互いに前記第1矩形波部が向き合うように重ね合わされることにより筒状の前記第1柱部が形成され、
前記2つの第2波板部は、それぞれ、第2矩形波部を有し、前記砥石の前記周方向において互いに前記第2矩形波部が向き合うように重ね合わされることにより筒状の前記第2柱部が形成され、
前記2つの第3波板部は、それぞれ、第3矩形波部を有し、前記砥石の前記周方向において互いに前記第3矩形波部が向き合うように重ね合わされることにより筒状の前記第3柱部が形成される、
請求項
2に記載の砥石。
【請求項4】
前記2つの第1波板部における前記第3波板部に近い下端は、前記2つの第3波板部における前記2つの第1波板部に近い上端に前記周方向に重な
った状態で接着されている、
請求項
3に記載の砥石。
【請求項5】
前記2つの第3波板部における前記第2波板部に近い下端は、前記2つの第2波板部の前記砥石の径方向の外側の端部に前記周方向に重な
った状態で接着されている、
請求項
3又は
4に記載の砥石。
【請求項6】
請求項1から
5の何れか1項に記載の砥石と、
前記砥石を保持する砥石ホルダーと、
前記砥石ホルダーに固定され、前記砥石の前記回転軸に沿って延びるシャフトと、
前記シャフトを軸回転させる駆動部と、を備える、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の回転砥石は、円板状に形成され、被加工物を研削又は研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の回転砥石では、研削層の底面を利用した研削又は研磨を行うのみで、多彩な加工を行うことが困難であった。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、多彩な加工を行うことができる砥石及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る砥石は、回転軸を中心に回転し、被加工物を加工する砥石であって、前記砥石が前記回転軸を中心に回転する際に前記被加工物に接触することにより前記被加工物を加工する第1面、第2面及び第3面を備え、前記第1面は、前記回転軸に沿う方向に延び、前記回転軸の周囲を囲む側周面であり、前記第2面は、前記回転軸が延びる方向において前記第1面から離れた位置にあり、前記回転軸が延びる方向から見て前記側周面の内側に位置し、前記回転軸に交わる端面であり、前記第3面は、前記第2面の前記回転軸から遠い外周端部と前記第1面の前記第2面に近い端部とを繋ぐ前記回転軸に沿う方向に対して傾斜する傾斜面であり、前記砥石は、前記第1面に設けられ、前記第1面に交わる方向に延びる複数の第1柱部と、前記第2面に設けられ、前記第2面に交わる方向に延びる複数の第2柱部と、前記第3面に設けられ、前記第3面に交わる方向に延びる複数の第3柱部と、を備え、前記第1柱部、前記第2柱部及び前記第3柱部のそれぞれは、前記砥石のうち前記第1柱部、前記第2柱部及び前記第3柱部のみに設けられ、前記被加工物を加工する際に前記被加工物に接触する複数の砥粒と、前記複数の砥粒を結合する結合材と、を備える。
【0008】
また、前記第1柱部、前記第2柱部及び前記第3柱部は、それぞれ、筒状に形成される、ようにしてもよい。
【0009】
また、前記砥石は、前記回転軸及び前記第1面に沿って延びる矩形波板状をなす2つの第1波板部と、前記回転軸及び前記第2面に沿って延びる矩形波板状をなす2つの第2波板部と、前記回転軸及び前記第3面に沿って延びる矩形波板状をなす2つの第3波板部と、を備え、前記2つの第1波板部は、それぞれ、第1矩形波部を有し、前記砥石の周方向において互いに前記第1矩形波部が向き合うように重ね合わされることにより筒状の前記第1柱部が形成され、前記2つの第2波板部は、それぞれ、第2矩形波部を有し、前記砥石の前記周方向において互いに前記第2矩形波部が向き合うように重ね合わされることにより筒状の前記第2柱部が形成され、前記2つの第3波板部は、それぞれ、第3矩形波部を有し、前記砥石の前記周方向において互いに前記第3矩形波部が向き合うように重ね合わされることにより筒状の前記第3柱部が形成される、ようにしてもよい。
【0010】
また、前記2つの第1波板部における前記第3波板部に近い下端は、前記2つの第3波板部における前記2つの第1波板部に近い上端に前記周方向に重なった状態で接着されている、ようにしてもよい。
【0011】
また、前記2つの第3波板部における前記第2波板部に近い下端は、前記2つの第2波板部の前記砥石の径方向の外側の端部に前記周方向に重なった状態で接着されている、ようにしてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工作機械は、前記砥石と、前記砥石を保持する砥石ホルダーと、前記砥石ホルダーに固定され、前記砥石の前記回転軸に沿って延びるシャフトと、前記シャフトを軸回転させる駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、砥石及び工作機械において、多彩な加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の模式的な断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る砥石の正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る砥石の底面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る(a)は側面加工部、傾斜面加工部及び端面加工部それぞれの波板部の側面図であり、(b)は側面加工部、傾斜面加工部及び端面加工部それぞれの波板部の正面図であり、(c)は側面加工部、傾斜面加工部及び端面加工部それぞれの波板部の底面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る砥石により被加工物が加工される際の柱部の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る砥石及び工作機械の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械5は、砥石ユニット1と、シャフト25と、駆動部27と、を備える。砥石ユニット1は、被加工物Wを加工する砥石10と、砥石10を保持する砥石ホルダー20と、を備える。
【0016】
砥石ホルダー20は、金属により形成され、円錐台状をなす。砥石ホルダー20の中心には円柱状のシャフト25が挿通される。砥石ホルダー20は、シャフト25と一体でシャフト25に沿う回転軸Oを中心に回転する。
【0017】
駆動部27は、シャフト25を介して砥石ユニット1をX方向、Y方向及びZ方向に移動させるとともに、シャフト25を介して砥石ユニット1を回転軸Oを中心に軸回転させる。これにより、砥石10は、図示しないチャックに固定された被加工物Wを加工、すなわち切削、研磨又は研削する。被加工物Wは、セラミックス、シリコンウエハ、半導体基板、LED(Light Emitting Diode)基板、放熱基板、シリコンカーバイド、アルミナ、サファイア又は金属等である。
【0018】
図1に示すように、砥石10は、砥石ホルダー20が内部に位置する円錐台の筒状をなす。詳しくは、砥石10は、保持材37、複数の柱部32及び接着部34を有する端面加工部30と、保持材47、複数の柱部42及び連結部44を有する側面加工部40と、保持材57、複数の柱部52及び連結部54を有する傾斜面加工部50と、を備える。
【0019】
図1及び
図3に示すように、端面加工部30は、回転軸Oに対して直交するXY平面に沿う円環板状に形成される。端面加工部30は、加工時に被加工物Wが接するXY平面に沿う端面31を有する。
各柱部32は、端面31に直交するZ方向に沿って延びる。各柱部32は、回転軸Oに沿って延びる筒状、例えば、正六角形筒状に形成される。各柱部32は、被加工物Wを加工、例えば、研磨又は研削するために設けられる。複数の柱部32は、柱部32の先端が端面31に位置するように、砥石10の端面31に沿って並べられている。
図3に示すように、複数の筒状の柱部32は、互いに同一のサイズで形成され、周方向Cに沿って並べられる。複数の柱部32は、周方向Cに沿って等角度、例えば45°間隔で配置されている。各柱部32は、6つの壁部33により構成される。隣り合う2つの壁部33は、所定角度、例えば60°の角度で交わるように一体をなす。2つの接着部34は、各柱部32の径方向Rに対向する2つの頂点から径方向Rに沿って各柱部32から離れる方向に延びる平板状をなす。
【0020】
図1及び
図2に示すように、側面加工部40は、回転軸Oに沿って延び、回転軸Oを囲むように位置し、加工時に被加工物Wが接する側周面41を有する。側周面41は、端面31に直交するように延びる円筒状をなす。側周面41は端面31の外径よりも大きい径を有する。
各柱部42は、側周面41に直交する径方向Rに沿って延びる。各柱部42は、径方向Rに沿って延びる筒状、例えば、正六角形筒状に形成される。各柱部42は、被加工物Wを加工、例えば、研削又は切削するために設けられる。複数の柱部42は、柱部42の先端が側周面41に位置するように、砥石10の側周面41に沿って並べられる。
図2に示すように、複数の筒状の柱部42はZ方向に沿って並べられ、Z方向に沿って並ぶ1列の複数の柱部42は砥石10の周方向Cに並べられる。複数の柱部42は、周方向Cに沿って等角度間隔、例えば45°間隔で配置されている。
【0021】
図2に示すように、複数の連結部44は、それぞれZ方向に隣り合う2つの柱部42を連結する。連結部44は、Z方向に隣り合う2つの柱部42の各々の頂点P1,P2を連結する平板状をなす。2つの頂点P1,P2はZ方向に対向して位置する。各柱部42は、6つの壁部43により構成される。隣り合う2つの壁部43は、所定角度、例えば60°の角度で交わるように一体をなす。
【0022】
図2に示すように、傾斜面加工部50は、端面加工部30と側面加工部40を連結し、回転軸Oを中心とした円錐台の筒状をなす。傾斜面加工部50は、上方向に向かうにつれて径方向R外側に近づくように傾斜する。傾斜面加工部50は、側周面41と端面31の間を繋ぐテーパ面である傾斜面51を有する。傾斜面51は、回転軸Oに対して傾斜し、加工時に被加工物W(
図1参照)が接する。傾斜面51は、側周面41から端面31に近づくにつれて直径が小さくなるように傾斜する。
詳しくは、
図1及び
図2に示すように、各柱部52は、傾斜面51に直交する方向に延びる。各柱部52は、傾斜面51に直交する方向に延びる筒状、例えば、正六角形筒状に形成される。各柱部52は、被加工物Wを加工、例えば、研磨又は研削するために設けられる。複数の柱部52は、柱部52の先端が傾斜面51に位置するように、砥石10の傾斜面51に沿って並べられている。
図3に示すように、複数の柱部52は、互いに同一のサイズで形成される。複数の筒状の柱部52はZ方向に沿って並べられ、Z方向に沿って並ぶ1列の複数の柱部52は砥石10の周方向Cに並べられる。複数の柱部52は、周方向Cに沿って等角度間隔、例えば45°間隔で配置されている。各柱部52は、6つの壁部53により構成される。隣り合う2つの壁部53は、所定角度、例えば60°の角度で交わるように一体をなす。複数の連結部54は、それぞれZ方向に隣り合う2つの柱部52を連結する平板状をなす。
【0023】
図5に示すように、側面加工部40は、Z方向に沿って並べられる柱部42である複数、例えば3つの柱部42a,42b,42cと、複数の柱部42a,42b,42cを連結する連結部44である複数、例えば2つの連結部44a,44bと、を備える。連結部44aは、2つの柱部42a,42bの間に位置し、2つの柱部42a,42bを連結する。連結部44bは、2つの柱部42b,42cの間に位置し、2つの柱部42b,42cを連結する。
【0024】
柱部42a,42b,42c及び連結部44a,44bは、2つの第1波板部45,46により構成される。2つの第1波板部45,46は、それぞれZ方向に沿って折り曲げられたZ方向に沿う台形の矩形波状をなす。第1波板部45は複数の第1矩形波部45aを有し、第1波板部46は複数の第1矩形波部46aを有する。第1矩形波部45a,46aは、底辺が省略された台形形状をなす。2つの第1波板部45,46は、それぞれの第1矩形波部45a,46aが周方向Cに互いに向き合うように重ね合わされる。第1矩形波部45a,46aが互いに向き合うように設けられることにより、各柱部42a,42b,42cが形成される。2つの第1波板部45,46は、連結部44において図示しない接着剤により接着されている。この接着剤は、例えば、エポキシ樹脂である。この接着剤は、複数の砥粒を含んでいてもよい。
【0025】
図6(a),(b)に示すように、傾斜面加工部50の柱部52及び連結部54は、2つの第3波板部55,56により構成される。2つの第3波板部55,56は、それぞれZ方向の下側に向かうにつれて砥石10の径方向R内側に近づくように傾斜した方向に延びる台形の矩形波状をなす。
第3波板部55は複数の第3矩形波部55aを有し、第3波板部56は複数の第3矩形波部56aを有する。第3矩形波部55a,56aは、底辺が省略された台形形状をなす。2つの第3波板部55,56は、それぞれの第3矩形波部55a,56aが周方向Cに互いに向き合うように重ね合わされる。第3矩形波部55a,56aが互いに向き合うように設けられることにより、筒状の柱部52が形成される。2つの第3波板部55,56は、連結部54において図示しない接着剤により接着されている。この接着剤は、例えば、エポキシ樹脂である。この接着剤は、複数の砥粒を含んでいてもよい。
【0026】
図6(a),(c)に示すように、端面加工部30の柱部32は、2つの第2波板部35,36により構成される。2つの第2波板部35,36は、砥石10の径方向Rに延びる台形の矩形波状をなす。第2波板部35は第2矩形波部35aを有し、第2波板部36は第2矩形波部36aを有する。第2矩形波部35a,36aは、底辺が省略された台形形状をなす。2つの第2波板部35,36は、それぞれの第2矩形波部35a,36aが周方向Cに互いに向き合うように重ね合わされる。第2矩形波部35a,36aが互いに向き合うように設けられることにより、筒状の柱部32が形成される。2つの第2波板部35,36は、接着部34において図示しない接着剤により接着されている。この接着剤は、例えば、エポキシ樹脂である。この接着剤は、複数の砥粒を含んでいてもよい。
【0027】
図6(b)の範囲Dに示すように、2つの第1波板部45,46の下端は、2つの第3波板部55,56の上端に周方向Cに重なる。第1波板部45の下端と第1波板部46の下端の間には、2つの第3波板部55,56の上端を挟み込むように位置する。第1波板部45,46及び第3波板部55,56は互いに接着されている。これにより、
図6(a)に示すように、側面加工部40及び傾斜面加工部50の間の角部に第1波板部45,46及び第3波板部55,56の4枚が重なる重複領域Gを形成することができる。よって、側面加工部40及び傾斜面加工部50の間の角部の強度を高めることができる。
【0028】
図6(b)の範囲Eに示すように、2つの第3波板部55,56の下端は、2つの第2波板部35,36の径方向Rの外側の端部に周方向Cに重なる。第2波板部35の径方向Rの外側の端部と第2波板部36の径方向Rの外側の端部の間には、2つの第3波板部55,56の下端を挟み込むように位置する。第2波板部35,36及び第3波板部55,56は互いに接着されている。これにより、
図6(a)に示すように、傾斜面加工部50及び端面加工部30の間の角部に第3波板部55,56及び第2波板部35,36の4枚が重なる重複領域Hを形成することができる。よって、傾斜面加工部50及び端面加工部30の間の角部の強度を高めることができる。
【0029】
図1及び
図3に示すように、保持材37は、端面加工部30の全域にわたって形成され、複数の柱部32を保持する。保持材37は、各柱部32の内部空間に充填されるとともに、各柱部32の外部空間である複数の柱部32の間に充填される。
保持材57は、傾斜面加工部50の全域にわたって形成され、複数の柱部52を保持する。保持材57は、各柱部52の内部空間に充填されるとともに、各柱部52の外部空間である複数の柱部52の間に充填される。
図1及び
図2に示すように、保持材47は、側面加工部40の全域にわたって形成され、複数の柱部42を保持する。各柱部42の内部空間に充填されるとともに、各柱部42の外部空間である複数の柱部42の間に充填される。
【0030】
図1に示すように、保持材37,47,57は柱部32,42,52と略同一の高さに設定されている。保持材37,47,57は、柱部32,42,52よりも弾性率が小さい材質により形成される。すなわち、保持材37,47,57は、柱部32,42,52に比べて、外力により変形しやすく、被加工物Wとの摩擦による摩耗量が多い材質により形成される。砥石10での被加工物Wの加工時に、保持材37,47,57は、柱部32,42,52よりも削れやすく、かつ弾性変形しやすい。このため、
図4に示すように、砥石10の側周面41が被加工物Wの加工により摩耗した場合であっても、保持材47は、柱部42よりも距離Fだけ被加工物Wに対して退避した状態に維持される。保持材37,57も、保持材47と同様である。従って、保持材37,47,57は、柱部32,42,52よりも被加工物Wに向けて突出することが抑制され、柱部32,42,52による被加工物Wの加工を阻害しない。
保持材37,47,57は、例えば、気体又は液体である流体を通過させるポーラス材料、すなわち多孔質材料により形成される。保持材37,47,57は、例えば、多孔質の樹脂又はセラミックからなる。
【0031】
図4に示すように、柱部42は、複数の砥粒15と、複数の砥粒15を結合する結合材16と、を備える。複数の砥粒15は、結合材16内に分布している。砥粒15は、例えば、ダイヤモンドである。なお、砥粒15は、ダイヤモンドに限らず、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒であってもよいし、CBN砥粒とダイヤモンドを混合させてもよい。さらには、複数の砥粒15は、炭化ケイ素(SiC)、又は溶融アルミナ(Al
2O
3)、若しくはこれらを混合したものであってもよい。
【0032】
結合材16は、内部に複数の砥粒15を保持する。結合材16は、ニッケル、アルミニウム等の金属、樹脂又はセラミック等により形成される。柱部32は、柱部42,52と同様に、複数の砥粒及び結合材を備える。
図4に示すように、保持材47は、複数の目立て粒47aを含む。目立て粒47aは、結合材16よりも硬く、かつ、砥粒15よりも柔らかい材質により形成される。目立て粒47aは、例えば、炭化ケイ素(SiC)又は二酸化ケイ素(SiO
2)からなる粒である。目立て粒47aは、保持材47から脱落した後、柱部42の結合材16を削る。これにより、柱部42の砥粒15が目立てされる。保持材37,57も、保持材47と同様に、複数の目立て粒を含む。
【0033】
次に、工作機械5の作用について説明する。
図1に示すように、工作機械5は、駆動部27を介して、シャフト25とともに回転軸Oを中心に砥石ユニット1を回転させつつ、砥石10の側周面41を被加工物Wに接触させる。これにより、側面加工部40は被加工物Wの側面を加工する。砥石10は、砥粒15(
図4参照)を有する柱部42と砥粒15を有しない保持材47が周方向Cに沿って交互に配置される。よって、砥石10が周方向Cに回転すると、被加工物Wには、被加工物Wを加工する柱部42と被加工物Wを加工しない保持材47が交互に接触する。これにより、
図7に示すように、柱部42が周方向Cに沿って被加工物Wに向かって回転し、柱部42の先端が被加工物Wに加工量Kにて被加工物Wに切り込まれるとともに、柱部42の先端が被加工物Wに摩擦する。これにより、被加工物Wの側面が加工される。
従来の砥石では砥粒が周方向に沿って均一に分布しており、砥粒は被加工物を研磨するのみである。よって、従来の砥石では、本実施形態に比べて、被加工物Wに切り込む加工量は少ない。一方、本実施形態の砥石10の柱部42は、フライス工具の刃先と同様に機能し、被加工物Wに切り込まれやすい。これにより、本実施形態の砥石10は、従来の砥石よりも加工量Kを増やすことができる。また、加工時には、砥石10の柱部42の先端が摩耗する前に砥粒15が柱部42から脱落し、新たな砥粒15が柱部42の先端に露出する。よって、砥石10の加工能力がフライス工具に比べて低下することが抑制される。
【0034】
図1に示すように、工作機械5は、駆動部27を介して、シャフト25とともに回転軸Oを中心に砥石ユニット1を回転させつつ、砥石10の端面31を被加工物Wの上面に接触させる。これにより、被加工物Wの上面が加工される。
【0035】
図1に示すように、工作機械5は、駆動部27を介して、シャフト25とともに回転軸Oを中心に砥石ユニット1を回転させつつ、砥石10の傾斜面51を被加工物Wの角部に接触させる。これにより、被加工物Wの角部が加工、すなわち面取り加工される。
なお、傾斜面51による面取り加工は、端面31による加工及び側周面41による加工に伴い被加工物Wの角部に形成されるバリをとるために、端面31による加工及び側周面41による加工の後で行われることが好ましい。
【0036】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)回転軸Oを中心に回転し、被加工物Wを加工する砥石10は、砥石10が回転軸Oを中心に回転する際に被加工物Wに接触することにより被加工物Wを加工する第1面、第2面及び第3面を備える。第1面は、回転軸Oに沿う方向に延び、回転軸Oの周囲を囲む側周面41である。第2面は、側周面41に交わる方向に延びる端面31である。第3面は、回転軸Oに沿う方向に対して傾斜し、側周面41と端面31を繋ぐ傾斜面51である。
この構成によれば、砥石10の側周面41、端面31及び傾斜面51を利用して多彩な加工を行うことができる。例えば、回転軸Oを中心に砥石10を回転させた状態で、砥石10の側周面41を被加工物Wの側面に接触させることにより、砥石10は被加工物Wの側面を加工する。また、回転軸Oを中心に砥石10を回転させた状態で、砥石10の端面31を被加工物Wの平面に接触させることにより、砥石10は被加工物Wの平面を加工する。また、回転軸Oを中心に砥石10を回転させた状態で、砥石10の傾斜面51を被加工物Wの角部に接触させることにより、砥石10は被加工物Wの角部を加工する。
【0037】
(2)砥石10は、側周面41に設けられ、砥石10の周方向Cに沿って間隔を持って並べられ、側周面41に交わる方向に延びる複数の第1柱部の一例である柱部42と、端面31に設けられ、端面31に交わる方向に延びる複数の第2柱部の一例である柱部32と、傾斜面51に設けられ、傾斜面51に交わる方向に延びる複数の第3柱部の一例である柱部52と、を備える。柱部32,42,52のそれぞれは、被加工物Wを加工する際に被加工物Wに接触する複数の砥粒15と、複数の砥粒15を結合する結合材16と、を備える。
この構成によれば、砥石10の側周面41は、砥粒15を有する柱部42が周方向Cに沿って間隔を持って並べられる。これにより、
図7に示すように、柱部42が周方向Cに沿って被加工物Wに向かって回転し、柱部42の先端が被加工物Wに加工量Kにて被加工物Wに切り込まれる。よって、砥石10の加工量Kを従来の砥石及び砥石10の端面31よりも増やすことができる。また、砥石10による被加工物Wの加工時に、砥粒15が被加工物Wとの摩擦により丸くなって研削能力が低下する前に、砥粒15が柱部42から脱落して新たな砥粒15が被加工物Wに接触可能に柱部42から露出する。このため、砥石10は、従来のフライス工具に比べて加工能力の低下が抑制される。砥石10の傾斜面51は、砥石10の側周面41と同様の作用効果を有する。
【0038】
(3)柱部32,42,52は、それぞれ、筒状に形成される。
この構成によれば、柱部32,42,52の剛性を高めることができ、砥石10の加工能力を向上させることができる。
【0039】
(4)傾斜面51は、側周面41と端面31を繋ぐように回転軸Oに沿う方向において側周面41と端面31の間に位置する。砥石10は、回転軸O及び側周面41に沿って延びる矩形波板状をなす2つの第1波板部45,46と、回転軸O及び端面31に沿って延びる矩形波板状をなす2つの第2波板部35,36と、回転軸O及び傾斜面51に沿って延びる矩形波板状をなす2つの第3波板部55,56と、を備える。2つの第1波板部45,46は、それぞれ、第1矩形波部45a,46aを有し、砥石10の周方向Cにおいて互いに第1矩形波部45a,46aが向き合うように重ね合わされることにより筒状の柱部42が形成される。2つの第2波板部35,36は、それぞれ、第2矩形波部35a,36aを有し、砥石10の周方向Cにおいて互いに第2矩形波部35a,36aが向き合うように重ね合わされることにより筒状の柱部32が形成される。2つの第3波板部55,56は、それぞれ、第3矩形波部55a,56aを有し、砥石10の周方向Cにおいて互いに第3矩形波部55a,56aが向き合うように重ね合わされることにより筒状の柱部52が形成される。
この構成によれば、簡単に、かつ強度が高い複数の筒状の柱部32,42,52を形成することができる。
【0040】
(5)2つの第1波板部45,46における第3波板部55,56に近い下端は、2つの第3波板部55,56における第1波板部45,46に近い上端に周方向Cに重なる。
この構成によれば、側面加工部40及び傾斜面加工部50の間の角部に第1波板部45,46及び第3波板部55,56の4枚が重なる重複領域Gを形成することができる。よって、側面加工部40及び傾斜面加工部50の間の角部の強度を高めることができる。砥石10の角部には応力集中が発生しやすいため、砥石10の角部の強度を高めることは好ましい。
【0041】
(6)2つの第3波板部55,56における第2波板部35,36に近い下端は、2つの第2波板部35,36の砥石10の径方向Rの外側の端部に周方向Cに重なる。
この構成によれば、傾斜面加工部50及び端面加工部30の間の角部に第3波板部55,56及び第2波板部35,36の4枚が重なる重複領域Hを形成することができる。よって、傾斜面加工部50及び端面加工部30の間の角部の強度を高めることができる。砥石10の角部には応力集中が発生しやすいため、砥石10の角部の強度を高めることは好ましい。
【0042】
(7)工作機械5は、砥石10と、砥石10を保持する砥石ホルダー20と、砥石ホルダー20に固定され、砥石10の回転軸Oに沿って延びるシャフト25と、シャフト25を軸回転させる駆動部27と、を備える。
この構成によれば、工作機械5は、砥石10の側周面41、端面31及び傾斜面51を利用して多彩な加工を行うことができる。
【0043】
(8)柱部32,42,52は、それぞれ、互いに異なる角度で交わるように一体をなす2つの壁部33,43,53を備える。
この構成によれば、2つの壁部33,43,53が互いに異なる角度で交わるように一体をなすため、2つの壁部が平板状に一体をなす場合に比べて、柱部32,42,52の剛性を高めることができる。これにより、砥石10の加工能力を向上させることができる。
【0044】
(9)工作機械5による加工方法は、回転軸Oを中心に砥石10を回転させつつ砥石10の端面31を被加工物W(例えば、被加工物Wの上面)に接触させることにより被加工物Wを加工する工程と、回転軸Oを中心に砥石10を回転させつつ砥石10の側周面41を被加工物W(例えば、被加工物Wの側面)に接触させることにより被加工物Wを加工する工程と、回転軸Oを中心に砥石10を回転させつつ砥石10の傾斜面51を被加工物W(例えば、被加工物Wの角部)に接触させることにより被加工物Wを加工する工程と、を備える。
この構成によれば、1つの砥石で、被加工物Wに対して多種類の加工を行うことができる。よって、砥石を含む多数の工具を準備する必要がない。
【0045】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
上記実施形態においては、柱部32,42,52は正六角形筒状に形成されていたが、六角形筒状であれば、正六角形筒状でなくてもよい。また、柱部32,42,52は、多角形筒状であれば、六角形筒状でなくてもよく、例えば、五角以下又は七角以上の多角形筒状であってもよい。さらに、柱部32,42,52は、筒状であれば、多角形筒状でなくてもよく、円筒状であってもよい。
また、例えば、柱部32,42,52は、V字状、L字状、X字状、N字状、U字状、Z字状、C字状又はI字状等をなしていてもよい。また、柱部32,42,52毎に形状が異なっていてもよい。
【0046】
上記実施形態においては、柱部42は、砥石10の側周面41に直交する方向に延びていたが、砥石10の側周面41に交わる方向であれば、側周面41に直交する方向に限定されない。また、柱部32は端面31に交わる方向であれば、端面31に直交してなくてもよく、柱部52は傾斜面51に交わる方向であれば、傾斜面51に直交してなくてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、連結部44,54は、Z方向に隣り合う2つの柱部42,52を連結していたが、これに限らず、例えば、周方向Cに隣り合う2つの柱部42,52を連結してもよい。また、接着部34も、周方向Cに隣り合う2つの柱部32を連結してもよい。
【0048】
上記実施形態において、端面31による加工、傾斜面51による加工及び側周面41による加工の順番はどのような順番であってもよい。また、端面31による加工、傾斜面51による加工及び側周面41による加工は、複数の被加工物Wに対して同時に行われてもよいし、被加工物Wの同一の部分に対して順番に行われてもよい。
【0049】
上記実施形態においては、側周面41の直径は、端面31の直径よりも大きく設定されていたが、これに限らず、側周面41の直径は、端面31の直径よりも小さく設定されていてもよい。この場合、傾斜面51は、側周面41から端面31に近づくにつれて直径が大きくなるように傾斜する。
【符号の説明】
【0050】
1…砥石ユニット、5…工作機械、10…砥石、15…砥粒、16…結合材、20…砥石ホルダー、25…シャフト、27…駆動部、30…端面加工部、31…端面、32,42,42a,42b,42c,52…柱部、33,43,53…壁部、34…接着部、44,44a,44b,54…連結部、35,36…第2波板部、35a,36a…第2矩形波部、37,47,57…保持材、40…側面加工部、41…側周面、45,46…第1波板部、45a,46a…第1矩形波部、47a…目立て粒、50…傾斜面加工部、51…傾斜面、55,56…第3波板部、55a,56a…第3矩形波部、C…周方向、D,E…範囲、F…距離、G,H…重複領域、K…加工量、O…回転軸、P1,P2…頂点、R…径方向、W…被加工物